説明

チキンナゲットの製造方法

【課題】ソフトで軽い食感を有し、かつ、健康志向の見地から他の食肉に比較して、脂肪分が少なく比較的安価で且つ、健康的な高蛋白源としての鶏肉を原料とチキンナゲット及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ミキシング工程後の鶏肉ミンチを含むチキンナゲット原料混合物に、薄膜状の細氷を混合し、低温でミキシングしながら調温する調温工程及びフライ工程後のチキンナゲット成形フライ体を冷却し、緩慢凍結する緩慢凍結工程を採用するチキンナゲットの製造方法及びその製造方法によるチキンナゲット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトで、軽い食感を有するチキンナゲット、特に幼児や子供に好まれ、また、健康的な高蛋白源として成人向けとしても適するチキンナゲットの製造方法、及びその製造方法により得られるチキンナゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
チキンナゲットや、チキンナゲット風の揚げ物の製造方法としては、鶏肉、例えば鶏ムネ肉、鶏ササミ肉をミンチし、卵、小麦粉、調味料等と共に混合後成形し、バッター液をつけて油で揚げて製造する方法が一般的に知られている。従来より、チキンナゲットの食感や風味の向上のため、或いは、合わせて栄養や生理活性上の面から種々の改善がなされている。例えば、鶏肉のミンチに、食物繊維60%以上、粒径150μ以下に加工処理した小麦ふすまと、結晶セルロースとをそれぞれ0.1〜20重量%含有するチキンナゲット(例えば、特許文献1参照)や、エンドウの種子から分離した食物繊維澱粉複合体を含有するチキンナゲット(例えば、特許文献2参照)や、つなぎ部と具材部からなる生地を調製し、これを成形、蒸し、衣づけ、フライ、冷凍するナゲット食品の製造法であって、生地中に豆腐と固形脂を含むナゲット食品の製造法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0003】
また、この種の揚げ物食品の食感等を改良するため添加剤を用いるものとして、乳タンパク質濃縮物が0.5〜30重量%添加されてなるチキンナゲット等の加工肉製品(例えば、特許文献4参照)や、アルギン酸エステルを含有させるチキンナゲット等の畜肉等加工品(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0004】
さらに、穀粉、澱粉、水、その他の原材料からなる食品生地を加熱可食化した後、当該食品の最大氷結晶生成帯における品温の平均降下温度が0.01〜0.2℃/Hとなるように継続して前記最大氷結晶生成帯で1日乃至20日間緩慢凍結する冷凍食品の製造方法(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【0005】
また、畜肉の摺身を用いる揚げ物等の製造方法において、摺身混合物を均質化する際、保冷用の氷を添加することが行われている(例えば、特許文献7、特許文献8参照)。
【0006】
【特許文献1】特公平5−33019号公報
【特許文献2】特開2004−105067号公報
【特許文献3】再公表特許2004−034822号公報
【特許文献4】特開平11−103826号公報
【特許文献5】特開2002−281942号公報
【特許文献6】特許第3127382号公報
【特許文献7】特開昭62−25952号公報(第2頁右下欄)
【特許文献8】特公平6−95910号公報(第2頁実施例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ソフトで軽い食感を有し、かつ、健康志向の見地から他の食肉に比較して脂肪分が少なく、比較的安価で且つ健康的な高蛋白源としての鶏肉を原料とするチキンナゲット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ふすまやエンドウの種子から分離した食物繊維や、豆腐などを含有させた従来のチキンナゲットは、食感の向上よりは健康志向をめざしたものであり、チキンナゲットの風味を維持しつつソフトな食感とするには未だ十分ではなく、また乳タンパク濃縮物やアルギン酸エステル等の添加剤を用いているものがあるが、コスト的に高価となる問題があった。本発明者らは、上記の問題点に対応するため、添加剤の種類を変えるより、鶏肉ミンチを主原料とするチキンナゲット原料をミキシングするミキシング工程や、調温工程における温度、撹拌等の各条件、フライ工程、凍結工程における種々の製造条件の面から、チキンナゲットの品質、特に食感の向上について検討した。
