説明

チャッキング装置、モータ、ディスク駆動装置、およびチャッキング装置の製造方法

【課題】周方向に転走可能な複数の球体を有するチャッキング装置において、球体の転走により生じる騒音を低減する。
【解決手段】チャッキング装置104は、ディスクが載置されるディスク載置部136と、ディスク載置部を下方から直接的または間接的に支持する樹脂製のターンテーブル134と、ターンテーブルの下面に密着固定された円板部を有する金属部材132と、ディスク載置部より下側かつ円板部より上側において、中心軸に対して周方向に転走自在に配置された複数の球体135と、を備え、ターンテーブルは複数の球体を滑り止め部材を介して下方から支持する下方転走面142aと、複数の球体の径方向外側に位置する円筒状の側方転走面144aと、を有する。樹脂製のターンテーブルの下面に金属部材の円板部が密着固定されているため、球体の転走により生じる音の振幅が小さくなる。したがって、チャッキング装置の騒音が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャッキング装置、モータ、ディスク駆動装置、およびチャッキング装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクドライブ等のディスク駆動装置には、ディスクを回転させるためのブラシレスモータが搭載されている。ブラシレスモータは、回転部とともに回転するチャッキング装置を有する。ディスク駆動装置は、チャッキング装置によりディスクを保持しつつ、ブラシレスモータを駆動させることにより、ディスクを回転させる。
【0003】
近年、ディスク駆動装置の高倍速化に伴い、ブラシレスモータの回転が高速化する傾向にある。ブラシレスモータの回転が高速化すれば、振動の問題が発生しやすくなる。ブラシレスモータが振動する要因の1つとして、ディスクの偏重心が挙げられる。ディスクの重心位置には、個体差がある。ブラシレスモータの回転部およびディスクの、全体としての重心が、回転中心と一致しない場合には、振動の問題が発生しやすくなる。
【0004】
ディスクの偏重心を補正する技術として、登録実用新案第3045377号公報には、回転中心と同軸に形成された環状の空間部と、この空間部を移動可能となった1または複数個のバランサーとを有する自動偏重心補正機構付回転体が記載されている。また、米国特許第6,198,715号明細書には、ターンテーブルの円環状の溝内に複数のバランスボールが配置されたアンバランス補正機構を有するディスク装置が記載されている。
【特許文献1】登録実用新案第3045377号公報
【特許文献2】米国特許第6,198,715号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転部に、周方向に転走可能な複数の球体を配置すると、球体の転走により騒音が発生する。特に、ブラシレスモータの加速時、減速時、および停止後に、球体の転走による騒音が発生しやすい。このような騒音を抑制するためには、例えば、回転部の球体が接触する面に、緩衝材を取り付けることが考えられる。しかしながら、球体が接触する全ての面に緩衝材を取り付けると、球体への抵抗が大きくなり、球体の円滑な転走の妨げとなり得る。
【0006】
本発明の目的は、周方向に転走可能な複数の球体を有するチャッキング装置において、球体の転走により生じる騒音を低減できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1発明は、ディスクが載置されるディスク載置部と、前記ディスク載置部を下方から直接的または間接的に支持する樹脂製のターンテーブルと、前記ターンテーブルの下面に密着固定された円板部を有する金属部材と、前記ディスク載置部より下側かつ前記円板部より上側において、中心軸に対して周方向に転走自在に配置された複数の球体と、を備え、前記ターンテーブルは、前記複数の球体を、滑り止め部材を介して下方から支持する下方転走面と、前記複数の球体の径方向外側に位置する円筒状の側方転走面と、を有するチャッキング装置である。
【0008】
本願の第2発明は、中心軸に対して周方向に移動可能な複数の球体と、前記複数の球体を保持するターンテーブルと、を備えるチャッキング装置の製造方法において、a)一対の金型の間に形成されるキャビティ内に、円板部を有する金属部材を配置する工程と、b)前記工程a)の後、前記キャビティ内に、液相の樹脂を流入する工程と、c)前記工程b)の後、前記キャビティ内の樹脂を固化させてターンテーブルとし、前記ターンテーブルと前記金属部材とを一体化させる工程と、d)前記工程c)の後、一体化された前記ターンテーブルおよび前記金属部材を、前記金型から離型させる工程と、を備え、前記工程c)において、前記円板部の上面と、前記ターンテーブルの下面とが、密着固定されるとともに、前記ターンテーブルに、前記複数の球体の下方に配置される下方転走面と、前記複数の球体の径方向外側に配置される円筒状の側方転走面とが、形成されるチャッキング装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本願の第1発明および第2発明によれば、樹脂製のターンテーブルの下面に、金属部材の円板部が密着固定される。このため、球体の転走により生じる音の振幅が、小さくなる。したがって、チャッキング装置の騒音が、低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、チャッキング装置の部分縦断面図である。
