説明

チーグラー・ナッタ共触媒の同定方法

オレフィンモノマーの不均質チーグラー・ナッタ付加重合で使用するための触媒組成物を同定するための方法であって、前記触媒組成物がマグネシウムおよびチタン含有プロ触媒を含んでなるプロ触媒と共触媒を含んでなり、a)少なくとも1つのプロ触媒化合物を含んでなるライブラリーを準備し、b)前記プロ触媒ライブラリーの構成員を1つまたはそれ以上の触媒と接触させ、そしてこの得られた混合物をオレフィンモノマーとオレフィン重合条件下で接触させて、重合反応を起こさせることにより、触媒組成物ライブラリーを形成し、c)この重合時に関心のある少なくとも1つの変数を測定し、そしてd)前記測定した変数を参照することにより、関心のある触媒組成物を選択することを含んでなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(クロスリファレンスの記述)
この出願は、2004年6月16日出願の米国仮出願番号60/580,308の利益を主張する。
【0002】
本発明は特にチーグラー・ナッタ付加重合法で使用するための新しい共触媒組成物の研究分野に関する。特に、本発明は、コンビナトリアル技術により触媒組成物のライブリーを迅速に作り出し、そして試験するためのオレフィンの不均一なチーグラー・ナッタ触媒による重合を行う装置および方法と関連の技術に関する。
【背景技術】
【0003】
コンビナトリアルな化学および材料科学の技術(ハイスループット法またはパラレル法としても知られる)は、生物学、有機、無機および有機金属の合成および研究で使用する多数の化合物を迅速にスクリーニングするのに使用されてきた。コンビナトリアル材料科学は、化学的に多様な化合物あるいは材料のコレクションを作り出すための方法と、そして望ましい性能の特性および性質を求めて化合物または材料のこのライブラリーを迅速に試験あるいはスクリーニングするための方法を一般に指す。このようなコンビナトリアル法の用途の領域は、生物的に活性な材料ならびに高温超伝導体、磁気抵抗材料、ルミネッセンス化合物および触媒としての使用される化合物の発見を含むものであった。例として、米国特許第5,712,171号、第5,776,359号、第5,985,356号、第6,004,617号、第6,045,671号、第6,326,090号、第6,346,290号、第6,627,571号およびWO00/40331を含む。
【0004】
前出の特許リファレンスに加えて、Senkan,Nature,vol.394,pp.350-353(July 23,1998);Burgess et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Eng..1996,35,No.2,pp.220-222;Maier et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Eng..1998,37,No.19,pp.2644-2647;Reetz et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Eng.,1998,37,No.19,pp.2647-2650;Angew.Chem.Int.Ed.Eng..1998,37,No.17,pp.2333-2336;Morken et al.,Science,vol.280,pp.267-270(April 10,1998);and Gilbertson et al.,Tetrahedron Letters,vol.37,no.36,pp.6475-6478(1996)を含む、多数の学術論文もコンビナトリアル法を開示した。
【0005】
前出および他のリファレンスはコンビナトリアル材料試験の技術を進歩させたが、なお更なる改善と進歩がチーグラー・ナッタ触媒の開発の分野において望まれる。特に、共触媒組成物として有用な候補材料をスクリーニングするための更に迅速な方法が望まれる。
【0006】
一般に、チーグラー・ナッタ触媒組成物は、2族金属含有プロ触媒組成物、特にMgCl2に担持された遷移金属錯体および共触媒または活性化剤を含んでなる。好適な活性化剤は、一般に、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物、特にトリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウムである。
【0007】
WO00/40331においては、元素周期律表の3−15族の金属と1つまたはそれ以上の配位子から形成される金属化合物を使用するオレフィン重合触媒を含む均一および担持された均一な配位重合触媒を評価するためのコンビナトリアル装置および方法が開示されている。
【0008】
米国特許第6,627,571号において、基材の多数の領域に触媒キャリアの懸濁液を塗布し、そしてそれから液体を除去して、多孔質触媒キャリアのアレーを形成し、このアレーを触媒活性成分またはこれらの前駆体により含浸し、そして活性を分析することを含んでなる、不均質触媒をスクリーニングする方法が開示された。
【0009】
チーグラー・ナッタ触媒は、マグネシウムハライドの固体混合物のチタンハライドとの物理的ブレンドまたは液体混合物からの沈澱したハロゲン化固体の系内形成を含む多数の方法により作製可能である。固相形成法はボールミルまたは他の好適な摩砕および粉砕装置の使用を含み、そしてコンビナトリアル研究アプローチには適合しない。沈澱法は、好適なプロ触媒組成物の作製に様々のハロゲン化剤、好ましくはTiCl4による反復ハロゲン化を使用する。特に使用される反応容器のサイズが小さく、そして複数の試料を取り扱う必要があることにより、チーグラー・ナッタ触媒法の他の態様は、自動化および反応器設計においてコンビナトリアルアプローチを使用することに対する顕著な挑戦を提起する。結果として、チーグラー・ナッタ法の研究にコンビナトリアル法を適用することは適切に探索されなかった。
【0010】
Adv.Synth.Catal.,2003,345,1299-1304においては、プロペンの重合に供与体で安定化されたアルミニウムアルキルを活性化剤して使用することが開示されている。Organometallics 2003,22,1391−1401においては、チーグラー・ナッタ触媒活性化剤としての使用に変成アルキルアルミニウム化合物が開示されている。US−A−5,468,707は1個以上の配位基付きの同様に変成されたアルキルアルミニウム錯体を開示している。GB−A−799823は、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、アミド、メルカプト、チオフェノキシ、カルボキシあるいはスルホン酸配位子を含む有機アルミニウム触媒の使用を開示した。DE 2,212,088は、アルキルアルミニウム;およびアルコキシアルミニウムあるいはアリールオキシアルミニウム化合物を含んでなるチーグラー・ナッタ触媒組成物を開示した。US−A−4,377,720は、ジルコニウム含有チーグラー・ナッタ触媒をジアルキルアルミニウムアルコキシドまたはアリールオキシドおよびジアルキルアルミニウム二置換アミドを含むアルミニウム触媒と組み合わせて使用することを開示した。EP−A−1,132,409は特定のアルキルアルミニウム錯体を使用するチーグラー・ナッタ触媒組成物を開示した。
【0011】
不均質触媒、特に不活性固体材料上に場合によっては担持された少なくとも1つの遷移金属化合物、活性化剤または共触媒および場合によっては1つまたはそれ以上の重合調整剤化合物を含んでなるチーグラー・ナッタ触媒組成物にコンビナトリアル研究法を適用することができれば、望ましいことであろう。特に、必要とされることは、付加重合研究、特にチーグラー・ナッタ触媒を用いて高分子量ポリマーを形成するオレフィンモノマーの付加重合に関連する研究での使用に特に合わせられた触媒組成物の迅速かつ信頼性のある発見および開発のためのコンビナトリアル方法および装置である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特にチーグラー・ナッタ触媒を用いる付加重合で使用されるようにされたライブラリーのコンビナトリアル合成およびこれらのコンビナトリアルライブラリーのスクリーニングを行うための方法および装置と、チーグラー・ナッタオレフィン重合用の改善された触媒組成物を提供する。
【0013】
この方法論の最も広い概念は、特に重合条件下での工程変数または得られたポリマー製品の性質を測定することにより、少なくとも1つのプロ触媒、少なくとも1つの共触媒および場合によっては1つまたはそれ以上の重合調整剤を含有する触媒組成物のライブラリーが作製され、そして、オレフィン重合活性についてスクリーニングされるということである。作り出されるライブラリーは、通常、遷移金属錯体または化合物または混合物のアレーまたはこれらの多レベルのアレーから触媒組成物を形成する1つまたはそれ以上の変換段階により形成される。1つまたはそれ以上の前出の触媒組成物の1つまたはそれ以上のモノマーとの混合物または溶液を形成し、そして関心のある性質に対して試験を行うことにより、得られた製品は、通常、チーグラー・ナッタ反応条件下での重合活性についてスクリーニングされる。本発明は、このような合成およびスクリーニングの実施のための多数の実施形態を提供し、そしてこの実施形態は一緒に組み合わせ得る。
【0014】
このライブラリーにおいては、各構成員は共通の性質または機能性を有し得るが、構造的な多様性、分子量または試験対象のある他の変数で変わるであろう(有理型変動)。別法としては、このライブラリーは一つにまとめる特徴または構造を持たない多様な化合物の混合物を含有し得る(ランダム変動)。このライブラリーの個別の構成員はある化学的に有意な形態で相互に異なるが、較正の目的で、ライブラリー構成員のある繰り返しが望まれ得る。場合によっては、親ライブラリーの1つまたはそれ以上の構成員から1つまたはそれ以上のアリコートを採り、そしてこれらを場合によっては任意の更なる成分と組み合わせることにより、1つまたはそれ以上の娘ライブラリーが親ライブラリーから作り出され得る。例えば、各娘ライブラリーは元のライブラリーのレプリカであると考えられ得るが、1つまたはそれ以上の更なる成分または化学的操作を含む。次に付加重合条件にかけられる1つまたはそれ以上の触媒ライブラリーを作り出すように、少なくとも1つの前駆体またはプロ触媒化合物と少なくとも1つの活性化剤または共触媒が前駆体ライブラリーまたは娘ライブラリーの構成員の少なくとも一部中に存在しなければならない。重合を使用して、製品ライブラリー、すなわちポリマーライブラリーを作り出し得る。別法としては、重合は活性に対するスクリーンとして機能し得る。例えば使用される反応試剤の量を変えることにより、あるいは異なる重合条件、例えば時間、温度、圧力、撹拌速度、試剤添加の順序などを選択することにより、工程条件もコンビナトリアル化され得る。この方法は、ライブラリーから一部の構成員を取り除いて、二次スクリーニングに進むように、異なるスクリーニング段階、例えば一次スクリーニングを場合によっては提供し得る。
【0015】
特にチーグラー・ナッタ触媒の研究での使用に合うようにされた本発明の一つの実施形態は、少なくとも1つの2族の錯体または化合物を含んでなる複数の構成員化合物を含むプロ触媒ライブラリーから出発することにより新規な触媒を研究し、そして発見する方法および装置である。この化合物は、一般に、組成により、構造により、あるいは組成と構造により異なるであろう。例として、2族金属のアルコキシド、ハライドまたはカルボキシレートまたはこれらの誘導体を含有するルイス塩基または前出の化合物または錯体の混合物ないずれの化合物を含む。所望ならば、このライブラリーは、前出のプロ触媒の前駆体から開始し、所望のプロ触媒組成物を含んでなる娘ライブラリーの作製に更なる合成レベルを組み込み得る。
