説明

チャネル又はその構成部分への光の供給

【課題】検体を含む物体を効率的、実効的に照明可能にする。
【解決手段】チャネル内流体がより高屈折率の物質により囲まれて界面を形成するよう構造物内にチャネルを形成する。更に、光透過性の仕切部材184を配置してチャネル内を第1領域180と第2領域182とに区画する。プレート94に入射された光190は、チャネル長手方向に対し角度βだけ傾斜した光192となって第2領域182に入り、仕切部材184を通り抜けた後、チャネル長手方向に対し角度β’だけ傾斜した光194となって第1領域180内を伝搬する。伝搬する光のうちの有意な部分、少なくとも断面内強度比で約10%超の部分が流体内に閉じこめられるため、実効的且つ効率的に流体内の物体を照明できる。光194に反応してチャネル内物体から放出される光子を、チャネル沿いの集積回路上にあるフォトセンサアレイの構成セル群にて検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネル又はその構成部分に光を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、高屈折率物質による高反射率面で囲まれた低屈折率媒体内、例えばファブリペロー共振子の表面にある高反射率面等に囲まれた水溶液内に、光を閉じこめる技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6580507号明細書
【非特許文献1】Nicholas J. Goddard, Kirat Singh, Fatah Bounaira, Richard J. Holmes, Sara J. Baldock, Lynsay W. Pickering, Peter R. Fielden and Richard D. Snook, "Anti-Resonant Reflecting Optical Waveguides (ARROWs) as Optimal Optical Detectors for MicroTAS Applications", [Online] Internet URL: http://www.dias.umist.ac.uk/NJG/Abstracts/MicroTAS/MicroTas2.htm
【非特許文献2】S. Devasenathipathy and J. G. Santiago, "Electrokinetic Flow Diagnostics", in K. S. Breuer, Ed. 'Micro and Nano-Scale Diagnostic Techniques', Springer-Verlag, New York, 2003, pp. 113-154
【非特許文献3】M. Koch, A. G. R. Evans and A. Brunnschweiler, "Design and Fabrication of a Micromachined Coulter Counter", J. Micromech. Microeng., Vol. 9, 1999, pp. 159-161
【非特許文献4】K. Singh and N.J. Goddard, "Leaky ARROW Waveguides for Optical Chemical and Biosensors", Abstract Submitted to Biosensors 1998, [Online] Internet URL: http://www.dias.umist.ac.uk/NJG/Abstracts/Biosensors/ARROW-Biosensors.htm
【非特許文献5】V. Sivaprakasam, A. Houston, C. Scotto and J. Eversole, "Multiple UV Wavelength Excitation and Fluorescence of Bioaerosols", Optics Express, Vol. 12, No.9 (2004), pp. 4457-4466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存技術例えば上述の従来技術を利用し光を伝搬させる際、検体を含む物体をどのようにすれば効率的且つ実効的に照明できるかが、大きな問題となることがある。例えば、大きな面積を対象に励起光を照射する場合である。即ち、互いの位置が大きく離れている多数の物体を同時に照明し、伝搬してくる照明光に応じそれらの物体から放出される光子を検知しなければならない状況にて、際立った問題となる。
【0005】
こうした問題は、例えば光を用いて検体を調べるバイオセンサにて発生する。そうしたセンサによって検体を調べる際にはその光と検体とを相互作用させる必要があるが、通常、そうした相互作用は非常に弱いものである。そのため相互作用を強化することが求められており、その手段としては、検体を含有する流体その他の物質それ自体を光伝搬媒体として光導波路を構成する、という手法が期待されている。しかしながら、実際には、当該流体はその周囲にある物質より低屈折率であり、従ってその流体内に光を閉じこめられないのが普通である。そのため、従来は、光導波路を用いるとしても、その光導波路の周縁に沿った方向からエバネッセント波により弱い相互作用を標的分子との間に引き起こす、という使用形態に留まっていた。
【0006】
従って、チャネル又はその構成部分に光を供給する技術を改良し、上掲の問題群を解決することが、求められているといえよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに、本発明の一実施形態に係るチャネル外放出光子検知方法は、(1)チャネル内部の流体がそれより概ね高屈折率になるであろう物質と所与の長手方向沿い区間を通じ何れの断面でも接触するよう、且つ当該区間内の何れの断面でも当該物質によって当該流体が概ね囲まれることとなるよう、構造物内に流路として形成されているチャネルを、その対象として実行され、(2)上記区間のうち少なくとも一部にて、伝搬する光のうち断面内強度比で約10%超(例えば約90%)の部分が流体内を伝搬することとなるよう、当該区間内で主として当該流体によりチャネル長手方向沿いに、光を伝搬させるステップと、(3)伝搬する光に反応してチャネルから放出される光子を、チャネル沿いに配置され且つ集積回路上に設けられたフォトセンサアレイを構成するセル群を検知手段として用いて、検知するステップと、を有する。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る装置は、(1)流路付構造物と、(2)その内部の流体がそれより概ね高屈折率になるであろう物質と所与の長手方向沿い区間を通じ何れの断面でも接触するよう、且つ当該区間内の何れの断面でも当該物質によって当該流体が概ね囲まれることとなるようその流体を収容すべく、流路付構造物内に形成されたチャネルと、(3)上記区間のうち少なくとも一部にて、伝搬光のうち断面内強度比で約10%超の部分が流体内を伝搬することとなるよう、チャネルに対し光を供給しチャネル内を長手方向に沿って伝搬させる照明部材と、(4)伝搬する光に反応してチャネルから放出される光子を検知できるよう、チャネル沿いに配置されセル群から構成されたフォトセンサアレイを有する集積回路と、を備える。
【0009】
そして、本発明の他の実施形態に係る装置は、(1)流路付構造物と、(2)流路付構造物内に所定方向に沿って長く形成されたチャネルと、(3)流路付構造物内に形成されチャネルを第1領域と第2領域とに区画する光透過性の仕切部材と、(4)流路付構造物に形成され第1領域への流体の入口及び第1領域からの流体の出口となる少なくとも2個のポートと、を備え、(5)更に、チャネル長手方向に対し傾斜している第1の方向から第2領域内に光を入射することができ、その後仕切部材を通り抜けた光がチャネル長手方向に対し傾斜している第2の方向(例えば約2°未満の方向)から第1領域内に入射されるよう、仕切部材が配置された装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に、支持基体たる流路付構造物12上に形成されたアナライザ10について、その構成要素のうち幾つかを模式的に示す。図示の如く、この流路付構造物12には蛇のように曲がりくねったチャネル14が形成されている。また、このチャネル14は、その内部に物体16を通すことができるよう、形成されている。物体16は、例えば、解析対象となる検体を含有する小体積流体乃至液滴であり、適当な物質例えば流体によって、このチャネル14内を運ばれていく。