【図2】図2は、ディスク駆動装置の縦断面図である。
【図3】図3は、ブラシレスモータの縦断面図である。
【図4】図4は、ターンテーブル、複数の球体、およびディスク載置部材の上面図である。
【図5】図5は、回転部の外周部付近の部分縦断面図である。
【図6】図6は、ターンテーブルおよび蓋部材の部分縦断面図である。
【図7】図7は、インサート成型の手順を示したフローチャートである。
【図8】図8は、変形例に係る回転部の外周部付近の部分縦断面図である。
【図9】図9は、変形例に係る回転部の外周部付近の部分縦断面図である。
【図10】図10は、変形例に係る回転部の外周部付近の部分縦断面図である。
【図11】図11は、変形例に係る回転部の外周部付近の部分縦断面図である。
【図12】図12は、変形例に係る回転部の外周部付近の部分縦断面図である。
【図13】図13は、変形例に係る回転部の外周部付近の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、チャッキング装置の中心軸に沿う方向を上下方向とし、ターンテーブルに対してディスクが配置される側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、これは、説明の便宜のために上下方向を定義したものであって、本発明に係るモータおよびディスク駆動装置の使用時における姿勢を限定するものではない。
【0012】
<1.一実施形態に係るチャッキング装置>
図1は、本発明の一実施形態に係るチャッキング装置104の部分縦断面図である。図1に示すように、チャッキング装置104は、ディスク載置部136と、ターンテーブル134と、金属部材132と、複数の球体135と、を備えている。
【0013】
ディスク載置部136は、ディスク190が載置される部位である。ターンテーブル134は、ディスク載置部136を下方から直接的または間接的に支持する、樹脂製の部材である。金属部材132は、ターンテーブル134の下面に密着固定された円板部132bを有する。複数の球体135は、ディスク載置部136より下側かつ円板部132bより上側に配置されている。また、複数の球体135は、中心軸に対して周方向に転走自在に配置されている。
【0014】
ターンテーブル134は、下方転走面142aと、側方転走面144aと、を有する。下方転走面142aは、複数の球体135の下方に配置された面である。下方転走面142aは、複数の球体135を、滑り止め部材145を介して下方から支持する。側方転走面144aは、複数の球体135の径方向外側に位置する円筒状の面である。
【0015】
チャッキング装置104を製造するときには、ターンテーブル134と金属部材132とを、インサート成型により一体化させる。すなわち、まず、一対の金型の間に形成されるキャビティ内に、金属部材132を配置する。次に、キャビティ内に、液相の樹脂を流入する。続いて、キャビティ内の樹脂を固化させてターンテーブル134とし、ターンテーブル134と金属部材132とを一体化させる。このとき、金属部材132の円板部132bの上面と、ターンテーブル134の下面とが、密着固定される。また、ターンテーブル134に、下方転走面142aおよび側方転走面144aが形成される。その後、一体化されたターンテーブル134および金属部材132を、金型から離型させる。
【0016】
このように、本実施形態のチャッキング装置104では、樹脂製のターンテーブル134の下面に、金属部材132の円板部132bが密着固定される。このため、球体135の転走により生じる騒音の振幅が、小さくなる。したがって、チャッキング装置104の騒音が、低減される。
【0017】
<2.より具体的な実施形態>
<2−1.ディスク駆動装置の構成>
続いて、本発明のより具体的な実施形態について説明する。
【0018】
図2は、ディスク駆動装置1の縦断面図である。ディスク駆動装置1は、光ディスク90(以下、単に「ディスク90」という)を回転させつつ、ディスク90に対して情報の読み出しおよび書き込みを行う装置である。ディスク駆動装置1は、装置ハウジング11、ディスクトレイ12、ブラシレスモータ13、クランパ14、およびアクセス部15を備えている。
【0019】
