説明

チェーンテンショナ

【課題】使用されるエンジンや運転条件が相違しても、特性の違う多種類のばねを準備する必要がなく、取り外し等の複雑な作業を行うことなく、最適な付勢力に調整し、チェーンの張力を最適化して駆動負荷を軽減し、振動等の不具合の発生を抑制するとともに、チェーンの摩耗伸びに伴なう付勢力の低下を抑制するチェーンテンショナを提供すること。
【解決手段】テンショナボディ110のプランジャ収容穴111にプランジャ120を摺動自在に挿入し突出方向に付勢するチェーンテンショナ100において、付勢手段が一方の端部をプランジャ120に当接するコイルばね140と、該コイルばね140の他方の端部をプランジャ120の突出方向に往復動させる付勢力調整部を有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方が開放した円筒状のプランジャ収容穴を有するテンショナボディにプランジャが摺動自在に挿入され、突出方向に付勢されて、チェーンの張力を適正に保持するチェーンテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケット間に無端懸回したローラチェーン等の伝動チェーンを、走行案内シューによって摺動案内を行うチェーンガイド機構において、張力を適正に保持するために、チェーンテンショナによって走行案内シューを有するテンショナレバーを付勢するものが知られている。
【0003】
公知のチェーンガイド機構は、図6に示すように、エンジンルーム内のクランク軸に取付けた駆動スプロケットS1とカム軸に取付けた一対の従動スプロケットS2、S3間にタイミングチェーンCが無端懸回されてなり、タイミングチェーンCのチェーンテンショナ500の押圧力で張力を適正に保持してチェーンをガイドする揺動チェーンガイドG1とタイミングチェーンCの走行を案内する固定チェーンガイドG2とによって構成されている。
【0004】
公知のチェーンテンショナ500は、図5に模式的に示すように、一方が開放した円筒状のプランジャ収容穴511を有するテンショナボディ510と、該プランジャ収容穴511に摺動自在に挿入される円筒状のプランジャ520と、プランジャ収容穴511からプランジャ520を突出方向に付勢する付勢手段として円筒状のプランジャ520のコイルばね収容穴521に収容されてプランジャ収容穴511底部との間で圧縮されるコイルばね540を備えている。
【0005】
そして、プランジャ収容穴511に設けられた油流入路512から高圧油が供給されることで、プランジャ収容穴511とプランジャ520との間に形成された油室513が高圧油で満たされ、該充填された高圧油によってプランジャ520の往復動を減衰させるダンピング効果を得ている。
【0006】
すなわち、プランジャ520とプランジャ収容穴511の間の僅かな隙間を油が流れることで、その流動抵抗によってプランジャ520の往復動を減衰させるダンピング効果を得ている。
【0007】
チェーンテンショナ500のプランジャ520の付勢力は、チェーンの張力を最適化して駆動負荷を軽減したり振動等の不具合の発生を抑制するために重要であり、最適な値に調整される必要があるが、使用されるエンジンにより、あるいは、同じエンジンであっても運転条件により最適値は異なる。
【0008】
上記の公知のプランジャ520の付勢力は、コイルばね540と供給される高圧油の圧力で決まり変更が困難である。
そこで、プランジャの付勢力を変更可能とするため、プランジャの先端部に交換可能な第2のばねを設けたチェーンテンショナが知られている(特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−22792号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
公知のチェーンテンショナ500では、コイルばね540が一旦組み込まれてしまうと変更が困難であり、使用されるエンジンに応じて問題が少ない付勢力を決定して設計するしかなく、付勢力を最適値とすることができず、また、該加工誤差等によって付勢力が設計値と異なっても修正することができないという問題があった。
また、チェーンの摩耗伸びによって、徐々にプランジャが突出した状態となり、コイルばね540の圧縮量が少なくなり、付勢力も低下するという問題があった。
【0011】
また、第2のばねを設けたチェーンテンショナにおいても、第1のコイルばねの組み込み後にも第2のばねを変更することで付勢力の調整が可能となるが、その変更作業はチェーンテンショナをエンジンから取り外した状態で行う必要があるため、使用されるエンジンごとに異なる設定作業をエンジンへの組み付け前に行う必要があり、一度設定された付勢力を変更するためには、エンジンから取り外して作業しなければならず、依然として容易に行うことはできないという問題があった。
