説明

チューブラー撚線機

【課題】 小型化が可能でしかも高速回転による線条体の撚り合わせができる撚線性に優れたチューブラー撚線機を提供する。
【解決手段】 本発明のチューブラー撚線機11は、線条体14を繰り出すための複数のサプライリール13を筒型ロータ12の内側に直列に配置し、各サプライリール13に巻回された線条体14をそれぞれ通線ガイド15により筒型ロータ13の内面に沿ったパスラインを経てサプライリール13の直列方向の一端側の撚り合わせ点に導いて、線条体14を撚り合わせるチューブラー撚線機であって、サプライリール13は、その回転軸が筒型ロータ12の中心軸に直交する方向に配置されるとともに、筒型ロータ12の中心軸と同軸回転するように筒型ロータ12の中心軸方向の一方側のみで支持されており、サプライリール13から通線ガイド15によって筒型ロータ12の内面へ向けて線条体14を送り出す角度θが、筒型ロータ12の中心軸に対して60°以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素線または撚り線などの線条体を撚り合わせるチューブラー撚線機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯通信端末の配線ケーブルやCCDカメラケーブルなどには、チューブラー撚線機によって撚り合わせた超極細(例えば、AWG42(直径0.075mm)以下)の撚線にPFA樹脂などのシールドを被覆したケーブルが用いられている。
素線や撚り線などの線条体を撚り合わせるチューブラー撚線機としては、線条体を巻回した複数のサプライリールを筒型ロータ内に直列に配置し、各サプライリールから繰り出された線条体をそれぞれ通線ガイドによりサプライリールの直列方向の一端側の撚り合わせ点に導いて撚り合わせるものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図5に示すように、上記のチューブラー撚線機におけるサプライリール51は、クレードル55上に回転自在に支持されており、クレードル55は筒型ロータ54の中心軸と同軸で回転するように筒型ロータ54の中心軸方向の両側でベアリング56により支持されている。そして、サプライリール51から繰り出された線条体52は、まずクレードル55の支持軸57の内側を通ってから円筒状の通線ガイド53によって筒型ロータ54の内面近傍へ送り出される。その際、線条体52を通線ガイド53によって筒型ロータ54の内面近傍へ送り出す送り出し角度θは、筒型ロータ54の中心軸に対して略40°となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−3281号公報
【特許文献2】特開2000−355890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来のチューブラー撚線機では、サプライリール51を支持するクレードル55は筒型ロータ54の中心軸方向の両側で支持されているため、繰り出された線条体52は支持軸57の内側を通す必要が生じ、さらに、通線ガイド53による送り出し角度θが略40°であるために、サプライリール51から筒型ロータ54の内面近傍へ送り出されるための長さL1を長くとる必要があり、各サプライリール51の間隔L2が大きくなり、結果として撚線機の大型化の要因となっていた。
【0006】
また、サプライリール51の直列方向の一端側の撚り合わせ点から離れるにしたがって、サプライリール51から撚り合わせ点へ導かれる線条体52のパスライン長が長くなるため、遠心力による縄跳び現象で線条体52が振られて筒型ロータ54の内面に接触し、その際の摩擦抵抗で線条体52にかかる動張力が増加する。この現象は撚り合わせが高速回転になるほど顕著となるため、筒型ロータ54の回転数を上げると線条体52の張力が増加して破断してしまう虞があり、高速回転での撚り合わせが困難であった。特に、線条体52が極細線であると大きな張力をかけられないため、筒型ロータ54の回転数を低く抑えなければならず、撚線の生産性を向上させることが困難であった。
【0007】
本発明は、小型化が可能でしかも高速回転による線条体の撚り合わせができる撚線性に優れたチューブラー撚線機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成することのできる本発明のチューブラー撚線機は、線条体を繰り出すための複数のサプライリールを筒型ロータの内側に直列に配置し、各前記サプライリールに巻回された前記線条体をそれぞれ通線ガイドにより前記筒型ロータの内面に沿ったパスラインを経て前記サプライリールの直列方向の一端側の撚り合わせ点に導いて、前記線条体を撚り合わせるチューブラー撚線機であって、前記サプライリールは、その回転軸が前記筒型ロータの中心軸に直交する方向に配置されるとともに、前記筒型ロータの中心軸と同軸回転するように前記筒型ロータの中心軸方向の一方側のみで支持されていることを特徴としている。
【0009】
また、このような本発明に係るチューブラー撚線機において、前記サプライリールから前記通線ガイドによって前記筒型ロータの内面へ向けて前記線条体を送り出す送り出し角度が、前記筒型ロータの中心軸に対して60°以上であることが好ましい。
【0010】
