説明

チタノシリケート含有触媒の製造方法

【課題】オレフィンオキサイドの生成活性が高いチタノシリケート含有触媒を提供すために必要となる新規な製造方法を見出すこと。
【解決手段】チタノシリケート含有触媒の製造方法であって、(1)格子面間隔表示で下記の位置にピークを有するX線回折パターンを示すチタノシリケート粒子を、その粒子のの体積基準d(0.90)値が1μm以下の範囲を満たすまで、湿式法にて粉砕する工程、及び、(2)前記工程により得られた粉砕物に結合剤を添加し、得られた混合物を顆粒として成形する工程を含むことを特徴とする製造方法等。
<X線回折パターンにおけるピークの格子面間隔表示による位置(格子面間隔d/Å)>
12.4±0.8、10.8±0.5、9.0±0.3、6.0±0.3、3.9±0.3、3.4±0.1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチタノシリケート含有触媒の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プロピレンオキサイド等のオレフィンオキサイドの製造方法には、チタノシリケート含有触媒が用いられている。かかる触媒としては、例えば、特許文献1には、ホウ素含有化合物、オルトチタン酸テトラブチル、ヒュームドシリカ及びピペリジンを170℃の温度下、水熱合成して得られた層状化合物(as−synthesizedサンプルとも称される。)を還流条件下、硝酸水溶液と接触させて得られるチタノシリケートが記載されている。そして、特許文献1には、触媒として当該チタノシリケートを用いて、過酸化水素及びプロピレンからプロピレンオキサイドを製造する方法も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262164号公報(実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、オレフィンオキサイドの生成活性が高いチタノシリケート含有触媒を提供すために必要となる新規な製造方法を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.チタノシリケート含有触媒の製造方法であって、
(1)格子面間隔表示で下記の位置にピークを有するX線回折パターンを示すチタノシリケート粒子を、その粒子の体積基準d(0.90)値が1μm以下の範囲を満たすまで、湿式法にて粉砕する工程、及び、
(2)前記工程により得られた粉砕物に結合剤を添加し、得られた混合物を顆粒として成形する工程を含むことを特徴とする製造方法(以下、「本発明製造方法」と記すこともある。);
<X線回折パターンにおけるピークの格子面間隔表示による位置(格子面間隔d/Å)>
12.4±0.8、10.8±0.5、9.0±0.3、6.0±0.3、3.9±0.3、3.4±0.1
2.前記粉砕物が、体積基準d(0.90)値が1μm以下であるチタノシリケート粒子の水性懸濁物であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
3.湿式法による粉砕工程が、前記チタノシリケート粒子を含む水性懸濁物を高圧ポンプを用いて微細な流路が形成された硬質材料製ジェネレーター内に高速で送り込むことで前記ジェネレーター通過時に発生する剪断力によって、前記チタノシリケート粒子を粉砕する工程であることを特徴とする前項1又は2記載の製造方法;
4.顆粒成形工程が、噴霧乾燥法を用いて前記混合物を顆粒として成形する工程であることを特徴とする前項1乃至3のいずれかの前項記載の製造方法;
5.オレフィンを、前項1乃至4のいずれかの前項記載の製造方法によって得られるチタノシリケート含有触媒(以下、「本チタノシリケート含有触媒」ということもある。)を用いた触媒反応により、過酸化水素でエポキシ化する工程を含むことを特徴とするオキシラン化合物の製造方法;
6.前記オレフィンが、プロピレンであることを特徴とする前項5記載の製造方法;
7.下記(1)又は(2)の複合触媒(以下、「本チタノシリケート含有複合触媒」ということもある。)の存在下、オレフィン、水素及び酸素を反応させる工程を含むことを特徴とするオキシラン化合物の製造方法。
<複合触媒>
(1)前項1乃至4のいずれかの前項記載の製造方法によって得られるチタノシリケート含有触媒の上に担持された貴金属を含む複合触媒
(2)前項1乃至4のいずれかの前項記載の製造方法によって得られるチタノシリケート含有触媒と当該チタノシリケート含有触媒とは異なる物質である担体成分の上に担持された貴金属とを含む複合触媒;
8.前記オレフィンが、プロピレンであることを特徴とする前項7記載の製造方法;
9.前記貴金属が、パラジウムであることを特徴とする前項7又は8記載の製造方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、オレフィンオキサイドの生成活性が高いチタノシリケート含有触媒を提供すために必要となる新規な製造方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明製造方法は、チタノシリケート含有触媒の製造方法であって、
(1)格子面間隔表示で下記の位置にピークを有するX線回折パターンを示すチタノシリケート粒子(以下、「本チタノシリケート粒子」と記すこともある。)を、その粒子の体積基準d(0.90)値が1μm以下の範囲を満たすまで、湿式法にて粉砕する工程(以下、「湿式法による粉砕工程」と記すこともある。)、及び、
(2)前記工程により得られた粉砕物(以下、「本粉砕物」と記すこともある。)に結合剤を添加し、得られた混合物を顆粒として成形する工程(以下、「顆粒成形工程」と記すこともある。)
を含むことを特徴とする。
【0008】
<X線回折パターンにおけるピークの格子面間隔表示による位置(格子面間隔d/Å)>
12.4±0.8、10.8±0.5、9.0±0.3、6.0±0.3、3.9±0.3、3.4±0.1
【0009】
ここで、「粒子の体積基準d(0.90)値」とは、体積基準粒度分布において微粒側から累積90%に相当する粒子径を意味する。このような粒子の体積基準d(0.90)値は、例えば、後述のような「チタノシリケート粒子の粒度分布測定」に記載される方法に準じて測定すればよい。
【0010】
本チタノシリケート粒子は、格子面間隔表示で前記の位置にピークを有するX線回折パターンを示す。以下、X線回折パターンを測定方法について説明する。
【0011】
X線回折パターンは、線源として銅K−アルファ放射線を使用した市販の一般的なX線回折装置を用いて測定すればよい。具体的には例えば、本チタノシリケート粒子を試料として、理学電機社製RINT2500V等のX線回折装置を用いて下記の条件で測定すればよい。
(測定条件)
・出力:40kV−300mA
・走査範囲:2θ=0.75°〜20°
・走査速度:1°/分
【0012】
また、本チタノシリケート粒子は、実質的に4配位Tiを持つものがよい。200nm〜400nmの波長領域における紫外可視吸収スペクトルが、210nm〜230nmの波長領域で最大の吸収ピークが現れるものがよい(例えば、Chemical Communications 1026−1027 (2002) 図2(d)、(e)参照)。尚、前記紫外可視吸収スペクトルは、拡散反射装置を付属した紫外可視分光光度計を用いた散反射法に基づき測定すればよい。
【0013】
本チタノシリケート粒子におけるチタン原子の含有量は、ケイ素原子の含有量1モルに対して、例えば、0.001〜0.1モルの範囲内を挙げることができ。好ましくは、0.005〜0.05モルの範囲内が挙げられる。
【0014】
本チタノシリケート粒子(格子面間隔表示で上記の位置にピークを有するX線回折パターンを示すもの)の具体的な例としては、例えば、Ti−MWW前駆体(例えば、公開特許公報2005−262164号に記載されたもの)、Ti−YNU−1(例えば、アンゲバンテヒミー・インターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition) 43, 236−240, (2004)に記載されたもの)、結晶性チタノシリケート、IZA(国際ゼオライト学会)の構造コードで、MWW構造を有する結晶性チタノシリケートであるTi−MWW(例えば、公開特許公報2003−327425号に記載されたもの)、同じくIZAの構造コードでMSE構造を有する結晶性チタノシリケートであるTi−MCM−68(例えば、公開特許公報2008−50186号に記載されたもの)等を挙げることができる。好ましくは、例えば、Ti−MWW前駆体等が挙げられる。
【0015】
Ti−MWW前駆体は、層状構造を有するチタノシリケート(以下、層状化合物と記すこともある。)であり、当該Ti−MWW前駆体を脱水縮合することによりTi−MWWを形成する物質を意味する。上記脱水縮合は、通常、上記Ti−MWW前駆体を、200℃を超え、1000℃以下、好ましくは、約300℃〜650℃の温度で加熱することにより行われる。尚、Ti−MWW前駆体は、その製造過程において後述のような構造規定剤処理が施されてもよい。また更に、このようにして得られたTi−MWW前駆体は、後述のような構造規定剤処理を再度施されてもよい。これらもまた、本発明では「Ti−MWW前駆体」と呼ぶ。
【0016】
以下、Ti−MWW前駆体の製造方法について、詳細に説明する。
Ti−MWW前駆体の製造方法として、例えば、以下の第一の方法、第二の方法、第三の方法及び第四の方法等を挙げることができる。好ましくは、例えば、第三の方法等が挙げられる。
【0017】
第一の方法は、構造規定剤、元素周期表の13族元素を含有する化合物(以下、「13族元素含有化合物」と記すことがある。)、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程(以下、「工程(1−1)」と記すことがある。)、及び、工程(1−1)で得られた層状化合物と酸とを混合する工程(以下、「工程(1−2)」と記すことがある。)を含む方法である。
【0018】
工程(1−1)における加熱温度としては、例えば、110℃〜200℃の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、140℃〜180℃の範囲が挙げられる。
