説明

チタン含有潤滑油組成物

【課題】 完全に調製された潤滑油、潤滑面、および潤滑剤濃縮物、スラッジ形成を低減する潤滑剤。
【解決手段】 完全に調製された潤滑油組成物の中には、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた、少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物が含まれる。この潤滑油組成物はまた、実質的にモリブデン化合物を欠いている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本請求書は、2004年7月19日に提出され、現在の係属中の出願番号第10/894,327号の一部継続出願であり、また2005年3月14日に提出され、現在係属中の出願番号第11/080,007号の一部継続出願である。
【技術分野】
【0002】
この開示は潤滑油組成物に関連する。より詳しくは、本開示はチタン含有化合物を含んだ、潤滑性能特性を改善する潤滑油組成物に関連する。
【発明の背景】
【0003】
内燃エンジンを潤滑するために使用される潤滑油組成物には、潤滑粘度の基油またはこのようなオイルの混合物、およびオイルの性能特性を改善するために使用される添加剤が含有される。例えば添加剤は、清浄力の改善、エンジンの磨耗低減、熱および酸化に対する安定性の提供、オイル消費量の低減、腐食の防止、分散剤としての作用、磨耗損失の低減などのために使用される。添加剤の中には分散剤−粘度調整剤のように複数の利点をもたらすものもある。他の添加剤のなかには、潤滑油の一つの特性を改善しながら、他の特性に害を及ぼすものもある。従って潤滑油に総合的に最適な性能を与えるためには、使用できる多様な添加剤のすべての効果を特性化して理解し、注意深く潤滑剤の添加剤含有量のバランスをとることが必要である。
【0004】
多くの特許や文献(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8)が、油溶性のモリブデン化合物が潤滑剤として有用であることを示唆している。モリブデン化合物、特にモリブデンジチオカルバメート化合物をオイルに加えることにより、オイルの境界摩擦特性が改善され、ベンチテストにより、このようなモリブデン化合物を含むオイルの摩擦係数が通常有機摩擦低減剤を含むオイルの摩擦係数よりも低いことが明示されている。この摩擦係数の低減は耐摩耗性の改善につながり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの、短期および長期の両方の燃費特性(つまり燃費保持特性)を含む燃費の向上に貢献する。耐磨耗剤効果をもたらすために、通常約350ppmから2,000ppmまでのモリブデンをオイル中に導入する量のモリブデン化合物が添加される。モリブデン化合物は効果的な耐磨耗剤であり、さらに燃費の利点ももたらすが、このようなモリブデン化合物は、従来の金属を含まない(無灰の)有機摩擦低減剤に比べ、高価である。
【0005】
前述にもかかわらず、モリブデンベースの摩擦低減剤の存在なしで同等あるいはより優れた性能を潤滑剤組成物にもたらす、より費用効率の良い潤滑剤組成物の必要性は継続する。
【特許文献1】米国特許第4,164,473号
【特許文献2】米国特許第4,176,073号
【特許文献3】米国特許第4,176,074号
【特許文献4】米国特許第4,192,757号
【特許文献5】米国特許第4,248,720号
【特許文献6】米国特許第4,201,683号
【特許文献7】米国特許第4,289,635号
【特許文献8】米国特許第4,479,883号
【発明の開示】
【0006】
第一の態様に基づき、本開示の一つの例示的実施態様は、同等あるいはより優れた潤滑
性をもたらす、実質的にモリブデン化合物を欠いた改善された潤滑油組成物を提供する。この潤滑油組成物中には、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた、少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤が含まれている。金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および摩擦低減剤として炭化水素に可溶なチタン化合物もまた、潤滑油中に含まれている。この潤滑油組成物は、実質的にモリブデン化合物を欠いている。
【0007】
第二の態様に基づき、本開示は潤滑剤組成物中のスラッジを減少させるための潤滑剤濃縮物を提供する。この濃縮物はモリブデンを欠いており、ヒドロカルビル担体液と、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた、少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤を含んでいる。またこの濃縮物には、約10ppmから約500ppmのチタンを潤滑剤組成物にもたらす、摩擦低減剤として炭化水素に可溶なチタン化合物も含まれる。
【0008】
第三の態様に基づき、本開示は、潤滑粘度の基油と添加剤パッケージを含んだ潤滑剤組成物が接触している潤滑面を提供する。この添加剤パッケージには、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた、少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤が含まれる。また当該添加剤パッケージには、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および摩擦低減剤として炭化水素に可溶なチタン化合物も含まれている。表面に接触した潤滑剤組成物は、実質的にモリブデン化合物を含まない。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、潤滑粘性の基油成分とスラッジを減少させる潤滑剤を含む、完全に調製された潤滑剤組成物を提供する。当潤滑剤は、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた、少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および約10ppmから約500ppmのチタンを潤滑剤組成物にもたらす、摩擦低減剤として炭化水素に可溶なチタン化合物を含んでいる。この潤滑剤組成物もまた、実質的にモリブデン化合物を欠いている。
【0010】
本開示のさらに別の態様では、潤滑粘度の基油と、炭化水素に可溶なチタン化合物を含まない潤滑剤組成物の表面の磨耗の低減以上の表面の磨耗の低減、炭化水素に可溶なチタン化合物を含まない潤滑剤組成物の酸化の低減以上の潤滑剤組成物の酸化の低減、および、炭化水素に可溶なチタン化合物を含まない潤滑剤組成物中のスラッジ形成の低減以上の潤滑剤組成物中のスラッジ形成の低減の中から選択された改善された潤滑性をもたらすために効果的な量の、少なくとも一つの炭化水素に可溶なチタン化合物を含んだ、潤滑剤組成物が提供されている。
【0011】
開示された実施態様の利点の一つは、チタン化合物を含んだ組成物や従来のコハク酸イミド系の分散剤に比べ、スラッジの低減が著しく改善されていることである。前述の利点は、潤滑剤組成物中にモリブデンを含んだ化合物が存在しなくても得られる。その他の利点として、潤滑剤組成物の摩擦係数の低減、表面の磨耗の低減、および/または酸化の低減などが挙げられる。開示された実施例のその他のまたはさらなる目的、利点および特徴は、以下を参照することで理解できる。
【0012】
(例示的実施態様の説明)
本明細書に開示された潤滑油組成物に対し、潤滑油組成物中で摩擦低減および/または極圧、および/または抗酸化、および/または耐摩耗性、および/またはスラッジ低減特性を有する、任意の好適な炭化水素に可溶なチタン化合物が、単独であるいは他の添加剤との組み合わせで使用される。「炭化水素に可溶性」、「油溶性」、または「分散性」な
どの用語は、これらの化合物が炭化水素化合物またはオイル中にあらゆる比率で可溶性である、溶ける、混和性がある、あるいは懸濁が可能であるという意味を表すものではない。しかしながらこれらは、例えばオイルが使用される環境下において、意図された効果を及ぼすために十分な量がオイル中に可溶または安定的に分散可能であることを意味する。さらに、他の添加剤を追加的に混入することにより、必要に応じてより高いレベルの特定の添加剤の混入が可能になる。
【0013】
「炭化水素に可溶な」という用語は、マグネシウム化合物と炭化水素系の物質との反応あるいは錯体形成により、化合物が実質的に炭化水素系の物質中に懸濁あるいは溶解していることを意味する。本明細書で使用される「炭化水素」とは、炭素、水素および/または酸素を様々な組み合わせで含んでいる、任意の膨大な数の化合物を意味する。
【0014】
「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子が分子の残りの部分に直接結合しており、また主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
(i)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、また芳香族、脂肪族、および脂環基によって置換された芳香族置換基、また環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環式ラジカルを形成している)ような環状置換基;
(ii)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の状況下で、主に炭化水素である置換基などを変化させないような、非炭化水素基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を含んだ置換基;
(iii)ヘテロ置換基、すなわち、主に本発明の状況下で、主に炭化水素の特性を有しながら、そうでなければ炭素原子から成る環または鎖の中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、および窒素があり、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。一般的には、ヒドロカルビル基中、炭素原子10個につき二つ以下、好ましくは一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。典型的にヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0015】
重要なことに、リガンドの有機基は、オイルまたは炭化水素液中における可溶性または分散性を化合物にもたらすために十分な数の炭素原子を有している。例えば、各基に含まれる炭素原子の数は通常約1から約100、望ましくは約1から約30、より望ましくは約4から約20の間である。
【0016】
本明細書の、例えば摩擦低減剤、極圧添加剤、あるいは抗酸化剤としての使用に適した炭化水素に可溶なチタン化合物は、チタンアルコキシドと約Cから約C25のカルボン酸との反応生成物から得られる。当反応生成物は、以下の化学式によって表され:
【化1】