【0009】
先ず、フライ(油で揚げた)後のチキンナゲットを冷却後、凍結するに際し、緩慢凍結や急速凍結等を、凍結温度や凍結時間を変えて種々の条件で実験を行った。従来、食品を冷却して凍結する際には、最大氷結晶生成帯において、澱粉のβ化や蛋白質の変性、微生物の生育などに大きく影響することが知られていたので、急速凍結により、前記温度域を速かに通過させるように、冷凍条件を設定していた。前記最大氷結晶生成帯は、その食品の含水率や、溶存成分、その他の要因によりそれぞれ異なるが、大体において−10℃〜0℃の範囲にあることが知られていた。しかし、フライ後のチキンナゲットを急速凍結して得られる製品は、その内部は密で、固いものであり、ソフトな食感を味わうことはできなかった。そこで、フライ後のチキンナゲットを冷却後、中心温度0〜−5℃(庫内温度−10〜−15℃)で緩慢凍結する方法を採用したところ、通常の急速凍結を行って冷凍した製品に比べて、ソフトな食感を有するチキンナゲットが得られた。しかし、この凍結方法によっても、風味やソフトな食感においては充分とはいえないものであった。上記緩慢凍結とは別に、さらに、研究を進め、チキンナゲットの原材料をミキシングする時に氷の投入を行った。その際、氷として従来用いられている保冷用のやや大きい粒状の氷では、製品の組織に大きな孔が形成されソフトな食感とするには不適切であった。そこで、氷のサイズを種々変えて検討したところ、薄膜状の細氷を、調温工程(低速で撹拌)で投入し、また、それ以降の工程を細氷が溶けない温度で処理したところ、チキンナゲット製品の内部に多数の気泡(多孔)が形成していることが分った。しかし、この細氷投入技術のみでは未だ満足できる製品は得られなかった。以上のような実験から、この調温時における薄膜状の細氷投入と上記油揚げ後の緩慢凍結の両工程を採用したところ、チキンナゲットそれ自体の風味を保ちつつ、多孔質でソフトな食感を有する、予期できない優れたチキンナゲット製品が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、[1]以下の(a)〜(f)の各工程を順次備えたことを特徴とするチキンナゲットの製造方法に関する。
(a)鶏肉ミンチを主原料とするチキンナゲット原料を混合するミキシング工程;
(b)ミキシング工程後の鶏肉ミンチを含むチキンナゲット原料混合物に、薄膜状の細氷を混合して、ミキシングしながら調温する調温工程;
(c)調温工程後の鶏肉ミンチを含むチキンナゲット原料混合物を、前記細氷が溶けない低温で成形する成形工程;
(d)成形工程後のチキンナゲット成形体に、前記細氷が溶けない低温でバッター液を付けるバッター付け工程;
(e)バッター付け工程後のバッター液が付いたチキンナゲット成形体をフライするフライ工程;
(f)フライ工程後のチキンナゲット成形フライ体を冷却し、緩慢凍結する緩慢凍結工程;
【0011】
また本発明は、[2]調温工程における薄膜状の細氷として、厚さ0.3mm〜0.7mmの細氷を用いることを特徴とする上記[1]記載のチキンナゲットの製造方法や、[3]フライ工程後、さらにオーブンにより加熱するオーブン加熱工程を備えたことを特徴とする上記[1]又は[2]記載のチキンナゲットの製造方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、[4]緩慢凍結工程が、チキンナゲット成形フライ体の中心温度を0〜−5℃に降下させる工程であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか記載のチキンナゲットの製造方法や、[5]緩慢凍結工程後、さらに急速凍結工程を備えたことを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか記載のチキンナゲットの製造方法や、[6]上記[1]〜[5]のいずれか記