【0016】
このライブラリー(前駆体ライブラリーまたはプロ触媒ライブラリー)は、スクリーン対象の触媒組成物を形成するために1つまたはそれ以上の試剤または処理を含む1つまたはそれ以上の段階または段階の繰り返しを含み得る1つまたはそれ以上の変換工程にかけられる。このような変換工程の例として、ハロゲン化、チタン化またはプロ触媒の他の化学的変換、1つまたはそれ以上の溶媒の添加、混合、加熱、冷却、濾過、抽出または単純な熟成を含む。加えて、所望の性質、例えばポリマー選択性を得られた触媒に付与する目的で、添加物、例えば内部電子供与体、外部電子供与体または他の触媒調整剤が添加され得る。前駆体、プロ触媒、共触媒および添加剤の様々の組み合わせ物を評価し、スクリーンするために、このような添加物の別々なライブラリーもプロ触媒化合物(または前駆体化合物)のライブラリーとの組み合わせで使用され得る。
【0017】
前出に加えて、本発明はこのプロ触媒を活性重合触媒に反応条件下で変換させるように共触媒を使用する。したがって、本発明の方法によって、通常のチーグラー・ナッタ重合条件下での候補触媒の合成と試験および好適な触媒の迅速な発見が可能となる。一つしかない手順においては、この触媒は、所望ならば重合方法での使用の直前に2つまたはそれ以上の試剤の反応により形成され得る。別法としては、この共触媒は使用前に以前に合成され単離あるいは精製されたものであり得る。
【0018】
前出の操作は、試剤の測定された添加、得られた反応混合物の適切な混合および操作、反応器内容物の加熱およびまたは冷却、生成物の分離および副生成物、溶媒、または他の成分の除去を可能とする能力のあるセルまたは他の好適な反応容器の使用を必要とする。望ましくは、揮発性反応器成分の損失または他の試剤、反応器または反応混合物の汚染を防止するために、各反応セルあるいは容器は密封され、そして不活性雰囲気に曝されるか、あるいはそうでなければ雰囲気、他の反応セルおよびライブラリー(一つまたは複数)から単離される。極めて望ましくは、各反応器あるいはセルは、セル中の固体反応器含有物から液体の容易な分離を可能とする濾過手段を備えられるか、あるいは濾過手段を使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この明細書中で元素周期律表へのすべての参照は、CRC Press,Inc.発行の元素周期律表(2001年版権)を引用するものとする。また、族へのあらゆる参照も族の番号付けにIUPAC系を用いる、この元素周期律表において反映されている族であるものとする。米国特許慣行の目的で、特に合成技術、原材料および当分野での一般的な知識の開示に関して、この明細書中で参考とされる任意の特許、特許出願または公報の内容は、参照して全体で本明細書に組み込まれている(あるいは同等のこれらの米国版は引用に組み込まれている)。特記しない限り、文脈から明白であるかあるいは当分野で慣用的であるように、すべての部およびパーセントは重量基準である。
【0020】
この明細書中で出現する場合には、用語「含んでなる」およびこれらの派生語は、これらがこの明細書中で開示されているかどうかに拘わらず、あらゆる更なる成分、段階または手順の存在を排除するようには意図されていない。あらゆる疑念を回避するために、用語「含んでなる」の使用によりこの明細書中で請求されるすべての組成は、特記しない限り、あらゆる更なる添加物、補助剤または化合物を含み得る。対照的に、用語「本質的に・・・からなる」は、この明細書中で出現する場合には、続いて起こるあらゆる列挙の範囲からも操作に必須でないものを除いてあらゆる他の成分、段階または手順も排除する。用語「・・・からなる」は、使用される場合には、特に記述されているか、あるいは掲げられているあらゆる成分、段階または手順も排除する。用語「または」は、特記しない限り、個別でならびにあらゆる組み合わせでも掲げられた構成員を指す。
【0021】
「ライブラリー」は、この用語がこの明細書中で使用されるように、化学的多様性または工程多様性のいずれかを有する。化学的多様性は、分子または化合物中の原子またはこれらの配列に関して変わる構成員を有するライブラリーを指す。工程多様性は、異なる処理条件に曝され、そして異なる工程履歴の結果として異なる化学的性質を有するか、あるいは有しない構成員を有するライブラリーを指す。異なる処理条件は、化合物と試剤の比、反応時間、反応温度、反応圧力、反応への出発成分添加の速度、滞留時間(または製品取り出し速度)、反応雰囲気、混合速度または当業者ならば認識するであろう他の条件を変化させることを含む。完璧なコンビナトリアル研究および開発プログラムがオレフィン重合反応に対して企図され得るのは、多様性を有するライブラリーの作製および関心のある性質または化合物に対するこのようなライブラリーのスクリーニングによるものである。
【0022】
この明細書で使用されるように、「ステーション」は、ライブラリーの構成員に対する1つまたはそれ以上の機能を行う装置における場所である。この機能は、出発成分を組み合わせること、反応により製品ライブラリーを作り出すこと、スクリーニング、精製、分離または上述の他の機能のいずれかを行うことであり得る。このように、このステーションは、ポンプとコンピューター付きの液体取り扱いロボット(当分野で知られているように)を含んでなり、分注、溶解、混合および/または一つの容器から他の容器への液体の移動を行い得る。このステーションは、上述の反応器のいずれかを含んでなり得、そして所望ならば装置の残りの部分から離して、例えば不活性雰囲気グローブボックス中に配置され得る。ステーションは、また、所望ならば装置のクリーニング、再コンディショニングまたは再設定により場合によっては分離されて、マルチ機能も行い得る。
【0023】
触媒形成
上述のように、本発明で使用されるオレフィン重合のプロ触媒前駆体は2族金属化合物、好ましくはマグネシウムの誘導体を含んでなる。このようなマグネシウム部分の源は、マグネシウム金属、無水塩化マグネシウム、マグネシウムアルコキシドあるいはアリールオキシドまたはカルボキシレート化マグネシウムアルコキシドあるいはアリールオキシドを含む。マグネシウム部分の好ましい源は、マグネシウムアルコキシド(C1-4)、特に少なくとも1つのエトキシ基を含有するマグネシウム化合物あるいは錯体である。加えて、この前駆体は望ましくは遷移金属化合物、特にチタン化合物を含んでなる。チタン部分の好適な源は、チタンアルコキシド、チタンアリールオキシドおよび/またはチタンハライドを含む。好ましい前駆体は、1つまたはそれ以上のマグネシウムアルコキシド(C1-4)あるいはハライド含有化合物と場合によっては1つまたはそれ以上のチタンアルコキシド(C1-4)あるいはハライドを含んでなる。
【0024】
プロ触媒前駆体化合物を作製する様々の方法は当分野で既知である。これらの方法は、とりわけ、US−A−5,034,361;US−A−5,082,907;US−A−5,151,399;US−A−5,229,342;US−A−5,106,806;US−A−5,146,028;US−A−5,066,737;US−A−5,077,357;US−A−4,442,276;US−A−4,540,679;US−A−4,547,476;US−A−4,460,701;US−A−4,816,433;US−A−4,829,037;US−A−4,927,797;US−A−4,990,479;US−A−5,066,738;US−A−5,028,671;US−A−5,153,158;US−A−5,247,031;US−A−5,247,032,5,487,938そのほかに記載されている。好ましい方法においては、この作製は、場合によっては不活性固体担体材料、特にシリカ、アルミナ、アルミノシリケートまたは類似の物質の存在下でマグネシウム化合物または化合物の混合物を塩素化することを含む。更なる技術、例えば固体塩化マグネシウム混合物のボールミルかけも既知である。
【0025】
本明細書中で使用する好ましいプロ触媒前駆体は、式MgdTi(OReefの混合マグネシウム/チタン化合物である。式中、Reは1〜14個の炭素原子を有する脂肪族あるいは芳香族の炭化水素基またはCOR’(ここで、R’は1〜14個の炭素原子を有する脂肪族あるいは芳香族の炭化水素基である)であり;各ORe基は同一であるか、あるいは異なり;Xは独立してR’、塩素、臭素またはヨウ素であり;dは0.5〜5、好ましくは2−4、最も好ましくは3であり;eは2−12、好ましくは6−10、最も好ましくは8であり;そしてfは1−10、好ましくは1−3、最も好ましくは2である。この前駆体は、理想的には、これらの作製で使用される反応混合物からアルコールを除去する制御された沈澱により作製される。特に所望の反応媒体は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物の混合物、最も特にクロロベンゼン、アルカノール、特にエタノールと、無機塩素化剤を含んでなる。好適な無機塩素化剤は、ケイ素、アルミニウムおよびチタンの塩素誘導体、特に四塩化チタンまたはアルミニウムセスキクロリド、最も特に四塩化チタンを含む。塩素化で使用された溶液からのアルカノールの除去は、特に所望の実施形態および表面積を有する固体前駆体の沈澱を生じる。更には、得られた前駆体は、サイズを揃えられ、そして粒子崩壊ならびに得られたプロ触媒の分解に抵抗性のある特に均一な粒子である。
【0026】
この前駆体は、ハロゲン化剤、特に無機ハライド化合物、好ましくはチタンハライド化合物でのハロゲン化により固体プロ触媒に変換される。制御されたタクティシティが所望されるプロピレンまたは高級アルケンの重合触媒に対しては、この方法は内部電子供与体の存在下で行われる。前駆体の中に十分な量で既に組み込まれていない場合には、電子供与体はハロゲン化の前、間あるいは後に別に添加され得る。固体前駆体を製造、回収および貯蔵するあらゆる方法も本発明での使用に好適である。
【0027】
固体プロ触媒前駆体を重合プロ触媒に変換するための一つの好適な方法は、前駆体と四価チタンハライド、任意の炭化水素またはハロ炭化水素および電子供与体(既に存在していない場合には)とを反応させることによるものである。好ましい四価チタンハライドは四塩化チタンである。
【0028】
オレフィン重合のプロ触媒の作製で使用される任意の炭化水素またはハロ炭化水素は、好ましくは12個までの炭素原子、更に好ましくは9個までの炭素原子を含有する。例示の炭化水素は、ペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびアルキルベンゼンを含む。例示の脂肪族ハロ炭化水素は、メチレンクロリド、メチレンブロミド、クロロホルム、カーボンテトラクロリド、1,2−ジブロモエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロシクロヘキサン、ジクロロフルオロメタンおよびテトラクロロオクタンを含む。例示の芳香族ハロ炭化水素は、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼンおよびクロロトルエンを含む。脂肪族ハロ炭化水素のうちで、少なくとも2つのクロリド置換基を含有する化合物が好ましく、カーボンテトラクロリドおよび1,1,2−トリクロロエタンが最も好ましい。この芳香族ハロ炭化水素のうちで、クロロベンゼンが特に好ましい。
【0029】
