説明

チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの血小板新生活性

チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(その短縮物および/またはバリアントが含まれる)を含む血小板新生性組成物を提供する。血小板新生の増加から利益を得る状態(血小板減少症など)の処置におけるかかる組成物の使用方法も提供する。一実施形態において、本発明は、被験体における血小板減少症の処置またはその発症リスクの低減に使用するための、または被験体における血小板数の増加または維持させるための、血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む、医薬品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下で、2008年6月11日に出願された米国仮特許出願第61/060,747号(この仮出願は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
配列表に関する記述
本出願に関連する配列表を、ハードコピーの代わりにテキスト形式で提供し、これは、本明細書中で参考として援用される。配列表を含むテキストファイル名は、120161_409PC_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは37KBであり、2009年6月10日に作成され、EFS−Webから電子的に提出されている。
【0003】
技術分野
本発明は、一般に、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(その短縮物および/またはバリアントが含まれる)を含む血小板新生性組成物、血小板新生の増加から恩恵を受ける疾患または(of)状態(血小板減少症に関連する疾患または状態など)の処置におけるかかる組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
血小板減少症は、一般に、被験体における末梢血の単位体積あたりの血小板数が通常よりも低い状態に関する。例えば、正常血小板数は、一般に、約150,000mm〜約450,000mmの範囲であり、血小板減少症は、典型的には、約100,000/mm以下への血小板数の減少によって特徴づけられる。
【0005】
血小板(すなわち、栓球)は、相互にクランピングして血管の穴に栓を形成することによる血液凝固で重要な役割を果たす無色の血球である。血小板新生は、血小板が前駆造血細胞(巨核球など)から形成される過程をいう。血小板新生は、主に、トロンボポエチンによって調節され、次いで種々の機構(いくつかの要因の間での血小板レベルの増加に応答した受容体媒介性の取り込みおよび破壊など)によって調節される。
【0006】
血小板減少症は、薬物適用誘導性血小板減少症に加えて、多数の根本にある原因(血小板破壊の増加、血小板産生の減少、血小板の消費、血小板の捕捉など)に関連する。血液凝固における血小板の中心的役割を考慮すると、血小板減少症の初期症状は、通常、種々の形態の出血および紫斑を含む。被験体の出血リスクが増加するので、特により重篤な症状(脳出血など)への進行を防止するための早期の診断および処置が重要である。
【0007】
血小板数減少状態の処置は、しばしば、病因および疾患の重症度によって導かれる。現在利用可能な血小板減少症および関連状態の処置には、例えば、コルチコステロイド、IVIG、脾臓摘出、および血小板輸血が含まれるが、これらの方法は対症療法であって特異的でないか、激烈且つ高価である。さらに、トロンボポエチン(血小板新生の主な生物学的メディエーター)を利用する以前の試みは、この薬剤(結果的に患者自身の内因性トロンボポエチン)に対して免疫応答を生じた患者において認められた深刻な影響によって臨床的に失敗している。トロンボポエチン模倣物およびトロンボポエチン受容体の小分子アクチベーターが開発段階にあるが、食品医薬品局(FDA)によって承認されていない。
【0008】
tRNA分子のアミノアシル化を触媒するアミノアシル−tRNAシンテターゼは、翻訳過程における遺伝情報の解読に不可欠である。高等真核生物では、アミノアシル−tRNAシンテターゼは、他のポリペプチドと会合して超分子多酵素複合体を形成する。各真核生物tRNAシンテターゼは、コア酵素(tRNAシンテターゼの原核生物対応物と密接に関連する)およびコア酵素のアミノ末端またはカルボキシル末端に付属するさらなるドメインからなる。ヒトチロシル−tRNAシンテターゼ(YRS)は、例えば、原核生物および下等真核生物のYRS分子の一部ではないカルボキシル末端ドメインを有する。
【0009】
アミノアシルtRNAシンテターゼ(チロシル−tRNAシンテターゼなど)は、現在、哺乳動物細胞における広範な機能(特に、シグナル伝達経路における活動が含まれる)に関連する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の簡潔な概要
本発明は、チロシル−tRNAシンテターゼ(YRS)ポリペプチド(その短縮および/またはバリアントポリペプチドが含まれる)を含む組成物が、in vivoで血小板新生を刺激する(すなわち、血小板形成を増加させる)という予想外の所見に由来する。したがって、本発明の実施形態を、一般に、血小板減少症に関連する疾患または状態または血小板レベルの低減を処置し、そして/または発症リスクを低減するために使用することができる。
【0011】
一定の実施形態は、血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物を被験体に投与し、それにより、被験体における血小板数が増加する工程を含む、被験体における血小板数の増加方法を含む。一定の実施形態は、血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物を被験体に投与し、それにより、被験体における血小板減少症を処置するか、またはその発症リスクを低減する工程を含む、被験体における血小板減少症を処置するか、またはその発症リスクを低減する方法を含む。一定の実施形態は、血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物を被験体に投与し、それにより、被験体における血小板新生を刺激する工程を含む、被験体における血小板新生を刺激する方法を意図する。一定の実施形態は、血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを被験体に投与し、それにより、被験体における血小板数を維持する工程を含む、被験体(例えば、血小板数の減少に関連する治療を受けている被験体)における血小板数を維持する方法を含む。
【0012】
一定の実施形態は、血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを被験体に投与し、それにより、被験体における巨核球の増殖および/または分化を刺激する工程を含む、被験体における巨核球の遊走、増殖、および/または分化を刺激する方法を含む。一定の実施形態は、血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを被験体に投与し、それにより、被験体における好中球増殖を刺激する工程を含む、被験体における好中球の遊走または増殖を刺激する方法を含む。
【0013】
一定の態様では、被験体は、血小板数の減少または低減に関連する疾患または状態を有するか、有するリスクがある。一定の態様では、被験体の血小板数は、約100,000/mm以下、約110,000/mm以下、約120,000/mm以下、約130,000/mm以下、約140,000/mm以下、または約150,000/mm以下である。一定の実施形態では、血小板数の減少または低減に関連する疾患または状態には、とりわけ、当該分野で公知の出血、打撲傷、鼻出血(鼻血)、脾機能亢進、低温症、エプスタイン・バーウイルス感染、伝染性単核球症、ヴィスコット・オールドリッチ症候群、チアジドの母体摂取、先天性無巨核球性血小板減少症、血小板減少橈骨欠損症候群、ファンコニー貧血、ベルナール・スーリエ症候群、メイ・ヘグリン異常、グレイ血小板症候群、アルポート症候群、新生児風疹、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群(myeolodysplastic syndrome)、白血病、リンパ腫、腫瘍、骨髄癌、栄養欠乏、放射線被曝、肝不全、細菌性敗血症、麻疹、デング熱、HIV感染またはAIDS、早熟、胎児赤芽球症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、母性ITP、溶血性尿毒症症候群、播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、輸血後紫斑、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、新生児自己免疫性血小板減少症、および発作性夜間血色素尿症、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、薬剤誘発性血小板減少症、および化学療法誘導性血小板増加症(CIT)が含まれるが、これらに限定されない。一定の態様では、被験体は血小板ドナーである。
【0014】
一定の実施形態では、血小板数の減少または低減に関連する状態は、薬物適用または薬物によって誘導される(例えば、薬剤誘発性血小板減少症、化学療法誘導性血小板増加症)。血小板数を低減する薬物適用または薬物の例を、化学療法薬、非ステロイド性抗炎症薬、スルホンアミド、バンコマイシン、クロピドグレル、糖タンパク質IIb/IIIaインヒビター、インターフェロン、バルプロ酸、アブシキシマブ、リネゾリド、ファモチジン、メベベリン、ヒスタミン遮断薬、アルキル化剤、ヘパリン、アルコール、および抗生物質から選択することができる。一定の実施形態では、化学療法薬を、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトセシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素(nitrosurea)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、トランス白金(transplatinum)、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、テモゾロミド(temazolomide)(DTICの水性形態)、または上記の任意のアナログまたは誘導バリアントから選択することができる。
【0015】
特許請求の範囲に記載の方法の一定の実施形態では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは、哺乳動物チロシル−tRNAシンテターゼ(そのC末端が短縮された哺乳動物チロシル−tRNAシンテターゼが含まれる)を含む。本明細書中に提供した一定の方法では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、約1〜50個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている。本明細書中に提供した一定の方法では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、約50〜100個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている。一定の実施形態では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、約100〜150個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている。他の実施形態では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、約150〜200個の残基がそのC末端から短縮されている。他の実施形態では、本明細書中に提供した方法は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、約200〜250個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されていることを含む。C末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの特定の例には、配列番号1、2、または3に記載のアミノ酸配列のアミノ酸1〜343、アミノ酸1〜344、アミノ酸1〜350、アミノ酸1〜353、またはアミノ酸1〜364を含むか、これらからなるポリペプチドが含まれる。C末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドのさらなる例には、配列番号3および8のポリペプチドが含まれる。
【0016】
特許請求の範囲に記載の方法の一定の実施形態では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは、そのN末端が短縮された哺乳動物チロシル−tRNAシンテターゼを含む。本明細書中に提供した一定の方法では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、約1〜50個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている。本明細書中に提供した一定の方法では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、約50〜100個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている。一定の実施形態では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、約100〜150個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている。他の実施形態では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、約150〜200個の残基がそのN末端から短縮されている。他の実施形態では、本明細書中に提供した方法は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、約200〜250個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されていることを含む。N末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの特定の例には、配列番号6、10、12、および14のポリペプチドが含まれる。
【0017】
本明細書中に記載の一定の方法では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは、(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、および(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドから選択される。
【0018】
本明細書中に提供した方法の一定の実施形態では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは、(a)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(d)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および(e)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドから選択される。
【0019】
本明細書中に記載の方法に加えて、本発明の一定の実施形態は、本明細書中に記載の生理学的に許容可能な賦形剤および/またはキャリアならびに血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む投与に適した組成物であって、組成物が被験体において血小板新生を刺激し(すなわち、被験体における血小板数の増加または維持)、巨核球の増殖および/または分化を刺激し、そして/または好中球の増殖を刺激することができる、組成物を含む。一定の組成物では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは、上記および本明細書中の他の場所に記載のそのC末端が短縮された哺乳動物チロシル−tRNAシンテターゼを含む。一定の組成物では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは、上記および本明細書中の他の場所に記載のそのN末端が短縮された哺乳動物チロシル−tRNAシンテターゼを含む。
【0020】
一定の実施形態では、本明細書中に記載の血小板新生性組成物は、(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、および(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドから選択されるチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む。
【0021】
一定の実施形態では、本明細書中に記載の血小板新生性組成物は、(a)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(d)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および(e)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドから選択されるチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む。
【0022】
一定の実施形態では、本発明の組成物は、第2のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドをさらに含み、2つのチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが二量体を形成する。一定の態様では、二量体はホモ二量体である。他の態様では、二量体はヘテロ二量体(全長チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドと短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドとの間のヘテロ二量体など)である。一定の実施形態では、本発明の組成物は、異種ポリペプチドをさらに含み、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドおよび異種ポリペプチドがヘテロ二量体(二官能性ヘテロ二量体など)を形成する。
【0023】
一定の実施形態では、本明細書中に提供した血小板新生性組成物は、生理学的に許容可能な賦形剤および/またはキャリアならびに血小板新生有効濃度のキメラチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含み、キメラポリペプチドがチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの2個以上の生物学的に活性なフラグメントを含み、2個以上のフラグメントがYRSポリペプチドの少なくとも10個の連続するアミノ酸を含み、2個以上のフラグメントが連結してキメラポリペプチドを形成し、キメラチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが被験体における血小板新生を刺激し、そして/または血小板数を増加させることができる。
【0024】
一定の実施形態では、本明細書中に提供した血小板新生性組成物は、生理学的に許容可能な賦形剤および/またはキャリアならびに血小板新生有効濃度のキメラチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含み、キメラポリペプチドが、(a)チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの1つまたは複数の生物学的に活性なフラグメントであって、1つまたは複数のフラグメントがYRSポリペプチドの少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む、フラグメント、および(b)1つまたは複数の異種ポリペプチドを含み、前記(a)の1つまたは複数のフラグメントおよび前記(b)の1つまたは複数の異種ポリペプチドが連結してキメラポリペプチドを形成し、キメラポリペプチドが被験体における血小板新生を刺激し(すなわち、被験体における血小板数の増加または維持)、巨核球の増殖および/または分化を刺激し、そして/または好中球の増殖を刺激することができる。
【0025】
一定の実施形態は、造血幹細胞の培養物をチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドと初期巨核球前駆細胞の増殖に十分な時間インキュベートし、それにより、初期巨核球前駆細胞の増殖および/または分化を刺激する、初期巨核球前駆細胞の増殖および/または分化を刺激する方法に関する。一定の実施形態では、本方法をex vivoまたはin vitroで行う。一定の実施形態では、培養物を骨髄から得る。一定の実施形態では、培養物を臍帯血から得る。一定の実施形態では、かかる方法は、必要とする被験体に細胞を投与する工程をさらに含む。
【0026】
一定の実施形態は、細胞をチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドと接触させ、それにより、CXCR−2発現細胞の遊走を刺激する工程を含む、CXCR−2発現細胞の遊走を刺激する方法に関する。一定の実施形態では、細胞を接触させる工程をin vitroまたはex vivoで行う。一定の実施形態では、接触する工程は、有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物を必要とする被験体に投与することを含む。
【0027】
一定の実施形態は、有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを被験体に投与し、それにより、被験体における肺の炎症および/またはその症状を低減する工程を含む、被験体における肺の炎症および/またはその症状を低減する方法に関する。一定の実施形態では、被験体は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する。一定の実施形態では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの投与は、アレルゲンに対する循環好中球の脱感作を得るのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、ヒトチロシル−tRNAシンテターゼの全長アミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図2】図2は、全長ヒトチロシル−tRNAシンテターゼのY341Aバリアントのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図3】図3は、血小板新生活性を有するC末端短縮した(アミノ酸1〜364)ヒトチロシル−tRNAシンテターゼのアミノ酸配列を示す(配列番号3)。
【図4】図4は、ヒトチロシル−tRNAシンテターゼの全長アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号4)を示す。
【図5A】図5(a)および5(b)は、短縮ヒトチロシル−tRNAシンテターゼの投与後の血小板数のin vivoでの影響を示す。図5(a)について、マウスに、1、3および10μg/kgの8アミノ酸C末端タグL−E−H−H−H−H−H−H(配列番号5)を有するC末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(配列番号3)を1日2回7日間で皮下注射し、研究終了時に血小板数を決定した。図5(b)について、マウスに、3μg/kgの図5(a)と同一のC末端短縮ポリペプチドを1日2回7日間で皮下注射し、研究終了時に血小板数を決定した。
【図5B】図5(a)および5(b)は、短縮ヒトチロシル−tRNAシンテターゼの投与後の血小板数のin vivoでの影響を示す。図5(a)について、マウスに、1、3および10μg/kgの8アミノ酸C末端タグL−E−H−H−H−H−H−H(配列番号5)を有するC末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(配列番号3)を1日2回7日間で皮下注射し、研究終了時に血小板数を決定した。図5(b)について、マウスに、3μg/kgの図5(a)と同一のC末端短縮ポリペプチドを1日2回7日間で皮下注射し、研究終了時に血小板数を決定した。
【図6】図6は、8アミノ酸C末端タグL−E−H−H−H−H−H−H(配列番号5)を有するC末端短縮ヒトチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(配列番号3)の投与後の巨核球数のin vivoでの影響を示す。動物に、3および300μg/kgの8アミノ酸C末端タグ(配列番号5)を有する配列番号3のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを1日2回6日間皮下注射し、研究終了時に骨髄および脾臓の組織学的性質を試験した。
【図7】図7は、SP1ヒトチロシル−tRNAシンテターゼスプライスバリアント(配列番号6)(全長野生型YRSポリペプチド配列のN末端短縮バリアントを示す)のアミノ酸配列を示す。SP1スプライスバリアントは、野生型配列に類似する配列を示さない8個または9個のN末端アミノ酸を有する。「X」は任意のアミノ酸を示す。
【図8】図8は、配列番号6のSP1ヒトチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドをコードする核酸配列(配列番号7)を示す。
【図9】図9は、SP2ヒトチロシル−tRNAシンテターゼスプライスバリアント(配列番号8)(全長野生型YRSポリペプチド配列のC末端短縮バリアントを示す)のアミノ酸配列を示す。SP2バリアントは、野生型配列に類似する配列を示さない約35個のC末端アミノ酸を有する。「X」は任意のアミノ酸を示す。
【図10】図10は、配列番号8のSP2ヒトチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドをコードする核酸配列(配列番号9)を示す。
【図11】図11は、SP3ヒトチロシル−tRNAシンテターゼスプライスバリアント(配列番号10)(全長野生型YRSポリペプチド配列のN末端短縮バリアントを示す)のアミノ酸配列を示す。
【図12】図12は、配列番号10のSP3ヒトチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドをコードする核酸配列(配列番号11)を示す。
【図13】図13は、SP4ヒトチロシル−tRNAシンテターゼスプライスバリアント(配列番号12)(全長野生型YRSポリペプチド配列のN末端短縮バリアントを示す)のアミノ酸配列を示す。
【図14】図14は、配列番号12のSP4ヒトチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドをコードする核酸配列(配列番号13)を示す。
【図15】図15は、SP5ヒトチロシル−tRNAシンテターゼスプライスバリアント(配列番号14)(全長野生型YRSポリペプチド配列のN末端短縮バリアントを示す)のアミノ酸配列を示す。SP5バリアントは、野生型配列に類似しない約8個のN末端アミノ酸を有する。「X」は任意のアミノ酸を示す。
【図16】図16は、配列番号14のSP5ヒトチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドをコードする核酸配列(配列番号15)を示す。
【図17】図17は、選択的スプライスバリアントSP1〜SP5のcDNA配列によって示した野生型(WT)ヒトチロシル−tRNAシンテターゼの選択的遺伝子スプライシングを示す。
【図18】図18は、ヒトチロシル−tRNAシンテターゼスプライスバリアントSP1〜SP5のcDNA配列のNCBI注釈付けを示す。
【図19】図19は、全長ヒトYRSポリペプチドと比較したSP1〜SP5のYRSポリペプチドの予想される読み取り枠および報告された読み取り枠のタンパク質配列アラインメントを示す。
【図20】図20は、ラットにおけるYRSポリペプチドの血小板新生活性を示す(実施例4を参照のこと)。
【図21】図21は、YRSポリペプチドによる刺激に応答したMO7e巨核芽球の遊走を示す(実施例5を参照のこと)。
【図22】図22は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがHUVEC−2細胞の内因性単層へのTHP−1細胞の細胞接着を促進することを示す(実施例6を参照のこと)。
【図23】図23は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがHUVEC−2細胞の内因性単層中の接着分子VCAM−1の発現を増加させることを示す(実施例6を参照のこと)。
【図24】図24は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがCXCR−2受容体でトランスフェクトした293細胞株およびCHO細胞株の遊走を刺激することを示す(実施例7を参照のこと)。図24中の左のグラフは293/CXCR−2細胞についての結果を示し、図24中の右のグラフはCHO/CXCR−2細胞の結果を示す。
【図25】図25は、多形核(PMN)細胞遊走に及ぼすYRSポリペプチドの刺激効果を示す(実施例8を参照のこと)。
【図26A】図26は、コロニー数によって測定した場合の骨髄細胞培養物中の巨核球前駆細胞に及ぼすチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの影響を示す(実施例10を参照のこと)。図26(A)は原始的系譜制限前駆体(すなわち、初期前駆体)のコロニー形成に及ぼすYRSポリペプチドの刺激効果を示し、図26(B)および(C)はそれぞれ比較的成熟した中期前駆体(B)および後期前駆体(C)に及ぼすYRSポリペプチドの阻害効果を示す。
【図26B】図26は、コロニー数によって測定した場合の骨髄細胞培養物中の巨核球前駆細胞に及ぼすチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの影響を示す(実施例10を参照のこと)。図26(A)は原始的系譜制限前駆体(すなわち、初期前駆体)のコロニー形成に及ぼすYRSポリペプチドの刺激効果を示し、図26(B)および(C)はそれぞれ比較的成熟した中期前駆体(B)および後期前駆体(C)に及ぼすYRSポリペプチドの阻害効果を示す。