装置ハウジング11は、ディスクトレイ12、ブラシレスモータ13、クランパ14、およびアクセス部15を内部に収容する筐体である。ディスクトレイ12は、装置ハウジング11の外部と内部との間でディスク90を搬送するための機構である。ブラシレスモータ13は、装置ハウジング11の内部に設けられたシャーシ16に固定されている。ディスクトレイ12からブラシレスモータ13へ移載されたディスク90は、ブラシレスモータ13の回転部3とクランパ14との間に保持され、ブラシレスモータ13により、中心軸9を中心として回転される。
【0020】
アクセス部15は、光ピックアップ機能を備えたヘッド15aを有している。アクセス部15は、ブラシレスモータ13に保持されたディスク90の記録面に沿ってヘッド15aを移動させて、ディスク90に対する情報の読み出しおよび書き込みを行う。なお、アクセス部15は、ディスク90に対して、情報の読み出しおよび書き込みの一方のみを行うものであってもよい。
【0021】
<2−2.ブラシレスモータの構成>
続いて、上記のブラシレスモータ13の構成について説明する。
【0022】
図3は、ブラシレスモータ13の縦断面図である。図3に示すように、ブラシレスモータ13は、静止部2と回転部3とを備えている。静止部2は、ディスク駆動装置1のシャーシ16に固定されている。回転部3は、静止部2に対して回転自在に支持されている。
【0023】
静止部2は、ベース部材21、静止軸受ユニット22、およびステータユニット23を有する。静止軸受ユニット22は、ベース部材21に固定されている。静止軸受ユニット22は、シャフト31を回転可能な状態で支持する機構である。静止軸受ユニット22は、スリーブ22aと、スリーブハウジング22bと、を有する。スリーブ22aは、シャフト31の外周面を包囲する略円筒状の部材である。スリーブハウジング22bは、スリーブ22aを内部に収容する略カップ状の部材である。ステータユニット23は、複数本のティース部24aを有するステータコア24と、各ティース部24aに巻回されたコイル25と、を有する。
【0024】
回転部3は、シャフト31、ロータホルダ32、ロータマグネット33、ターンテーブル34、複数の球体35、ディスク載置部材36、コーン37、およびヨーク38を有する。シャフト31は、中心軸9に沿って上下方向に延びる略円柱状の部材である。ロータホルダ32は、シャフト31に固定されてシャフト31とともに回転する金属部材である。
【0025】
ロータホルダ32は、締結部32a、円板部32b、およびホルダ部32cを有する。締結部32aは、シャフト31に圧入により締結された略円筒状の部位である。円板部32bは、締結部32aの上端部から径方向外側へ広がる部位である。また、ホルダ部32cは、円板部32bの径方向外側の端縁部から下方へ向けて延び、その内周面にロータマグネット33を保持する略円筒状の部位である。ロータマグネット33は、円環状の永久磁石である。ロータマグネット33の内周面は、ステータコア24のティース部24aの端面と径方向に対向する磁極面となっている。
【0026】
ターンテーブル34は、ロータホルダ32に固定されてロータホルダ32とともに回転する、樹脂製の部材である。ターンテーブル34は、平板部34a、球体保持部34b、および張り出し部34cを有する。平板部34aは、コーン37の下方に位置する円板状の部位である。球体保持部34bは、平板部34aの径方向外側において、複数の球体35を保持する部位である。複数の球体35は、球体保持部34bの内部に、周方向に転走自在に配置されている。複数の球体35およびその周囲の構造については、後述する。
【0027】
張り出し部34cは、球体保持部34bの外周面の上端部から、径方向外側へ張り出した部位である。ディスク載置部材36は、ターンテーブル34の張り出し部34cの上面に固定されている。ディスク載置部材36の上面は、ディスク90が載置される載置面となっている。
【0028】
コーン37は、ディスク90の内周部を支持する部材である。コーン37は、ターンテーブル34の平板部34aの上方において、シャフト31に対して軸方向に摺動可能に取り付けられている。コーン37は、下方へ向けて漸次に径が拡大する傾斜面37aを有する。コーン37は、ディスク90の内周部を傾斜面37aに当接させた状態で、ディスク90を支持する。これにより、ディスク90の中心が、中心軸9上に位置決めされる。
【0029】
ターンテーブル34の平板部34aとコーン37との間には、軸方向に伸縮するばね部材39が配置されている。ばね部材39は、コーン37を、上向きに付勢している。ヨーク38は、シャフト31の上端部に固定された磁性体である。ディスク90が保持されていないときには、コーン37は、ヨーク38の下面に当接した状態で、静止している。ヨーク38は、クランパ14側に設けられたクランプマグネットとの間に、磁気的な吸引力を発生させる。この吸引力により、ディスク載置部材36およびコーン37と、クランパ14との間に、ディスク90が挟持される。
【0030】
