説明

チャック付袋体のシール強度測定方法

【課題】チャック付袋体におけるフィルムとチャックテープとの間のシール強度を単純な方法で定量的に測定することができ、このためチャック付袋体の品質保証を十分に行うことができるチャック付袋体のシール強度測定方法を提供する。
【解決手段】チャック付袋体Wから、一対のチャックテープ30を含むような試験片Mを切り取る。この試験片Mにおいて、フィルムF1(またはF2)とこのフィルムF1に対応するチャックテープ31(または32)との間に形成された間隙Pに棒状部材55を挿入し、互いにヒートシールされたフィルムF1とチャックテープ31とを剥離させるようこの挿入された棒状部材55に対してフィルムF1を相対的に引っ張る。このことによりフィルムF1とチャックテープ31との間のシール強度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二層のフィルムと、これらのフィルムの間に設けられ当該各フィルムにそれぞれヒートシールされた雄型および雌型からなる一対のチャックテープとを有するチャック付袋体について、当該チャック付袋体におけるフィルムと、このフィルムにヒートシールされているチャックテープとの間のシール強度を測定するためのシール強度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、二層のフィルムと、これらのフィルムの間に設けられ当該各フィルムにそれぞれヒートシールされた雄型および雌型からなる一対のチャックテープとを有し、開封後も内容物を密閉保存することができるようなチャック付袋体が知られている(例えば、特許文献1、2等参照)。このようなチャック付袋体は、医薬、レトルト食品、液体洗剤、飲料等の内容物を収容することができるものとなっている。
【0003】
ここで、このようなチャック付袋体において、各フィルムとチャックテープとの間におけるシール強度は、当該チャック付袋体の開封動作を行うための、および内容物を安定して密閉保存するための重要な品質パラメータとなる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−91805号公報
【特許文献2】特開2004−35068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、チャック付袋体における各フィルムとチャックテープとの間のシール強度を評価するための方法が十分に確立されていないという問題があった。
【0006】
すなわち、このようなチャック付袋体におけるシール強度を測定するにあたり、チャックテープを含むようチャック付袋体にカッター等でスリットを入れ、手で掴むことができるような把持部を当該チャック付袋体に設けることにより手動でフィルムとチャックテープとの剥離を行う方法が用いられていた。しかしながら、このような方法では、作業者の手作業によるものであるためシール強度を定量的に測定することができず(すなわち、シール強度を数値として得ることができず)、このためシール強度を精度良く測定することができないので、品質トレーサビリティの観点においてチャック付袋体の品質保証を十分に行うことができないという問題がある。
【0007】
また、チャック付袋体に形成される、手で掴むことができるような前述の把持部は非常に幅が狭いものとなる。このため、チャック付袋体の把持部を引張試験機のテンシロン等に直接的にクランプさせることは困難であった。また、チャックテープの雄雌嵌合条のうちいずれかの突出部分をテンシロン等にクランプさせることも同様に困難あり、従来ではこのような引張試験機のテンシロン等を用いることは容易ではなかった。
【0008】
さらに、チャック付袋体を形成するにあたり、チャックテープ熱板によりチャックテープとフィルムとのヒートシールを行う際にこのシール部において当たりの悪さ(圧ムラ)が生じたり、種類の異なるチャックテープおよび各種フィルムとの適正なヒートシール温度設定を行うことが難しくシール不良が生じたりすることがある。