工程(1−1)における加熱時間は、加熱温度が高いほど短く、加熱温度が低いほど長い。例えば、加熱温度が110℃〜140℃の範囲である場合での加熱時間としては、例えば、60時間〜360時間の範囲を挙げることができる。一方、加熱温度が140℃〜200℃の場合には、30時間〜240時間の範囲を挙げることができる。
工程(1−1)において、前記混合物を加熱する際の昇温速度としては、例えば、0.1℃/分〜2℃/分の範囲を挙げることができる。尚、昇温速度は、一定であってもよいし、また、一定である必要はなく、目的温度が近づいたら徐々に遅くしてもよい。
【0019】
工程(1−1)において、前記混合物を加熱する方法としては、例えば、オートクレーブのジャケットを加熱する方法のように、熱伝導による加熱方法、マイクロ波照射による加熱方法等を挙げることができる。
【0020】
工程(1−1)において、前記混合物を加熱する際には、当該混合物を、撹拌翼等により撹拌しながら行ってもよい。
撹拌に用いられる撹拌翼の形状としては、例えば、アンカー翼、パドル翼、平板翼、傾斜パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、中空翼、ファウドラー翼、ダブルヘリカル翼等を挙げることができる。これらの撹拌翼は、1種類の撹拌翼を複数組み合せて用いてもよいし、水平方向に対流させる撹拌翼と垂直方向に対流させる撹拌翼との組み合せのように2種類の撹拌翼を組み合せて用いてもよい。具体的には例えば、パドル翼の横長さに対する縦の長さの比が1/2以上である幅広型のパドル翼とアンカー翼とを上下にクロスに配置する組み合わせ、パドル翼とプロペラ翼との組み合わせ、アンカー翼と傾斜パドル翼との組み合わせ等を挙げることができる。
撹拌に用いられる撹拌翼の撹拌速度としては、当該撹拌翼の先端速度で表すと、例えば、0.1km/h〜40km/hの範囲を挙げることができる。尚、撹拌速度は、一定であってもよいし、また、一定である必要はなく、一定時間経過後(具体的には例えば、昇温完了後)に1/2〜1/100の範囲に下げてもよい。
【0021】
工程(1−1)で得られた反応物(層状化合物を含む)は、工程(1−2)に供する前に、必要に応じて冷却後、例えば、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離等により固体成分(層状化合物を含む)と液体成分(未反応の原料を含む)とに固液分離してもよい。
尚、必要に応じて行われる冷却の下限となる温度としては、例えば、0℃以上を挙げることができる。好ましくは、例えば、50℃以上が挙げられる。また、前記冷却の上限となる温度としては、例えば、工程(1−1)における加熱温度を挙げることができる。
【0022】
上記の固液分離により得られた固体成分(層状化合物を含む)は、必要に応じて、水等の洗浄液により洗浄した後、例えば、通風乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥等の乾燥方法により、得られた固体の質量減少が無くなるまで、乾燥してもよい。
尚、上記乾燥のための温度としては、例えば、0℃〜200℃の範囲を挙げることができる。
【0023】
次に、工程(1−2)において、工程(1−1)で得られた層状化合物と酸とを混合する方法としては、例えば、(a)酸(又は酸を含む溶液)を層状化合物に噴霧する方法、(b)酸(又は酸を含む溶液)を層状化合物に塗布する方法、(c)酸(又は酸を含む溶液)と層状化合物とを、加熱されたベッセル又はチューブ内に流通させる方法、(d)酸(又は酸を含む溶液)に、層状化合物を浸漬する方法、(e)酸(又は酸を含む溶液)と層状化合物とを攪拌する方法等を挙げることができる。好ましくは、例えば、上記(d)の方法、上記(e)の方法等が挙げられる。
上記(d)の方法、及び、上記(e)の方法では、バッチ式で行うこともできるし、連続式で行うこともできる。
また、上記(d)の方法では、例えば、加熱による対流、攪拌等により、酸(又は酸を含む溶液)を流動させることがよい。ここで「加熱による対流」としては、例えば、還流によるガスの発生、加熱による液の温度差等を利用すればよい。尚、酸(又は酸を含む溶液)を還流させる場合における、酸(又は酸を含む溶液)と、混合のために使用される攪拌槽が備えるジャケット等の加熱媒体との温度差としては、例えば、1℃〜50℃の範囲を挙げることができる。
【0024】
工程(1−2)における混合温度としては、例えば、0℃〜200℃の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、50℃〜150℃の範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、60℃〜120℃の範囲を挙げることができる。
工程(1−2)における混合時間としては、例えば、0.1時間〜240時間の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、2時間〜48時間の範囲が挙げられる。
【0025】
工程(1−2)において、工程(1−1)で得られた層状化合物と酸とを混合する際の圧力としては、絶対圧で、例えば、0.01MPa〜1.1MPaの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、大気圧等が挙げられる。
【0026】
工程(1−2)で得られた混合物から固体としてのTi−MWW前駆体を回収するには、当該混合物(例えば、0℃以上、好ましくは、例えば、20℃〜100℃の範囲であるもの)を、例えば、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離等により、固体成分(Ti−MWW前駆体を含む)と液体成分(酸による溶解された構造規定剤、酸を含む)とに固液分離すればよい。
尚、上記の固液分離を複数回に分けて行う場合には、各固液分離の操作において固体成分の固着防止のために、撹拌操作を併用しながら行うことがよい。
【0027】
上記の固液分離により得られた固体成分(Ti−MWW前駆体を含む)は、必要に応じて、例えば、構造規定剤及び/又はホウ酸を含有する水溶液、水、0.01質量%〜10質量%の過酸化水素水溶液等の洗浄液により洗浄した後、例えば、通風乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥等の乾燥方法により、得られた固体の質量減少が無くなるまで、乾燥してもよい。
上記洗浄のための洗浄液の温度としては、0℃〜110℃の範囲を挙げることができる。
また、上記乾燥のための温度としては、例えば、50℃〜200℃の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、100℃〜200℃の範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、150℃〜200℃の範囲を挙げることができる。
尚、上記の洗浄操作が複数回になる場合には、洗浄操作後の洗浄液のpHが、4〜8の範囲になるまで行うことがよく、また、洗浄液の温度は、各洗浄操作毎に異なっていてもよい。具体的には例えば、比較的濾過性のよい1回目の洗浄操作では、30℃以下の洗浄液を使用し、次いで2回目以降の洗浄操作において濾過性が悪化した場合には、30℃以上の洗浄液を使用する方法等を挙げることができる。
【0028】
このようにして得られた乾燥後のTi−MWW前駆体は、密閉容器に入れ、保管すればよい。密閉容器は光を遮断するものがよい。保管期間に特に制限はないが、例えば、1日〜1年程度を挙げることができる。
【0029】
第二の方法は、構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程(以下、「工程(2−1)」と記すことがある。)、及び、工程(2−1)で得られた層状化合物、チタン含有化合物及び酸を混合する工程(以下、「工程(2−2)」と記すことがある。)を含む方法である。
工程(2−1)は、チタン含有化合物を使用しないこと以外の操作は全て、第一の方法の工程(1−1)と同様な操作により行えばよい。
また、工程(2−2)は、工程(1−1)で得られた層状化合物の代わりに、工程(2−1)で得られた層状化合物を使用すること以外の操作は全て、第一の方法の工程(1−2)と同様な操作により行えばよい。
【0030】
第三の方法は、構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程(以下、「工程(3−1)」と記すことがある。)、及び、工程(3−1)で得られた層状化合物、チタン含有化合物及び酸を混合する工程(以下、「工程(3−2)」と記すことがある。)を含む方法である。
工程(3−1)は、第一の方法の工程(1−1)と同様な操作により行えばよい。
また、工程(3−2)は、工程(2−1)で得られた層状化合物の代わりに、工程(3−1)で得られた層状化合物を使用すること以外の操作は全て、第二の方法の工程(2−2)と同様な操作により行えばよい。
【0031】
第四の方法は、構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物及び水を含有する混合物を加熱して得られる層状ボロシリケートを、(好ましくは、酸と接触させることにより構造規定剤を除いた後、)焼成してB−MWWを得て、得られたB−MWWを酸等によりホウ素を除去した後、構造規定剤、チタン含有化合物及び水を加え、得られた混合物を加熱して層状化合物を得て、これを約6M硝酸と接触させる工程を含む方法(例えば、Chemical Communication 1026−1027,(2002)参照)
【0032】
上記の各種方法において用いられる「酸」としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、ホウ酸、フルオロスルホン酸等の無機酸、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸等の有機酸、これらの2種以上の組み合わせ等を挙げることができる。好ましくは、例えば、4価チタンよりも高い酸化還元電位を有する無機酸を少なくとも一種以上含む酸等が挙げられる。ここで、「4価チタンよりも高い酸化還元電位を有する無機酸」としては、例えば、硝酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸、硝酸と硫酸との組み合わせ、硝酸とホウ酸との組み合わせ等を挙げることができる。
