説明

チップ抵抗器およびその製造方法

【課題】導電性接着剤を用いたフェースダウン実装に好適なチップ抵抗器と、その製造方法とを提供する。
【解決手段】チップ抵抗器1の絶縁性基板2の片面2aには、保護膜4に被覆された抵抗体3と、抵抗体3の両端部に重なり合う一対の電極5とが設けられており、電極5の表面は、少なくとも絶縁性基板2の表面よりも粗くなるように粗面化処理されたうえで露出している。このチップ抵抗器1は片面2a側を回路基板10に対向させてフェースダウン実装され、回路基板10上に設けられた配線パターン11とチップ抵抗器1の電極5とが導電性接着剤12によって電気的かつ機械的に接続されるようになっている。チップ抵抗器1の電極5は例えばブラスト加工を施して粗面化できるが、軟化点の異なる複数種類のガラス材を電極ペーストに含有させる等の手法で電極5を粗面化してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤を用いて回路基板上にフェースダウン実装されるチップ抵抗器と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板上にフェースダウン実装されるチップ抵抗器には、回路基板と対向する側の面に、保護膜に覆われた抵抗体や、抵抗体の両端部に重なり合う一対の電極が設けられている。
【0003】
この種のチップ抵抗器の従来例として、直方体形状の絶縁性基板の片面(回路基板と対向する側の面)に、抵抗体と、この抵抗体の長手方向両端部を覆う一対の主電極と、これら主電極間に露出する抵抗体を被覆する保護膜とを設けると共に、絶縁性基板の長手方向両端面に端面電極を設け、この端面電極を主電極に密着接合させた構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来例において、主電極や端面電極の表面には、半田濡れ性を高める等の理由でメッキ処理が施されており、このチップ抵抗器をフェースダウン実装する際には、回路基板に設けられた配線パターン上に主電極を搭載して半田接合し、端面電極によって半田フィレットが形成されるようにしている。
【0004】
しかしながら、かかる従来例では、主電極や端面電極の表面に2層以上のメッキ層(Niメッキ層や半田メッキ層等)を形成しなければならないため、メッキ処理工程が煩雑で安価に製造できないという難点があった。また、昨今、半田接合に際して、環境への配慮から鉛を含まない鉛フリー半田を用いることが推奨されているが、鉛フリー半田を溶融させるためには約260℃まで加熱する必要がある。したがって、鉛フリー半田を用いた半田接合に対応させようとすると、チップ抵抗器の耐熱性を大幅に高めておかねばならず、必然的にチップ抵抗器の製造コストは上昇してしまう。
【0005】
一方、半田の代わりに導電性接着剤を用いてチップ抵抗器を回路基板上に実装するという技術が従来より知られている(例えば、特許文献2参照)。この導電性接着剤は、金属粉末等の導電材料をエポキシ系等の樹脂材料に分散させたものであり、200℃以下の温度で硬化して、チップ抵抗器のメッキ処理されていない電極を回路基板上の配線パターンに接合させることができる。それゆえ、フェースダウン実装に際して導電性接着剤を用いることにすれば、チップ抵抗器の電極の表面にメッキ層を形成する必要がなくなり、かつチップ抵抗器の耐熱性を特に高める必要もなくなるため、チップ抵抗器を安価に製造することができるようになる。
【0006】
ただし、一般的にチップ抵抗器の電極の表面は比較的平滑に形成されているため、導電性接着剤をチップ抵抗器の電極に直接付着させても所望の接着強度が得にくいものとなっている。このような理由から、特許文献2に開示されたチップ抵抗器では、電極を覆って絶縁性基板の端部を包み込むような比較的広い領域に、樹脂材料に導電材料を分散させたた導電性接続材料からなる外部電極を設け、この外部電極の樹脂材料として実装時に用いる導電性接着剤の樹脂材料との密着性が良好なものを選択しておくことにより、チップ抵抗器の外部電極に対する導電性接着剤の接着強度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−88162号公報