【0011】
以下説明する構成にて検査しうる物体16には、例えば、液滴、流体の微小体積部分、単独の分子、凝集した分子、分子クラスタ、細胞、ウイルス、バクテリア、タンパク質、DNA(デオキシリボ核酸)、マイクロパーティクル、ナノパーティクル、エマルジョン等と称されるものが含まれる。液滴や流体微小体積部分の中には、例えば原子や分子等のように、自発的に又は励起輻射(以下励起光とも称する)に応じ発光する粒子や、入射光を吸収する粒子や、入射光を散乱させる粒子等が含まれる。それらのうち励起光に応じ蛍光を発する粒子のことをその液滴等の蛍光成分と呼び、特定光子エネルギ(光子が有するエネルギ即ち波長又は周波数のこと)の入射光を吸収するためその光子エネルギでは反射や散乱が生じない粒子のことをその液滴等の吸収成分と呼び、特定光子エネルギの入射光を散乱させる粒子のことをその液滴等の散乱成分と呼ぶ。即ち、液滴内の検体即ち調査対象化学種は、蛍光成分、吸収成分、散乱成分等として振る舞う。
【0012】
物体16は、図中矢印線20で示されるように、主流体により搬送されてチャネル14内に入っていく。その送給元は例えば補給用リザーバ及び標本ウェルであり、主流体内への入り方は等速送出用電極22によって制御される。ここでは等速送出(metering)の方法として電極22による電気的等速送出を使用しているが、圧力による等速送出も採用可能である。更に、チャネル14内に液滴その他の小物体を供給するのに使用できる手法は他にもある。
【0013】
アナライザ10に設けるチャネルの本数は適宜定めることができる。その場合、各チャネルの構成は図1中のチャネル14と同様の構成でよい。各チャネルに対する検体標本の供給元例えば標本ウェル、リザーバ、コンテナ等は、チャネル毎に設けてもよいし複数個のチャネルで共用してもよい。更に、各チャネルに設ける部材の個数及び種類は、そのチャネルを用いどのような種類の解析を実施したいかに応じて設定するとよく、従ってそれらはチャネル毎に異なる個数又は種類となりうる。また、1個の広いチャネルを区画して複数本のチャネルを形成すること、例えば互いに平行な数本のチャネルを形成することも可能である。
【0014】
物体16を搬送するための流体は、矢印線24で示すように別の入口からチャネル14内に入れることもできる。矢印線20又は24に沿ってチャネル14内に入った流体が辿る経路は、様々な装置により制御される。例えば、この図のチャネル14に設けられている分岐ジャンクションのうち2個は、それぞれ別のアウトレットにつながっており且つ弁を有している。図中の弁30及び32がそれである。チャネル14内の流体は、矢印線26で示すように弁30に対するトグル制御によって一方のアウトレットから排出させることができ、また、矢印線28で示すように弁32に対するトグル制御によって他方のアウトレットからも排出させることができる。即ち、物体16が到来したとき弁30又は32を開かせることによって、物体16及びそれを搬送する流体を、その弁に対応するアウトレットから排出させることができる。これは物体16を対象とするゲーティングの一形態であり、他の形態によるゲーティングも実施可能である。帯電している粒子であればクーロン力によって偏向させることができるし、分極可能な粒子であれば誘電泳動力によって偏向させることができる。そして、流体は、矢印線34で示すように、最後段に設けられたアウトレットを介しチャネル14から排出させることができる。
【0015】
流体の流れを維持するには、チャネル14の長手方向に沿って、流体の流れを推進する部材を設ければよい。この推進部材は従来からある種類のものでよく、図示の例では電気浸透ポンプ40が用いられている。推進部材には、流体の流れを維持する機能だけでなく、圧送法によりシステムを洗浄する機能や同じく圧送法により流体を初期充填する機能を担わせることができる。電気浸透ポンプ40を含め、流路付構造物12に設けられた各種部材は、相応の回路を設けることによって、相互に同期をとりつつ動作させることができる。
【0016】
チャネル14は、180度に曲がった屈曲部により複数個の直線部間をつないだ構成を有している。チャネル14沿いには、それぞれ対応する直線部内を移動していく物体16についての情報を取得するため、複数個の検知部材が次から次へと配されている。そのうちコールタカウンタ(Coulter counter)50は電気式粒子サイズ検知器であり、ミー散乱センサ(Mie scatter sensor)52は光学式検知器である。ミー散乱センサ52は、側方からチャネル14に入射しチャネル14内の物体16例えば粒子により散乱された光を検知する。
【0017】
チャネル14沿いには、上述の一群の検知部材として、更に、可視光や赤外光に反応する光吸収検知部材54、第1の蛍光検知部材56、第2の蛍光検知部材58、並びにラマン散乱検知部材60が配されている。更に、特性的に所定条件を満たす検体がチャネル14沿いのある位置を通過したとき、そのこと又はその時刻を示す起動信号を出力する光学式又は電気式の起動部品を、検知部材の一種として設けてもよい。こうした起動部品は既存の技術で実現できる。更に、生体粒子サイズ検知用差動抵抗に代え、電子病理学向けEIS(electrical impedance spectroscopy)用検知部材を、設けることもできる。
【0018】
図1に示す一群の検知部材によれば、移動する粒子その他の物体16についてのスペクトラム情報を取得することができる。取得したスペクトラム情報を用いれば、直交性のあるかたちで物体16の特徴を調べることができ、また物体16の識別を信頼性よく行うことができる。直交性のあるかたちで、とは、例えば相異なる光子エネルギレンジでの光子検知により得られた複数種類の情報や、相異なる強度レンジでの光子検知により得られた複数種類の情報のように、その間に直交性が成り立つ複数種類の情報を利用して、という意味である。素材選択が適切であれば、深紫外域から遠赤外域更にはTHz帯の周波数に至る光子エネルギレンジにてくまなく、スペクトラム情報を取得可能である。
【0019】
また、アナライザ10は、多信号解析を実行可能な構成、従って生体物質(bioagent)を試薬なしで識別可能な構成とすることができる。
【0020】
検知部材54、56、58及び60はそれぞれIC64、66、68又は70を有しており、それらIC64、66、68及び70はそれぞれフォトセンサアレイを内蔵しており、各フォトセンサアレイは一群のセルから構成されており、各セル群はある光子エネルギレンジ内の光子を検知するよう構成されている。言い換えれば、検知部材54、56、58及び60は内蔵するセル群により実現されている。更に、IC64、66、68及び70にて光子を検知可能な光子エネルギレンジを互いに同一にしてもよいし違えてもよい。例えば、IC66を構成するセル群は上述の如く可視域から紫外域に至る光子エネルギレンジにて光子を検知し、IC68を構成するセル群は同じ可視域から紫外域に至る光子エネルギレンジではあるがIC66を構成するセル群のそれとは異なる光子エネルギレンジにて光子を検知し、IC70を構成するセル群は赤外域に属する光子エネルギレンジにて光子を検知する、といった具合に構成することができる。また、検知可能な光子エネルギレンジが同一の複数のICでも、互いに異なる検知結果が得られるようも構成することができる。例えば、IC66及び68に係る光子エネルギレンジが互いに同一であるとする。そうした場合でも、それらIC66及び68に対応する励起光源同士を、互いに別々の波長で発光するように構成しておけば、互いに異なる結果が得られる。即ち、そうした構成では、一方の波長の励起光を受けて物体16が発する蛍光が例えばIC66で検知され、他方の波長の励起光を受けて物体16が発する蛍光が例えばIC68で検知されることとなるので、蛍光検知結果が両IC間で異なる結果となりうる。なお、励起光源は、LED(発光ダイオード)、レーザ等によって実現することができる。また、検知部材54、56、58及び60を構成するセル群の光子検知可能波長域即ち光子エネルギレンジは、この例では複数個のサブレンジに分割されており、各サブレンジに属する光子をセルの小群(組)のうち対応するものが検知する構成を採っている。各小群に係るサブレンジを他の小群のそれと同じにしてもかまわないが、同一フォトセンサアレイ内小群のうち少なくとも2個は、互いに異なるサブレンジにて光子を検知するよう構成しておく。