この場合には、チャック付袋体において充填内容物の漏れやフィルムに対するチャックテープの剥離が生じ、チェック付袋の機能が低下してしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、チャック付袋体におけるフィルムとチャックテープとの間のシール強度を単純な方法で定量的に測定することができ、このためチャック付袋体の品質保証を十分に行うことができるチャック付袋体のシール強度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、二層のフィルムと、これらのフィルムの間に設けられ当該各フィルムにそれぞれヒートシールされた雄型および雌型からなる一対のチャックテープとを有するチャック付袋体について、当該チャック付袋体におけるフィルムと、このフィルムにヒートシールされているチャックテープとの間のシール強度を測定するためのシール強度測定方法であって、一対のチャックテープについて雄型のチャックテープは雄型嵌合条を有するとともに雌型のチャックテープは雌型嵌合条を有し、雄型のチャックテープは雄型嵌合条近傍においてこの雄型嵌合条と同方向に延びる間隙を有するよう一のフィルムにヒートシールされるとともに雌型のチャックテープは雌型嵌合条近傍においてこの雌型嵌合条と同方向に延びる間隙を有するよう他のフィルムにヒートシールされるようなチャック付袋体を準備する工程と、前記チャック付袋体から、一対のチャックテープを含むような試験片を切り取る工程と、前記切り取り工程により切り取られた試験片において、フィルムとこのフィルムに対応するチャックテープとの間に形成された間隙に棒状部材を挿入し、互いにヒートシールされた前記フィルムとチャックテープとを剥離させるようこの挿入された棒状部材に対して前記フィルムを相対的に引っ張ることによりこれらのフィルムとチャックテープとの間のシール強度を測定する工程と、を備えたことを特徴とするチャック付袋体のシール強度測定方法である。
【0011】
このようなチャック付袋体のシール強度測定方法によれば、チャック付袋体から切り取られる試験片の幅が小さい場合であっても、チャック付袋体におけるフィルムとチャックテープとの間のシール強度を単純な方法で確実に測定することができ、しかも棒状部材に対するフィルムの相対的な引張強度を用いることによりこのシール強度を数値として得ることができるので、当該シール強度を定量的に測定することができる。このことにより、チャック付袋体におけるシール強度を精度良く測定することができ、チャック付袋体の品質保証を十分に行うことができる。
【0012】
本発明のチャック付袋体のシール強度測定方法においては、チャック付袋体を準備する工程において、前記各チャックテープの雄型嵌合条または雌型嵌合条には当接しないようなそれぞれ断面が凹形の一対のヒートシール熱板が、二層のフィルムと一対のチャックテープとからなる組合せ体を挟圧することにより、各フィルムと各チャックテープとのヒートシールを行うことが好ましい。このことにより、雄型嵌合条近傍において雄型のチャックテープとフィルムとの間に確実に間隙を形成することができるとともに、雌型嵌合条近傍において雌型のチャックテープとフィルムとの間に確実に間隙を形成することができ、シール強度の測定工程において棒状部材の挿入を確実に行うことができるようになる。
【0013】
本発明のチャック付袋体のシール強度測定方法においては、前記チャック付袋体から試験片を切り取る際に、前記チャックテープに対して垂直方向に延びる短冊形状の試験片を切り取ることが好ましい。このことにより、棒状部材に対して試験片のフィルムを引っ張る動作を容易に行うことができるようになる。
【0014】
本発明のチャック付袋体のシール強度測定方法においては、挿入された棒状部材に対して前記フィルムを相対的に引っ張る際に、このフィルムと平行かつ前記チャックテープの雄型嵌合条または雌型嵌合条の延びる方向に対して垂直な方向に相対的な引っ張り動作を行うことが好ましい。これは、棒状部材に対してフィルムを相対的に引っ張る際に、この棒状部材から遠ざかるようフィルムを引っ張った場合には、すなわち水平引張方式を用いた場合には、チャックテープとフィルムとが互いに剥離する前にチャックテープ自体が破断してしまい、シール強度を確実に測定することができないからである。
【0015】
また、挿入された棒状部材に対して前記フィルムを相対的に引っ張る際に、一の方向およびこの一の方向と反対方向である他の方向の両方の方向に相対的な引っ張り動作を行うことが更に好ましい。このことにより、試験片について間隙の両側におけるシール強度の測定を各々行うことができる。
【0016】