好適な電子供与体は、マグネシウムベースのプロ触媒の形成で慣用的に使用される、活性水素を含まない電子供与体である。特に好ましい電子供与体は、(ポリ)エーテル、(ポリ)エステル、アミン、イミン、ニトリル、ホスフィン、スチビン、アルシンおよびプロ触媒の合成時に系内でエステルに変換可能な化合物、例えばフタル酸無水物、コハク酸無水物、グルタル酸無水物およびフタロイルクロリドを含む。しかしながら、更に好ましい電子供与体は、カルボン酸エステルまたはこれらのエーテル誘導体、特に芳香族モノカルボン酸あるいはジカルボン酸のC1-4アルキルエステルおよびこれらのC1-4アルキルエーテル誘導体である。このような電子供与体の例は、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、イソプロピルベンゾエート、イソブチルベンゾエート、エチルp−エトキシベンゾエート、エチル−p−メトキシベンゾエート、イソプロピル−p−エトキシベンゾエート、イソブチル−p−エトキシベンゾエート、ジエチルフタレート、ジメチルナフタレンジカルボキシレート、ジイソプロピルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ−n−プロピルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート、1,2−ジエトキシベンゼン、1−エトキシ−2−n−プロポキシベンゼン、1−エトキシ−2−n−ブトキシベンゼンおよび1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンである。この電子供与体は単一の化合物または化合物の混合物であり得る。特に好ましい内部電子供与体は、エチルベンゾエート、エチルp−エトキシベンゾエート、ジ(n−ブチル)フタレート、ジ(イソブチル)フタレートおよび1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンである。
【0030】
本発明の一つの実施形態においては、電子供与体は、プロ触媒前駆体を有機ハロゲン化剤、特にベンゾイルクロリドまたはフタロイルジクロリドと接触させることにより、前出の前駆体形成段階または無機ハライド化合物を用いるハロゲン化段階と同時に、系内で形成され得る。十分な電子供与体は、通常、この作製の段階におけるこの固体プロ触媒中に存在するマグネシウムに対する電子供与体のモル比が0.01:1〜3:1、好ましくは0.05:1〜2:1であるように供給されるか、あるいは系内で作製される。
【0031】
プロ触媒前駆体、任意の炭化水素またはハロ炭化水素、電子供与体およびハロゲン化剤を接触させる方法は広い限界内で変えられ得る。一つの実施形態においては、この四価チタンハライドは電子供与体とプロ触媒前駆体の混合物に添加される。しかしながら、更に好ましくは、プロ触媒前駆体を四価チタンハライドおよび任意のハロ炭化水素と最初に混合し、そして前駆体とハロゲン化剤の間の1〜30分続く予備接触時間の後、電子供与体を最後に添加する。理想的には、所望の粒子形態を有する固体生成物を得るために接触時間と温度が制御される。前駆体とプロ触媒組成物形成工程における残存成分との好ましい接触時間は、少なくとも−70℃の、好ましくは少なくとも25℃の、最も好ましくは少なくとも60℃の温度から160℃までの、好ましくは140℃までの、最も好ましくは130℃までの温度において少なくとも10分、好ましくは少なくとも15そして更に好ましくは少なくとも20分であり、10時間まで、好ましくは2時間まで、最も好ましくは1時間までの時間である。高い温度または長い接触時間の組み合わせにおいては、粒子形態、特に得られた固体の粒子サイズ、サイズ分布および気孔率、プロ触媒組成物およびこれから形成される触媒が悪影響を受ける。
【0032】
本発明で使用するプロ触媒ライブラリーの好ましい構成員は、式:Mgd'Ti(ORee'f'(ED)g'の混合マグネシウム/チタン化合物である。式中、Reは1〜14個の炭素原子を有する脂肪族あるいは芳香族の炭化水素基またはCOR’(ここで、R’は1〜14個の炭素原子を有する脂肪族あるいは芳香族の炭化水素基である)であり;各ORe基は同一であるか、あるいは異なり;Xは独立してR’、塩素、臭素またはヨウ素であり;EDは独立して各起源で電子供与体、特に芳香族モノカルボン酸エステルまたは芳香族ジカルボン酸ジエステルであり;d’は1〜36、好ましくは6−18、最も好ましくは10−14であり;e’は0−3、好ましくは0.01−2、最も好ましくは0.01−1であり;f’は20−40、好ましくは25−35、最も好ましくは27−29であり;そしてg’は0.1−3、好ましくは0.5−2.5、最も好ましくは1−2である。
【0033】
エチレン単独またはエチレンとα−オレフィン、特に1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンの混合物の重合で使用する触媒前駆体は、望ましくは、1つまたはそれ以上の2族金属化合物、特にヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド、例えばブチルオクチルマグネシウムエトキシド(Schering A.Gから入手し得るBOMAG−O)またはブチルエチルマグネシウムブトキシド(Texas Alkyls Incから入手し得るBEMB)または類似の化合物を含んでなる。固体担体、特にルイス酸、特にメチルアルモキサン、トリメチルアルミニウムまたはトリエチルアルミニウムにより場合によっては処理された高表面積の、脱ヒドロキシル化したシリカは2族金属化合物と、所望ならば一般に炭化水素液体中のスラリーの形態で組み合わされ得る。別法としては、固体担体は、所望ならば、プロ触媒またはこの反応の任意の段階における触媒と組み合わされ得る。通常、内部電子供与体は、エチレンとC4-8α−オレフィンの重合に使用されるプロ触媒組成物中に存在しない。
【0034】
必要ならば、プロ触媒は、前駆体中の残存するアルコキシド部分をクロリド部分に変換するために2族金属含有前駆体組成物をハロゲン化剤、好ましくは塩素化剤によりメタセシスまたは交換反応することにより形成され得る。別のハライド化合物、例えばV(O)Cl3、Si(O)Cl2またはエチルアルミニウムジクロリドにより場合によっては混合されるか、あるいは交互された四塩化チタンが好ましい塩素化試剤である。この反応媒体は、好ましくは炭化水素、クロロ炭素またはクロロ炭化水素、特に1つまたはそれ以上のアルカンまたはクロロベンゼンである。このメタセシスは、好適なプロ触媒組成物が得られるまで一度以上所望のように繰り返され得る。
【0035】
前出の交換手順の後、得られたプロ触媒組成物は、作製で使用された反応媒体から好ましくは濾過により分離されて、湿ったフィルターケーキを生じる。望ましくは、次に、この湿ったフィルターケーキは、反応しなかったTiCl4を除去するために液体希釈剤、好ましくは脂肪族炭化水素によりすすぎまたは洗浄され、そして所望ならば残存する液体を除去するために乾燥され得る。通常、この固体プロ触媒組成物は、脂肪族炭化水素、例えばペンタン、イソペンタン、ヘキサン、オクタン、イソオクタンまたはこのような炭化水素の混合物により1回以上洗浄される。最終のプロ触媒組成物は、更に貯蔵または使用するために、炭化水素、特にアルカンまたはアルカンの混合物中で分離および乾燥あるいはスラリ化可能である。
【0036】
プロ触媒を作製するための他の技術が所望ならば使用され得る。例えば、好適なプロ触媒は、二塩化マグネシウムとアルキルアルミニウムジハライド、特にエチルアルミニウムジクロリドの炭化水素分散液の間の反応、続いてチタンアルコキシド、特にチタンテトラアルコキシド、例えばチタンテトライソプロポキシドとの反応によっても作製され得る。この二塩化マグネシウムは、固体二塩化マグネシウムをボールミルにかけることにより、あるいは有機マグネシウム化合物、特にジアルキルマグネシウム化合物、例えばジエチルマグネシウムとHClとを炭化水素液体中で反応させることにより作製され得る。
【0037】
望ましくは、この得られた固体プロ触媒組成物は、場合によっては不活性金属酸化物または半金属酸化物上に担持された多孔質粒子の形のものであり、式:Mgd"Ti(ORee"f"(ED)g"(エーテル)h"に相当する。式中、Reは1〜14個の炭素原子を有する脂肪族あるいは芳香族炭化水素基またはCOR’(ここで、R’は1〜14個の炭素原子を有する脂肪族あるいは芳香族炭化水素基である)であり;各ORe族は同一であるか、あるいは異なり;Xは独立してR’、塩素、臭素またはヨウ素であり;EDは電子供与体、特にエチルベンゾエート、ジイソブチルフタレートまたは1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼンであり;エーテルは脂肪族エーテル、脂肪族ポリエーテルまたは脂肪族(ポリ)グリコールエーテルであり;d”は1〜50、好ましくは6〜30、最も好ましくは10〜25であり;e”は0〜3、好ましくは0〜1.5、最も好ましくは0〜0.5であり;f”は2〜100、好ましくは5〜80、最も好ましくは6〜60であり;g”は0〜3、好ましくは0〜2.5、最も好ましくは0〜2であり;そしてh”は0〜5、好ましくは0.001〜2、最も好ましくは0.01〜1である。
【0038】
望ましくは、得られたプロ触媒組成物は、BET、窒素ポロシメーター法およびレーザー粒子分析装置により測定して、少なくとも100m2/gの、好ましくは少なくとも250m2/gの平均表面積、少なくとも0.18cm3/gの、好ましくは少なくとも0.20cm3/gの平均細孔容積、20〜40μmの、好ましくは24〜30μmの中間粒子サイズおよび3〜15μmのD10、18〜30μmのD50および35〜75μmのD90を有する粒子サイズ分布の粒子物理的性質を有する。更に望ましくは、得られた固体のプロ触媒組成物の残存するアルコキシド含量は、5重量パーセント以下、更に好ましくは3重量パーセント以下、最も好ましくは1重量パーセント以下である。
【0039】
このプロ触媒組成物は所望ならば次の手順の1つまたはそれ以上により更に処理され得る。この固体プロ触媒組成物は異なるハロゲン化剤または前に使用された錯体によりハロゲン化され得;溶媒、特にハロ炭化水素により接触(抽出)され得;そしてすすぎまたは洗浄、熱処理または熟成され得る。前出の技術は異なるプロ触媒組成物に関して当分野で以前から既知である。前出の更なる手順はあらゆる順序でも組み合わされ得るか、あるいは別々に使用され得るか、あるいは全く使用されない。
【0040】
固体プロ触媒組成物は、場合によっては高い温度で好適な液体希釈剤に暴露し、そして得られた固体を濾過することにより固定されていないチタンハライド種を除去するために、所望ならば、抽出され得る。例として、この固体プロ触媒は、高い温度、例えば150℃までの温度である時間ハロ炭化水素と接触され得る。45℃より高く、好ましくは85℃より高く、更に好ましくは115℃より高く、そして最も好ましくは120℃より高い温度から300℃までの、更に好ましくは200℃までの、そして最も好ましくは150℃までの温度で抽出を行うことが特に好ましい。
【0041】
初めに、固体と抽出剤を25℃またはその近傍で接触させ、次いで高い温度まで加熱すると、最良の結果が得られる。抽出と同時にこのプロ触媒のあらゆる残存するアルコキシド部分もハライド基に更に変換するように、十分な四価チタンハライドが供給され得る。この抽出工程は1つまたはそれ以上の接触操作で行われ、それぞれが数分から数時間の範囲の時間で行われる。
【0042】