本実施形態では、回転部3のうち、少なくとも、ロータホルダ32、ターンテーブル34、複数の球体35、ディスク載置部材36、およびコーン37が、ディスク90を保持するチャッキング装置4を構成する。
【0031】
このようなブラシレスモータ13において、静止部2のコイル25に駆動電流が与えられると、ステータコア24の複数のティース部24aに磁束が発生する。そして、ティース部24aとロータマグネット33との間の磁束の作用により周方向のトルクが発生し、静止部2に対して回転部3が、中心軸9を中心として回転する。回転部3に保持されたディスク90は、回転部3とともに、中心軸9を中心として回転する。
【0032】
<2−3.球体およびその周囲の構造について>
図4は、ターンテーブル34、複数の球体35、およびディスク載置部材36の上面図である。また、図5は、回転部3の外周部付近の部分縦断面図である。図4および図5に示すように、ターンテーブル34の球体保持部34bには、円環状の溝部41が形成されている。溝部41は、球体保持部34bの上面側に形成されている。すなわち、溝部41は、上方へ向けて開いた溝となっている。
【0033】
複数の球体35は、溝部41の内部に、周方向に転走自在に収容されている。球体35の軸方向の位置は、ディスク載置部材36より下側であって、かつ、ロータホルダ32の円板部32bより上側となる。球体35は、例えば、非磁性のステンレスにより形成されている。
【0034】
複数の球体35は、回転部3およびディスク90の全体としての重心の、中心軸9に対する位置ずれを補正する役割を果たす。回転部3およびディスク90が回転し、その回転数が一定以上になると、複数の球体35は、中心軸9に対して重心とは反対の方向へ、転走移動する。これにより、回転部3およびディスク90の全体としての重心の位置が、中心軸9に近づくように、調整される。
【0035】
球体保持部34bは、底部42と、内周壁43と、外周壁44と、を有する。底部42は、複数の球体35の下方に位置する部位である。内周壁43は、球体35の径方向内側に位置する略円筒状の部位である。また、外周壁44は、球体35の径方向外側に位置する略円筒状の部位である。溝部41は、底部42の上面、内周壁43の外周面、および外周壁44の内周面に包囲された空間となっている。
【0036】
底部42の上面には、円環状の滑り止め部材45が、取り付けられている。複数の球体35は、滑り止め部材45の上面に、載置されている。すなわち、底部42の上面は、滑り止め部材45を介して複数の球体35を支持する、下方転走面42aとなっている。また、ブラシレスモータ13の回転時には、遠心力を受けた複数の球体35が、外周壁44の内周面に当接する。このように、外周壁44の内周面は、複数の球体35が当接する側方転走面44aとなっている。
【0037】
滑り止め部材45は、弾性を有する材料、例えばポリウレタンにより、形成されている。このため、球体35の転走時に球体35から下方へ伝播する振動は、滑り止め部材45に吸収されて、低減される。したがって、球体35から滑り止め部材45を介してターンテーブル34の底部42へ伝播する振動は、小さい。
【0038】
一方、ターンテーブル34の側方転走面44aには、滑り止め部材が取り付けられていない。これは、球体35への抵抗を抑制して、球体35を円滑に転走させるためである。したがって、側方転走面44aには、球体35が直接に当接する。このため、球体35の転走時には、球体35が外周壁44を転送することによって生じる振動が、伝播しやすい。
【0039】
本実施形態のロータホルダ32およびターンテーブル34は、インサート成型により、一体化されている。したがって、ロータホルダ32の円板部32bの上面と、ターンテーブル34の平板部34aおよび球体保持部34bの下面とは、密着固定されている。ここで、「密着固定」とは、接着剤を介することなく、インサート成型によって直接に固定されていることを意味している。
【0040】
このように、本実施形態では、樹脂製のターンテーブル34が、より剛性の高い金属製のロータホルダ32に、密着固定されている。このため、チャッキング装置4内のターンテーブル34の固有振動数は、ターンテーブル34の単体としての固有振動数よりも、高くなる。また、接着や溶接等の他の固定方法により、ロータホルダ32とターンテーブル34とを固定した場合よりも、ターンテーブル34の固有振動数は、さらに高くなる。したがって、球体35の転走時にターンテーブル34に生じる振動の振幅が、小さくなる。その結果、球体35の転走により発生する騒音が、低減される。
【0041】
特に、本実施形態では、下方転走面42aおよび側方転走面44aを含む球体保持部34bの下方位置において、ロータホルダ32とターンテーブル34とが、密着固定されている。すなわち、騒音の発生源である球体35に近い位置で、ロータホルダ32とターンテーブル34とが、密着固定されている。このため、球体35の転走により発生する騒音が、より効果的に低減される。