本発明のチャック付袋体のシール強度測定方法においては、前記棒状部材は丸型ピンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のチャック付袋体のシール強度測定方法によれば、チャック付袋体におけるフィルムとチャックテープとの間のシール強度を単純な方法で定量的に測定することができ、このためチャック付袋体の品質保証を十分に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図8は、本発明によるチャック付袋体のシール強度測定方法の一の実施の形態を示す図である。
このうち、図1は、本発明の一の実施の形態で使用される製袋ユニットの構成の概略を示す斜視図であり、図2は、図1に示す製袋ユニットの一部の拡大上面図であり、図3は、図2の製袋ユニットのA−A矢視断面図である。また、図4は、図1の製袋ユニットにより製造されるチャック付袋体の構成を示す正面図であり、図5は、図4に示すチャック付袋体から切り取られた試験片におけるフィルムとチャックテープとの間のシール強度を測定する動作を示す拡大図である。また、図6は、図4に示すチャック付袋体から切り取られた試験片におけるフィルムとチャックテープとの間のシール強度を測定する動作を示す全体概略図であり、図7は、図6の右側面図である。また、図8は、本実施の形態のシール強度測定方法により測定された結果である、ひずみと引張強度との関係を示すグラフである。
【0019】
まず、本実施の形態によるシール強度測定方法の測定対象となるチャック付袋体の製造方法について図1乃至図3を用いて説明する。
【0020】
図1等に示される製袋ユニット1は、図4に示すようなチャック付袋体Wを製造するためのものである。このチャック付袋体Wは、製袋ユニット1において、二層の帯状フィルムF1、F2と一対のチャックテープ30とからなるフィルム組合せ体から断裁刃で切り取りを順次行うことにより生成される。
【0021】
具体的には、この製袋ユニット1は、帯状フィルムF1、F2をそれぞれ間欠的に搬送するためのフィルム搬送装置10a、10bおよびチャックテープ30を間欠的に搬送するためのフィルム搬送装置10cを備えており、さらに、これらのフィルム搬送装置10a、10b、10cの下流側において二層の帯状フィルムF1、F2とチャックテープ30とからなるフィルム組合せ体を搬送するためのフィルム搬送装置10dを備えている。また、製袋ユニット1は、各帯状フィルムF1、F2に対するチャックテープ30のヒートシールを行うための上下一対のチャックテープシール熱板12と、フィルム組合せ体に対してチャック付袋体Wの上縁部となるべき箇所にヒートシールを行う天井ヒートシール熱板14と、フィルム組合せ体に対してチャック付袋体Wの側縁部となるべき箇所にヒートシールを行う上下一対の側方ヒートシール熱板16と、フィルム組合せ体からチャック付袋体Wを切り離すための上下一対の断裁刃18と、を上流側から順に備えている。
【0022】
以下、このような構成からなる製袋ユニット1の各構成要素の詳細について説明する。なお、この製袋ユニット1において、帯状フィルムF1、F2、チャックテープ30、およびこれらの組合せ体は、図1において左方向(矢印方向)に間欠的に搬送されるようになっている。
【0023】
図1に示すように、各フィルム搬送装置10a、10b、10c、10dはそれぞれ複数のローラから構成されており、これらのローラの間に形成されたニップ部でフィルム等を挟持することにより当該フィルム等を間欠的に搬送するようになっている。ここで、「間欠的に搬送する」とは、一定の移動量だけ連続的に搬送を行ったあと、一定期間だけ搬送を停止させる動作を繰り返し行うことをいう。
【0024】
具体的には、図1に示すように、製袋ユニット1の前半部においてフィルム搬送装置10a、10b、10cは並列に設けられており、フィルム搬送装置10a、10bが帯状フィルムF1、F2をそれぞれ搬送するとともに、フィルム搬送装置10cはチャックテープ30を搬送するようになっている。また、製袋ユニット1の後半部では、フィルム搬送装置10dが二層の帯状フィルムF1、F2とチャックテープ30とからなるフィルム組合せ体を間欠的に搬送するようになっている。ここで、フィルム搬送装置10a、10bに送られる2本の帯状フィルムF1、F2としては、例えば1本の幅広の原反帯状フィルムがその中央でスリットされて2本に分割されたものが用いられる。なお、この幅広の原反帯状フィルムとしては、例えば基材の表面にシーラントが積層されたものが用いられる。また、チャックテープ30は、図3等に示すように、雄型嵌合条33を有する雄型のチャックテープ31と、雌型嵌合条34を有する雌型のチャックテープ32とが重ね合わせられることにより形成されている。