式中、nは2、3、および4の中から選択された整数であり、Rは約5つから約24の炭素原子を含んだヒドロカルビル基であるか、あるいは以下の化学式によって表され:
【化2】

式中、R、R、R、およびRはそれぞれ同一あるいは異なったもので、炭素数が約5つから約25のヒドロカルビル基の中から選択される。前述の化学式の化合物は、実質的にリンおよび硫黄を含んでいない。
【0017】
ある実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物から成る潤滑剤あるいは調合潤滑剤パッケージの硫黄含有量が0.7重量%以下、またリンの含有量を約0.12重量%以下とするため、この炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的にあるいは原則的に硫黄およびリン原子を欠いているか、またはこれらを含まない。
【0018】
別の実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的に活性硫黄を含んでいない。「活性」硫黄とは完全に酸化されていない硫黄のことである。活性硫黄は使用されるとオイル中でさらに酸化され、より酸性となる。
【0019】
また別の実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的にすべての硫黄を含んでいない。さらに別の実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的にすべてのリンを含んでいない。また別の実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物は実質的にすべての硫黄およびリンを含んでいない。例えば、その中にチタン化合物が溶解している基油には、ある実施態様においては約0.5重量%未満、また別の実施態様においては約0.03重量%以下というように、比較的少量の硫黄(例えばグループIIの基油の場合)が含まれる。またさらに別の実施態様では、基油中の硫黄および/またはリンの含有量は、完成したオイルが、モーターオイルの硫黄および/またはリンの、所定の時間有効である適切な仕様を満たすことを可能にする量に限られている。
【0020】
チタン/カルボン酸生成物の例には、原則的にカプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸、その他から成るグループから選択された酸とのチタン反応生成物が含まれるが、これらに限定はされない。このようなチタン/カルボン酸製品を作る方法は、例えばその開示が本明細書に参考することにより組み込まれている、米国特許第5,260,466号に記載されている。
【0021】
以下の例は、実施例の態様を例示することを目的としたものであり、実施例をいかようにも限定することを意図するものではない。
【0022】
【実施例】
【0023】
例1
ネオデカン酸チタンの合成
ネオデカン酸(約600グラム)を、コンデンサー、ディーンスタークトラップ、温度計、熱電対、およびガスの注入口を備えた反応容器に入れた。酸の中に窒素バブルを入れ
た。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約245グラム)をゆっくりと反応容器に加えた。この反応物を約140℃まで加熱し、1時間かくはんした。反応により得られたオーバーヘッドと凝縮物をトラップに収集した。反応容器を減圧し、反応物質をさらに2時間、反応が完了するまでかくはんした。生成物の分析により、当生成物の100℃での運動学的粘性が約14.3cSt、またチタン含有量が約6.4重量パーセントであることが示された。
【0024】
例2
オレイン酸チタンの合成
オレイン酸(約489グラム)を、コンデンサー、ディーンスタークトラップ、温度計、熱電対、およびガスの注入口を備えた反応容器に入れた。酸の中に窒素バブルを入れた。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約122.7グラム)をゆっくりと反応容器に加えた。この反応物を約140℃まで加熱し、1時間かくはんした。反応により得られたオーバーヘッドと凝縮物をトラップに収集した。反応容器を減圧し、反応物質をさらに2時間、反応が完了するまでかくはんした。生成物の分析により、当生成物の100℃での運動学的粘性が約7.0cSt、またチタン含有量が約3.8重量パーセントであることが示された。
【0025】
本明細書に記載の実施態様の炭化水素に可溶なチタン化合物は、潤滑剤組成物中に効果的に組み込まれている。従ってこの炭化水素に可溶なチタン化合物を、潤滑油組成物に直接加えることができる。しかしながら一つの実施例では、炭化水素に可溶なチタン化合物は、鉱油、合成油(例えばジカルボン酸のエステル)、ナフサ、アルキル化(例えばC10−C13のアルキル)ベンゼン、トルエン、またはキシレンのような、実質的に不活性で通常は液体である有機希釈剤によって希釈され、金属添加剤濃縮物を形成する。チタン系添加剤濃縮物には通常、約0重量%から約99重量%の希釈油が含有されている。
【0026】
開示された実施態様の潤滑剤組成物には、少なくとも1ppmのチタンを組成物に提供するだけの量のチタン化合物が含有される。例えばチタン化合物から得られる少なくとも10ppmのチタンは、単独で、あるいは窒素含有摩擦低減剤、有機ポリスルフィド摩擦低減剤、アミンを含まない摩擦低減剤、および有機無灰のアミンを含まない摩擦低減剤などの中から選択される第二の摩擦低減剤との組み合わせにより、摩擦を低減する効果があることが分かっている。
【0027】
望ましくは、チタン化合物から得られたチタンが、潤滑剤組成物の総重量に基づき、例えば10ppmから1000ppmなどのように、約10ppmから約1500ppm、さらに望ましくは約50ppmから約500ppm、またさらに望ましくは約75ppmから約250ppmの量で存在する。このようなチタン化合物はまた、潤滑油組成物に摩耗性を提供するため、これを使用することにより使用される金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート耐摩耗剤(例えばZDDP)の量を減少させることができる。業界の動向は、リンの含有量を250ppmから750ppm、あるいは250ppmから500ppmというように1000ppm未満とするために、潤滑油に加えるZDDPの量の減少に向かっている。このようなリン含有量の低い潤滑油組成物に十分な耐摩耗性を提供するためには、少なくとも質量50ppmのチタンを提供できる量のチタン化合物が存在しなくてはならない。チタンおよび/または亜鉛の量は、ASTM D5185に記載の方法により、誘導結合プラズマ(ICP)発光スペクトロスコピーを使用して決定される。
【0028】
同様に、潤滑剤組成物中でのチタン化合物の使用により、潤滑剤組成物中の抗酸化剤および極圧添加剤の減少が促進される。
【0029】
分散剤
スラッジのできる傾向が低減された潤滑剤組成物の、もう一つの重要な成分として、きわめて反応性の高いポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つの分散剤がある。このポリアルキレン化合物の数平均分子量は、約400から約5000、あるいはそれ以上である。「きわめて反応性の高い」という用語は、化合物中の残留ビニリデン二重結合の数が約45%以上であることを意味する。例えば化合物中で、残留ビニリデン二重結合の数は、約50%から約85%である。化合物中の残留ビニリデン二重結合のパーセンテージは、例えば赤外分光法やC13核磁気共鳴、あるいはそれらの組み合わせなどのような、周知の方法によって決定される。このような化合物の製造プロセスは、例えば米国特許第4,152,499号に記載されている。特に好適な化合物は、重量平均分子量の数平均分子量に対する比率が約1から約6のポリイソブテンである。
【0030】
使用される分散剤としては、アミン、アルコール、アミド、またはしばしば架橋基(bridging group)を通してポリマーの骨格に結合したエステルの極性部分などがあるが、これらに限定はされない。分散剤は、例えば米国特許第3,697,574号や3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および4,636,322号に記載の無灰コハク酸イミド分散剤;米国特許第3,219,666号、3,565,804号、および5,633,326号に記載のアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、5,643,859号、および5,627,259号に記載のコッホ分散剤、また米国特許第5,851,965号、5,853,434号、および5,792,729号に記載のポリアルキレンコハク酸イミド系の分散剤の中から選択される。
【0031】
特に好適な分散剤は、上述のポリイソブテン(PIB)化合物から得られたポリアルキレンコハク酸イミド系の分散剤であり、この分散剤の反応性PIB含有量は少なくとも約45%である。特に好適な分散剤は、この分散剤には、数平均分子量が約800から約3000で、反応性PIBの含有量が約50%から約60%であるような分散剤の混合物もある。潤滑剤組成物中の分散剤の総量は、潤滑剤組成物の総重量の約1重量パーセントから約10重量パーセントである。
【0032】
摩擦低減剤
上述のチタン化合物以外の油溶性摩擦低減剤が、第二の摩擦低減剤として、本明細書に記載の潤滑油組成物に組み込まれることもある。第二の摩擦低減剤は、窒素含有摩擦低減剤、窒素を含まない摩擦低減剤および/またはアミンを含まない摩擦低減剤の中から選択される。典型的に、第二の摩擦低減剤は、潤滑油組成物の約0.02重量%から2.0重量%の量で使用される。望ましくは、0.05重量%から1.0重量%、より望ましくは0.1重量%から0.5重量%の第二の摩擦低減剤が使用される。
【0033】
使用される、このような窒素含有摩擦低減剤の例として、イミダゾリン、アミド、アミン、コハク酸イミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第4級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン(amino guanadine)、アルカノールアミド等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0034】
このような摩擦低減剤には、直鎖、分岐鎖、または芳香族のヒドロカルビル基やそれらの混合物の中から選択されたヒドロカルビル基が含まれ、これらは飽和でも不飽和でもよい。ヒドロカルビル基は主に炭素と水素から成るが、硫黄や酸素などの一つ以上のヘテロ原子が含まれてもよい。好適なヒドロカルビル基の炭素数は12から25であり、飽和でも不飽和でもかまわない。より好ましくは、これらは線状ヒドロカルビル基である。
【0035】
例示的摩擦低減剤として、ポリアミンのアミドが挙げられる。このような化合物は、線
状の、飽和あるいは不飽和またはその混合のヒドロカルビル基を有し、その炭素数は約12から約25以下である。
【0036】
その他の例示的摩擦低減剤として、アルコキシル化アミンとアルコキシル化エーテルアミンがあるが、アルコキシル化アミンに、窒素1モルにつき約2モルのアルキレンオキシドが含まれていることが最も好ましい。このような化合物は、線状の、飽和あるいは不飽和またはその混合のヒドロカルビル基を有することができる。これらの炭素数は約12から約25以下であり、ヒドロカルビル鎖中に一つ以上のヘテロ原子が含まれていてもよい。エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンは、特に好適な窒素含有摩擦低減剤である。アミンおよびアミドは、そのまま、あるいは付加化合物、または酸化ホウ素、ホウ素ハロゲン化物、メタホウ酸塩、ホウ酸、またはホウ酸モノアルキル、ホウ酸ジアルキル、あるいはホウ酸トリアルキルのようなホウ素化合物との反応生成物の形態で使用される。
【0037】
摩擦低減剤として使用される無灰有機ポリスルフィド化合物として、以下の式で表される、二つ以上の隣接した硫黄原子を有する硫黄原子基が分子構造中に存在する、オイル、または脂肪あるいはポリオレフィンの硫化物のような有機化合物がある。
【化3】