載の製造方法により得られる冷凍チキンナゲットに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、特別の添加剤を用いずに、調温工程において、薄膜状の細氷を混合すること及びチキンナゲット成形フライ体を冷却し、緩慢凍結する緩慢凍結工程を採用することにより得られるチキンナゲットは、その内部に多孔部を形成しチキンの風味を保ちつつ、ソフトな食感を有し、かつ脂肪分が少ない健康的な高蛋白源となるチキンナゲットを得ることができ、また、経済的に安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のチキンナゲットの製造方法としては、(a)鶏肉ミンチを主原料とするチキンナゲット原料を混合するミキシング工程、(b)ミキシング工程後の鶏肉ミンチを含むチキンナゲット原料混合物を冷却し、薄膜状の細氷を混合して、ミキシングしながら調温する調温工程、(c)調温工程後の鶏肉ミンチを含むチキンナゲット原料混合物を、前記細氷が溶けない低温で成形する成形工程、(d)成形工程後のチキンナゲット成形体に、前記細氷が溶けない低温でバッター液を付けるバッター付け工程、(e)バッター付け工程後のバッター液が付いたチキンナゲット成形体をフライするフライ工程、(f)フライ工程後のチキンナゲット成形フライ体を冷却し、緩慢凍結する緩慢凍結工程を順次備えた製造方法であれば特に限定されるものではなく、原料となる鶏肉としては、チキンナゲットの調理に適したもの、例えば、鶏皮なしムネ肉、鶏ササミ、鶏皮を挙げることができ、生肉又は冷凍肉を解凍したものを細かくカットしてチキンナゲット用の鶏肉ミンチ(細切り鶏肉)を主原料とすることができる。
【0015】
ミキシング工程(a)において、鶏肉以外のチキンナゲットに用いる原料としては、通常チキンナゲットに用いる食品素材や調味料であれば特に制限されるものではなく、塩類、甘味料、澱粉類、蛋白質類、油脂類、香辛料、着色料、酸化防止剤、糖アルコール、繊維類、乳製品類、カルシウム剤類、乳化剤類、pH調整剤等を挙げることができる。これらの配合割合は、食品素材や調味料の種類によって異なるが、鶏肉100重量部につき、それぞれ0.01重量部〜5.00重量部を配合することができ、配合順序を適宜変更してもよく、特に制限されない。ただ、これらの食品素材や調味料は、細切り又はミンチした鶏肉に一種類ごとに投入し、撹拌し、均一に混ぜ合わせた後、次の食品素材や調味料を入れることが好ましい。撹拌時間は、その規模により異なるが、ムラなく均一に混合されれば撹拌は終了する。撹拌機内の温度は、0〜10℃の範囲、好ましくは、2〜8℃、より好ましくは、0〜5℃において行う。
【0016】
前記塩類としては精製塩を、甘味料としては、上砂糖を例示することができる。前記澱粉としては、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、ハイアミロースコーンスターチ、緑豆澱粉、通常市販されているタイプの加工澱粉が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記蛋白質類としては、全卵、卵白、卵黄、大豆たん白質、小麦たん白質等を挙げることができ、これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記油脂類としては、バター、マーガリン、大豆白鮫油等を挙げることができる。
【0017】
前記香辛料としては、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、ナツメグ等を用いることができ、これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、前記着色料、前記酸化防止剤としては、通常食品に用いられているものを挙げることができる。前記糖アルコールとしては、マルチトール、ソルビトール、還元パラチノース、エリスリトール、ラクチトール、還元キシロオリゴ糖等挙げることができ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記繊維類としては、セルロース、ヘミセルロース、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、小麦ふすま等を挙げることができ、これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