【0021】
更に、検知部材56、58及び60には励起手段乃至照明手段を併設することができる。励起や照明の手法は、物体16から光を放射させることが可能な手法である限り、どのような手法でもよい。励起手段とは電磁波輻射又は試薬のことをいい、照明手段とは物体に光を供給してその物体から光子を放出させ又はその物体により光子を散乱させる手段のことをいう。照明手段は単独の光源から構成してもよいし複数個の光源を組み合わせて構成してもよい。
【0022】
また、単独の粒子又は低濃度の生物学的若しくは化学的物質の特性を調べることができるようアナライザ10を構成する場合には、とりわけ、光標的間相互作用の強化(enhanced light-target interaction)が重要となる。本実施形態では、光標的間相互作用強化のために反共振光導波構造(anti-resonant waveguide;文脈に応じ反共振光導波路とも記す)を採用している。一般に、反共振光導波路は、コア部をそれより高屈折率のクラッディング部で囲んだ構造を有する。本実施形態におけるチャネル14は、その内部にあり検体を含有する流体をコア部として形成された反共振光導波構造を採っている。従って、チャネル14内流体により光を導波し、チャネル14の長手方向に沿って、またかなり長い距離に亘り、フォトニック相互作用を発生させることができる。これによって、光標的間相互作用が強化される。また、この反共振光導波構造における光標的間相互作用強化を妨げないようにするため、ここでは更に、IC66、68及び70を複数個のスペーサ72によって支持する構造を採用している。このようにすれば、IC66、68及び70とチャネル14の対応部分との間に適正な幅の間隙が形成されるため、IC66、68及び70が反共振光導波構造と機械的に抵触、競合することを、防ぐことができる。
【0023】
光学的バイオセンサにおいては、光と検体例えば標的分子の間の相互作用が非常に弱いのが一般的である。反共振光導波構造は、その長手方向に沿って光が伝搬し、従って長い距離に亘り相互作用が生じる構造であるため、光と検体との間の相互作用が格段に強くなる。また、こうした構造は、伝搬する光の波長の違いや当該構造を形成する膜の厚みの影響を受けにくいため多信号解析と非常に相性がよく、エバネッセント波を利用して励起を行う従来の光導波路利用センサ(そのためチャネルを非常に細くせざるを得なかったセンサ)と対照的なことに、チャネル断面寸法をかなり例えば数mm程にも拡げることができる。こうした反共振光導波構造は、例えば、ガラス毛細管内にエアロゾルを入れた構造や、或いはガラススライド間に液体膜を挟んだ構造によって、好適に実現できる。励起は相応の電磁波を照射することによって行うことができる。
【0024】
光標的間相互作用強化用光導波構造例えば反共振光導波構造を採用する場合、背景励起光抑圧機構の付加が必要になるかもしれない。背景励起光抑圧機構としては、例えば波長炉波特性を有する部材を、チャネル14を形成する壁の一部又はフォトセンサアレイの頂部被覆の一部として設ければよい。
【0025】
図2に、図1中の線2−2に沿ったアナライザ10の断面を模式的に示す。図示したのは第2の蛍光検知部材58を含む部分の断面であるが、第1の蛍光検知部材56も本質的にこれと同様の断面を呈する。また、ラマン散乱検知部材60の断面にも、これに類似する部分がある。
【0026】
矢印線82で示す如くチャネル14の構成部分80内を下流へと移動中の物体16は、例えばレーザ光源やLED光源として構成された光源84等の励起部材から、励起光を受光する。チャネル14内にカップリングしチャネル14内に反共振光導波を引き起こすことが可能な光子エネルギレンジは限られておらず、従って励起光としては様々な光子エネルギを有する輻射を使用できる。チャネル構成部分80は、光源84から発せられた光を受け反共振光導波路等として機能し、その内部で発生する光標的間相互作用を強化する。なお、蛍光性の分子を連続的に励起できる手法としては、こうした手法の他に、レーザビーム走査によって移動分子を追尾する、LEDリニアアレイを用い経路沿いで粒子を励起状態に保つ、粒子経路沿いに平行ビームを配する(導波は行わない)、ファブリペロー型又はこれに類似するタイプの(空胴)共振子を設けその共振子を通して粒子含有媒体に数回に亘り光を供給する、等の手法がある。
【0027】
反共振光導波モードを使用して輻射を検知する部材と、流路付構造物との組合せは、幾つかの点で特に有利である。それは、流体チャネルそれ自体を反共振光導波路として使用でき、しかもその流体チャネル(反共振光導波路)が様々な形態、構成を採りうるからである。採りうる形態、構成としては、毛細管内にエアロゾルを入れそのエアロゾルにより検体を搬送する、チャネル内又はガラススライド間に液体膜を形成しその液体膜内で検体を搬送する、といった形態がある。
【0028】
光源84からの光が到達すると、物体16に内包されている検体が蛍光、即ち光子エネルギスペクトラムに特徴のある光を放射する。放射された光の一部は光束86となり検知器アセンブリ87に向かう。検知器アセンブリ87は少なくともIC68を有しており、そのIC68上にはフォトセンサアレイがあるので、光束86内の光子はそのフォトセンサアレイを構成するセル群によって検知されることとなる。なお、検知器アセンブリ87は、IC68上のフォトセンサアレイがチャネル構成部分80内における物体16の移動経路近くに位置するよう且つ当該移動経路に対して平行になるよう、ひいては集光効率が高まるよう、配置しておく。
【0029】
図中の検知器アセンブリ87は、反共振光導波を邪魔しないよう複数個のスペーサ72によって支持されている。即ち、複数個のスペーサ72はチャネル構成部分80内に入り込まないように配置されており、それによって検知器アセンブリ87の下方には空隙88が生じているので、チャネル構成部分80内での反共振光導波は阻害されない。なお、ここでは空隙88を形成しているがこれは反共振光導波が阻害されることを防ぐ方法の一例に過ぎず、例えば真空層、気体層、液体層、液体膜等、低屈折率の構造を設けることも導波阻害防止に有益である。低屈折率の素材を使用する場合、形成乃至使用すべき間隙、層又は膜の幅若しくは厚みは数μm程度、例えば10μmという狭さ乃至薄さになる。
【0030】
また、物体16はチャネル構成部分80内通過中は途切れなしに励起光を受光するので、物体16内の検体からの蛍光もフォトセンサアレイの長手方向に沿って途切れなく発生し続ける。従って、物体16がチャネル構成部分80内を移動する期間を途切れなく利用して、スペクトラム情報を収集することができる。
【0031】
図2に示した構造は、更に、ラマン散乱検知部材60をかたちづくる構造としても用いることができる。ラマン散乱検知部材60をそのようにして形成した場合、出力信号は、完全なラマンスペクトラムではなく、それぞれ、ラマンスペクトラム間にある狭い間隙の幅なり、指定された複数本のラマンライン間の強度比なりを表す信号になる。
【0032】
図2に示した形態でラマン散乱検知部材60を実現するには、光源84及びIC70を所定の仕様に適合させることが必要となろう。加えて、光サンプリングを効率的且つ確実に行えるようにするため、IC70を構成するフォトセンサアレイとチャネル14との間に、相応の光学部品を配置することが必要となろう。
【0033】
図2からは、更に流路付構造物12の構成も看取できる。即ち、図中の構成では、光透過性のガラス又はシリコン基板である支持層90の上に、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane;PDMS)によりマイクロモールド層92が形成されており、更にこのマイクロモールド層92内にチャネル14が形成されている。図中の各層例えばマイクロモールド層92をパターニングする際には、検体と検体の間の干渉ができるだけ少なくなるよう、チャネル14のうちの光標的間相互作用発生部分の長さを設定しておくとよい。
【0034】
PDMSからなるパターン化マイクロモールド層92を形成するには、例えば、ガラス等からなる支持層90の上にSU−8ポリマからなるテンプレートを形成し、その上にPDMSを堆積、成長させた上で、テンプレートを除去すればよい。そうすれば、テンプレートがなかった場所にパターン状の構造物が形成される。マイクロモールド層92の上を覆っている光透過構造物はガラス等により形成された光透過性プレート層94である。
【0035】