【0033】
上記の各種方法において用いられる酸は、通常、溶媒に溶解させることにより調製された溶液の状態で用いられる。ここで、「溶媒」としては、例えば、水、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、それらの混合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、水等が挙げられる。
当該溶液に含まれる酸の濃度としては、例えば、0.01mol/l〜20mol/lの範囲を挙げることができる。酸として無機酸を用いる場合には、無機酸の濃度としては、例えば、1mol/l〜5mol/lの範囲を好ましく挙げることができる。
【0034】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「元素周期表の13族元素」としては、例えば、ホウ素含有化合物、アルミニウム含有化合物、ガリウム含有化合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ホウ素含有化合物等が挙げられる。
ホウ素含有化合物としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、炭素数1〜4のアルキル基を有するトリアルキルホウ素化合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ホウ酸等が挙げられる。
アルミニウム含有化合物としては、例えば、アルミン酸ナトリウム等を挙げることができる。
ガリウム含有化合物としては、例えば、酸化ガリウム等を挙げることができる。
【0035】
Ti−MWW前駆体の製造方法における13族元素含有化合物の使用量としては、ケイ素含有化合物に含まれるケイ素1モルに対して、例えば、0.01モル〜10モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、0.1モル〜5モルの範囲が挙げられる。
【0036】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「ケイ素含有化合物」としては、例えば、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化ケイ素、ハロゲン化ケイ素、テトラアルキルオルトケイ酸エステル及びコロイダルシリカ等を挙げることができる。好ましくは、例えば、オルトケイ酸、メタケイ酸、メタ二ケイ酸等が挙げられる。
ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のアルカリ土類金属ケイ酸塩等が挙げられる。
酸化ケイ素としては、例えば、石英のような結晶性シリカ、ヒュームドシリカのような非晶質シリカ等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ヒュームドシリカ等が挙げられる。ここで「ヒュームドシリカ」としては、一般に市販されているBET比表面積50m/g〜380m/gのものを使用すればよい。中でも、BET比表面積50m/g〜200m/gのものが、取扱い容易であることからよい。また、BET比表面積100m/g〜380m/gのものは、水溶液への溶解が容易であることからよい。
ハロゲン化ケイ素としては、例えば、四塩化ケイ素、四フッ化ケイ素等を挙げることができる。
テトラアルキルオルトケイ酸エステルとしては、例えば、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート等を挙げることができる。
【0037】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「チタン含有化合物」としては、例えば、チタンアルコキシド、チタン酸塩、酸化チタン、ハロゲン化チタン、チタンの無機酸塩、チタンの有機酸塩等を挙げることができる。
チタンアルコキシドとしては、例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するチタンアルコキシド、例えば、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトライソプロピルオルソチタネート、テトラ−n−ブチルオルソチタネート等を挙げることができる。好ましくは、例えば、チタンアルコキシド等が挙げられる。より好ましくは、例えば、テトラ−n−ブチルオルソチタネート等を挙げることができる。
チタンの有機酸塩としては、例えば、酢酸チタン等を挙げることができる。
チタンの無機酸塩としては、例えば、硝酸チタン、硫酸チタン、リン酸チタン、過塩素酸チタン等を挙げることができる。
ハロゲン化チタンとしては、例えば、四塩化チタン等を挙げることができる。
酸化チタンとしては、例えば、二酸化チタン等を挙げることができる。
【0038】
Ti−MWW前駆体の製造方法におけるチタン含有化合物の使用量としては、得られる層状化合物1重量部に対して、チタン含有化合物中のチタン原子の重量として、例えば、0.001重量部〜1重量部の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.01重量部〜0.5重量部の範囲が挙げられる。
【0039】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「水」としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の精製水等を挙げることができる。
Ti−MWW前駆体の製造方法における水の使用量としては、ケイ素含有化合物に含まれるケイ素1モルに対して、例えば、5モル〜20モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、10モル〜50モルの範囲が挙げられる。
【0040】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「構造規定剤」(即ち、MWW構造を有するゼオライトを形成可能な構造規定剤)としては、例えば、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン等の有機アミン、例えば、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム塩(例えば、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムイオダイド等)、オクチルトリメチルアンモニウム塩(例えば、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド等)(例えば、Chemistry Letters 916−917 (2007)参照)等の4級アンモニウム塩、等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。より好ましくは、例えば、ピペリジン等を挙げることができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0041】
Ti−MWW前駆体の製造方法(又は、構造規定剤処理)における構造規定剤の使用量としては、ケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、例えば、0.1モル〜5モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.5モル〜3モルの範囲が挙げられる。
【0042】
上記の各種方法における第一工程(即ち、第1の方法における工程(1−1)、第2の方法における工程(2−1)、第3の方法における工程(3−1)、第4の方法において層状ボロシリケートを得るための工程)で用いられる「混合物」は、例えば、ジオール化合物、アンモニウム塩、フッ素化合物等の添加剤を含むことができる。
【0043】
前記添加物としての「ジオール化合物」としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ベンゼン−1,2−ジオール、ベンゼン−1,3−ジオール、ベンゼン−1,4−ジオール等を挙げることができる。
【0044】
前記ジオール化合物の使用量としては、前記混合物に含まれるケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、例えば、0.001モル〜2モルの範囲を挙げることができる。
【0045】
前記添加物としての「アンモニウム塩」としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0046】
尚、前記アンモニウム塩は、予め水等に溶解させた液体状態で添加してもよいし、固体状態で添加してもよい。
【0047】
前記アンモニウム塩の使用量としては、前記混合物に含まれるケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、例えば、0.1モル〜10モルの範囲を挙げることができる。
【0048】
前記添加物としての「フッ素化合物」としては、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等のフッ化水素酸塩、フッ化水素酸等を挙げることができる。
【0049】
前記フッ素化合物の使用量としては、前記混合物に含まれるケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、例えば、0.1モル〜10モルの範囲を挙げることができる。
【0050】
本発明製造方法における「湿式法による粉砕工程」では、本チタノシリケート粒子を、その粒子の少なくとも90%が、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置から求めた体積基準粒径として、1μm以下の範囲を満たすまで、即ち、体積基準d(0.90)値が1μm以下の範囲を満たすまで、湿式法にて粉砕する。
【0051】
そして、このようにして得られた粉砕物(即ち、本粉砕物)の好ましい一例としては、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置から求めた体積基準d(0.90)値が1μm以下であるチタノシリケート粒子の水性懸濁物等を挙げることができる。以下、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置から求めた体積基準d(0.90)値について説明する。
