説明

テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミン酸化防止剤を含む潤滑油組成物

【課題】酸化安定性の改善をもたらす潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】
潤滑粘度の油、N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミン、そして酸化防止剤、分散剤および清浄剤から選ばれた少なくとも一種の添加剤を含む潤滑油組成物を開示するが、これらは一緒になって優れた酸化防止性をもたらし、従って自動車用潤滑剤およびトラック・クランクケース用潤滑剤、並びに変速機用潤滑剤、ギヤ用潤滑剤、油圧作動液、圧縮機油、ディーゼル及び舶用潤滑剤として適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一部では、潤滑粘度の油、N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミンそして潤滑油添加剤を含む潤滑油組成物に関する。特に有効なのは、N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミンと、ジアリールアミンなどの第二の酸化防止剤との組合せであり、共同して優れた酸化防止性をもたらす。
【背景技術】
【0002】
ジアリールアミン酸化防止剤は、公知であり、機械工学に用いられる多数の製品の熱・酸化安定性および/または光誘導崩壊を改善するために広く使用されていて、例えば、二、三の例を挙げると潤滑剤、油圧作動液、金属加工油剤、燃料またはポリマーの性能特性を改善することができる。
【0003】
普通はこれらのジアリールアミン類はアルキル化されていて、例えば、ジフェニルアミンの改良アルキル化法が開示されている特許文献1、および安定剤としてアルキル化ジフェニルアミン類が開示されている特許文献2を参照されたい。アルカリール置換ジフェニルアミン類、およびフェニルナフチルアミン類(例えば、α−メチルスチリル−ジフェニルアミン)は、例えば特許文献3、4及び5に開示されている。
【0004】
酸化防止剤の相乗的及び拮抗的組合せについても開示されている。酸化防止剤の有効な相乗混合物は一般に、二つの異なるメカニズムによって酸化を阻止する化合物である。例えば、一方の化合物がペルオキシドの分解剤として機能し、もう一方の化合物がラジカルの阻害剤として機能するような化合物である。よく知られた異種間相乗作用は、硫黄及びリン含有化合物(例えば、スルフィド類、ジチオカルバメート類、亜リン酸エステル類およびジチオリン酸エステル類)と、アミン系又はフェノール系酸化防止剤間で明らかになっている。特許文献6には、ワックススルフィドまたはジオクタデシルジスルフィドなどの硫黄含有化合物と、フェニルアルファ−ナフチルアミンなどの少なくとも2個の芳香環を持つ芳香族アミン化合物との相乗混合物が、潤滑油の酸化を防止するのに使用する目的で開示されている。例えば特許文献7には、硫化オレイン酸、C18−C22アルケニルコハク酸、20乃至60%の塩素を含む塩素化パラフィンワックス、ジフェニルアミン、およびN,N−サリチラール−1,2−プロピレンジアミンの各々を、0.01乃至5%含む極圧潤滑油組成物が開示されている。特許文献8には、安定剤がジアリールアミンまたはアルキル化フェノールであってよい、機能液として使用できる安定化したアルキル置換ジアリールスルフィド類が開示されている。特許文献9には、油溶性アンチモン化合物と、立体障害のあるフェノール及びチオフェノール類および芳香族アミン類およびこれら酸化防止剤の混合物から選ばれた油溶性酸化防止剤とを有する、酸化防止性が改善された潤滑剤が開示されている。特許文献10には、第一級アミンと、芳香族又はアルキルスルフィド及びポリスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化カルボン酸エステル類および硫化エステル−オレフィン類から選ばれた酸化防止剤との酸化防止性混合物を有する潤滑剤が開示されている。特許文献11には、芳香族及びアルキルスルフィド及びポリスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化カルボン酸エステル類および硫化エステル−オレフィン類と第二級脂肪族アミンとの酸化防止性混合物を有する潤滑剤が開示されている。特許文献12には、油溶性モリブデン化合物と芳香族アミンとの組合せを含む酸化防止性混合物が開示されている。
【0005】
一般に、ヒドロペルオキシドまたはペルオキシドを分解することを意図した酸化防止性化合物(硫化オレフィン類、金属ジチオカルバメート類、ジチオリン酸エステル類、亜リン酸エステル類、チオエステル類等が挙げられる)は、それらによって潤滑油組成物に添加される望ましくない量の硫黄やリン、灰分のために、調合潤滑油に混合するのが益々困難になっている。硫黄やリン、灰分は、用途を益々見い出している公害防止装置に負の影響を与えること(例えば、触媒被毒等)が知られている。従って、公害防止装置に負の影響を与えないばかりか、酸化防止性能の改善をもたらして、所望する一般的な高い作動温度および長いサービス寿命に対処できる、新規な酸化防止剤および酸化防止剤系の要望がある。相乗的な酸化防止剤系は、全体的な添加剤による影響を低減できるので特に重要である。例えば、ジフェニルアミン類など酸化防止剤は比較的高濃度で使用することができない。なぜならば、これによって、ディーゼルエンジンのディーゼルリング域のような高温エンジン域で沈降物または堆積物が生じうるからである。従って、本発明の一つの態様は、ラジカル酸化防止剤と、テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミンから選ばれた有効なペルオキシド分解剤とを含む改良酸化防止剤系に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2943112号明細書
【特許文献2】米国特許第3655559号明細書
【特許文献3】米国特許第3533992号明細書
【特許文献4】米国特許第3452056号明細書
【特許文献5】米国特許第3660290号明細書
【特許文献6】米国特許第2718501号明細書
【特許文献7】米国特許第2958663号明細書
【特許文献8】米国特許第3345292号明細書
【特許文献9】米国特許第4032462号明細書
【特許文献10】米国特許第4089792号明細書
【特許文献11】米国特許第4102796号明細書
