説明

チューブ束反応器

【課題】チューブ束反応器内の温度プロフィルを正確に測定する方法を提供する。
【解決手段】触媒が充填され、チューブ鏡板3,4へ固定された両端を有する反応チューブの束と、作動中該チューブのまわりを流れる媒体10と、チューブ束を囲むシェル5と、反応チューブと流体連通にあり、チューブ鏡板の一方を差し渡すガス入口ヘッド6と、反応チューブと流体連通にあり、チューブ鏡板の他方を差し渡すガス出口ヘッド7と、チューブ束内に配置された温度計チューブ2内に設置された少なくとも1個のステージ温度計9をさらに含んでいる、吸熱または発熱気相反応用のチューブ束反応器において、少なくとも1個のステージ温度計9は温度計チューブ2内部を軸方向に動くことができ、そしてチューブ束反応器1はステージ温度計9の軸方向運動を実行するため機械的位置決め手段8を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に規定したチューブ束反応器に関する。本発明はまた、述べた種類のチューブ束反応器内の温度プロフィルを測定する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
充填床反応器の特別のタイプとしてのチューブ束反応器は、特に酸化、水素化、脱水素化、ニトロ化、アルキル化プロセスのような不均質気相接触反応を実施するために化学工業において成功している。問題の種類のチューブ束反応器は、垂直に配置された反応器チューブの束を含んでいる主反応器部分を含む。通常顆粒状の触媒、そしてもし望むならば不活性材料が、上方および下方チューブ鏡板にぴったり固定されたそれらの端部を有するこれら反応器チューブに収容される。チューブ束は反応器シェルによって囲まれる。反応は吸熱または発熱反応であり得る。反応ガス混合物はそれぞれのチューブ鏡板を差し渡す反応器ヘッドを通って反応器チューブ中へ供給され、そして生成ガス混合物として他のチューブ鏡板を差し渡す反応器ヘッドを通って反応器チューブから排出される。
【0003】
安定な反応条件は、反応器チューブの外表面のまわりを熱媒で循環させ、それによって最良可能な熱移動を保証することによって確立される。相変化なしで熱媒を用いる時、それが反応器チューブを横断する方向に流れるならば実際に最良の熱移動が得られる。今日ではしばしば30,000本またはそれ以上の反応器チューブを含んでいる大型のチューブ束反応器の場合、リング形チューブ束を通って曲がりくねって流れるように環状またはディスク形状邪魔板によって案内される。放射方向に均一な熱移動は、例えばEP1569 745 A1に記載されている特徴によって達成することができる。流れ案内エレメントの対応する設計により、または例えばDE2201 528 B1に従った追加の熱媒回路によって得られる流れの適当な案内は、特定のプロセスを考慮して最適化された温度プロフィルを反応器チューブに沿って調節することを許容する。
【0004】
反応器の外の循環手段は、反応器周縁のまわりのリングチャンネルを通って熱媒が分布し、熱媒は多数のシェル開口を通って反応器のシェル空間中へ流れる。反応器から出て行く加熱された熱媒は反応器の外に配置されたクーラーによって冷却される。
【0005】
反応器中の反応の経過を判定し、そして生成物品質および変換率に関して反応プロセスを最適にコントロールするため、触媒ベッド内の温度を軸方向に検出することが不可欠である。多数の接触気相反応、特に接触部分酸化反応では、増大した熱発生が反応器チューブの当初のゾーンで起こり、そのゾーンを最高の温度、いわゆる「ホットスポット」にする。ホットスポット温度を知ることは、許容できる温度を上廻った場合にプロセスを変更できるように操業において極めて重要である。さもなければ触媒が損傷され、変換率、選択性および収率の損失を招来するであろう。
【0006】
技術的測定費用を合理的限界に保つことができるように、反応器チューブの一部のみの温度が測定される。モニターされない反応器チューブの状態は管理されたチューブの状態から誘導される。これはいわゆる温度計チューブを使用して達成される。それらは測定機器を含んでいる。これらは温度が触媒ベッド中の流路に沿って測定される場所にある触媒で充填された反応器チューブである。
【0007】
温度を測定するために本質的に二つの方法が適用される。原則として、両方法とも温度計チューブの中心に保護チューブが挿入される。次に、保護チューブの外壁と温度計チューブの内壁の間の空間に触媒が充填される。保護チューブは所定位置に維持される。その後温度計が保護チューブ内に挿入される。温度計は種々の物理的原理に従って作動し、そして一以上の個々の温度測定点を含むことができる。最も多用されている具体例は抵抗温度計および熱電対であり、後者が好ましい。熱電対は少しのスペースしか必要としないので、複数の個々の温度測定ポイントを軸方向に提供することができる。
【0008】
第1の方法の場合、温度測定手段は、保護チューブ内を軸方向に移動する単一の温度計よりなる。この方法は、単一の温度計のみを必要とするため、保護チューブの直径を非常に小さく(例えば3.2mm以下)に選ぶことができる利益を有する。この態様において反応器チューブ内で進行している反応プロセスへの影響を最小にすることができる。温度計は反応器チューブに沿ったどの所望の場所へも動かすことができ、それにより温度測定の場所および数を進行している反応に対してすべての時間に適応化することを許容する。
【0009】
実際、この方法は反応器チューブの全長に沿って全温度プロフィルを一貫して検出することを許容する。しかしながら、対応する装置も大体反応管チューブの全長でなければならず、そして特別の案内手段を必要とし、そのためそれを機械的に非常に敏感にする。この理由のため、この方法は小規模の研究室およびパイロット反応器のみに関して適用される。さらに温度計を各測定位置においてしばらく静止させ、新しい測定位置の温度を取らしめなければならないため、静止した作業条件についての温度プロフィルしか測定することができない。
【0010】
もし、例えば温度計が反応器のスタートアップの間に、またはプロセスパラメータの変動時に温度計チューブの一端における温度を測定したとすれば、他端における温度は最初の測定と比較して完全に変っていることがあり得る。もしすべての測定をあまり急速に実施したならば、どの測定点においても温度適応化期間が短じか過ぎるため、結果はどの点の温度も正確に測定されていないことになる。その上、動くことができる温度計は設置および作動において敏感であり、費用がかかる。それ故この方法は大規模の商業的チューブ束反応器の使用には適していない。
【0011】
第2の方法では、固定した均等または不均等間隔に軸方向に配置された複数の温度計が保護チューブ中へ導入される。この具体例で好ましい温度計は熱電対である。機械的保護のため、複数の温度計がしばしば1本の熱保護チューブ中に配置される。温度計のこの多数軸方向配列は、しばしば“多数ポイント温度計”またはSTMと略称される“ステージ温度計”と称される。STMはすべての測定位置の温度を同時に供給する。マークした極端温度位置を含んでいる反応のため、温度計は臨界的範囲をできるだけ正確にカバーするように、各自小さい間隔で通常置かれる。
【0012】
STMの使用を含んでいる第2の方法は、多数の温度計のために一定の断面積を必要とし、その結果周囲の熱保護チューブの直径が移動し得る単一温度計を使用する第1の方法の場合よりも大きい点において不利益である。保護チューブの直径が大きくなるにつれ、温度計チューブの内部の発熱反応からの熱の放出が減少し、それ故、そこで測定された温度は温度測定機器を供給されていない反応管チューブ中の温度に対応することが少なくなる。
【0013】
他の不利益は、STM内部の二つの軸方向に隣接する温度計の間の温度に関する情報が提供されないことである。この状況はより小さい間隔によって改善し得るが、しかしこの欠点は除去されない。何故ならば、ホットスポットの区域は比較的小さく、約10mmないし60mmの長さを持ち、そのためそこはカバーされないままであり得るからである。加えて、触媒は経時的に劣化し、そしてホットスポットが隣接する温度計の間の間隔が大きいゾーンへ移動することを発生し得る。
【0014】
どちらの方法においても、それぞれ熱保護チューブおよび保護チューブの可能な限り小さい直径を見出し、そのため温度測定設備なしの反応器チューブ内と実質的に同じ条件をつくり出すことが試みられた。さらに温度計チューブの直径、そしてそのため充填触媒を収容する環状空間の直径は、STMの保護チューブによって占領されているチューブ断面積を或程度補償するように拡大することができる。
【0015】
チューブ束の放射方向における異なる温度状況の概観を得るため、チューブ断面を横切って代表的ファッションで温度計チューブを分布することが慣例である。
【0016】