【0038】
上記の式中、RおよびRはそれぞれ、直鎖、分岐鎖、脂環式ユニット、あるいは芳香族ユニットがあらゆる組み合わせで選択的に含まれている、直鎖、分岐鎖、脂環式、あるいは芳香族の炭化水素基を表している。不飽和結合が含まれることもあるが、飽和炭化水素基のほうが望ましい。これらの中で、アルキル基、アリル基、アルキルアリル基、ベンジル基、およびアルキルベンジル基は特に好適である。
【0039】
およびRはそれぞれ、二つの結合サイトがあり、直鎖、分岐鎖、脂環式ユニット、あるいは芳香族ユニットがあらゆる組み合わせで選択的に含まれている、直鎖、分岐鎖、脂環式、あるいは芳香族の炭化水素基を表している。不飽和結合が含まれることもあるが、飽和炭化水素基のほうが望ましい。これらの中では、アルキレン基が特に好適である。
【0040】
およびRはそれぞれ、直鎖または分岐鎖の炭化水素基を表している。下付き文字「x」および「y」はそれぞれ2以上の整数を表している。
【0041】
例えば、特に硫化鯨油、硫化ピネン油、硫化大豆油、硫化ポリオレフィン、ジアルキルジスルフィド、ジアルキルポリスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジ−t−ブチルジスルフィド、ポリオレフィンポリスルフィド、およびビス−アルキルポリスルファニルチアジアゾールのようなチアジアゾール系化合物、および硫化フェノールなどについて言及されることがある。これらの化合物の中では、ジアルキルポリスルフィド、ジベンジルジスルフィド、およびチアジアゾール系の化合物が望ましい。特に望ましいのはビス−アルキルポリスルファニルチアジアゾールである。
【0042】
潤滑剤として、ポリスルフィド結合を有するCaフェネートのような金属含有化合物が使用されてもよい。しかしながら、この化合物は摩擦係数が大きいため、このような化合物の使用が常に適切であるわけではない。反対に、上記の有機ポリスルフィド化合物は、金属をまったく含まない無灰化合物であるが、他の摩擦低減剤と組み合わせて使用された場合、長時間にわたり摩擦係数を低く維持する優れた性能を表す。
【0043】
上述の無灰有機ポリスルフィド化合物(以後簡単に「ポリスルフィド化合物」と記す)は、硫黄(S)として計算された場合、潤滑剤組成物の総量に対して0.01重量%から0.4重量%、典型的には0.1重量%から0.3重量%、また望ましくは0.2重量%から0.3重量%の量で添加される。添加量が0.01重量%未満であると目的とする効果が得にくくなり、また0.4重量%より上であると腐食磨耗が増加する危険がある。
【0044】
本明細書で開示された潤滑油組成物中で使用される、窒素を含まない、有機、無灰(無金属)の摩擦低減剤は一般に知られたものであり、これにはカルボン酸および無水物をアルカノールあるいはグリコールと反応させることによって形成されるエステルが含まれるが、このとき特に好適なカルボン酸は脂肪酸である。その他の有用な摩擦低減剤には、通常、親油性の炭化水素鎖に共有結合した、末端が極性の基(例えばカルボキシル基やヒドロキシル基)が含まれる。カルボン酸および無水物とアルカノールとのエステルは、米国特許第4,702,850号に記載されている。特にチタン化合物と組み合わせて使用するのに好適な摩擦低減剤は、グリセロールモノオレエート(GMO)のようなエステルである。
【0045】
チタン化合物との組み合わせによって、組成物が確実にシーケンスVG(Sequence VG)試験にパスすることができるようにする有効量の、本明細書に開示された潤滑油組成物中に含まれた、上述の第二の摩擦低減剤。例えば第二の摩擦低減剤は、平均エンジンスラッジレートを約8.2より上に、またオイルスクリーンの目詰まりレートを約20%未満にするのに十分な量で、チタン含有潤滑油組成物に添加される。典型的に、目的の効果をもたらすため、第二の摩擦低減剤は、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.25重量%から約2.0重量%(AI)の量で添加される。
【0046】
金属を含んだ清浄剤
金属含有清浄剤あるいは灰生成清浄剤は、堆積物を減少させるあるいは除去する清浄剤、および酸の中和剤あるいは防錆剤の両方の機能を有し、それによって摩耗や腐食を低減してエンジンの寿命を伸ばす。清浄剤は通常極性の頭部と疎水性の尾部から成り、この極性頭部は有機酸化合物の金属塩から成る。これらの塩は、実質的に化学量論的な量の金属を含有し、通例は正塩あるいは中性塩と称され、また一般的にASTM D−2896によって0から80と測定されるような全塩基価(TBN)を有する。超過量の酸化物あるいは水酸化物のような金属化合物と二酸化炭素のような酸性ガスとを反応させることにより、多量の金属塩基を含むことが可能である。結果として得られる過塩基性清浄剤は、金属塩基(例えば炭酸塩)ミセルの外層のような中和された清浄剤を含む。このような過塩基性清浄剤のTBNは150より上、一般的には250から450より上である。
【0047】
既知の清浄剤には、油溶性、中性、また過塩基性のスルホン酸塩、フェネート、硫化フェネート、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩、およびナフテン酸塩、また他に、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムなどの金属、特にアルカリまたはアルカリ土類金属の油溶性カルボン酸塩が含まれる。最も普通(commonly)に使用される金属は、どちらも潤滑剤中の清浄剤の中に存在しているカルシウムとマグネシウム、またカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムの混合物である。特に便利な金属清浄剤は、TBNが約20から約450である中性および過塩基性のスルホン酸カルシウム、中性および過塩基性カルシウムフェネート、およびTBNが約50から約450である硫化フェネートである。
【0048】
開示された実施態様において、約0.05重量%から約0.6重量%のカルシウム、ナトリウム、またはマグネシウムを組成物中にもたらす量の、一つ以上のカルシウムベースの清浄剤が使用される。カルシウム、ナトリウム、またはマグネシウムの量は、ASTM
D5185に記載の方法を用いて、誘導結合プラズマ(ICP)発光スペクトロスコピーによって決定される。一般に、金属ベースの清浄剤は過塩基性であり、過塩基性洗剤の全塩基価は約150から約450である。より望ましくは、金属ベースの清浄剤は過塩基性スルホン酸カルシウム清浄剤である。開示された実施例の組成物にはさらに、中性または過塩基性のいずれかのマグネシウムベースの清浄剤が含まれるが、一般に本明細書に開示された潤滑油組成物にはマグネシウムは含まれない。
【0049】
耐磨耗剤
本発明の潤滑油組成物に添加される金属性のジヒドロカルビルジチオホスフェート耐摩耗剤は、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩を含み、このときの金属はアルカリもしくはアルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マグネシウム、ニッケル、銅、チタン、あるいは亜鉛である。亜鉛の塩が潤滑油中で最も普通に使用されている。
【0050】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、周知の技術に基づき、まず通常は一つ以上のアルコールあるいはフェノールとPを反応させることによってジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、次に形成されたDDPAを金属化合物で中和させて製造される。例えば、ジチオリン酸は第1級アルコールと第2級アルコールの混合物を反応させることによって作られる。一方複数のジチオリン酸が製造され、その一つにおけるヒドロカルビル基の特性が完全に第2級であり、その他におけるヒドロカルビル基の特性が完全に第1級となることもある。金属塩を作るために、どの塩基性あるいは中性の金属化合物を使用してもかまわないが、酸化物、水酸化物、および炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤には、中和反応において超過量の塩基性金属化合物が使用されるため、しばしば超過量の金属が含有されている。
【0051】
典型的に使用されるジンクジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性の塩であり、以下の式で表される。
【化4】