こうした方法に代え、ガラスをエッチングしチャネルを形成する、という手法も使用できる。また、SU−8等のポリマ素材の層をマイクロファブリケーション法によりパターニングしてチャネルを形成すれば、アスペクト比の高いチャネル壁を形成できる。また、チャネル14内で検体を搬送する媒体に応じ、チャネル14にまつわる各種パラメタを設定すれば、更に好適な結果が得られる。
【0036】
例えば、チャネル14にまつわるパラメタのうち、チャネル壁の接着性(adhesiveness)即ち生体粒子、バクテリア、タンパク質等の吸引されやすさを左右するパラメタをうまく設定することが、特に効果的である。
【0037】
チャネル壁面等の接着性による標本損失を減らす方法は幾つかある。具体的には、チャネル壁面等に抗接着性被覆を被着形成しておくことで、その壁面への生体粒子等の検体の付着を防止できる。特に、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)の浸漬被膜を形成しておけば、大抵の生物系素材はその被着を好適に防止することができ、それでいて水溶液に作用する毛細管力も確保することができる。この他の使用可能な被覆としては、例えばパリレンC(parylene C;商標)や、気相成長テトラグリム(tetraglyme;tetraethylene glycol dimethyl ether;pentaoxa pentadodecan)による被覆がある。どういった被覆を設けるかは、例えば標本の特性、素材界面の化学的性質、動作の条件・形態・機序等に応じて決めればよい。また、前述の反共振導波という手法はその内径が最大約1.0mmのチャネルに対して適用され、また恐らくはそれ以上の内径のチャネルに対しても適用可能な手法である。このように太いチャネルに適用される手法であるので、目詰まりのような大きな問題が壁面接着によって生じる恐れは少ないが、それでもなお接着防止措置は有益である。即ち、接着防止措置を施すことで、チャネル内壁への素材や物体の接着を防止でき、従って接着した素材や物体から光が放射され背景スプリアス光になってしまうことを防ぐことができる。
【0038】
更に、図2中、支持層90の表面のうちPDMSによるマイクロモールド層92と逆側の面上には、その一部表面が励起光結合部98として機能するよう光学部品96が設けられている。光源84から発せられた光は、この面98を通ることで、チャネル14の構成部分80内にある反共振光導波路にカップリング(結合)される。面98は良好な結合が実現されるように形成されている。また、適当な素材と適当なプロセスを用いさえすれば、支持層90及び光学部品96を同一の素材による単一の層として形成することもできる。
【0039】
図3に、検知器アセンブリ87の一例構成を模式的に示す。この図の検知器アセンブリ87内のIC68はフォトセンサアレイ100を有しており、更に当該IC68に取り付けられた複数個のスペーサ72を有している。フォトセンサアレイ100は二次元アレイであり、少なくとも2個の行に亘り配列されたセル群を有している。そして、各セルにはフォトセンサが内蔵されている。
【0040】
フォトセンサアレイ100は、各部分例えば各行内に位置するセルが他の部分例えば他の行内に位置するセルとは異なる光子エネルギレンジにて光子を検知するように、また同一部分例えば同一行内に位置するセルが互いに異なるサブレンジにて光子を検知するように、例えば部位毎に異なる被覆によって覆われる等、部位毎に異なる構造とされている。そのため、1個のICから得られる情報だけで、広範な光子エネルギレンジに亘り仔細に入射光子を解析することができる。加えて、基準セル群を設ければ、空間分解能の高いリアルタイムな基準信号を得て、信号処理や解析に利用することができる。
【0041】
即ち、行102に属する各セルは基準セルであり、波長λallによって代表されるある好適な光子エネルギレンジ全体に亘り光子の検知を行いその結果を信号として出力する。この信号は、行104に属する近傍のセル用の基準信号として使用できる。なお、セルの構成次第で出力信号の強度が異なるので、行102に属するセルから得られる信号の強度と、行104に属するセルのうちこれと対をなすセルから得られる信号の強度は、一般に異なるものになる。望みであれば、行102内のセルと行104内のセルの構成をそれ相応に異なる構成とすることによって、両信号強度を同じオーダにすることができる。
【0042】
他方、行104内にある各セルはサブレンジセルであり、所定光子エネルギレンジを構成するサブレンジのうち、何れかのサブレンジにて光子を検知する。図示の例では、当該所定光子エネルギレンジの最短波長はλmin、最長波長はλmaxであり、これらの波長により光子エネルギレンジの広がりが定まっている。図中、セル106を例として示されているように、各セルはその光子エネルギレンジのサブレンジ例えば波長λpを中心とするサブレンジにて光子を検知する。IC68は、更に、これらのセルをアレイ化するためのアレイ回路や、フォトセンサアレイ100からの検知結果情報の読出に関連する各種機能を実行する周辺回路110を、内蔵している。
【0043】
こうした検知器アセンブリ87を用いチャネル14からの光子を検知する構成においては、チャネル又はその構成部分内における長手方向沿い光伝搬、即ち縦方向光伝搬が高水準で行われることが肝要である。縦方向光伝搬についての評価指標は種々あるが、そのなかでも有用なものとしては、例えば任意のチャネル断面における流体内光強度比がある。流体内光強度比とは、チャネル又はその構成部分内を長手方向に伝搬していく光の総光強度に対するその光の部分光強度の比のことである。総光強度とは、チャネル外物質内を伝搬する光を含め、チャネルの長手方向に沿い伝搬していく光全てを対象として、光の強度を任意のチャネル断面全体に亘り積分したものである。また、部分光強度とは、チャネルの長手方向に沿い伝搬していく光のうち、チャネル内を伝搬する光だけ、即ち流体内を伝搬する光だけについて、その強度をチャネル断面内で積分したものである。流体内光強度比はパーセント単位で表すことができる数値であり、総光強度に対する部分光強度の比がNである場合、それを以て、その流体内で光強度比Nが発生している、と称する。
【0044】
図4に、チャネル14の断面、特に図2に示した断面に対して直交する断面を示す。この図においても、検知器アセンブリ87はスペーサ72によって形成される空隙88により光透過性プレート層94から分離、隔離されている。
【0045】
図示の如く、チャネル14の上下界面は層90及び94により、左右界面は層92(図2参照)内に形成された壁122により、それぞれ形成されている。また、図中のWはチャネル14のx方向寸法即ち幅であり、Hはチャネル14のz方向寸法即ち高さである。ここでは支持層90の下面をz=0と任意設定し、支持層90の上面をz=Z1、光透過性プレート層94の下面をz=Z2と表してある。反共振光導波を実現するに当たっては、W/H比即ち高さHに対する幅Wの比を種々に設定でき、図示の比率は説明上の一例に過ぎない。但し、先にも述べたように、チャネル14における物体及びそれを含有する流体の流量やスループットを所望の量乃至程度とするには、高さHを十分に大きくして十分多くの流体を受け入れられるようにしなければならない。また、壁面の接着性による流動障害を避ける上でも、高さHが十分に大きい方がよい。更に、比Z1/H及びZ2/Hを適宜調整することによって、チャネルの安定性を向上させることができ、製造もしやすくなる。
【0046】
図5に、チャネル14の断面内におけるz方向沿い光強度分布の例を二種類示す。二種類示されている光強度分布曲線のうち曲線126は、一次反共振光導波モード励振時、例えば小型チャネル使用時や照明光精密カップリング時に発生しうるガウス分布を示している。更に、曲線128で示されているチャネル内略均一分布は、大型チャネル使用時や非平行照明光使用時等、多モード励起時に発生しうるものである。
【0047】
曲線126により表される光強度分布においては、層90及び94内に存在する光はごく弱いものであり、強度的に見て光のうち90%以上はチャネル14内の流体中、即ちZ1<z<Z2の領域内に集まっている。また、光強度が最大値Imaxになるのは、チャネル14のほぼ中央、即ちほぼz=(Z1+Z2)/2の位置である。このように、一次反共振光導波モードにおいては、コア(チャネル14内流体)の屈折率がその周囲(層90,94等)より低いにもかかわらず、コア内に光が効果的に閉じこめられ、導波されている。即ち、注目物体と光との相互作用が生じうる領域内に光が導波されているため、強度的に見て、与えられた光の大部分がその物体の励起に使用されることとなる。