【0052】
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置から求めた体積基準d(0.90)値は、市販の一般的なレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定・計算すればよい。具体的には例えば、本発明製造方法における「湿式法による粉砕工程」により得られた粉砕物(即ち、本粉砕物(チタノシリケート微粒子を含む粉砕物))を試料として、(株)堀場製作所製LA−950V2等のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて下記の条件で粒度分布を測定し、体積基準としてd(0.90)値を計算すればよい。
(測定条件)
・試料前処理:内部超音波(40kHz)10分照射による粒子分散処理
・データ取り込み回数(試料、ブランク):5000回
・屈折率:試料(1.47)、分散媒(水)(1.333)
【0053】
本発明製造方法における「湿式法による粉砕工程」として、例えば、(1)ボールミルを用いた湿式法による粉砕工程、(2)ジェットミルを用いた湿式法による粉砕工程、(3)本チタノシリケート粒子を含む水性懸濁物を高圧ポンプを用いて微細な流路が形成された硬質材料製ジェネレーター内に高速で送り込むことで前記ジェネレーター通過時に発生する剪断力によって、前記チタノシリケート粒子を粉砕する工程、(4)それら工程の組合せ等を挙げることができる。好ましくは、例えば、上記(3)の粉砕工程等が挙げられる。因みに、上記(3)の粉砕工程の具体的な一例としては、ナノマイザーによる粉砕工程等を挙げることができる。
ここで大事なことは、あくまで湿式法による粉砕工程であり、公知の気体式技術に従った乾式法による粉砕工程ではないことである。
【0054】
本発明製造方法における「顆粒成形工程」では、前記「湿式法による粉砕工程」により得られた粉砕物(即ち、本粉砕物)に結合剤を添加し、得られた混合物を顆粒として成形する。
【0055】
本発明製造方法における「顆粒成形工程」として、例えば、(1)押出、(2)圧縮、(3)打錠、(4)流動、(5)転動、(6)噴霧乾燥等の方法を用いて前記混合物を顆粒として成形する工程等を挙げることができる。好ましくは、例えば、上記(6)の噴霧乾燥方法を用いて前記混合物を顆粒として成形する工程等が挙げられる。前記噴霧乾燥方法は、公知の方法に従って実施すればよい。このような噴霧乾燥方法に用いられる乾燥機としては、例えば、スプレードライヤー、フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)、マイクロミストドライヤー(藤崎電機製)等を挙げることができる。
上記スプレードライヤーにおける微粒化方式として、例えば、回転円盤式、加圧ノズル式、四流体ノズル式、二流体ノズル式等の方式を挙げることができる。好ましくは、例えば、四流体ノズル式等が挙げられる。
【0056】
本発明製造方法における「顆粒成形工程」において用いられる結合剤としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の金属の酸化物のゾル(以下、金属酸化物ゾルと記すこともある。)等を挙げることができる。好ましくは、例えば、酸化ケイ素ゾル等が挙げられる。
【0057】
本粉砕物に結合剤を添加するには、例えば、本粉砕物に金属酸化物ゾルの溶液を混合し、必要により攪拌すればよい。
【0058】
このようにして得られた混合物を顆粒として成形するには、例えば、前記混合物(即ち、本粉砕物)を、適当な条件下で噴霧乾燥方法を用いて、例えば、粒子の体積基準メジアン径(即ち、体積基準d(0.50)値に相当)が2μm〜40μmの範囲である顆粒として成形すればよい。所望の体積基準メジアン径の範囲を有する顆粒を製造するために調節できる噴霧乾燥の変数としては、例えば、供給される前記混合物の液滴サイズ、乾燥器への供給速度、乾燥用空気温度、蒸発速度等を挙げることができる。乾燥用空気温度としては、例えば、スラリー溶液の濃度、送液速度等によって異なるが、通常、80℃〜300℃の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、150℃〜280℃の範囲が挙げられる。ここで、「粒子の体積基準メジアン径」とは、体積基準粒度分布において微粒側から累積50%に相当する粒子径を意味する。このような粒子の体積基準d(0.50)値は、例えば、後述のような「チタノシリケート粒子の粒度分布測定」に記載される方法に準じて測定すればよい。
【0059】
本発明製造方法により得られたチタノシリケート含有触媒(即ち、本チタノシリケート含有触媒)は、更に、追加的に乾燥してから使用してもよい。
例えば、本チタノシリケート含有触媒を電気炉等の加熱炉内に置き、1時間〜24時間かけて、250℃〜1000℃の温度範囲内、好ましくは300℃〜600℃の温度範囲内まで昇温し、その温度で更に1時間〜24時間保温した後、前記加熱炉内で自然放冷すればよい。
前記加熱炉内は、例えば、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の不活性ガス、例えば、空気、酸素、二酸化炭素等の酸化性ガス、例えば、水素、一酸化炭素、プロピレン等の還元性ガスの雰囲気下にすることが好ましい。
尚、これらもまた、本発明では「本チタノシリケート含有触媒」と呼ぶ。
【0060】
また、本発明製造方法により得られたチタノシリケート含有触媒(即ち、本チタノシリケート含有触媒)は、更に、追加的に前述のような構造規定剤処理を(再度)施してから使用してもよい。
例えば、オートクレーブ等の密閉耐圧容器内で、本チタノシリケート含有触媒を、構造規定剤及び水に混合し、前記密閉耐圧容器を密閉した後、加熱・加圧下にて静置又は攪拌混合して混合液を得、得られた混合液から固形の生成物を、濾過や遠心分離等の方法を用いて分離することにより、得ればよい。また、大気圧下、ガラス製フラスコ中で撹拌しながら、又は、撹拌せずに混合して混合液を得、得られた混合液から固形の生成物を、濾過や遠心分離等の方法を用いて分離することにより、得てもよい。
因みに、得られた本チタノシリケート含有触媒を、水等を用いて洗浄してもよい。前記洗浄は、必要により、洗浄液の量、洗浄濾液のpH等を見ながら適宜調整して行えばよい。更に、得られた水洗物を、例えば、0℃〜200℃の範囲で、例えば、通風乾燥、減圧乾燥、真空凍結乾燥等により、重量の減少が見られなくなる程度まで乾燥してもよい。
【0061】
用いられる構造規定剤の使用量としては、例えば、供される本チタノシリケート含有触媒に含まれるケイ素原子1モルに対して、例えば、0.01モル〜10モルの範囲をあげることができる。好ましくは例えば、0.1モル〜5モルの範囲が挙げれらる。
尚、これらもまた、本発明では「本チタノシリケート含有触媒」と呼ぶ。
【0062】
上記の混合操作で用いられる温度としては、例えば、0℃〜250℃を挙げることができる。好ましくは、20℃〜200℃が挙げられる。より好ましくは、例えば、50℃〜180℃を挙げることができる。
【0063】
上記の混合操作で用いられる混合時間としては、例えば、1時間〜720時間の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、2時間〜720時間の範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、4時間〜720時間の範囲を挙げることができる。特に好ましくは、例えば、8時間〜720時間の範囲が挙げられる。
【0064】
上記の混合操作で用いられる圧力としては、特に制限はないが、例えば、ゲージ圧力で0MPa〜10MPaの範囲を挙げることができる。
【0065】
本発明製造方法によって得られるチタノシリケート含有触媒(即ち、本チタノシリケート含有触媒)は、高いオレフィンオキサイドの生成活性を有する。そして、本チタノシリケート含有触媒を用いた触媒反応により、例えば、プロピレン等のオレフィンを過酸化水素でエポキシ化すれば、オキシラン化合物を製造すること(以下、「第一のエポキシ化反応」と記すこともある。)ができる。
【0066】
第一のエポキシ化反応のために用いられる原料の一つであるオレフィンがプロピレンである場合には、前記プロピレンとしては、例えば、熱分解、重質油接触分解、メタノール接触改質により製造されたもの等を挙げることができる。
前記プロピレンは、精製プロピレンであってもよく、精製工程を経ず得られる粗プロピレン等であってもよい。好ましいプロピレンとしては、その純度が、例えば、90体積%以上、好ましくは95体積%以上であるプロピレンを挙げることができる。
尚、プロピレンに含まれる不純物としては、例えば、プロパン、シクロプロパン、メチルアセチレン、プロパジエン、ブタジエン、ブタン類、ブテン類、エチレン、エタン、メタン、水素等が挙げられる。
前記プロピレンの形状としては、例えば、ガス状、液状等を挙げることができる。ここで、「液状」としては、例えば、(i)プロピレン単独で液状であるもの、(ii)プロピレンが、例えば、有機溶媒若しくは有機溶媒と水との混合溶媒により溶解された混合液等を挙げることができる。また、「ガス状」としては、例えば、(i)プロピレン単独でガス状であるもの、(ii)ガス状のプロピレンと、例えば、窒素ガス、水素ガス等の他のガス成分との混合ガス等を挙げることができる。
【0067】
前記プロピレン等のオレフィンの量としては、その種類や反応条件等によって異なるが、例えば、反応系に存在するアセトニトリル含有溶剤、本チタノシリケート含有触媒及び原料からなる混合物の量100重量部に対して、0.01重量部以上を挙げることができる。より好ましくは、0.1重量部以上が挙げられる。
【0068】
本チタノシリケート含有触媒の量としては、その種類や反応条件等によって異なるが、例えば、反応系に存在するアセトニトリル含有溶剤、本チタノシリケート含有触媒及び原料からなる混合物の量100重量部に対して、0.01重量部〜20重量部の範囲を挙げることができる。好ましくは、0.1重量部〜10重量部の範囲が挙げられる。より好ましくは、0.5重量部〜8重量部の範囲を挙げることができる。