前記乳製品類として、脱脂粉乳、低脂肪粉乳、ホエーたん白、カゼイン、カゼインナトリウム、酸カゼイン、レンネットカゼイン、ラクトアルブミンなどを挙げることができ、これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記カルシウム剤類として、焼成カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウムなどを挙げることができ、これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記乳化剤類としては、食品加工に使用される天然乳化剤や合成乳化剤を広く用いることができ、例えば、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなど一般的に用いられる乳化剤物質の1種または2種以上を用いることができる。前記pH調整剤としては、乳酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、アスコルビン酸、酸性ピロリン酸やこれらの塩類など一般的に用いられるpH調整剤物質の1種または2種以上を用いることができる。これらの食品素材や添加物を配合することによって、塩味、甘味、色合い、香味、噛み具合、弾力性、保存性、油分による滑らかさ等調節することができる。
【0019】
調温工程(b)は、ミキシング工程後の鶏肉ミンチを含むチキンナゲット原料混合物を必要に応じて冷却し、薄膜状の細氷を混合して、ミキシングしながら調温する調温工程であり、この工程は、本発明の重要な技術手段の1つである。ここでの工程は、低温で行われ、かつ低温に調温され、ここで低温とは、チキンナゲット原料混合物の品温が−2℃〜−8℃、好ましくは、−3℃〜−7℃、より好ましくは、−4℃〜−6℃をいい、また、調温工程におけるミキシングは、前記ミキシング工程におけるミキシングより低速(13〜15rpm)で行われる。また、薄膜状の細氷の投入は、2〜5回、好ましくは2〜4回、より好ましくは2又は3回の複数回に分けて行うことが好ましい。薄膜状の細氷は、厚さ0.3mm〜0.9mm、好ましくは0.4〜0.7mm、より好ましくは0.5〜0.7mmで、細氷の長径が5mm以下のものが好ましい。かかる薄膜状の細氷は、冷却ドラムを備えた連続式の製氷機を用いて作られる。薄膜状の細氷の混合割合は、鶏肉ミンチ(例えば、鶏皮なし胸肉と鶏皮の合計)100重量部に対し、7〜20重量%、好ましくは10〜18重量%、より好ましくは、12〜17重量%配合する。細氷の投入方法は、冷却ドラム表面に連続的に形成される薄膜状の細氷を製造しながら、撹拌中の鶏肉ミンチに投入する方法や、予め製氷して、所定の量の細氷を投入する方法があるが、前者の連続的に行う方が効率的である。複数回の細氷投入後、その間上記の低速でミキシングを行い、均一に細氷が混合された生地を形成できたら調温は終了する。このような細氷を混合することにより、フライ後の鶏肉ミンチ(チキンナゲット)は、より多孔な製品となる。そのメカニズムは明らかではないが、混合されたチキンナゲット生地中の多数の細氷は、油で揚げた場合高温となり気化し、薄膜状の細氷が存在していた部分が多孔を形成すると考えられる。
【0020】
成形工程(c)は、調温工程後の鶏肉ミンチを含むチキンナゲット原料混合物を、前記細氷が溶けない低温で成形する成形工程であり、細氷が溶けない低温で成形することが重要である。チキンナゲット原料混合物の品温を、−2℃〜−8℃、好ましくは、−3℃〜−7℃、より好ましくは、−4℃〜−6℃とし、また、チキンナゲットの形状は適宜の形状でよく、通常は小判状で、大人で1口〜3口で食べられる大きさ(約10〜20g)が好ましい。成形するための成形機としては、通常採用されている機械を用いることができる。
【0021】