【特許文献2】特開2010−225660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示されたチップ抵抗器のように、電極を予め導電性接続材料からなる外部電極で覆っておけば、煩雑なメッキ処理が不要となって製造コストを抑えやすくなると共に、導電性接着剤を用いて回路基板上にフェースダウン実装することが可能となる。しかし、かかる従来のチップ抵抗器においては、導電性接続材料からなる外部電極を形成するために、未硬化の導電性接続材料に絶縁性基板の分割端面を浸漬するディップ工程と、その未硬化材料を加熱硬化する加熱硬化工程とを追加しなければならないため、チップ抵抗器の製造コストを大幅に低下させることは困難であった。また、実装時に用いられる導電性接着剤の樹脂材料は必ずしも外部電極の樹脂材料と密着度が良好であると限らず、導電性接着剤の種類によっては所望の接着強度を得ることができず、チップ抵抗器の外部電極と導電性接着剤との導通の信頼性を損なう虞があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、導電性接着剤を用いたフェースダウン実装に好適で導通の信頼性が高いチップ抵抗器を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、そのようなチップ抵抗器を安価に製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の第1の目的を達成するために、本発明では、絶縁性基板の片面に、抵抗体と、この抵抗体の両端部に重なり合う一対の電極と、前記抵抗体を覆う保護膜とが設けられ、前記絶縁性基板の前記片面側を回路基板に対向させてフェースダウン実装されるチップ抵抗器において、前記電極の表面を露出させ、この露出面が少なくとも前記絶縁性基板の表面よりも粗くなるように粗面化処理されているという構成にした。
【0011】
このように構成されたチップ抵抗器は、粗面化処理によって電極の露出面に微細な凹部が多数形成されており、該電極の露出面の表面積も凹部の存在で広くなっているため、電極の露出面に対する導電性接着剤の接着強度を大幅に高めることができる。それゆえ、このチップ抵抗器は半田を使用せずに導電性接着剤を用いて回路基板上にフェースダウン実装することができ、チップ抵抗器の電極と導電性接着剤との導通信頼性も良好となる。また、このチップ抵抗器には電極を覆うメッキ層や外部電極等が不要であり、チップ抵抗器の耐熱性を特に高める必要もないため、製造コストを大幅に低減することができる。
【0012】
上記の構成のチップ抵抗器において、絶縁性基板の片面から保護膜の表面までの高さ寸法に比べて、絶縁性基板の片面から電極の露出面までの高さ寸法が同等以上の大きさに設定されていると、フェースダウン実装したチップ抵抗器が保護膜を支点として傾く虞がなくなるため、実装後のチップ抵抗器に上方から外力が作用してもクラック等を生じにくくなる。この場合において、絶縁性基板の片面の両端部に絶縁層を設け、この絶縁層を覆うように電極を設ければ、絶縁層の膜厚によって電極の高さ位置を容易に嵩上げできる。
【0013】
また、上記の構成のチップ抵抗器において、電極が絶縁性基板の片面の外縁から離れた領域に設けられていると、電極の露出した部分の周壁を絶縁性基板の片面の非印刷領域で包囲することができるため、チップ抵抗器をフェースダウン実装する際に該周壁すべてに導電性接着剤を容易に付着させることができ、電極の露出面を導電性接着剤で確実に覆えるようになる。それゆえ、電極の酸化や硫化を防止できて安定した性能が維持しやすくなる。しかも、このように電極を絶縁性基板の稜線(外形線)から離隔させておけば、チップ抵抗器の製造過程で絶縁性基板を多数個取りするための大判基板の分割溝に電極がオーバーラップしなくなるため、分割作業時の作業性が向上して製造歩留まりも高めやすくなる。
【0014】
また、上記の構成のチップ抵抗器において、絶縁性基板の片面と逆側の面に磁性体からなる磁性層が設けられていると、このチップ抵抗器をテーピング包装したり自動マウントする際に、磁石によってチップ抵抗器の姿勢を安定させることができる。
【0015】