式中RおよびRは、炭素数が1から18、典型的には2から12であり、アルキルラジカル、アルケニルラジカル、アリルラジカル、アリルアルキルラジカル、アルカリルラジカル、および脂環式ラジカルなどのラジカルを含んだ、同一のあるいは別々のヒドロカルビルラジカルであり得る。RおよびRとして特に望ましいのは、炭素数が2から8のアルキル基である。従ってこのラジカルは、例えばエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルなどである。油溶性を得るためのジチオリン酸中の炭素原子の総数(すなわちRおよびR)は、通常5または5以上である。従ってジンクジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジンクジアルキルジチオホスフェートを含むことができる。
【0052】
ZDDPによって潤滑油組成物に導入されるリンの量を0.1重量%(1000ppm)以下に制限するため、ZDDPが望ましくは潤滑油組成物の総重量に基づき約1.1重量%から1.3重量%以下の量で潤滑油組成物中に添加されるべきである。
【0053】
以下に挙げるその他の添加剤もまた本明細書で開示された潤滑油組成物中に存在してよい。
【0054】
粘度調整剤
粘度調整剤(VM)は、潤滑油に高温および低温での操作性を与える働きをする。使用されるVMは、単一機能性であっても多機能性であってもよい。
【0055】
分散剤としても機能する、多機能性の粘度調整剤もまた知られている。好適な粘度調整剤には、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、高級アルファオレフィン、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物とのコポリマー、スチレンとアクリルエステルのインターポリマー、および部分的に水素化されたスチレン/イソプレンコポリマー、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエン、また部分的に水素化されたブタジエンとイソプレンとイソプレン/ジビニルベンゼンのホモポリマーなどがある。
【0056】
抗酸化剤
酸化防止剤または抗酸化剤は、ベースストックが使用中に悪化する傾向を低減させるが、この劣化は金属表面上のスラッジやワニス状の堆積物のような酸化生成物、および粘度の増加によって明らかになる。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、CからC12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、ホスホ硫化あるいは硫化炭化水素、リンエステル(phosphorus esters)、金属チオカルバメート、および米国特許第4,867,890号に記載の油溶性銅化合物などが含まれる。
【0057】
防錆剤
非硫黄ン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそれらのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、および陰イオン性スルホン酸アルキルなどから成るグループの中から
選択された防錆剤が使用される。
【0058】
腐食防止剤
銅および鉛を含んだ腐食防止剤が使用されることもあるが、典型的には開示された実施例の組成物に必要とされてはいない。一般にこのような化合物は、炭素数が5から50のチアジアゾールポリスルフィド、それらの誘導体、およびそれらのポリマーなどである。米国特許第2,719,125号、2,719,126号、および3,087,932号に記載されているような、1,3,4チアジアゾールの誘導体が一般的である。その他の同様な物質について、米国特許第3,821,236号、3,904,537号、4,097,387号、4,107,059号、4,136,043号、4,188,299号、および4,193,882号に記載されている。その他の添加剤に、英国特許出願公開明細書第1,560,830号に記載されているような、チアジアゾールのチオおよびポリチオスルフェンアミドがある。ベンゾトリアゾール誘導体もまたこの種の添加剤に含まれる。これらの化合物が潤滑組成物中に含まれるとき、これらは典型的に、活性成分が0.2重量%を超えない量で存在する。
【0059】
解乳化剤
少量の解乳化(demulsifying)成分が使用されてもよい。好適な解乳化成分はEP330,522号に記載されている。解乳化成分は、アルキレンオキシドと、ビス−エポキシドと多水酸基性アルコールとを反応させて得られた付加化合物とを反応させることによって作られる。解乳化成分は、活性成分が0.1質量%を超えないレベルで使用される。活性成分0.001質量%から0.05質量%の処理率が便利である。
【0060】
流動点降下剤
別名潤滑油流動性向上剤としても知られている流動点降下剤は、流体が流動するまたは注がれることのできる最低温度を低下させる。このような添加剤はよく知られている。流体の低温流動性を改善するこれらの添加剤の典型的な例として、CからC18のフマル酸ジアルキル/ビニルアセテートコポリマー、ポリアルキルメタクリレート等が挙げられる。
【0061】
消泡剤
例えばシリコーンオイルあるいはポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン系の消泡剤を含む、多くの化合物によって泡がコントロールされる。
【0062】
上述の添加剤のいくつかは、複数の効果を提供し、そのため、例えば単一の添加剤が分散剤/酸化防止剤として働く。このアプローチについてはよく知られているので、これ以上説明の必要はないものとする。
【0063】
個々の添加剤は、任意の便利な方法でベースストック中に組み込まれる。従って、各成分を望みの濃度レベルでベースストックあるいは基油ブレンドに分散あるいは溶解させることにより、ベースストックあるいは基油ブレンドに直接添加することができる。このような混和は室温、または高温で起こる。
【0064】
基油
基油あるいは基油ブレンドの粘度指数が少なくとも95であり、ASTM D5880の手順に従って、オイルの蒸発損失を1時間後に250℃で決定することによって測定される潤滑剤組成物中の組成のNoack揮発性を15%未満にするという条件の下で、基油として使用される潤滑粘度のオイルは、グループI、グループII、および/またはグループIIIのベースストックあるいは上述のベースストックの基油ブレンドから成るグループから選択された、少なくとも一つのオイルであり得る。加えて、潤滑粘度のオイル
は、グループIVあるいはグループVの少なくとも一つ以上のベースストックまたはそれらの組み合わせ、グループI、グループIIおよび/またはグループIIIの一つ以上のベースストックと組み合わせられた、グループIVあるいはグループVの一つ以上のベースストックを含む基油混合物であり得る。その他の基油が、ガス・ツー・リキッドプロセスから得られた基油から成る、少なくとも一部分を含むことがある。
【0065】
現在のILSAC GF−4およびAPI SM仕様に合う最も望ましい基油を以下に挙げる。
(a)グループIIIのベースストックと、グループIあるいはグループIIのベースストックの基油ブレンドであり、この組み合わせの粘度指数は少なくとも110である。または
(b)グループIII、IVまたはVのベースストック、あるいはグループIII、IVまたはVの一つ以上のベースストックの基油ブレンドであり、この粘度指数は約120から約140の間である。
【0066】
開示されたベースストックおよび基油の定義は、米国石油協会(API)発行、産業サービス部門、1996年12月第14版、1998年12月追加1、「エンジンオイルのライセンシングおよび認証システム」(American Petroleum Institute(API)publication“Engine Oil Licensing and Certification System”,Industry Services Department,Fourteenth Edition,December 1996,Addendum 1,December 1998)に見られる定義と同様である。前記の出版物はベースストックを以下のように分類している。
a) 表1に指定された試験方法を使用して得られた飽和度が90パーセント未満および/または硫黄が0.03パーセントより上、また粘度指数が80以上120未満である、グループIのベースストック
b) 表1に指定された試験方法を使用して得られた飽和度が90パーセント以上、硫黄が0.03パーセント以下、また粘度指数が80以上120未満である、グループIIのベースストック
c) 表1に指定された試験方法を使用して得られた飽和度が90パーセント以上、硫黄が0.03パーセント以下、また粘度指数が120以上である、グループIIIのベースストック
d) ポリアルファオレフィン(PAO)である、グループIVのベースストック
e) グループI、II、III、またはIVに含まれない、その他すべてのベースストックを含む、グループVのベースストック
【表1】