ステージ温度計の簡単な構造具体例は、例えばUS4075036BまたはDE102005023869A1(US7175343B2に同じ)に記載されている。これら二つの発表と対照的に、US4385197Bに従った具体例の個々の熱電対は熱伝導性スプリングによって保護チューブの壁へ接続することができる。そのような設計のためにはむしろ大きい直径が必要であり、それ故スペース要求は大きい。それらは反応が生起する温度計チューブ内の設置には適していない。
【0017】
チューブ束反応器中のステージ温度計の使用は、例えばEP1484299A1に記載されている。この文献に記載されている方法によれば、ステージ温度計が温度計チューブ内に配置された保護チューブ内へ導入され、種々の固定点において温度を測定する。個々の温度計の間隔はすべて同じか、または当初ゾーンにおいてより小さくすることができる。このステージ温度計は、温度計チューブ中へ設置のため堅固にビルトインされるのではなく挿入し得る点で可動である。一旦挿入されると、個々の温度計はチューブ全長に分布され、そしてチューブに沿った固定位置に付属する。作動において、温度は専らこれら固定位置において測定され、移動は行われない。
【0018】
ステージ温度計は通常ステージ熱電対として設計される。その設計の多種類が種々の製造者によって提供されている。
【0019】
EP0873783A1は、チューブ束反応器と、このチューブ束反応器内の温度、固体粒子と自由断面積の間の関係、そして温度計チューブおよび温度計設置なしの反応チューブの圧力損失を測定する方法を記載する。これは異なる寸法および/または異なる形状の固体粒子によって得られる。どちらにも適した温度測定手段は、ともにそれぞれの保護チューブ内に提供された軸方向に移動可能な個々の熱電対か、または固定測定位置を有するステージ温度計である。
【0020】
同様な方法がそこから請求項1の前文が出発するEP1270065A1に記載されている。この方法により、等しいサイズの固体粒子を反応器チューブと温度計チューブへ充填し、そして温度計チューブへより低いスピードで固体粒子を供給することによって、反応器チューブと温度計チューブにおいて等しい圧力損失が得られる。この方法は温度計チューブだけでなく、圧力測定手段にも提供される。この測定手段は、任意にチューブ軸上の保護チューブ内に配置され、そして軸方向に動くことができるか、またはEP0873783A1に記載されているように、固定間隔において多数に提供される。この測定手段は温度計チューブの内壁上の振動バンパーによって支持される。
【0021】
US4342699B1は、段階的に上昇する触媒活性および気体を円形に案内する特別な方法を使用する、無水マレイン酸の製造プロセスを記載する。選択された反応器の記載中において一般的な参照は温度計チューブの使用になされている。温度が測定される方法は詳細に特定されていない。クレームした方法の特異的効果を証明するために行われたテスト配置においては、保護チューブ内に取付けられた軸方向に動き得るステージ熱電対を含んでいる単一の反応器チューブが使用されている。この動くことができるステージ熱電対は単一反応器チューブを備えたテスト反応器に関してのみ知られ、その構造または作動に関し詳細は与えられていない。
【0022】
WO00/17946A2公開は、反応の熱逃亡をそれによって認識することができるチューブ束反応器内の操作を紹介する。この操作は反応器へ個々のまたはステージ温度計を含んでいる複数の温度計チューブを供給することに存する。これらの温度計チューブの一部はそれを通る流速を減少するためのスロットル部材を備える。スロットル部材を含んでいる温度計チューブは反応熱を少ししか消散させることができないので、それらはスロットル部材を備えない温度計チューブよりももっと速く反応熱の逃亡を明らかにする。反応は所望の反応条件で実施される。温度計チューブの二つのタイプの温度プロフィル間の差の比較は、反応の熱逃亡の指示があるかどうかを告げることができる。
【0023】
この方法は、温度計チューブ中の反応が、単にそれらによって流速が減じられ、一方すべての他の反応器チューブ中の反応は正常なコースに従う故に逃亡し得ることにおいて不利である。これは利用性を低くする。さらに、STMを備えた個々の温度計間の温度に関する情報を欠いている。それ故得られる温度プロフィルは真に代表的ではない。
【0024】
熱シートメタルプレートを含む反応器を使用する移動し得るステージ温度計がWO2005/063371A1から知られている。ここでは2枚の熱シートメタルプレート間の各ギャップの高さ全体に分布された一以上の測定位置において決定された温度が反応をモニターし、コントロールし、および/または調節するためのコントロール信号として選ばれる。一具体例においては、2枚の熱シートメタルプレート間に配置された保護チューブ内のステージ熱電対が存在する。このステージ熱電対は、好ましくは等間隔の測定点が与えられ、そして温度プロフィルの測定のため保護チューブ内を連続的に移動するのに適合される。このステージ熱電対が移動される態様、特に工業的な商業的反応器中での態様については全く説明されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、本発明に従って、請求項1の特徴を備えた前文に特定されたチューブ束反応器によって満たされる。上記目的は請求項22に記載された方法によって同様に満たされる。
【0026】
好ましい具体例は従属項に提供されている。
【0027】
本発明に従った測定は、機械的作動手段を有するコンパクトな測定機器を使用して、固体ベッド中のおよび/または熱媒中の温度プロフィルを流れ方向において高い解像度において決定することを許容する。ステージ測定温度計(STM)の使用のため、全体の測定範囲に沿った全温度プロフィルを記録するための運動経路が二つの隣接する温度計X(TM)の間の間隔へ減らされる。
【0028】
温度計チューブへ機械的アクチュエーターの提供は、複数の温度計チューブにおいて、多数の精密な代表的温度の同時測定ばかりでなく、これらの温度測定を反応器上に直接配置されていないコントロールセンターから達成することを可能とする。
【0029】
軸方向および放射方向の詳細な温度分布の同時提供可能性(複数の温度計チューブがチューブ束全体に放射状に配置された場合)は、測定を容積流れまたは濃度へ変更するような急速な行動を取ることを提供する。
【0030】
粒子ベッドは少なくとも妨害しか蒙ることがなく、そのため粒子ベッド中で起きている反応に対する影響は少なく、そして保護チューブの選ばれた直径が小さくなるにつれ次第に少なくなる。この文脈において、温度計の実現可能な数および機械的位置決めユニットの作業経路(すなわち移動)のそれぞれの延長の限界を考慮に入れなければならない。
【0031】
本発明に従ったチューブ束反応器は、役目が第1に種々のプロセスを研究し、そしてそれらのパラメータに関して最適化することである研究室または技術研究所における反応器とは対照的に、通常大量の生産物を取得する商業的に有用な生産反応器を代表する。
【0032】
特に、本発明に従ったチューブ束反応器は、接触気相反応の実施に適している。このことは単一また多数ゾーン設計に関して制限なしでそのとおりである。
【0033】
また、本発明に従ったチューブ束反応器に関し、反応器直径の通常の寸法、反応器高さ、配置、チューブの直径、熱媒の案内または熱媒のタイプに制限はない。
【0034】
本発明に従ったチューブ束反応器に関し、反応器を循環する熱媒に制限はない。基本的にはどの知られた熱媒、例えば熱媒オイルを使用することができる。しかしながら好ましい熱媒は熱媒塩である。選択は所望の最適プロセス温度によって決定される。熱媒は反応器の外側に配置された循環手段によって供給され、そして次に反応器周囲のまわりの環状ダクトを通って分布され、そこで複数のシェル開口を通って反応器内のシェル空間中へ流入する。シェル中のこれの窓は、例えばDE1601162A2に従って、環状ダクトおよびシェル開口を通る通路中の流れからの圧力損失の合計が流れのすべての分流についてコンスタントになるように寸法決めされる。このことはシェルの周囲のまわりの熱媒の均一な分布と、そしてチューブ束反応器のシェル空間へ均一な放射方向進入を保証する。測定可能な圧力損失から誘導される断面寸法の決定は、チューブ束反応器の出口におけるシェル開口を通って出て行く熱媒にも同じように適用される。流体力学の知られた法則を適用して、入口端のシェル開口は流れ方向に次第に小さくなり、他の出口端のシェル開口は流れ方向に次第に大きくなる。この原理は、WO2006/118387A1において、流れをさらに均等化するための均一なスリット開口を有する追加スリットによって補完される。反応器を出て行く加熱された熱媒は反応器の外に所在するクーラーによって冷却される。この多種類の構造上の対策が最適な操業のための基本的条件を提供する。
【0035】