上記の第2の目的を達成するために、本発明では、絶縁性基板の片面に、抵抗体と、この抵抗体の両端部に重なり合う一対の電極と、前記抵抗体を覆う保護膜とが設けられ、前記絶縁性基板の前記片面側を回路基板に対向させてフェースダウン実装されるチップ抵抗器の製造方法において、前記絶縁性基板の前記片面に電極ペーストを厚膜印刷して前記電極を形成すると共に、前記電極の表面を少なくとも前記絶縁性基板の表面よりも粗くなるように粗面化処理したうえで露出させるようにした。
【0016】
このようにチップ抵抗器の電極の表面を粗面化処理したうえで露出させると、微細な凹部が多数形成されて表面積も広い電極の露出面を、導電性接着剤との接着強度が確保しやすい接着面として機能させることができる。それゆえ、こうして製造したチップ抵抗器は半田を使用せずに導電性接着剤を用いて回路基板上にフェースダウン実装することができ、チップ抵抗器の電極と導電性接着剤との導通信頼性も良好となる。また、こうして製造されるチップ抵抗器には電極を覆うメッキ層や外部電極等が不要であり、チップ抵抗器の耐熱性を特に高める必要もないため、製造コストを大幅に低減することができる。
【0017】
上記の製造方法において、チップ抵抗器の電極を粗面化処理するために、該電極の表面にブラスト加工を施せば、短時間に効率よく粗面化処理を行うことができる。
【0018】
また、上記の製造方法において、チップ抵抗器の電極を粗面化処理するために、軟化点の異なる複数種類のガラス材を電極ペーストに含有させれば、電極の形成工程で粗面化処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のチップ抵抗器によれば、粗面化処理された電極の表面を露出させてあり、該電極の露出面に対する導電性接着剤の接着強度を大幅に高めることができる。そのため、このチップ抵抗器は半田を使用せずに導電性接着剤を用いて回路基板上にフェースダウン実装することができ、チップ抵抗器の電極と導電性接着剤との導通信頼性も良好となる。また、このチップ抵抗器には電極を覆うメッキ層や外部電極等が不要であり、チップ抵抗器の耐熱性を特に高める必要もないため、製造コストを大幅に低減することができる。
【0020】
本発明のチップ抵抗器の製造方法によれば、チップ抵抗器の電極の表面を粗面化処理したうえで露出させておくので、該電極の露出面を導電性接着剤との接着強度を確保しやすい接着面として機能させることができる。そのため、こうして製造したチップ抵抗器は半田を使用せずに導電性接着剤を用いて回路基板上にフェースダウン実装することができ、チップ抵抗器の電極と導電性接着剤との導通信頼性も良好となる。また、こうして製造されるチップ抵抗器には電極を覆うメッキ層や外部電極等が不要であり、チップ抵抗器の耐熱性を特に高める必要もないため、製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るチップ抵抗器の平面図である。
【図2】図1に示すチップ抵抗器をフェースダウン実装した状態を示す断面図である。
【図3】図1に示すチップ抵抗器の製造過程で大判基板に電極を形成した状態を示す工程図である。
【図4】図1に示すチップ抵抗器の製造過程で大判基板に抵抗体を形成した状態を示す工程図である。
【図5】図1に示すチップ抵抗器の製造過程で抵抗体を覆う保護膜を形成した状態を示す工程図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1と図2に基づいて本発明の第1の実施形態に係るチップ抵抗器について説明する。また、図3〜図5を参照しながら、このチップ抵抗器の製造方法について説明する。
【0023】
図1と図2に示すチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁性基板2と、絶縁性基板2の片面2aの中央部に帯状に設けられた抵抗体3と、絶縁性基板2の片面2aの長手方向両端寄りの領域に設けられて抵抗体3の長手方向両端部に重なり合う一対の電極5と、これら両電極5どうしの間に露出する抵抗体3を被覆する保護膜4とによって主に構成されており、各電極5の表面が露出している。図2に示すように、このチップ抵抗器1は、絶縁性基板2の片面2a側を回路基板10に対向させてフェースダウン実装され、回路基板10上に設けられた配線パターン11とチップ抵抗器1の各電極5とが導電性接着剤12によって電気的かつ機械的に接続されるようになっている。つまり、各電極5の露出面を導電性接着剤12に対する接着面となすことにより、チップ抵抗器1をフェースダウン実装できるように設計されている。そのため、この電極5の表面(露出面を含む)は、少なくとも絶縁性基板2の表面よりも粗くなるように粗面化処理されている。