【0042】
球体保持部34bの上部には、円環状の蓋部材46が取り付けられている。蓋部材46は、溝部41の上部を閉塞し、複数の球体35の上方への飛び出しを防止する役割を果たす。蓋部材46は、例えば、亜鉛めっき鋼板、スズめっき鋼板、または樹脂により形成される。本実施形態の蓋部材46は、径方向に広がる平板状の上蓋部46aのみからなる。このため、蓋部材46は、内周壁43や外周壁44の径方向の位置や寸法を、制限しない。したがって、球体保持部34bは、径方向の部品配置や寸法に関して、高い自由度で設計される。
【0043】
蓋部材46は、ターンテーブル34の球体保持部34bに、例えば溶着により固定される。図6は、溶着部43cを含む、ターンテーブル34および蓋部材46の部分縦断面図である。ターンテーブル34に蓋部材46を熱溶着で固定するときには、まず、内周壁43の上端部に形成された突出ピン43bを、蓋部材46に形成された貫通孔46bに、挿入する。そして、貫通孔46bから上方へ突出した突出ピン43bの先端を、加熱等により融解させる。融解された樹脂は、蓋部材46の上面に広がって貫通孔46bを塞ぎ、溶着部43cとなる。
【0044】
溶着部43cにより、ターンテーブル34と蓋部材46とは、より強固に固定される。また、接着剤を使用することなく両部材を固定できるため、溝部41内に接着剤が付着して、球体35の転走を妨げる虞がない。
【0045】
図5に戻る。本実施形態では、ディスク載置部材36の上面から、蓋部材46の上蓋部46aの下面までの軸方向の寸法d1は、滑り止め部材45の上面からターンテーブル34と円板部32bとの接触面までの軸方向の寸法d2より、小さい。このような寸法関係であるため、複数の球体35が、軸方向に関して、ディスク90により近い位置に配置される。その結果、複数の球体35は、ディスク90の偏重心に起因する重心位置のずれを補正する機能を、より効果的に果たす。
【0046】
また、本実施形態では、ターンテーブル34の外周壁44の外周面44bと、ロータホルダ32のホルダ部32cの外周面とが、略同一の半径を有する。すなわち、ターンテーブル34の外周壁44は、ロータホルダ32のホルダ部32cから径方向外側へ、大きく突出していない。このため、ターンテーブル34の外周壁44が、片持ち梁状の振動体として振動することが、抑制される。したがって、球体35の転走により生じる騒音が、さらに抑制される。
【0047】
<2−4.インサート成型の手順>
続いて、上記のチャッキング装置4の製造工程において、ロータホルダ32とターンテーブル34とを、インサート成型により一体化するときの手順について、説明する。図7は、インサート成型の手順を示したフローチャートである。
【0048】
インサート成型を行うときには、一対の金型と、予め作製されたロータホルダ32とが、用意される。ロータホルダ32は、例えば、プレス成形により作製される。一対の金型は、互いの対向面を当接させることにより、それらの内部に、ロータホルダ32およびターンテーブル34の一体化後の形状に対応するキャビティを形成するものが、使用される。
【0049】
まず、ロータホルダを、一方の金型の内部にセットする。続いて、両金型の対向面を当接させ、金型の内部にキャビティを形成する。これにより、キャビティの内部に、ロータホルダ32が配置された状態となる(ステップS1)。次に、キャビティの内部に、液相の樹脂を流入する(ステップS2)。液相の樹脂は、少なくとも一方の金型に形成されたゲートを介して、キャビティの内部へ流入される。
【0050】
キャビティの内部のうち、ロータホルダ32を除く空間に、液相の樹脂が行き渡ると、続いて、キャビティ内の樹脂を、冷却して固化する(ステップS3)。キャビティ内の樹脂は、固化されることにより、ターンテーブル34となる。また、これにより、ロータホルダ32とターンテーブル34が、一体化される。
【0051】
ターンテーブル34は、平板部34a、球体保持部34b、および張り出し部34cを有する形状に、成型される。また、球体保持部34bには、底部42、内周壁43、および外周壁44が形成される。このとき、底部42の上面である下方転走面42aや、外周壁44の内周面である側方転走面44aも、形成される。また、ステップS3においては、ロータホルダ32の円板部32bの上面と、ターンテーブル34の平板部34aおよび球体保持部34bの下面とが、密着固定される。
【0052】
その後、一対の金型を開き、一体化されたロータホルダ32およびターンテーブル34を、金型から離型させる(ステップS4)。
【0053】
以上のような工程を経て製造されたチャッキング装置4では、樹脂製のターンテーブル34の下面に、金属部材であるロータホルダ32の円板部32bが、密着固定されている。このため、チャッキング装置4内のターンテーブル34の固有振動数は、ターンテーブル34の単体としての固有振動数よりも、高くなる。また、接着や溶接等の他の固定方法により、ロータホルダ32とターンテーブル34とを固定した場合よりも、ターンテーブル34の固有振動数は、さらに高くなる。したがって、球体35の転走時に球体35から伝播する振動の振幅が、小さくなる。その結果、球体35の転走により発生する騒音が、低減される。