【図26C】図26は、コロニー数によって測定した場合の骨髄細胞培養物中の巨核球前駆細胞に及ぼすチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの影響を示す(実施例10を参照のこと)。図26(A)は原始的系譜制限前駆体(すなわち、初期前駆体)のコロニー形成に及ぼすYRSポリペプチドの刺激効果を示し、図26(B)および(C)はそれぞれ比較的成熟した中期前駆体(B)および後期前駆体(C)に及ぼすYRSポリペプチドの阻害効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本発明は、チロシル−tRNAシンテターゼ(YRS)ポリペプチド(その短縮物およびバリアントが含まれる)が正常な血小板新生過程を模倣および刺激し、したがって、治療的に有益な血小板新生活性を保有することができるという予想外の発見に関する。したがって、本発明の一定の実施形態は、天然の血小板新生過程を刺激し、それにより、必要とする被験体(血小板減少症に関連する状態(すなわち、血小板数の減少)に罹患した被験体など)における血小板産生を増加させるためのYRSポリペプチドの使用に関する。他の処置を超えるYRSポリペプチド使用の利点には、例えば、伝統的な処置と異なる作用機構、トロンボポエチンシグナル伝達との相乗作用、より高い効力、および脱免疫化分子の使用に関連する利点(例えば、トロンボポエチンに対する潜在的な有害免疫応答の影響なし)が含まれる。他の利点が当業者に明らかであろう。
【0030】
本発明の実施には、他で逆のことを示さない限り、当業者の範囲内の分子生物学および組換えDNA技術の従来の方法(その多くを例示を目的として以下に記載している)を使用するであろう。かかる技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986);A Practical Guide to Molecular Cloning(B.Perbal,ed.,1984)を参照のこと。
【0031】
本明細書中に引用した全ての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0032】
定義
他で定義しない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者によって一般に理解されている意味を有する。本明細書中の方法と材料と類似するか等価な任意の方法と材料を本発明の実施または試験で使用することができるが、好ましい方法と材料を記載する。本発明の目的のために以下の用語を以下に定義する。
【0033】
冠詞「a」および「an」を、本明細書中で、冠詞の文法上の対象の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)をいうために使用する。例として、「an element」は、1つ以上の要素を意味する。
【0034】
「約」は、基準とする量、レベル、値、数、頻度、比率、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%ほど変動する量、レベル、値、数、頻度、比率、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。
【0035】
用語「生物学的に活性なフラグメント」は、基準のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列のフラグメントに適用する場合、基準配列の少なくとも約0.1、0.5、1、2、5、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、100、110、120、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000%、またはそれを超える活性を有するフラグメントをいう。基準のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(配列番号1、2、3、6、8、10、12、および14の基準ポリペプチド配列、または配列番号4、7、9、11、13、および15の基準ヌクレオチド配列など)の血小板新生活性を含むかコードする少なくとも約18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、またはそれを超える連続するヌクレオチドまたはアミノ酸残基長(その間の全ての整数が含まれる)の生物学的に活性なフラグメントは本発明の範囲内に含まれる。生物学的に活性なフラグメントの特定の例には、配列番号3および6のポリペプチドに加えて、配列番号1に記載のアミノ酸配列のアミノ酸1〜343、アミノ酸1〜344、アミノ酸1〜350、アミノ酸1〜353、またはアミノ酸1〜364を含むか、これらからなるC末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。生物学的に活性なフラグメントのさらなる例には、配列番号6、10、12、および14に記載のアミノ酸配列を含むか、これらからなるN末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。代表的な生物学的に活性なフラグメントは、一般に、相互作用(例えば、分子内または分子間相互作用)に関与する。分子間相互作用は、特異的な結合相互作用または酵素的相互作用であり得る。分子間相互作用は、YRSポリペプチドと標的分子(血小板新生過程の調節に関与する標的分子など)との間の相互作用であり得る。YRSポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントには、任意の配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列(その血小板新生有効部分が含まれる)と十分に類似または同一であるか、これらに由来するか、配列番号4、7、9、11、13、および15のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドフラグメントが含まれる。
【0036】
「コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、用語「非コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与しない任意の核酸配列をいう。
【0037】
本明細書を通して、文脈から反対の意味が要求されない限り、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」は、記述した工程もしくは要素または工程もしくは要素の群を含むが、いかなる他の工程もしくは要素または工程もしくは要素の群も排除しないことを意味すると理解されるであろう。
【0038】
「〜からなる」は、句「〜からなる」に続くものは何でも含まれるが、これらに限定されることを意味する。したがって、句「〜からなる」は、列挙した要素が必要または必須であり、他の要素が存在することができないことを示す。「本質的に〜からなる」は、この句の後に列挙した任意の要素を含み、且つ列挙した要素についての開示中に特定された活性または作用を妨害も寄与もしない他の要素に制限されることを意味する。したがって、句「本質的に〜からなる」は、列挙した要素は必要または必須であるが、他の要素を選択可能であり、この他の要素は列挙した要素の活性または作用に影響を及ぼすかどうかに応じて存在しても存在しなくても良いことを示す。
【0039】
用語「相補的」および「相補性」は、塩基対合則に関連するポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチド配列)をいう。例えば、配列「A−G−T」は、配列「T−C−A」に相補的である。相補性は、「部分的」(いくつかの核酸塩基しか塩基対合則にしたがって適合しない)であり得る。あるいは、核酸の間に「完全な」または「全」相補性が存在し得る。核酸ストランド間の相補度は、核酸ストランド間のハイブリッド形成の効率および強度に有意に影響を及ぼす。
【0040】
「〜に対応する」または「〜への対応」は、(a)基準ポリヌクレオチド配列の全部または一部と実質的に同一であるか相補的なヌクレオチド配列を有するか、ペプチドまたはタンパク質中のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、または(b)基準ペプチドまたはタンパク質中のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを意味する。
【0041】
「誘導体」は、当該分野で理解されている修飾(例えば、他の化学的部分との抱合または複合体化(例えば、ペグ化))または翻訳後修飾技術による基本配列から誘導されたポリペプチドを意味する。用語「誘導体」には、親配列に合わせて作製された変更(機能的に等価な分子が得られる付加または欠失が含まれる)もその範囲内に含まれる。
【0042】
本明細書中で使用する場合、用語「機能」および「機能的な」などは、生物学的、酵素的、または治療的な機能をいう。
【0043】
「遺伝子」は、染色体上の特定の遺伝子座を占め、転写および/または翻訳調節配列および/またはコード領域および/または非翻訳配列(すなわち、イントロン、5’および3’非翻訳配列)からなる遺伝単位を意味する。
【0044】
「相同性」は、同一であるか保存的置換を構成するアミノ酸の比率をいう。相同性を、GAP(Deverauxら、1984,Nucleic Acids Research 12,387−395)(本明細書中で参考として援用される)などの配列比較プログラムを使用して決定することができる。この方法では、本明細書中で引用した配列と類似するか実質的に異なる長さの配列を、アラインメントへのギャップの挿入によって比較することができ、かかるギャップを、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定することができる。
【0045】
用語「宿主細胞」には、本発明の任意の組換えベクターまたは単離ポリヌクレオチドのレシピエントであり得るか、レシピエントであった各細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、天然の、偶発的な、または故意の変異および/または変化によって元の親細胞と(形態学または総DNA相補性において)必ずしも完全に同一でなくてよい。宿主細胞には、本発明の組換えベクターまたはポリヌクレオチドにてin vivoまたはin vitroでトランスフェクトまたは感染させた細胞が含まれる。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は組換え宿主細胞である。
【0046】
「単離された」は、その未変性状態で通常は伴う成分を実質的または本質的に含まない材料を意味する。例えば、「単離ポリヌクレオチド」は、本明細書中で使用する場合、天然に起こる状態で隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド(例えば、通常はフラグメントに隣接する配列から除去されたDNAフラグメント)をいう。あるいは、「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」などは、本明細書中で使用する場合、その天然の細胞環境および他の細胞成分との会合(すなわち、in vivo物質と会合しない)からのペプチド分子またはポリペプチド分子のin vitroでの単離および/または精製をいう。
【0047】
「から得た」は、サンプル(例えば、ポリヌクレオチド抽出物またはポリペプチド抽出物など)が被験体の特定の供給源から単離されているか、供給源に由来することを意味する。例えば、抽出物を、被験体から直接単離した組織または体液から得ることができる。
【0048】
本明細書中で使用する場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合(またはその関連する構造バリアントまたは合成アナログ)を介して連結した複数のヌクレオチド残基(デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはその関連する構造バリアントまたは合成アナログ)から構成されるポリマーをいう。したがって、用語「オリゴヌクレオチド」は典型的にはヌクレオチド残基およびその間の結合が天然に存在するヌクレオチドポリマーをいうが、本用語には種々のアナログ(ペプチド核酸(PNA)、ホスホルアミダート、ホスホロチオアート、メチルホスホン酸、および2−O−メチルリボ核酸などが含まれるが、これらに限定されない)もその範囲内に含まれると理解されるであろう。分子の正確なサイズは、特定の適用に応じて変化し得る。オリゴヌクレオチドは典型的には幾分短いが(一般に約10〜30ヌクレオチド残基)、用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」が典型的には巨大オリゴヌクレオチドのために使用されるにもかかわらず、本用語は任意の長さの分子をいうことができる。
【0049】
本明細書中で使用する場合、用語「作動可能に連結された」は、プロモーターの調節下に構造遺伝子をおき、次いで遺伝子の転写および任意選択的に翻訳を調節することを意味する。異種プロモーター/構造遺伝子組み合わせの構造において、遺伝子配列またはプロモーターとその天然の状況で調節される遺伝子(すなわち、遺伝子配列またはプロモーターが由来する遺伝子)との間の距離とほぼ同一である遺伝子転写開始部位からの距離で、遺伝子配列またはプロモーターを配置することが好ましい。当該分野で公知のように、機能を喪失することなくこの距離のいくらか変動させることができる。同様に、その調節下で配置すべき異種遺伝子に関する調節配列エレメントの好ましい位置を、その天然の状況でのエレメント(すなわち、これが由来する遺伝子)の位置づけによって定義する。
【0050】
本明細書中で使用する場合、記述「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、mRNA、RNA、cRNA、cDNA、またはDNAを示す。本用語は、典型的には、少なくとも10塩基長のヌクレオチドの高分子形態(リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドまたはいずれかのヌクレオチド型の修飾形態のいずれか)をいう。本用語には、DNAの一本鎖形態および二本鎖形態が含まれる。
【0051】
用語「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」などは、本明細書中の以下に定義するストリンジェントな条件下で基準配列とハイブリッド形成する基準ポリヌクレオチド配列またはポリヌクレオチドと実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチドをいう。これらの用語はまた、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失、または置換によって基準ポリヌクレオチドと区別されるポリヌクレオチドを含む。したがって、用語「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」には、1つまたは複数のヌクレオチドが異なるヌクレオチドを付加されているか、欠失されているか、置換されているポリヌクレオチドが含まれる。これに関して、一定の変更(変異、付加、欠失、および置換が含まれる)を基準ポリヌクレオチドに合わせて行い、それにより、変更したポリヌクレオチドが基準ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持することができると当該分野で十分に理解されている。ポリヌクレオチドバリアントには、例えば、配列番号4に記載の配列または血小板新生性チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントをコードするその一部と少なくとも50%(ならびに少なくとも51%〜少なくとも99%およびその間の全ての整数の比率)の配列同一性を有するポリヌクレオチドが含まれる。用語「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」には、天然に存在する対立遺伝子バリアントも含まれる。
【0052】
「ポリペプチド」、「ポリペプチドフラグメント」、「ペプチド」、および「タンパク質」を、アミノ酸残基のポリマーならびにそのバリアントおよび合成アナログをいうために本明細書中で交換可能に使用する。したがって、これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が天然に存在しない合成アミノ酸(対応する天然に存在するアミノ酸および天然に存在するアミノ酸ポリマーの化学的アナログなど)であるアミノ酸ポリマーに適用する。
【0053】
用語「チロシンRNAシンテターゼ」および「チロシル−tRNAシンテターゼ」を本明細書中で交換可能に使用し、この用語は本発明の「YRS」ポリペプチドをいう。
【0054】
記述「YRSポリペプチド」、「YRSポリペプチドフラグメント」、「短縮YRSポリペプチド」、または「そのバリアント」は、配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のいずれか1つに記載の基準配列(その生物学的に活性なフラグメント(基準配列の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、またはこれを超える(その間の全ての整数が含まれる)連続するアミノ酸を有するフラグメントなど)が含まれる)と少なくとも50%(ならびに少なくとも51%〜少なくとも99%およびその間の全ての整数およびその間の全ての整数の比率)の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むが、これらに限定されない。これらの記述は、さらに、存在し、一方の属または種から他方に生じ得るYRSポリペプチドの天然の対立遺伝子変動を含む。
【0055】
YRSポリペプチド(その短縮物および/またはバリアントが含まれる)は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはこれを超える基準YRSポリペプチドの特異的生物学的活性(すなわち、被験体中またはin vitroで血小板新生活性を有することなど)を示すポリペプチドを含む。本出願の目的のために、YRS関連生物学的活性を、例えば、YRSポリペプチドが被験体中の血小板数を増加させるか、被験体中の巨核球数を増加させる能力の測定によって定量することができる(例えば、実施例1を参照のこと)。さらに、ヒト血小板産生の測定に適切な動物モデルは、Suzukiら、European Journal of Haemotology 78:123−130,2007(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。血小板新生活性の測定に適切なin vitroモデルは実施例2に記載されており、Dessyprisら、Exp Hematol.18:754−7,1990に例示の巨核球コロニー形成の評価がさらに含まれる。野生型基準YRSポリペプチドと比較して生物学的活性が実質的に低減したYRSポリペプチド(その短縮物および/またはバリアントが含まれる)は、野生型YRSの比活性の約25%、10%、5%、または1%未満を示すYRSポリペプチドである。
【0056】
記述、ポリペプチド「バリアント」は、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、または置換によって基準ポリペプチドと区別されるポリペプチドをいう。一定の実施形態では、ポリペプチドバリアントは、保存的または非保存的であり得る1つまたは複数の置換によって基準ポリペプチドと区別される。一定の実施形態では、ポリペプチドバリアントは保存的置換を含み、これに関して、ポリペプチドの活性の性質を変化させることなくいくつかのアミノ酸を広範な類似の性質を有する他のアミノ酸に変化させることができると当該分野で十分に理解されている。ポリペプチドバリアントはまた、1つまたは複数のアミノ酸が付加または欠失されているか、異なるアミノ酸残基と置換されているポリペプチドを含む。
【0057】
本発明は、全長YRSポリペプチド(例えば、Y341A置換を有する全長ポリペプチド)のバリアント、全長YRSポリペプチドの短縮フラグメント、短縮フラグメントのバリアント、およびその関連する生物学的に活性なフラグメントの本明細書中に記載の方法における使用を意図する。典型的には、YRSポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントは、相互作用(例えば、分子内相互作用または分子間相互作用)に関与し得る。分子間相互作用は、特異的な結合相互作用または酵素的相互作用であり得る(例えば、相互作用は一過性であり得、共有結合が形成されるか破壊される)。YRSポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントには、(推定)全長YRSポリペプチド配列のアミノ酸配列(配列番号1など)またはその一部(配列番号3、6、8、10、12、および14のポリペプチドなど)と十分に類似するかこれに由来するアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる。典型的には、生物学的に活性なフラグメントは、YRSポリペプチドの少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含み、1つまたは複数の(いくつかの場合、全て)の種々の活性ドメインを含むことができ、血小板新生活性を有するフラグメントを含むことができる。いくつかの場合、全長YRSポリペプチドがその活性を持たなくても良いように、YRSポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントは特定の短縮フラグメントに固有の生物学的活性(例えば、血小板新生活性)を有する。一定の場合、生物学的活性を、他の全長YRSポリペプチド配列からの生物学的に活性なYRSポリペプチドフラグメントの分離または血小板新生的に活性なドメインをアンマスクするための全長YRS野生型ポリペプチド配列の一定の残基の変更(例えば、Y341A)によって明らかにすることができる。短縮YRSポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントは、配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のいずれか1つに記載のアミノ酸配列の例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29,30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、またはこれを超える連続アミノ酸(その間の全ての整数が含まれる)であるポリペプチドフラグメントであり得る。一定の実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、血小板新生刺激性の配列、ドメイン、またはモチーフを含む。適切には、生物学的に活性なフラグメントは、由来する野生型ポリペプチドの約1%、10%、25%、50%もの活性を有する。
【0058】
本明細書中で使用する場合、記述「配列同一性」(例えば、「〜と50%同一の配列」を含む)は、配列がヌクレオチド毎またはアミノ酸毎に基づいて比較ウィンドウにわたって同一である範囲をいう。したがって、「配列同一率」を、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントした配列を比較すること、同一核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一アミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両配列中に存在する位置の数を決定して適合した位置の数を得ること、適合した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、結果に100を掛けて配列同一率を得ることによって計算することができる。
【0059】
2個以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列の関係を説明するために使用される用語には、「基準配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一率」、および「実質的同一性」が含まれる。「基準配列」は、少なくとも12個であるが、頻繁には15〜18個、しばしば少なくとも25個の単量体単位(ヌクレオチドおよびアミノ酸残基が含まれる)の長さである。2個のポリヌクレオチドが、(1)2ポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)および(2)2ポリヌクレオチド間で不一致の配列を含み得るので、2個(またはそれを超える)のポリヌクレオチド間の配列比較を、典型的には、「比較ウィンドウ」にわたる2個のポリヌクレオチド配列の比較によって行い、配列が類似する局所的領域を同定および比較する。「比較ウィンドウ」は、少なくとも6個の連続する位置、通常は約50〜約100個、より通常には約100〜約150個の概念的セグメントをいい、このセグメント中で2個の配列を最適にアラインメントした後に配列を同数の連続する位置の基準配列と比較する。比較ウィンドウは、2配列の至適アラインメントのために基準配列(付加または欠失を含まない)と比較した場合、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウのアラインメントのための配列の至適アラインメントを、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,WI,USA中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータ化された実行または目視および選択された種々の方法のいずれかによって作成された最良のアラインメント(すなわち、比較ウィンドウにわたって最高の相同率が得られる)によって実施することができる。基準を、例えば、Altschulら、1997,Nucl.Acids Res.25:3389によって開示されたBLASTプログラムファミリーに合わせて作成することもできる。配列分析の詳細な考察を、Unit 19.3 of Ausubelら、”Current Protocols in Molecular Biology“,John Wiley & Sons Inc,1994−1998,Chapter 15に見出すことができる。
【0060】
本明細書中で使用する場合、「被験体」には、本発明の血小板新生性YRSポリペプチドで処置することができる症状を示すか、症状を示すリスクのある任意の動物が含まれる。適切な被験体(患者)には、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、家畜、および飼育動物またはペット(ネコまたはイヌなど)が含まれる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者が含まれる。典型的な被験体には、血小板新生性ポリペプチドによって調整することができる異常な量の1つまたは複数の生理学的活性(血小板数の減少または低減(すなわち、血小板減少症)など)を示すか、示すリスクのある動物が含まれる。典型的には、本明細書中で使用する場合、血小板減少症を有する(すなわち、血小板数が「低減した」)被験体は、正常な血小板数と比較して約100,000/mm以下、約110,000/mm以下、約120,000/mm以下、約130,000/mm以下、約140,000/mm以下、または約150,000/mm以下に血小板数が減少した被験体をいう。本明細書中で使用する場合、「正常な」血小板数は、一般に、被験体において約150,000/mm〜約450,000/mmの範囲である。一例として、「被験体」はまた、移植手順(幹細胞または骨髄の移植など)を受ける準備ができているか、受けているか、受けていた。被験体はまた、肺障害または肺疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)など)を有し得、そして/または肺の炎症に罹患し得る。
【0061】
本明細書中で使用する場合、「血小板新生」は、血小板(すなわち、栓球)の形成をいう。
【0062】
本明細書中に記載のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの「血小板新生有効濃度」は、典型的には血小板レベルの増加、血小板レベルの維持、巨核球数の増加、および/または好中球産生の増加によって測定される血小板新生の刺激または増強に「有効である」ことなどによって被験体を「処置する」ことができる量をいう。
【0063】
「巨核球」は、一般に、正常な血液凝固に必要な栓球(すなわち、血小板)産生を担う骨髄細胞をいう。巨核球は、典型的には、骨髄細胞10,000個あたり1個を占める。巨核球は、骨髄中の多能性造血幹細胞前駆細胞に由来する。トロンボポエチン(TPO)は、巨核球産生の一次シグナルである。すなわち、TPOは骨髄中の前駆細胞の最終巨核球表現型への分化の誘導に十分であるが、絶対に必要というわけではない。巨核球分化のための他の分子シグナルには、GM−CSF、IL−3、IL−6、IL−11、ケモカイン(SDF−1;FGF−4)、およびエリスロポエチンが含まれる。
【0064】
巨核球は、以下の系譜によって発達すると考えられている:CFU−Me(多能性造血幹細胞または血球芽細胞)→巨核芽球→前巨核球→巨核球。巨核芽球段階では、細胞はその分裂能力を喪失するが、依然としてそのDNAを複製して発達し続け、倍数体になることができる。成熟の際、巨核球は血小板産生過程を開始する。トロンボポエチンは、小さな原血小板過程(すなわち、放出前に血小板を保存するための細胞質内膜)を形成するための巨核球の誘導で役割を果たす。放出の際、これらの各原血小板過程により、2000〜5000個の新規の血小板が生じ得る。全体的に見て、新規に放出された血小板の約2/3が循環血中に残存し、約1/3が脾臓によって隔離されるであろう。血小板の放出後、残存する細胞核は、典型的には、骨髄障壁を通過して血液に到達し、肺胞マクロファージによって肺内で消費される。
【0065】