【0069】
前記「アセトニトリル含有溶剤」とは、アセトニトリルを含有する溶剤を意味するものであり、当該アセトニトリル含有溶剤は、アセトニトリル以外の溶媒を含んでいてもよい。アセトニトリル以外の溶媒としては、例えば、アセトニトリル以外の有機溶媒、水等を挙げることができる。好ましくは、前記アセトニトリル含有溶剤の中に含まれるアセトニトリルの重量割合としては、例えば、50%以上の範囲を挙げることができる。好ましくは、60%〜100%の範囲が挙げられる。
【0070】
第一のエポキシ化反応のための反応温度としては、例えば、0℃〜200℃の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、40℃〜150℃の範囲が挙げられる。また、反応圧力(ゲージ圧)としては、例えば、0.1MPa以上の加圧下を挙げることができる。好ましくは、例えば、1MPa以上の加圧下が挙げられる。より好ましくは、例えば、10MPa以上の加圧下を挙げることができる。更により好ましくは、例えば、20MPa以上の加圧下が挙げられる。
【0071】
第一のエポキシ化反応のためには、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルアリールアンモニウム塩を反応系内に存在させてもよい。
触媒活性の減少を防止したり、触媒活性をさらに増大させたり、過酸化水素の利用効率を向上させる傾向があること等から、緩衝剤を反応系内に存在させることができる。ここで、「緩衝剤」とは、溶液の水素イオン濃度に対して緩衝作用を与える塩等の化合物を意味する。
前記緩衝剤としては、例えば、反応系に存在するアセトニトリル含有溶剤、触媒及び本原料からなる混合物における前記緩衝剤の溶解度以下の量を挙げることができる。好ましくは、前記混合物1kgに対して、例えば、0.001mmol〜100mmolの範囲を挙げることができる。
【0072】
前記緩衝剤としては、例えば、(1)硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸2水素イオン、ピロリン酸水素イオン、ピロリン酸イオン、ハロゲンイオン、硝酸イオン、水酸化物イオン及びC−C10カルボン酸イオンからなる群より選ばれるアニオンと、(2)アンモニウム、C−C20アルキルアンモニウム、C−C20アルキルアリールアンモニウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれるカチオンとからなる緩衝剤を挙げることができる。
ここで「炭素数1〜10のカルボン酸イオン」としては、具体的には例えば、酢酸イオン、蟻酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、吉草酸イオン、カプロン酸イオン、カプリル酸イオン、カプリン酸イオン、安息香酸イオン等を挙げることができる。また、「アルキルアンモニウム」としては、具体的には例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−プロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムを挙げることができる。また、「アルカリ金属及びアルカリ土類金属カチオンからなる群より選ばれるカチオン」としては、具体的には例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、バリウムカチオン等を挙げることができる。
【0073】
好ましい緩衝剤としては、具体的には例えば、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、ピロリン酸水素アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、安息香酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の炭素数1〜10のカルボン酸のアンモニウム塩等を挙げることができる。好ましいアンモニウム塩としては、例えば、安息香酸アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等が挙げられる。
【0074】
第一のエポキシ化反応の場合には、当該反応を連続的に行うことが好ましい。例えば、アセトニトリル含有溶剤及び本チタノシリケート含有触媒が収容されたエポキシ化反応槽の中に、原料を連続的に供給して、当該エポキシ化反応槽の中で第一のエポキシ化反応を進行させる。
【0075】
第一のエポキシ化反応のために用いられる原料の一つである過酸化水素は、市販品(即ち、過酸化水素水)を用いればよい。
【0076】
前記過酸化水素の濃度に関して、その種類や反応条件等によって異なるが、例えば、過酸化水素水の中の過酸化水素の濃度として、0.0001重量%〜100重量%の範囲を挙げることができる。より好ましくは、0.001重量%〜5重量%の範囲が挙げられる。
前記過酸化水素の量としては、その種類や反応条件等によって異なるが、例えば、反応系に存在する原料であるオレフィンの量に対する過酸化水素の量(モル比)として、例えば、1000:1〜1:1000の範囲を挙げることができる。
【0077】
第一のエポキシ化反応のために用いられる原料の一つである過酸化水素は、例えば、水、アセトニトリル等の後述する溶剤に溶解させた状態で供給してもよい。因みに、アセトニトリル以外の溶剤で溶解させた状態にある過酸化水素が用いられる場合には、当該溶剤を含む反応マスが得られることになる。
【0078】
前記過酸化水素を溶解させるためのアセトニトリル以外の溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、ケトン溶媒、ニトリル溶媒、エーテル溶媒、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル溶媒、又は、それらの混合物等を挙げることができる。
【0079】
前記アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等の炭素数1〜8の脂肪族アルコール;例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数2〜8のグリコール等を挙げることができる。好ましくは、例えば、炭素数1〜4の1価アルコール等が挙げられる。より好ましくは、例えば、t−ブタノール等を挙げることができる。
前記脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数5〜10の脂肪族炭化水素等を挙げることができる。
前記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数6〜15の芳香族炭化水素等を挙げることができる。
ニトリル溶媒としては、例えば、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、ブチロニトリル等の炭素数2〜4のアルキルニトリル;ベンゾニトリル等を挙げることができる。
【0080】
過酸化水素を溶解させるためのアセトニトリルとしては、例えば、精製アセトニトリル、アクリロニトリルの製造工程で副生する粗アセトニトリル等を挙げることができる。尚、粗アセトニトリルに含まれるアセトニトリル以外の不純物としては、例えば、水、アセトン、アクリロニトリル、オキサゾール、アリルアルコール、プロピオニトリル、青酸、アンモニア、銅、鉄等を挙げることができる。尚、銅及び鉄の含量は、1重量%以下の微量であることが好ましい。
当該アセトニトリルの純度としては、例えば、95重量%以上を挙げることができる。好ましくは99重量%以上が挙げられる。より好ましくは、99.9重量%以上を挙げることができる。
【0081】
またさらに、下記(1)又は(2)の複合触媒(即ち、本チタノシリケート含有複合触媒)の存在下、例えば、プロピレン等のオレフィン、水素及び酸素を反応させても、オキシラン化合物を製造すること(以下、「第二のエポキシ化反応」と記すこともある。)ができる。
<複合触媒>
(1)前項1乃至4のいずれかの前項記載の製造方法によって得られるチタノシリケート含有触媒の上に担持された、例えば、パラジウム等の貴金属を含む複合触媒
(2)前項1乃至4のいずれかの前項記載の製造方法によって得られるチタノシリケート含有触媒と当該チタノシリケート含有触媒とは異なる物質である担体成分の上に担持された、例えば、パラジウム等の貴金属とを含む複合触媒
【0082】
第二のエポキシ化反応のために用いられる原料の一つであるオレフィンがプロピレンである場合には、前記プロピレンは、例えば、第一のエポキシ化反応の場合と同様の原料、純度、形態を有することがよい。
【0083】
前記プロピレン等のオレフィンの量としては、第一のエポキシ化反応の場合と同様の範囲を挙げることができる。
【0084】
本チタノシリケート含有複合触媒の量としては、第一のエポキシ化反応の場合と同様の範囲を挙げることができる。
【0085】
第二のエポキシ化反応のための反応温度としては、第一のエポキシ化反応の場合と同様の範囲を挙げることができる。
【0086】
第二のエポキシ化反応のためには、第一のエポキシ化反応の場合と同様に、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルアリールアンモニウム塩を反応系内に存在させてもよい。このような添加剤の使用により、触媒活性をさらに増大させたり、酸素及び水素の利用効率を向上させる傾向がある。また、前記添加剤の量、種類は、第一のエポキシ化反応の場合と同様である。
【0087】
第二のエポキシ化反応の場合においても、当該反応を連続的に行うことが好ましい。
【0088】
本チタノシリケート含有複合触媒に含まれる貴金属の含量としては、例えば、本チタノシリケート含有複合触媒1重量部に対して、例えば、0.00001重量部以上等を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.0001重量部以上等が挙げられる。より好ましくは、例えば、0.001重量部以上等を挙げることができる。特に好ましくは、例えば、0.01重量%〜20重量%の範囲を挙げることができる。好ましくは、0.1重量%〜5重量%の範囲が挙げられる。
【0089】
