説明

チキソトロピー性レオロジー調節剤としてのポリ尿素生成物

第一のポリイソシアネートと第一のアミンとの第一のポリ尿素反応の生成物、および該第一の反応生成物のコロイド粒子の存在下に沈降された、該第一のポリ尿素反応生成物とは異なる、第二のポリイソシアネートと第二のアミンとの第二のポリ尿素反応の生成物を含んでいるチキソトロープ剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ尿素化合物を含んでいるチキソトロープ剤、および当該チキソトロープ剤をレオロジー調節剤として、特に垂れ抑制剤としてコーティング組成物に使用する方法に関する。本発明は、さらに該ポリ尿素化合物を垂れ抑制剤として含んでいる垂れ抑制剤組成物、コーティング組成物およびコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーコーティングを使用して、物質の表面を保護しその美的および機能的性質を高めることは周知である。これらのポリマーコーティングは、典型的にはロール掛け法、刷毛塗り法、散布法、キャスティング法およびエアまたは静電スプレー法のような手法を使用して液状系として表面に施与される。
【0003】
施与に当たっての液状コーティング系のレオロジー的側面は典型的には、選択された方法によってコーティングが問題なく施与され、それの施与される基体上を均一に流れ、施与段階によって持ち込まれた表面の不均一ならびに下にある基体からの不均一ができる限り平滑化されることが可能であり、最良の最終外観が形成されることができるように選択される。同時に、非水平の基体については、液膜が垂れたりまたは液滴を形成することが許されてはならない。比較的厚い膜のコーティングの場合、および膜の何らかの局部的な盛り上がり、たとえば端、孔および基体内のキャラクターラインにおいても、このような垂れは特に顕著である傾向がある。
【0004】
有害な垂れを生じないで十分な平滑化が得られるように、施与されたコーティング膜が液状段階(これは、硬化を促進するために使用されることがある、施与後の何らかの加熱工程を含む。)にある間、その流れ性を制御する必要がある。自動車用途に、たとえば垂れの随伴問題なく極めて十分に平滑化された膜を得ることが最も重要であるような自動車用途に使用されるクリアコーティングについては、特にそういえる。
【0005】
コーティングが使用されることになる用途に応じて、偽塑性のレオロジー的側面を形成するために、垂れを制限しもしくは防止するために、および/もしくは顔料含有配合物の場合に顔料の沈降を避けるために、または施与後の顔料(たとえば、自動車ベースコート中のメタリック顔料)の配向を最適化するために、レオロジー調節剤が通常、コーティング組成物中へと導入される。
【0006】
尿素に基づいた粒状物質は、可逆的凝集の故にこのような偽塑性レオロジーを形成する能力がある公知の種類の物質を形成する。たとえば、微分散結晶の形で沈降されたポリ尿素を含んでいる垂れ抑制剤を、特許文献1は開示する。また、コーティング組成物中においてインシチュー(現場)で生成されることができる、あるいは外部で生成されそれからコーティング組成物に添加されることができる結晶質ポリ尿素の垂れ抑制剤を、特許文献2は開示する。
【0007】
所与のレオロジー調節剤の適切性は、多くの因子に依存する。レオロジー調節剤は、理想的なレオロジー的側面を形成する能力がなければならず、該レオロジー的側面それ自体が、とりわけ、液状コーティングが基体に施与される方法に付随するせん断領域;施与されるべきコーティングの厚さ;水平面に対する基体の方向性;表面張力;粒子、溶媒、樹脂および添加剤の間のコロイド的相互作用;施与後のコーティング組成物の何らかの付随的硬化に関連する熱体系、施与された溶媒の量及び揮発性;溶媒の消失および温度の上昇に対する粘度の応答性;溶媒蒸発後に発現する表面張力変化度;硬化速度;および液状コーティングに作用するせん断力に依存している。最適に近い結果をなお維持しながら、これらのパラメータの変動を許すほど十分な頑健さを形成する能力も、レオロジー調節剤はなければならない。
【0008】
レオロジー的側面に加えて、レオロジー調節剤を含有するコーティング配合物に関連して重要なさらなるパラメータが存在し、たとえば施与前のコーティング配合物の寿命、および非常に重要なことであるが、とりわけクリアコーティングのような用途について、これらのレオロジー調節剤によって導入される色およびヘイズのような何らかの有害な光学的効果がないことである。
【0009】
コーティングのレオロジー的性能に加えて、その光学的性能も極めて重要である。薄い膜で施与されたときに、何らかの可視障害物(たとえば、突起)を形成しないほど十分に、垂れ抑制添加剤は微細でなければならない。クリアコート用途の場合、硬化工程の完了後に、検知できるヘイズまたは濁りが存在してはならず、およびその存在によって色の生成(または黄変)がもたらされていてはならない。この場合にも、これらの特性は貯蔵期間とともに不可逆に変化してはならない。
【0010】
もちろん、コストおよび他のコーティング特性との干渉を限定するために、また添加されたSCA(垂れ抑制剤)の量に比例する光学的効果を最小にするためにも、低濃度で役目を果たすことができる効率的な垂れ抑制剤が好まれるだろう。
【0011】
多くの垂れ抑制剤が知られているけれども、上記の全ての要求を満たすことはできるものはなく、全ての用途を満たすことができるものもない。
【0012】
イソシアネート成分とアミン成分との反応から誘導されたポリ尿素化合物を垂れ抑制剤として使用することに大きな焦点が当てられている。前述の反応に基づいて、異なったアミンおよび/またはイソシアネートを使用すれば、異なったポリ尿素化合物がもたらされるだろう。これらの化合物が放置沈降されると、広い範囲の結晶安定性(または「融点」)を有する、等方性から異方性までの形態および微細な微分散結晶から繊維状までの形態の、ある範囲の形態、大きさおよび表面特性の最終生成物が得られることができるだろう。同様に、同一のアミンおよびイソシアネートの複数のバッチが異なった条件下にまたは異なった環境中で反応させられる場合には、コロイド特性のこのような差異が得られることができるだろう。このような特性は、該ポリ尿素化合物のレオロジー的および光学的性質ならびに所与の硬化領域へのそれらの安定性の決定因子である。
【0013】
ポリ尿素化合物が長い針状または繊維状の形態で結晶化する1の極端なモルホロジー(形態現象)においては、これらの微細構造を含んでいるコーティング組成物は、室温で濡れた膜として表面に施与されると、非常に低い量の流れ(およびそれに伴う垂れ)を示すことが認められており、低い量のこれらの物質を使用して所望の垂れ限界の低減を達成することが可能になる。さらにその上、このようなポリ尿素化合物は、これらが十分に微細な場合には、非常に穏やかな条件下に硬化されたときでさえも、すなわちたとえ硬化工程中に(反応)溶解することなく最終コーティング中に留まって存在するとしても、得られたコーティング中にヘイズを生じさせない。
【0014】
しかし、このような微細な針状または繊維状の結晶構造を生み出すこれらの尿素化合物のあるものは、高価なアミン原料物質(たとえば、キラルアミン)に基づいている。同様に、このような結晶構造は一般に、コーティング組成物に典型的に用いられるような溶媒中で比較的低い溶解温度を示すことが認められており、その結果、比較的高い温度における硬化反応の際に、オーブン硬化の最終段階で許される高過ぎる量の流れの故に、該ポリ尿素化合物のレオロジー効率は減退されることがある。このような低い溶解点は、コーティング組成物中の侵襲性溶媒および架橋剤に対するポリ尿素化合物の耐性を下げることもあり、その結果、ポリ尿素化合物は短い時間枠内にわたる施与には耐え切ることができるけれども、このようなコーティング組成物中の該ポリ尿素化合物の全体的な貯蔵寿命またはポットライフは限定されることがある。
【0015】
異なったモルホロジーを考慮すると、比較的粗な構造に結晶化する(たとえば、ベンジルアミンとHDIとに基づいた最も普通に使用される尿素化合物のような)多くのポリ尿素化合物は低い溶解温度を示しにくく、それによって高められた貯蔵寿命を有することができる。しかし、架橋剤または硬化条件が温和過ぎると、これらの粗な構造はヘイズとして視認され続けることがある。同様に有害なのは、コーティング施与の温度およびせん断領域において、比較的粗な結晶構造はレオロジー的にそれほど効率的でないことである。典型的には垂れ抑制剤中に増加された量のポリ尿素化合物を利用することによって、これは補償されるが、有害な光学的効果をさらに高めかねない。その上、これらの構造の高い安定性は、後期のオーブン段階においても、コーティング中に何らかの流れが生じるのを妨げることがあり、したがって膜の収縮に起因する後段階の不均一を平滑化することも妨げ、基体の不均一をそのまま伝える。
【特許文献1】米国特許第4,311,622号明細書
【特許文献2】米国特許第4,677,028号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特定の結晶特性およびコロイド特性を有する所与のポリ尿素化合物が、有利および不利の双方の明確にされた一連のレオロジー的および光学的性質を有することは明らかである。したがって、ポリ尿素化合物の異なった結晶構造の有利な性質を、当該構造に付随する不利な性質を最小限に抑えながら、相乗的に捉える必要が当分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第一のポリイソシアネートと第一のアミンとの第一のポリ尿素反応の生成物、および該第一の反応生成物のコロイド粒子の存在下に沈降された、第二のポリイソシアネートと第二のアミンとの第二のポリ尿素反応の生成物を含んでいるチキソトロープ剤を開示する本発明によって、上述のおよび他の目的は達成される。
【発明の効果】
【0018】
第一および第二のポリ尿素化合物は、該鋳型生成されたポリ尿素生成物の中でこれらの化学的同一性および/またはこれらの物理的構造に関して異なっていることができる。言うまでもなく、異なった第一および第二のアミンならびに/または異なった第一および第二のポリイソシアネートの反応物質としての使用は、化学的に異なった第一および第二のポリ尿素化合物を誘導するだろう。同様に、しかし、第一および第二のポリ尿素化合物の誘導に用いられる環境および反応の条件の有意な変動は、これらの化合物の化学的同一性は同じでありうるけれども、これらについて異なったコロイドの大きさおよびモルホロジーを発現することができると想到される。
【0019】
理論に拘束されるわけではないが、第一のポリ尿素化合物はコロイド粒子として生成され、当該粒子の存在下に第二のポリ尿素化合物は沈降する。第一のポリ尿素化合物の表面は第二のポリ尿素化合物のための核生成点として作用し、その結果、第一のポリ尿素化合物によって形成された種上へと第二のポリ尿素化合物は成長する。第一のコロイドが非常に微細である場合には、第二の化合物それ自体が、核となるポリ尿素粒子を形成しなければならない場合に有するであろう物質よりもはるかに微細な物質として、該化合物は沈降することができる。究極状態では、第一のポリ尿素化合物の核であって、その上に第二のポリ尿素反応生成物が固化したものからなると、得られた粒子は表現されることができるだろう。ある条件下では、核−殻(コア−シェル)構造が観察された。
【0020】
本発明に従うチキソトロープ剤は、以後「鋳型生成された」ポリ尿素生成物と呼ばれることがある。
【0021】