「好中球」または好中球性顆粒球は、一般に、ヒトにおける豊富な白血球型をいい、好塩基球および好酸球と共に多形核細胞ファミリー(PMN)の一部を形成する。好中球を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)組織学的または細胞学的調製物に対する固有の染色特性にしたがって容易に同定することができる。好中球は、通常、血流中に見出されるが、主に感染または癌の結果としての炎症の開始期(すなわち、急性)に炎症部位に遊走するための第1の炎症細胞群のうちの1つである。典型的には、好中球は最初に血管を介して遊走し、次いで炎症部位を起源とする化学的シグナル(例えば、インターロイキン−8(IL−8)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、およびC5a)後に間質組織に遊走する。「好中球減少症」は、先天性(遺伝性)障害(再生不良性貧血またはいくつかの種類の白血病の場合のような他の状態に起因して発症し得る)に起因し得る好中球数の低下をいう。一定の薬物適用(化学療法薬など)も好中球減少症を引き起こし得る。好中球減少症によって感染しやすくなる。好中球減少症はまた、細胞内好中球性寄生虫のコロニー形成に起因し得る。
【0066】
「増強する」もしくは「増強」、「増加する」もしくは「増加」、または「刺激する」もしくは「刺激」は、一般に、1つまたは複数の薬剤または組成物がYRSポリペプチドなしまたはコントロール分子/組成物のいずれかに原因する応答と比較して、細胞内のより高い生理学的応答(すなわち、下流エフェクター)を生成するか生じる能力をいう。測定可能な生理学的応答には、当該分野における理解から明らかであり、且つ本明細書中に記載のもののうち、特により高い細胞の成長、拡大、または遊走が含まれ得る。当該分野で公知の他の方法のうち、in vitroコロニー形成アッセイは、本明細書中に提供した薬剤に対する細胞応答を測定するための1つの方法である。「増加」または「増強」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、YRSポリペプチドなし(薬剤の非存在)またはコントロール組成物によって得られる量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍、またはこれを超える(例えば、500、1000倍)(その間且つ1を超える全ての整数および小数点以下を含む整数が含まれる)(例えば、1.5、1.6、1.7.1.8など)増加が含まれ得る。
【0067】
用語「低減する」は、一般に、診断分野の日常的技術にしたがって測定した場合に1つまたは複数の本発明のYRSポリペプチドが関連する生理学的または細胞的応答(疾患または状態(例えば、肺の炎症など)の症状など)を「減少させる」能力に関し得る。関連応答の1つの特定の例には、一定の組織(肺など)への免疫細胞(例えば、好中球)の遊走が含まれる。他の関連する生理学的または細胞的応答(in vivoまたはin vitro)は、当業者に明らかであろう。応答の「減少」は、YRSポリペプチドなしまたはコントロール組成物によって得られる応答と比較した場合に統計的に有意であり得る。
【0068】
「遊走」は、細胞遊走(本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知の日常的なin vitroアッセイにしたがって測定することができる過程)をいう(例えば、実施例8を参照のこと)。遊走はまた、in vivo 遊走(一方の組織から他方の組織へ(例えば、骨髄から末梢血へまたは末梢血から肺組織へ)または一方の組織内の部位から同一組織内の他方の部位への細胞の遊走など)をいう。in vivoでの遊走(例えば、走化性)は、しばしば、感染または損傷/刺激された組織に応答して起こる。
【0069】
「分化」は、低特殊化(例えば、多能性、全能性、多分化能性など)細胞がより特殊化された細胞型になる過程をいう。
【0070】
「脱感作」は、一般に、アレルゲンまたは刺激物質(外来抗原および「自己抗原」が含まれる)などの物質または刺激物に対する生物の負の(病理学的)免疫反応の低減または排除をいう。例えば、一定の肺の疾患または状態は外来刺激物質(煙など)に対する負の反応に関連し、その結果、これらの刺激物質に対する好中球の脱感作によってかかる疾患または状態および/またはその症状を防止(すなわち、発症リスクの低減)または低減することができる。
【0071】
本明細書中で使用する場合、「処置」または「処置すること」には、血小板減少症(すなわち、血小板レベルの低減)に関連する疾患または状態の症状または病理学または血小板減少症の発症リスクに及ぼす任意の望ましい影響が含まれ、治療される疾患または状態の1つまたは複数の測定可能なマーカーにおける最小の変化または改善でさえも含まれ得る。「処置」または「処置すること」は、必ずしも疾患または状態またはその関連する症状の完全な根絶または治癒を示さない。この処置を受ける被験体は、必要とする任意の動物(霊長類(特にヒト)および他の哺乳動物(ウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジなど)、ならびに一般的な家禽類およびペットが含まれる)である。臨床的改善を示す例示的マーカーには、本明細書中に記載の血小板新生性YRSポリペプチドの投与後の血小板数の増加、正常な血小板数の維持、および/または巨核球数の増加のいずれかが含まれる。
【0072】
「ベクター」は、ポリヌクレオチド分子、好ましくは、例えば、ポリヌクレオチドを挿入またはクローン化することができるプラスミド、バクテリオファージ、酵母、またはウイルス由来のDNA分子を意味する。ベクターは、好ましくは、1つまたは複数の固有の制限部位を含み、規定の宿主細胞(標的細胞もしくは標的組織またはその前駆細胞もしくは前駆組織が含まれる)中で自己複製することができるか、クローン化した配列を再生可能なように規定の宿主のゲノムに組み込むことができる。したがって、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外実体として存在し、その複製が染色体複製と無関係であるベクター(例えば、線状または閉じた環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体)であり得る。ベクターは、自己複製を保証するための任意の手段を含むことができる。あるいは、ベクターは、宿主細胞に組み込まれた場合、ゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるベクターであり得る。ベクター系は、宿主細胞のゲノムに導入されるべき総DNA(すなわち、トランスポゾン)と共に単一のベクターまたはプラスミド、2個以上のベクターまたはプラスミドを含むことができる。ベクターの選択は、典型的には、ベクターのベクターが導入される宿主細胞との適合性に依存するであろう。この場合、ベクターは、好ましくは、細菌細胞中で作動可能に機能的なベクターである。ベクターには、適切な形質転換体の選択のために使用することができる選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子など)も含まれ得る。
【0073】
用語「野生型」および「天然に存在する」を、天然に存在する供給源から単離した場合にその遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物をいうために交換可能に使用する。野生型の遺伝子または遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)は、集団中で最も頻繁に認められ、したがって、遺伝子の「通常」または「野生型」の形態が任意にデザインされるものである。
【0074】
血小板新生性チロシル−tRNAポリペプチドおよびそのバリアント
本発明は、その一部が、一定のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(その短縮物および/またはバリアントが含まれる)がin vivoでの天然の血小板新生過程を模倣および刺激するという予想外の所見に関する。したがって、本発明の血小板新生性ポリペプチドには、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの任意のその生物学的に活性なフラグメント、バリアント、または修飾物に加えて、全長チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが含まれ、ここで、ポリペプチドは、被験体中またはin vitroで血小板新生(すなわち、血小板形成)、巨核球の増殖および/または分化、および/または好中球の増殖を刺激することができる。
【0075】
アミノアシル−tRNAシンテターゼ(チロシル−tRNAシンテターゼなど)は、典型的には、その同族アミノ酸によってtRNAのアミノアシル化を触媒する。tRNA中に含まれるヌクレオチドトリプレットとのアミノ酸の連結におけるその中心的役割のために、アミノアシル−tRNAシンテターゼは、進化中に出現する第1のタンパク質中に含まれると考えられる。チロシル−tRNAシンテターゼは、特に、活性部位に2個の高度に保存された配列モチーフ(HIGHおよびKMSKS)を有するクラスItRNAシンテターゼファミリーに属する。クラスItRNAシンテターゼはアデノシンヌクレオチドの2’−OHをアミノアシル化し、これは通常単量体または二量体(それぞれ1個または2個のサブユニット)である。
【0076】
ヒトチロシル−tRNAシンテターゼは、以下の3つのドメインから構成される:1)活性化されたE・Tyr−AMP中間体の形成を担い、細菌、古細菌、および真核生物の間で保存されているアミノ末端ロスマンフォールドドメイン、2)細菌および真核生物の間で保存されていないtRNAアンチコドン認識ドメイン、および3)ヒトチロシル−tRNAシンテターゼに固有であり、その一次構造が、推定ヒトサイトカイン内皮単球活性化タンパク質IIに対して49%同一であり、Caenorhabditis elegans由来のメチオニル−tRNAシンテターゼのカルボキシル末端ドメインに対して50%同一であり、Saccharomyces cerevisiae由来のArc1pのカルボキシル末端ドメインに対して43%同一である、カルボキシル末端ドメイン。
【0077】
ヒトチロシル−tRNAシンテターゼの最初の2つのドメインは、それぞれS.cerevisiae、Methanococcus jannaschii、およびBacillus stearothermophilus由来のチロシル−tRNAシンテターゼに対して52%、36%、および16%同一である。B.stearothermophilus中でのチロシル−アデニレート複合体の形成に関与することが公知の15個のアミノ酸のうちの9個が全生物間で保存されているのに対して、tRNATyrの認識に関与するアミノ酸は保存されていない。Escherichia coli中で発現した組換えヒトおよびB.stearothermophilusのチロシル−tRNAシンテターゼの動態解析は、ヒトチロシル−tRNAシンテターゼがヒトtRNATyrをアミノアシル化するがB.stearothermophilusのtRNATyrをアミノアシル化せず、逆も真なりであることを示す。ヒトチロシル−tRNAシンテターゼのカルボキシル末端ドメインがメチオニル−tRNAシンテターゼのカルボキシル末端ドメインの遺伝子重複に由来し、酵素の活性部位にtRNAを誘導することができると考えられる。
【0078】
真核生物チロシル−tRNAシンテターゼの生物学的フラグメントにより、タンパク質合成が細胞シグナル伝達経路(血小板新生など)に関連づけられる。これらのフラグメントを、オルタナティブスプライシングまたはタンパク質分解のいずれかによって天然に産生することができる。例えば、本明細書中に提供されるように、血小板新生誘発性N末端フラグメントであるミニYRSはin vivoで血小板新生を刺激することができる。さらに、全長YRSポリペプチド配列の一定の変異により、野生型基準配列に血小板新生活性の増加が付与される(例えば、Y341A)。全長YRSポリペプチド配列の短縮スプライスバリアントの例には、図17〜19に記載のSP1〜SP5ポリペプチドが含まれる。
【0079】
ヒトミニYRS(すなわち、配列番号3またはミニTyr)の構造(触媒ドメインおよびアンチコドン認識ドメインの両方を含む)は、1.18Åの分解能までが報告されている。ヒトおよび細菌の酵素の触媒ドメインが重ね合わせられているのに対して、触媒ドメインと比較したアンチコドン認識ドメインの空間的配置は細菌オルソログと比較してミニYRSで固有である。いずれか1つの理論に拘束されることを望まないが、アンチコドン認識ドメインの固有の配向は、何故フラグメントであるミニYRSが種々の細胞シグナル伝達経路でより活性であるかを説明することができる。
【0080】
したがって、本発明の実施形態は、被験体における血小板新生の刺激のための血小板新生性YRSポリペプチド(その短縮ポリペプチド、バリアントポリペプチド、および/または修飾ポリペプチドが含まれる)を含む組成物の使用を意図する。本出願に含まれるバリアントタンパク質は生物学的に活性である(すなわち、バリアントタンパク質は基準YRSポリペプチド配列(例えば、配列番号1、2、3、6、8、10、12、および14)の血小板新生活性を保有し続ける)。かかるバリアントは、例えば、遺伝子多型または人工的操作に起因し得る。基準YRSポリペプチドフラグメントの生物学的に活性なバリアントは、デフォルトパラメーターを使用した本明細書中の他の場所に記載の配列アラインメントプログラムによって決定したところ、基準タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも40%、50%、60%、70%、一般に、少なくとも75%、80%、85%、通常、約90%〜95%またはこれを超え、典型的には、約98%またはこれを超える配列類似性または同一性を有するであろう。基準YRSポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、一般に、200、100、50、または20個ほどのアミノ酸残基、または適切にはわずか1〜15個のアミノ酸残基、わずか1〜10個(6〜10個など)、わずか5個、わずか4、3、2個、またはさらに1個のアミノ酸残基がそのタンパク質と異なり得る。いくつかの実施形態では、YRSポリペプチドは、配列番号1、2、3、6、8、10、12、および14中の基準配列と少なくとも1個であるが、15、10、または5個未満のアミノ酸残基が異なる。他の実施形態では、配列番号1、2、3、6、8、10、12、および14中の基準配列と少なくとも1個であるが、20%、15%、10%、または5%未満の残基が異なる。
【0081】
YRSポリペプチドを、種々の方法(アミノ酸の置換、欠失、短縮、および挿入が含まれる)で変更することができる。かかる操作方法は、当該分野で一般に公知である。例えば、短縮および/またはバリアントYRSポリペプチドのアミノ酸配列バリアントを、DNAの変異によって調製するころができる。変異誘発方法およびヌクレオチド配列の変更方法は、当該分野で周知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488−492),Kunkelら、(1987,Methods in Enzymol,154:367−382),U.S.Pat.No.4,873,192,Watson,J.D.ら(“Molecular Biology of the Gene”,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)およびその引用文献を参照のこと。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスを、Dayhoffら、(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに見出すことができる。点変異または短縮によって作製された組み合わせライブラリーの遺伝子産物のスクリーニング方法および所望の性質を有する遺伝子産物のcDNAライブラリーのスクリーニング方法は当該分野で公知である。かかる方法は、YRSポリペプチドの組み合わせ変異誘発によって生成された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適用可能である。反復アンサンブル変異誘発(REM)(ライブラリー中での機能的変異体の頻度を増強する技術)をスクリーニングアッセイと組み合わせて使用して、YRSポリペプチドバリアントを同定することができる(Arkin and Yourvan(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815;Delgraveら、(1993)Protein Engineering,6:327−331)。以下により詳細に考察した保存的置換(一方のアミノ酸の類似の性質を有する他方のアミノ酸との交換など)が望ましいかもしれない。
【0082】
血小板新生的に活性な短縮および/またはバリアントYRSポリペプチドは、基準YRSアミノ酸配列(例えば、配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14)と比較して、その配列に沿った種々の位置に保存的アミノ酸置換を含むことができる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換された置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当該分野で定義されており、一般に以下のように亜分類することができる。
【0083】
酸性:残基は、生理学的pHでのHイオンの喪失によって負電荷を有する。この残基は、ペプチドが生理学的pHの水媒体中に存在する場合に含まれるペプチドの高次構造中の表面の位置を探求するために水溶液によって誘引される。酸性側鎖を有するアミノ酸には、グルタミン酸およびアスパラギン酸が含まれる。
【0084】
塩基性:残基は、生理学的pHまたは1つまたは2つのそのpH単位内でのHイオンとの関連によって正電荷を有する(例えば、ヒスチジン)。この残基は、ペプチドが生理学的pHの水媒体中に存在する場合に含まれるペプチドの高次構造中の表面の位置を探求するために水溶液によって誘引される。塩基性側鎖を有するアミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる。
【0085】
荷電:残基は生理学的pHで荷電されている。したがって、酸性または塩基性の側鎖を有するアミノ酸(すなわち、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、およびヒスチジン)が含まれる。
【0086】
疎水性:残基は生理学的pHで荷電していない。この残基は、ペプチドが水媒体中に存在する場合に含まれるペプチドの高次構造中の内部の位置を探求するために水溶液によって忌避される。疎水性側鎖を有するアミノ酸には、チロシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、およびトリプトファンが含まれる。
【0087】
中性/極性:残基は生理学的pHで荷電していないが、残基は、ペプチドが水媒体中に存在する場合に含まれるペプチドの高次構造中の内部の位置を探求するように水溶液によって十分に忌避されない。中性/極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、システイン、ヒスチジン、セリン、およびトレオニンが含まれる。
【0088】
本記載はまた、極性基を欠く場合でさえもその側鎖が疎水性を付与するには十分に大きくないので、一定のアミノ酸を「小さい」と特徴づける。プロリンを例外として、「小さな」アミノ酸は、少なくとも1個の極性基が側鎖上に存在する場合に4個以下の炭素を有し、存在しない場合に3個以下の炭素を有するアミノ酸である。小さな側鎖を有するアミノ酸には、グリシン、セリン、アラニン、およびトレオニンが含まれる。遺伝子コードされた二次アミノ酸であるプロリンは、ペプチド鎖の二次高次構造に及ぼすその公知の影響のために特殊である。プロリンの構造は、その側鎖がα−アミノ基の窒素およびα−炭素に結合するという点で全ての他の天然に存在するアミノ酸と異なる。しかし、いくつかのアミノ酸類似性行列(例えば、Dayhoffら、(1978),A model of evolutionary change in proteins.Matrices for determining distance relationships In M.O.Dayhoff,(ed.),Atlas of protein sequence and structure,Vol.5,pp.345−358,National Biomedical Research Foundation,Washington DCおよびGonnetら、(Science,256:14430−1445,1992に開示)のPAM120行列およびPAM250行列)は、グリシン、セリン、アラニン、およびトレオニンと同一群内にプロリンを含む。したがって、本発明の目的のために、プロリンを「小さい」アミノ酸に分類する。
【0089】
極性または非極性としての分類に必要な誘引または反発の程度は任意である。したがって、本発明で特に意図されるアミノ酸を、いずれか一方として分類している。具体的に命名していないほとんどのアミノ酸を、公知の挙動に基づいて分類することができる。
【0090】
アミノ酸残基を、残基の側鎖置換基に関して環状または非環状および芳香族または非芳香族の自明の分類ならびに小さいまたは巨大とさらに亜分類することができる。さらなる極性置換基が存在する場合に全部で4個以下の炭素原子(カルボキシル炭素を含む)を含み、存在しない場合に3個以下を含む場合、残基を小さいと見なす。小さな残基は、勿論、常に非芳香族である。その構造特性に応じて、アミノ酸残基を2つ以上のクラスに分類することができる。天然に存在するタンパク質のアミノ酸について、このスキームにしたがった亜分類を表Aに示す。
【表A】

【0091】
保存的アミノ酸置換には、側鎖に基づいた分類も含まれる。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンである。脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群はセリンおよびトレオニンである。アミド含有側鎖を有するアミノ酸群はアスパラギンおよびグルタミンである。芳香族側鎖を有するアミノ酸群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンである。塩基性側鎖を有するアミノ酸群はリジン、アルギニン、およびヒスチジンである。硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群はシステインおよびメチオニンである。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンとの置換、アスパラギン酸のグルタミン酸との置換、トレオニンのセリンとの置換、またはアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸との類似の置換が得られたバリアントポリペプチドの性質に大きな影響を及ぼさないと予想することが妥当である。アミノ酸の変化によって機能的な短縮および/またはバリアントYRSポリペプチドが得られたかどうかを、本明細書中に記載のようにその活性の評価によって容易に決定することができる(例えば、実施例1および2を参照のこと)。保存的置換を、例示的置換という見出しで表Bに示す。本発明の範囲内で分類されるアミノ酸置換を、一般に、(a)置換領域中のペプチド骨格の構造、(b)標的部位の分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の嵩の維持に及ぼすその影響において有意に異ならない置換の選択によって行う。置換基の導入後、バリアントを生物学的活性についてスクリーニングする。
【表B】

【0092】
あるいは、保存的置換を行うための類似のアミノ酸を、側鎖の同一性に基づいて3つのカテゴリーに分類することができる。Zubay,G.,Biochemistry,third edition,Wm.C.Brown Publishers(1993)に記載のように、第1の群には、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン(全て荷電側鎖を有する)が含まれる。第2の群には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギンが含まれる。第3の群には、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンが含まれる。
【0093】
したがって、短縮および/またはバリアントYRSポリペプチド中の予想される非必須アミノ酸残基を、典型的には、同一の側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基に置換する。あるいは、飽和変異誘発などによってYRSコード配列の全部または一部にそって無作為に変異を導入することができ、得られた変異体を親ポリペプチドの活性についてスクリーニングしてその活性が保持される変異体を同定することができる。コード配列の変異誘発後、コードされたペプチドを組換え的に発現させ、ペプチドの活性を決定することができる。「非必須」アミノ酸残基は、1つまたは複数のその活性の消滅や実質的変化を生じることなく実施形態のポリペプチドの野生型配列から変更することができる残基である。適切には、変更により、これらの活性の1つを実質的に消失させない。例えば、活性は、野生型の少なくとも20%、40%、60%、70%、または80%、100%、500%、1000%、またはこれを超える。「必須」アミノ酸残基は、基準短縮YRSポリペプチドの野生型配列から変更した場合に野生型活性の20%未満しか存在しないように親分子の活性が消失する残基である。例えば、かかる必須アミノ酸残基には、異なる種にわたってYRSポリペプチド中に保存された残基(種々の供給源由来のYRSポリペプチドの血小板新生刺激結合部位またはモチーフ中に保存された配列が含まれる)が含まれる。
【0094】
したがって、本発明は、天然に存在するYRSポリペプチド配列またはその生物学的に活性なフラグメントのバリアントも意図し、このバリアントは、1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、欠失、または置換によって天然に存在する配列と区別される。一般に、バリアントは、基準YRSポリペプチド配列(例えば、配列番号1、2、3、6、8、10、12、および14に記載)と少なくとも約30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の同一性または類似性または配列同一性を示すであろう。さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100個またはこれを超えるアミノ酸の付加、欠失、または置換によって未変性配列または親配列と異なるが、親または基準のYRSポリペプチド配列の性質を保持する配列を意図する。一定の実施形態では、短縮YRSポリペプチドが被験体中またはin vitroでの血小板新生(すなわち、血小板形成)、巨核球の増殖および/または分化、および/または好中球増殖を刺激することができる限り、配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のいずれかのC末端またはN末端領域を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250個、またはこれを超えるアミノ酸(その間の全ての整数(例えば、101、102、103、104、105)が含まれる)によって短縮することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチドは、基準YRS配列と少なくとも1個であるが50、40、30、20、15、10、8、6、5、4、3、または2個未満のアミノ酸残基が異なる。他の実施形態では、バリアントポリペプチドは、配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14の対応する配列と少なくとも1%であるが、20%、15%、10%、または5%未満の残基が異なる(この比較にアラインメントが必要な場合、配列を最大に類似するようにアラインメントすべきである。欠失、挿入、またはミスマッチから「ループ」アウトした配列を異なると見なす)。相違は、適切には、非必須残基または保存的置換での相違または変化である。
【0096】
一定の実施形態では、バリアントポリペプチドには、例えば、配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のYRSポリペプチドの対応する配列と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、またはこれを超える配列の同一性または類似性を有するアミノ酸配列が含まれ、被験体において血小板新生を刺激し、被験体において巨核球の増殖および/または分化を刺激し、そして/または被験体において好中球の増殖を刺激する能力を有する。YRSポリペプチドバリアントの例には、R93Q置換、I14L置換、N17G置換、L271置換、A85S置換、V156L置換、およびその組み合わせから選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を有する全長YRSポリペプチドまたはその短縮もしくはスプライスバリアントが含まれるが、これらに限定されない。YRSポリペプチドバリアントの特定の例には、R93Q置換を有する配列番号1のアミノ酸1〜364を有するYRSポリペプチド、I14L置換を有する配列番号1のアミノ酸1〜353を有するYRSポリペプチド、N17G置換を有する配列番号1のアミノ酸1〜353を有するYRSポリペプチド、L27I置換を有する配列番号1のアミノ酸1〜353を有するYRSポリペプチド、A85S置換を有する配列番号1のアミノ酸1〜353を有するYRSポリペプチド、およびV156L置換を有する配列番号1のアミノ酸1〜353を有するYRSポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
配列間の配列類似性または配列同一性(本用語を本明細書中で交換可能に使用する)の計算を以下のように行う。2個のアミノ酸配列または2個の核酸配列の同一率を決定するために、最適に比較されるように配列をアラインメントする(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)。一定の実施形態では、比較のためにアラインメントされる基準配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置を第2の配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドが占める場合、分子はその位置で同一である。
【0098】
2配列間の同一率は、2配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列が共有する同一の位置の数の関数である。
【0099】