【特許文献12】米国特許第6306802号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は一部では、酸化安定性の改善をもたらす潤滑油組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は一部では、酸化安定性の改善をもたらす潤滑油組成物に関する。従って、本発明の組成物には、自動車用潤滑剤およびトラック・クランクケース用潤滑剤、並びに変速機用潤滑剤、ギヤ用潤滑剤、油圧作動液、圧縮機油、ディーゼル及び舶用潤滑剤など様々な用途がある。本発明の潤滑油組成物は、少なくとも一種の潤滑粘度の油、下記I式に従う油溶性の酸化防止剤、および酸化防止剤、分散剤および清浄剤から選ばれた少なくとも一種の添加剤を含む。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、各々炭素原子数1乃至20のアルキル基群から選ばれる。
【0011】
I式の酸化防止剤は、潤滑油組成物に用いられるとそれだけでも効果がある。しかしながら、I式の化合物はフリーラジカル酸化防止剤と共に用いられると、酸化防止性能の改善が見られる。従って、別の態様では、潤滑粘度の油と、下記の成分を含む混合物の酸化防止剤とを含む潤滑油組成物に関する:
a)0.1乃至10質量%の下記I式に従う第一の酸化防止剤、および
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、各々炭素原子数1乃至20のアルキル基群から選ばれる)
b)0.01乃至10質量%の下記式から選ばれた第二の酸化防止剤。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、RaおよびRbは各々独立に、炭素原子数6乃至10のアリールであって、アリールは未置換でも、あるいは各々炭素原子数1乃至20の1又は2個のアルキル基で置換されていてもよい)
【0016】
成分a)と成分b)との組合せによる改善は、成分a)と成分b)の比が約0.5:1乃至約10:1、更に特には約0.75:1乃至約5:1のときに明らかにされている。成分a)及びb)の混合物によって得られる組成物の酸化安定性改善の試験によれば、全組成物中に存在するこれら成分の混合物は5質量%未満である。より好ましくは、a)及びb)の混合物は組成物の全質量に基づき、0.5乃至2.0質量%である。
【0017】
上記に規定した組成物は、その他の添加剤も含有することができる。従って、本発明の別の態様では、更に油溶性のモリブデン化合物を含んでいる。特に好ましい油溶性モリブデン化合物は、(i)酸性モリブデン化合物と、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、ホスホルアミド、チオホスホルアミド、マンニッヒ塩基、分散型粘度指数向上剤またはそれらの混合物からなる分散剤群から選ばれた塩基性窒素化合物とを、極性促進剤の存在下で反応させてオキシモリブデン錯体とすることにより製造された、未硫化又は硫化オキシモリブデン含有組成物である。より好ましくは、塩基性窒素化合物はコハク酸イミドである。
【0018】
上記の組成物は更に、金属ジチオリン酸塩類、リンエステル類、アミンリン酸エステル類及びアミンホスフィン酸エステル類、硫黄含有リンエステル類、ホスホルアミド類およびホスホンアミド類からなる群より選ばれる、油溶性のリン含有耐摩耗性化合物を含有することができる。好ましい該リンエステル類は、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、ホスフィン酸エステル類、酸化ホスフィン類、亜リン酸エステル類、亜ホスホン酸エステル類、亜ホスフィン酸エステル類およびホスフィン類からなる群より選ばれる。特に好ましい油溶性リン含有耐摩耗性化合物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などの金属ジチオリン酸塩である。
【0019】
さらに、内燃機関を潤滑に運転する方法であって、上記の潤滑油組成物を内燃機関に供給することを含む方法も提供する。特に言及したように、I式の化合物は酸化防止剤として有用であり、よって一つの態様は、酸化抑制の目的でI式の化合物を潤滑油組成物に使用することに関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の組成物には、自動車用潤滑剤およびトラック・クランクケース用潤滑剤、並びに変速機用潤滑剤、ギヤ用潤滑剤、油圧作動液、圧縮機油、ディーゼル及び舶用潤滑剤などの様々な用途がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
フリーラジカルが媒介する酸化の阻止は、有機基質における最も重要な反応の一つであり、ゴムやポリマー、潤滑油では普通に利用されている、すなわち、これらの化学製品は自動酸化過程で酸化損傷を受けうるからである。炭化水素の酸化には、次のことからなる三段階の過程がある:開始、生長、および停止。酸化崩壊およびその反応メカニズムは、特定の炭化水素、温度、作用条件、金属などの触媒等に依存していて、その詳細は、モーティア、R.M.(Mortier R.M.)、外著、「潤滑剤開始の化学と技術(Chemistry and Technology of Lubricants Initiation)」、VCHパブリッシャーズ社(VCH Publishers, Inc.)、(1992年)の第4章に見い出すことができる。「開始」は、炭化水素分子における酸素または窒素酸化物(NOx)の反応を含んでいる。一般に、「開始」は炭化水素プロトンの引抜きによって始まる。この結果、過酸化水素(HOOH)、およびアルキルラジカル(R・)やペルオキシラジカル(ROO・)のようなラジカルの生成が起こることになる。「生長」段階では、ヒドロペルオキシドが、単独でもしくは金属イオンのような触媒の存在下で分解して、アルコキシラジカル(RO・)およびペルオキシラジカルになる。これらのラジカルは炭化水素と反応して、更なる様々なラジカル、およびアルコールやアルデヒド、ケトン、カルボン酸のような反応性酸素含有化合物になることができ、そしてそれらは再び更に重合したり、あるいは連鎖生長を続けることができる。「停止」は、ラジカルの自己停止により、あるいは酸化防止剤との反応によって起こる。
【0022】
無触媒で約120℃までの温度での炭化水素の酸化は、主としてアルキル−ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、アルコール、ケトン、並びにジヒドロペルオキシドの開裂により生じる生成物、例えばジケトン、ケト−アルデヒドおよびヒドロキシケトン等をもたらす。更に高い温度(120℃より上)では、反応速度が増してヒドロペルオキシドの開裂がより重要な役割を果たす。さらに、高温では、初期の酸化相で生成した二官能性酸化生成物の重縮合の結果として、バルク媒体の粘度が増す。これら高分子量中間体の更なる重縮合及び重合反応の結果、もはや炭化水素に溶けないでワニス状堆積物やスラッジを形成する生成物が生じる。
【0023】