鋳型生成されたポリ尿素生成物は、垂れ抑制剤(SCA)として作用するときは、チキソトロピー性挙動を示し、施与に伴う高いおよび中程度のせん断応力(>5Pa)における低い粘度、ならびに非水平表面上の濡れたコーティング層中に重力によって生成されるせん断応力に相当する上記よりも低いせん断応力(<1Pa)における高い粘度を合わせ持つ。このチキソトロピー特性はさらに、時間依存性の速い粘度回復によって特性付けられ、コーティングが平滑化されると、表面上でまだ濡れている間でもそれが垂れないことを確保する。該ポリ尿素生成物のチキソトロピー性挙動は、たとえば溶媒の消失によって収縮が起きた後の、硬化の遅い段階に生じるいくらかの流れを妨げず、このことは、下にある基体からそのまま伝えられた表面不均一の平滑化にとって有利と考えられる。さらにその上、これらの特性は、液状コーティング組成物の貯蔵時間とともには有意に変化しない。
【0022】
その下で第一および第二のポリ尿素化合物が生成されるところの化学的性質および反応条件を変えることによって、該2の化学種のコロイド特性の差の制御が可能となり、これは次なる結果として、鋳型生成され得られた尿素化合物のレオロジー的および光学的性質の調節を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の好まれる実施態様に従うと、これらのポリ尿素化合物を含有するコーティングの施与の条件下に第二のポリ尿素化合物が有したであろうよりも強いレオロジー、より微細な構造、およびより低い視認性を、(第一のポリ尿素化合物が同一の条件下に生成されたならば)第一のポリ尿素化合物が有するであろうように、第一のポリ尿素化合物は選択される。好ましくは、第二のポリ尿素化合物が同一の条件下に生成されたならば有したであろうよりも大きいコロイド比表面積を第一のポリ尿素化合物が有するという点において第一のポリ尿素化合物のモルホロジーが特性付けられるように、第一のポリ尿素化合物を選択することによって、上記は実施される。第一のポリ尿素化合物のコロイド粒子それ自体は好ましくは異方性であることができる、すなわちこれは(本明細書に添付された図2および3によって例示されるように)明瞭な長軸および該軸に直角の方向にこれよりはるかに小さい寸法(以後、幅と呼ばれる。)を有する。このような実施態様または他様では、これらのコロイド粒子が200nm未満、より好ましくは100nm未満、最も好ましくは50nm未満の幅を有することが好ましい。
【0024】
これらのコロイド粒子の幅はその視認性を決定する、すなわち、このような低い幅においては、該粒子を含んでいるコーティング組成物中でこれらは透明でありおよび/または目に見えないだろう。さらにその上、第二のポリ尿素化合物の視認性は、それを含んでいるコーティング組成物中で、異方性の第一のポリ尿素化合物上でのそれの核生成からもたらされるモルホロジーによって軽減される。同様に、第一のポリ尿素化合物の透明性は、本発明に従う第二のポリ尿素化合物の導入後も維持されることができる。
【0025】
本発明のさらに好まれる実施態様に従うと、第一および第二のポリ尿素化合物は、これらが同等の条件下に製造されたならば、第一のポリ尿素化合物は第二のポリ尿素化合物よりも低い融点を有するだろうという点において特性付けられる。第二のポリ尿素化合物の鋳型生成による結晶化は、第一のポリ尿素化合物のより低い溶解温度ならびにコーティング組成物中の侵襲性溶媒および架橋剤に対する第一のポリ尿素化合物のより低い耐性の双方を軽減するように作用する、すなわち、第二のポリ尿素反応生成物の殻は第一のポリ尿素反応生成物の核の溶解に対してある程度の保護を与えることができる。
【0026】
好ましくは、鋳型生成され得られた生成物中の第一のポリ尿素生成物と第二のポリ尿素生成物との(重量)比は5:95超、より好ましくは10:90超、最も好ましくは20:80超である。さらにその上、好ましくは鋳型生成され得られた生成物中の第一のポリ尿素生成物と第二のポリ尿素生成物との(重量)比は95:5未満、より好ましくは90:10未満、最も好ましくは80:20未満である。
【0027】
(第二のアミン/イソシアネート反応段階のみから誘導された)単一のポリ尿素化合物より優れたこのような鋳型生成されたポリ尿素化合物のさらなる利点は、高温流れが改良されて、従来技術のポリ尿素化合物におけるよりも平滑なおよびより光沢のあるコーティング表面がもたらされることである。第一および第二のポリ尿素化合物の間のモルホロジーの差、これらのそれぞれの融点およびこれらが使用される比を微調整することによって、高温流れは調節されることができる。
【0028】
本発明の好まれる実施態様に従うと、第一および第二のポリイソシアネートは同一である。この状況では、したがって第一および第二のポリ尿素化合物は同一のポリイソシアネート構成ブロックを含んでいる。
【0029】
本発明の好まれる実施態様では、(第一のポリ尿素化合物を構成するのに使用される)第一のアミンはキラルアミンを含んでいる。「キラルアミン」の語は、炭素原子に共有結合されたアミンであって、当該炭素原子がキラルであるように3の異なった置換基を有するアミンを意味することが意図される。広い範囲のキラルアミンが原則として用いられることもできる。好ましくは、キラルアミンは、該アミン基の隣の炭素原子上に1の水素原子および2の異なった他の置換基を有するアミンである。さらにその上、キラルアミンが当該第一のアミンとして用いられるときは、該キラルアミンは鏡像体過剰で用意されることが好ましい。
【0030】
原則として、本発明における(第二の反応段階のポリ尿素化合物を構成するのに使用される)第二のアミンとして、広い範囲のアミンが用いられることができる。好適な第二のアミンは、例として脂肪族(置換)アルキルアミン、たとえばシクロヘキシルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミン、もしくは3−メトキシプロピルアミン、または脂肪族(アルキルアリール)アミン、たとえば2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミンおよび3−アミノメチルピリジルアミンである。好ましくは、第二のアミンは、該アミン基の隣の炭素原子上に2の水素原子および1の他の異なった置換基を有するアミンである。
【0031】
本発明は、鋳型生成されたポリ尿素生成物をレオロジー調節剤として使用する方法にも関する。特に、このようなレオロジー調節剤は、接着剤、印刷インク、コーティング、洗剤、紙、板紙、繊維製品、建築材料、エンジニアリングプラスチック、顔料、掘削用流体、または化粧品に用いられることができる。
【0032】
本発明は、さらに鋳型生成されたポリ尿素生成物を垂れ抑制剤(SCA)としてコーティング組成物に使用する方法(コーティング組成物中で該ポリ尿素化合物は適当なバインダー中に分散されることができる。)および該鋳型生成されたポリ尿素化合物をこのような様式で用いるコーティング組成物にも関する。「垂れ抑制」の語句は、本明細書では顔料沈降の現象を包含するようには意図されていない。本発明に従うSCAとして使用される鋳型生成されたポリ尿素化合物は、さらに該組成物の光沢および明度を、とりわけクリアコートについてほとんどあるいは全く減少しない利点を有する。
【0033】
ポリイソシアネートについての接頭辞「ポリ」の使用は、少なくとも2の当該官能基がそれぞれの「ポリ」化合物中に存在することを表す。アミンとポリイソシアネートとの反応の生成物によってポリ尿素生成物が調製されるときは、ニ尿素生成物または三尿素生成物を調製することが好まれることが注記される。キラルのアミンまたはイソシアネートが使用される場合に、得られるポリ尿素反応生成物は必ずしも光学活性ではないことも注記される。
【0034】
ポリイソシアネートは、好ましくは脂肪族、脂環式、アラルキレン、およびアリーレンポリイソシアネートからなる群から、より好ましくは置換または非置換の直鎖脂肪族ポリイソシアネート(およびそのイソシアヌレート、ビウレット、ウレトジオン)、ならびに置換または非置換のアリーレン、アラルキレン、およびシクロヘキシレンポリイソシアネートからなる群から選択される。ポリイソシアネートは、NCO基の間に通常2〜40、好ましくは4〜12の炭素原子を有する。ポリイソシアネートは、好ましくは最大でも4のイソシアネート基、より好ましくは最大でも3のイソシアネート基、最も好ましくは2のイソシアネート基を有する。対称性の脂肪族またはシクロヘキシレンのジイソシアネートを使用することが、さらにより好まれる。ジイソシアネートの好適な例は、好ましくはテトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HMDI)、トランス−シクロヘキシル−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,5−ジメチル(2,4−ω−ジイソシアナトメチル)ベンゼン、1,5−ジメチル(2,4−ω−ジイソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル(2,4−ω−ジイソシアナトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル(2,4−ω−ジイソシアナトメチル)ベンゼン、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートおよびジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)からなる群から選択される。さらに好適なポリイソシアネートは、好ましくはHMDIに基づいたポリイソシアネート、例としてHMDIの縮合誘導体、たとえばウレトジオン、ビウレット、イソシアヌレート(3量体)、および非対称性3量体等からなる群から選択され、これらの多くはDesmodur(商標)NおよびTolonate(商標)HDBおよびTolonate(商標)HDTとして販売され、ならびに「ポリマー状MDI」として知られたポリイソシアネートである。ポリマー状MDIは、典型的には純粋なMDIとMDIのオリゴマーとの混合物である。特に好まれるポリイソシアネートは、HMDI、そのイソシアヌレート3量体、そのビウレット、トランス−シクロヘキシル−1,4−ジイソシアネート、パラおよびメタキシリレンジイソシアネート、ならびにトルエンジイソシアネートからなる群から選択される。最も好ましくはHMDIが選択される。
【0035】
当業者には理解されるように、封止剤が開裂後に本発明に従うレオロジー調節剤の生成を妨げない限り、慣用的に封止されたポリイソシアネートを使用することも可能であり、これは2以上のイソシアネートをインシチューで生成する。本明細書の全体を通して、「ポリイソシアネート」の語は、全てのポリイソシアネートおよびポリイソシアネート生成化合物を表すために使用される。
【0036】
これも当業者には理解されるように、アミンがイソシアネートに、かつイソシアネートがアミンに転化されることができるならば、同じ尿素生成物が逆の様式で造られることができる。このような「逆」合成手順の生成物も、原料物質の入手性の点から不利ではありうるけれども、本発明の範囲の一部とみなされる。
【0037】
本発明の好まれる実施態様に従うと、第一のポリ尿素生成物を調製するために使用される第一のアミンは、モノアミンを含んでいる。具体的な好まれる実施態様では、これらのアミンはキラルであることが好ましい。より好ましくは、該モノアミンは20%超、より好ましくは50%超、最も好ましくは80%超のキラルアミンを含んでいる。