2配列間の配列の比較および同一率の決定を、数学アルゴリズムを使用して行うことができる。好ましい実施形態では、2アミノ酸配列間の同一率を、Blossum62行列またはPAM250行列のいずれか、ギャップウェイト16、14、12、10、8、6、または4、およびレングスウェイト1、2、3、4、5、または6を用いたGCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comから利用可能)中のGAPプログラムに組み込まれたNeedleman and Wunsch,(1970,J.Mol.Biol.48:444−453)アルゴリズムを使用して決定する。さらに別の好ましい実施形態では、2ヌクレオチド配列間の同一率を、NWSgapdna.CMP行列、ギャップウェイト40、50、60、70、または80、およびレングスウェイト1、2、3、4、5、または6を用いたGCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comから利用可能)中のGAPプログラムを使用して決定する。特に好ましいパラメーター組(および他で特定しない限り使用すべきパラメーター)は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5を使用したBlossum62スコアリング行列である。
【0100】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の間の同一率を、PAM120重み残基表、ギャップレングスペナルティ12、およびギャップペナルティ4を用いたALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.Meyers and W.Millerのアルゴリズム(1989,Cabios,4:11−17)を使用して決定することができる。
【0101】
本明細書中に記載の核酸配列およびタンパク質配列を、公開データベースを検索するための「問い合わせ配列」として使用して、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定することができる。かかる検索を、Altschulら、(1990,J.Mol.Biol,215:403−10)のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス=12を使用して行い、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3を使用して行い、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較のためのギャップ挿入アラインメントを得るために、Altschulら、(1997,Necreic Acids Res,25:3389−3402)に記載のようにGapped BLASTを使用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる。
【0102】
YRSポリペプチドのバリアントを、YRSポリペプチドの変異体の組み合わせライブラリーのスクリーニングによって同定することができる。YRSタンパク質コード配列のライブラリーまたはフラグメント(例えば、N末端、C末端、または内部フラグメント)を使用して、YRSポリペプチドのバリアントのスクリーニングおよびその後の選択のための異型フラグメント集団を生成することができる。
【0103】
点変異および短縮によって作製した組み合わせライブラリーの遺伝子産物のスクリーニング方法および選択された性質を有する遺伝子産物のcDNAライブラリーのスクリーニング方法は当該分野で公知である。かかる方法を、YRSポリペプチドの組み合わせ変異誘発によって生成された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適用可能である。
【0104】
本発明はまた、血小板新生の刺激のためのYRSキメラタンパク質または融合タンパク質の使用を意図する。本明細書中で使用する場合、YRS「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」には、別のYRS−ポリペプチド(例えば、複数のフラグメントを作製するため)、非YRSポリペプチドのいずれか、またはその両方に連結したYRSポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントが含まれる。「非YRSポリペプチド」は、YRSタンパク質と異なり、且つ同一または異なる生物に由来するタンパク質に対応するアミノ酸配列を有する「異種ポリペプチド」をいう。融合タンパク質のYRSポリペプチドは、生物学的に活性なYRSアミノ酸配列の全部または一部に対応し得る。一定の実施形態では、YRS融合タンパク質には、少なくとも1つ(または2つ)のYRSタンパク質の生物学的に活性な部分が含まれる。融合タンパク質を形成するポリペプチドは、C末端をC末端に、N末端をN末端に、またはN末端をC末端に連結することもできるが、典型的には、C末端をN末端に連結させる。融合タンパク質のポリペプチドは任意の順序であって良い。
【0105】
ポリペプチドの血小板新生活性に悪影響を及ぼさない場合、融合パートナーを本質的に任意の所望の目的のためにデザインし、含めることができる。例えば、1つの実施形態では、融合パートナーは、未変性の組換えタンパク質よりも高い収量でのタンパク質発現を補助する配列(発現エンハンサー)を含むことができる。他の融合パートナーを、タンパク質の溶解性を増加させるためか、タンパク質を所望の細胞内区画にターゲティングすることができるように選択することができる。
【0106】
融合タンパク質は、リガンドに対して高親和性を有する部分を含むことができる。例えば、融合タンパク質は、YRS配列がGST配列のC末端に融合されるGST−YRS融合タンパク質であり得る。別の例として、YRSポリペプチドのC末端に8アミノ酸タグ(L−E−H−H−H−H−H−H(配列番号5)タグなど)を融合することができる。一定の実施形態では、YRSポリペプチドのアミノ酸1〜364のC末端に365−L−E−H−H−H−H−H−H−372(配列番号5)タグを融合する。かかる融合タンパク質は、YRSポリペプチドの精製および/または同定を容易にすることができる。あるいは、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含むYRSタンパク質であり得る。一定の宿主細胞では、YRSタンパク質の発現および/または分泌を、異種シグナル配列を使用して増加させることができる。
【0107】
より一般的には、異種配列(Fcフラグメントなど)への融合を使用して、血小板新生性YRSポリペプチドの望ましくない特徴を除去し、または所望の特徴(例えば、薬物動態学的性質)を改善することができる。例えば、異種配列への融合により、血小板新生性YRSポリペプチドの化学的安定性を増加させ、免疫原性を減少させ、in vivoターゲティングを改善し、そして/または循環血液中の半減期を増加させることができる。
【0108】
異種配列への融合を使用して、二官能性融合タンパク質(YRSポリペプチドによって血小板新生、巨核球の増殖および/または分化、および/または好中球増殖を刺激することができるだけでなく、異種ポリペプチドによって他の経路を改変(すなわち、刺激または阻害)することもできる二官能性タンパク質など)を作製することもできる。かかる経路の例には、種々の免疫系関連経路(自然免疫または適応免疫活性化経路など)または細胞成長調節経路(造血および血管形成など)が含まれるが、これらに限定されない。一定の態様では、異種ポリペプチドはYRSポリペプチドと相乗的に作用して、被験体における血小板新生および/または造血関連経路を刺激することができる。二官能性融合タンパク質を作製するために使用することができる異種ポリペプチドの例には、その生物学的に活性なフラグメントおよび/またはバリアントに加えて、トロンボポエチン、サイトカイン(例えば、IL−11)、ケモカイン、および種々の造血成長因子が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
融合タンパク質を、一般に、標準的な技術を使用して調製することができる。例えば、所望の融合物のポリペプチド成分をコードするDNA配列を個別にアセンブリし、適切な発現ベクターにライゲーションすることができる。ペプチドリンカーを使用するか使用しないで、一方のポリペプチド成分をコードするDNA配列の3’末端を、配列の読み取り枠が一致するように第2のポリペプチド成分をコードするDNA配列の5’末端にライゲーションする。これにより、両方の成分ポリペプチドの生物活性を保持した単一の融合タンパク質に翻訳される。
【0110】
ペプチドリンカー配列を使用して、各ポリペプチドが必要に応じてその二次構造および三次構造に確実に折り畳まれるのに十分な距離で第1および第2のポリペプチド成分を分離することができる。かかるペプチドリンカー配列を、当該分野で周知の標準的な技術を使用して融合タンパク質に組み込む。一定のペプチドリンカー配列を、以下の要因に基づいて選択することができる:(1)可動性の伸長高次構造を採用する能力、(2)第1および第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互に作用し得る二次構造を採用することができないこと、および(3)ポリペプチド機能エピトープと反応し得る疎水性または荷電残基を欠くこと。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly残基、Asn残基、およびSer残基を含む。他の中性に近いアミノ酸(ThrおよびAlaなど)を、リンカー配列中で使用することもできる。リンカーとして有用に使用することができるアミノ酸配列には、Marateaら、Gene 40:39 46(1985);Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258 8262(1986);米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示のアミノ酸配列が含まれる。リンカー配列は、一般に、1〜約50アミノ酸長であり得る。第1および第2のポリペプチドが機能的ドメインを分離し、立体干渉を防止するために使用することができる非必須N末端アミノ酸領域を有する場合、リンカー配列は必要ない。
【0111】
ライゲーションしたDNA配列を、適切な転写または翻訳調節エレメントに作動可能に連結することができる。DNA発現を担う調節エレメントは、第1のポリペプチドをコードするDNA配列の5’側に存在する。同様に、翻訳および転写終結シグナルを終結するために必要な終止コドンは、第2のポリペプチドをコードするDNA配列の3’側に存在する。
【0112】
一般に、ポリペプチドおよび融合ポリペプチド(ならびにそのコードするポリヌクレオチド)を単離する。「単離」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、その元の環境から取り出されたものである。例えば、天然の系で共存する物質のいくつかまたは全てから分離されている場合、天然に存在するタンパク質は単離されている。好ましくは、かかるポリペプチドの純度は、少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約99%である。例えば、自然環境の一部ではないベクターにクローン化された場合、ポリヌクレオチドは単離されたと見なされる。
【0113】
一定の実施形態はまた、YRSポリペプチドの二量体を含む。二量体には、例えば、2つの同一のYRSポリペプチド間のホモ二量体、2つの異なるYRSポリペプチド間(例えば、全長YRSポリペプチドと短縮YRSポリペプチドとの間)のヘテロ二量体、および/またはYRSポリペプチドと異種ポリペプチドとの間のヘテロ二量体が含まれ得る。本明細書中に記載のように、一定のヘテロ二量体(YRSポリペプチドと異種ポリペプチドとの間のヘテロ二量体など)は、二官能性であり得る。
【0114】
本発明の一定の実施形態はまた、本明細書中に記載のように、修飾YRSポリペプチド(YRSポリペプチドの所望の特徴に改善した修飾が含まれる)の使用を意図する。本発明のYRSポリペプチドの修飾には、1つまたは複数の成分アミノ酸での化学的および/または酵素的誘導体化(側鎖修飾、骨格修飾、N末端およびC末端修飾(アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化が含まれる)、ならびに炭水化物または脂質部分および捕因子の付着などが含まれる)が含まれる。例示的修飾には、YRS−ポリペプチドのペグ化も含まれる(例えば、Veronese and Harris,Advanced Drug Delivery Reviews 54:453−456,2002(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0115】
一定の態様では、化学選択的ライゲーションテクノロジーを使用して、部位特異的様式および制御様式でのポリマーの付着などによって本発明の短縮YRSポリペプチドを修飾することができる。かかるテクノロジーは、典型的には、化学的手段または組換え手段のいずれかによるタンパク質骨格への化学選択的アンカーの組み込みおよび相補的リンカーを保有するポリマーでのその後の修飾に依存する。結果として、アセンブリ過程および得られたタンパク質−ポリマー抱合体の共有結合性構造を調節することができ、それにより、薬物の性質(有効性および薬物動態性など)を合理的に至適化することが可能である(例えば、Kochendoerfer,Current Opinion in Chemical Biology 9:555−560,2005を参照のこと)。
【0116】
本発明の短縮および/またはバリアントYRSポリペプチドを、当業者に公知の任意の適切な手順(組換え技術など)によって調製することができる。例えば、YRSポリペプチドを、(a)短縮YRSポリペプチドをコードし、調節エレメントに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列を含む構築物を調節する工程、(b)宿主細胞に構築物を導入する工程、(c)宿主細胞を培養して短縮YRSポリペプチドを発現させる工程、および(d)宿主細胞から短縮および/またはバリアントYRSポリペプチドを単離する工程を含む手順によって調製することができる。説明に役立つ例では、ヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載されているかこれに由来するポリペプチド配列の少なくとも1つの生物学的に活性な部分またはその生物学的に活性なバリアントもしくはフラグメントをコードする。組換えYRSポリペプチドを、例えば、Sambrookら、(1989、前出)(特に16項および17項);Ausubelら、(1994、前出)(特に10章および16章);およびColiganら、Current Protocols in Protein Science(John Wiley & Sons,Inc.1995−1997)(特に1章、5章、および6章)に記載の標準的プロトコールを使用して都合良く調製することができる。
【0117】
組換え産生方法に加えて、本発明のポリペプチドおよびそのフラグメントを、固相技術を使用した直接ペプチド合成(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154(1963))によって産生することができる。タンパク質合成を、手動法または自動化を使用して行うことができる。自動化合成を、例えば、Applied Biosystems 431Aペプチド合成機(Perkin Elmer)を使用して行うことができる。あるいは、種々のフラグメントを個別に化学合成し、化学的方法を使用して組み合わせて所望の分子を産生することができる。
【0118】
ポリヌクレオチド組成物
本発明はまた、本発明のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(その短縮および/またはバリアントが含まれる)をコードする単離ポリヌクレオチドおよびかかるポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0119】
本明細書中で使用する場合、用語「DNA」、「ポリヌクレオチド」、および「核酸」は、特定の種の総ゲノムDNAから単離されたDNA分子をいう。したがって、ポリペプチドをコードするDNAセグメントは、1つまたは複数のコード配列を含むが、DNAセグメントが得られる種の総ゲノムDNAから実質的に単離または精製されているDNAセグメントをいう。用語「DNAセグメント」および「ポリヌクレオチド」は、DNAセグメントおよびかかるセグメントのより小さなフラグメントであり、組換えベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ファージミド、ファージ、およびウイルスなどが含まれる)でもあることが本発明の範囲内に含まれる。
【0120】
当業者に理解されるように、本発明のポリヌクレオチド配列には、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドなどを発現するか発現するように適合することができるゲノム配列、ゲノム外配列、プラスミドコード配列、およびより小さな操作された遺伝子セグメントが含まれ得る。かかるセグメントを、天然に単離するか、人の手によって合成的に修飾することができる。
【0121】
当業者によって認識されるように、ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード配列またはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノムDNA、cDNA、または合成DNA)分子またはRNA分子であり得る。さらなるコード配列または非コード配列は、本発明のポリヌクレオチド内に存在することができ(必要でない場合あり)、ポリヌクレオチドを他の分子および/または支持材料に連結することができる(必要でない場合あり)。
【0122】
ポリヌクレオチドは、未変性配列(すなわち、チロシル−tRNAシンテターゼまたはその一部をコードする内因性配列)を含むことができるか、かかる配列のバリアントまたは生物学的に機能的な等価物を含むことができる。ポリヌクレオチドバリアントは、以下にさらに記載するように、好ましくはコードされたポリペプチドの血小板新生活性が未修飾ポリペプチドと比較して実質的に低下するように、1つまたは複数の置換、付加、欠失、および/または挿入を含むことができる。コードされたポリペプチドの血小板新生活性に及ぼす影響を、一般に、本明細書中に記載のように評価することができる。
【0123】
さらなる実施形態では、本発明は、チロシル−tRNAシンテターゼと同一であるか相補的である配列の種々の長さの連続ストレッチを含む単離ポリヌクレオチドであって、単離ポリヌクレオチドが本明細書中に記載の短縮チロシルtRNAシンテターゼをコードする、単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0124】
本出願のYRSポリペプチドをコードする例示的ヌクレオチド配列は、全長YRS遺伝子(配列番号4、7、9、11、13、および15のポリヌクレオチド配列など)およびYRS遺伝子の全長または実質的に全長のヌクレオチド配列の一部、またはその転写物またはこれらの転写物のDNAコピーを含む。YRSヌクレオチド配列の一部は、基準ポリペプチドの生物学的活性を保持するポリペプチドの一部またはセグメントをコードすることができる。YRSポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントをコードするYRSヌクレオチド配列の一部は、少なくとも約20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、300、または400個の連続するアミノ酸残基、または全長YRSポリペプチド中に存在するほぼ総アミノ酸数までをコードすることができる。本文脈および本明細書中で使用される全ての他の文脈において、「中程度の長さ」は、引用した値の間の任意の長さ(101、102、103など、151、152、153など、201、202、203など)を意味すると容易に理解されるであろう。
【0125】
本発明のポリヌクレオチドは、それ自体のコード配列の長さと無関係に、その長さ全体を非常に変動させることができるように、他のDNA配列(プロモーター、ポリアデニル化シグナル、さらなる制限酵素部位、多重クローニング部位、および他のコードセグメントなど)と組み合わせることができる。したがって、ほとんどの任意の長さのポリヌクレオチドフラグメントを使用することができることが意図され、意図する組換えDNAプロコールでの調製および使用が容易なように全長が制限されることが好ましい。
【0126】
本発明はまた、YRSヌクレオチド配列のバリアントを意図する。核酸バリアントは天然に存在しても(対立遺伝子バリアント(同一遺伝子座)、ホモログ(異なる遺伝子座)、およびオルソログ(異なる生物))、天然に存在しなくても良い。天然に存在するバリアント(これらなど)を、周知の分子生物学技術(例えば、当該分野で公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリッド形成技術)を使用して同定することができる。天然に存在しないバリアントを、変異誘発技術(ポリヌクレオチド、細胞、または生物に適用される変異誘発技術が含まれる)によって作製することができる。バリアントは、ヌクレオチドの置換、欠失、逆位、および挿入を含むことができる。コード領域および非コード領域のいずれかまたは両方で変動が起こり得る。変動により、保存的および非保存的アミノ酸置換物を産生することができる(コードされた産物と比較した場合)。ヌクレオチド配列について、保存的バリアントには、遺伝暗号の縮重のために、基準YRSポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号1、2、3、6、8、10、12、および14に記載の配列など)をコードする配列が含まれる。バリアントヌクレオチド配列には、合成的に誘導されたヌクレオチド配列(例えば、部位特異的変異誘発の使用によって生成されたが、依然としてYRSポリペプチドをコードする配列など)も含まれる。一般に、特定のYRSヌクレオチド配列のバリアントは、デフォルトパラメーターを使用した本明細書の他の場所に記載の配列アラインメントプログラムによって決定したところ、特定のヌクレオチド配列と少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、一般に少なくとも約75%、80%、85%、望ましくは約90%〜95%またはこれを超える、より適切には約98%以上の配列同一性を有するであろう。
【0127】
YRSヌクレオチド配列を使用して、他の生物、特に他の生物または微生物から対応する配列および対立遺伝子を単離することができる。核酸配列のハイブリッド形成方法を当該分野で容易に利用可能である。他の生物由来のコード配列を、本明細書中に記載のコード配列とのその配列同一性に基づいた周知の技術にしたがって単離することができる。これらの技術では、既知のコード配列の全部または一部を、選択された生物由来のクローン化されたゲノムDNAフラグメントまたはcDNAフラグメントの集団(すなわち、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー)中に存在する他のYRS−コード配列と選択的にハイブリッド形成するプローブとして使用する。
【0128】
したがって、本発明はまた、下記のストリンジェンシー条件下で基準YRSヌクレオチド配列またはその相補物とハイブリッド形成するポリヌクレオチドを意図する。本明細書中で使用する場合、用語「低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー、または超高ストリンジェンシーな条件下でハイブリッド形成する」は、ハイブリッド形成および洗浄のための条件を説明している。ハイブリッド形成反応の実施のためのガイダンスを、Ausubelら、(1998,supra),Sections 6.3.1−6.3.6に見出すことができる。水性および非水性の方法はこのリファレンスに記載されており、いずれかを使用することができる。低ストリンジェンシー条件に関する本明細書中の基準には、42℃でのハイブリッド形成のための少なくとも約1%v/v〜少なくとも約15%v/vホルムアミドおよび少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩ならびに42℃での洗浄のための少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩が含まれる。低ストリンジェンシー条件には、65℃でのハイブリッド形成のための1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO(pH7.2)、7%SDS、および室温での洗浄のための(i)2×SSC、0.1%SDSまたは(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO(pH7.2)、5%SDSも含まれ得る。低ストリンジェンシー条件の1つの実施形態には、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリッド形成およびその後の少なくとも50℃(低ストリンジェンシー条件のために洗浄温度を55℃に増加させることができる)での0.2×SSC、0.1%SDSでの2回の洗浄が含まれる。中ストリンジェンシー条件には、42℃でのハイブリッド形成のための少なくとも約16%v/v〜少なくとも約30%v/vホルムアミドおよび少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9M塩ならびに55℃での洗浄のための少なくとも約0.1M〜少なくとも約0.2M塩が含まれる。中ストリンジェンシー条件には、65℃でのハイブリッド形成のための1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO(pH7.2)、7%SDS、および60〜65℃での洗浄のための(i)2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO(pH7.2)、5%SDSも含まれ得る。中ストリンジェンシー条件の1つの実施形態には、約45℃での6×SSC中でのハイブリッド形成およびその後の60℃での0.2×SSC、0.1%SDS中での1回または複数回の洗浄が含まれる。高ストリンジェンシー条件には、42℃でのハイブリッド形成のための少なくとも約31%v/v〜少なくとも約50%v/vホルムアミドおよび約0.01M〜約0.15M塩、および55℃での洗浄のための約0.01M〜約0.02M塩が含まれる。高ストリンジェンシー条件には、65℃でのハイブリッド形成のための1%BSA、1mM EDTA、0.5 M NaHPO(pH7.2)、7%SDS、および65℃超での洗浄のための(i)0.2×SSC、0.1%SDSまたは(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO(pH7.2)、1%SDSも含まれ得る。高ストリンジェンシー条件の1つの実施形態には、約45℃での6×SSC中でのハイブリッド形成およびその後の65℃での0.2×SSC、0.1%SDS中の1回または複数回の洗浄が含まれる。
【0129】
一定の実施形態では、YRSポリペプチドは、超高ストリンジェンシー条件で開示のヌクレオチド配列とハイブリッド形成するポリヌクレオチドによってコードされる。超高ストリンジェンシー条件の1つの実施形態には、65℃での0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS中でのハイブリッド形成およびその後の65℃での0.2×SSC、1%SDS中での1回または複数回の洗浄が含まれる。
【0130】
他のストリンジェンシー条件が当該分野で周知である。当業者は種々の要因を操作してハイブリッド形成の特異性を最適にすることができると認識するであろう。最終洗浄のストリンジェンシーの至適化は、高ハイブリッド形成度を確実にするのに役立ち得る。詳細な例については、Ausubelら、前出の2.10.1〜2.10.16頁およびSambrookら、(1989、前出)の第1.101項〜第1.104項を参照のこと。
【0131】
ストリンジェントな洗浄を典型的には約42℃〜68℃で行うが、当業者は他の温度がストリンジェントな条件に適切であり得ると認識するであろう。DNA−DNAハイブリッドの形成についてはTより約20℃〜25℃低い温度で最大ハイブリッド形成率が得られる。Tは融点(すなわち、2つの相補的ポリヌクレオチド配列が解離する温度)であることが当該分野で周知である。Tを評価する方法は当該分野で周知である(Ausubelら、前出の2.10.8頁を参照のこと)。
【0132】
一般に、DNAの好ましく適合した二重鎖のTを、以下の式によって近似値として予想することができる:T=81.5+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−(600/長さ)(式中、MはNa濃度(好ましくは0.01モル〜0.4モルの範囲)であり、%G+Cは総塩基数の比率としてのグアノシン塩基とシトシン塩基との和(30%G+Cと75%G+Cとの間の範囲内)であり、%ホルムアミドはホルムアミドの体積%濃度であり、長さはDNA二重鎖中の塩基対の数である)。二重鎖DNAのTは、無作為にミスマッチした塩基対数の1%増加毎に約1℃低下する。一般に、高ストリンジェンシーのためのT−15℃または中程度のストリンジェンシーのためのT−30℃で洗浄を行う。
【0133】
ハイブリッド形成手順の一例では、固定化DNAを含む膜(例えば、ニトロセルロース膜またはナイロン膜)を、標識したプローブを含むハイブリッド形成緩衝液(50%脱イオンホルムアミド、5×SSC、5×デンハート液(0.1%ficoll、0.1%ポリビニルピロリドン、および0.1%ウシ血清アルブミン)、0.1%SDS、および200mg/mL変性サケ精子DNA)中にて42℃で一晩ハイブリッド形成させる。次いで、膜を、2回の連続する中ストリンジェンシー洗浄(すなわち、2×SSC、0.1%SDS中にて45℃で15分間、その後に2×SSC、0.1%SDS中にて50℃で15分間)、およびその後の2回の連続するより高いストリンジェンシーでの洗浄(すなわち、0.2×SSC、0.1%SDS中にて55℃で12分間およびその後の0.2×SSCおよび0.1%SDS溶液中にて65〜68℃で12分間)に供する。
【0134】