自動酸化はフリーラジカル連鎖反応であるので、従って開始及び/又は生長段階で阻止することができる。ジアルキルジフェニルアミンやN−フェニル−α−ナフチルアミンのようなジアリールアミン類による代表的な酸化阻止には、ラジカル捕捉も含まれる。アミンのNH基からペルオキシドラジカルへの水素の移動の結果、ジアリールアミノラジカルの生成が起こり、それが共鳴安定化し、それにより新しい鎖が生成するのを防ぐ。第二級ペルオキシラジカルまたはヒドロペルオキシドは、ジアリールアミノラジカルと反応してニトロキシラジカルになることができ、それも非常に有効な阻害剤である。ヒドロペルオキシド分解剤は、ヒドロペルオキシドを非ラジカル生成物に変換し、それにより連鎖生長反応を防ぐ。従来より有機硫黄及び有機リン含有添加剤はこの目的で用いられていて、一般に酸触媒分解または酸素移動によってヒドロペルオキシドを排除する。だが、前述したように、完成潤滑油中の全硫黄及び/又はリン分に関する懸念の増大が、新規なヒドロペルオキシド分解剤、おそらくは違うメカニズムであっても反応するものを見つけようとする努力につながっている。また、今度は新規な阻害剤に重点が置かれた数多くの機能液が益々要求されてきている。
【0024】
本発明は一部では、好適な潤滑粘度の油、および成分a)の、特に有用な安定剤として働くことができ、よって一般に少なくとも一種の他の添加剤と一緒に用いられる、N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミン化合物を含む潤滑油組成物に関する。特に利用できるのは、成分a)と、別の酸化防止剤、特に成分b)の第二級アリールアミンとの組合せであり、この組合せは酸化安定性を改善する。これまで、異なる種類の酸化防止剤の組合せでの相乗作用が示唆されていて、安定剤の異なるメカニズムゆえに異種間相乗作用とも呼ばれ、例えばラジカル捕捉剤とペルオキシド分解剤の組合せがある。さらに、同じ部類間でも相乗作用が示唆されていて、異なる反応メカニズム/速度で作用する化合物が相乗的結果をもたらすことがあり、例えばヒンダードフェノール類とアルキル化ジフェニルアミン類の組合せが研究されている。これまで、N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミンについては、潤滑油の酸化防止性が明らかにされたことはなく、またa)N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミンとb)第二級アリールアミンの混合物についても、相乗作用は明らかにされていない。
【0025】
[N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミン:成分a)]
成分a)は、N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミンであり、単独でも酸化防止剤として特に有用であり、よって、潤滑油組成物に酸化防止剤として、一般に酸化防止剤や清浄剤、分散剤など他の添加剤と組み合わせて使用するのに適している。ここに開示するのは、特に適したI式に従う立体障害のあるアミン化合物である。
【0026】
【化4】

【0027】
式中、R1およびR2およびR3およびR4は各々独立に、炭素原子数1−20のアルキル、より好ましくは炭素原子数1−10のアルキル、更に好ましくは炭素原子数1−6の低級アルキルからなる群より選ばれる。上記のアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよいが、完全に飽和した炭化水素鎖であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルおよびノナデシル等、並びにそれらの異性体及び混合物である。本発明に使用することができる好適なヒンダードアミンの例としては、N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミンがあり、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社よりプロトン−スポンジ(Proton-sponge、商品名)として販売されている。N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミンは、ジメチルアミン基の密接ゆえに歪んだ分子である。遊離塩基は、共鳴の立体阻害、ファンデルワース反発および孤立電子対相互作用によって不安定になる。これらの歪みは一般に、モノプロトン化および分子間水素結合の形成によって取り除かれ、よってヒドロペルオキシド分解反応の平衡定数を効果的に変えることができる。これによって、普通の脂肪族アミン類または芳香族アミン類に比べて高い塩基度が付与され、この高い塩基度は、ヒドロペルオキシドを脱プロトンするのに必要である。ペルオキシドの脱プロトンは、ラジカルへの分解に対して酸素−酸素結合をより安定にすることになる。N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミンの強い塩基度は、いろいろな因子の作用、例えば遊離塩基の共役の立体阻害、小さな孤立電子対/孤立電子対反発を含む非結合反発の軽減、水素結合による陽イオンの安定化等に帰することができる。明らかに、N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミン構造は、ナフタレン環系のねじれ、好ましい孤立電子対/π重なり、孤立電子対/メチル非結合相互作用、および孤立電子対/孤立電子対反発を含むいろいろな因子を内包する調整の産物である。
【0028】
I式の化合物は、潤滑油組成物で油溶性であるほど充分なアルキル基を持つように選ばれ、よってI式の化合物は潤滑粘度の油と一緒に使用することができる。潤滑油組成物中のI式の化合物の濃度は、所望とする要求条件や用途、相乗作用の効果又は程度に応じて変えることができる。本発明の好ましい態様では、N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミンの潤滑油組成物における実際の使用範囲は、潤滑油組成物の全質量に基づき約百万分の1000部乃至百万分の20000部(すなわち、0.1乃至2.0質量%)であり、好ましくは濃度は百万分の1000乃至15000部(質量ppm)、より好ましくは約3000乃至10000質量ppmである。
【0029】