【0038】
キラルアミンの任意の鏡像体混合物が、本発明に従うポリ尿素化合物を造るために使用されることができることが理解されなければならない。キラルアミンが鏡像体のラセミ混合物であっても、良好な結果が得られることさえできる。しかし、(鋳型として使用されるべき)第一のポリ尿素化合物を誘導するのに、キラルアミンが有意に鏡像体過剰で用意されることが好まれる。「鏡像体過剰」の語句は、キラルアミンの双方の鏡像体を含んでいるサンプル中でラセミ物質よりも一方の鏡像体が過剰であることを表すために使用される。鏡像体過剰率はパーセントで表される。ラセミサンプル、すなわち双方の鏡像体の50:50混合物は0%の鏡像体過剰率を有し、鏡像体として純粋なサンプルは100%の鏡像体過剰率を有する。比較的高い過剰率値において最適な結果が通常得られるが、必ずしも100%においてである必要はないことが注記される。鏡像体過剰率は、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%である。
【0039】
好ましくは、1以上の第一のポリイソシアネートを下の一般式(I)

のキラルアミンと反応させることによって、第一のポリ尿素生成物は得られることができ、この式で、RおよびRのそれぞれは、直鎖、環式もしくは分枝鎖の、置換もしくは非置換の、飽和もしくは不飽和のヒドロカルビルまたはヘテロ原子含有基からなる群から独立に選択され、かつ、該アミン中の炭素原子がキラル中心であるように各キラルアミンのRおよびRは異なっている。より好ましくは置換基RおよびRは、(任意的にヘテロ原子を含有する)C〜C25のアルキル、アリール、アラルキルおよびアルケニル基からなる群から独立に選択される。最も好ましくは、Rはメチル基である。置換基のいずれかがヘテロ原子基を含んでいる場合には、該置換基は好ましくはエーテル単位の形をしている。
【0040】
置換基RおよびRは、これらが結合されているキラル炭素Cと一緒に合わせて、4〜8炭素原子を有する置換または非置換の環を形成することができることが、当該環が炭素原子Cにおいて対掌性が維持されるようなものである限り可能である。
【0041】
本発明の好まれる実施態様では、第一のポリ尿素化合物の誘導に使用されるキラルアミンは、アルファ−メチルベンジルアミン(AMBA)またはアミノ酸および誘導体、特にそのエステルを含んでいる。これについての使用に適した活性アミノ酸誘導体(好ましくは、その天然由来の立体配置にあるもの)は、アラニン(Ala)、アミノブチル酸(Abu)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、ホモシステイン(Hcy)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、オルニチン(Orn)、フェニルアラニン(Phe)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、バリン(Val)、これらのエステル誘導体および塩からなる群から選択されることができる。
【0042】
本発明の好まれる実施態様に従うと、第二のポリ尿素化合物を誘導するのに使用されるアミンは、一般式(II)

を有し、この式で、Rは、直鎖もしくは分枝鎖の、置換もしくは非置換の、飽和もしくは不飽和のヒドロカルビルまたはヘテロ原子含有基からなる群から選択される。好ましくは、第二のアミンは、置換または非置換のベンジルアミン、n−アルキルアミン、および芳香族置換基を有するアルキルアミンからなる群から選択される。より好ましくは、第二のアミンはベンジルアミン(BA)、ヘキシルアミン、2−フェネチルアミンおよびアミノメチルピリジン(AMP)を含んでいる。
【0043】
第一のアミンがキラルアミンを含んでいるような実施態様において、第一および第二のポリ尿素化合物のモルホロジー間の差異をはっきりさせる際に、アミンIの置換基RがアミンIIの置換基Rと実質的に同形であるならば、最適な結果が得られることができることが発見された。本明細書で使用される実質的に同形は、置換基RおよびRの大きさが実質的に同じであることを意味する。
【0044】
第一および第二のポリ尿素化合物の生成において、アミノ化合物のアミノ基の数と(生成された)イソシアネート基の数との比は、0.7〜1.5の範囲内にあることができる。好ましくは、該比は約0.9〜1.1である。
【0045】
当業者には明白であるように、各イソシアネート成分および各アミン成分間の反応は、該反応成分を一緒にすることによって任意の自由裁量的に選択された様式で、任意的に高められた温度で実施されることができる。0℃〜150℃の範囲内、より特には20℃〜80℃の範囲内の温度で、該反応は実施されることが好まれる。一般に、反応成分は任意の自由裁量的に選択された様式で一緒にされるけれども、好ましくは各イソシアネート成分は各アミン成分に添加され、所望であればこれは数段階で行われることができる。任意的に、不活性溶媒、たとえば、アセトン、メチルイソブチルケトン、N−メチルピロリドン、ベンゼン、トルエン、キシレン、もしくは脂肪族炭化水素、たとえば石油エーテル、アルコール、および水、もしくはこれらの混合物の存在下に、または最終コーティング配合物のためのバインダーもしくは任意の他のコーティング配合物成分の存在下に、反応は実施されることができる。本明細書で「不活性」の語は、ポリ尿素の生成過程に溶媒が有意に干渉しないことを表し、溶媒が存在するときに生成されるポリ尿素の量が、溶媒が存在しないときに製造された量の少なくとも80%であることを、これは意味する。少量の共反応性成分がこの反応に意図的に用いられて、結晶改質剤として作用すること、より特には沈降後の結晶の大きさまたは得られた結晶のコロイド安定性を変えることも可能である。
【0046】
第一のポリ尿素コロイドの存在下に第二のポリ尿素化合物が順次的に沈降することによって、鋳型生成された化合物は形成される。それによって上記が達成されることができるであろうところのインシチューおよびエックスシチュー(別の場所で)の反応の多数の組み合わせに、当業者は気が付くだろう。これに限定されないが、第一の方法は、第一のポリ尿素化合物がインシチューの成分の反応によって、好ましくはポリマー状バインダー環境の存在下に生成され、第一の反応容器中に沈降され、次にそこへ第二のアミンおよび第二のイソシアネートが添加され、反応され、そしてその生成物が沈降されることができることである。このような実施態様では、第一の析出物が反応容器中に沈降することが許されないことが肝要である。すなわち、本発明に従う多くの微細な第一のポリ尿素化合物は実際には沈降しないだろうが、必要な場合、撹拌またはかき混ぜのような手段によって分散状態に保たれることができる。他の方法では、第一のポリ尿素化合物の溶液が独立に調製され、樹脂環境に付加混合されて、沈降し、段階1の種コロイドを形成することができる。第二のポリ尿素化合物もまた独立に調製され、当該第一のポリ尿素化合物を調製するために使用された経路にかかわらず、段階1のコロイドの存在下に、適当な溶媒中の溶液として付加混合されて、沈降することができる。
【0047】
第一のポリ尿素化合物の結晶化に用いられている環境および条件からのこれらの有意の変化後に、たとえば外部成分(たとえば、樹脂および共溶媒)の添加または温度もしくは粘度を変えることによって、第二のポリ尿素が結晶化することが許されることができることが可能となる。
【0048】
第一および第二のポリ尿素化合物のそれぞれの調製は、任意的にバインダーの存在下に実施されることもでき、第一のポリ尿素化合物がホスト樹脂環境中でコロイドとして調製されることが好まれることは確かである。バインダーとイソシアネートとの混合物をアミン成分と混合することによって、またはイソシアネートをバインダーとアミン成分との混合物と混合することによって、またはバインダーの2の混合物をそれぞれアミン成分およびNCO成分と混合することによって、これは行われることができる。バインダーがアミンあるいはイソシアネートのいずれかと非常に反応性であるならば、該バインダーとその特定の敏感な化合物とは予混合されることができないことは明らかであろう。「非常に反応性」の語句は、本明細書では、アミノ酸誘導体およびイソシアネートがレオロジー調節剤を調製するために混合される前に、該敏感なアミンまたはイソシアネートの30%超がバインダーと反応することを意味する。バッチまたは連続方法で、反応物を激しく撹拌して、任意の好都合な様式で混合操作は実施されることができる。アミン成分がイソシアネートに添加されてもよいし、またはイソシアネートがアミン成分に添加されてもよく、どちらか最も好都合な方である。バインダーが使用され、アミン成分あるいはイソシアネートのいずれかが該バインダーと非常に反応性であるならば、好ましくは該バインダーと最も反応性である化合物が、該バインダーと最も低度に反応性である化合物と該バインダーとの混合物に添加される。
【0049】
本発明の1の好まれる実施態様では、最終コーティング組成物のバインダーまたは硬化成分中で、バインダー分散物が依然、流体として取り扱われることができ、その後に任意的にさらなるバインダー、硬化成分および/または他の(慣用の)添加剤を使用して、コーティング組成物に使用されることができるような低い濃度で、鋳型生成ポリ尿素化合物は製造される。レオロジー調節剤がバインダー中で製造されるときは、適切な撹拌下に20〜80℃の範囲内の温度で好ましくは調製される。
【0050】
鋳型生成された尿素成分をホスト樹脂環境中へと導入する方法は、連続または不連続であることができる。
【0051】
本発明はさらに、上記の鋳型生成されたポリ尿素化合物をレオロジー調節剤として、特にコーティング、接着剤、印刷インク、洗剤、紙、板紙、繊維製品、建築材料、エンジニアリングプラスチック、顔料、掘削用流体、または化粧品に使用する方法に関する。該ポリ尿素化合物の最も重要な用途は、垂れ抑制剤としてコーティング組成物に使用することである。
【0052】
本発明はさらに、バインダーおよび垂れ抑制剤としてのポリ尿素化合物を含んでいるコーティング組成物、または本発明に従う垂れ抑制剤組成物にも関する。該コーティング組成物は、好ましくはポリ尿素化合物(該コーティング組成物の全固形分重量当たり)0.05〜4重量パーセント(%)、より好ましくは0.05〜2重量%を含んでいる。本発明は、本発明に従うコーティング組成物から調製されたコーティングにも関する。これらのコーティングは、垂れ抵抗および光学的外観のより良好な組み合わせを有する。
【0053】
鋳型生成されたポリ尿素化合物、バインダーおよび任意的な他のコーティング組成物成分を混合することによって、コーティング組成物は調製される。好ましくは、バインダー物質中に分散された鋳型生成ポリ尿素化合物を含んでいる垂れ抑制剤組成物のマスターバッチが用いられ、これにさらなる成分が添加されることができる。このようなマスターバッチは、バインダー、溶媒、および(該組成物の全固形分重量当たり)0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜7重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%のポリ尿素化合物を含んでいることができ、該ポリ尿素化合物は該バインダー中に分散されている。バインダー含有量は、好ましくは(該組成物の全重量当たり)50〜80重量%であり、他の助剤、たとえば分散剤を含有することができる。このマスターバッチSCA組成物は、流体として取り扱われることができ、コーティング組成物と容易に混合されることができる。
【0054】