【0025】
チャックテープシール熱板12は、前述のように各帯状フィルムF1、F2に対するチャックテープ30のヒートシールを行うためのものであり、図3に示すように上下一対の熱板部分12a、12bから構成されている。具体的には、各熱板部分12a、12bが二層のフィルムF1、F2と一対のチャックテープ30とからなる組合せ体を挟圧することにより、図3における符号Hで示す箇所において各フィルムF1、F2と各チャックテープ30とのヒートシールを行うようになっている。ここで、熱板部分12a、12bはそれぞれ断面が凹形状(またはゲタ形状)となっており、図3に示すようにこれらの各熱板部分12a、12bは雄型のチャックテープ31の雄型嵌合条33または雌型のチャックテープ32の雌型嵌合条34には当接しないようになっている。このため、図3、図5等に示すように、雄型嵌合条33の近傍において雄型のチャックテープ31とフィルムF1との間に、この雄型嵌合条33と同方向に延びる間隙Pが形成される。同様に、雌型嵌合条34の近傍において雌型のチャックテープ32とフィルムF2との間に、この雌型嵌合条34と同方向に延びる間隙Pが形成される。
【0026】
さらに、図3に示すように、チャックテープシール熱板12の近傍において、一対のチャックテープ30から雄型のチャックテープ31および雌型のチャックテープ32を互いに分離させるための左右一対のセパレータ20が配設されている。この左右一対のセパレータ20は、雄型嵌合条33および雌型嵌合条34を挟むよう配置されており、チャックテープ30の位置決めをも行うようになっている。さらに、各セパレータ20には循環冷却水管22がそれぞれ取り付けられており、この循環冷却水管22によって各セパレータ20が冷却させられることにより雄型のチャックテープ31と雌型のチャックテープ32とが互いにヒートシールされることが防止されるようになっている。
【0027】
天井ヒートシール熱板14は、図1に示すようにチャックテープシール熱板12の下流側においてフィルム組合せ体を挟むよう上下一対配設されている。この天井ヒートシール熱板14は、間欠的に搬送されるフィルム組合せ体におけるチャック付袋体Wが形成されるべき箇所の上縁部(図1参照)においてヒートシールを行うようになっている。
【0028】
側方ヒートシール熱板16は、図1に示すように天井ヒートシール熱板14の下流側においてフィルム組合せ体の進行方向に沿って上下一対のものが2組設置されている。それぞれの側方ヒートシール熱板16は、間欠的に搬送されるフィルム組合せ体が停止したときにこのフィルム組合せ体におけるチャック付袋体Wが形成されるべき箇所の両側縁部においてヒートシールを一度に行うようになっている。
【0029】
断裁刃18は、図1に示すように側方ヒートシール熱板16の下流側においてフィルム組合せ体を挟むよう上下一対配設されている。この断裁刃18は、間欠的に搬送されるフィルム組合せ体からチャック付袋体Wを切り離すよう構成されている。
【0030】
このようにして、図4に示すような、天井シール40および両側方シール42が行われたチャック付袋体Wが得られる。ここで、このチャック付袋体Wの底縁部はヒートシールされていないが、これは後工程において内容物を底縁部から注入し、その後に別のユニットによりチャック付袋体Wの底縁部のヒートシールを別途行うからである。
【0031】
また、製袋ユニット1において袋開封案内線の形成機構(図示せず)により、図4に示すようにチャック付袋体Wにおける天井シール40とチャックテープ30との間に袋開封案内線44が形成されるようになっている。この袋開封案内線44は、チャック付袋体Wの使用者がこのチャック付袋体Wの開封を行う際の手助けとなるものである。
【0032】
次に、このようにして製造されたチャック付袋体Wについて、フィルムF1、F2と、これらのフィルムF1、F2にそれぞれヒートシールされている各チャックテープ31、32との間のシール強度を測定するためのシール強度測定方法について図4乃至図7を用いて説明する。