好適な抽出剤は、脂肪族、脂環式あるいは芳香族炭化水素、これらのハロゲン化誘導体およびこれらの混合物を含む。例示の脂肪族炭化水素はペンタンおよびオクタンを含む。例示の脂環式炭化水素はシクロペンタン、シクロヘキサンおよびシクロオクタンを含む。例示の芳香族炭化水素はベンゼン、アルキルベンゼンおよびジアルキルベンゼンを含む。前出の例示のハロゲン化誘導体は、メチレンクロリド、メチレンブロミド、クロロホルム、カーボンテトラクロリド、1,2−ジブロモエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロシクロヘキサン、ジクロロフルオロメタン、テトラクロロオクタン、塩素化ベンゼン、臭素化ベンゼンおよび塩素化トルエンを含む。特に好ましい脂肪族炭化水素はペンタン、イソペンタン、オクタンおよびイソオクタンを含む。特に好ましい芳香族炭化水素はベンゼン、トルエンおよびキシレンを含む。特に好ましいハロ炭化水素は、カーボンテトラクロリド、1,1,2−トリクロロエタン、塩素化ベンゼンおよび塩素化トルエンを含む。最も極めて好ましい抽出剤は、芳香族炭化水素およびハロ炭化水素、特にトルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンおよびo−ジクロロベンゼンである。望ましくは、選択される抽出剤は、高圧装置の使用を避けるように、抽出において使用される温度以上の沸点を有する。
【0043】
望ましくは液体組成物のスプレー乾燥により作製において使用されるあらゆる揮発性希釈剤も除去することによって、この得られた前駆体は、固体の形態でも供給され得る。この方法で、前駆体の均一な賦型され、サイズを揃えた粒子を容易に製造することができる。
【0044】
重合調整剤
1つまたはそれ以上のポリマーまたは工程の性質を改変するのに、チーグラー・ナッタ触媒組成物で使用される多数の重合調整剤が知られている。一つの例は、この触媒によって、C3と高級なα−オレフィンを重合させる場合に使用される、選択性制御剤(SCA)または外部電子供与体である。通常のSCAは、チタンベースのチーグラー・ナッタ触媒と一緒に慣用的に使用されるものである。好適な選択性制御剤の例示的なものは、上述のプロ触媒組成物で使用される電子供与体、ならびに少なくとも1つのケイ素−酸素−炭素結合を含有する有機シランあるいはポリ有機シラン化合物の類である。好適なケイ素化合物は式R1mSiYnpの化合物またはこれらのオリゴマー型あるいはポリマー型誘導体を含む。式中、R1は1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基またはハロゲン、ケイ素、酸素、窒素、リンまたはホウ素を含有する置換基により置換され得る1〜20個の炭素原子を含有するジヒドロカルビルアミノあるいはトリヒドロカルビルシリル基であり、Yは−OR2または−OCOR2(式中、R2はハロゲン、ケイ素、酸素、窒素、リンまたはホウ素を含有する置換基により置換され得る1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基である)であり、Xは水素またはハロゲンであり、mは0〜3の値を有する整数であり、nは1〜4の値を有する整数であり、pは0〜1の値を有する整数、好ましくは0であり、そしてm+n+p=4である。極めて好ましくは、R1は少なくとも1つの起源においては一級アルキル基でなく、そしてこれらの非一級炭素はこのケイ素原子に直接に付いている。R1の例としてシクロペンチル、t−ブチル、イソプロピルまたはシクロヘキシルを含む。R2の例としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、フェニル、ベンジルおよびt−ブチルを含む。Xの例はClおよびHである。各R1およびR2は同一であるか、あるいは異なり得る。例えばシロキサンまたはポリシロキサンも必要なケイ素−酸素−炭素結合も存在するという前提ならば、2つまたはそれ以上のケイ素原子が炭素、窒素あるいは酸素原子により相互に連結するケイ素化合物も使用され得る。
【0045】
好ましい選択性制御剤は、芳香族カルボン酸およびジカルボン酸のアルキルエステル、これらの環アルコキシ置換誘導体、特にエチルp−メトキシベンゾエートまたはエチルp−エトキシベンゾエート(PEEB)またはシロキサン化合物、例えばn−プロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランまたはジシクロペンチルジメトキシシランおよびこれらの混合物である。本発明の一つの実施形態においては、前出の選択性制御剤はプロ触媒作製時に添加される内部電子供与体の少なくとも一部も形成し得る。代替の改変においては、選択性制御剤はプロ触媒の形成後のみに添加され、そして触媒形成混合物に、あるいは共触媒の添加と同時的あるいは非同時的にオレフィン重合混合物に添加され得る。SCAの混合物を使用する場合には、特に一つのSCAが他のSCAと相互作用するか、あるいは不利に競合するときには、これらは重合に連続して添加され得る。
【0046】
選択性制御剤は、好ましくはプロ触媒中のチタン1モル当たり0.01モル〜100モルの量で供給される。選択性制御剤の好ましい量はプロ触媒中のチタン1モル当たり0.5モル〜50モルの量である。
【0047】
更なる重合調整剤は、掃去剤と呼ばれるが、重合中にモノマー、溶媒および他の試剤から触媒毒を除去する能力のある化合物を含む。本発明で使用するこのような化合物の例として、アルモキサンおよびトリヒドロカルビルアルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウムを含む。活性制限剤は別の類の重合調整剤であり、そして特に高い温度で重合速度を制限するのに好適に使用され、反応器制御問題を低減する。帯電防止剤は、ポリマー凝集を低減することにより類似の利益をもたらす。
【0048】
共触媒
プロ触媒組成物は、共触媒と、場合によっては1つまたはそれ以上の重合調整剤と組み合わせてチーグラー・ナッタ触媒組成物の一つの成分として機能する。この共触媒は、好ましくはプロ触媒中のチタン基準で1:1〜1000:1のモル比で、しかし更に好ましくは10:1〜300:1のモル比で使用される。
【0049】
オレフィン重合触媒は、プロ触媒、共触媒および任意の重合調整剤を接触するあらゆる好適な手順によっても作製される。接触の方法は重要でない。予備活性化された触媒を形成するために、触媒成分またはこれらの組み合わせを重合前に予備接触し、そして場合によってはこの明細書中の更なるライブラリーとして保存することができるか、あるいは成分を好適な反応器中でオレフィンモノマーと同時に接触することができる。一つの改変においては、触媒成分を好適な容器中で簡単に混合し、重合の開始が触媒スクリーニングの目的に望ましい場合には、このように作製された予備形成された触媒を重合反応器の中に導入する。代替の改変においては、触媒成分を重合反応器の中に別々に導入し、そして触媒を系内で形成する。最終の実施形態においては、触媒成分を一つの重合反応器の中に導入し、そして1つまたはそれ以上のオレフィンモノマーと予備重合し、続いて予備重合で使用されるオレフィンモノマーと同一であるか、あるいは異なってもよい更なるオレフィンモノマーと接触し得る。続く重合は同一の重合反応器中、あるいは異なる重合反応器中で行われ得、そして前記続く重合時のこの触媒成分の1つまたはそれ以上の別々な添加を含み得る。
【0050】
本明細書で使用する共触媒組成物は、最も一般的な意味で、少なくとも2つの試剤の、特に1つまたはそれ以上の金属含有ルイス酸と1つまたはそれ以上の有機プロトン化試剤との反応生成物を含んでなる。当業者ならば、この生成物が様々の種と動的な相互変換性化合物の間の平衡を含む種の混合物を含有し得るということを認識すべきである。本発明の一つの実施形態においては、前出の試剤を好適な希釈剤、好ましくは炭化水素、例えばヘキサンまたはヘプタン中で組み合わせる時に形成される反応混合物が精製および/または単離された反応生成物それ自身よりも使用に好ましい。
【0051】
好適なルイス酸は式:[M41x'y'z'の化合物である。式中:
4は2−13族の金属、Ge、SnまたはBiであり;
1は独立してアニオン性あるいはポリアニオン性の配位子であり;
x’はゼロよりも大きい数であり、そして6未満であるかそれに等しく;
Gは場合によってはA1に結合した中性ルイス塩基であり;
y’は0−4の数であり;
z’は1〜10の数である。
【0052】
好ましくは、このルイス酸は一般式:M41x'y'の金属化合物である。式中、M4は2−13族の金属、Ge、SnまたはBiであり;A1は独立してアニオン性配位子であり;x’は整数であり、そしてM4の原子価に等しく;Gは中性ルイス塩基であり;そしてy’は0−4の数である。更に好ましくは、M4はMg、B、Ga、AlまたはZnであり;A1はC1-20ヒドロカルビルまたは不活性置換ヒドロカルビル、特にC1-12アルキルあるいはアリールである。好ましい不活性置換基はハライド、トリメチルシリル、ハロアリールおよびハロアルキルを含む。最も好ましくは、M4はアルミニウムである。
【0053】
本発明で使用されて共触媒を形成する有機プロトン化試剤は、式[(H−J1z"2z"'の化合物を含む。式中:
1はNA3、PA3、SまたはOであり、
z”は1または2であり、
2はC1-20ヒドロカルビルまたは不活性置換ヒドロカルビル、トリ(C1-4ヒドロカルビル)シリルまたはこれらの多価誘導体、
3は水素、C1-20ヒドロカルビルまたは不活性置換ヒドロカルビルまたは共有結合(A2が二価の配位子基であり、そしてz”が1である場合には)であり;そして
z’”は1〜10の数である。
【0054】
好ましい有機プロトン化試剤は、式:(H−J1z"2の化合物を含む。式中、J1はNA3、PA3、SまたはOであり、そしてz”は1または2であり;そしてA2はC1-20ヒドロカルビルまたは不活性置換ヒドロカルビル、トリ(C1-4ヒドロカルビル)シリルまたはこれらの二価誘導体、特にC1-12アルキル、1,4−ブチレン、トリ(C1-4アルキル)シリルまたはアリールであり、そしてA3は水素、C1-20ヒドロカルビルまたは不活性置換ヒドロカルビルまたは共有結合である。好ましい不活性な置換基はハライド、トリメチルシリル、ハロアリールまたはハロアルキルである。
【0055】
本発明による使用に特に所望の触媒は、トリ(C1-20アルキル)ヒドロキシシラン、フッ素化芳香族アルコール、またはこれらの不活性に置換された誘導体、特にフッ素化フェノールとトリヒドロカルビルアルミニウム化合物、特にトリ(C2-20アルキル)アルミニウム化合物、最も特にトリ(C4-8n−アルキル)アルミニウム化合物との反応生成物である。極めて望ましくは、この共触媒は、対応するシロキシジアルキルアルミニウム誘導体、アリールオキシジアルキルアルミニウム誘導体またはこれらの混合物である。当業者ならば、実際の反応混合物が可能な生成物の平衡を含んでなり、そのうちで前出が一つの成分を含んでなるということを認識するであろう。
【0056】
本発明による触媒を使用することにより、1つまたはそれ以上の工程あるいは製品の性質は有益な影響を受ける。例として、同等の重合条件においてコモノマーを多く組み込む1つまたはそれ以上のエチレンと、1つまたはそれ以上のコモノマー、特に1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはスチレンのコポリマーを製造する能力、あるいは別法としては、反応混合物中で高い重合温度または低いコモノマー濃度において同等なコポリマーを製造する能力を含む。本発明の共触媒の使用の別の有益な特徴は、ホモポリマーおよびコポリマー製品の分子量分布(Mw/Mn)が狭いことあるいは広いことにより決められる製品形成における選択性が大きいこと、あるいは特定の種、例えば分化された結晶性、溶解性、タクチシティ、融点、メルトフローインデックス、コモノマー含量または他の物理的性質を有するポリマー区分の形成の相対的な欠如または形成の低減であり得る。本発明の共触媒の使用の更なる望ましい結果は、改善された工程の性質、例えば改善されたモノマーの転換効率であり得る。別の実施形態においては、好適な共触媒材料は非標準の反応条件下の性能を基として評価され得る。例えば、試剤あるいはモノマー源中の特定の反応試剤または不純物により、重合効率は既知である触媒の使用により悪影響を受け得る。例として、コモノマー、特にガス化(H2/H2O混合物の反応)により石炭、ピート、セルロース、あるいは他の炭素源と共に、そして得られた混合物の分留により製造される1−オクテンの使用を含む。
