説明

ツマミ装置

【課題】回転軸の先端の形状に特別な加工を施すことなく取り付けることができ、回転軸に対する高い保持力を得られるとともに見栄えのよいツマミ装置を提供すること。
【解決手段】ツマミ装置Aは回転軸Bに取り付けるツマミ支持体1と、該ツマミ支持体1に取り付けるツマミ本体2とで構成され、上記ツマミ支持体1は上記回転軸Bの先端に取り付ける取付部材3と、該取付部材3を回転軸Bに締付ける締付け部材4と、上記取付部材3の上部に形成されたボルト部10に捩じ込み、上記締付け部材4を下方に押し下げる締付けナット5とで構成され、上記取付部材3は周面に複数の縦割り溝12を形成するとともに、下方に向かって外方に膨出するスカート部11を形成し、上記締付け部材4には上記取付部材3に嵌め合わせる嵌合凹部15が形成され、上記ツマミ本体2には上記締め付け部材に嵌め合せる嵌合凹部25を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツマミ装置、詳しくは可変抵抗器などの回転軸に取り付け回転軸を回転操作するためのツマミ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ツマミを回転軸に固定するために、ツマミの側面に固定ネジを捻じ込むネジ孔を設け、このネジ孔に固定ネジを捻じ込んでツマミを回転軸に固定していたが、回転軸の表面に固定ネジの先端がくい込んで傷が付いてしまい固定ネジを外してもツマミが回転軸から抜けなくなるため回転軸に平面部(Dカット)を形成する加工が必要であったが、回転軸にDカットなど加工を施すことなくツマミを取り付けることができるツマミの固定機構が提案されている。(例えば、特許文献1)。このツマミの固定機構は、ホルダを回転軸の先端にはめ込み、その上にツマミを被せ、ツマミの上面に形成されたネジ穴を通してネジをホルダの雌ネジ部にねじ込むとホルダが軸を締付けてツマミと軸の固定ができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−178619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする問題点は、上述のツマミの固定機構では、ツマミ自体が破損・汚損などに起因する交換作業においては、ネジを緩めて取り外すことにより軸からツマミを取り外すことになるが、ホルダも軸から外れてしまう問題もあり、ネジがツマミの上に露出しているので見栄えの悪い問題もあるし、工具を使ってネジを外さなければつまみを交換することができない問題もあった。またホルダとツマミとを一体構造にすることも考えられるが、ツマミを交換する場合はホルダも交換することになり、交換する必要のないものまで廃棄することになるため廃棄物が増える恐れが考えられる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決し、ツマミ本体を支持するツマミ支持体を回転軸に固定したままツマミ本体の取り外し、取り付け作業が工具を用いることなく行なうことができ作業負担の軽減と廃棄物の削減を図るとともに、見栄えのよいツマミ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明に係るツマミ装置は、回転軸に取り付けるツマミ支持体と、該ツマミ支持体に嵌脱可能なツマミ本体とで構成され、以下の要件を備えることを特徴とする。
(イ)上記ツマミ支持体は、上記回転軸の先端に取り付ける取付部材と、該取付部材に嵌め合せるとともに上記ツマミ本体を支持する締付け部材と、上記取付部材の上部に形成されたボルト部に捩じ込み、上記締付け部材を下方に押し下げる締付けナットとで構成されていること
(ロ)上記取付部材は周面に複数の縦割り溝を形成するとともに、下方に向かって外方に膨出するスカート部を形成したこと
(ハ)上記締付け部材は上記取付部材に嵌め合わせる嵌合凹部が形成され、上面には上記取付部材のボルト部を突出させる開口部が形成されていること
(二)上記ツマミ本体は上記締付け部材を上面から覆うように形成され、底面には上記締め付け部材に嵌合する嵌合凹部が形成されていること
【0007】
なお、前記ツマミ本体の嵌合凹部の内壁面には第1の係合部と第2の係合部とを突出して形成し、前記締付け部材の外周面には第1の係合凹部と第2の係合凹部とを形成し、前記ツマミ本体を前記締付け部材に嵌め合わせたときには、第1の係合部と第1の係合凹部とが係合して周方向の位置決めを行い、第2の係合部と第2の係合凹部とが係合して軸方向の位置決めを行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、回転軸の先端の形状に条件を設ける必要がなく、柔軟に対応することができ、見栄えに優れたツマミ装置を提供することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、回転軸に固定したツマミ支持体にツマミ本体を嵌め込むと、第1の係合部と第1の係合凹部とが係合して周方向の位置決めを行うことができるし、第2の係合部と第2の係合凹部とは係合により適度な保持力で保持されている状態なので意図的にツマミ本体を引き抜けば回転軸にツマミ支持体を固定したままツマミ支持体から取り外すことができ、ツマミ本体が破損・汚損などした時には工具を用いることなく容易に他のツマミ本体と交換することができるし、ツマミ支持体は残したままツマミ本体のみを交換できるので作業の軽減と廃棄物の削減とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るツマミ装置の構成を示す説明図