鋳型生成されたポリ尿素化合物は、コーティング組成物に種々の異なった様式でも添加されることができると予想されるけれども、順次反応段階の終了後に混合物が固体様物質として得られるようなイソシアネートおよびアミンの反応物の量で、バインダーは混合されることができ、該固体様物質は上述のマスターバッチとして使用されることができる。第一のポリ尿素化合物をもたらす反応の段階で、バインダーは添加されることができる。あるいは、第二のポリ尿素化合物を生成し、この化合物を第一のポリ尿素化合物上に析出させる反応の段階の前、その間またはその後に、バインダーは添加されることができる。得られた混合物は、バインダー95〜1、好ましくは94〜50、より好ましくは93〜75重量部に対して、レオロジー調節剤5〜99、好ましくは6〜50、より好ましくは7〜25重量部からなることができる。任意的に、さらなる希釈剤または助剤が該混合物に添加されて、マスターバッチが誘導されることができる。
【0055】
本発明に従うチキソトロピー性にされることができるバインダーは、概して任意の自由裁量的に選択されたバインダーであることができる。しかし、好適な例は、ポリエステル、ポリウレタン、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を含み、任意的にスチレンおよび/または1以上の他のモノマー状化合物、たとえば(メタ)アクリルモノマーもしくはアリル化合物と混合されてもよい。バインダー上の官能基は、ヒドロキシル基、酸基、カルバメート基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、反応性エーテル基、(封止された)イソシアネート基、ケト基、アミン基、ヒドラジド基、アリル基および他の不飽和基を含んでいることができる。上述のバインダーは、溶剤または水の溶媒中の溶液または分散物として、溶剤媒体性または水媒体性であることができ、あるいは何らの溶媒なしに供給されることができる。最終コーティング組成物中およびレオロジー調節剤のマスターバッチ中のバインダーは、同じまたは異なった組成であることができる。
【0056】
比較的低度に望まれるけれども、レオロジー調節剤を含んでいるバインダーまたは硬化組成物は、当該レオロジー調節剤の存在下に、またはバインダーまたは硬化化合物ならびにレオロジー調節剤を同時に調製することによって、調製されまたは改質されることもできる。レオロジー調節剤またはレオロジー調節剤の出発物質とバインダーまたは硬化化合物の出発物質とを一緒にし、後続の反応でレオロジー調節剤含有バインダーまたは硬化組成物を生成することに、当業者は何の問題もないだろう。
【0057】
本発明は、さらにバインダーおよび本発明に従うレオロジー調節剤を含んでいるコーティング組成物に関する。レオロジー調節剤が使用されて、コーティング組成物が処方されると、得られたコーティング組成物は、本明細書でチキソトロピー性と呼ばれている改良されたレオロジーを示し、該レオロジー調節剤の分散粒子の大きさおよび屈折率に応じて、不透明な、乳白色のまたは透明でさえある外観を有することができる。
【0058】
任意的に、本発明のコーティング組成物のいずれにも慣用の添加剤が存在することができ、たとえば他の共バインダー、架橋剤、溶媒および/もしくは分散添加剤、顔料分散剤、染料、顔料、ナノ粒子、紫外線硬化添加剤、流れ添加剤、他のレオロジー調節剤、溶媒、および硬化反応促進剤、例として酸性化合物、たとえばp−トルエンスルホン酸またはこれらの封止された生成物である。コーティング組成物は、溶剤媒体性または溶剤なしであってもよい他の慣用のレオロジー調節剤を含んでいてもよい。他の実施態様では、他の慣用のレオロジー調節剤は水に基づいた液状物である。
【0059】
任意の所望の様式で、たとえばロール掛け法、エアまたは静電スプレー法、刷毛塗り法、散布法、キャスティング法および浸漬法によって、チキソトロピー性コーティング組成物は基体に施与されることができる。
【0060】
レオロジーが変えられる程度は、とりわけ鋳型生成されたポリ尿素化合物の割合および性質ならびに組成物の成分に左右される。概して、組成物の全重量当たり、好ましくは少なくとも0.01%、より好ましくは少なくとも0.05%、さらにより好ましくは少なくとも0.10%、最も好ましくは少なくとも0.15%、かつ、好ましくは最大でも30%、より好ましくは最大でも10%、さらにより好ましくは最大でも3%、最も好ましくは最大でも1.5%の量でレオロジー調節剤を用いることによって、チキソトロピー性の所望の程度は得られることができる。
【0061】
本発明に従うチキソトロピー性組成物は、極性および/または非極性の溶媒を含有してもよい。好ましくは、室温のみならずチキソトロピー性が崩壊する限度以下の高められた温度でもチキソトロピー性は存在し、その結果、本発明に従うチキソトロピー性組成物は、室温での使用に、およびたとえば25℃〜250℃の範囲内で、好ましくは165℃未満で2〜120分間、塗料を焼き付ける(硬化する)のに適する。
【0062】
すべての種類の熱可塑性および架橋性コーティング配合物にレオロジー調節剤は使用されることができ、好ましくはポリオール−イソシアネート硬化(たとえば、全ての封止されたイソシアネート、およびOH官能基がカルバメート基において交換されることができるCylink 2000(商標Cytec)のような化合物)、ホルムアルデヒドに基づいた架橋剤によるポリオール硬化(たとえば、普通に使用されるメラミンホルムアルデヒドのタイプ)、ホルムアルデヒドに基づいた架橋剤によるポリカルバメート、イソシアネートによる立体障害アミン(たとえば、Desmophen(商標)NH 1220、Desmophen(商標)NH 1420、およびDesmophen(商標)NH 1521)、イソシアネートによるチオール、(メタ)アクリロイルに基づいたコーティング組成物、(酸、酸無水物またはアミンを架橋剤として使用する)エポキシ硬化性コーティング組成物、ならびにこれらの化学反応の1以上を組み合わせた任意の系に基づいたコーティング組成物に使用され、該これらの化学反応の1以上を組み合わせた任意の系は混成硬化性コーティング組成物(たとえば、OH−NCO硬化系に組み込まれたアクリロイルに基づいた系)とも呼ばれる。本発明のレオロジー調節剤と組み合わされて使用されることができる他の架橋化学反応は、ケト官能性バインダー、またはアセトアセトキシ官能性バインダー、または(たとえば、不飽和ポリエステルを使用する)酸化機構によってもしくは熱ラジカル開始剤、光開始系、もしくは高エネルギー放射によって誘起されるラジカル機構によって硬化することができるバインダーに基づいている。
【0063】
本発明の好まれる実施態様に従うと、鋳型生成されたポリ尿素化合物(チキソトロープ剤)、バインダーおよび/または溶媒を含んでいるコーティング組成物を硬化する方法は、硬化温度(T硬化)が当該チキソトロープ剤の内部に含まれている第一のポリ尿素反応生成物の溶解温度よりも高い(T硬化>Tm1)が、当該チキソトロープ剤の内部に含まれている第二のポリ尿素反応生成物の溶解温度よりも低いように(T硬化<Tm2)選択された硬化温度まで当該組成物を加熱することを含む。
【0064】
コーティング用途の他に、本発明のレオロジー調節剤が使用されることができる他の用途は、接着剤、印刷インク、たとえばスクリーン印刷用途または防曇用途における印刷インク、洗剤および洗浄用途、紙および板紙産業、繊維製品、皮革、およびカーペット用途、建築材料、顔料組成物、採掘および化粧品である。
【0065】
実施例
【0066】
本発明の生成物の実施例および比較例がこれから、例示の目的のためのみに、かつ本発明を限定することなく記載される。実施例および比較例は添付図を参照して記載される。
【0067】
実施例および比較例に引用されている化合物は、以下の通りポリ尿素化合物の製造に普通に使用される工業的に入手可能な化合物と認識される。
【0068】
Setalux(商標)、Setal(商標)およびSetamine(商標)の配合物は、全てNuplex Resins社から入手可能であり、ここで、i)Setal(商標)166 SS−80はブチルアセテート/o−キシレン中ポリエステルポリオール80%を含んでいる。ii)Setalux(商標)1715 VX−7はSolvesso 100/o−キシレン中飽和ポリエステル樹脂74%を含んでいる。iii)Setalux(商標)1767 VV−65はSolvesso 100中アクリルポリオール67%を含んでいる。iv)Setalux(商標)1757 VX−70はSolvesso 100中熱硬化性ヒドロキシル化アクリルコポリマー70%を含んでいる。v)Setalux(商標)1760 VB−64はSolvesso 100/n−ブタノール中熱硬化性ヒドロキシル化アクリルコポリマー64%を含んでいる。vi)Setalux(商標)8503 SS−60はブチルアセテート中熱硬化性エポキシ官能性アクリル60%を含んでいる。vii)Setamine(商標)US138はブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を含んでいる。
Solvesso(商標)配合物は、ExxonMobil Chemicals社から入手可能な芳香族炭化水素である。
Cymel(商標)303は、Cytec Industries社から入手可能なメチル化メラミン樹脂である。
Nacure(商標)5225は、King Industries U.S.A.社から入手可能なイソプロパノール(IPA)中のドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)溶液である。
Tolonate(商標)は、Rhodia社から入手可能なイソシアネート架橋剤である。
(上記の商標の登録は了知され、その故に上付き文字TMは以後省略される。)
【0069】
さらに、本明細書において以下の一般的な省略形が利用される。
HDI: ヘキサメチレンジイソシアネート
AMBA: アルファ(α−)メチルベンジルアミン
BA: ベンジルアミン
L−alabu: L−アラニンブチルエステル
【0070】
接頭辞R−、S−(本明細書においてはアミンに用いられる。)およびL−(本明細書においてはアミノ酸に用いられる。)は、立体中心の命名法におけるこれらの通常の意味に従って使用される。
【0071】
配合物の調製
【0072】
下記の実施例および比較例では、ポリオールバインダーの存在下にポリイソシアネートとモノアミンとを反応させることによって、コーティング組成物のための種々の垂れ抑制剤(以降、ポリオールSCA混合物と呼ばれる。)が調製された。
【0073】
適切なポリオールSCA混合物に、ある量の同じ種類の非改質ポリオールと、ある量のSetamine US138とを、乾燥重量比(ポリオール/メラミン架橋剤)70/30でブレンドすることによって、1成分(1K)ポリオール配合物が調製され、さらにSolvesso 100で希釈されて、700mPa・秒の高せん断粘度を有する配合物とされた。これは、スプレーされ基体に到達する塗料に典型的であると推定される粘度のレベルである。全乾燥重量当たりの、使用されたアミンおよびイソシアネートの量に、報告されたSCAの量は基づいている。
【0074】
適切なポリオールSCA混合物に、ある量の同じ種類の非改質ポリオールと、ある量のTolonate HDTイソシアネート架橋剤とを、約1のOH−NCOの化学量論を得るための比でブレンドすることによって、ポリオール2K配合物が調製された。この混合物はブチルアセテートでさらに希釈されて、700mPa・秒の高せん断粘度が得られた。報告されたSCAの量は、全乾燥重量に基づいたものである。