【0033】
まず、図4に示すように、図示しない試験片の切取装置により、製袋ユニット1で生成されたチャック付袋体Wから、チャックテープ30を含むような試験片Mを切り取る。具体的には、チャック付袋体Wから試験片Mを切り取る際に、チャックテープ30と垂直方向に延びる短冊形状の試験片Mを切り取るようになっている。ここで、この短冊形状の試験片Mの幅a(図4)は例えば約15mmとなっている。
【0034】
そして、この試験片Mについて、図6および図7に示すようなチャックテープ引張試験治具50を用いてシール強度測定方法を行う。
チャックテープ引張試験治具50は、試験片Mにおける間隙Pに挿入するための丸型ピン55と、軸受56を介して丸型ピン55の両端を保持するためのアーム部分57、58と、各アーム部分57、58間の距離を調整するための平行スライド機構52と、平行スライド機構52に取り付けられたテンシロンクランプ部51とを備えている。また、このチャックテープ引張試験治具50は、一対のクランプ装置60、62に両端がクランプされ、この一対のクランプ装置60、62が互いに離間するよう図6の上下方向に引っ張られるようになっている。
以下、チャックテープ引張試験治具50の各構成要素について図5乃至図7を用いて説明する。
【0035】
丸型ピン55は、図5に示すように試験片MにおけるフィルムF1とこのフィルムF1に対応するチャックテープ31との間に形成された間隙Pに挿入されるものである。この丸型ピン55の先端は、間隙Pに対して挿入容易なテーパ形状となっている。
ここで、図5はチャック付袋体Wから切り取られた試験片Mに対して一方のフィルムF1とチャックテープ31との間のシール強度を測定する動作を示す拡大図である。図5において符号Hで示される部分はフィルムF1(またはF2)とチャックテープ31(または32)とがヒートシールにより密着された箇所を示し、符号NHで示される部分はフィルムF1(またはF2)においてチャックテープ31(または32)とヒートシールされていない箇所を示す。
【0036】
また、図5において符号Pで示される部分は、フィルムF1(またはF2)とチャックテープ31(または32)とが部分的にヒートシールされていないことにより両者の間に形成された間隙を示す。ここで、丸型ピン55はこのような間隙Pに挿入されることとなる。なお、図5における矢印Cは、図7および図8に示すクランプ装置60により試験片Mの先端がクランプされた状態を示している。クランプ装置60によりクランプされる試験片Mの先端は、図4におけるチャック付袋体Wの天井シール40近傍部分に該当し、図5の試験片Mの上方側は図4のチャック付袋体Wにおける内容物充填側(図4のチャック付袋体Wの下方側)となる(すなわち、図5における試験片Mは、図4における試験片Mを上下ひっくり返した状態のものである)。
【0037】
さらに、図5において符号L、Rで示される部分は、本実施の形態における剥離試験の対象となるべきヒートシール部分である。すなわち、図5に示す状態において、丸型ピン55をフィルムF1に対して相対的に上方または下方に移動させることにより、符号LまたはRで示される箇所における互いにヒートシールされたフィルムF1とチャックテープ31とを剥離させるような動作が行われる。
【0038】
各アーム部分57、58は、前述のようにそれぞれ軸受56を介して丸型ピン55の両端を把持するようになっている。これらのアーム部分57、58は、丸型ピン55を、当該丸型ピン55の延びる方向に対して垂直方向(すなわち、図6の上下方向)に引っ張るために使用される。これらのアーム部分57、58間の距離は、丸型ピン55の長さに応じて、平行スライド機構52により調整可能となっている。平行スライド機構52によりアーム部分57、58間の距離が調整された後、止めピン53により平行スライド機構52が固定され、このことによりアーム部分57、58間の距離も固定されることとなる。
【0039】
テンシロンクランプ部51は、図6に示すように平行スライド機構52に取り付けられており、両アーム部分57、58を図6の上方に引っ張るために用いられるようになっている。このテンシロンクランプ部51は、後述するクランプ装置62によりクランプされるよう構成されている。
【0040】