【0024】
チップ抵抗器1の構成について詳しく説明すると、絶縁性基板2は例えばアルミナ基板である。抵抗体3は酸化ルテニウム等からなり、保護膜4はエポキシ系等の樹脂材料からなる。また、図示していないが、抵抗体3と保護膜4との間に薄いガラスコート層が設けられており、抵抗体3とこれを覆うガラスコート層に抵抗値調整用の図示せぬトリミング溝が形成されている。電極5はAg系の導電材料(AgやAg/Pd等)からなる。この電極5は抵抗体3側の一辺端部が抵抗体3や保護膜4によって覆われているが、電極5の大部分は露出しており、この露出した部分の周壁は絶縁性基板2の片面2aの非印刷領域に包囲されている。つまり、電極5は絶縁性基板2の片面2aの外縁から離れた領域に設けられている。また、この電極5は製造段階で表面にブラスト加工が施されているため、図2に示すように、電極5の全表面は粗面化されて微細な凹部5aが多数形成されている。ただし、図2では電極5の粗面化された状態を誇張して図示している。
【0025】
次に、このように構成されたチップ抵抗器1の製造方法について説明する。まず、図3に示すように、絶縁性基板2の集合体である大判基板20の所定位置に電極ペーストを厚膜印刷して焼成することにより、多数の電極5を形成する。この電極ペーストはAg系の導電材料やガラス材等を含有する公知のものである。また、大判基板20には予め格子状に延びる分割溝21が形成されており、各電極5は分割溝21の近傍領域に分割溝21に沿って形成する。
【0026】
次なる工程として、各電極5に対してサンドブラスト等のブラスト加工を行うことにより、各電極5の表面を粗面化処理する。この後、図4に示すように、所定間隔を存して並設されている電極5どうしを橋絡する帯状領域に、酸化ルテニウム等を含有した抵抗体ペーストを厚膜印刷して焼成することにより、多数の抵抗体3を形成する。これにより、各電極5は、一辺端部が抵抗体3と重なり合って該抵抗体3と導通される。
【0027】
次なる工程として、各抵抗体3を覆う領域にそれぞれガラスペーストを印刷して焼成することにより、多数の前記ガラスコート層を形成する。そして、各ガラスコート層にレーザを照射して各抵抗体3の一部に前記トリミング溝を形成することにより、抵抗値の調整を行う。
【0028】
しかる後、図5に示すように、列状に並ぶ複数の前記ガラスコート層を前記トリミング溝を含めて覆う帯状領域に、エポキシ系等の樹脂ペーストを厚膜印刷して焼成することにより、保護膜4の連続体を形成する。チップ抵抗器1の保護膜4は、この連続体を分割したものである。すなわち、次なる工程として、大判基板20を縦横の分割溝21に沿って分割することにより、大判基板20が多数の絶縁性基板2に分割されるため、個片化された多数のチップ抵抗器1が一括して得られる。
【0029】
このようにして製造されたチップ抵抗器1は、ブラスト加工によって粗面化された電極5の表面に微細な凹部5aが多数形成されており、これら凹部5aが電極5の表面積を増やしている。そして、この粗面化された電極5の表面の大部分を露出させてあるので、該電極5の露出面を導電性接着剤12との接着強度を確保しやすい接着面として機能させることができる。それゆえ、図2に示すように、このチップ抵抗器1は、導電性接着剤12を用いて回路基板10上にフェースダウン実装することができる。
【0030】
具体的には、回路基板10の所定の配線パターン11上に導電性接着剤12を塗布した後、チップ抵抗器1の片面2a側を回路基板10に対向させて各電極5を対応する配線パターン11上に搭載する。これにより、導電性接着剤12が電極5の露出面の凹部5a内に入り込むため、該電極5の露出面に対する導電性接着剤12の接触面積は十分に確保できて密着度も良好となる。また、電極5の露出した部分の周壁が絶縁性基板2の片面2aの非印刷領域で包囲されているため、該周壁すべてに導電性接着剤12が付着しやすくなって、電極5の露出面を導電性接着剤12で確実に覆うことができる。