チューブの本数は通常1,000ないし45,000の間、好ましくは10,000ないし40,000の間、特に好ましくは20,000ないし38,000の間にある。チューブの長さは2mないし18mの間、好ましくは3mないし16mの間、特に好ましくは4mないし10mの間の範囲にある。原則として、反応器チューブの内側から反応器チューブのまわりを流れる熱媒への熱移動は反応器チューブ直径が小さければ小さい程良くなる。触媒ベッドのための与えられた断面積において、このことは勿論チューブの数およびそのため投資コストを増大する。反応器チューブ直径を拡大すればする程、反応チューブの必要本数および投資コストが低くなる。しかしながら他方、反応器チューブ内部から反応器チューブ壁への熱伝導が影響され、そしてその結果温度が上昇し、それによって転換率、選択性および収率が低下するか、および/または触媒が損傷される。反応器チューブ直径の最終的選択はそれぞれのプロセスに大きく依存する。反応器チューブの内径は16mmないし50mm、好ましくは20mmないし40mmの間の範囲にある。また110mmまでのより大きい直径もある種の反応のためには有益であることが証明された。
【0036】
チューブ束反応器デザインは、単一ゾーンまたは多数ゾーン構造でよい。多数ゾーン構造においては、少なくとも一つの水平パーティションが熱媒スペースを少なくとも二つの別々の熱媒スペースに分割し、その中の温度を互いに異なるように調節することができる。それぞれのプロセスの最適な適応化は、反応器チューブおよび温度計チューブへそれぞれゾーン当り異なる適切な充填を提供することによって得られる。複数の別々の熱媒スペースを得る他の可能性は、例えば二つの反応器をそれらのチューブ鏡板が互いに反対になるように直接、またはその間に小さい距離を置いて連結することである。熱媒スペースのさらなる分割は、もし全体のプロセスが直列に連結した、またはパイプラインによって相互接続された複数のチューブ束反応器によって実施される場合に得られる。
【0037】
本発明は温度測定原理に対して何ら限定を課すものではない。例えば、DIN43710およびDIN EN 60584に規定されているすべての熱電対が、それぞれのプロセス条件に応じて好適である。DIN EN 60584に従ったタイプKの熱電対が好ましい。その上他の物理的温度測定原理、例えばPT−100またはPT−1000のような白金抵抗温度計、抵抗温度計、または半導体センサーを適用することができる。しかしながら本発明に従い、ステージ温度計は好ましくはステージ熱電対として設計される。そのようなステージ熱電対の広く使用されている具体例は、並列に配置されそして長さの異なる複数の個々の熱電対から構成される。各自の個々の熱電対は評価ユニットへのそれ自身のリード線を有する。熱電対は、それらの自由端で接続した2本の異なる熱電線を有する特別の種類の温度計である。接続点において支配的な異なる温度が温度測定のために利用することができる電流を発生するであろう。
【0038】
反応器チューブ中の反応温度のコントロールおよび/またはモニタリングのため、以後KAT温度計チューブと称される、触媒を充填したある数の温度計チューブが反応器断面全体に分布される。この態様において反応器中温度が軸および放射方向において可能な限り正確に検出されることができる。そのような温度計チューブの本数は、問題のプロセスの要求、特定の構造デザイン、および反応器チューブの総本数に依存し、そしてプラントオペレータによって決定される。軸方向に移動可能なSTMをこれら温度計チューブの一部だけに用い、他のものに静止STMを用いる理由があり得る。しかしながら本発明によれば、静止STMまたは軸方向移動可能STMを含む温度計チューブの総本数の軸方向に移動可能なSTMを含む温度計チューブのシエアは100%より少なく、好ましくは50%より少なく、特に好ましくは10%より少ないが、しかしどんな場合でも少なくとも1本はそのようなチューブである。
【0039】
触媒を充填した温度計チューブは、その中に温度測定手段が設置されているため反応器チューブとは異なる流れ断面積を有する。反応のコースに対するその影響は避けられない。それ故そのような温度計チューブ内で測定した温度は反応器チューブ中の温度に精密に相当することは決してあり得ない。この理由により、そのような温度計チューブにおいて測定した値の偏差を最小化する試みにおいて多数の知られた対策が取られる。
【0040】
STMは軸方向に自由に動き得るように保護チューブ内に配置され、案内される。保護チューブは、温度計チューブ内の温度が軸方向に、通常触媒サポートの範囲内で、できるだけ完全に測定し得るように、温度計チューブ内にできるだけ深く挿入される。保護チューブをチューブ軸上に放射方向に実質的に心合わせするため、商業的に入手し得るスペーサーまたは心合わせ手段が提供される。選択された好ましい具体例は、流れおよび粒子ベッドに対して最小の影響を有するものであり、これらは特にばね、特に外側へ向いた直線または曲がったばねを有するらせんばねである。原理的にはSTMは下から反応器チューブへ導入し得るが、保護チューブを触媒支持体を通って押さなければならない不便さを含んでいる。この理由でSTMを含む保護チューブは上から温度計チューブへ導入するのが好ましい。
【0041】
好ましくは、保護チューブ内のSTMは熱保護チューブ内に設置され、そしてこの熱保護チューブが保護チューブ内を自由に動くことができる。
【0042】
保護チューブ内側の温度計は敏感な測定機器である。それは機械的安定性を与え、そして運動の間機械的損傷から保護するために軸方向に可動な熱保護チューブ内に配置される。保護チューブの内壁からの熱保護チューブの距離は、保護チューブにおいて支配的な温度が最も正確にそして遅れなしに検出できるようにできるだけ小さくなるように選定される。それにも拘らずこの間隔は熱保護チューブが保護チューブ中を自由に動くのに十分な大きさである。
【0043】
もしステージ温度計STMが熱保護チューブ内において軸方向に間隔をあけて位置する複数の温度計の温度測定ポイントを持つべきならば、個々の熱電線は相互に関して、そして隣接する温度計から絶縁されなければならない。加えて、変形および損傷に対する機械的安定性が熱電線に必要である。これは各温度計を熱スリーブで囲むことによって達成される。熱スリーブの内側には熱電線が相互にそして熱スリーブの壁から電気的に絶縁される絶縁材料が存在する。
【0044】
一旦保護チューブが設置されると、触媒粒子、そしてもし望むならば不活性粒子が温度計チューブ中へ人力で充填される。取付けを容易にするため、本発明に従えば、保護チューブはチューブ鏡板と機械的位置決め手段の間の取外し自在な接続によって固定される。そのような取外し自在接続は、例えばフランジ、クランピングリング、カッティングリング、またはバイオネットタイプリングによって提供することができる。
【0045】
温度計チューブ内の中心に配置された時、保護チューブは追加のチューブ壁を提供する。その結果、壁に沿った可動性(壁効果)が大きくなり、一方壁の間の触媒または不活性材料粒子のかさ密度が減少する。そのすべてが反応のコースに影響する。この理由のため、温度計チューブ内の保護チューブの影響を制限する観点からできるだけ小さい保護チューブ直径が目指される。STMが移動自在である事実は、慣用のSTMが複数の測定点にアドレスすることを可能にし、それによって設備を節約することができる。より少ない本数の温度計に鑑み、STMに対して要求される全体の断面積はより小さくなる。その結果、熱保護チューブの直径と、そしてそれと共に保護チューブの直径も減らすことができる。それにも拘らず、もし多数の熱電対が選ばれるならば、隣接する温度計間の軸方向距離が減らされる。作業移動経路が小さくなり、機械的位置決め手段が小さくなり、そして解像度が増大する。他方、温度計チューブと反応器チューブ中の流れの間の差がもっと明白となる。どの場合でも、固定位置のSTMの場合よりも少ない数の温度計を同じ数の測定ポイントのために選ぶことができる。各々の個々のケースにおいて、熱電対の数および間隔の利益および不利益を比較しなければならない。例えば、チューブ長さ、機械的位置決め手段の構造上の寸法、または保護チューブの断面積と反応器チューブの流れ断面積の間の比を考慮に入れなければならない。
【0046】
個々の温度計とまわりの保護チューブの間の熱伝導接触が望ましいが、この具体例において小さい放射方向寸法に鑑み、これは小さな役割しか果さない。小さい壁厚と本発明に従った具体例のギャップ寸法のため、急速な熱移動が得られる。これは熱輻射によってさらに増強され、これは摂氏数百度のオーダーの温度において重要性を獲得する。
【0047】
温度計は、標準化されたタイプの温度計のシリーズから、例えば直径0.25mm,0.34mm,0.5mm、および1.0mmを含むセレクションから選ぶことができる。直径が大きければ大きい程、温度計の安定性および寿命が大きくなる。小さい直径では、熱保護チューブ内により多数の温度計を収容することができる。直径0.2ないし0.4mmを有する温度計が好ましい。
【0048】