一対のクランプ装置60、62は、図6および図7に示すようにチャックテープ引張試験治具50の両端をクランプするよう構成されている。具体的には、クランプ装置60は、図5および図7の矢印Cで示すように、丸型ピン55が間隙Pに挿入された試験片Mの下端をクランプするようになっている。一方、クランプ装置62は、図6および図7に示すように、チャックテープ引張試験治具50のテンシロンクランプ部51をクランプするようになっている。この一対のクランプ装置60、62は図6の上下方向に互いに離間するよう動作を行うようになっており、このことにより試験片MのフィルムF1に対して丸型ピン55が図6の上方向に相対移動を行うようになっている。
【0041】
次に、このような構成からなるチャックテープ引張試験治具50の動作について説明する。
【0042】
まず、チャック付袋体Wから切り取られた試験片Mについて、フィルムF1とチャックテープ31との間(あるいはフィルムF2とチャックテープ32との間)の非熱溶着部NHに形成された間隙Pに丸型ピン55を挿入する。
そして、図6に示すように試験片Mを保持した状態でこの丸型ピン55の両端を各アーム部分57、58により固定する。この際に、各アーム部分57、58間の距離を平行スライド機構52により調整し、止めピン53によりこの距離を固定する。
【0043】
次に、クランプ装置60により試験片Mの下端をクランプさせるとともに、クランプ装置62によりテンシロンクランプ部51をクランプさせる。その後、図6の下方にあるクランプ装置60および上方にあるクランプ装置62を、図6の上下方向に互いに離間するよう動作させることにより、図5において試験片MのフィルムF1に対して丸型ピン55が上方向に相対移動を行う。このことにより、図5の符号Lで示す箇所において互いにヒートシールされたフィルムF1とチャックテープ31とを剥離させるよう、丸型ピン55に対してフィルムF1を相対的に引っ張ることによりこれらのフィルムF1とチャックテープ31との間のシール強度を測定する。
【0044】
ここで、上記方法によりシール強度の測定試験が行われた結果について、図8のグラフに示す。図8のグラフにおいて、横軸はひずみを、縦軸は引張強度を表す。また、このグラフにおいてAで示す箇所はシール強度が極限強さにあるときを、Bで示す箇所はシール部分が伸びながら剥離するときを、Cで示す箇所はヒートシール部が破断するときをそれぞれ示している。
【0045】
そして、試験片Mについて図5の符号Lで示す箇所におけるシール強度の測定が終了したら、次に試験片Mを上下ひっくり返し、クランプ装置60による試験片Mのクランプ箇所を変更する。このようにして、図5の符号Rで示す箇所におけるシール強度の測定を同様に行う。このことにより、試験片Mについて間隙Pの両側(図5における符号L、Rの両方の箇所)におけるシール強度の測定を各々行うことができる。
【0046】
なお、チャック付袋体WにおいてフィルムF1(またはF2)とチャックテープ31(または32)とが過剰にヒートシールされている場合は、上述のように丸型ピン55に対してフィルムF1を相対的に引っ張ると、チャックテープ31自体が破断してしまう場合がある。ここで、過剰なヒートシールはフィルムF1(またはF2)とチャックテープ31(または32)との間でデラミ(フィルムF1のシーラントではなく基材が直接的にチャックテープ31と接合してしまい、シール強度を正確に測定することができなくなるような現象)を発生させてしまうおそれがある。この場合、チャック付袋体Wに収容される内容物が漏れてしまう可能性があるため、チャックテープ31自体が破断してしまった場合には、フィルムF1(またはF2)とチャックテープ31(または32)との間におけるヒートシール条件を変更する必要がある。
【0047】
以上のように本実施の形態のチャック付袋体Wのシール強度測定方法によれば、チャック付袋体Wから、一対のチャックテープ30を含むような試験片Mを切り取り、この試験片Mにおいて、フィルムF1(またはF2)とこのフィルムF1に対応するチャックテープ31(または32)との間に形成された間隙Pに丸棒ピン(棒状部材)55を挿入し、互いにヒートシールされたフィルムF1とチャックテープ31とを剥離させるようこの挿入された丸型ピン55に対してフィルムF1を相対的に引っ張ることによりこれらのフィルムF1とチャックテープ31との間のシール強度を測定するようになっている。このため、チャック付袋体Wから切り取られる試験片Mの幅が小さい場合であっても、チャック付袋体WにおけるフィルムF1(またはF2)とチャックテープ31(または32)との間のシール強度を単純な方法で確実に測定することができ、しかも丸型ピン55に対するフィルムF1の相対的な引張強度を用いることによりこのシール強度を数値として得ることができるので、当該シール強度を定量的に測定することができる。このことにより、チャック付袋体Wにおけるシール強度を精度良く測定することができ、チャック付袋体Wの品質保証を十分に行うことができる。
