説明

チューブ固定構造及びチューブ固定方法

【課題】端子圧着作業が容易にでき、しかも、チューブが電線束に対して位置ずれしないチューブ固定構造及びチューブ固定方法を提供する。
【解決手段】複数の電線Wからなる電線束1を内部に収容し、電線束1の外径より大きな内径を有するチューブ10と、チューブ10の外周に巻き付けて締結する結束バンド20とを備え、チューブ10に内周側に窪む窪み部11を形成し、窪み部11によって電線束1との隙間を無くしたチューブ10の外周に結束バンド20を巻き付けて締結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を収容したチューブを固定するチューブ固定構造及びチューブ固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるワイヤーハーネスとして、電線束をボルトヘッド、スポットバリ等から保護するためにチューブ内に収容する場合がある。
【0003】
従来では、図4(a)に示すように、電線束50の外径寸法に適合する内径のチューブ60内に電線束50を通すのが通常であった。図4(b)に示すように、チューブ60の内面と電線束50の各電線Wは密着する。しかし、チューブ60と電線束50の全長がほぼ同等である場合、各電線Wの端子圧着作業が困難である。つまり、端子圧着作業は、端子を圧着する電線Wの端部を他の電線Wから引き離して行う必要があり、その引き離し作業がチューブ60によって出来ないためである。
【0004】
他の従来例として、図5(a)に示すように、チューブ70として端子51付きの電線束50を通せる内径のものを使用し、電線束50を収容したチューブ70の外周を結束バンド80で締結したものがある。結束バンド80は、ワイヤハーネスの電線結束用のものを使用する(特許文献1参照)。両端の端子51群は、コネクタ52,53にそれぞれ接続される。この他の従来例では、各電線Wに予め端子51が圧着されているため、端子圧着作業を行う必要がない。そして、結束バンド80によってチューブ70の電線束50に対する位置ずれを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−271647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記他の従来例では、図5(b)に示すように、結束バンド80の締結力F1がチューブ70の反発力F2に相殺されるか、あるいは、一部相殺されて実質的に小さい締結力しかチューブ70と電線束50間に作用しない。従って、チューブ70の内面が電線束50の各電線Wに密着しなかったり、非常に小さい密着力しか作用しないため、チューブ70が電線束50に対して容易に位置ずれするという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、端子圧着作業が容易にでき、しかも、チューブが電線束に対して位置ずれしないチューブ固定構造及びチューブ固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の電線からなる電線束を内部に収容し、前記電線束の外径より大きな内径を有するチューブと、前記チューブの外周に巻き付けて締結する結束バンドとを備え、前記チューブに内周側に窪む窪み部を形成し、前記窪み部によって前記電線束との隙間を無くした前記チューブの外周に前記結束バンドを巻き付けて締結したことを特徴とするチューブ固定構造である。
【0009】
他の本発明は、複数の電線からなる電線束の外径より大きい内径のチューブ内に、前記電線束を挿入するチューブ被覆工程と、前記チューブに内周側に窪む窪み部を形成し、前記窪み部によって前記電線束との隙間を無くした前記チューブの外周に結束バンドを巻き付けて締結するバンド締結工程とを備えたことを特徴とするチューブ固定方法である。
【0010】
前記電線束は、両端に端子をそれぞれ固定した複数の電線からなり、前記チューブの内径寸法は、複数の前記電線に固定した端子群の外径寸法より大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、チューブの内径が電線束より大きいために、予め端子を固定した端子付きの電線からなる電線束をチューブに通すことができるため、端子圧着作業が容易にできる。また、チューブに内周側に窪む窪み部を形成し、電線束との隙間を無くした状態で結束バンドを締結するため、チューブの内面が電線束の各電線に密着し、チューブが電線束に対して容易に位置ずれしない。以上より、端子圧着作業が容易にでき、しかも、チューブが電線束に対して位置ずれしない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)はチューブ固定構造の斜視図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、チューブ固定工程を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、チューブ固定工程を示す断面図である。