【0075】
SCA改質された、適切な量のエポキシ官能性樹脂に、ある量の非改質の同じエポキシ官能性樹脂と、欧州特許出願公開第0275138号明細書(この開示は本明細書に取り込まれる。)の調製Cに従って調製された三酸溶液とを、酸基およびエポキシ基の1:1の化学量論を得るようにブレンドすることによって、エポキシ酸配合物が調製された。この配合物はブチルアセテートでさらに希釈されて、700mPa・秒の高せん断粘度が得られた。
【0076】
典型的な厚さの垂直な濡れ膜への重力の効果をシミュレートする、0.5Paの一定せん断応力における、存在する全てのレオロジー構造を破壊するための短い高せん断処理後に、応力が制御されるレオメータで室温において、コンプライアンス測定は実施された。室温における濡れ膜によって示される流れの累積量に、該コンプライアンスは比例すると考えられる。
【0077】
以降の全ての実施例について(第二段階のポリ尿素化合物のみからなる比較実施例とははっきり区別されて)、得られたコーティング配合物ならびにそれからもたらされるコーティングは、光学的に透明でありヘイズがなかった。本発明に従って調製された物質の重要な利点を、この側面は示している。
【0078】
〔実施例1〕
Setal 166 SS−80中の(90:10)S/R−AMBA+HDI/BA+HDI(1:1)
Setal 166 SS−80の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミン0.06g(0.5ミリモル)およびS−(−)−α−メチルベンジルアミン0.58g(4.8ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.46g(2.7ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後にベンジルアミン0.60g(5.6ミリモル)が添加された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.49g(2.91ミリモル)とブチルアセテート0.49gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0079】
[実施例1A]
【0080】
Setal 166 SS−80中の(90:10)S/R−AMBA+HDI/BA+HDI(1:1)
Setal 166 SS−80の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミン0.06g(0.50ミリモル)およびS−(−)−α−メチルベンジルアミン0.58g(4.8ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.46g(2.7ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、5分間後にベンジルアミン0.60g(5.6ミリモル)が添加された。混合物が1000rpmでさらに2分間撹拌された。撹拌速度が1500rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.50g(2.97ミリモル)が注射器を使用して添加された。この混合物が1000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0081】
[比較例A]
【0082】
Setal 166 SS−80中のBA+HDI
Setal 166 SS−80の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで5分間使用して、ベンジルアミン1.22g(11.4ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.99g(5.9ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物は4000rpmでさらに30秒間撹拌され、その性状は濁っていた。
【0083】
[比較例2]
【0084】
Setal 166 SS−80中の(90:10)S/R−AMBA+HDI
Setal 166 SS−80の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで5分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミン0.14g(1.15ミリモル)およびS−(−)−アルファメチルベンジルアミン1.16g(9.6ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.93g(5.5ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0085】
上記のように、Setal 166およびTolonate HDT(イソシアネート架橋剤)に基づいて、実施例1ならびに比較例1および2の物質から配合物(2K)が造られた。種々の実施例(比較例)について様々のレベルのSCAを有する配合物で測定されたコンプライアンスが図1に示される。比較例1から誘導された配合物は図1に含まれていない。何故ならば、これはかなり低度にレオロジー的に活性であることが見出されたからである。すなわち、SCA1.2%のレベルにおいてさえ、90Pa−1超のコンプライアンスが認められる。図1の最も重要な特徴は、実施例1に基づきかつ鋳型生成されたSCAを用いている配合物のコンプライアンス値が、SCAの全てのレベルにおいて、純粋なSAMBA−HDIのそれよりもなお一層低いことである。
【0086】
実施例1に記載された「鋳型生成された」SCAのモルホロジーは、図2に示される。これは、形態および微細さにおいてSAMBA−HDIのそれら(図3)に近接して対応し、BA−HDIのそれら(図4)には、この後者の化合物が該尿素物質の半分を構成するけれども、対応しないことが判る。明らかに、予形成されたSAMBA−HDI上へとBA−HDIを成長させ、このようにしてBA−HDI上へとSAMBA−HDIの好ましいモルホロジーを移転することに、本発明者らは成功した。
【0087】
図2〜4に示されたこのモルホロジーは、SCAを含有するサンプルの透明性に影響を与える。BA−HDI配合物は室温で濁った特性を有するけれども、鋳型生成された物質ははるかに大きい透明性を有し、SAMBA−HDIの比較例に似ている。全てのSCA粒子が溶解または反応によって消失するわけではない条件下に該配合物が硬化されるならば、この透明性は強力な利点でありうる。
【0088】
実施例1からの2段階SCAのさらなる効果は図5に示され、この図においては、レオメータ中で室温において0.5Paのせん断応力下に5分間、構造の形成が許された後に、実施例1および比較例1〜3から誘導された配合物の粘度が温度の関数として測定されて、硬化オーブン中の効果が模擬された。比較例1はその構造を高温度まで維持する一方、比較例2は、おそらくはそのより低い融点の故に、加熱工程のより早い段階でその有効性を失うことを、図5は示す。鋳型生成されたSAMBA−HDI/BA−HDIの温度挙動は、その構造が中間の温度まで実質的に維持される点で異なっている。鋳型生成されたポリ尿素SCAのレオロジー構造の実効的な構造崩壊の温度を微調整することが可能であることを、この効果は示す。
【0089】
〔実施例2〕
Setal 166 SS−80中の(90/10)S/R−AMBA+HDI/BA+HDI(1:1)
Setal 166 SS−80の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミン0.06g(0.5ミリモル)およびS−(−)−α−メチルベンジルアミン0.58g(4.8ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.46g(2.7ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後にベンジルアミン0.60g(5.6ミリモル)が添加された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.49g(2.9ミリモル)とブチルアセテート0.49gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0090】
〔実施例3〕
Setal 166 SS−80中の(90/10)S/R−AMBA+HDI/BA+HDI(1:2)
Setal 166 SS−80の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミン0.04g(0.33ミリモル)およびS−(−)−α−メチルベンジルアミン0.38g(3.1ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.30g(1.8ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後にベンジルアミン0.81g(7.6ミリモル)が添加された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.65g(3.9ミリモル)とブチルアセテート0.65gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0091】
〔実施例4〕
Setal 166 SS−80中の(90/10)S/R−AMBA+HDI/BA+HDI(1:3)
Setal 166 SS−80の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミン0.03g(0.25ミリモル)およびS−(−)−α−メチルベンジルアミン0.29g(2.4ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.23g(1.4ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後にベンジルアミン0.91g(8.5ミリモル)が添加された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.74g(4.4ミリモル)とブチルアセテート0.74gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0092】
実施例2〜4からの物質(これらは、使用されたSAMBA−HDI物質とこの上へと成長されたBA−HDI物質との相対量において様々である。)が、2Kポリオール−イソシアネートコーティングとして配合され、これらのそれぞれのコンプライアンスがせん断応力0.5Paにおいて記録された。該値が表1に示され、図1に示されたものと比較されることができる。2段階方法の手順の詳細において異なるのみであるので、実施例1aおよび2は同等であるとみなされることができる。すなわち、双方は非常に低いコンプライアンス値を示す。
【表1】

【0093】
SAMBA−HDI核生成尿素の量が全SCAの25%まで下げられても、フラッシュオフコンプライアンスは非常に低いままであることが判る。
【0094】
〔実施例5〕
Setalux 1715 VX−74中の(90/10)S/R−AMBA+HDI/BA+HDI(1:1)