I式のN,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミン化合物は、潤滑油配合物に今日用いられている市販の酸化防止剤の全般的な又は部分的な代替物として使用することができ、また一般にモーター油や燃料に見られる他の添加剤と組み合わせることができる。油配合物に用いられている別の種類の酸化防止剤または添加剤と組み合わせて使用する場合に、酸化防止性、耐摩耗性、摩擦特性および清浄性および高温エンジン堆積物特性の改善に関して、相乗的及び/又は追加の性能効果を得ることも可能である。そのような他の添加剤は、潤滑油組成物を配合するのに使用でき、今日知られているかもしくは後日発見される任意の添加剤であってよい。一般に潤滑油に見られる潤滑油添加剤は、例えば分散剤、清浄剤、腐食防止/さび止め添加剤、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、消泡剤、摩擦緩和剤、シール膨潤剤、抗乳化剤、VI向上剤、および流動点降下剤等である。相乗作用の実証のために特に好ましいのは、成分a)の化合物と、フリーラジカル阻害酸化防止剤などの追加の酸化防止剤、より好ましくはジアリールアミン類またはヒンダードフェノール種およびそれらの組合せから選ばれた酸化防止剤との組合せである。
【0030】
一般に、添加剤を使用する場合に潤滑油組成物中での各々の濃度は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.001質量%乃至約10質量%、約0.01質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約2.5質量%の範囲にあってよい。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.001質量%乃至約40質量%、約0.01質量%乃至約20質量%、又は約0.1質量%乃至約10質量%の範囲にあってよい。
【0031】
[ジアリールアミン:成分b)]
第二級ジアリールアミン類は、よく知られた酸化防止剤である。第二級ジアリールアミン酸化防止剤は、式:Ra−NH−Rbを有するものであることが好ましい(ただし、RaおよびRbは各々独立に炭素原子数C6−C30の置換又は未置換アリール基を表し、好ましくは、RaおよびRbは各々独立に炭素原子数6−10のアリールであって、未置換であってもあるいは各々炭素原子数1−20の1又は2個のアルキル基で置換されていてもよい)。
【0032】
アリール部の置換基を説明すれば、炭素原子数1−20のアルキルまたはアルケニルなどの脂肪族炭化水素基である。アリール部は、置換又は未置換フェニルまたは置換又は未置換ナフチルであることが好ましく、特には、アリール部の一方又は両方が炭素原子数4−18のアルキルなどのアルキルで置換されていることが好ましい。
【0033】
脂肪族炭化水素部は、炭素原子1−20個を有することができ、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルおよびノナデシル等、並びにそれらの異性体及び混合物である。
【0034】
aおよび/またはRbは、置換されたアリール基を含んでいることが好ましい。これらの第二級ジアリールアミンは一方又は両方の環が、アルキル基、好ましくは炭素原子数4−12、より好ましくは炭素原子数8−9の直鎖又は分岐アルキル基で置換されていてもよい。普通はアルキル化ジフェニルアミンの混合物は、ジフェニルアミンを2,4,4−トリメチルペンチルで、または他のアルキル基、好ましくは分岐鎖を用いて反応させて製造され、例えばノニル化ジフェニルアミン(ビス(4−ノニルフェニル)アミン)、またはオクチル化−ブチル化ジフェニルアミンが製造される。
【0035】
それらの酸化した生成物が基油中で良好な溶解度を示すためには、これら脂肪族炭化水素部は、C20以下のアルキル基、好ましくはC8-16分岐アルキル基、より好ましくはC3又はC4オレフィンのオリゴマーから誘導されるようなC8-16分岐アルキル基を含んでいる。ここで言うC3又はC4オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブチレンが挙げられ、それらの酸化生成物の基油への良好な溶解度の点で、その中でもプロピレンおよびイソブチレンが好ましい。つまり、イソブチレン二量体から誘導された分岐オクチル基、プロピレン三量体から誘導された分岐ノニル基、イソブチレン三量体から誘導された分岐ドデシル基、プロピレン四量体から誘導された分岐ドデシル基、またはプロピレン五量体から誘導された分岐ペンタデシル基が特に好ましい。置換第二級ジアリールアミン、特にはp,p’−ジアルキルジフェニルアミンおよびN−p−アルキルフェニル−α−ナフチルアミンは、市販製品であるが、フリーデル・クラフツ触媒を用いて、ジアリールアミンをC1-6アルキルハライド、C2-6オレフィンまたはC2-6オレフィンオリゴマーと反応させることにより、容易に生成させることができる。フリーデル・クラフツ触媒の例としては、金属ハロゲン化物、例えば塩化アルミニウム、塩化亜鉛および塩化鉄、並びに酸性触媒、例えば硫酸、リン酸、五酸化リン、フッ化ホウ素、酸性粘土および活性粘土がある。その他のアルキル化法も当該分野では知られている。
【0036】
本発明の実施において使用できる第二級ジアリールアミンの幾つかの例としては、次のものが挙げられる:ジフェニルアミン、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、トリアルキル化ジフェニルアミン、またはそれらの混合物、モノ及び/又はジ−ブチルジフェニルアミン、モノ及び/又はジ−オクチルジフェニルアミン、モノ及び/又はジ−ノニルジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、フェニル−ベータ−ナフチルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、t−オクチル化N−フェニル−1−ナフチルアミン、モノ及びジアルキル化t−ブチル−t−オクチルジフェニルアミンの混合物。
【0037】
市販のジアリールアミンの例としては、例えばチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)社製のIRGANOX L06、IRGANOX L57及びIRGANOX L67;クロンプトン・コーポレーション(Crompton Corporation)製のNAUGALUBE AMS、NAUGALUBE438、NAUGALUBE438R、NAUGALUBE438L、NAUGALUBE500、NAUGALUBE640、NAUGALUBE680及びNAUGARD PANA;BFグッドリッチ・スペシャリティ・ケミカルズ(BF Goodrich Specialty Chemicals)社製のGOODRITE3123、GOODRITE3190X36、GOODRITE3127、GOODRITE3128、GOODRITE3185X1、GOODRITE3190X29、GOODRITE3190X40、GOODRITE3191及びGOODRITE3192;R.T.ヴァンダービルト・カンパニー(R.T.Vanderbilt Company Inc.)製のVANLUBE DND、VANLUBE NA、VANLUBE PNA、VANLUBE SL、VANLUBE SLHP、VANLUBE SS、VANLUBE81、VANLUBE848及びVANLUBE849を挙げることができる。