また、チェーンの摩耗伸びに伴なう付勢力の低下を抑制することができないという問題があった。
【0012】
また、該加工誤差等によって付勢力が設計値と異なっても容易に修正することができないという問題があった。
さらに、付勢力を調整、変更するために、特性の違う多種類のばねを事前に準備しなければならないという問題があった。
【0013】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、使用されるエンジンや運転条件が相違しても、特性の違う多種類のばねを準備する必要がなく、取り外し等の複雑な作業を行うことなく、最適な付勢力に調整し、チェーンの張力を最適化して駆動負荷を軽減し、振動等の不具合の発生を抑制するとともに、チェーンの摩耗伸びに伴なう付勢力の低下を抑制するチェーンテンショナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本請求項1に係る発明は、一方が開放した円筒状のプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、該プランジャ収容穴に摺動自在に挿入される円筒状のプランジャと、前記プランジャを突出方向に付勢する付勢手段とを備えたチェーンテンショナにおいて、前記付勢手段が、一方の端部をプランジャに当接するコイルばねと、該コイルばねの他方の端部をプランジャの突出方向に往復動させる付勢力調整部を有することにより、前記課題を解決するものである。
【0015】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたチェーンテンショナの構成に加えて、前記付勢力調整部が、コイルばねの他方の端部を支持するコイルばね支持部と、該コイルばね支持部をプランジャの突出方向に往復動させるアクチュエータとを有することにより、前記課題を解決するものである。
【0016】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたチェーンテンショナの構成に加えて、前記コイルばねおよび付勢力調整部が、テンショナボディの外側に設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
【0017】
本請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたチェーンテンショナの構成に加えて、前記コイルばねが、テンショナボディのプランジャ収容穴に設けられ、前記付勢力調整部のアクチュエータが、テンショナボディの外側に設けられ、前記付勢力調整部のコイルばね支持部が、プランジャ収容穴内でコイルばねを支持し、テンショナボディを貫通してテンショナボディの外側で前記アクチュエータに駆動されることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0018】
本請求項5に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたチェーンテンショナの構成に加えて、前記テンショナボディが、アクチュエータよってプランジャの突出方向に駆動され、前記プランジャ収容穴の底部がコイルばねを支持し、前記テンショナボディ自体が付勢力調整部のコイルばね支持部を構成していることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0019】
本請求項6に係る発明は、請求項2乃至請求項5のいずれかに記載されたチェーンテンショナの構成に加えて、前記アクチュエータが、コントローラによる制御で稼働中に動作可能であることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0020】
本請求項7に係る発明は、請求項2乃至請求項6のいずれかに記載されたチェーンテンショナの構成に加えて、前記アクチュエータが、ピエゾ素子により駆動されることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0021】