【0057】
本発明の別の実施形態においては、共触媒の混合物を使用して、ポリマーの性質の混合物を得るか、あるいは個別の触媒組成物の利益を最大にすることができる。例えば、標準の触媒、特にトリアルキルアルミニウム化合物の量は、二モード型分子量分布製品を含む更に広い分子量分布ポリマーを得るために、あるいは低コモノマー含量ポリマーのマトリックス内で緊密に混合された少量の高コモノマー含有ポリマーを得るために、本発明の触媒と組み合わせた二次触媒として使用され得、単に反応中であるいは重合で使用される別々な反応器中で使用される共触媒または共触媒混合物を交互することにより、ポリマーの所望のブレンドを形成する。この目的で使用される好ましい二次触媒は、プロ触媒中のチタン基準で1:1〜1000:1の、好ましくは10:1〜100:1の量のトリエチルアルミニウムである。
【0058】
ハイスループット法
本発明の一つの実施形態においては、出発成分(例えば、プロ触媒化合物、共触媒候補、重合調整剤、モノマー、溶媒など)の混合物は異なる比、順序または方法で組み合わされる。重合は製品ライブラリーあるいはアレーを作り出すように様々の条件下で行われる。この実施形態においては、重合方法の条件はコンビナトリアル化され得る変数である。コンビナトリアル化され得る好適な工程条件は、出発成分の量および比、工程段階の繰り返し、触媒組成物の精製(洗浄)および回収、触媒形成に許容される時間、触媒形成反応時間および圧力、反応への出発成分添加速度、滞留時間(または製品取り出し速度)、重合温度、圧力および反応雰囲気、混合速度および当業者ならば認識する他の条件を含む。
【0059】
加えて、前出の実施形態は一緒に組み合わせ可能である。例えば、本発明は、使用される出発成分において多様性を有することにより;触媒ライブラリーの形成で使用される反応条件(例えば、時間、混合速度または触媒形成で使用される他の条件)において多様性を有することにより;使用される重合条件における多様性により;あるいは前出の変数すべての組み合わせにより実施され得る。この触媒ライブラリーは、触媒生産性、例えば放出される熱または得られたポリマー重量または更に好ましくは1つまたはそれ以上のモノマーの消費を測定することにより、スクリーニングされる。このポリマーライブラリーをスクリーニングして、慣用の分析技術または多数の異なる迅速なポリマーキャラクタリゼーション技術の一つを用いて関心のあるポリマーが作り出されたかどうかが求められる。
【0060】
例えば、ポリプロピレン中のパーセントキシレン可溶部は、ASTM方法D5492−98または同等な方法を使用することにより測定され得る。この方法は25℃でo−キシレンに可溶なポリプロピレン試料の分率を求める。この可溶性分率は非晶質なポリマーの量に対する良好な相関を有するしかしながら、このASTMの方法は重量分析を使用し、そしてほぼ2gの試料と完了するのにほぼ4時間を要する。代替の技術は、試料の処理に高温(150℃までの)でトリクロロベンゼン(TCB)を使用し、より小さい試料サイズ(50mg未満)を使用し、そして可溶部含量の定量に迅速なIR吸収または屈折率分析に適合する。この技術はキシレン方法と同等に信頼性のある非晶質ポリマー含量の指標である。更には、このパーセントTCB可溶部試験は、ロボット操作、パラレル濾過および急速シリアル分析を使用して、迅速なポリマースクリーニングを達成することにより自動化され、そしてまた、TCBを溶媒として使用する他の迅速な試験、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィと連結され得る。
【0061】
この方法論の実施形態は、出発材料を組み合わせ、このライブラリーを娘ライブラリーとし、関心のある反応を行い、そしてこの工程の結果をスクリーニングするための1つまたはそれ以上のステーションを含む多数の異なるステーションを含む柔軟性のある系に組み合わせられ得る。この系は、この系の活動の制御、モニターおよび管理を行う制御系を含み、使用者はライブラリー設計、スクリーニングまたはデータ操作基準を入力することにより、一連の実験全体を設計し得る。
【0062】
当業者ならば、本発明のライブラリーにおける多様性を作り出すための様々の方法を認識するであろう。このスクリーニングを使用して、工程パラメーターを直接に測定することによりこの多様性が関心のある製品または工程を生み出したかどうかが決められ、それによりこのライブラリーの個別の構成員を評価するための定量手段が得られる。
【0063】
特に、本発明は、触媒組成物としての評価のための様々の経路により金属化合物、錯体または混合物のライブラリーを合成するための方法および装置を提供する。触媒組成物のための更なる成分はライブラリーとして配列されるか、あるいは一定の、あるいは標準化された試剤として含まれ得る。特に活性化剤が研究あるいはスクリーニング対象の変数の一つである場合には、様々の方法による活性化された触媒ライブラリーへのこれらの化合物、錯体または混合物の任意の活性化も含まれ得る。前駆体、プロ触媒、触媒、共触媒および/または重合調整剤のライブラリーを作製した後、本発明はこれらの1つまたはそれ以上のスクリーニングに備える。スクリーニングは、例えばモノマーおよびコモノマーの選択、溶媒、圧力、温度、撹拌速度、容積、化学量論的な関係および薬品の添加順序を含む、触媒活性および動力学について詳細な情報を様々の反応オプションおよび条件下で提供する一連の個別の重合反応器中におけるものであり得る。このように、単一あるいは多数のライブラリーに対する重合反応条件のいずれかを「コンビナトリアル化する」ように選択され得る。このことは、様々のライブラリーの個別の構成員が組み合わされ、そして場合によっては1つまたはそれ以上の工程段階にかけられて、触媒組成物を最終的に形成し、1つまたはそれ以上のオレフィン重合性、ポリマーの性質または他の触媒性能について試験されるという意味である。重合条件の「コンビナトリアル化」は最適の工程条件のスクリーニングに使用可能である。この付加重合コンビナトリアル法における任意的な段階は、個別の重合反応器中でのスクリーニングの前の一次スクリーンを含み得る。一次スクリーンは、例えばこの触媒ライブラリーのいずれの構成員がいかなる活性を有するかを簡単に決める重合条件下で光学的なスクリーニングを含んでなる。別の任意的な段階は、重合反応器中で形成される得られたポリマーを更に特徴付けることである。このような更なるスクリーニングは、迅速な液体クロマトグラフィおよび/または光散乱系を使用し得、あるいは得られたポリマーの化学的、物理的あるいは機械的性質を決定し得る。
【0064】
前出の例のすべてにおいて、統計的評価ツールを適用して、個別の重合または他の反応により生成されるデータを精密化することが望ましい。この方式によって、信頼できないあるいは欠陥のある結果が除去可能であり、そしてデータ中の実際の傾向が更に容易に確認可能である。望ましくは、統計的に有意な要求に合致するデータ、特に95パーセント以上の信頼区間を満たすデータが本発明で使用される。しばしば、わずかに異なる重合条件下で多数の候補を評価するために、理論的な重合モデルに基づく標準的な反応条件下で転換値を計算することが必要である。それゆえ、所望の工程あるいは製品パラメーターの選択は実際の結果でなく計算された結果に基づき得る。
【0065】
前駆体ライブラリー、プロ触媒ライブラリー、重合調整剤ライブラリー、共触媒ライブラリーまたは製品ライブラリーの構成員は、通常、空間的にアドレス可能なフォーマットで保存あるいは提供され、このことは各化合物または混合物が通常、液体の形態、例えば溶液またはスラリーで他から分離され、そして密封されたバイアル中に保持されるということを意味する。様々のライブラリーの形成において使用される成分、試剤または溶媒の多くは空気または湿気と反応性あるいは親和性であることにより、個別バイアル、すべての反応容器および更にはコンビナトリアル装置全体は、好ましくは不活性雰囲気条件下で保持される。
【0066】
プロ触媒ライブラリーを作り出す一つのオプションは、このライブラリーの各構成員が異なる反応により、あるいは異なる反応条件下で、あるいは異なる触媒活性化剤と調整剤の組み合わせにより同一の親ライブラリー構成員から作られるように、前駆体、プロ触媒あるいは触媒ライブラリーのストック溶液の生成を含み得る。好ましい実施形態においては、プロ触媒ライブラリー、重合調整剤ライブラリー、触媒ライブラリー、触媒活性化剤ライブラリーまたはこれらの前駆体は、液体の形態で提供され、例えば各化合物は、好ましくは液体、例えば炭化水素、ハロ炭素またはハロ炭化水素中の希薄な形態であるいはスラリーとして別々の容器中に保存される。好ましくは、親ライブラリーを含んでなる化合物または混合物は、既知の液体取り扱いロボットのロボットアームであり得る針が貫通することができるセプタムまたは他のシール機構を有するバイアル中に保存される。
【0067】
触媒ライブラリーはアレーの形成のために、他のライブラリーの様々の組み合わせまたは標準から形成され得る。好ましい形態においては、前駆体ライブラリーまたはプロ触媒ライブラリーからの少なくとも1つの構成員が少なくとも1つの共触媒と組み合わされる。極めて望ましくは、このライブラリーが組み合わされ、そして少なくとも10の、好ましくは少なくとも25の、更に好ましくは少なくとも30の、そして最も好ましくは少なくとも50の得られたアレーの触媒ライブラリー構成員または重合方法構成員を形成するように、反応条件が変えられる。
【0068】
ある形態においては、この様々の化合物はこのような組み合わせの生成物を決めることなく、あるいは実際に生成物が得られた場合には組み合わせられ得る。前駆体、プロ触媒、触媒、共触媒または重合調整剤化合物は反応容器に同時に、あるいは順次的に添加され得る。これらは、関心のある反応で使用される任意の更なる反応試剤の前に、あるいはこれらと一緒に添加され得る。別法としては、この化合物の一部または全部は、続く工程での使用の前に予備反応または組み合わせおよび回収または精製にかけられ得る。このように、組み合わせの結果は決定される必要はない。
【0069】
製品ライブラリー(プロ触媒、共触媒、触媒、重合調整剤またはポリマー)は、関心のある反応において工程変数をコンビナトリアル化することから得られる異なる構成員を有し得る。コンビナトリアル化され得る工程変数は、タイプ、量および出発成分の比、反応時間、反応温度、反応圧力、反応(または反応器)への出発成分添加の速度および/または方法、滞留時間(すなわち、反応かたは反応器からの製品取り出しの速度および/または方法)、反応撹拌速度および/または方法、反応停止速度および/または方法、反応雰囲気および当業者ならば認識する他の条件を含む。
【0070】
それゆえ、当業者ならば、前駆体、調整剤、活性化剤の膨大な数の異なる可能な組み合わせを認識するであろうし、あるいは他の出発成分は一緒に組み合わされて、触媒組成物ライブラリーを形成し得る。加えて、この組み合わせ手順は、異なる出発成分比、異なる温度、溶媒、圧力、混合速度、時間、薬品の添加順序または雰囲気を含む様々の反応条件の組み合わせと組み合わされて、広範に異なる製品ライブラリーを形成し得る。
【0071】