【0048】
また、曲線128により表される光強度分布においては、層90及び94内に存在する光が曲線126より強いけれども、それでもなお、チャネル14内流体中の光がかなり強く、Z1<z<Z2の領域内における光強度が図示の例では40〜50%程度にも達している。曲線128は曲線126と異なり目立った強度最大点を有しておらず、また光閉じこめ乃至光導波の効果も曲線126程は強くないが、曲線126に比べチャネル14横断方向における光強度均一性が良好である。用途によっては、こうした特徴を有効利用できる場合もある。また、曲線126程閉じこめ効率が高くないとはいえ、所与の光のうち強度的に見てかなりの部分を、やはり、照明による励起に使用できる。
【0049】
層90及び94並びに壁122の屈折率は、何れも、チャネル14内の流体の屈折率より僅かに高い程度でよい。具体的には、層90及び94並びに壁122の屈折率は例えば1.4〜1.8程度、流体の屈折率は例えば1.2〜1.4程度でよい。こうした構成においては、適当な角度で照明光を入射することにより、チャネル14内に反共振波(anti-resonant wave)を発生させることができる。なお、チャネル14が非常に細い場合や赤外光で照明する場合等、用途・場合によっては、層90及び94並びに壁122の屈折率を更に高くしたい場合もある。そうした場合には、半導体素材を使用すればよい。
【0050】
一般に、層90及び94並びに壁122を形成する素材即ち界面を形成する素材の屈折率と、チャネル14内流体の屈折率との差が大きければ大きい程、形成される反共振導波路の光閉じこめ係数(confinement factor)は高くなる。但し、導波を実現するには、流体の屈折率を界面素材より外側の媒体の屈折率よりも高くしなくてはならない。界面素材の外にあるのは通常は空気、即ちその屈折率nがnA即ち1の媒体である。
【0051】
図4に示した光導波構造を設計する際には、種々の反共振光導波モードのうちどのモードが適切なのかを、その光導波構造についての光伝搬記述式の固有解を計算することにより知ることができる。適するモードが幾通りか解れば、それらのモードにおける代表的光閉じこめ係数値(光閉じこめ係数推奨値)や導波路実効屈折率を、計算により求めることができる。更に、外部からの光を各モードでその光導波路に結合させることができ、その光導波路をそのモードで励振させることができる光入射角は、計算により求めた導波路実効屈折率に基づき求めることができる。
【0052】
あるモードでの光閉じこめ係数とは、その光導波路の界面より内側の空間、即ちチャネル14内の空間に、強度的に見てどの程度の割合の光が閉じこめられているかを表すものである。固有解の計算により判明した好適なモードの中から使用モードを選択する際には、例えば、それらのモードの中で上限値(90%又はそれ以上)に近い光閉じこめ係数を実現できるものを選ぶとよい。但し、そうした高い光閉じこめ係数を実現するには、選択したモードについて先の計算により求められている導波路実効屈折率が、コア素材具体的にはチャネル14内流体の屈折率に十分近い値、できれば僅かに小さな値を有していなければならない。伝搬する光の波長に対しコア部分の高さHを十分大きくすれば、これらのモード(反共振光導波モード)での導波路実効屈折率をコア素材屈折率に近い値にすることができる。
【0053】
図6に、チャネル14の端部切り子面への光入射により反共振光導波モードでの長手方向光伝搬を発生させる方法を模式的に示す。図中、nはチャネル14内流体の屈折率、n’は層90及び94の屈折率、n”=1はその周囲の空気の屈折率である。適宜計算を行うことによって、これらの数値から、代表的な入射光130についてその入射角γ”の最適値を導出することができる。図中のγ’は層94内での伝搬角、φ’はコアへの入射角、φはコア内での伝搬角である。
【0054】
図7に、また別の構成を模式的に示す。この図の構成における入射面140は、図2と同様に傾斜し露出している。この面140に対し90°の方向から光142を入射すると、層94内での伝搬角γ’は面140の傾斜角と等しくなる。従って、図6中の切り子面に対する面140の傾斜角をγ’=90°−φ’に設定すると、コアへの入射角はφ’となる。また、図6に示した入射光130は入射面(端部切り子面)に対して大きく傾いていたため、その入射時に反射損失が生じていたが、この図の構成ではその種の損失が最小になる。即ち、傾斜している入射面140に対し入射光142が直角に又はそれに近い方向から入射しているため、入射面140における反射が最小になる。また、z方向(図4参照)に対する入射面140の角度を調整することにより、面140に入射した光142を、層94とチャネル14内流体との界面144に、反共振光導波モードでの結合に適した入射角φ’にて、入射させることができる。
【0055】
図8に、切り子面以外の面からチャネル14内を照明する構成を示す。切り子面を介しチャネル14内を照明するやり方を採用できない場合、即ち図6に示したやり方や図7に示したやり方を採用できない場合には、こうした構成を採用できるものの、この構成には幾つかの問題点がある。第1に、反共振光導波路として機能させうるのがインレットポート(流体注入口)150とアウトレットポート(流体排出口)152の間に限られている。第2に、図中の終端部材160及び162が層92と同じ素材或いはそれに類する適当な素材(Gelpak(商標)膜、PDMS、フォトレジスト素材例えばSU−8、ガラス、水晶等)により形成されているため、端部切り子面から光を入射しようとしても終端部材160及び162が邪魔で入射できない。なお、インレットポートやアウトレットポートをチャネルの端部に設けてこれを終端した場合にも、同じく端部切り子面からの光入射は行えない。
【0056】
第3に、反共振光導波路と踵を接する部材のうち光透過性の素材により形成されている層94の上面164等を介し、チャネル14内に光170を入射しチャネル14内を照明することが可能ではあるが、そうして入射される光170の入射角は、図示の如くチャネル14内の反共振モード光導波路との結合には適していない。却って、そうした入射光170の大部分は、層94、チャネル14内流体、層90の順に通り抜けて光172として出射されてしまう。
【0057】
図9に、こうした問題の少ない別の構成を示す。この図の構成においては、チャネル14内が仕切部材184によって区画され、流体可存在領域180と空気存在領域182とに二分されている。この仕切部材184は、例えば終端部材160及び162と同じ又は類似した素材を含んでいてもかまわないが、光を通す必要上できるだけ薄くするのが望ましい。但し、歩留まりよく生産できるようにし且つ領域180から領域182への流体流入を阻止する能力を確保するには、仕切部材184をそれ相応に厚くすることが望ましい。こうして形成される構成では、領域182がいわば出っ張りとなり、仕切部材184を挟んで領域180から突出している。また、破線186によって示唆されているように、仕切部材184の片面を凸面とし領域182内に突出させてもよい。このようにした場合、領域182から領域180内に入射する光は、仕切部材184により合焦されることとなる。使用している光源が平行性の貧弱なLED等の光源であるなら、その光源から領域182内に入り領域180内に入っていく際、その拡散光は仕切部材184により高平行化されることとなる。
【0058】
図示されているように、層94の上面164に適当な入射角βにて入射した光190は、その層94内を伝搬した後領域182内に入射する。領域182内は外気と同じ空気によって満たされているので、領域182内での光192の伝搬角は層94への入射角βに等しくなる。また、領域182内を空気以外の気体で満たしてある場合や真空化してある場合も、領域182内での光192の伝搬角は層94への入射角βにほぼ等しくなる。即ち、領域182内における光192の伝搬角は、領域182内の物質の屈折率と外気の屈折率との差に相当する分だけしか、層94への入射角βと違わない。光192は、領域182内から光透過性の仕切部材184に入射し更に領域180に入射する。領域180への入射角β’が適切な角度であれば、この出射光194は、反共振光導波モードのうち少なくとも1モードにて、領域180内の反共振光導波路に結合する。図示されている幾何学的関係から算出できるように、反共振光導波モードでの結合に適する出射角β’の値は、
(数1)