Setalux 1715 VX−74の125.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミン0.07g(0.6ミリモル)およびS−(−)−α−メチルベンジルアミン0.67g(5.5ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.53g(3.15ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後にベンジルアミン0.70g(6.5ミリモル)が添加された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.56g(3.3ミリモル)とブチルアセテート0.56gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0095】
[比較例3]
【0096】
Setalux 1715 VX−74中のS−AMBA+HDI
Setalux 1715 VX−74の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用してS−(−)−α−メチルベンジルアミン1.19g(9.82ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.85g(5.1ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0097】
[比較例4]
【0098】
Setalux 1715 VX−74中のBA+HDI
Setalux 1715 VX−74の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用してベンジルアミン1.13g(10.5ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.92g(5.5ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌され、その性状は濁っていた。
【0099】
実施例5ならびに比較例3および4のSetalux 1715樹脂とSetamine US138とに基づいて、配合物(「1K」)が調製され、コンプライアンス実験において試験された。結果が表2に示される。
【表2】

【0100】
このような1K配合物においても、実施例5からの鋳型生成されたSCAは、別々に調製されたいずれの成分よりもフラッシュオフコンプライアンスを下げるのに効果的である。
【0101】
〔実施例6〕
Setalux 1767 VV−65中のS−AMBA+HDI/BA+HDI(1:1)
Setalux 1767 VX−65の600gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで5分間使用して、S−(−)−α−メチルベンジルアミン4.40g(36.3ミリモル)と混合された。温度がこの5分間に40℃まで上げられた。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート3.14g(18.7ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに1分30秒間撹拌された。それから撹拌速度が1500rpmまで下げられ、5分間後にベンジルアミン4.18g(39.0ミリモル)が添加された。これは1500rpmで2分30秒間混合された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート3.38g(20.1ミリモル)とSolvesso 100の3.4gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに2分間撹拌された。
【0102】
[比較例5]
【0103】
Setalux 1767 VV−65中3.75%のS−AMBA+HDI
Setalux 1767 VX−65の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、S−(−)−α−メチルベンジルアミン1.49g(12.3ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート1.07g(6.36ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0104】
[比較例6]
【0105】
Setalux 1767 VV−65中3.75%のBA+HDI
Setalux 1767 VX−65の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、ベンジルアミン1.42g(11.7ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート1.15g(6.8ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌され、これは濁った性状のものであった。
【0106】
上記の実施例および比較例を使用して、Setalux 1767に基づいた2K(NCO含有)配合物が調製された。その結果が、フラッシュオフコンプライアンスに関して表3に示され、個々の成分の双方と比較して鋳型生成されたSCAの高められた活性を示している。
【表3】

【0107】
〔実施例7〕
Setalux 1757 VV−70中の(90/10)S/R−AMBA+HDI/BA+HDI(1:1)
Setalux 1757 VV−70の125.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミン0.07g(0.58ミリモル)およびS−(−)−α−メチルベンジルアミン0.63g(5.2ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.50g(3.0ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後にベンジルアミン0.66g(6.2ミリモル)が添加された。混合物は1000rpmでさらに2分間撹拌された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.53g(3.15ミリモル)とブチルアセテート0.53gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに60秒間撹拌された。
【0108】
[比較例7]
【0109】
Setalux 1757 VV−70中のS−AMBA+HDI
Setalux 1757 VV−70の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、S−(−)−α−メチルベンジルアミン1.13g(9.32ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.82g(4.88ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0110】
[比較例8]
【0111】
Setalux 1757 VV−70中2.66%のBA+HDI
Setalux 1757 VV−70の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、ベンジルアミン1.06g(9.9ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.87g(5.2ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌され、これは濁った性状のものであった。
【0112】
上記の実施例および比較例を使用して、Setalux 1757に基づいた1K(Setamine US 138メラミンホルムアルデヒド架橋剤含有)配合物が調製された。その結果が、フラッシュオフコンプライアンスに関して表4に示され、個々の成分の双方と比較して鋳型生成されたSCAの高められた活性を示している。
【表4】

【0113】
いわゆる引き波装置を使用して、同じ配合物が試験された。この試験では、当初の表面プロファイルの重力の引力による変位量が、時間の関数として追跡されることができる。これらの実験は蒸発の影響を取り込み、ならびに室温における現実的なフラッシュオフ時間を模擬し、加熱サイクルによって追跡される。フラッシュオフ期間(5分間)中ならびに加熱の間(30℃/分の初期速度で140℃まで)の双方において、波の変位量は測定されることができる。その結果が図6に示され、鋳型生成された組み合わせ物質はフラッシュオフの間、低い流れ性を示し、その流れはSAMBA−HDIのそれよりも幾分遅くオーブン中で始まるが、そのオーブン流れの累積量は2の比較例のそれらの中間であることを、これは表す。本発明に従う物質、および使用された2の物質の比によって、硬化工程の最終段階における流れの量を調節することは可能である。硬化工程の最終段階における流れの量のこの調節は、可能な最良の外観を得るのに役立つと考えられる。
【0114】
〔実施例8〕
Setalux 1760 VB−64中3.75%のS−AMBA+HDI/AMP+HDI(1:1)
Setalux 1760 VB−64の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、S−(−)−α−メチルベンジルアミン0.72g(5.9ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.52g(3.1ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後に3−(アミノメチル)ピリジン(AMP)0.69g(6.4ミリモル)が添加された。混合物は1000rpmでさらに2分間撹拌された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.55g(3.3ミリモル)とSolvesso 100の1.65gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0115】
[比較例9]
【0116】
Setalux 1760 VB−64中3.75%のAMP+HDI
Setalux 1760 VB−64の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、3−(アミノメチル)ピリジン(AMP)1.40g(13.0ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート1.12g(6.7ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌され、その性状は濁っていた。
【0117】
[比較例10]
【0118】
Setalux 1760 VB−64中3.75%のS−AMBA+HDI
Setalux 1760 VB−64の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、S−(−)−α−メチルベンジルアミン1.47g(12.1ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート1.05g(6.2ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0119】