【0038】
潤滑油組成物中の第二級ジアリールアミンの濃度は、所望の要求条件や用途、相乗作用度に応じて変えることができる。本発明の好ましい態様では、第二級ジアリールアミンの潤滑油組成物における実際の使用範囲は、潤滑油組成物の全質量に基づき約百万分の1000部乃至百万分の20000部(すなわち、0.1乃至2.0質量%)であり、好ましい濃度は百万分の1000乃至15000部(質量ppm)、より好ましくは約3000乃至10000質量ppmである。
【0039】
一般に、潤滑油組成物中の全酸化防止剤に関して、1000ppm未満の量では有効性が僅かしかないか、殆どなく、一方、50000ppmより多い量では概して経済的ではない。潤滑油組成物中の成分a)及び成分b)の総量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.1乃至2質量%であることが好ましく、より好ましくは約0.5乃至約2質量%である。
【0040】
I式の化合物と一緒に使用することができる他の酸化防止剤としては、これらに限定されるものではないが、ヒンダードフェノール類、硫化ヒンダードフェノール類、ヒンダードフェノールエステル類、アルキル化フェノチアジン類、および無灰ジアルキルチオカルバメート類を挙げることができる。第三級アルキル化一価フェノール類は広く用いられていて、一般に炭素原子4−12個を含む第三級アルキル基がオルト位に(任意にメタ及び/又はパラ位にも)あり、例えば米国特許第2831898号明細書に記述されている。米国特許第3211652号明細書で製造されたようなメチレン架橋第三級アルキルポリフェノール類も利用できる。フェノール型フェノール系酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−(メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール))、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−アルファ−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)が挙げられる。
【0041】
本明細書に開示する潤滑油組成物は任意に、摩擦および過剰な摩耗を低減することができる耐摩耗性添加剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知悉している任意の耐摩耗性添加剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な耐摩耗性添加剤の限定的ではない例としては、ジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸の金属(例えばPb、SbおよびMo等)塩類、ジチオカルバメートの金属(例えばZn、Pb、SbおよびMo等)塩類、脂肪酸の金属(例えばZn、PbおよびSb等)塩類、ホウ素化合物、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩類、ジシクロペンタジエンとチオリン酸の反応生成物、およびそれらの組合せを挙げることができる。耐摩耗性添加剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%で変えることができる。好適な耐摩耗性添加剤は、レスリー・R.ルドニック(Leslie R.Rudnick)著、「潤滑油添加剤:化学と用途(Lubricant Additives: Chemistry and Applications)」、ニューヨーク、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)、第8章、p.223−258(2003年)に記載されている。
【0042】
ある態様では耐摩耗性添加剤は、二炭化水素ジチオリン酸金属塩、例えばジアルキルジチオリン酸亜鉛化合物であるか、あるいはそれを含むものである。二炭化水素ジチオリン酸金属塩の金属は、アルカリ又はアルカリ土類金属であっても、あるいはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケルまたは銅であってもよい。ある態様では金属は亜鉛である。別の態様では二炭化水素ジチオリン酸金属塩のアルキル基は、炭素原子数約3−約22、炭素原子数約3−約18、炭素原子数約3−約12、又は炭素原子数約3−約8である。更なる態様ではアルキル基は、線状であっても分岐していてもよい。
【0043】
開示する潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛塩を含む二炭化水素ジチオリン酸金属塩の量は、そのリン分で量られる。ある態様では開示する潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約0.12質量%、約0.01質量%乃至約0.10質量%、又は約0.02質量%乃至約0.08質量%である。
【0044】
一態様では本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01乃至0.08質量%である。別の態様では本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.05乃至0.12質量%である。
【0045】
二炭化水素ジチオリン酸金属塩は、公知技術に従ってまず、通常はアルコールおよびフェノール化合物のうちの一種以上をP25と反応させることで、二炭化水素ジチオリン酸(DDPA)を生成させ、次いで生成したDDPAを金属化合物、例えば金属の酸化物、水酸化物又は炭酸塩で中和することにより製造することができる。ある態様では、第一級及び第二級アルコールの混合物をP25と反応させることにより、DDPAを製造することができる。別の態様では、二種以上の二炭化水素ジチオリン酸を製造することができて、一種類のジチオリン酸の炭化水素基は全く第二級の性質であるが、残りのジチオリン酸の炭化水素基は全く第一級の性質である。亜鉛塩は、二炭化水素ジチオリン酸から亜鉛化合物と反応させることにより製造することができる。ある態様では塩基性又は中性の亜鉛化合物を使用する。別の態様では亜鉛の酸化物、水酸化物または炭酸塩を使用する。
【0046】
ある態様では、(II)式で表されるジアルキルジチオリン酸から、油溶性のジアルキルジチオリン酸亜鉛を生成させることができる。
【0047】
【化5】

【0048】
式中、R3およびR4の各々は独立に、線状又は分岐アルキル、または線状又は分岐置換アルキルである。ある態様ではアルキル基は、炭素原子数約3−約30、又は炭素原子数約3−約8である。
【0049】