上記目的を達成することのできる本発明のチューブラー撚線機は、線条体を繰り出すための複数のサプライリールを筒型ロータの内側に直列に配置し、各前記サプライリールに巻回された前記線条体をそれぞれ通線ガイドにより前記筒型ロータの内面に沿ったパスラインを経て前記サプライリールの直列方向の一端側の撚り合わせ点に導いて、前記線条体を撚り合わせるチューブラー撚線機であって、前記サプライリールは、その回転軸が前記筒型ロータの中心軸に直交する方向に配置されるとともに、前記筒型ロータの中心軸と同軸回転するように前記筒型ロータの中心軸方向の両側で支持されており、前記サプライリールから前記通線ガイドによって前記筒型ロータの内面へ向けて前記線条体を送り出す送り出し角度が、前記筒型ロータの中心軸に対して60°以上であることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係るチューブラー撚線機において、前記送り出し角度が、前記筒型ロータの中心軸に対して80°〜90°の範囲内であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチューブラー撚線機によれば、サプライリールを筒型ロータの中心軸方向の一方側のみで支持しているため、各サプライリールにおける線条体を送り出すためのスペースを極力小さくすることができる。また、サプライリールを筒型ロータの中心軸方向の両側で支持した場合でも、サプライリールから筒型ロータの内面へ向けて線条体を送り出す角度が筒型ロータの中心軸に対して60°以上とすることで、線条体を送り出すためのスペースを小さくすることができる。これらの構成により、各サプライリールの間隔を小さくすることができ、筒型ロータの短縮化により装置全体の小型化を図ることができる。
また、筒型ロータの短縮化により、サプライリールから撚り合わせ点へ導かれる線条体のパスライン長を短くすることができる。これにより、遠心力により線条体にかかる張力の増加を極力抑えて高速回転での撚り合わせを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るチューブラー撚線機を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は本実施形態に係るチューブラー撚線機の構造を説明する概略構成図であり、図2はチューブラー撚線機の内部構造を示す一部の概略構成図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のチューブラー撚線機11は、回転可能な筒型ロータ12を有し、この筒型ロータ12内に、複数のサプライリール13が筒型ロータ12の回転軸方向に沿って直列に配置されている。
これらのサプライリール13には、素線または撚り線などの線条体14が巻回されており、撚線時にはこれらのサプライリール13から線条体14が繰り出される。
【0015】
図2に示すように、各サプライリール13は、正面視コ字形状のクレードル19上に回転自在に支持されており、クレードル19は筒型ロータ12の中心軸と同軸で回転するように筒型ロータ12の中心軸方向(図中左右方向)の両側でベアリング21により支持されている。そして、各サプライリール13から繰り出されたそれぞれの線条体14は、まずクレードル19の一方の支持軸20の内側を通ってから筒型ロータ12の内部に設けられた円筒形状の通線ガイド15によって筒型ロータ12の内面に向かって導かれ、さらに別の通線ガイド15によって筒型ロータ12の先端側(図中右側)へ導かれる。そして、これらの線条体14は、筒型ロータ12の内面に沿ったパスラインを経て筒型ロータ12の先端側に設けられた撚り合わせ点となるダイス16(図1参照)によって集合される。
【0016】
そして、このチューブラー撚線機11によれば、筒型ロータ12を回転しながら各サプライリール13から線条体14を繰り出すことにより、ダイス16へ導かれるそれぞれの線条体14がダイス16において撚り合わされて撚線ケーブル17となり、巻き取りロール18に巻き取られる。
【0017】
本実施形態では、通線ガイド15によって線条体14を筒型ロータ12の内面近傍へ送り出す送り出し角度θは、筒型ロータ12の中心軸に対して60°以上となるように設定されている。より好ましい送り出し角度θは80°〜90°の範囲内であり、さらに好ましい送り出し角度θは略90°である。なお、図2に示した形態では、送り出し角度θを略90°としている。
【0018】
そして、このチューブラー撚線機11によれば、線条体14を筒型ロータ12の内面近傍へ送り出す送り出し角度θを、従来のチューブラー撚線機より大きい60°以上としているため、サプライリール13から筒型ロータ12の内面近傍へ線条体14を送り出すための長さL1が従来より短くなり、各サプライリール13における線条体14を送り出すためのスペースを極力小さくすることができる。これにより、各サプライリール13の間隔L2を小さくして筒型ロータ12の短縮化を図ることができ、装置全体の小型化を図ることができる。また、送り出し角度θが90°に近い程、筒型ロータ12の短縮化を図ることができる。
【0019】
さらに、筒型ロータ12の短縮化により、サプライリール13から撚り合わせ点へ導かれる線条体14のパスライン長を短くすることができる。これにより、筒型ロータ12を高速回転させても遠心力や摩擦抵抗による動張力が低く抑えられるようになり、極細線であっても高速回転で撚り合わせを行うことが可能である。したがって、本実施形態のチューブラー撚線機11によれば、撚線の生産性を向上させることができる。
【0020】
(第2実施形態)
図3に、本発明に係るチューブラー撚線機の第2実施形態を示す。なお、撚線機の全体的な既略構成は図1に示したものと同様である。この第2実施形態は、第1実施形態と比較して筒型ロータの内部構造が異なるものであり、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0021】