尚、本チタノシリケート含有複合触媒が、本チタノシリケート含有触媒と当該チタノシリケート含有触媒とは異なる物質である担体成分の上に担持された、例えば、パラジウム等の貴金属とを含む複合触媒である場合には、ここで用いられる「当該チタノシリケート含有触媒(本チタノシリケート含有触媒)とは異なる物質である担体成分」としては、例えば、カーボン、アルミナ、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム及びこれらが組み合わされた混合物等を挙げることができる。そして、(1)本チタノシリケート含有触媒と(2)当該チタノシリケート含有触媒とは異なる物質である担体成分の上に担持された貴金属とは、両者が各々分離した状態で反応系内に存在するような形態で複合触媒として機能してもよいし、両者が一体となった状態で反応系内に存在するような形態で複合触媒として機能してもよい。
【0090】
第二のエポキシ化反応において、「酸素及び水素」から「過酸化水素」を発生させる場合に用いられるパラジウム等の貴金属としては、例えば、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、金等の貴金属、又は、それら貴金属の合金若しくは混合物を挙げることができる。好ましい貴金属としては、例えば、パラジウム、白金、金等を挙げることができる。より好ましい貴金属としては、例えば、パラジウム等が挙げられる。
【0091】
尚、前記パラジウム又は後述のパラジウム化合物は、例えば、コロイドの形で用いてもよい(例えば、特開2002−294301号公報、実施例1等参照)。
【0092】
前記の貴金属が貴金属化合物であり、且つ、貴金属の主成分がパラジウムである場合において、当該貴金属化合物に、更に白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、金等のパラジウム以外の貴金属も添加混合して用いることもできる。好ましいパラジウム以外の貴金属としては、例えば、白金、金等を挙げることができる。
【0093】
前記パラジウム化合物としては、例えば、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価のパラジウム化合物類;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジブロモテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物類等を挙げることができる。
【0094】
第二のエポキシ化反応において、「酸素及び水素」から「過酸化水素」を発生させる場合に用いられるパラジウム等の貴金属は、本チタノシリケート含有触媒の上に担持された状態にある貴金属、又は、当該チタノシリケート含有触媒とは異なる物質である担体成分の上に担持された貴金属、である。
【0095】
第二のエポキシ化反応において、「酸素及び水素」から「過酸化水素」を発生させる場合に用いられるパラジウム等の貴金属が本チタノシリケート含有触媒の上に担持された状態にある本チタノシリケート含有複合触媒、又は、当該チタノシリケート含有触媒とは異なる物質である担体成分の上に担持された状態にある本チタノシリケート含有複合触媒の調製方法としては、例えば、含浸法等の通常の方法を挙げることができる。尚、含浸法等の通常の方法により得られた本チタノシリケート含有複合触媒は、還元ガスを用いて還元処理することがよい。当該還元処理は、例えば、固体状の本チタノシリケート含有複合触媒が充填された充填管に、還元性ガスを注入することにより還元処理する方法等を挙げることができる。ここで、「還元性ガス」としては、例えば、水素、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン等、又は、これらガスから選ばれる2種以上の混合ガス等を挙げることができる。好ましくは、水素が挙げられる。また還元性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、水蒸気(スチーム)、又は、これら混合ガス等を挙げることができる。
【0096】
第二のエポキシ化反応において、「酸素及び水素」から、パラジウム等の貴金属によって「過酸化水素」を発生させる場合には、反応器に供給する酸素と水素との混合ガスにおける酸素と水素との分圧比としては、例えば、酸素:水素=1:50〜50:1の範囲を挙げることができる。好ましくは、酸素:水素=1:10〜10:1の範囲が挙げられる。酸素:水素=1:50よりも酸素の分圧が高いとプロピレンの炭素・炭素二重結合が水素原子で還元された副生物の生成が低減され、プロピレンオキサイドへの選択性が向上する傾向があることから好ましく、酸素:水素=50:1よりも酸素の分圧が低いとプロピレンオキサイドの生成速度が向上する傾向があることから好ましい。
【0097】
また、酸素と水素との混合ガスは、希釈ガスの共存下で取り扱うことが好ましい。ここで「希釈ガス」としては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン等を挙げることができる。好ましくは、窒素、プロパン等が挙げられる。より好ましくは、例えば、窒素等を挙げることができる。
【0098】
酸素、水素、プロピレン及び希釈ガスを混合して取り扱う場合には、その混合比率について、希釈ガスが窒素ガスである場合を例として説明すると、水素及びプロピレンの合計濃度が4.9体積%以下、酸素濃度は9体積%以下、残りは窒素ガスである場合、又は、水素及びプロピレンの合計濃度が50体積%以上、酸素濃度が50体積%以下、残りが窒素ガスである場合が好ましい。
【0099】
酸素として、酸素ガスの他、酸素を含む空気を用いてもよい。酸素ガスとしては、例えば、安価な圧力スウィング法で製造した酸素ガス、深冷分離等で製造した高純度酸素ガス等を挙げることができる。
酸素の供給量としては、供給プロピレン1モルに対して、例えば、0.005〜10モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、0.05〜5モルの範囲が挙げられる。
【0100】
水素としては、例えば、炭化水素を水蒸気改質して得られたもの等を挙げることができる。水素の純度としては、例えば、80体積%以上を挙げることができる。好ましくは、90体積以上が挙げられる。水素の供給量としては、供給プロピレン1モルに対して、例えば、0.05〜10モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、0.05〜5モルの範囲が挙げられる。
【0101】
第二のエポキシ化反応において、「酸素及び水素」から、パラジウム等の貴金属によって「過酸化水素」を発生させる場合には、オキシラン化合物への選択性を更に増大させる傾向があることから、キノイド化合物を反応系内に存在させることが好ましい。
【0102】
前記キノイド化合物としては、例えば、式(1)

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子を表すか、又は、RとRと、若しくは、RとRとが、互いに結合して、R、R、R及びRのそれぞれが結合している炭素原子とともに、置換基を有していてもよいベンゼン環若しくは置換基を有していてもよいナフタレン環を形成していてもよい。X及びYはそれぞれ独立に、酸素原子若しくはNH基を表す。)
で示される化合物等を挙げることができる。
【0103】
式(1)で示される化合物としては、例えば、
1)式(1)において、R、R、R及びRが水素原子であり、X及びYが共に酸素原子であるキノン化合物(1A)、
2)式(1)において、R、R、R及びRが水素原子であり、Xが酸素原子であり、YがNH基であるキノンイミン化合物(1B)、
3)式(1)において、R、R、R及びRが水素原子であり、X及びYがNH基であるキノンジイミン化合物(1C)
等を例示することができる。
【0104】
式(1)で表される化合物の他の例示として、式(2)

(式中、XおよびYは式(1)において定義されたとおりであり、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基もしくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基)を表す。)
で示されるアントラキノン化合物等を挙げることができる。
【0105】
式(1)で示される化合物におけるX及びYとしては、酸素原子を好ましく挙げることができる。
式(1)で示される化合物としては、例えば、ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン化合物;アントラキノン;例えば、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−ブチルアントラキノン、2−t−アミルアントラキノン、2−イソプロピルアントラキノン、2−s−ブチルアントラキノン、2−s−アミルアントラキノン等の2−アルキルアントラキノン化合物;例えば、1,3−ジエチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,7−ジメチルアントラキノン等のポリアルキルアントラキノン化合物;例えば、2,6−ジヒドロキシアントラキノン等のポリヒドロキシアントラキノン化合物;例えば、ナフトキノン、1,4−フェナントラキノン等のp−キノイド化合物;例えば、1,2−フェナントラキノン、3,4−フェナントラキノン及び9,10−フェナントラキノン等のo−キノイド化合物;
等を挙げることができる。好ましくは、例えば、アントラキノン、2−アルキルアントラキノン化合物(式(2)において、X及びYが酸素原子を表し、Rがアルキル基を表し、Rが水素を表し、R及びRが水素原子を表す。)等が挙げられる。
【0106】
第二のエポキシ化反応において、このようなキノイド化合物の使用量としては、溶剤1kgあたり、例えば、0.001mmol〜500mmolの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.01mmol〜50mmolの範囲が挙げられる。
【0107】
前記キノイド化合物は、キノイド化合物のジヒドロ体を反応系内で酸素等を用いて酸化させることにより調製することもできる。例えば、9,10−アントラセンジオール等のキノイド化合物又はヒドロキノン等が水素化された化合物を液相中に添加することにより、反応系内で酸素酸化してキノイド化合物を発生させて使用してもよい。