【0067】
好ましくは、粘度調整剤および流動点降下剤以外の全ての添加剤は、後にベースストック中に混和され最終的な潤滑剤を作る添加剤パッケージとして、本明細書に記載の濃縮物あるいは添加剤パッケージ中に混和される。この濃縮物は典型的に、規定量のベース潤滑
剤と濃縮物が組み合わされた際に、最終的な調合物中を目的の濃度にするために適切な量の添加剤を含むように調合される。
【0068】
濃縮物は、望ましくは米国特許第4,938,880号に記載された方法に基づいて作られる。当該の特許には、最低約100°Cの温度で予め混和された無灰分散剤と金属清浄剤のプレミックスの作り方が記載されている。その後当該プレミックスは少なくとも85°Cまで冷却され、追加的な成分が添加される。
【0069】
最終的な潤滑油調合物は、約2質量%から約20質量%、典型的には約4質量%から約18質量%、また望ましくは約5質量%から約17質量%の濃縮物あるいは添加剤パッケージを使用し、あとの残りの部分はベースストックである。
【0070】
例3
開示された実施例に基づいて作られた潤滑剤組成物のスラッジ低減効果を評価するために、シーケンスVG(Sequence VG)試験法を行った。シーケンスVE(Sequence VG)試験は、スラッジおよびワニス用のシーケンスVE(Sequence VE)試験、ASTM D 5302の代替試験である。シーケンスVG(Sequence VG)試験は、モーターオイルの、スラッジおよびワニスを抑制する能力を測定する。エンジンには、ローラフォロア、冷却水に覆われたロッカーカバー、およびカムシャフトバッフルを備えた、フューエルインジェクションガソリンエンジンを使用した。各オイルにつき三つの異なった操作ステージでそれぞれ54サイクル、216時間の試験を行った。各試験の最後に、ロッカーアームカバー、カムバッフル、タイミングチェーンカバー、オイルパン、オイルパンバッフル、およびバルブデッキ上のスラッジの堆積を測定した。ワニスの堆積は、ピストンスカートとカムバッフルについて測定した。オイルポンプスクリーンとピストンオイルリングについて、スラッジ詰まりを測定した。さらに「高温」および「低温」スタックのピストン圧縮リング用の検査も行った。
【0071】
各テスト用の基油は、SAE 5W−30グレードの粘度を作るのに適したグループIおよびグループIIのオイルの混合物である。シーケンスVG(Sequence VG)エンジンテストにおいて、対照テスト(テスト1)は、従来の分散剤混合物とチタンを含有した添加剤を含んだ、完全に調製された潤滑剤で行った。二番目のテスト(テスト2)は、HRPIB分散剤とチタンを含有した添加剤の組み合わせのエンジンスラッジ低減効果を実証するため、きわめて反応性の高いポリイソブチレン(HRPIB)とチタンを含有した添加剤から得られた分散剤混合物を含む潤滑剤組成物によって行った。テスト1のHRPIB分散剤の処理レベルは、テスト2の希釈されていない分散剤の量と均等量の希釈されていない分散剤をもたらすように調整した。
【表2】