ポリヌクレオチドおよびその融合物を、当該分野で公知であり、且つ利用可能な種々の十分に確立された技術のいずれかを使用して調製、操作、および/または発現することができる。例えば、本発明のポリペプチドまたはその融合タンパク質もしくは機能的等価物をコードするポリヌクレオチド配列を組換えDNA分子中で使用して、適切な宿主細胞中での短縮および/またはバリアントチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの発現を指示することができる。遺伝暗号の固有の縮重により、実質的に同一であるか機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を産生することができ、これらの配列を使用して所与のポリペプチドをクローン化および発現することができる。
【0135】
当業者によって理解されるように、天然に存在しないコドンを保有するポリペプチドコードヌクレオチド配列を産生することがいくつかの例で有利であり得る。例えば、特定の原核生物宿主または真核生物宿主による好ましいコドンを、タンパク質発現率を増加させるか、所望の性質(天然に存在する配列から生成した転写物よりも長い半減期など)を有する組換えRNA転写物が産生されるように選択することができる。
【0136】
さらに、種々の理由(遺伝子産物のクローニング、プロセシング、発現、および/または活性を改変する変更が含まれるが、これらに限定されない)のためにポリペプチドコード配列を変更するために、本発明のポリヌクレオチド配列を当該分野で一般に公知の方法を使用して操作することができる。
【0137】
所望のポリペプチドを発現するために、ポリペプチドまたは機能的等価物をコードするヌクレオチド配列を、適切な発現ベクター(すなわち、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含むベクター)に挿入することができる。当業者に周知の方法を使用して、目的のポリペプチドをコードする配列ならびに適切な転写および翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換えが含まれる。かかる技術は、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(1989)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology(1989)に記載されている。
【0138】
種々の発現ベクター/宿主系が公知であり、ポリヌクレオチド配列を含め、且つ発現させるために使用することができる。これらには、組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌などの微生物、酵母発現ベクターで形質転換した酵母、ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系、ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV))または細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系、または動物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
発現ベクター中に存在する「調節エレメント」または「調節配列」は、転写および翻訳するために宿主細胞タンパク質と相互作用するベクターの非翻訳領域(エンハンサー、プロモーター、5’および3’非翻訳領域)である。かかるエレメントは、その強度および特異性が変動し得る。使用されるベクター系および宿主に応じて、任意の数の適切な転写および翻訳エレメント(構成的および誘導性のプロモーターが含まれる)を使用することができる。例えば、細菌系でクローン化する場合、誘導性プロモーター(PBLUESCRIPTファージミド(Stratagene,La Jolla,Calif.)またはPSPORT1プラスミド(Gibco BRL,Gaithersburg,Md.)のハイブリッドlacZプロモーターなど)を使用することができる。哺乳動物細胞系では、哺乳動物遺伝子または哺乳動物ウイルス由来のプロモーターが一般に好ましい。ポリペプチドをコードする配列の複数のコピーを含む細胞株を生成する必要がある場合、SV40またはEBVベースのベクターを適切な選択マーカーと共に使用することが有利であり得る。
【0140】
細菌系では、多数の発現ベクターを、発現したポリペプチドの意図する用途に応じて選択することができる。例えば、大量に必要である場合、容易に精製される融合タンパク質の高レベル発現を指示するベクターを使用することができる。かかるベクターには、多機能性E.coliクローニングベクターおよび発現ベクター(BLUESCRIPT(Stratagene)(ハイブリッドタンパク質が産生されるように目的のポリペプチドをコードする配列をアミノ末端Met配列および続くβ−ガラクトシダーゼの7残基とインフレームでベクターにライゲーションすることができる)など)、pINベクター(Van Heeke&Schuster,J.Biol.Chem.264:5503 5509(1989))などが含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクター(Promega,Madison,Wis.)を使用して、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現することもできる。一般に、かかる融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズへの吸着およびその後の遊離グルタチオンの存在下での溶離によって溶解細胞から容易に精製することができる。かかる系で作製したタンパク質を、クローン化した目的のポリペプチドを任意にGST部分から放出することができるようにヘパリン、トロンビン、または第XA因子プロテアーゼ切断部位を含むようにデザインすることができる。
【0141】
酵母Saccharomyces cerevisiaeでは、構成的または誘導性プロモーター(α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHなど)を含む多数のベクターを使用することができる。総説については、Ausubelら、(前出)およびGrantら、Methods Enzymol.153:516−544(1987)を参照のこと。
【0142】
植物発現ベクターを使用する場合、ポリペプチドをコードする配列の発現を、多数のプロモーターのいずれかによって駆動することができる。例えば、ウイルスプロモーター(CaMVの35Sおよび19Sプロモーターなど)を単独で使用するか、TMV由来のΩリーダー配列と組み合わせて使用することができる(Takamatsu,EMBO J.6:307−311(1987))。あるいは、植物プロモーター(RUBISCOの小サブユニットまたは熱ショックプロモーターなど)を使用することができる(Coruzziら、EMBO J.3:1671−1680(1984);Broglieら、Science 224:838−843(1984);およびWinterら、Results Probl.Cell Differ.17:85−105(1991))。これらの構築物を、直接DNA形質転換または病原体媒介トランスフェクションによって植物細胞に導入することができる。かかる技術は、多数の一般的に利用可能な総説に記載されている(例えば、Hobbs in McGraw Hill,Yearbook of Science and Technology,pp.191−196(1992)を参照のこと)。
【0143】
昆虫系を使用して、目的のポリペプチドを発現することもできる。例えば、1つのかかる系では、Autographa californica多角体病ウイルス(AcNPV)を、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia larvae中での外来遺伝子の発現のためのベクターとして使用する。ポリペプチドをコードする配列を、ウイルスの非必須領域(ポリヘドリン遺伝子など)にクローン化し、ポリヘドリンプロモーターの調節下におくことができる。ポリペプチドコード配列の首尾の良い挿入によってポリヘドリン遺伝子を不活性にし、コートタンパク質を欠く組換えウイルスを産生する。次いで、組換えウイルスを使用して、例えば、目的のポリペプチドを発現することができるS.frugiperda細胞またはTrichoplusia larvaeに感染させることができる(Engelhardら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:3224−3227(1994))。
【0144】
哺乳動物宿主細胞では、一般に、多数のウイルスベースの発現系を利用可能である。例えば、アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、目的のポリペプチドをコードする配列を後期プロモーターおよび三連リーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体にライゲーションすることができる。ウイルスゲノムの非必須のE1またはE3領域中の挿入を使用して、感染した宿主細胞中でポリペプチドを発現することができる生存ウイルスを得ることができる(Logan&Shenk,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:3655−3659(1984))。さらに、転写エンハンサー(ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーまたは最初期/初期サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー/プロモーター領域など)を使用して、哺乳動物宿主細胞中での発現を増加させることができる。
【0145】
特異的開始シグナルを使用して、目的のポリペプチドをコードする配列をより効率的に翻訳することもできる。かかるシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。ポリペプチドをコードする配列、その開始コドン、および上流配列を適切な発現ベクターに挿入する場合、さらなる転写または翻訳調節シグナルは必要ないかもしれない。しかし、コード配列またはその一部のみを挿入する場合、外因性翻訳調節シグナル(ATG開始コドンが含まれる)を準備すべきである。さらに、開始コドンは、全インサートの翻訳を保証するために正確な読み取り枠中に存在すべきである。外因性翻訳エレメントおよび開始コドンは、種々の起源(天然および合成の両方)のものであり得る。発現効率を、使用される特定の細胞系に適切なエンハンサー(文献(Scharf.ら、Results Probl.Cell Differ.20:125−162(1994))に記載のものなど)を含めることによって向上させることができる。
【0146】
さらに、宿主細胞菌株を、挿入された配列の発現を調整するか発現タンパク質を所望の様式でプロセシングする能力について選択することができる。かかるポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質の「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセシングを使用して、正確な挿入、折り畳み、および/または機能を容易にすることもできる。かかる翻訳後活性に特異的な細胞機構および特徴的な機構を有する異なる宿主細胞(CHO、HeLa、MDCK、HEK293、およびW138など)を、外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実にするように選択することができる。
【0147】
組換えタンパク質の長期間の高収率産生のために、一般に安定な発現が好ましい。例えば、目的のポリヌクレオチドを安定に発現する細胞株を、同一または個別のベクター上にウイルス複製起点および/または内因性発現エレメントおよび選択マーカー遺伝子を含むことができる発現ベクターを使用して形質転換することができる。ベクターの導入後、細胞を富化培地中で1〜2日間成長させ、その後に選択培地と交換することができる。選択マーカーの目的は、選択のための耐性を付与することであり、その存在により、導入された配列を首尾よく発現する細胞を成長および回収することが可能である。安定に形質転換された細胞の耐性クローンを、細胞型に適切な組織培養技術を使用して増殖させることができる。
【0148】
任意の数の選択系を使用して、形質転換された細胞株を回収することができる。これらには、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell 11:223−232(1977))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell 22:817−823(1990))遺伝子(tk細胞またはaprt細胞中でそれぞれ使用することができる)が含まれるが、これらに限定されない。また、代謝拮抗物質、抗生物質耐性、または除草剤耐性を、選択の根拠として使用することができる(例えば、それぞれ、dhfr(メトトレキサート耐性を付与する)(Wiglerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.77:3567−70(1980))、npt(アミノグリコシド、ネオマイシン、およびG−418耐性を付与する)(Colbere−Garapinら、J.Mol.Biol.150:1−14(1981))、およびalsまたはpat(クロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ耐性を付与する)(Murry,前出))。さらなる選択遺伝子が記載されている(例えば、trpB(細胞にトリプトファンの代わりにインドールを使用させる)またはhisD(細胞にヒスチジンの代わりのヒスチノールを使用させる)(Hartman & Mulligan,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:8047−51(1988)))。アントシアニン、β−グルクロニダーゼおよびその基質GUS、ならびにルシフェラーゼおよびその基質ルシフェリンなどのマーカーと共に視覚可能なマーカーの使用が注目されている(形質転換体を同定するだけでなく、特異的ベクター系に起因する一過性または安定なタンパク質発現を定量するためにも広範に使用されている)(Rhodesら、Methods Mol.Biol.55:121−131(1995))。
【0149】
産物に特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用したポリヌクレオチドによりコード化された産物の発現の検出および測定のための種々のプロトコールは、当該分野で公知である。例には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、および蛍光標示式細胞分取(FACS)が含まれる。これらおよび他のアッセイは、特に、Hamptonら、Serological Methods,a Laboratory Manual(1990)およびMaddoxら、J.Exp.Med.158:1211−1216(1983)などに記載されている。
【0150】
広範な種々の標識および抱合技術が当業者に公知であり、種々の核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイで使用することができる。ポリヌクレオチドに関連する配列の検出のための標識されたハイブリッド形成またはPCRプローブの産生手段には、オリゴ標識、ニック翻訳、末端標識、または標識されたヌクレオチドを使用したPCR増幅が含まれる。あるいは、配列または任意のその一部を、mRNAプローブ産生のためにベクターにクローン化することができる。かかるベクターは当該分野で公知であり、市販されており、これを使用して適切なRNAポリメラーゼ(T7、T3、またはSP6など)および標識したヌクレオチドの付加によってin vitroでRNAプローブを合成することができる。これらの手順を、種々の市販のキットを使用して行うことができる。使用することができる適切なレポーター分子または標識には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、または発色剤、ならびに基質、補因子、インヒビター、および磁性粒子などが含まれ得る。
【0151】
目的のポリヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞を、発現および細胞培養物からのタンパク質の回収に適切な条件下で培養することができる。組換え細胞によって産生されたタンパク質を、使用される配列および/またはベクターに応じて細胞内に分泌するか含めることができる。当業者によって理解されるように、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを、原核細胞膜または真核細胞膜を介したコードされたポリペプチドの分泌を指示するシグナル配列を含むようにデザインすることができる。他の組換え構築を使用して、目的のポリペプチドをコードする配列を、可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に連結することができる。
【0152】
抗体組成物、そのフラグメント、および他の結合剤
別の態様によれば、本発明は、さらに、本明細書中に開示のポリペプチド、またはその一部、バリアント、もしくは誘導体に免疫学的結合を示す結合剤(抗体およびその抗原結合フラグメントなど)、およびこれらの使用方法を提供する。好ましくは、かかる結合剤は、本発明のYRSポリペプチドによって媒介される1つまたは複数の非基準活性の調整またはサンプル(被験体から得た生物サンプルなど)中の選択されたYRSポリペプチド(例えば、短縮物、選択的スプライスバリアント、変異体)の有無の検出に有効である。
【0153】
例えば、一定の実施形態は、被験体から生物サンプルを得る工程、生物サンプルを抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させる工程であって、抗体または抗原−フラグメントが本発明のYRSポリペプチドに特異的に結合する、接触させる工程、および結合した抗体またはその抗原結合フラグメントの有無を検出し、それにより、被験体中のYRSポリペプチドを同定または特徴づける工程を含む、被験体中のYRSポリペプチドを同定または特徴づける方法を意図する。一定の態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、一定のバリアントまたは短縮YRSポリペプチド(選択されたYRS変異体または選択的スプライスバリアントなど)に特異的に結合するが、他のYRSポリペプチド(全長の野生型YRSポリペプチドなど)に特異的に結合しない。
【0154】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、(例えば、ELISAアッセイ内で)ポリペプチドと検出可能なレベルで反応するが、類似の条件下で無関係のポリペプチドと検出可能に反応しない場合、本発明のポリペプチドに「特異的に結合する」、「免疫学的に結合する」、および/または「免疫学的に反応性を示す」という。
【0155】
免疫学的結合は、この文脈内で使用する場合、一般に、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンに特異的な抗原との間に生じる非共有結合型の相互作用をいう。免疫学的結合相互作用の強度(すなわち、親和性)を、相互作用の解離定数(K)(式中、Kが小さいほど親和性がより大きいことを示す)の面から表現することができる。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性を、当該分野で周知の方法を使用して定量することができる。1つのかかる方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成および解離の速度を測定する必要があり、この速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および両方向の速度に等しく影響を及ぼす幾何学的パラメーターに依存する。したがって、「オン速度定数」(Kon)および「オフ速度定数」(Koff)の両方を、会合および解離の濃度および実際の速度の計算によって決定することができる。Koff/Kon比により、親和性と無関係の全パラメーターを削除することができ、したがって、解離定数Kに等しい。一般に、Daviesら、(1990)Annual Rev.Biochem.59:439−473を参照のこと。
【0156】
抗体の「抗原結合部位」または「結合部分」は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の一部をいう。抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に分岐したストレッチを「超可変領域」といい、これは、「フレームワーク領域」または「FR」として公知のより保存された隣接ストレッチ間に挟まれている。したがって、用語「FR」は、免疫グロブリン中の超可変領域の間に隣接して天然に見出されるアミノ酸配列をいう。抗体分子では、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、三次元空間に相互に関連して配置されて抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は結合した抗原の三次元表面と相補的であり、重鎖および軽鎖それぞれの3つの超可変領域を「相補性決定領域」または「CDR」という。
【0157】
結合剤は、例えば、リボゾーム(ペプチド成分を含むか含まない)、RNA分子、またはポリペプチドであり得る。好ましい実施形態では、結合剤は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。抗体を、当業者に公知の種々の技術のいずれかによって調製することができる。例えば、Harlow and Lane,Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと。一般に、組換え抗体を産生させるための細胞培養技術(本明細書中に記載のモノクローナル抗体の生成が含まれる)によるか、適切な細菌または哺乳動物の宿主細胞への抗体遺伝子のトランスフェクションによって抗体を産生することができる。1つの技術では、ポリペプチドを含む免疫原を、広範な種々の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、またはヤギ)のいずれかに最初に注射する。この工程では、本発明のポリペプチドは、修飾することなく免疫原としての機能を果たし得る。あるいは、特に比較的短いポリペプチドについて、キャリアタンパク質(ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニンなど)にポリペプチドを連結した場合に優れた免疫応答を誘発することができる。好ましくは1つまたは複数の追加免疫を組み込む所定の計画にしたがって免疫原を動物宿主に注射し、動物から周期的に採血する。次いで、ポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体を、例えば、適切な固体支持体にカップリングしたポリペプチドを使用したアフィニティクロマトグラフィによってかかる高血清から精製することができる。
【0158】
目的のポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を、例えば、Kohler and Milstein,Eur.J.Immunol.6:511−519,1976の技術およびその改良型を使用して調製することができる。簡潔に述べれば、これらの方法は、所望の特異性(すなわち、目的のポリペプチドとの反応性)を有する抗体を産生することができる不死化細胞株の調製を含む。かかる細胞株を、例えば、上記のように免疫化した動物から得た脾臓細胞から産生することができる。次いで、脾臓細胞を、例えば、骨髄腫細胞融合パートナー(好ましくは、免疫化動物と同系のもの)との融合によって不死化する。種々の融合技術を使用することができる。例えば、脾臓細胞および骨髄腫細胞を、非イオン性界面活性剤と数分間組み合わせ、次いで、ハイブリッド細胞の成長を補助するが、骨髄腫細胞の成長は補助しない選択培地上に低密度でプレートすることができる。好ましい選択技術は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択を使用する。十分な時間(通常、約1〜2週間)をおいた後、ハイブリッドのコロニーが認められる。単一コロニーを選択し、その培養物上清をポリペプチドに対する結合活性について試験する。高い反応性および特異性を有するハイブリドーマが好ましい。
【0159】
モノクローナル抗体を、成長中のハイブリドーマコロニーの上清から単離することができる。さらに、種々の技術を使用して収率を向上させることができる(適切な脊椎動物宿主(マウスなど)の腹膜腔へのハイブリドーマ細胞株の注射など)。次いで、モノクローナル抗体を、腹水または血液から採取することができる。従来技術(クロマトグラフィ、ゲル濾過、沈殿、および抽出など)によって、夾雑物を抗体から除去することができる。本発明のポリペプチドを、例えば、アフィニティクロマトグラフィ工程中の精製過程で使用することができる。
【0160】
多数の治療的に有用な分子が当該分野で公知であり、この分子は、抗体分子の免疫学的結合特性を示し得る抗原結合部位を含む。タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を優先的に切断していくつかのフラグメントを生じ、そのうちの2つ(「F(ab)」フラグメント)はそれぞれインタクトな抗原結合部位を含む共有結合性のヘテロ二量体を含む。酵素ペプシンは、IgG分子を切断していくつかのフラグメント(共に抗原結合部位を含む「F(ab’)」フラグメントが含まれる)を生じることができる。「Fv」フラグメントを、IgM、稀にIgGまたはIgA免疫グロブリン分子の優先的タンパク質分解性切断によって産生することができる。しかし、Fvフラグメントを、より一般的には、当該分野で公知の組換え技術を使用して誘導する。Fvフラグメントには、非共有結合性のV::Vヘテロ二量体(未変性抗体分子の多くの抗原認識および結合能力を保持する抗原結合部位を含む)が含まれる。Inbarら、(1972)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 69:2659−2662;Hochmanら、(1976)Biochem 15:2706−2710、およびEhrlichら、(1980)Biochem 19:4091−4096。
【0161】
単鎖Fv(「sFv」)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーによって連結されたVおよびVコード遺伝子を含む遺伝子融合物から発現された共有結合したV::Vヘテロ二量体である。Hustonら、(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85(16):5879−5883。天然に凝集しているが化学的に分離した抗体V領域由来のポリペプチド軽鎖および重鎖の抗原結合部位の構造と実質的に類似する三次元構造に折り畳むsFv分子への変換のために化学構造を識別するための多数の方法が記載されている。例えば、Hustonら、の米国特許第5,091,513号および同第5,132,405号ならびにLadnerら、の米国特許第4,946,778号を参照のこと。
【0162】
上記の各分子は、重鎖および軽鎖のCDR組を含み、これらがそれぞれ重鎖および軽鎖のFR組の間に挟まれてCDRを支持し、相互に対するCDRの空間的関係を定義している。本明細書中で使用する場合、用語「CDR組」は、重鎖または軽鎖のV領域の3つの超可変領域をいう。重鎖または軽鎖のN末端から進んで、これらの領域を、それぞれ「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と示す。したがって、抗原結合部位は、6個のCDR(重鎖および軽鎖の各V領域由来のCDR組を含む)を含む。単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2、またはCDR3)を含むポリペプチドを、本明細書中で「分子認識単位」という。多数の抗原−抗体複合体の結晶学的分析により、CDRのアミノ酸残基が結合した抗体と広範に接触し、ほとんどの広範な抗原接触が重鎖CDR3との接触であることが証明された。したがって、分子認識部位は、主に、抗原結合部位の特異性を担う。
【0163】
本明細書中で使用する場合、用語「FR組」は、重鎖または軽鎖のV領域のCDR組のCDRを組み立てる4つの隣接アミノ酸配列をいう。いくつかのFR残基は、結合した抗原と接触することができる。しかし、FRは、主に、V領域の抗原結合部位(特に、CDRに直接隣接するFR残基)への折り畳みを担う。FR内で、一定のアミノ残基および一定の構造の特徴が非常に保存される。これに関して、全てのV領域の配列は、およそ90アミノ酸残基の内部ジスルフィドループを含む。V領域が結合部位に折り畳まれる場合、CDRは、抗原結合表面を形成する突出したループモチーフとして示される。一般に、正確なCDRアミノ酸配列と無関係に一定の「標準的」構造へのCDRループの折り畳み形状に影響を及ぼすFRの保存された構造領域が存在すると認識されている。さらに、一定のFR残基は、抗体の重鎖および軽鎖の相互作用を安定化させる非共有結合性ドメイン間接触に関与することが公知である。
【0164】
非ヒト免疫グロブリン由来の抗原結合部位を含む多数の「ヒト化」抗体分子が記載されている(げっ歯類V領域およびヒト定常ドメインに融合したその関連するCDRを有するキメラ抗体(Winterら、(1991)Nature 349:293−299;Lobuglioら、(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220−4224;Shawら、(1987)J Immunol.138:4534−4538;およびBrownら、(1987)Cancer Res.47:3577−3583)、適切なヒト抗体定常ドメインとの融合前にFRを支持するヒトにグラフティングされたげっ歯類CDR(Riechmannら、(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyenら、(1988)Science 239:1534−1536;およびJonesら、(1986)Nature 321:522−525)、および組換え的にベニア化されたげっ歯類FRによって支持されたげっ歯類CDR(1992年12月23日に公開された欧州特許公開番号519,596号)が含まれる)。これらの「ヒト化」分子を、ヒトレシピエント中の部分の治療上の適用の継続時間および有効性を制限するげっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答を最小にするようにデザインする。
【0165】