前記「キノイド化合物のジヒドロ体」としては、例えば、式(1)で示される化合物のジヒドロ体である式(3)

(式中、R、R、R、R、X及びYは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物、式(2)で示される化合物のジヒドロ体である式(4)

(式中、X、Y、R、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物等を挙げることができる。
式(3)で示される化合物及び式(4)で示される化合物のうち、好ましい化合物としては、前記の好ましいキノイド化合物に対応するジヒドロ体を挙げることができる。また、式(3)で示される化合物及び式(4)で示される化合物におけるX及びYとしては、例えば、酸素原子を好ましく挙げることができる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0109】
<実施例で用いられる各種の分析装置>
(元素分析方法)
本チタノシリケート含有触媒や、本チタノシリケート含有複合触媒に含まれるTi(チタン原子)、Si(ケイ素原子)の重量は、ICP発光分析法により求めた。即ち、白金坩堝に試料約20mgを量り取り、試料上に炭酸ナトリウムを被せた後、ガスバーナーで融解操作を行った。融解後、純水及び硝酸で白金坩堝中の内容物を加熱溶解し、次いで、純水で定容した後、得られた測定溶液をICP発光分析装置(ICPS−8000 島津製作所製)にて分析し、各元素の定量を行った。
N(窒素)は、10−20mgに秤量したサンプルを、スミグラフNCH−22F型(住化分析センター製)を用いた酸素循環燃焼・TCD検出方式にて測定した(反応温度850℃、還元温度600℃)。分離カラムとして、ポーラスポリマービーズ充填カラムを用い、標準試料としてアセトアニリドを使用した。
【0110】
(X線回折法(XRD))
顆粒状の本チタノシリケート含有触媒や、顆粒状の本チタノシリケート含有複合触媒を、以下の装置及び測定条件でX線回折パターンを測定した。
・装置:理学電機社製RINT2500V
・線源:銅K−アルファ放射線
・出力:40kV−300mA
・走査範囲:2θ=0.75°〜30°
・走査速度:1°/分
【0111】
(紫外可視吸収スペクトル(UV−Vis))
本チタノシリケート含有触媒や、本チタノシリケート含有複合触媒を、メノウ乳鉢でよく粉砕し、更にペレット化(7mmφ)することにより測定用サンプルを調製した。得られた測定用サンプルについて、以下の装置及び測定条件で紫外可視吸収スペクトルを測定した。
・装置:拡散反射装置(HARRICK製 Praying Mantis)
・付属品:紫外可視分光光度計(日本分光製 V−7100)
・圧力:大気圧
・測定値:反射率
・データ取込時間:0.1秒
・バンド幅:2nm
・測定波長:200〜900nm
・スリット高さ:半開
・データ取込間隔:1nm
・ベースライン補正(リファレンス):BaSO4ペレット(7mmφ)
【0112】
(チタノシリケート粒子の粒度分布測定)
チタノシリケート粒子を、以下の装置及び測定条件で粒度分布を測定した。
・装置:(株)堀場製作所製LA−950V2
・試料前処理:内部超音波(40kHz)10分照射による粒子分散処理
・データ取り込み回数(試料、ブランク):5000回
・屈折率:試料(1.47)、分散媒(水)(1.333)
・d(0.90)値計算:体積基準
【0113】
実施例1 本チタノシリケート含有触媒(触媒A)の製造方法(第一工程:チタノシリケート粉末の調製)
ピペリジン(和光純薬株式会社製)899g、イオン交換水2402g、TBOT(テトラ−n−ブチルオルソチタネート、和光純薬株式会社製)46.4g、ホウ酸(和光純薬株式会社製)565g及びヒュームドシリカ(cab−o−sil M7D、キャボット社製)410gをオートクレーブ中で、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。得られたゲルを更に1.5時間攪拌させた後、上記オートクレーブを密閉した。次いで、ゲルを撹拌しながら8時間かけて当該ゲルの温度を150℃になるまで昇温させた後、同温度で120時間保持することにより懸濁液を得た。得られた懸濁液をろ過した後、ろ液のpHが10.3になるまで水洗した。得られた固形分を重量減少が見られなくなるまで50℃で乾燥することにより、524gの固体1を得た。
上記固体1 75gに2M硝酸3750mL及びTBOT(和光純薬株式会社製)9.5gを加えた後、これを加熱しながら20時間還流させた。次いで、得られた固体生成物をろ過し、ろ液のpHが5以上になるまで水洗し、続いて、水洗した固体生成物の重量減少が見られなくなるまで当該固体生成物を150℃で加熱しながら真空乾燥することにより、59gの白色粉末を得た。この操作を2回繰り返し計118gの白色粉末(チタノシリケート粉末1)を得た。当該チタノシリケート粉末のX線回折パターンは、12.3d/Å、11.0d/Å、9.0d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認された。更に、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケート(Ti−MWW前駆体)であることが判明した。
【0114】
実施例2 本チタノシリケート含有触媒(触媒A)の製造方法(第二工程:チタノシリケート粉末の粉砕)
実施例1で得られたチタノシリケート粉末1 100gにイオン交換水900gを加えよく混合することにより、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを1200Wの出力を持つ超音波で5分間前処理し、更にナノマイザーシステム(NM2−L200−D 吉田機械興業社製)で処理することにより、スラリー1を得た。スラリー1の粒度分布を測定した結果、体積基準d(0.90)値=0.397μmであり、1μm以下であることが確認された。
【0115】
実施例3 本チタノシリケート含有触媒(触媒A)の製造方法(第三工程:成形体の作製)
実施例2で得られたスラリー1 1000gにSiO2含量20.4%の結合剤(スノーテックスN、日産化学株式会社製)49.0gを混合した後、スプレードライヤー(四流体ノズル式)を用いて噴霧乾燥することにより、顆粒としての成形体を作製した(95g:成形体1)。得られた成形体の体積基準メジアン径d(0.5)=7.08μmであった。
【0116】
実施例4 本チタノシリケート含有触媒(触媒A)の製造方法(第四工程:加熱及び構造規定剤処理)
第三工程で得られた成形体1 40gを530℃で6時間加熱することにより、36gの成形体2を得た。ピペリジン(和光純薬株式会社製)22.5g、イオン交換水45g及び成形体2 7.5gをオートクレーブ中、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。当該ゲルを更に1.5時間攪拌させた後、上記オートクレーブを密閉した。次いで、ゲルを撹拌しながら4時間かけて当該ゲルの温度を160℃になるまで昇温させた後、同温度で16時間保持することにより、懸濁液を得た。得られた懸濁液をろ過した後、ろ液のpHが9.3になるまで水洗した。得られた固形物を重量減少が見られなくなるまで150℃で加熱しながら真空乾燥することにより、6.7gの白色粉末を得た(触媒A)。得られた触媒AのX線回折パターンは、12.3d/Å、11.1d/Å、9.0d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認された。紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケート(Ti−MWW前駆体)であることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は1.71重量%であった。得られた成形体の体積基準メジアン径d(0.5)=8.57μmであった。
【0117】
実施例5 本チタノシリケート含有触媒(触媒B)の製造方法(第一工程:チタノシリケート粉末の調製)
ピペリジン(和光純薬株式会社製)265.2g、イオン交換水666.9g、TBOT(テトラ−n−ブチルオルソチタネート、和光純薬株式会社製)13.3g、ホウ酸(和光純薬株式会社製)156.6g、フッ化アンモニウム(和光純薬株式会社製)146.2g及びヒュームドシリカ(cab−o−sil M7D、キャボット社製)117.0gをオートクレーブ中で、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。得られたゲルを更に1.5時間攪拌させた後、上記オートクレーブを密閉した。次いで、ゲルを撹拌しながら8時間かけて当該ゲルの温度を165℃になるまで昇温させた後、同温度で168時間保持することにより懸濁液を得た。得られた懸濁液をろ過した後、ろ液のpHが8.3になるまでイオン交換水を用い水洗した。得られた固形分を重量減少が見られなくなるまで50℃で乾燥し、135.3gの固体2を得た。
上記固体2 15gに2M硝酸750mL及びTBOT(和光純薬株式会社製)1.9gを加えた後、これを加熱しながら8時間還流させた。次いで、得られた固体生成物をろ過し、ろ液のpHが5以上になるまで水洗し、続いて、水洗した固体生成物の重量減少が見られなくなるまで当該固体生成物を150℃で加熱しながら真空乾燥することにより、11.5gの白色粉末を得た。この操作を4回繰り返し計46gの白色粉末(チタノシリケート粉末2)を得た。当該チタノシリケート粉末のX線回折パターンは、12.3d/Å、11.1d/Å、8.9d/Å、6.2d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認された。更に、紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケート(Ti−MWW前駆体)であることが判明した。
【0118】
実施例6 本チタノシリケート含有触媒(触媒B)の製造方法(第二工程:チタノシリケート粉末の粉砕)