本請求項1に係る発明のチェーンテンショナは、一方が開放した円筒状のプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、該プランジャ収容穴に摺動自在に挿入される円筒状のプランジャと、プランジャ収容穴からプランジャを突出方向に付勢する付勢手段とを備えたチェーンテンショナにおいて、付勢手段が一方の端部をプランジャに当接するコイルばねと、該コイルばねの他方の端部をプランジャの突出方向に往復動させる付勢力調整部を有することにより、付勢力調整部を手動あるいは自動で操作してコイルばねの圧縮量を調節することで付勢力を調節することができるため、使用されるエンジンや運転条件が相違しても、特性の違う多種類のばねを準備する必要がなく、取り外し等の複雑な作業を行うことなく、最適な付勢力に調整し、チェーンの張力を最適化して駆動負荷を軽減し、振動等の不具合の発生を抑制することができるとともに、チェーンの摩耗伸びに伴なう付勢力の低下を抑制することができる。
【0022】
本請求項2に係る発明のチェーンテンショナは、請求項1に係るチェーンテンショナが奏する効果に加えて、付勢力調整部がコイルばねの他方の端部を支持するコイルばね支持部と、該コイルばね支持部をプランジャの突出方向に往復動させるアクチュエータとを有することにより、アクチュエータによりコイルばね支持部を往復動させてコイルばねの圧縮量を調節することで付勢力を調節することができるため、チェーンテンショナを使用されるエンジンに組み付けた状態でも、容易に付勢力を調節することができる。
【0023】
本請求項3に係る発明のチェーンテンショナは、請求項1または請求項2に係るチェーンテンショナが奏する効果に加えて、コイルばねおよび付勢力調整部が、テンショナボディの外側に設けられていることにより、付勢力を調整する際に目視でコイルばねの圧縮量を確認することが可能となるため、さらに付勢力の調整を容易に行うことができる。
【0024】
本請求項4に係る発明のチェーンテンショナは、請求項1または請求項2に係るチェーンテンショナが奏する効果に加えて、コイルばねがテンショナボディのプランジャ収容穴に設けられ、付勢力調整部のアクチュエータがテンショナボディの外側に設けられ、付勢力調整部のコイルばね支持部がプランジャ収容穴内でコイルばねを支持しテンショナボディを貫通してテンショナボディの外側でアクチュエータに駆動されることにより、コイルばねを内装した従来のチェーンテンショナと同様の外部形状に構成することができる。
【0025】
本請求項5に係る発明のチェーンテンショナは、請求項1または請求項2に係るチェーンテンショナが奏する効果に加えて、テンショナボディがアクチュエータよってプランジャの突出方向に駆動され、プランジャ収容穴の底部がコイルばねを支持し、テンショナボディ自体が付勢力調整部のコイルばね支持部を構成していることにより、従来公知のチェーンテンショナのテンショナボディをそのまま使用可能となる。
【0026】
本請求項6に係る発明のチェーンテンショナは、請求項2乃至請求項5のいずれかに係るチェーンテンショナが奏する効果に加えて、アクチュエータがコントローラによる制御で稼働中に動作可能であることにより、エンジン等の実際の運転状況に応じた最適な付勢力に動的に調整することが可能となる。
【0027】
本請求項7に係る発明のチェーンテンショナは、請求項2乃至請求項6のいずれかに係るチェーンテンショナが奏する効果に加えて、アクチュエータがピエゾ素子により駆動されることにより、チェーンテンショナのストロークの小さいチェーンガイド機構に使用する際に、ピエゾ素子によってアクチュエータを小型軽量化することができるため、省スペース化が可能であるとともに、振動や熱の影響によるアクチュエータの作動の不具合が発生しにくいため、付勢力の使用状態での調整あるいは実際の運転状況に応じた動的調整を、より正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例であるチェーンテンショナの説明図。
【図2】本発明の第1実施例であるチェーンテンショナの側面断面図。
【図3】本発明の第2実施例であるチェーンテンショナの側面断面図。
【図4】本発明の第3実施例であるチェーンテンショナの側面断面図。
【図5】従来のチェーンテンショナの断面図。
【図6】従来のチェーンガイド機構の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、一方が開放した円筒状のプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、該プランジャ収容穴に摺動自在に挿入される円筒状のプランジャと、プランジャ収容穴からプランジャを突出方向に付勢する付勢手段とを備えたチェーンテンショナにおいて、付勢手段が付勢手段を有し、使用されるエンジンや運転条件が相違しても、特性の違う多種類のばねを準備する必要がなく、取り外し等の複雑な作業を行うことなく、最適な付勢力に調整し、チェーンの張力を最適化して駆動負荷を軽減し、振動等の不具合の発生を抑制するとともに、チェーンの摩耗伸びに伴なう付勢力の低下を抑制するという効果を奏するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0030】