本発明の方法論においては、ライブラリーは関心のある性質または化合物を求めてスクリーニングされる。このスクリーニングは関心のある反応が行われるときに、すなわちリアルタイムで行われる。この明細書で使用されるように、「スクリーニング」は、1つまたはそれ以上の製品あるいは工程変数、好ましくは付加重合条件下での1つまたはそれ以上の製品あるいは工程変数を測定することにより、所望の性質に対してライブラリーを試験することを指す。1つまたはそれ以上の工程変数のスクリーニングは、所望ならば、関心のある製品の性質の評価と組み合わせ得る。例えば、重合反応器、特に溶液重合反応器中で行われる重合反応は、モノマー消費、温度上昇および/または圧力、粘度、粒子サイズあるいは色変化により評価可能であり、そしてこれらの結果は1つまたはそれ以上のポリマーの性質と個別に、あるいは総括的に相関付けられる。オンライン工程データと関連付けられ得る好適なポリマー性質の例として、分子量、分子量分布、コモノマー含量、結晶性融点、メルトインデックス、タクチシティ、溶解性、密度などを含む。しかしながら、このような製品の性質は重合の完結後に初めて確認可能であり、そして任意の確実となる時間遅延および環境変化による変動性を受け易いという事実によって、工程変数を一級スクリーニングとして使用することは、コンビナトリアル付加重合の研究における分析に対する好ましく、かつ極めて信頼し得る方法を生じる。
【0072】
3つのライブラリーの各々は、液体あるいは固体の状態で保存され、そして組み合わせ、娘ライブラリー化、関心のある反応の実施、スクリーニングあるいはこれらの組み合わせのために保存から取り出され得る。ライブラリーは、ライブラリーを相互に別々に保持する保存ラック中で好ましくは保存される。ライブラリーは既知の自動化ロボットを用いて手動あるいは自動で保存から取り出され得る。このような保存されたライブラリーの取り出しに有用な特定のロボットは、Aurora Biosciencesまたは他の既知のロボット供給元から販売されているような系を含む。ライブラリーを固相で保存する場合には、構成員は、通常、溶解あるいはスラリー化を必要とするが、これは、溶解あるいはスラリー化ステーションで、あるいは十分な容積がライブラリー保存に提供される場合には、試料を保持する容器または小室中で行われ得る。希釈ステーションは、ライブラリー構成員を好適な溶媒に溶解させ、関心のある反応またはスクリーニングで使用するためにライブラリー構成員が希釈し、更に移す場所である。別法としては、固体材料はロボット固体投与ユニットを用いて操作可能である。
【0073】
各前駆体、プロ触媒、重合調整剤、共触媒あるいは触媒のライブラリーは、アレーの形成により1つまたはそれ以上の娘ライブラリーに転換され得る。娘ライブラリーは、親ライブラリー中の1つまたはそれ以上の構成員から1つまたはそれ以上のアリコートを採取し、そして場合によっては、親ライブラリーとは異なる条件で処理するか、あるいは別な方法で転換して、第2のライブラリーを形成することにより、親ライブラリーから作り出される。親ライブラリーの限定された数の構成員はこの方式で娘ライブラリー化され得るか、あるいは少なくとも一度娘ライブラリーを作り出すのに、すべての構成員が娘ライブラリー化され得る。このように、娘ライブラリーは、構成員の数および試料サイズの点で親ライブラリーよりも小さいか、より大きくともよい。娘ライブラリー化は、親ライブラリーの再現を必要とせずに関心のあるマルチ反応のマルチライブラリーまたはマルチスクリーニングを提供するために行われる。
【0074】
一つの実施形態においては、濾過器具は外部に搭載され、そして所望の分離を行う目的で各セルの中に挿入され、そしてその分離の完了後セルから除去あるいは取り外される。別法としては、濾過ステーションを設けて、ここで更なる処理のために各セルまたはこれらの内容物が移される。濾過ステーションは、液体生成物あるいは前駆体から固相試剤または生成物を濾別するのに有用である。望ましくは、濾過ステーションは、各濾過の後に元の工程条件を取り戻すことにより多数回使用可能である。
【0075】
濾過によって、プロ触媒、共触媒および触媒のライブラリーの合成が容易となる。様々の試剤、溶媒および重合調整剤を組み合わせ、そして過剰の試剤あるいは副生成物を除去する一方で、触媒組成物の様々の成分が単一の反応器中で固相で供給され得る。この技術は、一般に、過剰な任意の試剤あるいは溶媒の使用、容易な精製または仕上げおよび工程の自動化を可能とする。
【0076】
この明細書中で有用なスクリーニングに好適な方法は、WO98/15815またはWO98/15805で開示されているように、赤外(IR)サーモグラフィまたはフーリエ変換赤外(FTIR)分光法または可視光あるいは他の光学的観察を含む。光学的技術を使用することは、通常、出発材料(すなわち、反応試剤またはモノマーを入れたライブラリー構成員)をアレー構成でチャンバー(例えば、真空チャンバーまたは反応試剤モノマーにより加圧されたチャンバーまたは不活性ガスにより加圧されたチャンバー)の中に挿入することを伴う。触媒構成員または製品構成員の出発材料のためにマルチウエルを有するプレート(例えばミクロタイタープレート)を用いて、関心のある反応がチャンバー中で平行して行われる。このチャンバーは光学カメラ(例えばIRカメラにはフッ化カルシウムまたはサファイア結晶)にアクセスさせる窓を有する。関心のある反応を行いながら、この反応をモニターする。例えば、反応により放出される熱をIRカメラまたは熱電対により記録し得る。工程条件をモニターするための好ましい方法は、通常、1つまたはそれ以上のモノマーの流れまたは密封された反応器中の圧力損失または重合条件下で運転される密封された反応器内の時間と共の圧力減少を測定することにより、1つまたはそれ以上のモノマーの消費を測定することである。
【0077】
更なる好適な反応器は、ある工程変数、例えば温度、時間、フィード速度、混合速度をコンビナトリアル化する能力を含むものである。勿論、これに加えてあるいはその代わりに、反応物、触媒、開始剤または重合調整剤も前に開示したように異なる量で調整または組み合わせ可能である。当業者によれば、この明細書中で様々のライブラリーをスクリーニングする他の技術は、関心のある特定の反応に対して知られているか、あるいは開発され得る。前出のスクリーニングのいずれもライブラリーまたは娘触媒ライブラリーから構成員の一部を速く取り除くのに役立つ一級スクリーニングとして使用され得、更なる詳細な試験の必要性を取り除く。
【0078】
本発明の適用性は広範で多様な重合条件で広いために、コンビナトリアルアプローチを使用して、付加重合反応での使用に最適なプロ触媒、共触媒および触媒組成物を同定することができる。本発明のコンビナトリアルアプローチの利点は、前駆体、プロ触媒、共触媒、重合調整剤および触媒組成物の選択が特定の重合条件に合わせられ得るということである。
【0079】
本発明のスクリーニング操作で使用される重合のスケールは、使用される装置によって所望のように改変可能であるが、前駆体、プロ触媒または触媒組成物を好ましくは0.01μg〜1.0gの、更に好ましくは0.1μgと0.1gの間の量で使用する。当業者ならば、関心のあるライブラリーを生成および/または評価するように反応および反応条件の適切な組(1つまたはそれ以上の不純物の添加を含む)を容易に決めることができる。
【0080】
様々のライブラリーの構成員は、マルチ・チューブアレーまたはマルチ・ウエルプレート中で好ましくはアレーの形態で論理的あるいはランダムな方法で配列可能である。好ましくは、この液体は関心のある化合物または混合物の希薄な溶液あるいはスラリーである。好ましい形態においては、A×Bアレーは前駆体、プロ触媒、関心のある共触媒または触媒の様々の組み合わせにより作製される。しかしながら、場合によっては異なる重合温度、濃度、圧力、モノマーまたは他の反応条件によって単一のプロ触媒を評価し、そして次に工程を複数の異なる主題化合物について所望のように繰り返すことも可能である。
【0081】
関心のある反応条件下でのライブラリー構成員、試剤または工程条件の特別な組み合わせの性能が測定され、そして試験される特定の組み合わせに関連付けられる。非標準条件、系統的変動または他の変数を補償するためのこのデータの調整が適用可能である。加えて、統計的分析を行って、生データを操作し、そしてデータ変動の存在を決め得る。このアレーは、所望ならば、合成および/または評価を迅速に処理し、この試験から得られる情報容量を最大とし、このようなデータの迅速な評価を容易にし、あるいはデータ変動を最小とする方法で配列可能である。化合物のライブラリーを組織化する方法は当業者にはよく知られていて、例えば米国特許第5,712,171号に記載されている。このような様式は、この明細書中で記載されている化合物および工程パラメーターによる使用に容易に適合可能である。
【0082】
プロ触媒、重合調整剤、共触媒または触媒組成物のマルチ合成の変動をスクリーニングすることにより、最適候補の選択が迅速に決定される。様々のライブラリーあるいは娘ライブラリーの構成員の所望の物理的および化学的性質は、迅速に最適化可能であり、そして特別なアレーまたはサブアレー内の化学的あるいは物理的変化と直接に関連付け可能である。
【0083】
ライブラリー中の様々の構成員を使用する重合は、一般に、マルチ・チューブラックまたはタイタープレート上のマルチ・ウエルプレート中のチューブまたはウエル中で、あるいは不活性担持材料のマトリックス中で重合条件下で最適なこれらの混合物を接触させ、そして1つまたはそれ以上の工程変数、特に熱発生またはモノマー消費をモニターしながら付加重合反応を起こさせることを含む。関心のある重合におけるガス状流れのモニターが容易かつ精確であるために、熱発生と場合によっては関連付けられるエチレン消費は、この明細書中でのスクリーニングに最も所望される工程変数である。ポリマーの性質、特にタクチシティ、分子量またはコモノマー組成物の二次スクリーニングは、本発明による工程データと更に場合によっては関連付けられる。
【0084】
適切な重合反応器、例えばマルチ・チューブラック中のチューブまたはマルチ・ウエルプレート中のウエルに適切な試剤を添加するのに、ロボットアームとマルチ・ピペット器具が普通に使用される。別法として望ましくなくは、主題の重合を行うのに普通の重合反応器が順次使用可能である。望ましくは、汚染を避けるために、このチューブはゴムセプタムまたは類似のカバーにより被覆され、そして試剤はこのカバーから挿入された針から添加される。前出の操作に好適な工程装置は、米国特許第6,030,917号、第6,248,540号およびEP−A−978,499で以前に開示された。
【0085】
一つの実施形態においては、この重合はコンピューター制御により行われる。ライブラリーの化合物の各々の同定は、コンピューターで「メモリーマップ」または重合に関するデータを関連付けるための他の手段中に保存可能である。別法としては、この化学反応は好ましくはマルチ・チューブラックまたはマルチ・ウエルプレート中で手動で実施可能であり、そして得られた情報は所望ならば例えばコンピューター上で保存される。
【0086】
本発明は、ライブラリー中の化合物と混合物および重合から得られる製品流の同定を保存する能力のあるコンピューターシステムを好ましくは含む。データを管理するソフトウエアはコンピュータ上に保存される。各重合で使用される化合物と結果の同定を関連付けるのに、リレーショナルデータベースソフトウエアが使用可能である。この目的の多数の市販のリレーショナルデータベースソフトウエアプログラムが入手可能であり、当業者には既知である。リレーショナルデータベースソフトウエアはこの明細書中に記載されている工程時に得られるデータの管理に好ましいタイプのソフトウエアであるが、試験化合物の「メモリーマップ」を作り出し、そしてこの情報を重合から得られる情報と関連付ける能力のあるあらゆるソフトウエアも使用可能である。