1個のSTM中の個々の温度計の本数は、温度計チューブの長さ、所望の解像度、粒子移動による許容し得るエラー、および温度計の提供可能な最小直径に依存する。より少ない本数の温度計はより低いSTMコストを意味する。他方、機械的位置決め手段はより大きくなければならず、もっと高価になる。反対により多い本数の温度計は短い作業移動経路を意味し、そしてその結果対応してより小さい寸法の機械的位置決め手段およびより低いコストを意味する。本発明によれば、ステージ温度計は2から50の間の、好ましくは4から40の間の、特に好ましくは6から30の間の、そしてもっと好ましくは8から21の間のオーダーの数の温度計を含む。
【0049】
温度計の直径および本数に依存して、熱保護チューブの直径は好ましくは2.0mmから4.0mmの範囲内にある。熱保護チューブの壁厚は0.1から1.0mmの範囲内にある。この態様において、例えば0.25mmの直径を有する21個の温度計を3.6mmの外径を有する保護チューブの内側に配置することができる。真にそのようなSTMは取付けるのにデリケートであるが、しかしそれは作動において手荒でよく、そしてそのサービス寿命はより大きい直径の温度計を供給されたSTMの寿命に匹敵する。
【0050】
STMがその中に導入される保護チューブは、3.0mmから8.0mmまでの範囲の、好ましくは3.2mmから6.0mmまでの範囲の外径を有する。壁厚は0.5mmないし1.5mmの範囲、好ましくは0.8mmないし1.2mmの範囲にある。その好ましい位置は、温度計チューブ内の放射方向中心である。温度計チューブの内壁からの均一な距離はスペーサーによって確立される。スペーサーは市場で入手し得るどの種類でも良い。好ましいスペーサーはスプリングのタイプ、例えばチューブ状内壁において終っている両端において接線方向に延びる先端を有するらせんスプリングである。そのような構造は破損できず、容易に適応可能であり、装着が容易であり、そして実際上触媒粒子の充填を妨害しない利益を有する。プラントオペレーターが彼の基準に従って温度計の本数を特に決定する人である。
【0051】
上で記載したように、温度計チューブに比較して可能な限り最小の直径の保護チューブの選択は、可能な限り少ない流れの妨害を招来することを意味する。けれどもこの値は決してゼロにはならない。それ故触媒ベッドのタイプをこの分野で知られた方法から、温度計チューブ内と反応器チューブ内の反応条件が最大に似ているように選ぶべきである。
【0052】
触媒および不活性粒子は、それぞれの反応を考慮して選ばれる。反応は発熱でも吸熱でもよい。適当なプロセスの例は、酸化反応、部分酸化反応、脱水素反応、水素化、酸化脱水素である。部分酸化反応の中で、O−キシレンからの無水フタル酸、プロペンまたはプロパンからの(メタ)アクロレイン、および/または(メタ)アクロレインからの(メタ)アクリル酸を特に挙げなければならない。それらの性格に依存して、これらのプロセスは単一ゾーン反応器中、多数ゾーン反応器中、または直列に接続した複数の反応器中で実施することができる。
【0053】
それぞれこれらのプロセスに使用される触媒および不活性粒子は、形状に関して制限されない。粒子の頻繁に使用される形状はラシヒリングタイプ、ポールリングタイプ、サドルまたは球形の粒子である。これらは固体タイプの触媒を使用して製造され、すなわち触媒は触媒材料で全体が構成される。しかしながら経済的理由のため、それらはしばしばいわゆるシェルタイプ触媒によって置き換えられる。後者は担体の表面に公知方法に従って適用された触媒活性コーティングを持っている。使用のために好ましい粒子は、与えられたチューブ内径についてできるだけ低い圧力損失においてできるだけ最大の表面積を有し、他方同時にチューブの内壁へできるだけ最良の熱移動を提供する粒子である。この触媒材料のための担体はセラミックまたはステンレス鋼製である。反応器チューブを機械的に充填することは通常可能であるが、温度計チューブは原則として手で充填される。反応器チューブおよび温度計チューブの充填による圧力損失は公知の方法によって相互にハーモナイズされる。
【0054】
保護チューブ中に収容されているステージ温度計は、測点位置から測定位置へ位置決め手段によって好ましくは自動的に動かされる。位置決め操作の自動化は、機械的位置決め手段の頻繁なマニュアルコントロールのためのSTMへのアクセスが不適当である多数の温度計チューブを備えた大型の商業的生産反応器にとって特に利益である。本発明によれば、オートメーションは遠隔コントロールセンターへ測定した値を伝送する遠隔伝送手段をSTMへ提供することによって達成される。コントロールセンターは受信手段を備え、そして測定信号を処理し、機械的位置決め手段を制御するための手段を備える。
【0055】
機械的位置決め手段のタイプには制限はない。それは空気圧または油圧駆動手段によって具体化することができ、またはトランスミッション歯車またはスピンドルを介して作動する駆動モータを使用してもよい。本発明の場合はステッピングモータが使用される。ステッピングモータは好ましくはリニアモータである。このタイプの装置は位置決めを実行するのは駆動ユニット自体であり、そのためトランスミッションも歯車も必要としない点で有利である。この機械的位置決め手段の特徴は、それを複数のステップを通じて駆動することができ、そして位置をマニュアルコントロールおよび/またはコントロールプログラムによって保持することである。換言すれば、構造によって定められた作業経路内のどの点へも到達することができる。
【0056】
本発明に従ったステージ温度計は、少なくとも触媒が充填された温度計範囲において完全な温度測定を達成するように設計される。触媒範囲は、通常熱媒によって冷却されるチューブ部分内をひろがる。もしこのチューブ部分がn個のセクションを含むならば、少なくともn個の温度計が必要である。それらは作業経路を触媒区域の一端から他端へ動かされる。さらに、照合測定を提供するために追加の温度計を他端に取付けることができる。
【0057】
もし必要であれば、ステージ温度計の個々の温度計を他の温度計よりもホットスポットの区域内によって小さい間隔で配置することも考えられる。この態様において、隣接する温度計の区域が多数回測定を受けることになる。作動の冗長モードは種々の温度測定の比較を許容する。
【0058】
本発明の有益なさらなる発展において、機械的位置決め手段は、ステージ温度計の最大作業経路(xmax)が温度計間隔x(TM)の300%、好ましくは200%まで、特に好ましくは100%の長さであるように設計される。この設計は、例えば最大作業経路と温度計間隔の間に100%合致が存在する場合、隣接する温度計間の温度計間隔の少なくとも両端において二重の測定が提供される利益を有する。もし測定値が同じであれば、測定機器は良好に作動していると想定することができ、そして測定結果は非常に信頼することができる。もしある一つの測定点において測定した値に大きな差があったならば、測定機器の性能が貧弱であるか、またはそれらが故障しているか、またはプロセスが静止していない。このように装置自体は自己モニタリング性を持っている。
【0059】
機械的位置決め手段は爆発可能な雰囲気中にしばしば使用される。それ故本発明によれば、起立場所において適用可能な安全性要求に沿って耐爆性につくられる。
【0060】
熱媒の温度を知って置くことは反応のコースをチェックするために有益である。それ故本発明によるチューブ束反応器は、熱触の温度を測定するためのステージ温度計を含んでいる追加の温度計チューブを備える。このSTMは温度計チューブ内の温度は測定しないが、しかし代りに温度計チューブの内壁の温度を測定する。これは、この場合温度計チューブの内部構造が異なることを意味する。二つの温度計チューブを単に区別するため、熱媒温度を測定するための温度計は以後“WT温度計”と称されるであろう。両方の温度計チューブに共通の特徴は、保護チューブ内に挿入され、そしてもし望むならばその中を軸方向に動くことができるSTMを囲んでいる保護チューブである。保護チューブは、ガスがWT温度計中へ侵入することができないように、チューブ鏡板の上面のレベルにおいて上方チューブ鏡板へシールされる。このシーリングは好ましくは取外し自在接続によって得られる。適用される機能原理は、パッキン箱(ハッキン押え)シール、またはチューブの内壁と保護チューブの間の環状隙間を閉鎖するために二つのリングくさびが移動する機構、またはリング形部分を拡張することによって環状隙間を閉鎖するくさびを含んでいる装置、または放射方向外側の力で締めつけるリングねじ接続でよい。
【0061】