【0072】
本明細書に記載の分散剤は、他の添加剤との組み合わせで使用されてもよい。他の添加剤は一般に、その添加剤が目的とする機能を提供することを可能にする量で、基油中に混
和される。クランクケースの潤滑剤中で使用される際の、このような添加剤の典型的な有効量を以下に示す。リストにあるすべての値は活性成分の重量パーセントとして示されている。
【表3】

【0073】
従来のコハク酸イミド混合物と本開示に則ったコハク酸イミド混合物を含んだ組成物の、解析結果およびエンジンテストの結果を、以下の表3および表4に示す。
【表4】

【表5】

【0074】
テスト2から得られたシーケンスVG(Sequence VG)試験の結果により、テスト1から得られた試験結果と比べ、平均エンジンスラッジおよびオイルスクリーンの目詰まりレートに、著しい改善が示された。エンジンスラッジ低減用のHRPIB分散剤
およびTi添加剤の適用性は、この例で示されている組成物のみに限定されるものではない。従って、グループIのオイル中にチタン系添加剤を含んだ完全に調製された潤滑剤組成物には、グループII、グループII+、グループIII、およびグループIVの基油、およびそれらの混合物が含まれる。開示された実施例は、エンジンスラッジの低減の著しい改善を可能にすると考えられる。
【0075】
例4
炭化水素に可溶なチタン系添加剤の抗酸化効果
以下の例では、最終的な潤滑剤中のチタン金属の量が約50ppmから約830ppmとなるように、炭化水素に可溶なチタン化合物を、プレブレンドの潤滑剤組成物にトップトリートとして加えた。プレブレンドには、従来の量の清浄剤、分散剤、流動点降下剤、摩擦低減剤、抗酸化剤、および粘度指数向上剤を含み、チタン金属を含まないグループIIIのベースストック中で調製された、プロトタイプの乗用車用エンジンオイルを使用した。
【0076】
元素チタン約0ppmから約800ppmから調製されたオイルの酸化安定性を、TEOST MHT−4試験を使用して評価した。TEOST MHT−4試験は、エンジンオイルの酸化特性および炭素質の堆積物を形成する特質を評価するための、潤滑剤業界の標準的な試験である。この試験は、現代のエンジンのピストンリングベルト付近における、高温での堆積物の形成をシミュレートするように作られている。この試験には、比較的新しい修正であるMHT−4プロトコルと共に、特許をとった器具(米国特許第5,401,661号および米国特許第5,287,731号;各特許の物質は参考することにより本明細書に組み込まれている)が使用される。試験の実施や特定のMHT−4の条件の詳細は、SelbyおよびFlorkowskiにより、Wilfried J.Bartzをエディターとして、「エンジンオイルピストンへの堆積傾向のベンチテストとしてのTEOSTプロトコルMHTの開発」と題し、2000年1月11−13日に開催された、第12回International Colloquium Technische Akademie Esslingenで発表されている。通常、堆積物のミリグラムが低いほど添加剤は優れている。
【表6】

【0077】
前記の表5において、示された量のチタンネオデカノアートを含んだサンプル2から7の酸化安定性を、サンプル2から7の中で使用される基油(サンプル1)の酸化安定性と
比較した。データによって示されるように、約50ppmから約800ppmのチタン金属を含んでいるオイルの酸化安定性には、劇的な増加があった。
【表7】

【0078】
前記の表6において、その他の炭化水素に可溶な金属化合物(サンプル9−14)を含んだ基油の酸化安定性を、サンプル9−14の中で使用される基油(サンプル8)の酸化安定性と比較した。サンプル8−14の基油は、上記のサンプル1−7の基油と同様であった。
【0079】
この例において、サンプル9は、約5.5重量%のチタン金属を炭化水素に可溶なチタン化合物として含んでいる、チタンIV 2−プロパノラート、トリスイソ−オクタデカノアート−Oを使用した。サンプル10は、約5.8重量%のチタン金属を炭化水素に可溶なチタン化合物として含んでいる、チタンIV 2,2(ビス2−プロペノ−ラトメチル)ブタノラート、トリスネオデカノアート−Oを使用した。サンプル11は、約3.1重量%のチタン金属を化合物中に含んでいる、チタンIV 2−プロパノラート、トリス(ジオクチル)ホスファート−Oを使用した。サンプル12は、約3.1重量%のチタン金属をチタン化合物中に含んでいるチタンIV 2−プロパノラート、トリス(ドデシル)ベンゼンスルファナート−Oを使用した。サンプル9−12の各チタン化合物は、ニュージャージー州ベーヨン(Bayonne,New Jersey)のKenrich Petrochemicals,Inc.から入手することができる。
【0080】
前記の結果に示されたように、約50ppmから約800ppmのチタン金属を炭化水素に可溶なチタン化合物の形態で含んでいるサンプル2−14は、炭化水素に可溶なチタン化合物をまったく含まない従来の潤滑剤組成物よりもはるかに性能が優れていた。チタンを含んでいるその他のサンプル(2−12)のTEOST結果が約20ミリグラムから約29.9ミリグラムであったのに対し、炭化水素に可溶なチタン化合物を含まないサンプル1のTEOST結果は39.4ミリグラムであった。約50ppmから約800ppmのチタン金属を炭化水素に可溶なチタン化合物の形態で含んでいる組成物が、従来のリンおよび硫黄系の耐磨耗剤の低減を可能にし、それにより同様のあるいは改善された抗酸化性および利点を実現させながらも、車の公害防止設備の性能改善を可能にすることが期待されている。
【0081】
例5
炭化水素に可溶なチタン化合物の磨耗減少効果
十三種類の完全に調製された潤滑剤組成物を作り、ヨーロッパテストコードIP−239に則った四球磨耗試験を使用して、それらの組成物の磨耗特性を比較した。従来のDIパッケージを含んだそれぞれの潤滑剤組成物は11重量パーセントの潤滑剤組成物を提供する。DIパッケージには、従来の量の清浄剤、分散剤、耐磨耗剤、摩擦低減剤、消泡剤、および抗酸化剤が含まれていた。組成物にはまた、約0.1重量パーセントの流動点降下剤、約11.5重量パーセントのオレフィンコポリマー粘度指数向上剤、約62重量パーセントから63重量パーセントの150溶媒中性オイル、約14.5重量パーセントの600溶媒中性オイルが含まれていた。サンプル13にはチタン化合物が含まれていなかった。サンプル14−25には、約80ppmから約200ppmのチタン金属をもたらすのに十分な量のチタン化合物が含まれていた。これらのサンプルを、潤滑剤組成物中、四球磨耗試験により、室温で60分間、40キロの重りを使用して1475rpmで試験した。組成物および結果を以下の表に示す。
【表8】