【0087】
コンビナトリアル化学で普通に使用されるマルチ・ウエルプレートまたはマルチ・チューブアレーのいずれのタイプも使用可能である。好ましくは、ウエルまたはチューブの数は30を超え、そして各マルチ・チューブアレー中の位置の少なくとも60パーセントのチューブが存在する。ラックの形状は重要でないが、好ましくはラックは正方形あるいは直方体である。チューブは、例えばプラスチック、ガラスまたは不活性金属、例えばステンレススチールで製造可能である。チーグラー・ナッタ触媒組成物の合成で使用される温度は、望ましくは80℃を超え、更に好ましくは90℃を超え、比較的高いために、好ましくはガラスまたは金属、そして最も好ましくはステンレススチールの反応器が使用される。
【0088】
アレーのウエルおよび/またはチューブに試剤を添加し、あるいは試剤を除去することができる液体取り扱い器具のあらゆるタイプも使用可能である。多数のこのような取り扱い器具はロボットアームとロボット器具の使用を含む。好適な器具はコンビナトリアル化学の当業者によく知られている。個別のセルは、また、望ましくは、液体試剤、生成物または副生成物を除去し、セル中に固体生成物または試剤を残すことができる濾過手段により有するか、あるいは使用可能である。ポリマー製品の単離は、市販の遠心揮発分除去装置または蒸発器を用いて実施可能であり、そしてこの工程の自動化された手順の一部である必要はない。
【0089】
重合反応器から試料を採取し、そしてこの内容物を分析することができるあらゆる器具も製品スクリーニングに使用可能である。例として、クロマトグラフ装置、例えば分析用あるいは合成用スケールの高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)、GCまたはカラムクロマトグラフィを含む。ポリマーの性質の分析のために、簡単な溶液粘度、メルト粘度、1HNMR、13CNMR、FTIR、キシレン溶解性(XS)試験または他の普通の分析技術がポリマーの性質の測定に使用され得る。
【0090】
好ましくは、クロマトグラフカラム(HPLC、GCまたはカラムクロマトグラフィ)を使用する実施形態においては、この装置は、関心のある化合物がカラムから溶出する場合、同定する能力を有する。関心のある化合物がカラムから溶出する場合、様々の手段が同定するのに普通に使用され、これらは、紫外(UV)、赤外(IR)、薄層クロマトグラフィ(TLC)、ガスクロマトグラフィ−質量分析法(GC−MS)、フレームイオン化検出器(FID)、核磁気共鳴(NMR)および蒸発型光散乱検出器(ELSD)、窒素検出を含む。これらの手段のいずれかおよび当業者に既知の他の手段も単独で、あるいは組み合わせで使用可能である。
【0091】
この発明の次の特定の実施形態が特に望ましく、添付クレームについての特定の開示を与えるためにここに記載される:
1.オレフィンモノマーの不均質チーグラー・ナッタ付加重合で使用する触媒組成物を同定するための方法であって、前記触媒組成物がマグネシウムおよびチタン含有プロ触媒を含んでなるプロ触媒と共触媒を含んでなり、および
A)少なくとも1つのプロ触媒化合物を含んでなるライブラリーを準備し、
B)前記プロ触媒ライブラリーの構成員を1つまたはそれ以上の共触媒と接触させ、そしてこの得られた混合物をオレフィンモノマーとオレフィン重合条件下で接触させて、重合反応を起こさせることにより、触媒組成物ライブラリーを形成し、
C)この重合時に関心のある少なくとも1つの変数を測定し、そして
D)前記測定した変数を参照することにより、関心のある触媒組成物を選択する
ことを含んでなる方法。
【0092】
2.この共触媒が少なくとも1つの中間段階を必要とする方法により形成されるか、あるいはこの共触媒が2つまたはそれ以上の試剤を反応させることにより形成される、第一実施形態に記載の方法。
【0093】
3.関心のある性質が触媒活性である、第二実施形態に記載の方法。
【0094】
4.この共触媒が式:[M41x'y'z'
(式中、
4は2−13族の金属、Ge、Sn、またはBiであり;
1は独立してアニオン性あるいはポリアニオン性の配位子であり;
x’はゼロよりも大きく、そして6未満あるいは6に等しい数であり;
Gは場合によってはA1に結合した、中性のルイス塩基であり;
y’は0−4の数であり;
z’は1〜10の数である)
の化合物と
式[(H−J1z"2z"'
(式中、
1はNA3、PA3、SまたはOであり;
z”は1または2であり;
2はC1-20ヒドロカルビルまたは不活性置換ヒドロカルビル、トリ(C1-4ヒドロカルビル)シリルまたはこれらの多価誘導体であり;
3は水素、C1-20ヒドロカルビルまたは不活性置換ヒドロカルビルまたは共有結合(A2が二価配位子の基であり、そしてz”が1である場合には);そして
z”’は1〜10の数である)
の化合物とを反応させることにより形成される、第二実施形態に記載の方法。
【0095】
5.この工程段階のすべてがコンピューター制御されたロボット処理により同一の反応器容器中で行われ、そしてこのスクリーニング結果が少なくとも1つのメモリー素子に保存される、第一実施形態に記載の方法。
【0096】
6.A×BアレーのA軸の形成にこのライブラリーが使用され、そして前記A×BアレーのB軸の形成に組成物または工程条件の第2の選択が使用され、そして前記A×Bアレーの二元の対の組の中から関心のある性質を選択するのにリレーショナルデータベースソフトウエアが使用される、第一実施形態に記載の方法。
【0097】
7.少なくとも1つの得られたポリマーの性質の測定を更に含んでなる、第一の実施形態に記載の方法。
【0098】
8.測定される工程変数がこの重合時に消費される少なくとも1つのモノマーの量である第一実施形態に記載の方法。
【0099】
9.少なくとも1つのオレフィンモノマーを含んでなる重合性混合物をマグネシウムとチタン含有プロ触媒および共触媒を含んでなる触媒組成物とチーグラー・ナッタ重合条件下で接触させることによりオレフィンを重合させる方法であって、この共触媒が(t−ブチルジメチルシロキシ)ジ(i−ブチル)アルミニウム、(t−ブチルジメチルシロキシ)ジ(n−オクチル)アルミニウム、ペンタフルオロフェノキシジ(イソブチル)アルミニウム、ペンタフルオロフェノキシジ(n−オクチル)アルミニウム、フェノキシジ(i−ブチル)アルミニウム、(3,5−ジメチル−2,4−ピラゾール−1−イル)ジ(エチル)アルミニウム、(3,5−ジメチル−2,4−ピラゾール−1−イル)ジ(n−オクチル)アルミニウムおよびドデシルオキシジ(n−オクチル)アルミニウムまたはほぼ等モル量のt−ブチルジ(メチル)ヒドロキシシランとトリ(イソブチル)アルミニウムまたはトリ(n−オクチル)アルミニウムとの反応により、ペンタフルオロフェノールとトリ(イソブチル)アルミニウムまたはトリ(n−オクチル)アルミニウムとの反応により、フェノールとトリ(イソブチル)アルミニウムとの反応により、3,5−ジメチル−1,4−ピラゾールとトリエチルアルミニウムまたはトリ(n−オクチル)アルミニウムとの反応により、あるいはドデカノールとトリ(n−オクチル)アルミニウムとの反応により形成される混合物からなる群から選択される化合物を含んでなることを特徴とする方法。
【0100】
10.このプロ触媒が二塩化マグネシウム、アルキルアルミニウムジハライドおよびチタンアルコキシドの反応生成物を含んでなる、第九実施形態に記載の方法。
【0101】
11.エチレンと1−オクテンが共重合される、第九実施形態に記載の方法。
【0102】
上記の説明が例示的であり、限定的でないように意図されているということは理解されるべきである。上記の説明を読むと、当業者には多くの実施形態が明白であろう。それゆえ、本発明の発明は上記の説明を参照することにより決められるべきでなく、代わりにこのような特許請求の範囲が権利を与えられる同等物の全範囲と一緒に添付の特許請求の範囲を参照することにより決められるべきである。
(実施例)
【0103】
特に開示されなかったあらゆる成分が存在しない場合、本発明が操作可能であるということは理解される。次の実施例は本発明の更なる例示に提供されるものであり、限定するものとして解釈されるべきでない。特記しない限り、すべての部およびパーセントは重量基準で表現される。用語「一晩」は、使用される場合には、ほぼ16−18時間の時間を指し、「室温」は、使用される場合には、約20−25℃の温度を指し、そして「混合アルカン」はExxon Mobil Chemicals,IncからIsopar E(商標)の商標で市販されている水素化プロピレンオリゴマー、大部分C6−C12イソアルカンの混合物を指す。化合物名とその構造の間の食い違いが起こる場合には、構造が支配的であるものとする。
【実施例1】
【0104】
ドライボックスに移す前にすべてのガラス容器を110℃で最低2時間乾燥する。公表されている技術を用いてすべての試剤と溶媒を使用前に精製、乾燥する。すべての作製をNexus(商標)ブランドのドライボックス(Vacuum Atmospheres Corporationから入手し得る)中で行った。すべての作業をChemspeed(商標)Automated Synthesis WorkstationモデルASWl000(Chemspeed,Incから入手し得る)を用いて不活性雰囲気下で行う。
【0105】
各々が8mlの作動容積を有する16個の個別の反応器容器(セル)のアレーを使用して、共触媒ライブラリーを作製し、評価する。中にフリット化濾過棒を集積した各セルに還流コンデンサーを備える。使用されるプロ触媒は、本質的に米国特許第5,844,045号、実施例1の教示に従って作製されるMgCl2担持チタン組成物であり、混合アルカン中の二塩化マグネシウム分散液と、初めにエチルジクロロアルミニウムのヘキサン溶液とをほぼ1:4モル比で反応させ、次にこれと混合アルカン中のチタンテトライソプロポキシドの溶液とを反応させて、ほぼ40/13/3のモル比Mg/Al/Tiを有する組成物を得ることによるものである。
【0106】
ルイス酸(A)と有機プロトン化試剤(B)を1:1モル比で組み合わせることにより、触媒を系内で合成する。これらの一部を表1に示す。すべての合成を混合アルカン溶媒中で撹拌しながら室温で1時間行う。この反応混合物を単離または精製せずに使用する。合計94の触媒候補を試験する。使用される試剤とこれらの反応生成物(触媒)の一部の内容を表1に示す。

表1
【表1】

表1の続き
【表2】

【0107】
エチレン/1−オクテン共重合
ドライボックス中1ppm以下の酸素および水含量の窒素雰囲気下で50ナノモルのプロ触媒(混合アルカン溶媒中でスラリー化された)を5mlの混合アルカンおよび試験対象の共触媒組成物と一緒にチタン基準で70:1モル比で混合セルに移す。得られた触媒スラリーを使用前に室温で1時間撹拌する。マルチセルパラレル加圧反応器(PPR)の反応器に250μlの1−オクテンを装填し、H2により10psig(200IcPa)で加圧し、続いてエチレンガスにより150psig(1.1MPa)で加圧し、そして温度(165℃)とする。次に、この触媒スラリーを各セルに注入する。重合反応を15分間継続させ、この時点でセルをCO2ガスにより充満させることにより、反応を停止させる。トリエチルアルミニウム触媒をチタン基準で50:1のモル比で用いるいくつかのコントロール試験(0.1098gのポリマーの平均収率を与える)も周期的に行う。アレー全体を完結した後、セルを反応器から取り出し、溶媒を除去し、そしてポリマーを回収する。セル重量の増加によりポリマーの収率を求める。選択された触媒組成物に対してのコントロール平均に対するkgポリマー/gプロ触媒時間、ポリマーMwおよびコモノマー含量として求められる生産性の結果を表2に示す。コントロールよりも大きい活性、分子量またはコモノマー組み込みを生じる触媒のみを掲げる。コントロールの重合に対する平均Mwは0.65×106である。コントロールの重合に対する平均コモノマー組み込みは2.03パーセントである。