(II)式のジアルキルジチオリン酸は、アルコールR3OHおよびR4OH(ただし、R3およびR4は上に定義した通りである)を、P25と反応させることにより製造することができる。ある態様ではR3とR4は同じである。別の態様ではR3とR4は異なっている。更なる態様ではR3OHとR4OHを同時にP25と反応させる。それ以上の態様ではR3OHとR4OHを順次P25と反応させる。
【0050】
ヒドロキシルアルキル化合物の混合物も使用することができる。これらヒドロキシルアルキル化合物は、モノヒドロキシルアルキル化合物である必要はない。ある態様では、モノ、ジ、トリ、テトラ及び他のポリヒドロキシアルキル化合物または前者の二種以上の混合物から、ジアルキルジチオリン酸を製造する。別の態様では、第一級アルキルアルコールのみから誘導するジアルキルジチオリン酸亜鉛は、単一の第一級アルコールから誘導する。更なる態様ではその単一第一級アルコールは、2−エチルヘキサノールである。ある態様では、第二級アルキルアルコールのみからジアルキルジチオリン酸亜鉛を誘導する。更なる態様ではその第二級アルコールの混合物は、2−ブタノールと4−メチル−2−ペンタノールの混合物である。
【0051】
ジアルキルジチオリン酸の生成工程に使用される五硫化リン反応体は、P23、P43、P47又はP49のうちの一種以上をある量含んでいることがある。組成物それ自体が少量の遊離硫黄を含んでいることもある。ある態様では五硫化リン反応体は、P23、P43、P47及びP49の何れも実質的に含まない。ある態様では五硫化リン反応体は遊離硫黄を実質的に含まない。
【0052】
本発明において、全潤滑油組成物の硫酸灰分は、ASTM D874によって測定したときに、約5質量%、約4質量%、約3質量%、約2質量%、又は約1質量%である。
【0053】
態様によっては潤滑油組成物は、少なくとも一種の清浄剤を含有している。エンジン堆積物の付着を低減するまたは遅らすことができる任意の化合物又は化合物の混合物を、清浄剤として使用することができる。好適な清浄剤の限定的ではない例としては、ポリオレフィン置換コハク酸イミド類またはポリアミンのコハク酸アミド類、例えばポリイソブチレンコハク酸イミド類またはポリイソブチレンアミンコハク酸アミド類、脂肪族アミン類、マンニッヒ塩基又はアミン類、およびポリオレフィン(例えば、ポリイソブチレン)マレイン酸無水物を挙げることができる。好適なコハク酸イミド清浄剤は、英国特許第960493号、欧州特許第0147240号、欧州特許第0482253号、欧州特許第0613938号、欧州特許第0557561号の各明細書及び国際公開第98/42808号パンフレットに記載されている。ある態様では清浄剤は、ポリイソブチレンコハク酸イミドなどのポリオレフィン置換コハク酸イミドである。市販の清浄添加剤の限定的ではない例としては、F7661及びF7685(インフィニウム(Infineum)社製、ニュージャージー州リンデン)、およびOMA4130D(オクテル・コーポレーション(Octel Corporation)製、英国マンチェスター)が挙げられる。
【0054】
好適な金属清浄剤の限定的ではない例としては、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート類、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート類、ホウ酸化スルホネート類、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩類、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート類、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート類、アルカノール酸の金属塩類、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩類、およびそれらの化学的及び物理的混合物を挙げることができる。好適な金属清浄剤の他の限定的ではない例としては、金属スルホネート類、フェネート類、サリチレート類、ホスホネート類、チオホスホネート類、およびそれらの組合せが挙げられる。金属は、スルホネート、フェネート、サリチレート又はホスホネート清浄剤を製造するのに適した任意の金属であってよい。好適な金属の限定的ではない例としては、アルカリ金属、アルカリ金属および遷移金属が挙げられる。ある態様では金属は、Ca、Mg、Ba、K、NaまたはLi等である。
【0055】
一般に清浄剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.001質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%である。好適な清浄剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第3章、p.75−85(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第4章、p.113−136(2003年)に記載されている。
【0056】
開示する潤滑油組成物は任意に、粒子をコロイド状態にけん濁しておくことで、スラッジやワニス、他の堆積物を防ぐことができる分散剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知悉する任意の分散剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な分散剤の限定的ではない例としては、アルケニルコハク酸イミド類、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド類、エチレンカーボネートまたはホウ酸による後処理で変性したアルケニルコハク酸イミド類、コハク酸アミド類、コハク酸エステル類、コハク酸エステル−アミド類、ペンタエリトリトール類、フェネート−サリチレート類及びそれらの後処理類似物、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、アルカリ土類金属のホウ酸塩類、水和アルカリ金属ホウ酸塩の分散物、アルカリ土類金属ホウ酸塩の分散物、ポリアミド無灰分散剤、ベンジルアミン類、マンニッヒ型分散剤、リン含有分散剤、およびそれらの組合せを挙げることができる。分散剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約7質量%、又は約0.1質量%乃至約4質量%で変えることができる。好適な分散剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第3章、p.86−90(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第5章、p.137−170(2003年)に記載されている。