【図4】従来例を示し、(a)はチューブ固定構造の斜視図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図5】他の従来例を示し、(a)はチューブ固定構造の斜視図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図3は本発明の一実施形態を示す。図1(a)、(b)に示すように、チューブ固定構造は、電線束1を内部に収容するチューブ10と、このチューブ10の外周に巻き付けて締結する結束バンド20とを備えている。
【0015】
電線束1は、複数の電線Wからなる。各電線Wの両端には、端子2が圧着によってそれぞれ固定されている。両端の端子2群は、コネクタ3,4にそれぞれ接続される。
【0016】
チューブ10は、その内径が電線束1の外径より大きい。より詳細には、チューブ10の内径は、複数の電線Wに固定した端子2群の外径寸法より大きい。チューブ10は、電線束1の全長とほぼ同等の長さであり、電線束1の全長をほぼ被っている。チューブ10の一箇所には、内周側に凸状に撓み変形させることによって窪み部11が形成されている。この窪み部11を形成したチューブ10の箇所は、内部の電線束1との隙間を無くした状態に変形されている。
【0017】
結束バンド20は、チューブ10の窪み部11の外周箇所に巻き付けられている。結束バンド20は、その締結力によって窪み部11の変形状態を保持している。従って、チューブ10の内面は、電線束1の各電線Wに密着している。
【0018】
結束バンド20は、ワイヤハーネス結束用のものである。結束バンド20は、チューブ10の外周に巻き付ける帯状のバンド部21と、バンド部21をチューブ10に巻き付けた状態で固定するバンド固定部22とを備えている。
【0019】
次に、チューブ固定方法を説明する。電線束1を構成する各電線Wの両端に端子2をそれぞれ圧着によって固定する(端子固定工程)。
【0020】
次に、図2に示すように、チューブ10内に端子2付きの電線束1を挿入する(チューブ被覆工程)。チューブ10は、その内径が電線束1の外径より大きく、且つ、複数の電線Wに固定した端子2群の外径寸法より大きいものを使用する。
【0021】
次に、図3にて矢印で示す方向にチューブ10を押圧し、チューブ10に内周側に窪む窪み部11を形成する。この窪み部11によって電線束1との隙間を無くした状態とし、チューブ10の窪み部11の外周箇所に結束バンド20を巻き付けて締結する(バンド締結工程)。
【0022】
このようにして作製したチューブ固定構造は、チューブ10の内径が電線束1より大きいために、予め端子2を固定した端子2付きの電線束1をチューブ10に通すことができるため、電線束1をチューブ10に収容する前に端子固定作業ができるため、端子固定作業が容易にできる。また、チューブ10に内周側に窪む窪み部11を形成し、窪み部11によって電線束1との隙間を無くしたチューブ10の外周に結束バンド20を締結するため、チューブ10の内面が電線束1の各電線Wに密着し、チューブ10が電線束1に対して容易に位置ずれしない。以上より、端子圧着作業が容易にでき、しかも、チューブ10が電線束1に対して位置ずれしない。
【0023】
チューブ10の内径寸法は、複数の電線Wに固定した端子2群の外径寸法より大きい。従って、端子2付きの電線束1をスムーズにチューブ10内に挿入できる。
【0024】
結束バンド20は、ワイヤハーネス結束用のものを使用しているため、ワイヤハーネスの配策作業で使用する部品を利用してチューブ10を固定できる。
【符号の説明】
【0025】
1 電線束
2 端子
10 チューブ
11 窪み部
20 結束バンド
W 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線からなる電線束を内部に収容し、前記電線束の外径より大きな内径を有するチューブと、前記チューブの外周に巻き付けて締結する結束バンドとを備え、
前記チューブに内周側に窪む窪み部を形成し、前記窪み部によって前記電線束との隙間を無くした前記チューブの外周に前記結束バンドを巻き付けて締結したことを特徴とするチューブ固定構造。
【請求項2】
請求項1記載のチューブ固定構造であって、
前記電線束は、両端に端子をそれぞれ固定した複数の電線からなり、
前記チューブの内径寸法は、複数の前記電線に固定した端子群の外径寸法より大きいことを特徴とするチューブ固定構造。
【請求項3】
複数の電線からなる電線束の外径より大きい内径のチューブ内に、前記電線束を挿入するチューブ被覆工程と、
前記チューブに内周側に窪む窪み部を形成し、前記窪み部によって前記電線束との隙間を無くした前記チューブの外周に結束バンドを巻き付けて締結するバンド締結工程とを備えたことを特徴とするチューブ固定方法。
【請求項4】
請求項3記載のチューブ固定方法であって、
チューブ被覆工程前に、電線束を構成する各電線の両端に端子をそれぞれ固定する端子固定工程を行い、
チューブ被覆工程では、前記チューブは、その内径が複数の前記電線に固定した端子群の外径寸法より大きいものを使用したことを特徴とするチューブ固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−249359(P2012−249359A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116987(P2011−116987)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】