したがって、この導電性接着剤12を100〜200℃程度で加熱して硬化させることにより、チップ抵抗器1を回路基板10上に確実にフェースダウン実装することができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るチップ抵抗器1は、粗面化処理(ブラスト加工)によって電極5の露出面に微細な凹部5aが多数形成されており、該電極5の露出面の表面積も凹部5aの存在で広くなっているため、電極5の露出面に対する導電性接着剤12の接着強度を大幅に高めることができる。それゆえ、このチップ抵抗器1は半田を使用せずに導電性接着剤12を用いて回路基板10上にフェースダウン実装することができ、チップ抵抗器1の電極5と導電性接着剤12との導通信頼性も良好となる。また、このチップ抵抗器1には電極5を覆うメッキ層や外部電極等が不要であり、チップ抵抗器1の耐熱性を特に高める必要もないため、製造コストを大幅に低減することができる。
【0032】
また、本実施形態に係るチップ抵抗器1は、絶縁性基板2の片面2aの外縁から離れた領域に電極5が設けられており、フェースダウン実装に際して電極5の露出面を導電性接着剤12で確実に覆うことができるため、電極5の酸化や硫化を防止できて安定した性能が維持しやすくなっている。しかも、このように電極5が絶縁性基板2の稜線(外形線)から離隔させてあるチップ抵抗器1は、その製造過程で大判基板20の分割溝21に電極5がオーバーラップしないため、分割作業時の作業性が向上して製造歩留まりも高めやすい。
【0033】
また、本実施形態においては、チップ抵抗器1を製造する際に、大判基板20の状態で多数の電極5の表面にブラスト加工を施して粗面化するので、短時間に効率よく粗面化処理を行うことができる。
【0034】
ただし、チップ抵抗器1の電極5を粗面化処理するために他の手法を採用してもよい。例えば、軟化点の異なる複数種類のガラス材(ビスマス系ガラス等)を電極ペーストに含有させることによっても電極5を粗面化処理することが可能であり、この手法を採用すると、電極5の形成工程でその露出面を粗面化することができるため、電極5の形成後に粗面化処理を別途行う工程を省略できる。その一例としては、軟化点が400℃、600℃、700℃の3種類のガラス材を混合して電極ペーストに含有させればよい。また、別の手法として、粒径の異なる複数種類の金属粉末(Ag/Pd等)を電極ペーストに含有させることによっても電極5を粗面化することが可能であり、その一例としては、粒径1μm以下の金属粉末と粒径10μm程度の金属粉末を同量ずつ混合して電極ペーストに含有させればよい。
【0035】
また、本実施形態においては、チップ抵抗器1の製造過程で電極5の全表面を粗面化した後に抵抗体3や保護膜4を印刷形成するので、抵抗体3用の抵抗ペーストや保護膜4用の樹脂ペーストの液ダレが電極5の微細な凹部5aによって抑制される。それゆえ、抵抗体3や保護膜4を高い位置精度で印刷できるという付加的な効果もある。
【0036】
なお、上記の実施形態では、チップ抵抗器1の電極5を絶縁性基板2上に1層だけ形成しているが、電極5を2層以上の積層構造にして厚膜を増やすことも可能であり、その場合は電極5の最上層の表面を粗面化処理すればよい。
【0037】
図6は本発明の第2の実施形態に係るチップ抵抗器を示しており、図1と図2と対応する部分には同一符号を付してある。図6に示すチップ抵抗器1には、絶縁性基板2の片面2aと逆側の裏面2bに磁性体からなる磁性層6が設けられており、それ以外の構成は前述した第1の実施形態と同様である。この磁性層6は、スパッタリングや無電解メッキ、印刷等の適宜手法で形成することができる。
【0038】
この第2の実施形態のように、絶縁性基板2の裏面2bに磁性層6が設けられていると、チップ抵抗器1をテーピング包装する際や、チップ抵抗器1を回路基板10に自動マウントする際に、図示せぬ磁石で磁性層6を吸着することによってチップ抵抗器1の姿勢を安定させることができる。
【0039】
図7は本発明の第3の実施形態に係るチップ抵抗器を示しており、図1と図2と対応する部分には同一符号を付してある。図7に示すチップ抵抗器1には、電極5の高さ位置を嵩上げするための絶縁層7が付設されていると共に、これら電極5と絶縁層7が絶縁性基板2の片面2aの外縁まで延びている。すなわち、絶縁性基板2の片面2aの長手方向両端部に絶縁層7が設けてあり、電極5は絶縁層7を覆うように設けられているため、電極5の露出面の高さ位置と保護膜4の表面の高さ位置とが略同等になっている。なお、絶縁層7は、電極5を形成する前に、エポキシ系等の樹脂ペーストを厚膜印刷して焼成することにより形成できる。