本発明のチェーンテンショナのテンショナボディやプランジャの具体的な素材は、チェーンの張力を適正に保持するための強度を有するものであれば如何なるものでも良く、強度、加工性、経済性の観点から鋼材や鋳鉄等の鉄系材料を用いるのが好ましい。
【実施例1】
【0031】
本発明の第1実施例であるチェーンテンショナ100は、図1、図2に模式的に示すように、一方が開放した円筒状のプランジャ収容穴111を有するテンショナボディ110と、該プランジャ収容穴111に摺動自在に挿入される円筒状のプランジャ120と、一方の端部がプランジャ120に当接しプランジャ120を突出方向に付勢するコイルばね140と、コイルばね140の他方の端部を支持するコイルばね支持部141と、コイルばね支持部141をプランジャ120の突出方向に往復動させるアクチュエータ142とを備えている。
【0032】
テンショナボディ110のプランジャ収容穴111には、プランジャ収容穴111とプランジャ120との間に形成された油室113に高圧油を供給する油流入路112が設けられ、該油流入路112のプランジャ収容穴111側の末端には供給された高圧油の逆流を防止するチェックバルブ150が設けられている。
【0033】
テンショナボディ110には、プランジャ収容穴111の周辺に外形が円筒状の円筒状部114が形成され、コイルばね140が該テンショナボディ110の円筒状部114に外嵌されている。
プランジャ120のテンショナボディ110のプランジャ収容穴111から突出した先端付近の外周には、円筒状部114より大径の鍔部121が設けられている。
【0034】
コイルばね140の一方の端部はプランジャ120の鍔部121に当接し、コイルばね140の他方の端部はアクチュエータ142によりプランジャ120の突出方向に往復動自在なコイルばね支持部141に支持され、鍔部121とコイルばね支持部141の間でコイルばね140が圧縮されることで、プランジャ120が突出方向に付勢されている。 なお、エンジンに組み付けられる際には、テンショナボディ110がエンジンブロック(図示せず)に固定され、アクチュエータ142はテンショナボディ110に対して相対位置固定される。
【0035】
以上の構成により、アクチュエータ142を作動させてコイルばね支持部141をプランジャ120が突出方向に駆動することで、コイルばね140の圧縮量が変化し、プランジャ120の突出方向への付勢力を広範囲に調整することが可能となり、特性の違う多種類のばねを準備する必要がなく、取り外し等の複雑な作業を行うことなく、最適な付勢力に調整し、チェーンの張力を最適化して駆動負荷を軽減し、振動等の不具合の発生を抑制することができる。
【0036】
また、チェーンの摩耗伸びによって、徐々にプランジャが突出する状態となっても、該突出量相当分コイルばね支持部141をプランジャ120の突出方向に駆動することで、コイルばね140の圧縮量を一定に保つことができ、付勢力が低下することがない。
【0037】
さらに、図2に示すように、アクチュエータ142を駆動制御するコントローラ160を設け、該コントローラ160がエンジンの回転数や油温等のセンサ161からの入力に応じて最適な付勢力を演算することによって、付勢力の実際の運転状況に応じた動的調整を行うことができる。
また、センサ161を実際のチェーンの駆動負荷や振動を検出するものとし、コントローラ160によって、チェーン張力の駆動負荷や振動を最適化するフィードバック制御を行っても良い。
【実施例2】
【0038】
本発明の第2実施例であるチェーンテンショナ200は、図3に模式的に示すように、一方が開放した円筒状のプランジャ収容穴211を有するテンショナボディ210と、該プランジャ収容穴211に摺動自在に挿入される円筒状のプランジャ220と、一方の端部がプランジャ220に当接しプランジャ220を突出方向に付勢するコイルばね240と、コイルばね240の他方の端部を支持するコイルばね支持部241と、コイルばね支持部241をプランジャ220の突出方向に往復動させるアクチュエータ242とを備えている。
【0039】
テンショナボディ210のプランジャ収容穴211には、プランジャ収容穴211とプランジャ220との間に形成された油室213に高圧油を供給する油流入路212が設けられ、該油流入路212のプランジャ収容穴211側の末端には供給された高圧油の逆流を防止するチェックバルブ250が設けられている。
【0040】
プランジャ220にはコイルばね収容穴221が設けられ、コイルばね240が該コイルばね収容穴221に内嵌されている。