【図2】上記ツマミ装置の分解斜視図
【図3】(a)〜(c)は取付部材の底面側斜視図、締付け部材のX−X線断面図及びツマミ本体の底面側斜視図
【図4】(a)〜(d)は取付部材に締付け部材を取り付ける過程を説明する断面図
【図5】(a)〜(c)はツマミ支持体にツマミ本体を取り付ける過程を説明する断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、ツマミ装置Aの斜視図を示し、このツマミ装置Aは、回転軸Bの先端に取り付けてツマミ装置Aを手で回すことにより回転軸Bを回すためのもので、ツマミ装置Aは回転軸Bに取り付けるツマミ支持体1と、このツマミ支持体1に取り付けるツマミ本体2とで構成されている。
【0012】
ツマミ支持体1は、図2に示すように、回転軸Bの先端部に取り付ける取付部材3と、この取付部材3を外側から締付けて回転軸Bに固定させる締付け部材4と、この締付け部材4に締め付けを行なわせる締め付けナット5とで構成されている。
【0013】
取付部材3は、上部3aが上方に突出して上記締め付けナット5を螺合させるボルト部10が形成され、下部3bは中央部分から下方に向かって外方に膨出するスカート部11が形成されるとともに、底面から上方に向かって十字状に切り込みを入れ、周方向に対し等間隔に縦割り溝12が形成されている。
【0014】
この取付部材3の底面には回転軸Bの先端を挿入するための挿入穴13が形成され(図3(a)参照)、上記縦割り溝12はこの挿入穴13に貫通している。そのため取付部材3の下部3bは外側からの押圧力で内方に撓み、挿入穴13の内径を縮小させることができるので、挿入穴13に回転軸Bの先端を差し込み、スカート部11に対して外側から圧力を加えると挿入穴13の内側が回転軸Bの外周面に圧着し、取付部材3を回転軸Bに固定することができるようになっている。
【0015】
締付け部材4は、上記取付部材3に嵌め合わせることができるように底面から上面に向かって嵌合凹部15が形成されるとともに、上面には円形の開口部16が嵌合凹部15に連通して形成され、締付け部材4を取付部材3に嵌め合わせたときには取付部材3のボルト部10が開口部16から上方に突出するようになっている。
【0016】
上記嵌合凹部15は第1の嵌合凹部15aと第2の嵌合凹部15bとで構成され(図3(b)参照)、第2の嵌合部15bは下方に向かって拡開し、締付け部材4を取付部材3に嵌め合わせたときにスカート部11と第2の嵌合凹部15bとが係合し、締付け部材4を安定した状態で取付部材3に取り付けることができるようになっている。
【0017】
そして、スカート部11と第2の嵌合凹部15bとが係合した状態で、締付け部材4を取付部材3に押し込むとスカート部11には第2の嵌合凹部15bの上部に位置する径の小さい第1の嵌合凹部15aがスカート部11を上から押圧するので、取付部材3の下部3bは内方に撓み、挿入穴13の内面を回転軸Bの外周面に圧接させることができるようになっている。
【0018】
また、締付け部材4の上部側面にはツマミ本体2を装着したときツマミ本体2が締付け部材4に対して回転方向にずれないようにするための第1の係合凹部である切欠き部17が形成され、下部にはツマミ本体2を装着したときツマミ本体2が締付け部材4から容易に抜けないように固定する第2の係合凹部である係合溝18が周設されている。
【0019】
締付けナット5は上記取付部材3の上部に形成されたボルト部10に螺合するように形成され、上面にはマイナスドライバの先端を係合させる係合溝20が形成されている。
【0020】
ツマミ本体2は、指でつまめる大きさの円形を基本としたキャップで、底部には上記締付け部材4を嵌め合わせる嵌合凹部25が形成され、嵌合凹部25の内周面には対向して締付け部材4の切欠き部17に係合し、ツマミ本体2が周方向にずれないようにする第1の係合部である係合突片26と、係合溝18に係合し、ツマミ本体2が容易に抜けないようにする第2の係合部である係合突部27とが形成されている(図3(c)参照)。
【0021】
次に、上記構成のツマミ装置Aの使用態様について説明する。先ず、図4(a)に示すように、回転軸Bの先端に取付部材3の挿入穴13を対応させて、挿入穴13に回転軸Bの先端を差し込んで取付部材3を回転軸Bの先端に装着する(図4(b)参照)。次に、締付け部材4の嵌合凹部15を取付部材3に対応するようにして締付け部材4を取付部材3に嵌め合わせる(図4(c)参照)。この状態では、第2の嵌合凹部15bとスカート部11とが係合して締付け部材4の降下は阻止されるとともに安定した状態で装着される。
【0022】
嵌合時には、取付部材3のボルト部10が締付け部材4の開口部16から上方に突出しているので、このボルト部10に締め込みナット5を指でつまんで軽く回して締付け部材4の上面に当接するまで捻じ込む(図4(d)参照)。この状態では、取付部材3と締付け部材4との間には空間aが存在し、締付け部材4を下方に押し下げることができるようになっている。
【0023】