表2 選択された重合結果
【表3】

【0108】
表2を参照することにからわかるように、いくつかの触媒は、コントロールのTEAよりもより良好な活性、より大きいMwまたはより大きなパーセントオクテン組み込みを与えた。改善された活性を与える触媒は、(t−ブチル)ジメチルシロキシジ(オクチル)アルミニウム、ペンタフルオロフェノキシジ(i−ブチル)アルミニウムおよびペンタフルオロフェノキシジ(オクチル)アルミニウムであった。更には、ペンタフルオロフェノキシジ(i−ブチル)アルミニウムおよびペンタフルオロフェノキシジ(オクチル)アルミニウムの2つの触媒は、コントロールと比較して改善された活性と増加したMwの両方を与え、一方ペンタフルオロフェノキシ−ジ(オクチル)アルミニウムはコントロールと比較して、改善された活性、増加したMwおよび大きなオクテン組み込みを与えた。
【実施例2】
【0109】
コンビナトリアルパラレル反応器実験からの結果に基づいて、大規模の連続溶液重合条件下で評価するために、30種の候補触媒を選択する。アルミニウム含有化合物の合成を大規模の希薄炭化水素溶液中で数時間の反応時間にわたって行う。3つの例示的な作製を次に述べる。
【0110】
1−1−3,5−ジメチル−2,4−ピラゾール−1−イル−ジ(i−ブチル)アルミニウム(B11A2)の作製
ドライボックス中、290.6g(3.02モル、1.0等量)の3,5−ジメチルピラゾール(DMP)を乾燥したガラスフラスコの中に秤り込み、そしてドライボックスから取り出す。4.5Lの混合アルカン中の353.8gのトリエチルアルミニウム(3.10モル、1.025等量)の溶液を作製し、そして5つの乾燥した1Lのガラスフラスコに分割する。このフラスコをセプタムによりキャップし、ボックスから取り出す。約5Lの混合アルカンを乾燥したN2散気した30L反応容器に添加し、そしてN2の掃気下でDMPを漏斗から添加する。スラリーを22℃で10分間撹拌した後、TEA溶液の添加をカニューレから開始する。穏やかな発熱を伴いながらTEA溶液を1時間にわたってゆっくりと添加する。添加の後、反応混合物を更に2時間撹拌する。得られた溶液を清浄な乾燥ガラスシリンダーに移し、7.7kgの溶液を得る。
【0111】
2−3,5−ジメチル−2,4−ピラゾール−1−イル−ジ(オクチル)アルミニウム(B11A3)の作製
トリオクチルアルミニウムをトリエチルアルミニウムに置き換えることを除いて、作製1の反応条件を実質的に繰り返す。
【0112】
3−(t−ブチル)ジメチルシロキシ−ジ(オクチル)アルミニウム(B13A3)の作製
ドライボックス中、1.6Lの混合アルカン中の1136gのトリ−n−オクチルアルミニウム(TNOAL)(3.10モル、1.025等量)の50パーセント溶液を作製し、そして4つの乾燥した1Lガラスフラスコに分割する。混合アルカン(全容積4L)中の400gのt−ブチルジメチルシラノール(TBDMS)(3.02モル、1.0等量)の溶液を作製し、そして4つの異なる1Lガラスフラスコに分割する。約4Lの混合アルカンを乾燥したN2散気した30L反応容器に添加し、そしてTNOAL溶液をカニューレにより添加する。23℃で10分間撹拌した後、穏やかな発熱を伴いながら、TBDMS溶液をカニューレから2時間にわたって添加する。添加の後、反応混合物を更に2時間撹拌する。得られた溶液を清浄な乾燥ガラスシリンダーに移し、6.7kgの溶液を得る。
【0113】
連続溶液重合
精製した混合アルカン溶媒、エチレン、水素および1−オクテンを温度制御用ジャケットと内部熱電対を備えた1ガロン(3.8L)の反応器に供給する。この1−オクテンを反応器に添加する前に溶媒流と混合する。ポンプとマスフローメーターを用いて触媒成分溶液を計量し、送液し、そして触媒フラッシュ用溶媒と組み合わせる。この流れはモノマー流と別なポートから反応器の底部に入る。この反応器を激しく撹拌しながら、液体を一杯に張って450psig(3.2MPa)で運転する。新鮮な試剤と溶媒を底部に装填しながら、生成物流を反応器の頂部から連続的に取り出す。水素を供給して、約0.920の目標密度を有するポリマーを得る。ほぼ4−8時間の重合の後、定常状態条件に達し、定常転換条件下の平均生産速度は約4lbs/時(1.8kg/時)である。生成物流を反応器から連続的に取り出し、そして少量の水、安定剤および他の添加物を添加して、重合を停止し、そして揮発分除去して、希釈剤を除去することにより、ポリマーを回収した。チタン基準で8:1のモル比で触媒(CC)をすべて試験する。選択された結果と製品の性質を表3に示す。

表3
【表4】

*比較例、本発明の実施例でない。
(TEA=トリエチルアルミニウム)
1.標準のcm3/分
2.ASTMD−1238、条件190/2.16(dg/分)
3.ASTMD−1238
【0114】
表3を参照することにからわかるように、TEA触媒の使用と比較して、掲げた化合物のすべて、特にペンタフルオロフェノキシジ(i−ブチル)アルミニウム、フェノキシジ(i−ブチル)アルミニウム、(3,5−ジメチル−2,4−ピラゾール−1−イル)ジ−(エチル)アルミニウム、(3,5−ジメチル−2,4−ピラゾール−1−イル)ジ−(n−オクチル)アルミニウム、(t−ブチルジメチルシロキシ)ジ(i−ブチル)アルミニウム、(t−ブチルジメチルシロキシ)ジ(オクチル)アルミニウムおよびドデシルオキシジ(オクチル)アルミニウムについて、改善された効率を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンモノマーの不均質チーグラー・ナッタ付加重合で使用する触媒組成物を同定するための方法であって、前記触媒組成物がマグネシウムおよびチタン含有プロ触媒を含んでなるプロ触媒と共触媒を含んでなり、および
A)少なくとも1つのプロ触媒化合物を含んでなるライブラリーを準備し、
B)前記プロ触媒ライブラリーの構成員を1つまたはそれ以上の共触媒と接触させ、得られた混合物をオレフィン重合条件下でオレフィンモノマーと接触させて、重合反応を起こさせることにより、触媒組成物ライブラリーを形成し、
C)この重合時に関心のある少なくとも1つの変数を測定し、
D)前記測定した変数を参照することにより、関心のある触媒組成物を選択する
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
前記共触媒が少なくとも1つの中間段階を必要とする方法により形成されるか、あるいはこの共触媒が2つまたはそれ以上の試剤を反応させることにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
関心のある性質が触媒活性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記共触媒が式:[M41x'y'z'
(式中、
4は2−13族の金属、Ge、Sn、またはBiであり;
1は独立してアニオン性あるいはポリアニオン性の配位子であり;
x’はゼロよりも大きく、そして6未満あるいは6に等しい数であり;
Gは場合によってはA1に結合した、中性のルイス塩基であり;
y’は0−4の数であり;
z’は1〜10の数である)
の化合物と
式[(H−J1z"2z"'
(式中、
1はNA3、PA3、SまたはOであり;
z”は1または2であり;
2はC1-20ヒドロカルビルまたは不活性置換ヒドロカルビル、トリ(C1-4ヒドロカルビル)シリルまたはこれらの多価誘導体であり;
3は水素、C1-20ヒドロカルビルまたは不活性置換ヒドロカルビルまたは共有結合(A2が二価配位子の基であり、そしてz”が1である場合には);そして
z”’は1〜10の数である)
の化合物とを反応させることにより形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記工程段階のすべてがコンピューター制御されたロボット処理により同一の反応器容器中で行われ、そしてこのスクリーニング結果が少なくとも1つのメモリー素子に保存される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
A×BアレーのA軸の形成に前記ライブラリーが使用され、前記A×BアレーのB軸の形成に組成物または工程条件の第2の選択が使用され、そして前記A×Bアレーの二元の対の組の中から関心のある性質を選択するのにリレーショナルデータベースソフトウエアが使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの得られたポリマーの性質の測定を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
測定される工程変数がこの重合時に消費される少なくとも1つのモノマーの量である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのオレフィンモノマーを含んでなる重合性混合物を、マグネシウムとチタン含有プロ触媒および共触媒を含んでなる触媒組成物と、チーグラー・ナッタ重合条件下で接触させることによりオレフィンを重合させる方法であって、前記共触媒が、(t−ブチルジメチルシロキシ)ジ(i−ブチル)アルミニウム、(t−ブチルジメチルシロキシ)ジ(n−オクチル)アルミニウム、ペンタフルオロフェノキシジ(イソブチル)アルミニウム、ペンタフルオロフェノキシジ(n−オクチル)アルミニウム、フェノキシジ(i−ブチル)アルミニウム、(3,5−ジメチル−2,4−ピラゾール−1−イル)ジ(エチル)アルミニウム、(3,5−ジメチル−2,4−ピラゾール−1−イル)ジ(n−オクチル)アルミニウムおよびドデシルオキシジ(n−オクチル)アルミニウムまたはほぼ等モル量のt−ブチルジ(メチル)ヒドロキシシランとトリ(イソブチル)アルミニウムまたはトリ(n−オクチル)アルミニウムとの反応により、ペンタフルオロフェノールとトリ(イソブチル)アルミニウムまたはトリ(n−オクチル)アルミニウムとの反応により、フェノールとトリ(イソブチル)アルミニウムとの反応により、3,5−ジメチル−1,4−ピラゾールとトリエチルアルミニウムまたはトリ(n−オクチル)アルミニウムとの反応により、あるいはドデカノールとトリ(n−オクチル)アルミニウムとの反応により形成される混合物からなる群から選択される化合物を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記プロ触媒が二塩化マグネシウム、アルキルアルミニウムジハライドおよびチタンアルコキシドの反応生成物を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エチレンと1−オクテンが共重合される、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2008−503604(P2008−503604A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516499(P2007−516499)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/016793
【国際公開番号】WO2006/043985
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】