テンショナボディ210のプランジャ収容穴211には、プランジャ220の突出方向に往復動自在なコイルばね支持部241が設けられており、該コイルばね支持部241はテンショナボディ210の外部に設けられたアクチュエータ242によって駆動されるように構成されている。
【0041】
コイルばね240の一方の端部はプランジャ220のコイルばね収容穴221の底部に当接し、コイルばね240の他方の端部はアクチュエータ242によりプランジャ220の突出方向に往復動自在なコイルばね支持部241に支持され、コイルばね収容穴221の底部とコイルばね支持部241の間でコイルばね240が圧縮されることで、プランジャ220が突出方向に付勢されている。
なお、エンジンに組み付けられる際には、テンショナボディ210がエンジンブロック(図示せず)に固定され、アクチュエータ242はテンショナボディ210に対して相対位置固定される。
【0042】
以上の構成により、第1実施例と同様に、アクチュエータ242を作動させてコイルばね支持部241をプランジャ220の突出方向に駆動することにより、コイルばね240の圧縮量が変化し、プランジャ220の突出方向への付勢力を広範囲に調整することが可能となり、特性の違う多種類のばねを準備する必要がなく、取り外し等の複雑な作業を行うことなく、最適な付勢力に調整し、チェーンの張力を最適化して駆動負荷を軽減し、振動等の不具合の発生を抑制することができる。
【0043】
また、チェーンの摩耗伸びによって、徐々にプランジャが突出する状態となっても、該突出量相当分コイルばね支持部241をプランジャ220の突出方向に駆動することで、コイルばね240の圧縮量を一定に保つことができ、付勢力が低下することがない。 さらに、コイルばね240を内装することで、従来のチェーンテンショナと同様の外部形状に構成することができ、汎用性が向上する。
【実施例3】
【0044】
本発明の第3実施例であるチェーンテンショナ300は、図4に模式的に示すように、一方が開放した円筒状のプランジャ収容穴311を有するテンショナボディ310と、該プランジャ収容穴311に摺動自在に挿入される円筒状のプランジャ320と、プランジャ320を突出方向に付勢するコイルばね340と、テンショナボディ310をプランジャ320の突出方向に往復動させるアクチュエータ342とを備えている。
【0045】
テンショナボディ310のプランジャ収容穴311には、プランジャ収容穴311とプランジャ320との間に形成された油室313に高圧油を供給する油流入路312が設けられ、該油流入路312のプランジャ収容穴311側の末端には供給された高圧油の逆流を防止するチェックバルブ350が設けられている。
【0046】
プランジャ320にはコイルばね収容穴321が設けられ、コイルばね340が該コイルばね収容穴321に内嵌されている。
コイルばね340の一方の端部はプランジャ320のコイルばね収容穴321の底部に当接し、コイルばね340の他方の端部はプランジャ収容穴311の底部に支持され、コイルばね収容穴321の底部とプランジャ収容穴311の底部の間でコイルばね340が圧縮されることで、プランジャ320が突出方向に付勢されている。
なお、エンジンに組み付けられる際には、アクチュエータ342のみがエンジンブロック(図示せず)に固定され、テンショナボディ310は固定されない。
【0047】
以上の構成により、第1実施例と同様に、アクチュエータ342を作動させてテンショナボディ310をプランジャ320の突出方向に駆動することにより、コイルばね340の圧縮量が変化し、プランジャ320の突出方向への付勢力を広範囲に調整することが可能となり、特性の違う多種類のばねを準備する必要がなく、取り外し等の複雑な作業を行うことなく、最適な付勢力に調整し、チェーンの張力を最適化して駆動負荷を軽減し、振動等の不具合の発生を抑制することができる。
【0048】
また、チェーンの摩耗伸びによって、徐々にプランジャが突出する状態となっても、該突出量相当分テンショナボディ310をプランジャ320の突出方向に駆動することで、コイルばね340の圧縮量を一定に保つことができ、付勢力が低下することがない。
さらに、本実施例によれば、アクチュエータ342以外の構成は、従来の公知のチェーンテンショナをそのまま使用することが可能となるため、より汎用性が向上する。
【0049】
上記各実施例において、アクチュエータ142、242、342は、コイルばね支持部141、241あるいはテンショナボディ310を往復動させることが可能であればいかなる構成であっても良く、チェーンテンショナのストロークの小さいチェーンガイド機構に使用する場合には、ピエゾ素子等の可動部を持たないものとすることで、振動や熱の影響によるアクチュエータの作動の不具合の発生を防止することができる。
【0050】