【0082】
上記の表において、以下の表示が使用されている。
Ti−TEN CENは、ニュージャージー州ニューワーク、OM Group Inc.のチタンネオデカノアートで、約6.7重量%のチタン金属を含む。
Ti−2−EHOはチタン2−エチルヘキシオキシドで、約8.7重量%のチタン金属を含む。
KR−TTSはニュージャージー州ベーヨン、Kenrich Petrochemicals,Inc.のチタンIV 2−プロパノラート、トリスイソオクタデカノアート−Oで、約5.5%のチタン金属を含む。
LICA−01はKenrich Petrochemicals,Inc.のチタンIV 2,2(ビス2−プロペノラートメチル)ブタノラート、トリスネオデカノアート−Oで、約5.8%のチタン金属を含む。
KR−12はKenrich Petrochemicals,Inc.のチタンIV 2−プロパノラート、トリス(ジオクチル)ホスファート−Oで、約3.1%のチタン金属を含む。
KR−9SはKenrich Petrochemicals,Inc.のチタンIV 2−プロパノラート、トリス(ドデシル)ベンゼンスルファナート−Oで、約3.5%のチタン金属を含む。
PPDは流動点降下剤である。
【0083】
前記の結果に示されるように、約80ppmから約200ppmのチタン金属を炭化水素に可溶なチタン化合物の形態で含むサンプル14−25は、チタン金属を含まない従来の潤滑剤組成物よりも著しく性能が優れている。チタンを含む他のサンプルの磨耗傷の直径が約0.35ミリから約0.47ミリであったのに対し、チタン金属を含まないサンプル13の磨耗傷の直径は約0.65ミリであった。約50ppmから約500ppmのチタン金属を炭化水素に可溶なチタン化合物の形態で含んでいる組成物が、従来のリンおよび硫黄系の耐磨耗剤の低減を可能にし、それにより同様の耐磨耗性および利点を実現させながらも、車の公害防止設備の性能改善を可能にすることが期待されている。
【0084】
本明細書の全体にわたる数々の箇所で多くの米国特許および公報が参照されている。このような引用文献はすべて、当明細書で完全に説明されたものとして、この開示中に完全に明確に含まれている。
【0085】
上述の実施例は、その実行において、かなり変更される可能性がある。従って当実施例は、上記に説明された特定の例証に限定されることを意図したものではない。むしろ上述の実施例は、法律上利用可能な対応範囲も含んで、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0086】
当特許権者は、開示された実施例のいずれをも一般に提供することは意図しておらず、また開示された修正または変更は、それらがすべて完全に請求項の範囲内に収まらない状態になるまで、均等論により当実施例の一部であると見なされる。
【0087】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
【0088】
1.化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含む、完全に調製された潤滑油組成物であり、この潤滑油組成物が実質的にモリブデン化合物を欠いているような潤滑油組成物。
【0089】
2.金属を含んだ清浄剤が、カルシウムフェネート、サリチル酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、マグネシウムフェネート、サリチル酸マグネシウム、スルホン酸マグネシウ
ム、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択される、上記1に記載の組成物。
【0090】
3.清浄剤が過塩基性のスルホン酸カルシウムである、上記1に記載の組成物。
【0091】
4.清浄剤が過塩基性のスルホン酸マグネシウムである、上記1に記載の組成物。
【0092】
5.チタン化合物から得られたチタンが、約10ppmから約500ppmの量で存在する、上記1に記載の組成物。
【0093】
6.チタン化合物が、チタンアルコキシドと約Cから約C25のカルボン酸との反応性生物を含む、上記1に記載の組成物。
【0094】
7.前記のカルボン酸が、実質的にカプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択されている、上記6に記載の組成物。
【0095】
8.前記のチタン化合物がチタンネオデカノアートを含む、上記7に記載の組成物。
【0096】
9.前記のチタン化合物がチタンオレエートを含む、上記7に記載の組成物。
【0097】
10.前記のチタン化合物が、実質的に硫黄原子とリン原子を欠いている化合物を含む、上記1に記載の組成物。
【0098】
11.磨耗減少剤が、少なくとも一つの金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物を含み、この少なくとも一つの金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属化合物の金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マグネシウム、ニッケル、銅、チタン、あるいは亜鉛から成るグループの中から選択する、上記1に記載の組成物。
【0099】
12.摩擦低減剤が、組成物の総重量に基づき、約0.20重量%から約2.0重量%の量で存在する、上記1に記載の組成物。
【0100】
13.金属を含まないエステル化合物と窒素含有化合物から成るグループから選択された第二の摩擦低減剤をさらに含む、上記1に記載の組成物。
【0101】
14.摩擦低減剤が、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、およびチアジアゾールから成るグループの中から選択された化合物を含む、上記13に記載の組成物。
【0102】
15.摩擦低減剤がグリセロールモノオレエートを含む、上記13に記載の組成物。
【0103】
16.前記の組成物が、約0.025重量%から約0.1重量%未満のリンを含む、上記1に記載の組成物。
【0104】
17.前記の組成物が、約0.025重量%から約0.075重量%のリンを含む、上記16に記載の組成物。
【0105】
18.内燃エンジンのエンジンスラッジを低減させる方法であり、(1)上記1の潤滑油
組成物をエンジンに加えること;および(2)前記のエンジンを操作することを含む方法。
【0106】
19.潤滑粘度の基油と、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含む添加剤パッケージとを含んだ潤滑剤組成物を含む潤滑面であり、この潤滑剤組成物が実質的にモリブデン化合物を欠いている潤滑面。
【0107】
20.潤滑面がエンジンドライブトレインを含む、上記19に記載の潤滑面。
【0108】
21.潤滑面が内燃エンジンの内側面または部分を含む、上記19に記載の潤滑面。
【0109】
22.潤滑面が圧縮点火エンジンの内側面または部分を含む、上記19に記載の潤滑面。
【0110】
23.清浄剤が、カルシウムフェネート、サリチル酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、マグネシウムフェネート、サリチル酸マグネシウム、スルホン酸マグネシウム、およびそれらの混合物から成るグループから選択された物質を含む、上記19に記載の潤滑面。
【0111】
24.摩擦低減剤が、グリセロールエステルおよびアミン化合物から成るグループの中から選択された金属を含まない摩擦低減剤を含む、上記19に記載の潤滑面。
【0112】
25.上記19に記載の潤滑面を含む自動車。
【0113】
26.可動部を有し、その可動部を潤滑するための潤滑剤を含んでいる車両であり、この潤滑剤は、潤滑粘度のオイルと、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含む添加剤パッケージとを含み、潤滑剤が実質的にモリブデン化合物を欠いているような車両。
【0114】
27.摩擦低減剤が、グリセロールエステルおよびアミン化合物から選択された金属を含まない摩擦低減剤を含む、上記26に記載の車両。
【0115】
28.可動部がヘビーデューティーディーゼルエンジンを含む、上記26に記載の車両。
【0116】
29.潤滑粘性の基油成分とある量のスラッジを減少させる潤滑剤を含む、完全に調製された潤滑剤組成物であり、この潤滑剤が、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および約10ppmから約500ppmのチタンを潤滑剤組成物にもたらす摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含み、この潤滑剤組成物が実質的にモリブデン化合物を欠いている潤滑剤組成物。
【0117】
30.潤滑剤組成物が、圧縮点火エンジン用に適している、低灰、低硫黄及び低リンの潤滑剤組成物を含む、上記29に記載の潤滑剤組成物。
【0118】
31.潤滑剤組成物中のリンの含有量が約250ppmから約500ppmである、上記29に記載の潤滑剤組成物。
【0119】
32.摩擦低減剤が、グリセロールエステルおよびアミン化合物から選択された金属を含まない摩擦低減剤を含む、上記29に記載の潤滑剤組成物。
【0120】
33.潤滑剤組成物にスラッジの減少をもたらす潤滑剤濃縮物であり、当該濃縮物はモリブデンを欠いており、またヒドロカルビル担体液、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、および約10ppmから約500ppmのチタンを潤滑剤組成物にもたらす摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含んでいる潤滑剤濃縮物。
【0121】
34.基油と上記33に記載の添加剤濃縮物を含む、潤滑剤組成物。
【0122】
35.潤滑粘度の基油と、改善された潤滑性を提供するのに効果的な量の少なくとも一つの炭化水素に可溶なチタン化合物を含む潤滑剤組成物であり、この潤滑性が、表面の磨耗の低減が炭化水素に可溶なチタン化合物を含まない潤滑剤組成物の表面の磨耗よりも大きいこと、潤滑剤組成物の酸化の低減が炭化水素に可溶なチタン化合物を含まない潤滑剤組成物の酸化の低減よりも大きいこと、そして潤滑剤組成物のスラッジ形成の低減が炭化水素に可溶なチタン化合物を含まない潤滑剤組成物のスラッジ形成の低減よりも大きいことからなるグループの中から選択されたものである、潤滑剤組成物。
【0123】
36.炭化水素に可溶なチタン化合物の量が潤滑剤組成物中に1ppmから約1000ppmの量のチタンをもたらす、上記35に記載の潤滑剤組成物。
【0124】
37.炭化水素に可溶なチタン化合物がチタンカルボキシレートを含み、このチタンカルボキシレートが実質的にリンおよび硫黄を欠いている、上記35に記載の潤滑剤組成物。
【0125】
38.炭化水素に可溶なチタン化合物が、炭素数が少なくとも約6であり、第1級、第2級、第3級の炭素がカルボキシル基に隣接しているモノカルボン酸から得られた、チタンカルボキシレートを含む、上記35に記載の潤滑剤組成物。
【0126】
39.炭化水素に可溶なチタン化合物が以下の式の化合物である、上記35に記載の潤滑剤組成物。
【化5】