バッター付け工程(d)は、成形工程後のチキンナゲット成形体に、前記細氷が溶けない低温でバッター液を付ける工程であり、混入されている細氷が溶けない低温で行うことが重要である。チキンナゲット成形体の品温は、−2℃〜−8℃、好ましくは、−3℃〜−7℃、より好ましくは、−4℃〜−6℃であり、次工程のフライ工程においてフライする際、チキンナゲット内の細氷が溶解し、気化してバッターを通過して蒸発させる。ここで用いるバッター液とは、薄力粉を主要成分とし、ワキシー澱粉、コーンスターチ等のでんぷん類、ベーキングパウダー及び塩、香辛料、食用色素等及び水と混合して製する。
【0022】
フライ工程(e)は、バッター付け工程後のバッター液が付いたチキンナゲット成形体をフライする工程であり、一度でフライ(例えば、175℃、3.5分間)してもよく、また、複数のフライヤーを用いて低めの温度(例えば145℃)で所定の時間フライし、次に高めの温度(例えば170℃)で所定時間フライするなど複数回フライしてもよい。このフライ工程後、さらにオーブンにより所定時間焼成(例えば、130℃、湿度90%)することもできる。
【0023】
緩慢凍結工程(f)は、フライ工程後のチキンナゲット成形フライ体を冷却し、緩慢凍結する工程であり、この工程は、本発明において重要な工程である。チキンナゲット成形フライ体を室温まで冷却した後に行う緩慢凍結方法として、具体的には、チキンナゲット中心温度が、−1〜−10℃、好ましくは、0〜−8℃、より好ましくは0〜−5℃となるように、冷凍庫の庫内温度を−10℃〜−15℃に設定して、少なくとも20分以上、好ましくは30〜60分間、より好ましく40〜50分間維持する緩慢凍結方法を挙げることができる。このようなフライ後のチキンナゲット成形フライ体を緩慢凍結することにより、内部に氷結晶が生成し、その結果、多孔化をより促進させることができ、ソフトな食感を有するチキンナゲットが得られるのである。
【0024】
緩慢凍結工程の後、そのまま製品とすることもできるが、必要に応じて、冷凍保存のため、急速冷凍庫にて−15〜−35℃に急速冷凍し、冷凍製品として、流通販売することができる。
【0025】
本発明の冷凍チキンナゲット製品の調理方法としては、自然解凍してオーブントースターで温めて食する方法や、電子レンジにて解凍・加熱する方法等、通常の冷凍食品の解凍、加熱方法によって調理することができる。これらの解凍方法や加熱方法を施しても本発明のチキンナゲットは、従来のチキンナゲットに比して本来の風味を保ち、ソフトな食感を有するものである。
【0026】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
鶏ムネ肉60重量%と鶏皮40重%を混合ミンチした鶏ミンチ肉;100重量部、全卵;0.5重量部、馬鈴薯澱粉(スタビローズPM16 松谷化学工業社製);1.5重量部、酸化防止剤(ドライEミックスEA 理研ビタミン株式会社製);0.01重量部、精製塩;1.00重量部、ブラックペッパー末SCP(カネカサンスパイス社製);0.10重量部、上砂糖;4.00重量部、ナゲットシーズニングPFU2(GABAN社製);0.20重量部、バター(有塩);1.08重量部、マーガリン(リスレッド900、ADEKA社製);4.12重量部、乳酸ナトリウム(LA−01,武蔵野商社製);4.62重量部及びpH調整剤(FA−03、武蔵野商事社製);1.20重量部を冷却しながらミキサーにてミキシングし、各成分がさっくりと混合された後(ミキシング工程)、厚さ0.5mmの薄膜状の細氷(製氷機F−1000SB、ホシザキ電機社製により製造)8.2重量部を投入し調温を開始した。その際の肉温−5℃であった。次いで低速(13〜15rpm)でミキシングし8分間の調温を行った。再度、細氷を5.2重量部を投入し、さらに、調温2分間、低速でミキシングした(調温工程)。
【0028】
調温後の−5℃のチキンナゲット原料混合物を約15gづつ、小判状に、成型機により−5℃〜−8℃において成形してチキンナゲット成形体を得た(成形工程)。チキンナゲット成形体に薄力粉で打ち粉を振りかけた後、バッターミックス粉[薄力粉;20.00重量部、澱粉;18.00重量部、ベーキングパウダー;0.80重量部、精製塩;0.30重量部、着色料(粉末サンエローNo.3CE、三栄源エフ・エフ・アイ社製);0.02重量部、着色料(サンアナト−N、三栄源エフ・エフ・アイ社製);0.02重量部、香料(スペシャルワニラエッセンス);0.05重量部、pH調整剤(FA−03、武蔵野商事社製);0.76重量部、乳酸ナトリウム(LA−01 武蔵野商事社製);3.80重量部]を水49.2重量部とともに1000rpmで5分間溶解混合して10分間寝かせたバッター液に漬ける(バッター付け工程)。