上記の物質のSetalux 1760に基づいた1K配合物が調製され、コンプライアンスに関して比較された。その結果が表5に示され、鋳型生成された組み合わせSCAは、いずれの個別の成分と比較してもはるかにより効果的であることが、これから推定されることができる。
【表5】

【0120】
〔実施例9〕
Setalux 1760 VB−64中3.75%のL−Alabu+HDI/BA+HDI(1:1)
Setalux 1760 VB−64の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、L−アラニンブチルエステル0.77g(5.3ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.46g(2.7ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後にベンジルアミン0.69g(6.4ミリモル)が添加された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.55g(3.3ミリモル)とSolvesso 100の1.65gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0121】
[比較例11]
【0122】
Setalux 1760 VB−64中3.75%のL−Alabu+HDI
Setalux 1760 VB−64の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、L−アラニンブチルエステル1.58g(10.9ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.94g(5.6ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0123】
[比較例12]
【0124】
Setalux 1760 VB−64中3.75%のBA+HDI
Setalux 1760 VB−64の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、ベンジルアミン1.40g(13.1ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート1.13g(6.7ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌され、その性状は濁っていた。
【0125】
上で調製された物質のSetalux 1760に基づいた1K配合物が調製され、コンプライアンスに関して比較された。その結果が表6に示され、鋳型生成された組み合わせSCAは、とりわけBA−HDIの比較例と比較すると低いコンプライアンスをもたらすのに有効であることが、これから推定されることができる。該コンプライアンスはSAMBA−HDIの比較例のそれよりも幾分高いが、該物質の量の半分のみが使用されている事実に基づいて予測され得たほど多くだけ高いわけではない。
【表6】

【0126】
〔実施例10〕
Setalux 8503 SS−60中のS−AMBA+HDI/BA+HDI(1:1)
Setalux 8503 SS−60の650.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで5分間使用して、S−(−)−α−メチルベンジルアミン4.40g(36.3ミリモル)と混合された。撹拌速度が3000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート3.14g(18.7ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が3000rpmでさらに10分間撹拌された。この10分間の後に1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート3.38g(20.1ミリモル)が添加された。ベンジルアミン4.18g(39.0ミリモル)とブチルアセテート8.36gとの混合物が、ポンプを使用して12分間で反応器に添加された。この混合物が3000rpmでさらに5分間撹拌された。
【0127】
[比較例13]
【0128】
Setalux 8503 SS−60中のS−AMBA+HDI
Setalux 8503 SS−60の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、S−(−)−α−メチルベンジルアミン0.97g(8.0ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.69g(4.1ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。
【0129】
[比較例14]
【0130】
Setalux 8503 SS−60中のBA+HDI
Setalux 8503 SS−60の100.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、ベンジルアミン0.92g(8.6ミリモル)と混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.74g(4.4ミリモル)が注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌され、その性状は濁っていた。
【0131】
これらの物質は、上記の三酸架橋剤の溶液を配合された。比較例14に基づいた配合物はニュートン性流体の清澄な液体をもたらし、これはSCA粒子が溶解したことを示している。下の表7は比較例15および実施例10のコンプライアンス値の比較を詳しく示しており、慣用のHDI−BAのSCAより優れた鋳型生成されたSCAの利点をさらに例証するのに役立つ。
【表7】

【0132】
〔実施例11〕
引き波試験
【0133】
以下のように、AMBA(90/10のS/R)−HDIの核の第一の種に、第二段階で、核対殻の2の異なった比[1:1および3:1]でBA−HDIの殻が加えられたものに基づいて鋳型生成された生成物と、慣用のBA−HDOの、鋳型生成されていないSCAに基づいた配合物とを比較する、二次的な「引き波」実験が実施された。
【0134】
a)鋳型生成1:1のサンプル
Setalux 1757 VV−70の125.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミン0.07gおよびS−(−)−α−メチルベンジルアミン0.60gと混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.53gが注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後にベンジルアミン0.66gが添加された。混合物は1000rpmでさらに2分間撹拌された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.53gとSolvesso 100の0.53gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに60秒間撹拌された。
【0135】
b)鋳型生成3:1のサンプル
Setalux 1757 VV−70の125.0gが反応器に加えられ、回転円盤溶解機を1500rpmで2分間使用して、R−(+)−α−メチルベンジルアミンとS−(−)−α−メチルベンジルアミンとの9:1の混合物1.07gと混合された。撹拌速度が4000rpmまで上げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.78gが注射器を使用して添加された。混合物が4000rpmでさらに30秒間撹拌された。撹拌速度が1000rpmまで下げられ、2分間後にベンジルアミン0.35gが添加された。混合物は1000rpmでさらに2分間撹拌された。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート0.27gとSolvesso 100の0.73gとの混合物が、ポンプを使用して15分間で反応器に添加された。この混合物が1000rpmでさらに60秒間撹拌された。
【0136】
サンプルa)およびb)と記載された物質のそれぞれについて、(改質されていないSetalux 1757、およびSetamine US138架橋剤(全固形分当たり30重量%)を使用して)2の配合物が調製され、該配合物はその中に全固形分当たり0.6または0.8重量%の濃度で垂れ抑制剤が存在することを特徴とする。
【0137】
c)比較配合物
Setalux(商標)91795は、Setalux 1795中にHDI−BA SCAを含有する(Nuplex Resins社から)市販の配合物である。Setalux(商標)1760および架橋剤としてのSetamine US138(全固形分当たり25重量%)およびCylink 2000(商標)(全固形分当たり5重量%)に基づいて、全固形分当たり1.75重量%の配合物(「1K」)が調製された。1.75重量%のSCAレベルは、同じような垂れ抵抗を得るために選択された。
【0138】
上記の全5配合物は固形分含有量61%まで希釈され、表面に凹凸のある基体上に40ミクロンの膜厚さで施与された。5分間のフラッシュオフ時間が加えられ、その後140℃まで加熱された。そのまま伝えられた基体の粗度が、該膜の硬化の間、「引き波」装置で監視された。該「引き波」装置は、Bosmaら、「垂れ/平滑化のバランスの最適化における垂れ抑制剤の役割およびこれを検討するための新規で強力な手段」、Progress in Organic Coatings誌、2005年、第55巻、p.97〜104に記載され、この開示内容は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0139】
この監視の結果が図7に示される。第一に、比較配合物は、そのまま伝えられた粗度の何らの平滑化も示さず、鋳型生成されたサンプルについてはそれが認められることが判る。重要なことには(かつ、鋳型生成されたサンプルに関して)、膜の収縮後に増大する、そのまま伝えられた粗度がこの場合にもかなりの程度まで平滑化され、かつこの効果が、「より薄い」HDI−BA尿素の殻からなる鋳型生成された物質についてより大きいことも判る。したがって、後期段階に発生する流れの量が鋳型生成比によって調節されることができることを、この実施例は示す。
【0140】
〔実施例12〕
偽塑性試験
【0141】
以下のサンプルが調製された。
【0142】
a)SAMBA−HDIのサンプル
実験から得たカルバメート官能性樹脂100グラムが反応器に加えられた。S−AMBAの1.15グラムが添加され、高せん断混合の2分間、混合された。それからHDIの0.81グラムが4000rpmで添加された。非常に粘稠なペーストが得られた。
【0143】
HDI−BAのサンプル
実験から得たカルバメート官能性樹脂100グラムが反応器に加えられた。ベンジルアミンの1.57グラムが添加され、高せん断混合の2分間、混合された。それからHDIの1.27グラムが4000rpmで添加された。濁った粘稠なペーストが得られた。
【0144】
鋳型生成1:1のサンプル
実験から得たカルバメート官能性樹脂100グラムが反応器に加えられた。S−AMBAの0.58グラムが添加され、高せん断混合の2分間、混合された。それからHDIの0.40グラムが4000rpmで添加された。5分間後にベンジルアミンの0.54グラムが添加され、それに続いてHDI/ブチルアセテート混合物(1.2グラム中0.44グラム)が6分間にわたって添加された。ペーストが得られた。