最も簡単な具体例においては、WT温度計チューブに使用されるSTMは、触媒ベット内の温度を測定するための上に記載したKAT温度計チューブ内のSTMと同じである。保護チューブとWT温度計チューブの間の空間は、顆粒形のアルミニウムのような良好な熱伝導材料で充填される。この材料は、粒子保護手段を用いて、触媒粒子がKAT温度計チューブに充填されるのと同じやり方でWT温度計チューブへ充填される。充填に続いて、保護チューブは爆発可能ガスがWT温度計チューブにたまるのを防止するためチューブ鏡板へタイトにシールされ、そして反応ガスの温度ではなく熱媒の温度が測定されることを確実にする。下からの生成物ガスがWT温度計チューブへの侵入は、保護チューブと上部チューブ鏡板の間のシールに設けた不活性ガスを導入するための任意のラインによって防止することができる。生成物ガスがWT温度計チューブへ侵入するのを防止する目的のみに対しては多くの流れを必要としない。そのような対策は必要とするすべての部品が知られているので容易に取ることができる。しかしながら、温度計はWT温度計の軸に直角な温度を精密に測定せず、代りに軸に直角な温度の上および下の軸方向の熱伝導から生じた混合温度を測定することが欠点である。
【0062】
熱媒温度の特に正確な測定は、WT温度計チューブ内に配置した案内チューブを設けることによって得られる。熱良導体である弾性エレメントがWT温度計チューブの内壁と熱伝導接触を保つために案内チューブに沿って軸方向および放射方向間隔を保って配置される。温度計自体は弾性エレメント上に配置され、そのため温度の正確な測定を許容する。信号ラインは熱保護チューブの内側を通過し、反応器の外へ出る。保護チューブは好ましくはWT温度計チューブへ、そしてその次の連続する保護チューブ部分へ取外し自在接続によって取付けられる。熱保護チューブも取外し自在な接続によって案内チューブへ取付けられる。
【0063】
もし反応器の軸方向の熱媒の温度差が僅か数℃であれば、移動し得るSTMによって温度を測定することは不相応である。原則として静止STMの使用がそのような場合十分である。
【0064】
保護チューブは好ましくは、ガス入口または出口ヘッドにおいて、特に上部反応器ヘッドを提供するヘッド内で取外し自在に相互接続された少なくとも2部分を含む。
【0065】
もし保護チューブがいくつかの部分に設計されているならば、それは温度測定手段および上部反応器ヘッドの容易な組立ておよび分解を許容する。組立ての間、例えば保護チューブの下方部分が最初に温度計チューブ中へ挿入される。次に多分前もって取付けた上方保護チューブを含んでいる上方反応器ヘッドが反応器の本体上に設置され、そしてそれへ接続される。その後ヘッド保護チューブが上から保護チューブ中へ導入される。機械的位置決め手段が所定位置に設置され、そして熱保護チューブと機械的および電気的接続が形成される。ステージ温度計を含んでいる熱保護チューブと接続とを組立て前に機械的位置決め手段へ接続することも可能である。しかしながら取扱いの理由からそれらを別々に取付けるのが好ましい。記載した取付けステップの間の適当な時点で、KAT温度計チューブおよび反応器チューブ中へ触媒が充填される。分解は反対の順序で同じ操作によって実施される。
【0066】
本発明の有益な具体例によれば、保護チューブは機械的位置決め手段から遠方のその端部において閉鎖される。この対策は製造費用を大きく低減するのに貢献し、このため本発明の工業的利用は一層経済的とする。
【0067】
本発明はまた、本発明に従ったチューブ束反応器中の温度プロフィルを測定する方法に関する。この応用において、用語“温度プロフィル”は、別々の隣接する温度値を呼称するとして理解すべきであり、測定ポイントの間隔(ステップ幅)はランダムであり、そして最小間隔は機械的位置決め手段の精密度に依存する。
【0068】
温度測定の準備を始めるには、STMの構造的特徴が設定される。最初、前記した基準に従って最小測定範囲が決められる。その後、個々の温度計間の間隔x(TM)が決められ、そして個々の温度計の数が決定されるか、または温度計の数が最初に決められ、そして次に個々の温度計間の間隔x(TM)が決められるかの二つの代替的操作がある。これに続いて、測定シリーズの解像度が決定される。これは、Δx=1/nx(TM)として計算されたセクションΔxの大きさによって表される。ここでx(TM)は二つの隣接する温度計間の間隔に等しく、nは1より大きい数である。セクションΔxの大きさは、望みの解像度、位置決め手段の解像度の最大能力、および全測定操作の許容し得る全時間に依存して望むだけ小さく選定することができる。極端な場合、二つの測定位置間の間隔は準連続温度曲線を記録できる程小さくできる。しかしながらこの場合、1回の測定操作が続く合計時間が非常に長くなるであろう。もし全体の時間内で明白なプロセス変動が記録されれば、測定位置の数を減らすか、または各測定位置における停止を短くするか、またはその両方が減らされなければならない。これらパラメータは事前に精密に固定することはできない。それらは特定のプロセスに依存し、そしてめいめいの個々の状況について再決定しなければならない。温度測定データは本発明に従って遠隔のコントロールおよび評価ユニットへ信号ラインを介してまたは無線で伝送される。
【0069】
上に続いて、温度を測定する作業移動幅が上記の基準に従ってセットされる。作業移動幅は好ましくは二つの温度計間の間隔x(TM)の少なくとも100%を含む。測定結果のより良好な信頼性のため、STMの作業移動幅は一つのTM間隔x(TM)より大きい一以上のセクションΔxであるように選定し、それによって二つの温度計の測定範囲を僅かに重ならせることができる。これは二つの隣接する温度計の温度測定の点検のための容易な方法を提供する。設備および評価手段の個々の構成部品もそのように寸法決めされ、装着される。STMを反応器中に装着する前に、STMの個々の温度計が較正される。
【0070】
一旦装着されると、STMは位置コントロールのための参照ポイントとして既知の位置を規定することによって位置決めされる。初期操作においては、温度測定は、STMの端部に配置された温度計が少なくとも触媒ベッドの一端のレベルに配置されるように、機械的位置決め手段によってSTMをスタート位置へ動かすことによって実施される。次に温度が測定のシリーズにおいて取られる。測定の1シリーズ内で取られる個々の作業ステップは常に同じである。
【0071】
最初スタート位置の温度が記録される。もっと詳しくは、これはSTMの温度がもはや実質的に変動しなくなるまで、換言すると温度の変化率が十分に小さくなるまでこの位置にとどめられる。通常最終値の100%接近は必要ない。この点までの所要時間は一つの測定位置から次までのステップ幅に依存する。これらの操作は最初マニュアルコントロールによって実行するのが好ましい。測定の同化挙動に関する充分な経験が集まった時、その後自動的に実施すべき対応するプログラムが書かれる。一方ではチューブ束反応器の立ち上りおよび遮断の間の非静止条件と、他方では静止操業を同様に考慮に入れなければならない。その後機械的位置決め手段が1セクションΔxだけSTMを動かす。この新しい測定位置において再び温度が上述の基準に従って記録され、そして全体の作業移動路の温度が測定され終るまで続く。各個々の温度計が1作業移動路の距離を進められるとき、測定された全体の範囲のすべての温度は1セクションΔxの解像度において検出されるであろう。これらのデータに基いて、次に温度極端値が決定される。発熱反応ではこれは最高温度であり、吸熱反応では最低温度であろう。
【0072】
本発明に従った方法では、測定のシリーズの実施される順序は制限されない。出発点および終了点それに温度プロフィルの測定が満たすべき要件は、プロセスの特異的局面に従ってプラントオペレーターによって設定される。例えば、位置決めユニットはSTMを上部出発位置から下部終点位置まで記載した操作ステップを通じて動かすことができる。次にSTMは、温度を底から頂点へ測定するためにこの位置から上に動かされるであろう。他の作業モードでは、STMは、温度を上の出発位置から下の終位置まで測定するため記載した同じ個々の操作によって動かされる。その後STMは温度測定を行うことなくスタート位置へ迅速に復帰され、そして温度の測定が記載したように繰り返される。選んだ作業モードに関係なく、温度測定データは常に信号ラインを経由しまたは無線で遠隔コントロールおよび評価ユニットへ伝送される。この評価内で最高温度(ホットスポット)がマニュアルまたは自動的に決定される。この情報は許容し得る最高温度を超えた時警報を発するため安全性着想内で使用することができる。
【0073】
本発明に従ったチューブ束反応器内の温度プロフィルを測定する他の方法においては、温度測定がさらに最適化される。この具体例によれば、最初温度は少数の測定位置をカバーする急速な操作において、および/または作業移動路全体を通じて各測定位置において減少された測定時間で測定される。その後極端値が決定され、そしてこの値から出発して、その両側において微細な測定範囲が決められ、その範囲内で少なくとも最初の測定期間と同じ長さのそれぞれの測定期間の間より小さいセクションΔxにおいてもっと精密に温度プロフィルが決定される。
【0074】
もっと詳しくは、この方法はSTMが上で説明した原理に従って機械的位置決め手段によってスタート位置へ動かされ、そして作業移動径路がnが1から50までの整数であるセクションΔx=t/nx(TM)の間隔において、以下の分けた作動ステップにおいて走査される。