【0054】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0055】
ターンテーブル34は、上記の実施形態のように、金属部材であるロータホルダ32の円板部32bに密着固定されていてもよく、他の一例として、図8のように、ロータホルダ32とは別の金属部材である円板部材47に、密着固定されていてもよい。図8の例では、ロータホルダ32とターンテーブル34との間に、円板部材47が設けられている。そして、ターンテーブル34と円板部材47とが、インサート成型により一体化されている。したがって、ターンテーブル34の平板部34aおよび球体保持部34bの下面は、円板部材47の上面に、密着固定されている。これにより、球体35の転走により生じる騒音が、低減される。
【0056】
ただし、上記の実施形態のように、ロータホルダ32とターンテーブル34とを直接に密着固定すれば、チャッキング装置4の構造が、より簡素化され、部品点数も削減される。また、チャッキング装置4の軸方向の寸法も、抑制される。
【0057】
また、チャッキング装置4は、上記の実施形態のように、ほぼ上蓋部46aのみからなる蓋部材46を備えていてもよく、他の一例として、図9のような蓋部材48を備えていてもよい。図9の蓋部材48は、上蓋部48aと、内側円筒部48bとを有する。内側円筒部48bは、上蓋部48aの径方向内側の位置から下方へ向けて延びる、略円筒状の部位である。
【0058】
図9の例では、内側円筒部48bは、ターンテーブル34の内周壁43より、径方向内側に位置している。そして、蓋部材48の内側円筒部48bが、内周壁43の内側に、圧入されている。このため、蓋部材48は、ターンテーブル34に、強固に固定される。このようにすれば、球体35の衝突や、他の種々の衝撃が生じた場合にも、ターンテーブル34からの蓋部材48の離脱が、抑制される。
【0059】
また、図9の例では、蓋部材48の内側円筒部48bは、球体35と接触しない。このため、球体35と内側円筒部48bとの接触による騒音の発生もない。なお、ターンテーブル34の内周壁43と、蓋部材48の内側円筒部48bとは、接着剤や他の部材を介して、固定されていてもよい。
【0060】
なお、蓋部材48の内側円筒部48bは、内周壁43の径方向外側に配置されていてもよい。また、チャッキング装置4は、図9のような上蓋部48aと内側円筒部48bとを有する蓋部材48を備え、かつ、内周壁43のないターンテーブル34を備えていてもよい。すなわち、ターンテーブル34の下方転走面42a、ターンテーブル34の側方転走面44a、蓋部材48の上蓋部48aの下面、および蓋部材48の内側円筒部48bの外周面に囲まれた閉空間の内部に、複数の球体35が収容されていてもよい。
【0061】
また、他の一例として、チャッキング装置4は、図10のような蓋部材49を備えていてもよい。図10の蓋部材49は、上蓋部49a、外側円筒部49b、および張り出し部49cを有する。外側円筒部49bは、上蓋部49aの径方向外側の位置から下方へ向けて延びる、円筒状の部位である。また、張り出し部49cは、外側円筒部49bの上端部から、径方向外側へ張り出した部位である。ディスク載置部材36は、蓋部材49の張り出し部49cの上面に、固定されている。
【0062】
図10の例では、外側円筒部49bは、ターンテーブル34の外周壁44より、径方向外側に位置している。そして、ターンテーブル34の外周壁44が、蓋部材49の外側円筒部49bの内側に、圧入されている。このため、蓋部材49は、ターンテーブル34に、強固に固定される。このようにすれば、球体35の衝突や、他の種々の衝撃が生じた場合にも、ターンテーブル34からの蓋部材49の離脱が、抑制される。
【0063】
また、図10の例では、蓋部材49の外側円筒部49bは、球体35と接触しない。このため、球体35と外側円筒部49bとの接触による騒音の発生もない。なお、ターンテーブル34の外周壁44と、蓋部材49の外側円筒部49bとは、接着剤や他の部材を介して、固定されていてもよい。
【0064】
ディスク載置部材36は、上記の実施形態のように、ターンテーブル34の上面に固定されていてもよく、他の一例として、図10のように、蓋部材49の上面に固定されていてもよい。すなわち、ディスク載置部材36は、ターンテーブル34に、下方から直接的または間接的に支持されていればよい。図10のように、蓋部材49の上面にディスク載置部材36が配置されていれば、蓋部材49の全体を、ディスク載置部材36より径方向内側に配置する必要がない。したがって、径方向に関する部品配置設計や寸法設計の自由度が、向上する。
【0065】