式中、nは2、3、および4の中から選択された整数であり、Rは炭素数が約5から約24のヒドロカルビル基である。
【0127】
40.上記35に記載の潤滑剤組成物を含んだ自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含む、完全に調製された潤滑油組成物であり、この潤滑油組成物が実質的にモリブデン化合物を欠いているような潤滑油組成物。
【請求項2】
金属を含んだ清浄剤が、カルシウムフェネート、サリチル酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、マグネシウムフェネート、サリチル酸マグネシウム、スルホン酸マグネシウム、およびそれらの混合物から成るグループの中から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
チタン化合物から得られたチタンが、約10ppmから約500ppmの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記のチタン化合物がチタンネオデカノアートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
潤滑粘度の基油と、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含む添加剤パッケージとを含んだ潤滑剤組成物を含む潤滑面であり、この潤滑剤組成物が実質的にモリブデン化合物を欠いている潤滑面。
【請求項6】
可動部を有し、その可動部を潤滑するための潤滑剤を含んでいる車両であり、この潤滑剤は、潤滑粘度のオイルと、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含む添加剤パッケージを含み、潤滑剤が実質的にモリブデン化合物を欠いているような車両。
【請求項7】
摩擦低減剤が、グリセロールエステルおよびアミン化合物から選択された金属を含まない摩擦低減剤を含む、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
潤滑粘性の基油成分とある量のスラッジを減少させる潤滑剤を含む、完全に調製された潤滑剤組成物であり、この潤滑剤が、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、金属を含んだ清浄剤、少なくとも一つの磨耗減少剤、少なくとも一つの酸化防止剤、および約10ppmから約500ppmのチタンを潤滑剤組成物にもたらす摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含み、この潤滑剤組成物が実質的にモリブデン化合物を欠いている潤滑剤組成物。
【請求項9】
潤滑剤組成物にスラッジの減少をもたらす潤滑剤濃縮物であり、当該濃縮物はモリブデンを欠いており、またヒドロカルビル担体液、化合物中に約50%から約85%のビニリデン二重結合を有するポリアルキレン化合物から得られた少なくとも一つのコハク酸イミド系の分散剤、および約10ppmから約500ppmのチタンを潤滑剤組成物にもたらす摩擦低減剤としての炭化水素に可溶なチタン化合物を含んでいる潤滑剤濃縮物。
【請求項10】
潤滑粘度の基油と、改善された潤滑性を提供するのに効果的な量の少なくとも一つの炭
化水素に可溶なチタン化合物を含む潤滑剤組成物であり、この潤滑性が、表面の磨耗の低減が炭化水素に可溶なチタン化合物を含まない潤滑剤組成物の表面の磨耗よりも大きいこと、潤滑剤組成物の酸化の低減が炭化水素に可溶なチタン化合物を含まない潤滑剤組成物の酸化の低減よりも大きいこと、そして潤滑剤組成物のスラッジ形成の低減が炭化水素に可溶なチタン化合物を含まない潤滑剤組成物のスラッジ形成の低減よりも大きいことからなるグループの中から選択されたものである、潤滑剤組成物。

【公開番号】特開2008−150587(P2008−150587A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290750(P2007−290750)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】