【0145】
鋳型生成3:1のサンプル
実験から得たカルバメート官能性樹脂100グラムが反応器に加えられた。S−AMBAの0.86グラムが添加され、高せん断混合の2分間、混合された。それからHDIの0.63グラムが4000rpmで添加された。5分間後にベンジルアミンの0.29グラムが添加され、それに続いてHDI/ブチルアセテート混合物(0.71グラム中0.22グラム)が6分間にわたって添加された。ペーストが得られた。
【0146】
全固形分当たりSCA1重量%を含有するようにこれらの樹脂サンプルに基づいて、1K塗料が配合された。架橋剤としてCymel 303(商標)を80/20固形分重量比で、該カルバメート樹脂は配合され、Nacure 5255[(固形分当たりの固形分)1%]が触媒として添加された。その後、該塗料は0.8Pa・秒の高せん断粘度まで希釈された。
【0147】
新たに造られたものだけでなくて、4週間貯蔵後のものについても、これらの1K配合物のレオロジーが、応力が制御されるレオメータを用いて試験された。流れ曲線が記録され、偽塑性(500Paおよび1Paのせん断応力における粘度の比と本明細書では定義される。)が記録され比較された。図8から、SAMBA−HDI垂れ抑制剤(SCA)は造り立てのときは非常に有効であるが、4週間貯蔵後は激しく劣化することが判る。したがって、この1K塗料中ではこのSCAは有用ではないだろう。慣用のHDI−BAは長期間にわたってより良好な安定性を示すが、非常に有効というわけではない。鋳型生成されたSCAについて得られたサンプルは高い効率および良好な貯蔵安定性を合わせ持ち、これはおそらくはSCA粒子上のHDI−BAの皮の保護的性質の故である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明に従う鋳型生成されたポリ尿素生成物ならびに単一のポリ尿素化合物および2のこのような化合物のブレンドの(0.5Paにおいて100秒間後の)コンプライアンスの比較を示すグラフである。
【図5】本発明に従う鋳型生成されたポリ尿素生成物の粘度に対する温度の影響を示し、これを、鋳型生成されないでブレンドされたポリ尿素化合物への対応する影響と比較するグラフである。
【図6】本発明に従って調製された1のコーティングおよび2の従来技術のコーティングの当初表面プロファイルの変位量が時間の関数として追跡される、いわゆる「波試験」の結果を示す図である。
【図7】本発明に従って調製された(別々に鋳型生成された)4のコーティングおよび1の従来技術のコーティングの当初表面プロファイルの変位量が時間の関数として追跡される、さらなる引き波試験の結果を示す図である。
【図8】三つの配合物の、造りたておよび所与の期間エージングされたときの両方の偽塑性を比較する図であって、これらのうち2の配合物が本発明に従って調製されたポリ尿素生成物を含んでおり、三番目が従来技術で知られたポリ尿素化合物を用いて調製されたものである図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のポリイソシアネートと第一のアミンとの第一のポリ尿素反応の生成物、および該第一の反応生成物のコロイド粒子の存在下に沈降された、該第一のポリ尿素反応生成物とは異なる、第二のポリイソシアネートと第二のアミンとの第二のポリ尿素反応の生成物を含んでいるチキソトロープ剤。
【請求項2】
第一のポリ尿素生成物の当該コロイド粒子が異方性であり、好ましくはその幅よりも実質的に大きい長さを有する、請求項1に従うチキソトロープ剤。
【請求項3】
第一のポリ尿素生成物の当該コロイド粒子が、200nm未満、より好ましくは100nm未満、最も好ましくは50nm未満の幅を有する、請求項1または2に従うチキソトロープ剤。
【請求項4】
当該第一のポリ尿素化合物と当該第二のポリ尿素化合物との重量比が20:80〜80:20の範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項5】
第一のポリイソシアネートおよび/または第一のアミンが、第二のポリイソシアネートおよび/または第二のアミンと異なっている、請求項1〜4のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項6】
当該第一および/または第二のポリイソシアネートが、置換または非置換の直鎖脂肪族ポリイソシアネート、ならびに置換または非置換のアリーレン、アラルキレン、およびシクロヘキシレンポリイソシアネートからなる群から選択されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項7】
当該第一および第二のポリイソシアネートが同一である、請求項1〜6のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項8】
当該第一のアミンがモノアミンを含んでいる、請求項1〜7のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項9】
当該第一のアミンがキラルアミンを含んでいる、請求項1〜8のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項10】
当該第一のアミンが50%超、好ましくは80%超のキラルアミンを含んでいるモノアミンである、請求項8または9に従うチキソトロープ剤。
【請求項11】
当該キラルアミンが式(I)

(この式で、RおよびRのそれぞれは、直鎖もしくは分枝鎖の、置換もしくは非置換の、飽和もしくは不飽和のヒドロカルビルまたはヘテロ原子含有基からなる群から独立に選択され、かつ該アミン中の炭素原子がキラル中心であるようにRおよびRは異なっている。)
によって定義されたものである、請求項1〜10のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項12】
がメチル基である、請求項11に従うチキソトロープ剤。
【請求項13】
当該キラルアミンが25%超、より好ましくは50%超、最も好ましくは75%超の鏡像体過剰で用意されたものである、請求項7〜11のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項14】
当該1以上の第二のアミンが非キラルモノアミンを含んでいる、請求項1〜13のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項15】
当該非キラルアミンが式(II)

(この式で、Rは、直鎖もしくは分枝鎖の、置換もしくは非置換の、飽和もしくは不飽和のヒドロカルビルまたはヘテロ原子含有基からなる群から選択される。)
によって定義されたものである、請求項14に従うチキソトロープ剤。
【請求項16】
当該第一のアミンが式(I)によって定義されたキラルアミンを含んでおり、当該第二のアミンが式(II)によって定義された非キラルアミンを含んでおり、かつ当該非キラルアミンのRおよび当該キラルアミンのRが実質的に同形である、請求項15に従うチキソトロープ剤。
【請求項17】
当該第一および第二の反応生成物が同形である、請求項1〜16のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項18】
同等の条件下において、当該第一のポリ尿素反応生成物の溶解温度(Tm1)が、第二のポリ尿素反応生成物の溶解温度(Tm2)よりも低い、請求項1〜17のいずれか1項に従うチキソトロープ剤。
【請求項19】
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とアルファ−メチルベンジルアミン(AMBA)との第一のポリ尿素反応生成物、および当該第一の反応生成物の異方性コロイド粒子の存在下に沈降された、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とベンジルアミン(BA)との第二のポリ尿素反応生成物を含んでおり、当該第一のポリ尿素反応生成物と当該第二のポリ尿素反応生成物との重量比が20:80〜80:20の範囲内にある、請求項1に従うチキソトロープ剤。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に規定されたチキソトロープ剤をレオロジー調節剤として使用する方法。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれか1項に規定されたチキソトロープ剤を、レオロジー調節剤として、コーティング、接着剤、印刷インク、洗剤、紙、板紙、繊維製品、建築材料、エンジニアリングプラスチック、顔料、掘削用流体、または化粧品に使用する方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に規定されたチキソトロープ剤を、垂れ抑制剤としてコーティング組成物に使用する方法。
【請求項23】
バインダ−物質中に分散された請求項1〜19のいずれか1項に従うチキソトロープ剤を含んでいる垂れ抑制剤組成物。
【請求項24】
コーティング組成物の調製においてマスターバッチとして使用される請求項23に従う垂れ抑制剤組成物であって、バインダ−、溶媒、および該組成物の全重量当たり0.5〜7重量%のチキソトロープ剤を含んでいる垂れ抑制剤組成物。
【請求項25】
バインダーと、垂れ抑制剤としての請求項1〜19のいずれか1項に従うチキソトロープ剤とを、または請求項23もしくは24に従う垂れ抑制剤組成物を含んでいるコーティング組成物。
【請求項26】
請求項25に従うコーティング組成物であって、該コーティング組成物の全重量当たり0.05〜4重量パーセントのチキソトロープ剤を含んでいるコーティング組成物。
【請求項27】
請求項25または26に従うコーティング組成物から調製されたコーティング。
【請求項28】
請求項25または26に従うコーティング組成物を硬化する方法であって、硬化温度(T硬化)が第一のポリ尿素反応生成物の溶解温度よりも高い(T硬化>Tm1)が、第二のポリ尿素反応生成物の溶解温度よりも低い(T硬化<Tm2)ように選択されたところの硬化温度に当該組成物を加熱することを含む方法。
【請求項29】
第一のポリイソシアネートと第一のアミンとを反応させることによって得られた第一のポリ尿素反応生成物、および第二のポリイソシアネートと第二のアミン第一の反応生成物とを反応させることによって得られた第二の異なったポリ尿素反応生成物の順次的沈降を含み、第一のポリ尿素生成物の存在下に第二のポリ尿素反応生成物の沈降が起きることを特徴とする、チキソトロープ剤を調製する方法。
【請求項30】
請求項29に従う方法を使用して得られることができるチキソトロープ剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−544074(P2008−544074A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518713(P2008−518713)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006250
【国際公開番号】WO2007/000335
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(505396349)ヌプレクス レジンズ ビー.ブイ. (13)
【Fターム(参考)】