図3に示すように、第2実施形態のチューブラー撚線機31は、サプライリール13を回転自在に支持するクレードル32が、正面視L字形状をなすとともに、筒型ロータ12の中心軸と同軸で回転するように筒型ロータ12の中心軸方向(図中左右方向)の後方側(図中左側)のみでベアリング21により支持されている。そして、各サプライリール13から繰り出されたそれぞれの線条体14は、通線ガイド15によって筒型ロータ12の内面に向かって導かれ、さらに別の通線ガイド15によって筒型ロータ12の先端側(図中右側)へ導かれる。なお、通線ガイド15によって線条体14を筒型ロータ12の内面近傍へ送り出す送り出し角度θは、筒型ロータ12の中心軸に対して40°程度である。
【0022】
このように、チューブラー撚線機31ではサプライリール13を筒型ロータ12の中心軸方向の一方側のみで支持しているため、第1実施形態のチューブラー撚線機11のように線条体14をクレードルの支持軸の内側を通す必要が無い。そのため、サプライリール13から筒型ロータ12の内面近傍へ線条体14を送り出すための長さL1が短くなり、各サプライリール13における線条体14を送り出すためのスペースを極力小さくすることができる。したがって、各サプライリール13の間隔L2を小さくして筒型ロータ12の短縮化を図り、極細線であっても高速回転で撚り合わせを行うことができる。
【0023】
(第3実施形態)
また、図3に示した形態の変形例として、通線ガイド15によって線条体14を筒型ロータ12の内面近傍へ送り出す送り出し角度θを、筒型ロータ12の中心軸に対して60°以上となるように設定した形態を図4に示す。この第3実施形態のチューブラー撚線機35では、第2実施形態と比較して送り出し角度θを大きくしたことにより、サプライリール13から筒型ロータ12の内面近傍へ線条体14を送り出すための長さL1をさらに短くしており、各サプライリール13の間隔L2もさらに短くなっている。これにより、筒型ロータ12の短縮化を図り、さらなる高速回転で撚り合わせを行うことができる。なお、この第3実施形態では、送り出し角度θを最も好ましい角度である略90°としている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るチューブラー撚線機の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すチューブラー撚線機の内部構造(第1実施形態)を示す部分概略構成図である。
【図3】図1に示すチューブラー撚線機の内部構造(第2実施形態)を示す部分概略構成図である。
【図4】図1に示すチューブラー撚線機の内部構造(第3実施形態)を示す部分概略構成図である。
【図5】従来のチューブラー撚線機の内部構造を示す部分概略構成図である。
【符号の説明】
【0025】
11,31,35 チューブラー撚線機
12 筒型ロータ
13 サプライリール
14 線条体
15 通線ガイド
16 ダイス(撚り合わせ点)
19,32 クレードル
21 ベアリング
θ 送り出し角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条体を繰り出すための複数のサプライリールを筒型ロータの内側に直列に配置し、各前記サプライリールに巻回された前記線条体をそれぞれ通線ガイドにより前記筒型ロータの内面に沿ったパスラインを経て前記サプライリールの直列方向の一端側の撚り合わせ点に導いて、前記線条体を撚り合わせるチューブラー撚線機であって、
前記サプライリールは、その回転軸が前記筒型ロータの中心軸に直交する方向に配置されるとともに、前記筒型ロータの中心軸と同軸回転するように前記筒型ロータの中心軸方向の一方側のみで支持されていることを特徴とするチューブラー撚線機。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブラー撚線機において、
前記サプライリールから前記通線ガイドによって前記筒型ロータの内面へ向けて前記線条体を送り出す送り出し角度が、前記筒型ロータの中心軸に対して60°以上であることを特徴とするチューブラー撚線機。
【請求項3】
線条体を繰り出すための複数のサプライリールを筒型ロータの内側に直列に配置し、各前記サプライリールに巻回された前記線条体をそれぞれ通線ガイドにより前記筒型ロータの内面に沿ったパスラインを経て前記サプライリールの直列方向の一端側の撚り合わせ点に導いて、前記線条体を撚り合わせるチューブラー撚線機であって、
前記サプライリールは、その回転軸が前記筒型ロータの中心軸に直交する方向に配置されるとともに、前記筒型ロータの中心軸と同軸回転するように前記筒型ロータの中心軸方向の両側で支持されており、
前記サプライリールから前記通線ガイドによって前記筒型ロータの内面へ向けて前記線条体を送り出す送り出し角度が、前記筒型ロータの中心軸に対して60°以上であることを特徴とするチューブラー撚線機。
【請求項4】
請求項2または3に記載のチューブラー撚線機において、
前記送り出し角度が、前記筒型ロータの中心軸に対して80°〜90°の範囲内であることを特徴とするチューブラー撚線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−144174(P2006−144174A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336891(P2004−336891)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】