β’=arcsin{(nA/nL)sinβ}
となる。この式中、nAは領域182内に存する空気、気体若しくは真空の屈折率、nLは領域180内に存する流体の屈折率である。
【0059】
領域180内における光194の伝搬方向はチャネル14の長手方向とほぼ平行である。こうした方向に沿って伝搬していくので光導波路に好適に結合でき、各種反共振光導波モードでの導波が可能になる。また、こうした方向に伝搬する光194は、支持層90に行き当たったときにこれを通り抜けることはなく、むしろ支持層90によって反射され領域180内に戻される。この作用もあり、光194は領域180内で長手方向に沿って伝搬することとなる。これと同じくほぼ長手方向と平行に光を伝搬させる手法を図10及び図11に示す。図10及び図11に示す手法によれば、領域180内での光伝搬角が長手方向に対して約2°以下の開きとなり、更に反射損失が低減される。
【0060】
まず、図10に示す構成においては、その長手方向に直交する断面が方形のチャネル14が、仕切部材200により流体可存在領域180と空気存在領域182とに区分されている。この構成の特徴は、仕切部材200の形状が図9中の仕切部材184と異なる点にある。即ち、仕切部材200の表面のうち領域182側を向いた面202が、チャネル横断面に対し傾斜角αで以て傾斜している。この入射面202は、図7に示した入射面140と異なりチャネル14の外面ではないが、やはり傾斜入射面として機能する。面202が傾斜している分、この構成では面164への入射角βを大きめにすることができ、それによって面164における反射損失を低減することができる。図示されている幾何学的関係から計算できるように、チャネル14の領域180内への光212の入射角β’は、長手方向に対して、次の式
(数2)
β’=arcsin[(nB/nL)sin{arcsin{(nA/nB)sin(α+β)}−α}]
により計算できる値を有している。この式中、βは光210の面164への入射角、nBは仕切部材200を形成する素材の屈折率である。面202が傾斜している分、角β’が小さくなるため、効率を損なわずに結合角βを増すことができ、それによって面164における反射損失を低減することができる。
【0061】
また、図11に示す別の構成でも反射損失を低減できる(この構成を図10に示した構成と組み合わせれば更に反射損失が低減される)。即ち、図11に示す構成においては、層94の外面の一部を傾斜した楔状切り子面220とし、この面220を介し層94内に光222を入射することができる。面220への入射角は直角又はこれに近い角度としてある。このようにすることで、面220における反射を抑えることができ、また図9及び図10に示した構成に比べ入射角βを急峻にすることができ、それでいて領域180内における光224の伝搬方向をほぼ長手方向と平行にすることができる。更に、これと同じ又は類似した手法を、図2又は図7に示されている傾斜切り子面入射と組み合わせることや、図9又は図10に示されている仕切部材と組み合わせることができ、更にはそれら三者を組み合わせることもできる。
【0062】
以上説明した構成に対しては種々の変形を施すことが可能である。例えば、領域182内を空気で満たすのに代えて、領域182内を真空化してもよいし、領域182内にその周りの層90及び94よりも低屈折率の気体、流体、固体等を入れてもよい。また、仕切部材を形成する素材として使用できる素材は数多くある。
【0063】
図12及び図13に、図4〜図11に示した各種の手法を適用可能な用途、特に蛍光検知以外の用途の例を示す。
【0064】
まず、図12に、線12−12(図1参照)に沿ったアナライザ10の断面、即ち光吸収検知部材54の特徴的構成例えばIC64の断面を、模式的に示す。
【0065】
矢印線242で示すようにチャネル14の構成部分240内を下流へと移動中の物体16は、図中光源244として示されている励起部材から励起光を受光する。光源244としては、その発光波長域が広い適当な照明部材、例えばLEDやハロゲンランプ等の白色光源を使用する。光源244からの光の供給は、例えば図4〜図11に示した形態等、適当な形態にて行われる。図2に示した構成と同様、この構成におけるチャネル構成部分240も、光標的間相互作用を強化する機能を有している。例えば、光源244からの光に反応して反共振光導波路として機能することによって、その光と物体16内の検体との間の相互作用を強化する。
【0066】
光源244から励起光を受光した物体16はその光を吸収又は散乱させる。その結果生じる反射光は、励起光のスペクトラム分布とは異なったスペクトラム分布を有しており、IC64上のフォトセンサアレイ100を構成するセル群により検知される。例えば、物体16に含有される検体がある特定のサブレンジに属する光子を吸収する検体である場合、当該吸収を表すスペクトラム分布即ち吸収性スペクトラム分布が検知されることとなる。また、物体16は、チャネル構成部分240内を通り抜ける間、途切れなしに励起光を受光し続ける。そのため、物体16がチャネル14の構成部分240内を通っている間、物体16からの反射光が途切れなしに且つIC64上の何れかのセルによって受光され続け、その結果として得られる検知結果はスペクトラム分布例えば吸収性スペクトラム分布の再現に使用できる内容になる。その後物体16が湾曲部246に着きチャネル構成部分240ひいては光吸収検知部材54から出ていくと、セル群により検知される光は励起光になり、再現できるスペクトラム情報も元々の即ち励起光のスペクトラムを示すものに戻る。
【0067】
図13に、アナライザ10の別の部分、即ちラマン後方散乱を検知するラマン散乱検知部材60の断面を模式的に示す。チャネル14の湾曲部250からチャネル構成部分240内に入ってきた物体16は、矢印線242により示されるようにチャネル構成部分240内を下流方向に移動していく。物体16は、その間、図中光源244として示されている励起部材から励起光を受光する。チャネル構成部分240は、光標的間相互作用を強化する機能を有している。
【0068】
上流側の光源244からの励起光が入射されると、その励起光は物体16又はそれに含有される検体により受光及びラマン散乱され、励起光スペクトラム分布と異なるスペクトラム分布を有する後方散乱光となって上流に向かい、検知器アセンブリ252に内蔵されるIC70上のフォトセンサアレイ100を構成するセル群によって検知される。なお、ここでは励起光を上流から入射しているのでチャネル14の構成部分240の上流端側でチャネル14外の場所にセル群を配置してあるが、チャネル構成部分240の下流側から光源244によりチャネル構成部分240を照明する構成を採る場合はセル群もチャネル構成部分240の下流端側でチャネル14外の場所に配置する。検知器アセンブリ252の構成は相応の構成にすればよい。チャネル構成部分240内を通っている間中、物体16は途切れなく励起光を受光し続けるので、検知器アセンブリ252に内蔵されるIC上のセル群も、物体16がチャネル14の構成部分240内を通っている間中、後方散乱光スペクトラムを検知し続ける。物体16がラマン散乱検知部材60から出ていくと、セル群により検知される光のスペクトラム分布は元々の即ち励起光のそれに戻る。なお、検知器アセンブリ252に内蔵されるIC70を構成するフォトセンサアレイ100は、チャネル壁を含め図中のチャネル14の切り子面全体を覆うように設けるとよい。
【0069】
図14に、図1に示したアナライザ10の如きアナライザの製造手順の一例を示す。
【0070】
図中のステップ270では、搬送対象物体が通るチャネルを有する構造体即ち流路付構造物を形成する。例えば、構造形成されたスペーサ層を2個のクオーツスライド間に設けること例えば配置することによって、流路付構造物を製作する。スペーサ層としては、例えばパターン付のPDMS層を設ける。但し、スペーサ層に適するものである限り、他種素材又は他種素材の組合せによってスペーサ層を形成してもよい。例えば、Gelfilm(登録商標)や水晶を使用できる。また、ステップ270にて使用できる手法にはこれ以外にも様々な手法がある。例えば、チャネルが形成されるようガラスエッチング又はPDMS成型を実施することによりクオーツスライド内に流体チャネルを形成し、そしてその結果得られた構造の上にもう1枚のクオーツスライドを載せる、という手法を採ってもよい。或いは、別々の基板上にそれぞれPDMS層を製作し、一方の基板を上下裏返して他方の基板上に整列載置する、というチップオンチップアセンブリ方式も採りうる。そして、形成された流路付構造物にて最終的に基板として残る部分は、十分な硬度となるよう、例えばガラス、PCB、PDMS等の素材によって製作しておく。基板に十分な硬度があれば、制御、検知、計測等のための回路への直結が可能になる。