また、ターンテーブル34は、必ずしも下面全体がロータホルダ32に密着固定されていなくてもよい。例えば、図11のように、ターンテーブル34の下面のうち、径方向外側の一部分が、ターンテーブル34から離間していてもよい。図11の例では、ターンテーブル34の外周壁44が、ロータホルダ32のホルダ部32cの外周面より、径方向外側に配置されている。このような形態であっても、ターンテーブル34とロータホルダ32とが、互いに密着固定されている部分を有することにより、球体35の転走による騒音が、従来より低減される。
【0066】
また、図12のように、ターンテーブル34は、ロータホルダ32の円板部32bの下方に形成された係合部34dを有していてもよい。図12の例では、ロータホルダ32の円板部32bに、軸方向に延びる貫通孔32dが形成されている。そして、インサート成型時に、貫通孔32dを介して円板部32bの下方位置に樹脂が流入されることにより、係合部34dが形成される。
【0067】
係合部34dは、ロータホルダ32の円板部32bの下面に、密着固定される。また、貫通孔32dにおいても、ロータホルダ32とターンテーブル34とが、密着固定される。このため、ロータホルダ32とターンテーブル34とが、上記の実施形態より広い面積で、密着固定される。したがって、球体35の転走により発生する騒音が、より低減される。
【0068】
また、図13のように、ターンテーブル34は、ロータホルダ32のホルダ部32cの外周面を覆う円筒状の外層部34eを有していてもよい。このような形態でも、ロータホルダ32とターンテーブル34とが、上記の実施形態より広い面積で、密着固定される。したがって、球体35の転走により発生する騒音が、より低減される。
【0069】
なお、本発明における「ターンテーブルの下面」は、必ずしも、ターンテーブルの最下部を構成する面でなくてもよい。図12や図13のように、ターンテーブル34が、ロータホルダ32の円板部32bより下方に位置する部分を有する場合であっても、ターンテーブル34の平板部34aおよび球体保持部34bの下面が、ロータホルダ32の円板部32bの上面に、密着固定されていればよい。
【0070】
また、上記の実施形態のように、チャッキング装置4のターンテーブル34とは別に、ディスク90の内周部を支持するコーン37が設けられていてもよく、他の一例として、ターンテーブル34自体に、ディスク90の内周部を支持するための機構が設けられていてもよい。
【0071】
また、本発明のチャッキング装置は、上記の実施形態のように、光ディスク90を保持するためのものであってもよく、磁気ディスク等の他の記録ディスクを保持ためのものであってもよい。ただし、ディスクを着脱可能に保持するチャッキング装置では、個々のディスクの偏重心を補正する要求が特に高い。このため、ディスクを着脱可能に保持するチャッキング装置に、本発明を適用する技術的意義は、特に大きい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、チャッキング装置、モータ、ディスク駆動装置、およびチャッキング装置の製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 ディスク駆動装置
2 静止部
3 回転部
4,104 チャッキング装置
9 中心軸
11 装置ハウジング
13 ブラシレスモータ
15 アクセス部
21 ベース部材
22 静止軸受ユニット
23 ステータユニット
31 シャフト
32 ロータホルダ
32b,132b 円板部
32c ホルダ部
33 ロータマグネット
34,134 ターンテーブル
34a 平板部
34b 球体保持部
34c 張り出し部
34d 係合部
34e 外層部
35,135 球体
36 ディスク載置部材
37 コーン
38 ヨーク
39 ばね部材
41 溝部
42 底部
42a,142a 下方転走面
43 内周壁
43c 溶着部
44 外周壁
44a,144a 側方転走面
45,145 滑り止め部材
46,48,49 蓋部材
46a,48a,49a 上蓋部
47 円板部材
48b 内側円筒部
49b 外側円筒部
90,190 ディスク
132 金属部材
136 ディスク載置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクが載置されるディスク載置部と、
前記ディスク載置部を下方から直接的または間接的に支持する樹脂製のターンテーブルと、
前記ターンテーブルの下面に密着固定された円板部を有する金属部材と、
前記ディスク載置部より下側かつ前記円板部より上側において、中心軸に対して周方向に転走自在に配置された複数の球体と、
を備え、
前記ターンテーブルは、前記複数の球体を、滑り止め部材を介して下方から支持する下方転走面と、前記複数の球体の径方向外側に位置する円筒状の側方転走面と、を有するチャッキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のチャッキング装置において、