−温度が最終値へ十分に同化するまで、すなわち温度の変化率があらかじめ定めた値より短く低下するまで、または代って対応する時間のセッティングを過ぎるまで待機し、
−STMをセクションの幅だけ次の停止位置へ動かし、
−個々の分けたステップを作業移動路の終りまで繰り返す。
【0075】
その後、発熱反応の場所は最高温度であり、そして吸熱反応の場合は最低温度である、極端温度が決定される。この極端値から出発し、その両端における微細な測定範囲が決定され、その範囲内の温度が最初の測定の間と少なくとも同じ長さのそれぞれの測定期間の間より小さいセクションΔxにおいて決定される。微細な測定範囲は一方の縁から他方の縁までがカバーされる。
【0076】
プロセス安全性はマニュアルコントロールでなく、プログラムの助けにより自動的に操作を実施することによって増強されることができる。
【0077】
ここに記載したチューブ束反応器のほかに、断熱および等温固体(すなわち固定した)ベッド反応器またはその混合タイプ、それにプレート反応器も同じ態様に設計することができる。
【0078】
本発明は、例示として添付図面を参照してさらに記載される。
【0079】
図面に示されている本発明に従った具体例のチューブ束反応器1は、反応器チューブの束(図示せず)、少なくとも1個の温度計チューブ2、上方チューブ鏡板3および下方チューブ鏡板4、シェル5、ガス入口ヘッド6およびガス出口ヘッド7、および機械的位置決め手段8を含んでいる。図示した具体例においては、ガス入口ヘッド6が上方反応器ヘッドであり、そしてガス出口ヘッド7が下方反応器ヘッドであり、これらは以後の説明においてそのようにも呼称されるであろう。
【0080】
図1は、機械的位置決め手段8を含んでいるチューブ束反応器1のKAT温度計チューブ2a中のステージ温度計(STM)9を示している。明瞭化理由のため図面には反応器チューブを示さず、そして1個のKATチューブ2aのみが拡大したスケールで示されているが、しかし反応器チューブは不活性材料および触媒のみを収容し、取付け部品を含まない点が相違する。反応器チューブおよびKAT温度計チューブ2aの両方は上方チューブ鏡板3および下方チューブ鏡板4中にシールして固定される。チューブ鏡板3,4はその周縁に沿って円筒形シェル5へ接合される。上方ガス入口ヘッド6は上方フランジ11aによって上方チューブ鏡板3へ接続されてそれを覆い、下方ガス出口ヘッド7は下方フランジ11bによって下方チューブ鏡板4へ接続されてそれを覆う。反応ガス12はガス入口ノズル13を通ってガス入口ヘッド6中へ供給され、そして上方チューブ鏡板3へ分布される。ガスは反応器チューブおよびKAT温度計チューブ2aを通って連続的に流れ、ガス出口ヘッド7へ排出され、ガス出口ノズル14を通って反応器を離れる。その上端において、KAT温度計チューブ2aは上方チューブ鏡板3へシールして固定され、その下端は下方チューブ鏡板4へシールして固定される。このようにして流れ連通がガス入口および出口ヘッド6,7間に確立される。バルク材料のための粒子支持体15がKAT温度計チューブ2aの下部に配置され、それはKAT温度計チューブ2aの文脈において触媒支持体15と呼ばれる。この支持体の上に不活性材料のベッド16が置かれ、下方チューブ鏡板4の上縁17まで続く。不活性材料16の頂部の上に上方チューブ鏡板3の下縁19まで延びる触媒ベッド18がある。同様に例えば、触媒支持体15を下方チューブ鏡板4の上縁17のレベルに配置し、その上に触媒を直接配置することも考えられるが、これは図面には示されていない。KTA温度計チューブ2aは熱媒10によって冷却され、これはこの場合下方入口20を通って反応器1のシェル21へ入り、そこから上方出口22を通って出て行く。図面には示されていない循環手段およびクーラーは反応器1の外に配置される。
【0081】
KAT温度計チューブ2aの中心に配置された保護チューブ23は触媒支持体15まで下方へ延び、上方はガス入口ヘッド6へ出る。取付けを容易にするため、保護チューブ23は、ガス入口ヘッド6内においてフランジ23cによって相互接続される二つの部分23a,23bからなる。加えて、保護チューブ23は温度計チューブ2中に固定され(図示せず)、そしてガス入口ヘッド6の領域内に長さ補償手段を備える。この具体例においては、保護チューブ23の上方部分23bはガス入口ヘッド6中の測定株24まで延びる。保護チューブ23の下方部分23aは下方へ触媒支持体15まで延び、そこでその下端において閉鎖される。KAT温度計チューブ2aの領域内において、保護チューブ23はKAT温度計チューブ2a内で中心決めするスペーサによってKAT温度計チューブ2aの内壁に横方向に支持される。ステージ温度計STM9は保護チューブに挿入される。図面はその上端部分を示している。STMは複数の温度計TM1,TM2,TM3等下端の最後の温度計TMNまでを含んでいる。STMは保護チューブ23内で上下(矢印28)に軸方向に動くことができる。
【0082】
原理的に最小測定範囲は自由に選ぶことができる。しかしながら明瞭化のため、触媒ベッド18の一端x1から他端xnまで達するのが好ましい。最小測定範囲は、サイズを原則として自由に選ぶことのできる複数の小さいセクションに小分割される。しかしながら好ましい具体例においては、一つのそのようなセクションは二つの隣接する個々の温度計の間の間隔x(TM)に相当する。
【0083】
機械的位置決め手段8は保護チューブ23内でSTMをステップΔxで動かす。スタート位置から終点位置までの最大運動経路は作業移動経路xmaxである。最初の温度計TM1から最後の温度計TMnまでの距離プラス作業移動経路がLとして指定される。機械的位置決め手段8は上方反応器ヘッド6上に配置され、それに取外し自在に取付けられる。
【0084】
機械的位置決め手段へ固着された測定値のためのトランスジューサ29は遠隔コントロールセンター30と通信する遠隔伝送手段29aを備える。測定結果および信号は、それぞれトランスジューサ29内で処理され、そして遠隔伝送手段29aによってコントロールセンター30へ伝送される。コントロールセンター30は測定信号を受信し、処理するための手段と、機械的位置決め手段8をコントロールするための手段を備える。測定結果は信号ケーブル31かまたは無線によって伝送される。
【0085】
図2は、保護チューブ28へ挿入された、ここではステージ熱電対であるステージ温度計9の拡大断面図である。図面は温度計、もっと詳しくは熱電対TM3およびTM4を示している。各熱電対は熱スリーブ32によって包囲されており、すべての熱スリーブが熱保護チューブ33に収容される。代って熱保護チューブは保護チューブ23内に配置され、その中で自由に動くことができる。
【0086】
半田付けによって接続された下端を有する熱電対の2本の熱電線34a,34bは熱スリーブ32内に配置される。熱電対は距離x(TM)だけ互いに軸方向に離れている。それらは束に結合され、熱保護チューブ33によって包囲される。熱保護チューブ内の熱電対のこの結合された束は合同してSTM9を形成する。得られるSTM9は保護チューブ23に導入される。熱保護チューブ33は機械的位置決め手段8へ好ましくは取外し自在に接続される。
【0087】
図3aにおいて、静止STMの温度プロフィル(点線)と、可動STMの温度プロフィル(実線)は一図の中に一所にプロットされている。この図はKAT温度計チューブ2aの最初の1/3を大体提供する。ホットスポットはチューブのこの最初の1/3に位置している。ここでは測定された温度は発熱反応のものである。
【0088】
温度計チューブ2a中の測定位置x1からx7までが横軸にプロットされ、測定された温度が縦軸にプロットされている。TOは測定位置x1への途中の最上位の温度計TM1からの測定された温度を指定する。
【0089】
温度計および熱電対の位置それぞれTM1からTM7までは時間t0からt4までのための横軸に平行にプロットされている。これらの時間ポイントの間に、可動STM9は矢印9aの方向に距離Δxだけ各自全体の移動経路と作業移動経路xmaxが終了するまで移動された。図示したこの具体例において、作業移動経路xmaxはSTMの出発位置Oと測定位置x1に相当し、Δxの4倍に等しい。この経路Δxは隣接する測定位置x1,x2,x3,x4,x5,x6,x7間の距離の1/3を形成し、それ故それぞれの測定位置x2,x2.1,x2.2,x3,x3.1,x3.2およびx4に相当する。
【0090】
熱電対TM4は以後の説明では測定環境を説明するための例として参照されるであろう。最初の温度測定は時間t=toにおいて行われる。この時点においてSTM9は図1に示した最上の位置に配置される。熱電対TM4はこの時測定位置x2.2にあり、温度T2.2を測定する。その後時間t=t1において、STM9は1ステップだけ前方へ動かされる。これは熱電対TM4を温度T3を測定すべき測定位置3xへもたらす。同様に時間t=t1,t=t2,t=t3およびt=t4において熱電対はそれぞれ測定位置x3.1,x3.2およびx4にあり、温度T3.1,T3.2およびT4をそれぞれ測定するであろう。時間点t=T4が来る時、作業移動経路xmaxが1回走査されたであろう。