本明細書中で使用する場合、用語「ベニア化FR」および「組換え的にベニア化されたFR」は、実質的に全ての未変性FRポリペプチド折り畳み構造を保持する抗原結合部位を含む異種分子を得るための、例えば、げっ歯類の重鎖および軽鎖のV領域由来のFR残基のヒトFR残基との選択的置換をいう。ベニア化技術は、抗原結合部位のリガンド結合特性が主に抗原結合表面内の重鎖および軽鎖のCDR組の構造および相対的配置によって決定されるという理解に基づく。Daviesら、(1990)Ann.Rev.Biochem.59:439−473。したがって、抗原結合特異性をヒト化抗体中のみに保存することができ、この抗体中でCDR構造、CDR構造間のその相互作用、およびV領域ドメインの残りとのその相互作用が慎重に維持される。ベニア化技術の使用により、免疫系が容易に遭遇する外部(例えば、溶媒接近可能な)FR残基をヒト残基と選択的に置換して、免疫原性が弱いか、実質的に非免疫原性のベニア化表面を含むハイブリッド分子を得る。
【0166】
本発明の別の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体を、1つまたは複数の目的の薬剤とカップリングすることができる。例えば、治療薬を、適切なモノクローナル抗体と直接または間接的に(例えば、リンカー基を介して)カップリング(例えば、共有結合)することができる。薬剤と抗体との間の直接的反応は、それぞれが他方と反応することができる置換基を保有する場合に可能である。例えば、一方の求核性基(アミノ基またはスルフヒドリル基など)は、他方のカルボニル含有基(無水物または酸ハライドなど)または良好な脱離基(例えば、ハライド)を含むアルキル基と反応することができるかもしれない。
【0167】
あるいは、リンカー基を介して治療薬と抗体とをカップリングすることが望ましいかもしれない。リンカー基は、結合能の干渉を回避するために抗体を薬剤から遠ざけるためのスペーサーとして機能することができる。リンカー基はまた、薬剤または抗体上の置換基の化学反応性を増加させ、それにより、カップリング効率が増加するのに役立ち得る。化学反応性の増加によって薬剤または薬剤上の官能基の使用を容易にすることもでき、このことは、さもなければ不可能であろう。
【0168】
種々の二官能試薬または多官能試薬(ホモ官能性およびヘテロ官能性の両方)(Pierce Chemical Co.,Rockford,ILのカタログに記載の試薬など)をリンカー基として使用することができることが当業者に明らかであろう。例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、または酸化炭水化物残基を介してカップリングすることができる。かかる方法を説明するリファレンスが多数存在する(例えば、Rodwellら、の米国特許第4,671,958号)。
【0169】
本発明の免疫抱合体の抗体部分から遊離している場合に治療薬がより強力である場合、細胞への内在化中または内在化の際に切断可能なリンカー基を使用することが望ましいかもしれない。多数の異なる切断可能なリンカー基が記載されている。これらのリンカー基からの薬剤の細胞内放出機構には、ジスルフィド結合の還元(例えば、Spitlerの米国特許第4,489,710号)、光解離性結合の照射(例えば、Senterら、の米国特許第4,625,014号)、誘導体化アミノ酸側鎖の加水分解(例えば、Kohnら、の米国特許第4,638,045号)、血清補体媒介加水分解(例えば、Rodwellら、の米国特許第4,671,958号)、および酸触媒加水分解(例えば、Blattlerら、の米国特許第4,569,789号)による切断が含まれる。
【0170】
1つを超える薬剤の抗体とのカップリングが望ましいかもしれない。1つの実施形態では、複数の薬剤分子を1つの抗体分子にカップリングする。別の実施形態では、1つを超える薬剤型を、1つの抗体にカップリングすることができる。特定の実施形態と無関係に、1つを超える薬剤を有する免疫抱合体を、種々の方法で調製することができる。例えば、1つを超える薬剤を、抗体分子に直接カップリングすることができるか、複数の付着部位を提供するリンカーを使用することができる。
【0171】
血小板減少症および使用方法
上述のように、本発明は、一般に、血小板減少症または血小板数の減少に関連する他の状態の処置および/またはその発症リスクの低減方法に関する。血小板減少症は、一般に、典型的な被験体についての正常な血小板数範囲と比較した場合の血小板数の低減によって特徴づけられる。例えば、血小板減少症は、一般に、正常な血小板数と比較して約100,000/mm以下の血小板数の減少をいう。正常な血小板数は、一般に、被験体中において約150,000mm〜約450,000mmの範囲である。
【0172】
血小板減少症はしばしば徴候や症状がないが、通常の血液検査によって同定することができる。存在する場合、血小板減少症の可能性のある徴候および症状には、容易な打撲傷および/または過剰な出血が含まれる。例えば、皮膚内の出血は低血小板数の最初の徴候であり得る。多数の小さな紅斑(点状出血)はしばしば下肢上の皮膚内に出現し、軽傷によって小さな散在性の打撲傷が生じ得る。さらに、歯茎が出血し、血便または血尿を生じ得る。月経が非常に重くなり得る。止血が困難になり得る。
【0173】
出血は、典型的には、血小板数が減少するにつれて悪化する。血小板が非常に少ない者は、消化管に大量の血液を喪失し得るか、損傷していない場合でさえも脳内に重篤な出血を発症し得る。症状を発症する速度は、血小板減少症の原因に応じて変動し得る。
【0174】
血小板減少症は先天性、後天性、および/または医原性であり得、種々の根底にある生理学的な原因または状態から起こり得る。例えば、血小板減少症は、一般に、血小板産生の減少、血小板破壊の増加、血小板の消費、脾機能亢進(すなわち、肥大脾)または低温症に起因する血小板の捕捉/隔離、および/または一定の薬物適用の副作用(すなわち、薬剤誘発性血小板減少症)に起因し得る。さらに、特発性の血小板減少症は特に小児で起こり、一過性のものはウイルス感染後に起こり得(例えば、エプスタイン・バーウイルスまたは伝染性単核球症)、妊婦はしばしば分娩間近に軽度の血小板減少症を発症し得る。
【0175】
血小板産生の減少(すなわち、産生の縮小または欠損)に関連する先天性の状態の例には、ヴィスコット・オールドリッチ症候群、チアジドの母体摂取、先天性無巨核球性血小板減少症、血小板減少橈骨欠損症候群、ファンコニー貧血、ベルナール・スーリエ症候群、メイ・ヘグリン異常、グレイ血小板症候群、アルポート症候群、および新生児風疹が含まれる。血小板産生の減少に関連する後天性状態の例には、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群(myeolodysplastic syndrome)、骨髄浸潤(例えば、急性および慢性白血病、腫瘍、骨髄癌)、リンパ腫、栄養欠乏(例えば、B12、葉酸)、骨髄抑制薬の使用、血小板産生に直接影響を及ぼす薬剤の使用(例えば、チアジド、アルコール、ホルモン)、放射線被曝(例えば、放射線療法)、有毒化学物質への曝露(例えば、殺虫剤、ヒ素、ベンゼン)、肝不全、細菌性敗血症、および一定のウイルス感染における肝臓によるトロンボポエチン産生の減少(例えば、水疱、ムンプス、パルボウイルス、麻疹、デング熱、HIV、HCV)が含まれる。
【0176】
末梢性血小板破壊の増加に関連する先天性状態の例には、非免疫状態(早熟、胎児赤芽球症、感染など)および免疫状態(薬物過敏症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、および母性ITPなど)が含まれる。末梢性血小板破壊の増加に関連する後天性状態の例には、浸潤性のラインおよびデバイス(例えば、動脈カテーテルまたは中心静脈カテーテル)、大動脈内バルーンポンプ、人工心臓弁、およびヘパリン関連治療の使用に加えて、非免疫状態(溶血性尿毒症症候群、播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)など)、免疫状態(薬物誘導性血小板減少症(thrompocytopenia)(例えば、特にキニーネおよびキニジンによる)、輸血後紫斑、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、新生児自己免疫性血小板減少症、発作性夜間血色素尿症、急性および慢性ITP、敗血症、およびアルコールなど)が含まれる。
【0177】
薬物適用誘導性血小板減少症は、特に、当該分野で公知の一定の薬物(化学療法薬、非ステロイド性抗炎症薬、スルホンアミド、バンコマイシン、クロピドグレル、糖タンパク質IIb/IIIaインヒビター、インターフェロン、バルプロ酸、アブシキシマブ、リネゾリド、ファモチジン、メベベリン、ヒスタミン遮断薬、アルキル化剤、ヘパリン、アルコール、抗菌性化学療法薬、カルバペネム、ウレイド−ペニシリン、セファゾリンなど)に起因し得る。化学療法薬の特定の例には、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトセシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素(nitrosurea)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、トランス白金、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサート、テモゾロミド(Temazolomide)(DTICの水性形態)、または上記の任意のアナログまたは誘導バリアントが含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
本発明は、一般に、血小板新生有効濃度の短縮および/またはバリアントチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドまたはその修飾ポリペプチドを含む組成物の被験体への投与による、被験体(とりわけ当該分野で公知の本明細書中に提供した1つまたは複数の例示的疾患または状態を有する被験体など)における血小板減少症(すなわち、血小板数の減少)の処置またはその発症リスクの低減方法に関する。本発明の実施形態は、血小板数が低減、減少、異常、または低い被験体において血小板数を増加または改善するだけでなく、低血小板数の発症リスクのある被験体において正常な血小板数を維持することも意図する処置方法を含む。一定の実施形態はまた、血小板ドナー(別の健康なドナー(すなわち、血小板数が正常なドナー)が含まれる)において血小板数を増加させるためのYRSポリペプチドの使用(血小板の供与またはアフェレーシス過程の前、間、および/または後のドナーへのYRSポリペプチドの投与など)を意図する。
【0179】
したがって、一定の実施形態は、血小板新生有効濃度の短縮および/またはチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドまたはその修飾ポリペプチドを含む組成物を被験体に投与し、それにより、被験体における血小板数が増加する工程を含む、被験体において血小板数を増加させる方法を含む。他の実施形態は、血小板新生有効濃度の短縮および/またはバリアントチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物を被験体に投与する工程を含む、被験体における正常な血小板数を維持する方法を含む(被験体が低血小板数を発症するリスクがある場合など)。一定の実施形態は、血小板新生有効濃度の短縮および/またはバリアントチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物の被験体への投与などによる、被験体における血小板新生を刺激する方法を含むことができる。一定の態様では、被験体は、血小板数が減少しているか、低下しているか、異常である(血小板数約100,000/mm以下など)。一定の態様では、本明細書中に提供したYRSポリペプチドを使用して、被験体における巨核球および/または好中球の増殖および/または分化を刺激することができる。
【0180】
血小板数が減少した被験体は、血小板減少症に関連する他の問題(出血または打撲傷、出血、胃腸管出血、鼻出血(eptistaxis)(すなわち、鼻血)、または頭蓋内出血(すなわち、脳内出血)など)を発症するリスクもあり得る。1つの特定の例として、血小板減少症を伴う敗血症患者は出血が増加する。したがって、本発明の一定の態様は、本明細書中に提供した血小板新生性組成物を使用して、特に、これらの血小板減少症に関連する問題の型の発症リスクを低減することができる。他の態様では、被験体は、血小板レベルの低下に関連する後天性状態(例えば、特に、一定の医学療法、白血病)などに由来する血小板数の低減、低下、そうでなければ異常の発症リスクがあり得る。
【0181】
一定の態様では、本明細書中に記載の処置方法を他の治療様式とは無関係に使用することができ、この処置方法は、血小板減少性状態を管理し、そして/または血小板減少症を発症するだけでなく、これに関連する他の医学的問題(出血など)を発症するリスクを低減することに応じた唯一または基本的な治療様式であり得る。例えば、根本にある原因が知られていない血小板減少症(例えば、特発性血小板減少性紫斑病)を有する被験体は、血小板レベルを増加および/または管理するための本明細書中に提供した処置方法から恩恵を受け得る。
【0182】
一定の態様では、本発明の方法および組成物を、併用療法の一部(被験体における血小板新生経路および/または造血経路を刺激することができる他の薬剤の投与などによる)として使用することができる。併用療法の一部として使用することができる他の薬剤の例には、トロンボポエチン(thrombopoetin)、サイトカイン(例えば、IL−11)、ケモカイン、および/または血小板新生または造血に関与する成長因子(生物学的に活性なフラグメントまたはそのバリアントが含まれる)が含まれる。
【0183】
一定の態様では、本発明の方法を、他の治療方法(血小板減少症に関連する状態に原因する基礎状態の処置に関与する治療方法など)と併せて使用することができる。例えば、先天性無巨核球性血小板減少症(CAMT)を有する被験体は、最終的に骨髄移植手順を受けることができるが、正常範囲内に血小板レベルを増強し、そして/または血小板レベルを維持するための本明細書中に提供した個別の処置からも恩恵を受け得る。本発明の血小板新生性ポリペプチドを、この観点および類似の観点で使用することができる。
【0184】
一定の態様では、本明細書中に提供した方法を、受けている他の内科処置(血小板減少症を生じるか、血小板減少症の発症リスクが増加する処置など)と併せて被験体に使用することができる。例えば、本明細書中に提供した方法を、放射線療法、化学療法、または他の処置型(本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知の種々の薬学的処置型が含まれる)を受けている被験体、受けようとしている被験体、および/または受けた被験体に使用することができる。これは、かかる処置が被験体における血小板数を低減することが公知であるからである。したがって、本明細書中に提供した方法を、他の内科処置の前、間、および/または後に使用して、かかる処置に起因する血小板減少症の発症リスクを低減し、そして/またはかかる処置に起因する血小板減少症を管理または改善することができる。
【0185】
一定の実施形態では、本明細書中に提供した方法を使用して、本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知のかかる特定の状態に関連する血小板減少性の(thrompocytopenic)症状を予防的に処置するか管理することができる。
【0186】
巨核球前駆細胞の刺激および使用方法
本発明のYRSポリペプチドを使用して、巨核球前駆細胞(初期前駆細胞(すなわち、巨核球系譜の最も原始的な系譜制限前駆体)が含まれる)の成長を刺激することもできる。造血幹細胞の培養物をチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドと初期巨核球前駆細胞を増殖させるのに十分な期間インキュベートし、それにより、初期巨核球前駆細胞の増殖を刺激する工程を含む、初期巨核球前駆細胞の増殖を刺激する方法が含まれる。これらおよび関連する実施形態では、本発明のYRSポリペプチドを、精製HSC(特に、精製HSC、全骨髄培養物(例えば、骨髄移植用)、臍帯血、または造血移植治療で使用される他の培養物型)とインキュベートすることができる。かかる方法により、初期巨核球前駆細胞が富化された培養物を得ることができる。本発明のYRSポリペプチドを被験体に直接投与して(in vivo)、被験体中での初期巨核球前駆体の増殖を刺激することもできる。
【0187】
「造血幹細胞(HSC)」は、一般に、血球型(骨髄細胞系譜(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、リンパ系細胞系譜(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)、および当該分野で公知の他の系譜が含まれる)を生じる多能性または多分化能性「幹細胞」のいずれかに関する。「幹細胞」を、典型的には、複数の細胞型を形成する能力(すなわち、多分化能)および自己再生する能力によって定義する。しかし、一定の実施形態では、少能性および単能性前駆体を含めることができる。「造血」は、一般に、HSCからの特定の専門化された血球の細胞分化または形成の過程に関する。
【0188】
HSCを、当該分野で公知の技術にしたがって得ることができる。例えば、HSCを、成体の骨髄(大腿骨、臀部、肋骨、胸骨、および他の骨が含まれる)中に見出すことができる。HSCを、針およびシリンジを使用した臀部からの取り出しまたはしばしば細胞の骨髄区画からの放出を誘導するサイトカイン(G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)など)での前処置後の血液からの取り出しによって直接得ることができる。臨床的使用および科学的使用のための他の供給源には、臍帯血、胎盤、および動員末梢血が含まれる。実験のために、動物の胎児肝臓、胎児脾臓、およびAGM(大動脈・性腺・中腎)も有用なHSC供給源である。
【0189】
HSCを、一定の表現型マーカーまたは遺伝子型マーカーにしたがって同定することができる。例えば、HSCを、その小さなサイズ、系譜(lin)マーカーの欠如、ローダミン123(ローダミンDULL、rholoとも呼ばれる)またはHoechst33342などの生体染色色素での染色の低さ(側面の集団)、およびその表面上の種々の抗原性マーカーの存在(その多くが一連の表面抗原分類に属する(例えば、CD34、CD38、CD90、CD133、CD105、CD45、およびc−kit(幹細胞因子の受容体)))によって同定することができる。HSCは、主に、系譜分化を検出するために典型的に使用されるマーカーに対して陰性である。したがって、しばしばlin(−)細胞という。ほとんどのヒトHSCを、CD34、CD59、Thy1/CD90、CD38lo/−、C−kit/CD117、およびlin(−)と特徴づけることができる。しかし、一定のHSCがCD34/CD38であるので、全ての幹細胞がこれらの組み合わせの対象とされるわけではない。また、いくつかの研究により、最初期の幹細胞が表面上にc−kitを欠き得ることが示唆されている。ヒトHSCについて、CD34およびCD34HSCの両方がCD133であることが示されているので、CD133は初期マーカーを意味し得る。
【0190】
フローサイトメトリー(すなわち、FACS)によるlin(−)HSCの精製のために、一連の成熟血液−系譜マーカー抗体を使用してlin(+)細胞または後期多分化能性前駆体(MPP)を枯渇させることができる(例えば、特に当該分野で公知のヒト骨髄性細胞についてのCD13およびCD33に対する抗体、ヒト赤血球系細胞についてのCD71に対する抗体、ヒトB細胞についてのCD19に対する抗体、ヒト巨核球細胞についてのCD61に対する抗体、単球についてのMac−1(CD11b/CD18)に対する抗体、顆粒球についてのGr−1に対する抗体、T細胞についてのIl7Ra、CD3、CD4、CD5、およびCD8に対する抗体が含まれる)。他の精製方法が当該分野で公知である(細胞表面分子の「リンパ球活性化シグナル伝達分子」(SLAM)ファミリーの特定のサインを使用する方法など)。
【0191】
臍帯血、骨髄、末梢血、または他の供給源から得たかこれらに存在するHSCを、必要に応じて血清を含むか含まない任意の適切な市販または自作の培地中で成長させるか拡大することができる(例えば、Hartshornら、Cell Technology for Cell Products,pages 221−224,R.Smith,Editor;Springer Netherlands,2007(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。例えば、一定の実施形態では、無血清培地はアルブミンおよび/またはトランスフェリンを使用することができ、これらは、無血清培地中でのCD34+細胞の成長および拡大に有用であることが示されている。また、サイトカイン(特に、Flt−3リガンド、幹細胞因子(SCF)、およびトロンボポエチン(TPO)など)を含めることができる。HSCを、バイオリアクターなどの容器中で成長させることもできる(例えば、Liuら、Journal of Biotechnology 124:592−601,2006(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。HSCのex vivo拡大に適切な培地はまた、例えば、リンパ組織の脱凝集に由来し得、HSCおよびその子孫のin vitro、ex vivo、およびin vivoでの維持、成長、および分化を支持することが示されているHSC支持細胞(間質細胞(例えば、リンパ細網間質細胞)など)を含むことができる。
【0192】
HSCの成長または拡大を、当該分野で公知の日常的技術にしたがってin vitroまたはin vivoで測定することができる。例えば、WO2008/073748号(これらの方法について本明細書中で参考として援用される)は、HSCのin vivoおよびin vitro拡大を測定し、HSCの成長/拡大と潜在的に異種の集団(例えば、骨髄)中の他の細胞(中期前駆細胞など)の成長/拡大とを区別する方法を記載している。成長または拡大させる投与またはインキュベーション工程をin vivo、ex vivo、またはin vitroで行い得るが、一定の実施形態では、HSCのex vivo処置中に投与またはインキュベーションを行う。
【0193】
巨核球前駆細胞(例えば、初期、中期、後期など)の成長または増殖を、当該分野で公知であり、且つ本明細書中に記載の日常的技術にしたがって測定することもできる(例えば、実施例10を参照のこと)。例えば、他の特徴のうちで特に、初期巨核球前駆体を免疫染色によってLinc−KitCD41と同定し、後期巨核球前駆体をLinc−KitCD41と同定することができる(例えば、Perezら、PLoS ONE.3:e3565,2008;およびLefebvreら、Journal of Hematotherapy & Stem Cell Research.9:913−921,2000(それぞれその全体が参考として援用される)を参照のこと)。
【0194】
「臍帯血」または「臍帯の血液」は、一般に、新生児に由来し、臍帯が早熟にクランプされていない場合に新生児循環血に戻る相対的に少量の血液(約180mLまで)に関する。臍帯血はHSCが豊富であり、当該分野で公知の技術にしたがってその後の使用のために採取および保存することができる(例えば、米国特許第7,147,626号および同第7,131,958号(かかる方法について本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。また、臍帯を最終的にクランプしない場合、冷気との相互作用の際に生理学的クランピングが起こり、ここで、ワルトンの膠様質と呼ばれる内部ゼラチン状物質が臍帯動脈および臍帯静脈の周囲で膨潤する。にもかかわらず、ワルトンの膠様質は依然としてHSCの供給源としての機能を果たすことができる。
【0195】
上述のように、「ex vivo」は、一般に、生物の外部で起こる活動(生物の外部の人工的環境下で生体組織中または生体組織上で行われる実験または測定(天然の条件の変更を最小にするのが好ましい)など)に関する。最も一般には、「ex vivo」手順は、生きている細胞または組織を生物から採取し、実験装置中にて通常は滅菌条件下で環境に応じて典型的には数時間から約24時間まで(しかし、48時間または72時間までが含まれる)培養することを含む。一定の実施形態では、かかる組織または細胞を回収および凍結し、後にex vivo処置のために解凍することができる。生きている細胞または組織を使用した数日間より長く続く組織培養実験または手順を典型的には「in vitro」と見なすが、一定の実施形態では、この用語をex vivoと交換可能に使用することができる。
【0196】
用語「ex vivo投与」、「ex vivo処置」、または「ex vivo治療用途」は、一般に、1つまたは複数の生物、細胞、または組織を生きているか最近死亡した被験体から得、任意選択的に精製/富化し、幹細胞を拡大するための処置または手順(例えば、細胞を本発明の組成物とインキュベートして所望の細胞(HSCまたは巨核球前駆体など)の拡大を増強させる工程を含むex vivo投与工程)に曝露し、次いで、最適な処置または手順後に同一または異なる生きている被験体に投与する医学的手順に関する。一例として、血小板減少症を、巨核球前駆細胞の注入によって緩和することができる(例えば、De Bruynら、Stem Cells Dev.14:415−24,2005(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0197】
かかるex vivoでの治療的適応はまた、本発明のYRSポリペプチドを器官、細胞、または組織の投与前、投与中、または投与後に生きている被験体に1回または複数回投与することなどによる任意選択的なin vivo処置または手順を含むことができる。当該分野で周知の技術にしたがって、これらの実施形態には局所投与および全身投与の両方が意図される。被験体へのYRSポリペプチドの投与量は、被験体の特徴(全体的な健康、年齢、性別、体重、および薬物耐性など)ならびにポリペプチドおよび/または細胞移植に対する程度、重症度、および反応型に依存するであろう。
【0198】
CXCR−2発現細胞の刺激
一定の実施形態は、YRSポリペプチドがCXCR−2発現細胞の遊走を刺激することができるという発見に関する。CXCR−2は、広範な種々の細胞型(好中球および他の免疫細胞が含まれる)上で発現するCXCケモカイン受容体ファミリーのメンバーである。CXCケモカイン受容体は、CXCケモカインファミリーのサイトカインに特異的に結合して応答する膜内在性タンパク質である。これらのCXCベースの受容体は、ケモカイン受容体の1つのサブファミリー(Gタンパク質結合型受容体の巨大なファミリー)を示し、7回膜貫通受容体とも呼ばれる。現在、哺乳動物において7つの公知のCXCケモカイン受容体が存在する(CXCR1〜CXCR7と命名されている)。CXCR−2(および高度に関連するCXCR−1)は、そのC−X−Cモチーフのすぐ隣に存在するE−L−Rアミノ酸モチーフを保有するC−X−Cケモカインを認識する周知の受容体である。CXCL8(すなわち、インターロイキン−8)およびCXCL6はヒトでは共にCXCR1に結合することができる一方で、全ての他のELRモチーフ陽性ケモカイン(CXCL1〜CXCL7など)は、CXCR2のみに結合する(例えば、Tsaiら、Cell 110:373−383,2002;およびPelusら、Exp Hematol.34:1010−20,2006(それぞれその全体が参考として援用される)を参照のこと)。上述のように、CXCR−2は好中球表面上に発現し、好中球遊走で役割を果たし得る(例えば、Rios−Santosら、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 175:490−497,2007(その全体が参考として援用される)を参照のこと)。
【0199】
したがって、他の生物学的に関連する経路の間の細胞のシグナル伝達および細胞遊走(例えば、好中球のシグナル伝達/遊走)におけるCXCR−2の役割を考慮すると、一定の実施形態は、細胞をチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドと接触させ、それによりCXCR−2発現細胞の遊走を刺激する工程を含む、CXCR−2発現細胞の遊走を刺激する方法を含む。
【0200】
肺疾患および使用方法
本発明の実施形態はまた、YRSポリペプチドによって肺疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)など)の処置において利点を得ることができるという予想外の発見に関する。これに関して、循環系から肺への好中球遊走は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関与する(例えば、R.A.Stockley,Chest 121:151S−155S,2002(その全体が参考として援用される)を参照のこと)。上述のように、CXCR−2は、好中球表面上に発現し、好中球遊走で役割を果たし得る(例えば、Rios−Santosら、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 175:490−497,2007(その全体が参考として援用される)を参照のこと)。好中球におけるCXCR−2シグナル伝達は特に異物(刺激物質、細菌、リポ多糖(LPS)など)に応答した一定の組織(肺など)へのその遊走に関与するので、このシグナル伝達は種々の病的状態(COPDなど)に関与し得る。
【0201】
本発明のYRSポリペプチドがCXCR−2シグナル伝達および多形核(PMN)細胞遊走に影響を及ぼすという所見を考慮して(例えば、実施例7および8を参照のこと)、これらのポリペプチドは肺疾患(COPDなど)の処置または管理で有用であり得ると考えられる。例えば、いかなる理論に拘束されることも望まないが、YRSポリペプチドを使用して、循環好中球を種々の刺激物質またはアレルゲンに対して脱感作し、それにより、これらの免疫細胞の肺への遊走を低減することができる(例えば、実施例9を参照のこと)。それ故、一定の実施形態は、肺の炎症またはCOPDを有する被験体に有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを投与し、それにより、被験体におけるCOPDおよび/またはその症状を低減する工程を含む、肺の炎症および/または肺疾患(COPDなど)を処置または管理(例えば、その合併症の低減)する方法に関する。しばしば、免疫細胞の脱感作では、複数の投与(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回など)、典型的には所定の頻度(1日、1週間、1ヶ月あたりの投与数など)が必要である。