次に、締め込みナット5の上面に形成された係合溝20にマイナスドライバの先端を係合させ、締め込みナット5を締め込む。締め込みナット5を締めこんでいくと、空間aの隙間があるので締付け部材4を取付部材3に対して強制的に降下させることができる。締付け部材4を降下させる時、締付け部材4の第1の嵌合凹部15aの下端がスカート部11の上面を押しながら降下するので、スカート部11は内方に撓んで挿入穴13の内面が回転軸Bの周面に強制的に押し付けられ、ツマミ支持体1は回転軸Bに固定された状態になる(図5(a)参照)。
【0024】
ツマミ支持体1が回転軸Bに固定されたならば、ツマミ本体2をツマミ支持体1に取り付ける。この時、図5(b)に示すように嵌合凹部25の内壁に形成された係合突片26が締付け部材4の側面に形成された切欠き部17に対応するように位置を合わせて嵌合凹部25にツマミ支持体1を嵌め合わせることにより、図5(c)に示すように、ツマミ支持体1にツマミ本体2を取り付けることができ、ツマミ装置Aを回転軸Bに固定することができる。
【0025】
この状態では、締付け部材4の切欠き部17にツマミ本体2の係合突片26が係合しているので締め付け部材4に対してツマミ本体2が回転方向にずれることはない。また、締付け部材4の係合溝18にツマミ本体2の係合突部27が係合しているのでツマミ本体2は締付け部材4(ツマミ支持体1)に適度な保持力で保持されている状態でツマミ支持体1に取り付けられていることになるので意図的にツマミ本体2を引き抜かない限りツマミ支持体1から外れることはない。
【0026】
上述したように、取付部材3を回転軸Bに取り付け、この取付部材3に締付け部材4を嵌め合わせ、締め込みナット5を取付部材3のボルト部10に締め込めば、締付け部材4が取付部材3のスカート部11を回転軸Bに圧着させてツマミ支持体1を回転軸Bに固定することができるので、回転軸Bに固定したツマミ支持体1にツマミ本体2を嵌め込めば回転軸Bにツマミ装置Aを取り付けることができ、回転軸の先端にDカットなどの加工を施すことなくツマミ装置Aを取り付けることができる。
【0027】
しかも、回転軸Bの中心とツマミ本体2の中心とが一致するので、回転操作時にツマミ本体2が公転する違和感を感じることなく操作をすることができる。
【0028】
また回転軸に固定したツマミ支持体にツマミ本体を嵌め込むだけで第1の係合部と第1の係合凹部とが係合して周方向の位置決めができ、第2の係合部と第2の係合凹部とが係合して適度な保持力でツマミ本体をツマミ支持体に取り付けることができるので、ツマミ本体が破損・汚損などで交換の必要性が発生した時には多少強い力で引き抜けば工具を用いることなく容易に取り外して他のツマミ本体と交換することができるし、ツマミ支持体とツマミ本体とは一体構造ではないので、交換を必要とする部品を最小限にとどめることにより構成部品の分別ができ省資源に寄与するツマミ装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ツマミ支持体
2 ツマミ本体
3 取付部材
4 締付け部材
5 締付けナット
11 スカート部
12 縦割り溝
15 嵌合凹部
17 第1の係合凹部(切欠き部)
18 第2の係合凹部(係合溝)
25 嵌合凹部
26 第1の係合部(係合突片)
27 第2の係合部(係合突部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けるツマミ支持体と、該ツマミ支持体に嵌脱可能なツマミ本体とで構成され、以下の要件を備えることを特徴とする、ツマミ装置。
(イ)上記ツマミ支持体は、上記回転軸の先端に取り付ける取付部材と、該取付部材に嵌め合せるとともに上記ツマミ本体を支持する締付け部材と、上記取付部材の上部に形成されたボルト部に捩じ込み、上記締付け部材を下方に押し下げる締付けナットとで構成されていること
(ロ)上記取付部材は周面に複数の縦割り溝を形成するとともに、下方に向かって外方に膨出するスカート部を形成したこと
(ハ)上記締付け部材は上記取付部材に嵌め合わせる嵌合凹部が形成され、上面には上記取付部材のボルト部を突出させる開口部が形成されていること
(二)上記ツマミ本体は上記締付け部材を上面から覆うように形成され、底面には上記締め付け部材に嵌合する嵌合凹部が形成されていること
【請求項2】
前記ツマミ本体の嵌合凹部の内壁面には第1の係合部と第2の係合部とを突出して形成し、前記締付け部材の外周面には第1の係合凹部と第2の係合凹部とを形成し、前記ツマミ本体を前記締付け部材に嵌め合わせたときには、第1の係合部と第1の係合凹部とが係合して周方向の位置決めを行い、第2の係合部と第2の係合凹部とが係合して軸方向の位置決めを行なう、請求項1記載のツマミ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−59990(P2011−59990A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208997(P2009−208997)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(591102718)サトーパーツ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】