【0091】
位置の比較は、例えば時間t=t3において熱電対TM3は、熱電対TM4が既に時間t=toにおいてその測定を行った同じ測定位置x2.2において温度を測定する。もし測定値が同じであれば、それは使用している熱電対は欠点なしでそして状態が安定していることの指示である。他方、もし測定結果が異なり、そしてすべての他の熱電対がt=toにおけるそれぞれに先行して測定した温度値を示しているならば、これは熱電対TMが故障している指示である。もしすべての他の熱電対から発生した偏差が類似であれば、それはプロセスが現在静止していないことを意味する。この態様において熱電対の互いのチェックが実現される。選んだ例においては、作業移動経路xmaxは4つの等セクションΔxに分割された。隣接する測定値は測定された値の間の場所は事実未知であることを表すために直線で結ばれる。この細分割はなお粗いことが明らかである。実際には温度の実際のコースに対するより良い概算を得るためもっと細かい解像度ともっと細かい分割が選ばれるであろう。
【0092】
静止STMを使用した比較がt=t4において示されている。ここでは静止STMによって測定された値は点線で結ばれている。これらの測定はx=x4における最高温度T=T4を提供する。対照的に本発明の方策を適用した測定方法はx=x3.2における最高温度T=T3.2、すなわち明らかにもっと高い温度を提供する。これは温度の実際のコースがもっと良好に検知されることを証明する。
【0093】
図3bはもっと洗練された方法の使用を図示する。ここでは始めに作業移動経路xmaxが例えば図3aに示した方法に従って粗いステップ幅Δxにおいて迅速に走査される。この急速操作で発見された最高温度はx=3.2においてT=T3.2にある。この最高温度から出発して細かな測定範囲xFが決定される。この例では最高温度の前のステップ幅Δxからその後のステップ幅Δxまでにわたる。この全体の微細測定範囲はこの例では6個の等部分セクションに細分割される。これらより小さい部分セクションの終点の温度が上に記載した方法に類似の態様で測定される。最高温度T=3.1.2がx=3.1.2に、換言すれば以前の方法で得られたT=T3.2よりも少し高い最高温度が発見される。これは微細測定範囲xFの場所の選択は測定範囲を減らすことができ、それによって測定範囲の部分セクションが測定シリーズあたり一定数の測定においてもっと小さくなり、そのため解像度を増強することを意味する。
【0094】
図4は、発熱反応からの3つの計算された温度曲線を図示する。これらはビルトインエレメントなしの反応チューブと、各自チューブ全長の30%までのチューブの始めから変化する保護チューブ幅dsを有する2つのKAT温度計チューブ2aによって得られる。参照曲線は実線で示され、内部エレメントなしの反応チューブ(ds=0.0mm)中の温度のコースを表している。もし外径ds=3.2mmを有する保護チューブ23がKAT温度計チューブ2aの中心に設置されるならば、これは反応のコースそして熱の発展(点線)に対して非常に少しの影響しか持たないであろう。しかしながら保護チューブ直径ds=8.0mmにおいてはこの影響は明からに見えるようになり(一点鎖線)、最高温度はもっと低くなって広くなり、そして流れの方向へさらに後方へシフトする。
【0095】
図5は図1と類似の図であるが、熱媒(WT)温度計チューブ2bを拡大スケールで示している。このWT温度計チューブは実質的にKAT温度計チューブ2aに相当する。本質的な相違は、反応ガス12が温度計チューブの内部へ侵入するのを防止するための温度計チューブ2と保護チューブ23の間のシーリング35にある。図示した具体例においては、保護チューブ23と、WT温度計チューブ2bの内壁の間のスペースは顆粒状アルミニウムまたは顆粒状鉄のような良い熱伝導性材料36で充填される。図示しない他の具体例においては、保護チューブ23は偏心的に配置され、そしてWT温度計2bの内壁へ閉鎖される。WT温度計2bの残りのスペースは断熱材料36で充填され、そのためSTM9はWT温度計チューブ2bの壁温度を実質上直接測定する。ガス入口ヘッドの区域において、保護チューブ23は異なる長さ方向膨張の補償手段37を備える。
【0096】
図6は、好ましくは熱電対で具体化された複数の温度計を備えるWT温度計チューブの他の具体例を代表する、図5に類似の図である。この具体例においては、熱電対から温度計チューブへの熱伝導は弾性エレメント38によって提供される。
【0097】
図6の切欠きマークVIIa部分は図7a/bに詳細に示されている。保護チューブ23と温度計チューブの内壁27の間の環状スペースはパッキン箱(パッキン押え)構造によって具体化される。その機能はシーリング区域をいくつかの個々の部分に再分割することによって最適化される。シールの中心エレメントは支持スリーブ39であり、その下部分はWT温度計チューブ2b中へ達し、その中心および上部分に外ねじ40が形成される。支持スリーブ39の下端においてパッキン42のためのパッキン押えとして役立つ外向きのカラー41が形成される。パッキン箱パッキン42はプランジャー43によって圧縮される。これをなし遂げるのに必要な力は支持スリーブ39の外ねじ40に係合するナット44によって加えられる。支持スリーブ39の外ねじ40はカウンターナット45をこえてある距離を上方へ延びる。下端においてねじ47を形成された接続部材46がねじ40の上端にねじ係合する。接続部材の上端は締め付けリングねじ接続48を備え、保護チューブ23だけが接続部材へ取付けられるのはここである。WT温度計チューブ2bから機械的位置決め手段8までの長さにおいて、保護チューブ23は補償手段37およびもし望むならばさらなる取外し自在接続23cを備える。
【0098】
熱電対TM1ないしTMnまでの信号ケーブル49が反応器1の外まで通過する熱保護チューブ33は保護チューブ23を通り、接続部材46および支持スリーブ39を通って前方へ延びる。その下端において、熱保護チューブ33は締め付けスクリュー接続50によってSTM9、この具体例ではステージ熱電対として設計されたSTM9へ接続される。STM9は温度計チューブの内壁27と熱接触にある複数の弾性エレメント38を形成された案内チューブ51を含んでいる。そのような弾性エレメント38は、図示するように、案内チューブ51にホール52をあけることによって形成することができる。次にパンチをホール52を通って動かし、弾性エレメント38を案内チューブの反対側へパンチし、同時にリンク53を案内チューブ51に残すことができる。その後熱電対(例えばTM1)を弾性エレメント38の内側へ固着することができる。この製作プロセスは異なる軸方向レベルにおいて数回繰り返され、熱電対TM1からTMnが図7bに示すように放射方向に均一に分布されるのを確実にする。これによって案内チューブ51はWT温度計チューブ2bの中間において放射方向に心合わせされる。図示しないが、弾性エレメント38は異なる方法で、すなわちあらかじめ製造した弾性エレメントを案内チューブの外壁へ例えばスポット電気溶接によって取付けることができる。この場合も案内チューブ51中のホール52は熱電対へアクセスすることができるようにするため有益である。さらに、例えば熱電対の適切な接続を受け入れるスポットをあらかじめ製造した弾性エレメント38に形成することかできる。これは製作プロセスの大きな簡単化を提供する。
【0099】
WT温度計チューブ2bの下端は、好ましくは密閉または穴あき閉鎖具54によって閉じられる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】拡大スケールでKAT温度計チューブを示した本発明に従ったチューブ束反応器の具体例の部分垂直断面図である。
【図2】図1の一部の拡大図である。
【図3a】各自比較のため静止STMおよび移動STMの温度プロフィルを示す。
【図3b】各自比較のため静止STMおよび移動STMの温度プロフィルを示す。
【図4】温度計チューブに異なる外径の保護チューブを使用した時に得られた温度プロフィルを示す。
【図5】拡大スケールでWT温度計チューブの第1の具体例を示す、図1に類似の図である。
【図6】WT温度計の第2の具体例を示す、図5に類似の図である。
【図7a】拡大スケールで図6の部分VIIaを示す。
【図7b】図7aの線VIIb−VIIIbに沿った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ内でタイトに固定された両端を持つ触媒で充填された反応チューブのチューブ束;
作動中チューブのまわりを流れる流体熱媒のための一対の鏡板;
チューブ束を包囲するシェル;
チューブ鏡板の一方を差し渡し、反応器チューブと流体連通にあるガス入口ヘッド;
チューブ鏡板の他方を差し渡し、反応器チューブと流体連通にあるガス出口ヘッド、および