また、アクチュエータ162をピエゾ素子とした場合、小型軽量化することができるとともに、応答速度を高めてより正確に調整を行うことが可能となる。
また、付勢力の動的調整を行わない場合は、アクチュエータ142、242、342に代えてねじ等の手動でコイルばね支持部141、241あるいはテンショナボディ310を往復動させる機構としても良い。
【0051】
以上説明したように、本発明によれば、使用されるエンジンや運転条件が相違しても、特性の違う多種類のばねを準備する必要がなく、取り外し等の複雑な作業を行うことなく、最適な付勢力に調整し、チェーンの張力を最適化して駆動負荷を軽減し、振動等の不具合の発生を抑制することができるとともに、チェーンの摩耗伸びに伴なう付勢力の低下を抑制することができ、エンジンのタイミングシステムに用いた場合には、タイミングチェーンやスプロケットのサイズや強度を下げた設計が可能となり小型、軽量化が可能となるなど、その効果は甚大である。
【0052】
なお、上記実施例の説明に用いた図1乃至図5は、各構成部材の大きさや比率を誇張あるいは変形して示している。
【符号の説明】
【0053】
100、200、300、500 ・・・チェーンテンショナ
110、210、310、510 ・・・テンショナボディ
111、211、311、511 ・・・プランジャ収容穴
112、212、312、512 ・・・油流入路
113、213、313、513 ・・・油室
114 ・・・円筒状部
120、220、320、520 ・・・プランジャ
221、321、521 ・・・コイルばね収容穴
122 ・・・鍔部
140、240、340、540 ・・・コイルばね
141、241 ・・・コイルばね支持部
142、242、342 ・・・アクチュエータ
150、250、350、550 ・・・チェックバルブ
160 ・・・コントローラ
161 ・・・センサ
S1 ・・・駆動スプロケット
S2 ・・・従動スプロケット
S3 ・・・従動スプロケット
C ・・・タイミングチェーン
G1 ・・・揺動チェーンガイド
G2 ・・・固定チェーンガイド
B、B1、B2 ・・・取付軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が開放した円筒状のプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、該プランジャ収容穴に摺動自在に挿入される円筒状のプランジャと、前記プランジャを突出方向に付勢する付勢手段とを備えたチェーンテンショナにおいて、
前記付勢手段が、一方の端部をプランジャに当接するコイルばねと、該コイルばねの他方の端部をプランジャの突出方向に往復動させる付勢力調整部を有することを特徴とするチェーンテンショナ。
【請求項2】
前記付勢力調整部が、コイルばねの他方の端部を支持するコイルばね支持部と、該コイルばね支持部をプランジャの突出方向に往復動させるアクチュエータとを有することを特徴とする請求項1に記載のチェーンテンショナ。
【請求項3】
前記コイルばねおよび付勢力調整部が、テンショナボディの外側に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーンテンショナ。
【請求項4】
前記コイルばねが、テンショナボディのプランジャ収容穴に設けられ、
前記付勢力調整部のアクチュエータが、テンショナボディの外側に設けられ、
前記付勢力調整部のコイルばね支持部が、プランジャ収容穴内でコイルばねを支持し、テンショナボディを貫通してテンショナボディの外側で前記アクチュエータに駆動されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーンテンショナ。
【請求項5】
前記テンショナボディがアクチュエータよってプランジャの突出方向に駆動され、
前記プランジャ収容穴の底部がコイルばねを支持し、
前記テンショナボディ自体が付勢力調整部のコイルばね支持部を構成していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーンテンショナ。
【請求項6】
前記アクチュエータが、コントローラによる制御で稼働中に動作可能であることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
【請求項7】
前記アクチュエータが、ピエゾ素子により駆動されることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載のチェーンテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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