実施例5で得られたチタノシリケート粉末2 41.6gにイオン交換水374.5gを加えよく混合することにより、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを1200Wの出力を持つ超音波で5分間前処理し、更にナノマイザーシステム(NM2−L200−D 吉田機械興業社製)で処理することにより、スラリー2を得た。スラリー2の粒度分布を測定した結果、体積基準d(0.90)値=0.340μmであり、1μm以下であることが確認された。
【0119】
実施例7 本チタノシリケート含有触媒(触媒B)の製造方法(第三工程:成形体の作製)
実施例6で得られたスラリー2 416.1gにSiO2含量20.4%の結合剤(スノーテックスN、日産化学株式会社製)20.4gを混合した後、スプレードライヤー(四流体ノズル式)を用いて噴霧乾燥することにより、顆粒としての成形体を作製した(44g:成形体2)。得られた成形体の体積基準メジアン径d(0.5)=4.95μmであった。
【0120】
実施例8 本チタノシリケート含有触媒(触媒B)の製造方法(第四工程:加熱及び構造規定剤処理)
第三工程で得られた成形体2 40gを530℃で6時間加熱することにより、36gの成形体2を得た。ピペリジン(和光純薬株式会社製)22.5g、イオン交換水45g及び成形体2 7.5gをオートクレーブ中、25℃にて撹拌しながら溶解することによりゲルを得た。当該ゲルを更に1.5時間攪拌させた後、上記オートクレーブを密閉した。次いで、ゲルを撹拌しながら4時間かけて当該ゲルの温度を160℃になるまで昇温させた後、同温度で16時間保持することにより、懸濁液を得た。得られた懸濁液をろ過した後、ろ液のpHが9.3になるまで水洗した。得られた固形物を重量減少が見られなくなるまで150℃で加熱しながら真空乾燥することにより、6.7gの白色粉末を得た(触媒A)。得られた触媒BのX線回折パターンは、12.3d/Å、11.1d/Å、8.9d/Å、6.2d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認された。紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケート(Ti−MWW前駆体)であることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は1.78重量%であった。得られた成形体の体積基準メジアン径d(0.5)=4.85μmであった。
【0121】
比較例1 チタノシリケート含有触媒(触媒C)の製造方法
実施例1で得られた白色固体を直接、実施例4における構造規定剤処理に供したところ、触媒粉末が得られた(触媒C)。得られた触媒CのX線回折パターンは、12.3d/Å、11.0d/Å、9.0d/Å、6.1d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認された。紫外可視吸収スペクトルから、チタノシリケート(Ti−MWW前駆体)であることが判明した。また、元素分析により、チタン含量は2.08重量%であった。
【0122】
実施例9 プロピレンオキサイドの製造例1
触媒A 0.1g、及び、0.1重量%の過酸化水素を含む水/アセトニトリル=1/4(重量比)の溶液100gの混合物を、室温(約20℃)下、1時間攪拌した。得られた混合物をろ過した。得られたケークを500mLの水で洗浄することにより、過酸化水素処理されたチタノシリケートを得た。
過酸化水素30重量%を含有する水溶液(和光純薬株式会社製)、アセトニトリル(ナカライテスク社製)及びイオン交換水を混合することにより、0.5重量%の過酸化水素を含むアセトニトリル/水混合溶媒(アセトニトル/水=4/1(重量比))溶液を調製した。調製された溶液60gと、触媒A 0.010gとを100mLステンレスオートクレーブに充填した。次いで、オートクレーブを氷浴上に移し、プロピレン1.2gを充填した。更に、アルゴンで2MPa(ゲージ圧)までオートクレーブ内を昇圧した。オートクレーブ内の混合液を攪拌しながら、15分かけて60℃まで昇温し、同温度にて1時間攪拌した。次いで、攪拌を止めオートクレーブを氷冷した。
氷冷後、得られた混合液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、単位チタノシリケート重量あたりのプロピレンオキサイド生成活性は0.632mol・h−1・g−1であった。
【0123】
実施例10 プロピレンオキサイドの製造例2
触媒Aの代わりに実施例8で得られた触媒Bを用いたこと以外は、実施例9と同様の操作を行った。その結果、単位チタノシリケート重量あたりのプロピレンオキサイド生成活性は1.646mol・h−1・g−1であった。
【0124】
比較例2 プロピレンオキサイドの比較製造例1
触媒Aの代わりに比較例1で得られた触媒Cを用いたこと以外は、実施例9と同様の操作を行った。その結果、単位チタノシリケート重量あたりのプロピレンオキサイド生成活性は0.600mol・h−1・g−1であった。
【0125】
上記の通り、過酸化水素を用いたプロピレンのエポキシ化反応(即ち、第一のエポキシ化反応)において、本チタノシリケート含有触媒は、オレフィンオキサイドの高い生成活性を有する。
【0126】
実施例11
本チタノシリケート含有複合触媒を製造するため、噴霧乾燥した本チタノシリケート含有触媒にパラジウムを加える。
本チタノシリケート含有触媒6gとPdテトラアンミンクロリド0.18mmolを含む水300mLとを1Lナスフラスコ中に加え、空気下、20℃にて撹拌する。8時間の攪拌後、ロータリーエバポレータを用いて水分を除去し、80℃にて6時間真空乾燥し、更に窒素気流下300℃で6時間焼成し、チタノシリケート含有複合触媒を得る。理論的なパラジウム量は0.317重量%である。
このようにして得られた本チタノシリケート含有複合触媒は、オレフィンオキサイドの高い生成活性を有する。
上記で製造された本チタノシリケート含有複合触媒が公知な方法に従って酸化プロピレンの製造を触媒作用させることに使用される。
容量0.3Lのオートクレーブを反応器として用い、当該反応器に、上記チタノシリケート含有複合触媒 3.33gを仕込んだ後、密閉し、反応器中に、酸素/水素/窒素の体積比が3.3/3.6/93.1であるガスを281L/時間の供給速度で、0.7mmol/kgのアントラキノン、3.0mmol/kgのリン酸水素2アンモニウム塩を含む水/アセトニトリル=30/70(重量比)の溶液を90g/時間の供給速度で、プロピレンを36g/時間の供給速度で、それぞれ供給し、反応器からフィルターを介して反応生成物を含む溶液(液相)及び生成ガス(気相)を反応混合物から抜き出すという連続式反応(滞留時間:60分間)を行う。この間、反応器中の内容物の温度を50℃、反応器中圧力を4.0MPa(ゲージ圧)とし、プロピレンオキサイドを生成させる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明により、オレフィンオキサイドの生成活性が高いチタノシリケート含有触媒を提供すために必要となる新規な製造方法を提供することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタノシリケート含有触媒の製造方法であって、
(1)格子面間隔表示で下記の位置にピークを有するX線回折パターンを示すチタノシリケート粒子を、その粒子の体積基準d(0.90)値が1μm以下の範囲を満たすまで、湿式法にて粉砕する工程、及び、
(2)前記工程により得られた粉砕物に結合剤を添加し、得られた混合物を顆粒として成形する工程を含むことを特徴とする製造方法。
<X線回折パターンにおけるピークの格子面間隔表示による位置(格子面間隔d/Å)>
12.4±0.8、10.8±0.5、9.0±0.3、6.0±0.3、3.9±0.3、3.4±0.1
【請求項2】
前記粉砕物が、体積基準d(0.90)値が1μm以下であるチタノシリケート粒子の水性懸濁物であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
湿式法による粉砕工程が、前記チタノシリケート粒子を含む水性懸濁物を高圧ポンプを用いて微細な流路が形成された硬質材料製ジェネレーター内に高速で送り込むことで前記ジェネレーター通過時に発生する剪断力によって、前記チタノシリケート粒子を粉砕する工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
顆粒成形工程が、噴霧乾燥法を用いて前記混合物を顆粒として成形する工程であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項記載の製造方法。
【請求項5】
オレフィンを、請求項1乃至4のいずれかの請求項記載の製造方法によって得られるチタノシリケート含有触媒を用いた触媒反応により、過酸化水素でエポキシ化する工程を含むことを特徴とするオキシラン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記オレフィンが、プロピレンであることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
下記(1)又は(2)の複合触媒の存在下、オレフィン、水素及び酸素を反応させる工程を含むことを特徴とするオキシラン化合物の製造方法。
<複合触媒>
(1)請求項1乃至4のいずれかの請求項記載の製造方法によって得られるチタノシリケート含有触媒の上に担持された貴金属を含む複合触媒
(2)請求項1乃至4のいずれかの請求項記載の製造方法によって得られるチタノシリケート含有触媒と当該チタノシリケート含有触媒とは異なる物質である担体成分の上に担持された貴金属とを含む複合触媒
【請求項8】
前記オレフィンが、プロピレンであることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記貴金属が、パラジウムであることを特徴とする請求項7又は8記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−236177(P2012−236177A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108174(P2011−108174)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】