【0071】
また、ステップ270にて、チャネル14内にゲルその他の素材を配する処置を実施してもよい。即ち、チャネル14のある領域内に光を長手方向に対しある角度で斜めに入射したとき、その光が仕切部材を透過しチャネル14の別の領域内に長手方向に対し別の角度で斜めに入射することとなるよう、その種の素材を配置しておくようにしてもよい。更に、ステップ270にて、チャネル14の端部をゲル等の終端部材で閉止する処置を実施してもよい。そして、注入口及び排出口を設ける処置を実施してもよい。
【0072】
ステップ272では、形成された流路付構造物に各種流路形成用部品を取り付ける。即ち、チャネル内物体移動を引き起こしその移動を制御するための部材が、ステップ272にて取り付けられる。
【0073】
ステップ274では、光標的間相互作用を強化するための部材を取り付ける。例えば、支持層90の片側に光学部品96を取り付けることによって、チャネル14のうち反共振光導波路として機能する部分に入射光を結合できる面98を形成する。また例えば、複数個のスペーサ72を設けることによって、反共振光導波路に対する干渉、抵触を防ぐのに十分な間隙を形成する。スペーサ72があれば、後に検知器アセンブリ87を構成するICを取り付ける際、そのICと流路付構造物との間に空隙88が形成されるため、そのICによりチャネル14内における光伝搬が邪魔されることはない。
【0074】
ステップ280では、互いに別々のサブレンジにて光子を検知するセル群を有する一群のフォトセンサアレイを取り付ける。これは検知器アセンブリ87の取付として実行される。基準セルを有するものも、検知器アセンブリ87として使用できる。
【0075】
ステップ282は、上述の流れに破線でつながっていることから解るように、図示の時点でもまた図示以外の時点でも実施することができる。例えばステップ274にて実施することもできるし、ステップ274以後に実施することもできる。ステップ282は光源を位置決めするステップであり、検知器アセンブリと同様に光源も、一旦取り付けた後はその位置で固定される。このステップ282では、チャネル内を搬送されていく物体に励起光を供給できるよう、それら何個かの光源を配置する。
【0076】
以上説明した図14の手順は変形も可能である。例えば、ステップ272、274、280及び282における処置を適当な形態で組み合わせ、各種部材の取付をより望ましい順序でよりうまく行えるようにしてもよい。また、図示説明した処置以外の処置、例えばICやゲートや(マイクロプロセッサ若しくはコンピュータとの接続用の)コネクタ等、各種回路乃至回路間接続部材を整列させ、取り付け、接続する処置を、実施するようにしてもよい。また、こういった処置を、ステップ272、274、280及び282にて、部分的に或いは少しずつ実施するようにしてもよい。
【0077】
図15に、図14に示した手順により製作可能な別の構成を示す。この図に示すように、チャネル14沿いに設ける複数個の検知部材のうち、例えば第1及び第2の蛍光検知部材56及び58を互いに隣り合うように配置する場合、それらを共に覆うようにIC290を取り付けるとよい。この構成においては、IC290を構成するフォトセンサアレイのセル群のうち一部が、チャネル14のうち蛍光検知部材56が設けられた部分沿いに、また他の一部が、チャネル14のうち蛍光検知部材58が設けられた部分沿いに、それぞれ配置されている。
【0078】
図16に、図15中の線16−16に沿った断面を示す。この図には、IC290を内蔵する検知器アセンブリ292の支持形態、即ち複数個のスペーサ72により空隙88の上方に検知器アセンブリ292を支持する形態が、示されている。透過構造を構成する膜の光学的厚みの横変(「横方向位置により異なる」という意味)具合は、例えば、蛍光検知部材56にて光子が検知される光子エネルギレンジ及びサブレンジが蛍光検知部材58におけるそれと異なるように設定することもできるし、同じになるように設定することもできる。また、蛍光検知部材56と蛍光検知部材58の間に、光吸収壁として機能する形状及び配置で複数個のスペーサ72を設ければ、好適にも、蛍光検知部材56・蛍光検知部材58間クロストークを減らせる。
【0079】
図17に更に別の構成を示す。この図の構成においても、図15に示した構成と同様、検知器アセンブリ292が互いに平行な複数本のチャネル294を覆うように配置されている。また、チャネル294とチャネル294の間は壁296によって仕切られている。こうした構造は、まず幅広のチャネルを1個形成しておき、壁296を何個か設けることによってその幅広チャネルを複数本のチャネル294に区分する、という手法で形成できる。また、透過構造を構成する膜の光学的厚みの横変具合は、チャネル294毎に異なる光子エネルギレンジにて光子が検知されるように設定してもよいし、チャネル294毎に異なるサブレンジにて光子が検知されるように設定してもよいし、どのチャネル294でも同じ光子エネルギレンジ及びサブレンジにて光子が検知されるように設定してもよい。
【0080】
図18に更に別の構成を示す。この構成においては、光源84からの光に応じチャネル14の構成部分80が反共振光導波路として機能する。チャネル構成部分80沿いには検知器アセンブリ87が配置されており、この検知器アセンブリ87は複数個のスペーサ72によってプレート層94から分離されている。チャネル構成部分80より上流で光源84より下流に位置する箇所には、処理を起動するために使用される何個かの起動用フォトディテクタが配置される。この図では、起動用フォトディテクタ300が複数個のスペーサ302によって支持されている。
【0081】
チャネル構成部分80内にある物体310、312及び314は、起動用フォトディテクタ300を作動させた後、チャネル14内を搬送されていく。その間、励起光に応じ蛍光を発し続ける。蛍光中の物体310、312及び314から放出される一群の光子は、この図ではそれぞれ光線322、324又は326として表されている。従って、検知器アセンブリ87内のフォトセンサアレイからの読出により光子量検知結果を得ることができ、またそれら光子量検知結果に基づき物体310、312及び314についての情報を得ることができる。これらの物体310、312及び314が同時にフォトセンサアレイの面前を通過していく場合でも、同様である。
【0082】
図19に、バス404を介し各種部材をCPU(中央処理ユニット)402に接続した構成を有するシステム400を示す。
【0083】
システム400は、共にバス404に接続された外部I/O(入出力部)406及びメモリ408を備えている。外部I/O406は、CPU402がシステム400外の装置と通信できるようにする部材である。
【0084】
バス404にはこれら以外にも様々な部材が接続されている。まず、集積回路I/O410は、CPU402がアナライザ10内のICと通信できるようにする部材であり、この図にはICとして第0IC412から第M−1IC414に至るΜ個のICが示されている。また、それらIC412〜414はフォトセンサアレイを内蔵している。この図では、第mIC416の内部にフォトセンサアレイ418が描かれている。フォトセンサアレイ418は、先に述べた通り、それぞれ対応するサブレンジにて光子を検知する一群のセルを有している。同様に、照明装置I/O420もCPU402が各種照明装置と通信できるようにする部材であり、この図には照明装置として第0装置422から第N−1装置424に至るN個の装置が示されている。
【0085】
メモリ408としてはプログラムメモリ430等が設けられている。プログラムメモリ430内には、図示の如く、照明ルーチン432、検知読出ルーチン434等のルーチンが格納されている。
【0086】
CPU402は、照明ルーチン432を実行して光源84や光源244と通信する。これにより、CPU402は、例えば種々のセンサから信号を受け取って計算を行い、どのような照明動作が必要かを計算結果に基づき判別し、そして光源84,244等に信号を供給してそれらを作動させる。
【0087】
CPU402は、検知読出ルーチン434を実行することによって、上述のIC64、66、68、70、252、290等を含むIC412〜414内のセル群から、情報を取得する。例えば、CPU402から信号を供給して適当な検知周期の間に亘り光子の検知を実行させ、更にその結果を示す信号をIC内のセル群からCPU402が取得する。