【0029】
バッター液が付いたチキンナゲット成形体を、フライヤー(アサヒ装設株式会社)で145℃で30秒間、次いで170℃で30秒間フライした。さらに、オーブンで温度130℃、湿度90%の条件で1分30秒加熱した(フライ工程)。
【0030】
チキンナゲット成形フライ体を室温まで冷却した後、冷凍庫の庫内を−10℃〜−15℃に設定し、前記チキンナゲット成形フライ体の中心温度が約−5℃とし、20分間の緩慢凍結を行って、本発明のチキンナゲットが得られた。その後急速冷凍庫にて凍結し、保存した。緩慢凍結後、電子レンジ(500W)で、加熱(約30秒)したチキンナゲットを切断し、その断面図を図1に示す。図に示すとおり、本発明のチキンナゲットには、多数の多孔が形成されていることは明らかであった。
【0031】
[比較例]
実施例1において、薄膜状の細氷に代えて水4.0重量部を添加して調温し、フライ、冷却後の緩慢凍結を行わずに直ちに急速凍結したことを除いて、実施例1と同様の方法でチキンナゲットを得た。同様に、得られたチキンナゲットを切断し、その断面図を図2に示す。
【0032】
図1に示される本発明の製品と、図2に示される比較製品とを比べると、本発明の製品の方が明らかに多孔であることが分った。
【0033】
実施例1により得られたチキンナゲット及び比較例により得られたチキンナゲットを電子レンジで温めて、モニター10名に試食してもらったところ、10人全員が、比較例の製品より、本発明の製品が、チキンナゲット特有の風味を維持しつつソフトな食感を有する美味しいものであると回答した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の製造方法により得られたチキンナゲットの断面を撮影した写真を示す図である。
【図2】比較例の方法により得られたチキンナゲットの断面を撮影した写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(f)の各工程を順次備えたことを特徴とするチキンナゲットの製造方法。
(a)鶏肉ミンチを主原料とするチキンナゲット原料を混合するミキシング工程;
(b)ミキシング工程後の鶏肉ミンチを含むチキンナゲット原料混合物に、薄膜状の細氷を混合して、ミキシングしながら調温する調温工程;
(c)調温工程後の鶏肉ミンチを含むチキンナゲット原料混合物を、前記細氷が溶けない低温で成形する成形工程;
(d)成形工程後のチキンナゲット成形体に、前記細氷が溶けない低温でバッター液を付けるバッター付け工程;
(e)バッター付け工程後のバッター液が付いたチキンナゲット成形体をフライするフライ工程;
(f)フライ工程後のチキンナゲット成形フライ体を冷却し、緩慢凍結する緩慢凍結工程;
【請求項2】
調温工程における薄膜状の細氷として、厚さ0.3mm〜0.7mmの細氷を用いることを特徴とする請求項1記載のチキンナゲットの製造方法。
【請求項3】
フライ工程後、さらにオーブンにより加熱するオーブン加熱工程を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のチキンナゲットの製造方法。
【請求項4】
緩慢凍結工程が、チキンナゲット成形フライ体の中心温度を0〜−5℃に降下させる工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のチキンナゲットの製造方法。
【請求項5】
緩慢凍結工程後、さらに急速凍結工程を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のチキンナゲットの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の製造方法により得られる冷凍チキンナゲット。

【図1】
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【図2】
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