該チューブ束中に配置された温度計チューブ中に設置された少なくとも1つのステージ温度計;
を備えている吸熱または発熱気相反応を実施するためのチューブ束反応器において;
少なくとも1つのステージ温度計(9)は温度計チューブ(2)の内側において軸方向に動くことができ、そして該チューブ束反応器(1)は該ステージ温度計(9)の軸方向運動を実行する機械的位置決め手段(8)を備え、そして少なくとも1つのステージ温度計(9)は測定した値を遠隔コントロールセンター(30)へ伝送するのに適した遠隔伝送手段(29a)を備え、そして該機械的位置決め手段(8)はコントロール信号を該コントロールセンター(30)から受取るための手段を備えていることを特徴とするチューブ束反応器。
【請求項2】
少なくとも1つのステージ温度計(9)は、2ないし50,好ましくは4ないし40,特に好ましくは6ないし30,およびもっと好ましくは8ないし21の個数範囲の個々の温度計(TM)を含み、該個々の温度計(TM)は互いにあらかじめ定めた軸方向間隔(x(TM))で配置されていることを特徴とする請求項1のチューブ束反応器。
【請求項3】
少なくとも1つのステージ温度計(9)内の隣接する個々の温度計(TM)間の軸方向間隔(x(TM))は同じであることを特徴とする請求項1または2のチューブ束反応器。
【請求項4】
該ステージ温度計(9)はステージ熱電対によって具体化されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項5】
チューブ束中に配置され、そして軸方向に動くことができない少なくとも1つのステージ温度計を含んでいる少なくとも1つの追加の温度計チューブを備え、温度計チューブの総数中の軸方向に動くことができるステージ温度計(9)の割合は100%未満、好ましくは50%未満、特に好ましくは10%未満であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項6】
温度計チューブ(2)の少なくとも1つのステージ温度計(9)は保護チューブ(23)の内側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項7】
保護チューブ(23)は温度計チューブ(2)のチューブ軸上に配置されていることを特徴とする請求項6のチューブ束反応器。
【請求項8】
保護チューブ(23)は温度計チューブ(2)の内壁に対してスペーサー(26)によって支持されていることを特徴とする請求項7のチューブ束反応器。
【請求項9】
該保護チューブ内の少なくとも1つのステージ温度計(9)は保護チューブ(23)中を軸方向に動くことができる熱保護チューブ(33)中に配置されていることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項10】
少なくとも1つの温度計チューブ(2a)はガス入口ヘッド(6)およびガス出口ヘッド(7)と流体連通にあり、その触媒効果は反応器チューブに相当する触媒充填(18)を含み、そして該保護チューブ(23)は触媒充填(18)の少なくとも一部を通って延び、ステージ温度計(9)を含んでいる熱保護チューブ(33)はそれぞれ該触媒充填(18)の少なくとも一部を通って通過しかつ可動であることを特徴とする請求項9のチューブ束反応器。
【請求項11】
ステージ温度計(9)の隣接する個々の温度計(TM)の間隔(x(TM))はホットスポットの領域において残りの領域よりも小さいことを特徴とする請求項10のチューブ束反応器。
【請求項12】
少なくとも1つの温度計チューブ(2b)はガス入口ヘッド(6)に関して密にシールされ、ステージ温度計(9)は温度計チューブ(2b)を通って延び、そしてその中で軸方向に動くことができることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項13】
保護チューブ(23)の外壁と温度計チューブ(2b)の内壁の間の間隔は熱伝導性不活性材料(36)で充填されていることを特徴とする請求項9ないし12のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項14】
ステージ温度計(9)は温度計チューブ(2b)の内壁(27)と直接に接触していることを特徴とする請求項12のチューブ束反応器。
【請求項15】
ステージ温度計(9)は温度計チューブ(2b)の内壁(27)と接触している少なくとも1つの熱伝導性スプリングエレメント(38)を含んでいることを特徴とする請求項12のチューブ束反応器。
【請求項16】
機械的位置決め手段(8)は好ましくはリニアモータの形のステッピングモータを含んでいることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項17】
機械的位置決め手段(8)はマニュアルおよび/またはコントロールプログラムによって複数のステップおよび測定位置に作動されるのに適していることを特徴とする請求項1ないし16のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項18】
機械的位置決め手段(8)は隣接する個々の温度計(TM)間の一間隔x(TM)の300%まで、好ましくは200%まで、特に好ましくは100%までの最大作業移動路を通ってステージ温度計(9)を動かすように設定されていることを特徴とする請求項1ないし17のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項19】
機械的位置決め手段(8)は起立位置において有効な安全要求に従って耐爆性につくられていることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項20】
保護チューブ(23)はガス入口または出口ヘッド(6,7)内において、好ましくは上方反応ヘッドを形成するヘッドにおいて取外し自在に相互接続された少なくとも2部分(23a,23b)につくられていることを特徴とする請求項1ないし19のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項21】
保護チューブ(23)は機械位置決め手段(8)から遠方のその端部(25)において閉じられていることを特徴とする請求項1ないし20のいずれかのチューブ束反応器。
【請求項22】
以下のステップ
(a)最小測定範囲を決定し、
(b)隣接する個々の温度計(TM)の間の間隔(x(TM))を決定し、そして必要な個々の温度計の数を決定するか、または
個々の温度計(TM)の数を決定し、そして隣接する個々の温度計(TM)間の間隔(x(TM))を決定し、
(c)隣接する個々の温度計(TM)間の間隔(x(TM))に応答して、そして温度計測定を実施するためのステージ温度計(9)の作業移動路(xmax)を決定し、
(d)機械的位置決め手段(8)によってステージ温度計(9)をスタート位置へ動かし、そして参照ポイントを規定し、
(e)以下の、
(e1)温度の変化速度があらかじめ定めた値以下に下降するまで待機するか、または代って対応する時間間隔を決定し、
(e2)ステージ温度計(9)をステップ幅(Δx)において次の測定位置へ動かし、
(e3)個々の部分ステップを作業移動路の終りまで繰り返す部分ステップにおいて、ステップ幅Δx=1/nx(TM)(ここでnは1より大きい整数)において作業移動路(xmax)を通過させ、
(f)発熱反応では最高温度であり、吸熱反応では最低温度である極端温度値を決定すること、
を含んでいる、請求項1ないし21のいずれかのチューブ束反応器における温度プロフィルを測定する方法。
【請求項23】
ステップ(e)において、n=1ないし50の整数をもって最初の作業において作業移動路を迅速に通過させ、ステップ(f)の後で、
(g)極端温度値から出発し、隣接する個々の温度計(TM)間の間隔(x(TM))と最大でも同じであり、そしてその中心が極端温度値の位置にある微細測定範囲(xF)を決定し、
(h)微細測定範囲(xF)一縁から他縁まで最初の作業の間よりも小さいステップ幅においてそして最初の作業の間と少なくとも同じである各測定位置における測定時間において温度を測定することを特徴とする請求項22の方法。
【請求項24】
温度測定はプログラムによって自動的に実施されることを特徴とする請求項22または23の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公開番号】特開2009−148757(P2009−148757A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323033(P2008−323033)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(505121523)マン、デーヴェーエー、ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】