【0202】
COPDは、一般に、気流を遮断し、罹患個体が正常に呼吸するのを段階的に困難にする肺疾患群をいう。気腫および慢性気管支炎は、COPD疾患群内の2つの主要な状態であるが、COPDはまた、当該分野で公知の他の状態のうちで、慢性喘息性気管支炎に原因する障害をいうことができる。全ての場合において、気道の障害は、最終的に肺内の酸素と二酸化炭素との交換を妨害する。処置は主に症状の抑制およびさらなる障害の最小化に焦点を合わせる。
【0203】
気腫はCOPDの1つの態様を示す。気腫によって脆弱な肺胞壁内に炎症を起こし、いくつかの肺胞壁および弾性線維が破壊され、呼息の際に末梢気道が崩壊し、肺からの気流が損われ得る。気腫の徴候および症状には、例えば、息切れ(特に身体活動中)、喘鳴、および胸部絞扼感が含まれる。
【0204】
慢性気管支炎は、COPDの別の態様を示す。慢性気管支炎は継続的な咳によって特徴づけられ、気管支の炎症および狭窄を引き起こす。この状態は粘液産生の増加も引き起こし、狭窄した気管をさらに遮断し得る。慢性気管支炎は主に喫煙者で起こり、典型的には、2年間にわたって1年間に少なくとも3ヶ月間継続する咳と定義される。慢性気管支炎の徴候および症状には、例えば、特に喫煙者についての起き抜けの咳払い、黄色味がかった痰を生じる慢性の咳、後期の息切れ、および頻繁な呼吸器感染が含まれる。
【0205】
上述のように、COPDは、主に、2つの上記の慢性肺状態に起因する肺の閉塞をいう。しかし、COPDに罹患した多数の個体はこれらの状態の両方を有する。
【0206】
慢性喘息性気管支炎は、COPDの別の態様を示す。慢性喘息性気管支炎は、通常、喘息と組み合わせた慢性気管支炎(気管支痙攣)として特徴づけられる。炎症性および感染性分泌物が気道内の平滑筋を刺激する場合に喘息が起こり得る。症状は慢性気管支炎の症状に類似しているが、断続的な(すなわち、日常的な)喘鳴も伴う。
【0207】
主に、COPDは最終的にタバコの煙および他の刺激物質に原因する。ほとんどの場合、COPDを引き起こす肺障害は長期喫煙に原因する。しかし、他の刺激物質がCOPDを引き起こし得る(タバコの煙、副流煙、パイプの煙、大気汚染、および一定の職業上の煙霧が含まれる)。胃酸が食道に逆流する場合に起こる胃食道逆流疾患(GERD)は、個体によってはCOPDを悪化させるだけでなく、その原因ともなり得る。稀に、COPDは、α−1−抗トリプシンと呼ばれるタンパク質を低レベルにする遺伝的障害に起因する。それ故、COPDのリスク因子には、タバコの煙への曝露、粉塵および化学物質への職業被曝(化学的煙霧、蒸気、および粉塵への長期曝露によって肺が刺激され、炎症を起こす)、胃食道逆流疾患(重篤な酸逆流形態−酸および他の胃内容物の食道への逆流)、年齢(COPDは長期間にわたってゆっくり発症するので、ほとんどの患者は症状が出始めた時に少なくとも40歳である)、および遺伝学(α−1−抗トリプシン欠損症として公知の稀な遺伝的障害は、COPDの少数の症例の原因である)が含まれる。
【0208】
COPDの合併症には、特に、当該分野で公知の呼吸器感染、高血圧、心臓障害(例えば、心臓発作)、肺癌(慢性気管支炎に罹患した喫煙者は、慢性気管支炎に罹患していない喫煙者よりも肺癌発症リスクが高い)、および鬱病が含まれ得る。
【0209】
COPDに罹患している被験体を、当該分野で公知の日常的な診断技術にしたがって同定することができる。例えば、肺機能試験(肺活量測定など)は、肺内に空気を保持できる量および個体が肺から空気を吐き出すことができる速度を測定する。肺活量測定により、症状が現れる前にCOPDを検出することができ、これを使用して疾患の進行を追跡し、処置をモニタリングすることもできる。さらに、胸部X線は気腫(COPDの主要な原因の1つ)を示し、他の肺障害または心不全を除外することもできる。さらに、動脈血ガス分析は、肺が酸素を血液中に運搬し、二酸化炭素を除去する効率(COPDの兆候が得られる)を測定する。喀痰検査(すなわち、痰中の細胞の分析)は、一定の肺障害の原因を同定し、一定の肺癌を除外するのに役立ち得る。また、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンにより、内部器官の非常に詳細な画像が得られ、気腫、したがってCOPDの検出に役立ち得る。
【0210】
本明細書中の他の場所に記載のように、COPD(またはCOPDのリスクのある)被験体へのYRSポリペプチドの投与量は、被験体の特徴(全体的な健康、年齢、性別、体重、および薬物耐性など)ならびにポリペプチドに対する程度、重症度、および反応型に依存するであろう。
【0211】
処方物および薬学的組成物
本発明の組成物は、単独または1つまたは複数の他の治療方法と組み合わせた細胞または動物への投与のための薬学的に許容可能なまたは生理学的に許容可能な溶液中に処方されたチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(その短縮物および/またはバリアントが含まれる)を含む。必要に応じて、本発明の組成物を他の薬剤(例えば、他のタンパク質またはポリペプチドまたは種々の薬学的に活性な薬剤など)とも組み合わせて投与することができることも理解されるであろう。さらなる薬剤が血小板新生効果または達成することが望まれる他の効果に悪影響を及ぼさない場合、実質上は組成物中に含めることもできる他の成分に制限はない。
【0212】
本発明の薬学的組成物では、薬学的に許容可能な賦形剤およびキャリア溶液の処方は当業者に周知であり、種々の処置レジメン(例えば、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、および筋肉内の投与および処方が含まれる)で本明細書中に記載の特定の組成物の使用に適切な投与および処置レジメンの開発も同様である。
【0213】
一定の適用では、本明細書中に開示の薬学的組成物を、経口投与を介して被験体に送達させることができる。そのようなものとして、これらの組成物を不活性希釈剤または吸収性可食キャリアを使用して処方することができるか、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルに封入することができるか、打錠することができるか、食品と共に直接組み込むことができる。
【0214】
一定の環境では、例えば、米国特許第5,543,158号;米国特許第5,641,515号、および米国特許第5,399,363号(それぞれその全体が本明細書中で参考として具体的に援用される)に記載のように、本明細書中に開示の薬学的組成物を、非経口、静脈内、筋肉内、またはさらに腹腔内に送達することが望ましいであろう。遊離塩基または薬学的に許容可能な塩としての活性化合物の溶液を、界面活性剤(ヒドロキシプロピルセルロースなど)と適切に混合した水中に調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中および油中に分散液を調製することもできる。通常の保存および使用条件下で、これらの調製物は、微生物成長を防止するための防腐剤を含む。
【0215】
注射に適切な薬学的形態には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる(米国特許第5,466,468号(その全体が本明細書中で参考として具体的に援用される))。全ての場合、形態は無菌であるべきであり、シリンジでの取り扱いが容易な範囲の流動性を示すべきである。製造および保存条件下で安定であるべきであり、微生物(細菌および真菌など)の夾雑作用から保護されるべきである。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および/または植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、コーティング(レシチンなど)の使用、分散液の場合の必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって適切な流動性を保持することができる。微生物作用からの保護を、種々の抗菌薬および抗真菌薬(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチロメサールなど)によって容易にすることができる。多くの場合、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含めることが好ましいであろう。組成物中の吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によって注射用組成物を長期吸収させることができる。
【0216】
水溶液での非経口投与のために、例えば、必要に応じて溶液を適切に緩衝化し、希釈液を最初に十分な生理食塩水またはグルコースを使用して等張にすべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内への投与に特に適切である。これに関連して、使用することができる滅菌水媒体は、本開示を考慮すると当業者に公知であろう。例えば、1投薬量を1mlの等張NaCl液に溶解し、1000mlの皮下注入液に添加するか、提案された注入部位に注射することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Edition,pp.1035−1038 and 1570−1580を参照のこと)。処置を受ける被験体の状態に応じて、投薬量をいくらか変動させる必要があるであろう。投与を担当する者は、いずれにしても、各被験体に適切な用量を決定するであろう。さらに、ヒトへの投与のために、調製物は、FDA Office of Biologics standardsが要求する無菌性、発熱性、一般的な安全性、および純度の基準をみたすべきである。
【0217】
滅菌注射液を、必要量の活性化合物を上記列挙の種々の他の成分と共に適切な溶媒中に組み込み、必要に応じてその後に濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、基剤の分散媒および上記列挙の成分由来の必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに種々の滅菌有効成分を組み込むことによって分散液を調製する。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め濾過滅菌したその溶液から有効成分および任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。
【0218】
本明細書中に開示の組成物を、天然の形態または塩形態で処方することができる。薬学的に許容可能な塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を使用して形成させた)および無機酸(例えば、塩酸またはリン酸など)または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)を使用して形成させた酸付加塩が含まれる。遊離カルボキシル基を使用して形成させた塩はまた、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄など)および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、およびプロカインなど)から誘導することができる。処方の際、溶液を、投薬処方物と適合する様式および治療に有効な量などで投与するであろう。処方物を、種々の投薬形態(注射液および薬物放出性カプセルなど)で容易に投与する。
【0219】
本明細書中で使用する場合、「キャリア」には、任意および全ての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、キャリア液、懸濁液、およびコロイドなどが含まれる。薬学的に活性な物質のためのかかる媒質および薬剤の使用は当該分野で周知である。任意の従来の媒質または薬剤が有効成分と不適合な場合を除き、治療組成物中でのその使用が意図される。補足的有効成分を、組成物に組み込むこともできる。
【0220】
句「薬学的に許容可能な」は、ヒトに投与した場合にアレルギー性反応または類似の有害な反応を引き起こさない分子的実体および組成物をいう。有効成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は当該分野で十分に理解されている。典型的には、かかる組成物を、注射液(溶液または懸濁液のいずれか)として調製し、注射前に液体によって溶液または懸濁液にするのに適切な固体形態も調製することができる。調製物を乳化することもできる。
【0221】
一定の実施形態では、薬学的組成物を、鼻腔内噴霧、吸入、および/または他のエアゾール送達ビヒクルによって送達させることができる。遺伝子、ポリヌクレオチド、およびペプチド組成物を鼻エアゾールスプレーによって肺に直接送達させる方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および米国特許第5,804,212号(それぞれその全体が本明細書中で参考として具体的に援用される)に記載されている。同様に、鼻腔内微粒子樹脂(Takenagaら、1998)およびリゾホスファチジル−グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号(その全体が本明細書中で参考として具体的に援用される))を使用した薬物送達はまた、薬学分野で周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号(その全体が本明細書中で参考として具体的に援用される)に記載されている。
【0222】
一定の実施形態では、適切な宿主細胞への本発明の組成物の導入のためにリポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフィア、脂質粒子、および小胞などを使用して送達させることができる。特に、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、またはナノ粒子などにカプセル化した本発明の組成物を送達のために処方することができる。公知且つ従来の技術を使用して、かかる送達ビヒクルを処方および使用することができる。
【0223】
本明細書中に引用した全ての刊行物、特許出願、および交付済み特許を、各刊行物、特許出願、または交付済み特許が具体的且つ個別に参考として援用されることを示すかのように本明細書中で参考として援用される。
【0224】
上記発明は本発明を明確に理解することを目的とした例示および例としていくらか詳細に記載しているが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく一定の変更形態および修正形態を得ることができることが当業者に容易に自明であろう。以下の実施例は、例示のみを目的として提供し、本発明を制限することを目的としない。当業者は、変更または修正して本質的に類似の結果を得ることができる種々の重要でないパラメーターを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0225】
実施例1
in vivoでの血小板新生の刺激
血小板新生に及ぼすチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの影響をin vivoで測定した。下記の実験で使用したチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは、全長ヒトチロシル−tRNAのアミノ酸1〜364を含むC末端短縮物である。このC末端短縮ポリペプチドを、8アミノ酸C末端タグ(365−L−E−H−H−H−H−H−H−372)(配列番号5)に融合した。全長ヒトチロシル−tRNAシンテターゼのアミノ酸配列を配列番号1に記載する。
【0226】
血小板新生に及ぼすチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの影響を測定するために、第1の実験組では、マウスに、3μg/kgのC末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを1日2回にて7日間皮下注射した。第2の実験組では、マウスに、1、3、および10μg/kgのC末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを1日2回にて7日間注射した。第3の実験組では、マウスに、(i)3および300μg/kgのC末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを1日2回にて6日間皮下注射し、(ii)90μg/kgトロンボポエチン(TPO)および(iii)250μg/kg G−CSFを1日1回注射した。
【0227】
上記の第1および第2の実験組について、投与プロトコールの完了の際に各動物の血小板数を決定した。第3の実験組について、投与プロトコールの終了時に骨髄および脾臓の組織学を試験した。
【0228】
約1週間の短縮チロシル−tRNAシンテターゼの投与により、血小板数の増加または巨核球数の増加のいずれかによって測定したところ、血小板新生活性の再現性のあるin vivo増加が認められた。図5(a)は、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)コントロールと比較した場合のマウスに1、3、および10μg/kgの短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを注射した実験の血小板数を示す。図5(b)は、PBSコントロールと比較した場合のマウスに3μg/kgの短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを注射した実験の血小板数を示す。両実験では、マウスは、本発明のチロシル−tRNAポリペプチドでの処置に応答してコントロールを超える血小板数の増加を示した。図6は、無処置動物と比較した場合の短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの投与に応答した巨核球数の増加を示す。これは、TPOの投与後に認められた数の増加に匹敵する。これらの結果は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドフラグメント、特にC末端短縮フラグメントがin vivoで血小板新生を刺激することができることを示す。
【0229】
実施例2
血小板新生のin vitro測定
血小板新生に及ぼす影響をin vitroで測定することもできる。幹細胞を、in vitroにて本発明のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドで処置して、コロニー形成細胞(CFC)アッセイを使用して赤血球系譜、骨髄細胞系譜、および巨核球(megakaryocte)系譜の造血前駆体に及ぼすその影響(例えば、阻害、刺激、毒性、他のサイトカインとの相乗作用、造血疾患)を決定する。さらに、CD34+巨核球前駆細胞を、in vitroにて本発明のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドで処置して、巨核球の拡大および分化(例えば、前駆細胞数の増加、分化の刺激、倍数性の増加)をモニタリングする。チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドで処置したマウス由来の骨髄細胞および脾臓細胞を使用して類似の実験を行う。
【0230】
実施例3
併用療法は血小板新生を刺激する
本発明のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがin vitroで巨核球の増殖および分化に相乗的および/または付加的影響を及ぼすかどうかを評価するために、CD34+臍帯血細胞を、最適または最適以下のサイトカイン処方物(StemCell Technologies,Vancouver)(IL−11など)の存在下にて液体培養培地中で成長させ、漸増濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドで処置する。相加性または相乗作用を、2つの処方物条件下で前駆細胞の成長および分化をモニタリングすることによって決定することができる。
【0231】
同様に、実施例1に記載のプロトコールに匹敵するプロトコールでは、マウスに限定量のトロンボポエチンおよび漸増量のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを注射し、in vivoでの血小板新生に及ぼす併用療法の影響を血小板数および巨核球数によって決定することができる。さらに、限定量の造血に関与する他のサイトカイン、ケモカイン、および/または成長因子を使用した併用療法を、同型のレジメンを使用して評価することができる。
【0232】
実施例4
ラットにおけるチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの血小板新生活性
血小板新生に及ぼす2つのチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの影響をラットにおいて測定した。下記の実験で使用したチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを以下に示す:i)8アミノ酸C末端ヒスチジンタグ(配列番号5)に融合した全長ヒトチロシル−tRNAのアミノ酸1〜364を含むC末端短縮物(配列番号3)および;ii)「Y341A」と呼ばれる341位での単一のチロシンからアラニンへのアミノ酸置換を有する全長ヒトチロシル−tRNAシンテターゼの変異体(配列番号2)。
【0233】
血小板新生に及ぼすチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの影響を測定するために、各ラットの血小板数を最初に計画した注射の1日前に決定し、その最初の血小板数にしたがって動物を7つのコホートに分類した。3つのラット群に、それぞれ0.1、10、および1000μg/kgのC末端短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを1日1回にて7日間静脈内注射した。さらなる3群に、同一投薬量のY341Aを投与した。1つのコントロール群に、緩衝液のみ(0.5×PBS、2mM DTT)を毎日注射し、さらなるコントロール群に90μg/kgのトロンボポエチン(R&D Systems,Minneapolis,MN)を毎日注射した。
【0234】
2つのチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの投与により、トロンボポエチン群で認められた血小板数に匹敵するかそれ以上の血小板数の顕著な増加が認められた(図20を参照のこと)。これらの結果は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがin vivoで血小板新生を刺激することができることを示す。
【0235】
実施例5
チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは巨核球の化学誘引物質である
MO7e細胞(DSMZ,Braunschweig,Germany)を、20%熱不活化FBSおよび10ng/ml IL−3(R&D Systems,Minneapolis,MN)を補足したRPMI−1640培地中で培養した。細胞を2×10〜1×10/mlの密度に維持し、0.1%BSAを含むRPMI−1640培地を遊走緩衝液として使用した。遊走アッセイ前に、遊走緩衝液中で30分間細胞の血清を枯渇化させ、8μg/mlカルセインAM(Invitrogen,Carlsbad,CA)を負荷した。細胞を制動せずに200gで5分間スピンダウンし、遊走緩衝液で1回洗浄して遊離カルセインAMを除去した。細胞密度を1×10/mlに調製し、100μlを6.5mmトランスウェル 8.0μm細孔フィルターインサート(Costar、Cambridge、MA)に添加した。PBS、コントロールケモカイン、またはチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドのいずれかを含む600μl遊走緩衝液を下のチャンバーに添加し、細胞を4〜16時間遊走させた(遊走時間は16時間、遊走後に細胞を染色した)。下のチャンバーに遊走した細胞を回収し、100μl PBSに再懸濁し、384ウェル不透明Greinerプレートに移し、プレートリーダー中の蛍光によって計数した。図21は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがMO7e巨核芽球の遊走を刺激することを示す。
【0236】
実施例6
チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドはVCAM−1発現の刺激によって内皮単層への細胞接着を促進する
YRSポリペプチドがTHP−1細胞のHUVEC−2細胞の内皮単層への接着を刺激する能力を試験した。HUVEC−2細胞(BD Biosciences,San Jose,CA)を、EGM−2培地(Lonza,Allendale,NJ)中で培養し、10継代目に到達する前に使用した。THP−1細胞(ATCC,Manassas,VA)を10%熱不活化FBSを補足したRPMI−1640培地中で培養し、密度2〜4×10/mlで維持した。細胞を、約1×10細胞/ウェルでフィブロネクチンコーティングした(10μg/ml、37℃で2時間)不透明96ウェルプレートに播種した。
【0237】
単層が形成されるまでHUVEC−2細胞を成長させ、次いで、PBS、IL−1β、またはチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドのいずれかを含むEGM−2培地中で一晩刺激した。THP−1細胞を回収し、0.1%BSAおよびカルセインAM(6μl/ml)を含むRPMI−1640無血清培地中で30分間インキュベートした。次いで、細胞を、0.1%BSAを含むRPMI−1640無血清培地で洗浄し、10%FBSを含むRPMI培地中で密度1.5×10細胞/mlに再懸濁した。100μl THP細胞をHUVEC単層に添加し、15分間インキュベートした。非結合THP−1細胞をPBSで2回洗浄し、残りの細胞を2%ホルムアルデヒドで固定し、プレートリーダー中の蛍光によって計数した。
【0238】
図22は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドで処置した内皮単層へのTHP−1蛍光細胞の接着を示す。
【0239】
内皮単層中の接着分子発現を、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドへの曝露後に測定した。1×10 HUVEC−2細胞を96ウェルプレートに播種し、前段落に記載のように48時間成長させた。成長培地で希釈したチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドをウェルに添加し、16時間インキュベートした。培養培地を除去し、細胞を50μlのZ fix(Anatech Ltd,Battle Creek,MI)にて室温で15分間固定した。次いでウェルを50μlのカゼインで1時間ブロッキングし、その後に200μlPBSで複数回洗浄した。全てのその後の試薬をカゼインで希釈し、全工程を室温で行った。VCAM−1およびE−セレクチン(Santa Cruz Biotech,Santa Cruz,CA)に指向する抗体を1時間添加した。次いで、ウェルを上記のように洗浄し、HRP標識した二次抗体(Jackson Immunoresearch,West Grove,PA)を1時間添加した。ウェルを洗浄し、HRPの基質を添加した。15分後、同体積の2M硫酸を添加し、450nmでの吸光度を決定した。
【0240】
図23は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドでの内皮細胞の刺激後のVCAM−1発現の増加を示す。
【0241】
実施例7
チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドはCXCR−2受容体でトランスフェクトした293細胞株およびCHO細胞株の遊走を刺激する
CXCR−2シグナル伝達に及ぼすチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの影響を、前記ポリペプチドに応答したCXCR−2発現細胞の遊走の測定によって試験した。293/CXCR−2細胞を、10%熱不活化FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、および800μg/mlジェネテシン(全てInvitrogen,Carlsbad,CAから購入)を補足したDMEM培地中で維持した。0.1%BSAを含むDMEM培地を遊走緩衝液として使用した。遊走アッセイ前に、遊走緩衝液中で30分間細胞の血清を枯渇化させ、200gで5分間遠心分離し、遊走緩衝液で最終密度1×10細胞/mlに再懸濁した。100μlを6.5mmトランスウェルフィルターインサート(Costar,Cambridge,MA)に添加し、コントロールケモカイン、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド、または緩衝液のみを含む600μl遊走緩衝液を下のチャンバーのプレートに添加した。細胞を4時間遊走させ、上のチャンバー(トランスウェルフィルターインサート)中の残存細胞を綿棒(cotton swap)で除去した。次いで、フィルターインサートを、500μl細胞解離緩衝液(Invitrogen,Carlsbad,CA)および12μg/mlカルセインAM(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含む新規の24ウェルプレートに移した。37℃で1時間のインキュベーション後、細胞を回収し、100μl PBSに再懸濁し、384ウェル不透明Greinerプレートに移し、プレートリーダー中の蛍光によって計数した。
【0242】
CHO−K1/CXCR−2細胞を、10%熱不活化FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン、および800μg/mlジェネテシンを補足したF12培地中で維持した。0.5%BSAを含むF12培地を遊走緩衝液として使用した。遊走前に、遊走緩衝液中で30分間細胞の血清を枯渇化させ、細胞解離緩衝液の使用によって回収し、200gで5分間スピンダウンし、遊走緩衝液で最終密度1×10細胞/mlに懸濁した。100μlを6.5mmトランスウェルフィルターインサートに添加し、コントロールケモカイン、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド、または緩衝液のみを含む600μl遊走緩衝液を、下のチャンバーのプレートに添加した。細胞を3時間移動させ、上のチャンバー(トランスウェルフィルターインサート)中の残存細胞を綿棒(cotton swap)で除去した。次いで、フィルターインサートを500μl PBSおよび12μg/mlカルセインAMを含む新規の24ウェルプレートに移した。37℃で30分間のインキュベーション後、フィルターを500μl無フェノール/レッド−トリプシンを含む新規の24ウェルプレートに再度移した。2〜5分間のインキュベーション後、剥離細胞を回収し、100μl PBSに再懸濁し、384ウェル不透明Greinerプレートに移し、プレートリーダー中の蛍光によって計数した。