【0057】
開示する潤滑油組成物は任意に、可動部分間の摩擦を小さくすることができる摩擦緩和剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知悉する任意の摩擦緩和剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な摩擦緩和剤の限定的ではない例としては、脂肪カルボン酸類;脂肪カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル類、ホウ酸化エステル類、アミド類および金属塩類等);モノ、ジ又はトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸類;モノ、ジ又はトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸の誘導体(例えば、エステル類、アミド類および金属塩類等);モノ、ジ又はトリ−アルキル置換アミン類;モノ又はジ−アルキル置換アミド類;およびそれらの組合せを挙げることができる。ある態様では摩擦緩和剤は、脂肪族アミン類、エトキシル化脂肪族アミン類、脂肪族カルボン酸アミド類、エトキシル化脂肪族エーテルアミン類、脂肪族カルボン酸類、グリセロールエステル類、脂肪族カルボン酸エステル−アミド類、脂肪イミダゾリン類、脂肪第三級アミン類(ただし、脂肪族又は脂肪基は、化合物を好適に油溶性にするために炭素原子を約8個より多く含んでいる)からなる群より選ばれる。別の態様では摩擦緩和剤は、脂肪族コハク酸又は無水物をアンモニアまたは第一級アミンと反応させることで生成した脂肪族置換コハク酸イミドを含んでいる。摩擦緩和剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約3質量%で変えることができる。好適な摩擦緩和剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.183−187(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第6章及び第7章、p.171−222(2003年)に記載されている。
【0058】
開示する潤滑油組成物は任意に、潤滑油組成物の流動点を下げることができる流動点降下剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知悉する任意の流動点降下剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な流動点降下剤の限定的ではない例としては、ポリメタクリレート類、アルキルアクリレート重合体、アルキルメタクリレート重合体、ジ(テトラ−パラフィンフェノール)フタレート、テトラ−パラフィンフェノールの縮合物、塩素化パラフィンとナフタレンの縮合物、およびそれらの組合せを挙げることができる。ある態様では流動点降下剤は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、またはポリアルキルスチレン等を含んでいる。流動点降下剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約3質量%で変えることができる。好適な流動点降下剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.187−189(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第11章、p.329−354(2003年)に記載されている。
【0059】
開示する潤滑油組成物は任意に、水や蒸気にさらされた潤滑油組成物の油−水分離を促進することができる抗乳化剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知悉する任意の抗乳化剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な抗乳化剤の限定的ではない例としては、陰イオン界面活性剤(例えば、アルキルナフタレンスルホネート類、およびアルキルベンゼンスルホネート類等)、非イオン性アルコキシル化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドの重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体等)、油溶性酸のエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、およびそれらの組合せを挙げることができる。抗乳化剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約3質量%で変えることができる。好適な抗乳化剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.190−193(1996年)に記載されている。
【0060】
開示する潤滑油組成物は任意に、油中の泡を破壊することができる消泡剤又は泡消し剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知悉する任意の消泡剤又は泡消し剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な消泡剤の限定的ではない例としては、シリコーン油又はポリジメチルシロキサン類、フルオロシリコーン類、アルコキシル化脂肪酸類、ポリエーテル類(例えば、ポリエチレングリコール類)、分岐ポリビニルエーテル類、アルキルアクリレート重合体、アルキルメタクリレート重合体、ポリアルコキシアミン類、およびそれらの組合せを挙げることができる。ある態様では消泡剤は、グリセロールモノステアレート、ポリグリコールパルミテート、トリアルキルモノチオホスフェート、スルホン化リシノール酸のエステル、ベンゾイルアセトン、メチルサリチレート、グリセロールモノオレエート、またはグリセロールジオレエートを含んでいる。消泡剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%で変えることができる。好適な消泡剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.190−193(1996年)に記載されている。
【0061】