【0088】
以上例示説明した構成によれば、コンパクト且つ安価なコンポーネントが得られる。また、得られるコンポーネントを使用すれば分光分析等の機能を実現でき、その際、概ね、機械部品や光学部品を別途追加する必要もない。検知結果の読出は多数のICから迅速且つ並列的に行うことができ、従ってデータを高速で取得することができる。これは、物体の特徴を初期的に調査、特定する処理に利用できる。初期調査/特定の結果を利用すれば、その物体についてより細かな又はより立ち入った解析を行うべきかどうか、また別種解析を実施すべきかどうか、実施するとしたらどういう種類の解析か等を判別、決定することができる。このような多信号解析は試薬なしでの物体識別と相性がよく、また、この多信号解析によって様々な流体内に存する様々な物体を識別することができる。
【0089】
また、上述した各種の構成においては、概略、アナライザ内に複数個の検体を連続的に流し込むことができる。従って、リアルタイムな解析を行うことができ、またインタラクティブ検知方式も採用可能である。
【0090】
また、以上説明した各種部材は、説明したものとは異なる様々な形状、寸法、特性数値、質的特性等を有し又は呈するものとすることができる。
【0091】
更に、上の説明では各種部材で特定の素材を使用した例を示したが、使用できる素材は数多くある。
【0092】
以上の説明においては、流路付構造物に対し特定の形態でICを配置した例を示したが、流路付構造物に対するICの配置の仕方、設け方は説明したもの以外にも色々あろう。また、本発明にて使用するフォトセンサアレイは、本発明にてフォトセンサアレイとして使用するのに適切なものである限り、上述したものとは異なる種類のものであってもよい。例えば、ある単一のIC上にある単一の二次元フォトセンサアレイ内で、ある行と別の行とに別様の被覆を施し、別々の光子エネルギレンジにて光子検知を行わせるようにしてもよい。
【0093】
また、上述した手法は、自己発光(self-emitting)乃至自発蛍光(auto-fluorescing)する物体例えば粒子に対しても適用できる。
【0094】
また、光標的間相互作用を強化できる手法は反共振光導波以外にも数多くある。また、それらの励起手法を経路沿いで実施する際、その場所は経路沿いの隣り合った場所とすることもできるし、実施場所間に距離を置くこともできる。更に、反共振光導波にまつわる各種パラメタを調整することも可能である。
【0095】
また、図19に例示した構成ではCPUが用いられているが、これは、適当なものである限り、マイクロプロセッサその他の部材に置き換えてもよい。
【0096】
上に例示した各種構成では、各種構成部材が特定の形態で動作するように製造及び使用されているが、説明した動作とは異なる動作を実行するようにしてもよいし、説明した順序とは異なる順序で動作を実行させてもよいし、説明外の動作を実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】流路付構造物上のアナライザを示す模式図である。
【図2】上記アナライザの2−2断面を示す模式的断面図である。
【図3】上記アナライザにて使用しうるアセンブリの一例構成を示す模式的平面図である。
【図4】上記アナライザの図2と直交する方向の断面を示す模式的断面図である。
【図5】図4中のz方向位置に対する光強度の関係を示すグラフである。
【図6】図2と同様の断面における端部切り子面経由光入射を示す模式的断面図である。
【図7】図6と同様の断面における傾斜端部切り子面経由光入射を示す模式的断面図である。
【図8】光透過性プレート層を介し且つその界面に沿った方向から図2中のチャネルを照明する構成を示す模式的断面図である。
【図9】図8に示した構成と同じく光透過性プレート層を介し照明を行うが但しその照明光を反共振モード光導波路に結合可能な構成を示す模式的断面図である。
【図10】図9に示した構成に対する別例構成を示す模式的断面図である。
【図11】図9に示した構成に対する別例構成を示す模式的断面図である。
【図12】上記アナライザの12−12断面を示す模式的断面図である。
【図13】後方散乱検知部材について同様の断面を示す模式的断面図である。
【図14】上記アナライザの概略製造手順を示すフローチャートである。
【図15】上記アナライザの別例構成の一部分を示す模式図である。
【図16】図15に示した構成の16−16断面を示す模式的断面図である。
【図17】上記アナライザの別例構成の一部分を示す模式的平面図である。
【図18】図2中の検知部材の別例構成を示す模式的断面図である。
【図19】上記アナライザを制御するシステムを示す模式的ブロック図である。
【符号の説明】
【0098】
10 アナライザ、12 流路付構造物、14,294 チャネル、16,310,312,314 物体、64,66,68,70,290,412,414,416 IC(集積回路)、80,240 チャネル構成部分、86,322,324,326 蛍光・散乱光、87,252,292 検知器アセンブリ、90,92,94,122,160,162,296 チャネルを囲む物質、98,140,164,202,220 入射面(励起光結合部)、100,418 フォトセンサアレイ、106 サブレンジセル、126,128 光強度分布曲線、130,142,170,190,192,194,210,212,222,224 励起光、144 界面、150 インレットポート、152 アウトレットポート、180 流体可存在領域、182 空気存在領域、184,200 仕切部材、400 システム、402 CPU、432 照明ルーチン、434 検知読出ルーチン、α 仕切部材傾斜角、β,β’,γ’,γ”,φ,φ’ 入射角・伝搬角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル内部の流体がそれより概ね高屈折率になるであろう物質と所与の長手方向沿い区間を通じ何れの断面でも接触するよう、且つ当該区間内の何れの断面でも当該物質によって当該流体が概ね囲まれることとなるよう、構造物内に流路として形成されているチャネルを、その対象として実行され、
上記区間のうち少なくとも一部にて、伝搬する光のうち断面内強度比で約10%超の部分が流体内を伝搬することとなるよう、当該区間内で主として当該流体によりチャネル長手方向沿いに、光を伝搬させるステップと、
伝搬する光に反応してチャネルから放出される光子を、チャネル沿いに配置され且つ集積回路上に設けられたフォトセンサアレイを構成するセル群を検知手段として用いて、検知するステップと、
を有するチャネル外放出光子検知方法。
【請求項2】
流路付構造物と、
その内部の流体がそれより概ね高屈折率になるであろう物質と所与の長手方向沿い区間を通じ何れの断面でも接触するよう、且つ当該区間内の何れの断面でも当該物質によって当該流体が概ね囲まれることとなるようその流体を収容すべく、流路付構造物内に形成されたチャネルと、
上記区間のうち少なくとも一部にて、伝搬光のうち断面内強度比で約10%超の部分が流体内を伝搬することとなるよう、チャネルに対し光を供給しチャネル内を長手方向に沿って伝搬させる照明部材と、
伝搬する光に反応してチャネルから放出される光子を検知できるよう、チャネル沿いに配置されセル群から構成されたフォトセンサアレイを有する集積回路と、
を備える装置。
【請求項3】
流路付構造物と、流路付構造物内に所定方向に沿って長く形成されたチャネルと、流路付構造物内に形成されチャネルを第1領域と第2領域とに区画する光透過性の仕切部材と、流路付構造物に形成され第1領域への流体の入口及び第1領域からの流体の出口となる少なくとも2個のポートと、を備え、
更に、チャネル長手方向に対し傾斜している第1の方向から第2領域内に光を入射することができ、その後仕切部材を通り抜けた光がチャネル長手方向に対し傾斜している第2の方向から第1領域内に入射されるよう、仕切部材が配置された装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−171182(P2007−171182A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339568(P2006−339568)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】