【0243】
図24は、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがCXCR−2トランスフェクトした細胞の遊走を誘導する能力を証明する。
【0244】
実施例8
チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは多形核(PMN)細胞遊走を刺激する
PMN細胞遊走に及ぼすYRSポリペプチドの影響を試験するために、製造者の説明書にしたがってRosetteSep(登録商標)ヒト顆粒球富化キット(StemCell Technologies,Vancouver,BC)を使用して、ヒト顆粒球細胞を新鮮なヒト末梢血から精製した。0.5%FBSを補足した無血清RPMI培地を遊走緩衝液として使用した。4×10細胞を1ml遊走緩衝液に再懸濁し、8μlの1mg/mlカルセインAM溶液(Invitrogen,Carlsbad,CA)と30分間インキュベートした。細胞を回収し、制動せずに200gで5分間スピンダウンし、遊走緩衝液で1回洗浄し、同一緩衝液で最終密度1×10/mlに再懸濁した。
【0245】
100μlを6.5mmトランスウェルフィルターインサート(Costar、Cambridge、MA)に添加し、コントロールケモカイン、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド、または緩衝液のみを含む600μl遊走緩衝液を、下のチャンバーのプレートに添加した。細胞をインキュベーター中で45分間遊走させ、下のチャンバーに遊走した細胞を回収し、100μl PBSに再懸濁し、384ウェルの不透明Greinerプレートに移し、プレートリーダー中の蛍光によって計数した。
【0246】
図25は、ケモカインを使用して典型的に認められたベル型の遊走曲線を示す。チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは、低いpM濃度および高いμM濃度の両方でPMNの二相遊走を誘導した。
【0247】
実施例9
チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドはリポ多糖(LPS)誘発後の肺への好中球浸潤を防止する(データ裏付けのない実験例)
循環系から肺への好中球遊走は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関与する(例えば、R.A.Stockley,Chest 121:151S−155S,2002を参照のこと)。CXCR−2発現は好中球遊走で役割を果たし得る(例えば、Rios−Santosら、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 175:490−497,2007を参照のこと)。COPDにおけるチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの役割を試験するための動物モデルを作製した。チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを、アレルゲン誘発前および誘発中に循環好中球が脱感作するのに必要な濃度および頻度で動物に静脈内投与する(例えば、100ng/kgと5mg/kgとの間で、例えば、LPS投与の12時間前、1時間前、およびLPS投与の4時間後)。次いで、動物をアレルゲン誘発に供する(例えば、鼻腔内投与経路による肺へのLPS滴下)。4〜8時間後、動物を安楽死させ、気管カテーテルを挿入し、等張生理食塩水での肺のフラッシングによって気管支肺胞洗浄液(BAL)サンプルを回収する。BAL液を、総細胞数および差分的細胞計数について分析する。
【0248】
本実施例では、チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは、LPS誘発に応答して肺への好中球遊走を防止することができる。
【0249】
実施例10
チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドは骨髄細胞培養物中の巨核球前駆細胞に影響を及ぼす
骨髄細胞培養物中の巨核球前駆細胞に及ぼすYRSポリペプチドの影響を試験するために、巨核球(CFU−Mk;コロニー形成単位−巨核球)系譜のクローン原性前駆体を、専用濃度のサイトカイン(StemCell Technologies,Vancouver,BC)を補足した無血清のコラーゲンベースの培地MegaCult−C(登録商標)4950中で評価した。正常なヒト骨髄低密度細胞(Lonza,Allendale,NJ)を、アッセイで必要になるまで−152℃で保存した。試験日に、細胞を37℃で急速解凍し、バイアルの内容物を2%ウシ胎児血清(FBS)を含む10mLのIscove改変ダルベッコ培地(IMDM)で希釈し、遠心分離(1200rpmにて室温で10分間)によって洗浄した。上清を破棄し、細胞ペレットを2%FBSを含む既知体積のIMDMに再懸濁した。細胞数(3%氷酢酸)および生存性の評価(トリパンブルー排除試験)を行った。
【0250】
チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(50%グリセロール/0.5×PBS/2mM DTT中に保存)を、0.5×PBS/2mM DTT中で合計5時間透析し、グリセロールを除去するために3時間後に緩衝液を1回交換した。透析後、タンパク質および緩衝液サンプルを濾過滅菌し、体積増加を相殺するように濃度を調整した。
【0251】
試験タンパク質(YRSポリペプチド)を、サイトカイン(rhTpo、rhIL−3、およびrhIL−6)を補足した無血清のコラーゲンベースの培地MegaCult−C(登録商標)4950のチューブに添加した。標準コントロール培養物(試験タンパク質を含まない)および溶媒コントロール培養物(試験タンパク質を含まないが、当量濃度の緩衝液を含む)も開始した。次いで、骨髄細胞を培地を含む各チューブに添加して、最終濃度1×10細胞/スライドを得た。次いで、ウシコラーゲンを添加し、チューブをボルテックスし、内容物を三連のダブルチャンバースライドに分注した。全培養物を、37℃、5%CO下で10〜12日間インキュベートした。
【0252】
インキュベーション後、培養物をコロニー形成について微視的に評価し、その後にスライドを脱水および固定した。GPIIa/IIIb(CD41)発現を検出するための抗体染色プロトコールを使用して、スライド上のコロニーを、StemCell Technical Manual,「Assays for the Quantitation of Human and Murine Megakaryocytic Progenitors」,Section 7(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載のように、アルカリホスファターゼ検出システムを使用して染色した。コロニー数を記録し、StemCellの熟練した専門家が評価した。コロニーを、サイズおよび形態学的性質に基づいて以下のカテゴリーに分類した:i)CFU−Mk(2〜20)−このより成熟した前駆細胞由来の小さな巨核球コロニーは2〜20個の細胞を含む、ii)CFU−Mk−このより原始的な前駆細胞由来の中程度の巨核球コロニーは21〜49個の細胞を含む、およびiii)CFU−Mk(>50)−この最も原始的な系譜に制限された前駆細胞由来の巨大巨核球コロニーは50個超の細胞を含む。
【0253】
図26は、最も原始的な系譜制限前駆体(刺激)(図26(A))およびより成熟した前駆体(阻害)(図26(A)および(B))に及ぼすチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における血小板減少症の処置またはその発症リスクの低減に使用するための、または被験体における血小板数(platelent count)の増加または維持させるための、血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む、医薬品。
【請求項2】
血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物を被験体に投与し、それにより、該被験体における血小板数を増加させる工程を含む、該被験体における血小板数を増加させる方法。
【請求項3】
血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物を被験体に投与し、それにより、該被験体における血小板減少症を処置するか、またはその発症リスクを低減する工程を含む、該被験体における血小板減少症を処置するか、またはその発症リスクを低減する方法。
【請求項4】
血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物を被験体に投与し、それにより、該被験体における血小板新生を刺激する工程を含む、該被験体における血小板新生を刺激する方法。
【請求項5】
血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを被験体に投与し、それにより、該被験体における血小板数を維持する工程を含む、該被験体における血小板数を維持する方法。
【請求項6】
血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを被験体に投与し、それにより、該被験体における巨核球の増殖および/または分化を刺激する工程を含む、該被験体における巨核球の増殖、遊走、および/または分化を刺激する方法。
【請求項7】
血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを被験体に投与し、それにより、該被験体における好中球増殖を刺激する工程を含む、該被験体における好中球増殖を刺激する方法。
【請求項8】
前記被験体が、血小板数の減少または低減に関連する疾患または状態を有するか、有するリスクがある、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項9】
前記被験体の血小板数が約150,000/mm以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項10】
前記血小板数の減少または低減に関連する疾患または状態が、出血、鼻出血、脾機能亢進、低温症、エプスタイン・バーウイルス感染、伝染性単核球症、ヴィスコット・オールドリッチ症候群、チアジドの母体摂取、先天性無巨核球性血小板減少症、血小板減少橈骨欠損症候群、ファンコニー貧血、ベルナール・スーリエ症候群、メイ・ヘグリン異常、グレイ血小板症候群、アルポート症候群、新生児風疹、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群(myeolodysplastic syndrome)、白血病、リンパ腫、腫瘍、骨髄癌、栄養欠乏、放射線被曝、肝不全、細菌性敗血症、麻疹、デング熱、HIV感染またはAIDS、早熟、胎児赤芽球症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、母性ITP、溶血性尿毒症症候群、播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、輸血後紫斑、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、新生児自己免疫性血小板減少症、および発作性夜間血色素尿症、C型肝炎ウイルス感染(HCV)、薬剤誘発性血小板減少症、および化学療法誘導性血小板増加症(CIT)から選択される、請求項8に記載の医薬品または方法。
【請求項11】
前記血小板数の減少または低減に関連する疾患または状態が薬物適用または薬物によって誘導される、請求項8に記載の医薬品または方法。
【請求項12】
前記薬物適用または薬物が、化学療法薬、非ステロイド性抗炎症薬、スルホンアミド、バンコマイシン、クロピドグレル、糖タンパク質IIb/IIIaインヒビター、インターフェロン、バルプロ酸、アブシキシマブ、リネゾリド、ファモチジン、メベベリン、ヒスタミン遮断薬、アルキル化剤、ヘパリン、アルコール、および抗菌性化学療法薬から選択される、請求項11に記載の医薬品または方法。
【請求項13】
前記化学療法薬が、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトセシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素(nitrosurea)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、トランス白金、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、テモゾロミド(temazolomide)、およびその誘導体から選択される、請求項12に記載の医薬品または方法。
【請求項14】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが、そのC末端が短縮された哺乳動物チロシル−tRNAシンテターゼを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項15】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約1〜50個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項16】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約50〜100個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項17】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約100〜150個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項18】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、少なくとも約150〜200個の残基がそのC末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項19】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、少なくとも約200〜250個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項20】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがそのN末端が短縮された哺乳動物チロシル−tRNAシンテターゼを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項21】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約1〜50個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項22】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約50〜100個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項23】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約100〜150個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項24】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、少なくとも約150〜200個の残基がそのN末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項25】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、少なくとも約200〜250個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項26】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、および
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項27】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが、
(a)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(c)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(d)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(e)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
から選択される、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品または方法。
【請求項28】
生理学的に許容可能な賦形剤および/またはキャリアならびに血小板新生有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む投与に適した組成物であって、該組成物が被験体において血小板新生を刺激し、そして/または血小板数を増加させることができる、組成物。
【請求項29】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがそのC末端が短縮された哺乳動物チロシル−tRNAシンテターゼを含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約1〜50個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約50〜100個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約100〜150個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、少なくとも約150〜200個の残基がそのC末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項34】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、少なくとも約200〜250個のアミノ酸残基がそのC末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項35】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドがそのN末端が短縮された哺乳動物チロシル−tRNAシンテターゼを含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項36】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約1〜50個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項37】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約50〜100個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項38】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14のアミノ酸配列を含み、少なくとも約100〜150個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項39】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、少なくとも約150〜200個の残基がそのN末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項40】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが配列番号1、2、3、6、8、または10のアミノ酸配列を含み、少なくとも約200〜250個のアミノ酸残基がそのN末端から短縮されている、請求項28に記載の組成物。
【請求項41】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが、
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、341位のアラニンがチロシンに置換されていない、ポリペプチド、および
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項42】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが、
(a)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(c)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(d)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(e)配列番号1、2、3、6、8、10、12、または14に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項43】
第2のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドをさらに含み、2つのチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが二量体を形成する、請求項28に記載の組成物。
【請求項44】
前記二量体がホモ二量体である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記二量体がヘテロ二量体である、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記ヘテロ二量体が、全長チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドおよび短縮チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
異種ポリペプチドをさらに含み、前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドおよび該異種ポリペプチドがヘテロ二量体を形成する、請求項28に記載の組成物。
【請求項48】
生理学的に許容可能な賦形剤および/またはキャリアならびに血小板新生有効濃度のキメラチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物であって、該キメラポリペプチドがチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの2個以上の生物学的に活性なフラグメントを含み、該2個以上のフラグメントが請求項28から42のいずれか1項に記載のポリペプチドの少なくとも10個の連続するアミノ酸を含み、該2個以上のフラグメントが連結してキメラポリペプチドを形成し、該キメラチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドが被験体における血小板新生を刺激し、そして/または血小板数を増加させることができる、組成物。
【請求項49】
生理学的に許容可能な賦形剤および/またはキャリアならびに血小板新生有効濃度のキメラチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物であって、該キメラポリペプチドは、(a)チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドの1つまたは複数の生物学的に活性なフラグメントであって、1つまたは複数の該フラグメントが請求項28から42のいずれか1項に記載のポリペプチドの少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む、フラグメント、ならびに(b)1つまたは複数の異種ポリペプチドであって、該(a)の1つまたは複数のフラグメントおよび該(b)の1つまたは複数の異種ポリペプチドが連結してキメラポリペプチドを形成し、該キメラポリペプチドが被験体における血小板新生を刺激し、そして/または血小板数を増加させることができる、1つまたは複数の異種ポリペプチド、を含む、組成物。
【請求項50】
請求項28から49のいずれか1項に記載のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項51】
サンプル中のYRSポリペプチドを同定または特徴づける方法であって、
(a)生物サンプルを得る工程、
(b)該生物サンプルを請求項50に記載の抗体または抗原結合フラグメントと接触させる工程、および
(c)該抗体または抗原結合フラグメントによる該生物サンプルへの特異的結合の存在もしくは不在を検出する工程
を含み、
それにより、該サンプル中の該YRSポリペプチドが同定または特徴づけられる、方法。
【請求項52】
前記生物サンプルを被験体から得る、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
単離ポリヌクレオチドを含む組成物であって、該ポリヌクレオチドが、
(a)配列番号4、7、9、11、13、または15に記載のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号4、7、9、11、13、または15に記載のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号4、7、9、11、13、または15に記載のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(d)配列番号4、7、9、11、13、または15に記載のヌクレオチド配列と少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(e)配列番号4、7、9、11、13、または15に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
から選択され、
該ポリヌクレオチドが被験体において血小板新生を刺激し、そして/または血小板数を増加させることができるチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドをコードする、組成物。
【請求項54】
請求項53に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項55】
請求項54に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項56】
初期巨核球前駆細胞の増殖および/または分化を刺激する方法であって、造血幹細胞の培養物をチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドと該初期巨核球前駆細胞の増殖に十分な時間インキュベートし、それにより、初期巨核球前駆細胞の増殖および/または分化を刺激する、方法。
【請求項57】
前記方法をex vivoまたはin vitroで行う、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記培養物を骨髄から得る、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記培養物を臍帯血から得る、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
必要とする被験体に前記細胞を投与する工程をさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
CXCR−2発現細胞の遊走を刺激する方法であって、該細胞をチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドと接触させ、それにより、該CXCR−2発現細胞の遊走を刺激する工程を含む、方法。
【請求項62】
前記細胞を接触させる工程をin vitroまたはex vivoで行う、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記接触する工程が、有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを含む組成物を必要とする被験体に投与することを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
被験体における肺の炎症および/またはその症状を低減する方法であって、有効濃度のチロシル−tRNAシンテターゼポリペプチドを該被験体に投与し、それにより、該被験体における肺の炎症および/またはその症状を低減する工程を含む、方法。
【請求項65】
前記被験体が慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記チロシル−tRNAシンテターゼポリペプチド(polyeptide)の投与がアレルゲンに対する循環好中球の脱感作を得るのに有効である、請求項64に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【公表番号】特表2011−525178(P2011−525178A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513661(P2011−513661)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/046910
【国際公開番号】WO2009/152247
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510325880)エータイアー ファーマ, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】