【0040】
この第3の実施形態のように、絶縁層7を付設することによって、絶縁性基板2の抵抗体形成面である片面2aから電極5の露出面までの高さ寸法が、該片面2aから保護膜4の表面までの高さ寸法と同程度になるようにしてあると、フェースダウン実装したチップ抵抗器1が保護膜4を支点として傾く虞がなくなるため、実装後のチップ抵抗器1に上方から外力が作用してもクラック等を生じにくくなる。また、電極5や絶縁層7が絶縁性基板2の片面2aの外縁まで延びているチップ抵抗器1は、製造時に2個分の電極5や2個分の絶縁層7を大判基板の分割線上で連続させておくことができるため、これら電極5や絶縁層7の印刷を比較的容易に行うことができる。なお、電極5の高さ位置は絶縁層7の膜厚によって容易に嵩上げできるため、絶縁層7をさらに厚く形成して電極5が保護膜4の表面よりも若干高い位置に露出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 チップ抵抗器
2 絶縁性基板
2a 片面
3 抵抗体
4 保護膜
5 電極
5a 凹部
6 磁性層
7 絶縁層
10 回路基板
11 配線パターン
12 導電性接着剤
20 大判基板
21 分割溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板の片面に、抵抗体と、この抵抗体の両端部に重なり合う一対の電極と、前記抵抗体を覆う保護膜とが設けられ、前記絶縁性基板の前記片面側を回路基板に対向させてフェースダウン実装されるチップ抵抗器において、
前記電極の表面を露出させ、この露出面が少なくとも前記絶縁性基板の表面よりも粗くなるように粗面化処理されていることを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記絶縁性基板の前記片面から前記保護膜の表面までの高さ寸法に比べて、前記絶縁性基板の前記片面から前記電極の露出面までの高さ寸法が同等以上の大きさに設定されていることを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記絶縁性基板の前記片面の両端部に絶縁層を設け、この絶縁層を覆うように前記電極が設けられていることを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記電極が前記絶縁性基板の前記片面の外縁から離れた領域に設けられていることを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記絶縁性基板の前記片面と逆側の面に磁性体からなる磁性層が設けられていることを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項6】
絶縁性基板の片面に、抵抗体と、この抵抗体の両端部に重なり合う一対の電極と、前記抵抗体を覆う保護膜とが設けられ、前記絶縁性基板の前記片面側を回路基板に対向させてフェースダウン実装されるチップ抵抗器の製造方法において、
前記絶縁性基板の前記片面に電極ペーストを厚膜印刷して前記電極を形成すると共に、前記電極の表面を少なくとも前記絶縁性基板の表面よりも粗くなるように粗面化処理したうえで露出させるようにしたことを特徴とするチップ抵抗器の製造方法。
【請求項7】
請求項6の記載において、前記粗面化処理として前記電極の表面にブラスト加工を施したことを特徴とするチップ抵抗器の製造方法。
【請求項8】
請求項6の記載において、前記粗面化処理として軟化点の異なる複数種類のガラス材を前記電極ペーストに含有させたことを特徴とするチップ抵抗器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−175064(P2012−175064A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38627(P2011−38627)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000105350)コーア株式会社 (201)
【Fターム(参考)】