前記金属部材は、少なくとも前記下方転走面の下方位置において、前記ターンテーブルの下面に密着固定されているチャッキング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のチャッキング装置において、
前記ターンテーブルは、前記複数の球体の径方向内側に位置する略円筒状の内周壁を有し、
前記下方転走面、前記側方転走面、および前記内周壁に囲まれた円環状の溝部の上部を閉塞する上蓋部を有する蓋部材を、さらに備えるチャッキング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のチャッキング装置において、
前記蓋部材は、前記上蓋部の径方向内側の位置から下方へ向けて延びる内側円筒部をさらに有し、
前記内側円筒部が、前記内周壁より径方向内側に位置しているチャッキング装置。
【請求項5】
請求項3に記載のチャッキング装置において、
前記蓋部材は、前記上蓋部の径方向外側の位置から下方へ向けて延びる外側円筒部をさらに有し、
前記外側円筒部が、前記ターンテーブルの外周面より径方向外側に位置しているチャッキング装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のチャッキング装置において、
前記複数の球体の上方に配置される上蓋部と、前記上蓋部の径方向内側の位置から下方へ向けて延びる内側円筒部と、を有する蓋部材をさらに備え、
前記下方転走面、前記側方転走面、前記上蓋部の下面、および前記内側円筒部の外周面に囲まれた閉空間の内部に、前記複数の球体が収容されているチャッキング装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
ターンテーブルは、前記蓋部材の上面に位置する溶着部を有するチャッキング装置。
【請求項8】
請求項3から請求項7までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
前記ディスク載置部の上面から、前記上蓋部の下面までの軸方向の寸法は、前記滑り止め部材の上面から、前記ターンテーブルと前記円板部との接触面までの軸方向の寸法より、小さいチャッキング装置。
【請求項9】
請求項3から請求項8までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
前記蓋部材の上面に、前記ディスク載置部が配置されているチャッキング装置。
【請求項10】
静止部と、
請求項1から請求項9までのいずれかに記載のチャッキング装置を有する回転部と、
を備え、
前記金属部材は、前記円板部の径方向外側の端縁部から、下方へ向けて延び、その内周面にマグネットを保持する略円筒状のホルダ部を有し、
前記静止部は、前記マグネットと径方向に対向するステータを有するモータ。
【請求項11】
請求項10に記載のモータにおいて、
前記ターンテーブルは、前記側方転走面を内周面とする略円筒状の外周壁を有し、
前記外周壁の外周面と、前記金属部材の前記ホルダ部の外周面とが、略同一の半径を有するモータ。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のモータと、
前記モータの前記回転部に保持されたディスクに対し、情報の読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を行うアクセス部と、
前記モータおよび前記アクセス部を収容するハウジングと、
を備えたディスク駆動装置。
【請求項13】
中心軸に対して周方向に移動可能な複数の球体と、前記複数の球体を保持するターンテーブルと、を備えるチャッキング装置の製造方法において、
a)一対の金型の間に形成されるキャビティ内に、円板部を有する金属部材を配置する工程と、
b)前記工程a)の後、前記キャビティ内に、液相の樹脂を流入する工程と、
c)前記工程b)の後、前記キャビティ内の樹脂を固化させてターンテーブルとし、前記ターンテーブルと前記金属部材とを一体化させる工程と、
d)前記工程c)の後、一体化された前記ターンテーブルおよび前記金属部材を、前記金型から離型させる工程と、
を備え、
前記工程c)において、前記円板部の上面と、前記ターンテーブルの下面とが、密着固定されるとともに、前記ターンテーブルに、前記複数の球体の下方に配置される下方転走面と、前記複数の球体の径方向外側に配置される円筒状の側方転走面とが、形成されるチャッキング装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−141917(P2011−141917A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−899(P2010−899)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】