【0048】
また、チャック付袋体Wを準備する工程において、各チャックテープ31、32の雄型嵌合条33または雌型嵌合条34には当接しないようなそれぞれ断面が凹型の一対のチャックテープシール熱板12の熱板部分12a、12bが、二層のフィルムF1、F2と一対のチャックテープ31、32とからなる組合せ体を挟圧することにより、各フィルムF1、F2と各チャックテープ31、32とのヒートシールを行うようになっている。このことにより、雄型嵌合条33近傍において雄型のチャックテープ31とフィルムF1との間に確実に間隙Pを形成することができるとともに、雌型嵌合条34近傍において雌型のチャックテープ32とフィルムF2との間に確実に間隙Pを形成することができ、シール強度の測定工程において丸型ピン55の挿入を確実に行うことができるようになる。
【0049】
また、チャック付袋体Wから試験片Mを切り取る際に、チャックテープ30に対して垂直方向に延びる短冊形状の試験片Mを切り取るようになっている。このことにより、丸型ピン55に対して試験片MのフィルムF1(またはF2)を引っ張る動作を容易に行うことができるようになる。
【0050】
また、挿入された丸型ピン55に対してフィルムF1(またはF2)を相対的に引っ張る際に、このフィルムF1と平行かつチャックテープ31(または32)の雄型嵌合条33(または雌型嵌合条34)の延びる方向に対して垂直な方向に相対的な引っ張り動作を行うようになっている。これは、丸型ピン55に対してフィルムF1を相対的に引っ張る際に、この丸型ピン55から遠ざかるようフィルムF1を引っ張った場合には、すなわち水平引張方式を用いた場合には、チャックテープ31とフィルムF1とが互いに剥離する前にチャックテープ31自体が破断してしまい、シール強度を確実に測定することができないからである。
【0051】
また、挿入された丸型ピン55に対してフィルムF1(またはF2)を相対的に引っ張る際に、一の方向およびこの一の方向と反対方向である逆の方向の両方の方向に相対的な引っ張り動作を行うようになっている。このことにより、試験片Mについて間隙Pの両側(図5の符号L、Rの両方の箇所)におけるシール強度の測定を各々行うことができる。
【0052】
なお、本実施の形態によるチャック付袋体Wのシール強度測定方法は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0053】
例えば、チャックテープ引張試験治具50として、アーム部分57、58および平行スライド機構52からなるU字状格子構造のものを用いているが、強度が大きなトラス格子構造のものを用いてもよい。
【0054】
また、上述のチャック付袋体Wのシール強度測定方法を用いて、雄雌チャックテープ31、32単位でのヒートシールカーブ(横軸をヒートシール温度として縦軸をシール強度とするようなグラフ)を作成してもよい。
【0055】
また、フィルムF1、F2の基材として、PET、OPP、ONY等により多層化されたものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一の実施の形態で使用される製袋ユニットの構成の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示す製袋ユニットの一部の拡大上面図である。
【図3】図2の製袋ユニットのA−A矢視断面図である。
【図4】図1の製袋ユニットにより製造されるチャック付袋体の構成を示す正面図である。
【図5】図4に示すチャック付袋体から切り取られた試験片におけるフィルムとチャックテープとの間のシール強度を測定する動作を示す拡大図である。
【図6】図4に示すチャック付袋体から切り取られた試験片におけるフィルムとチャックテープとの間のシール強度を測定する動作を示す全体概略図である。
【図7】図6の右側面図である。
【図8】本実施の形態のシール強度測定方法により測定された結果である、ひずみと引張強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1 製袋ユニット
10a、10b、10c、10d フィルム搬送装置
12 チャックテープシール熱板
12a、12b 熱板部分
14 天井ヒートシール熱板
16 側方ヒートシール熱板
18 断裁刃
20 セパレータ
22 循環冷却水管
30 チャックテープ
31 雄型のチャックテープ
32 雌型のチャックテープ
33 雄型嵌合条
34 雌型嵌合条
40 天井シール
42 側方シール
44 袋開封案内線
50 チャックテープ引張試験治具
51 テンシロンクランプ部
52 平行スライド機構
53 止めピン
55 丸型ピン
56 軸受
57、58 アーム部分
60、62 クランプ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二層のフィルムと、これらのフィルムの間に設けられ当該各フィルムにそれぞれヒートシールされた雄型および雌型からなる一対のチャックテープとを有するチャック付袋体について、当該チャック付袋体におけるフィルムと、このフィルムにヒートシールされているチャックテープとの間のシール強度を測定するためのシール強度測定方法であって、
一対のチャックテープについて雄型のチャックテープは雄型嵌合条を有するとともに雌型のチャックテープは雌型嵌合条を有し、雄型のチャックテープは雄型嵌合条近傍においてこの雄型嵌合条と同方向に延びる間隙を有するよう一のフィルムにヒートシールされるとともに雌型のチャックテープは雌型嵌合条近傍においてこの雌型嵌合条と同方向に延びる間隙を有するよう他のフィルムにヒートシールされるようなチャック付袋体を準備する工程と、
前記チャック付袋体から、一対のチャックテープを含むような試験片を切り取る工程と、
前記切り取り工程により切り取られた試験片において、フィルムとこのフィルムに対応するチャックテープとの間に形成された間隙に棒状部材を挿入し、互いにヒートシールされた前記フィルムとチャックテープとを剥離させるようこの挿入された棒状部材に対して前記フィルムを相対的に引っ張ることによりこれらのフィルムとチャックテープとの間のシール強度を測定する工程と、
を備えたことを特徴とするチャック付袋体のシール強度測定方法。
【請求項2】
チャック付袋体を準備する工程において、前記各チャックテープの雄型嵌合条または雌型嵌合条には当接しないようなそれぞれ断面が凹形の一対のヒートシール熱板が、二層のフィルムと一対のチャックテープとからなる組合せ体を挟圧することにより、各フィルムと各チャックテープとのヒートシールを行うことを特徴とする請求項1記載のチャック付袋体のシール強度測定方法。
【請求項3】
前記チャック付袋体から試験片を切り取る際に、前記チャックテープに対して垂直方向に延びる短冊形状の試験片を切り取ることを特徴とする請求項1または2記載のチャック付袋体のシール強度測定方法。
【請求項4】
挿入された棒状部材に対して前記フィルムを相対的に引っ張る際に、このフィルムと平行かつ前記チャックテープの雄型嵌合条または雌型嵌合条の延びる方向に対して垂直な方向に相対的な引っ張り動作を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のチャック付袋体のシール強度測定方法。
【請求項5】
挿入された棒状部材に対して前記フィルムを相対的に引っ張る際に、一の方向およびこの一の方向と反対方向である他の方向の両方の方向に相対的な引っ張り動作を行うことを特徴とする請求項4記載のチャック付袋体のシール強度測定方法。
【請求項6】
前記棒状部材は丸型ピンであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のチャック付袋体のシール強度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−26002(P2008−26002A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195275(P2006−195275)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】