開示する潤滑油組成物は任意に、腐食を低減することができる腐食防止剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知悉する任意の腐食防止剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な腐食防止剤の限定的ではない例としては、ドデシルコハク酸の半エステル又はアミド類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、アルキルイミダゾリン類、サルコシン類、およびそれらの組合せを挙げることができる。腐食防止剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%で変えることができる。好適な腐食防止剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.193−196(1996年)に記載されている。
【0062】
開示する潤滑油組成物は任意に、滑り金属面が極圧条件下で焼き付くのを防ぐことができる極圧(EP)剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知悉する任意の極圧剤を、潤滑油組成物に使用することができる。一般に極圧剤は、金属と化学的に結合して表面膜を形成することができる化合物であり、その表面膜が金属面を高荷重で向き合わせた際に微小突起物の融着を防ぐ。好適な極圧剤の限定的ではない例としては、動物又は植物硫化油脂、動物又は植物硫化脂肪酸エステル類、三価又は五価リン酸の完全又は部分エステル化エステル類、硫化オレフィン類、二炭化水素ポリスルフィド類、硫化ディールス・アルダー付加物、硫化ジシクロペンタジエン、脂肪酸エステルと一不飽和オレフィンの硫化又は共硫化混合物、脂肪酸と脂肪酸エステルとアルファ−オレフィンの共硫化ブレンド、官能基置換二炭化水素ポリスルフィド類、チア−アルデヒド類、チア−ケトン類、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、テルペンと非環状オレフィンの共硫化ブレンド、およびポリスルフィドオレフィン生成物、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩類、およびそれらの組合せを挙げることができる。極圧剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%で変えることができる。好適な極圧剤は、レスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第8章、p.223−258(2003年)に記載されている。
【0063】
開示する潤滑油組成物は任意に、鉄金属面の腐食を防ぐことができるさび止め添加剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知悉する任意のさび止め添加剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適なさび止め添加剤の限定的ではない例としては、油溶性のモノカルボン酸類(例えば、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、およびセロチン酸等)、油溶性のポリカルボン酸類(例えば、タル油脂肪酸、オレイン酸およびリノール酸等から生成したもの)、アルケニル基が炭素原子10個以上を含むアルケニルコハク酸類(例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、およびヘキサデセニルコハク酸等)、分子量が600乃至3000ダルトンの範囲にある長鎖アルファ、オメガ−ジカルボン酸類、およびそれらの組合せを挙げることができる。さび止め添加剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約3質量%で変えることができる。
【0064】
好適なさび止め添加剤の他の限定的ではない例としては、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエートを挙げることができる。好適なさび止め添加剤のそれ以上の限定的ではない例としては、ステアリン酸及び他の脂肪酸類、ジカルボン酸類、金属石鹸、脂肪酸アミン塩類、重質スルホン酸の金属塩類、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルが挙げられる。
【0065】
ある態様では潤滑油組成物は、少なくとも一種の多機能添加剤を含有している。好適な多機能添加剤の限定的ではない例としては、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン・モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物を挙げることができる。
【0066】
ある態様では潤滑油組成物は、少なくとも一種の粘度指数向上剤を含有している。好適な粘度指数向上剤の限定的ではない例としては、ポリメタクリレート型重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤を挙げることができる。
【0067】
ある態様では潤滑油組成物は、少なくとも一種の金属不活性化剤を含有している。好適な金属不活性化剤の限定的ではない例としては、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾール類を挙げることができる。
【0068】
開示する添加剤は、一種以上の添加剤を含む添加剤濃縮物の形であってもよい。添加剤濃縮物は、好適な希釈剤、例えば好適な粘度の炭化水素油を含んでいてもよい。そのような希釈剤は、天然油(例えば、鉱油)、合成油およびそれらの組合せからなる群より選ぶことができる。鉱油の限定的ではない例としては、パラフィン系油、ナフテン系油、アスファルト系油、およびそれらの組合せが挙げられる。合成基油の限定的ではない例としては、ポリオレフィン油(特には、水素化アルファ−オレフィンオリゴマー類)、アルキル化芳香族、ポリアルキレンオキシド類、芳香族エーテル類、およびカルボン酸エステル類(特には、ジエステル油)、およびそれらの組合せが挙げられる。ある態様では希釈剤は、天然又は合成何れかの軽質炭化水素油である。一般に希釈油の粘度は、40℃で約13センチストークス乃至約35センチストークスであってよい。
【0069】
[潤滑粘度の油]
本発明の潤滑油組成物は、潤滑粘度の基油を主要量で含有している。基油は、本明細書で使用するとき、単一の製造者により同一の仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造された潤滑油成分であって、同じ製造者の仕様を満たして、独特の処方、製造物確認番号またはその両方によって識別される潤滑油成分である、基材油または基材油のブレンドと定義される。蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を含むが、それらに限定されない各種の異なる方法を用いて、基材油を製造することができる。再精製基材油には、製造、汚染もしくは以前の使用によって混入した物質が実質的に含まれない。本発明の基油は、任意の天然又は合成の潤滑油基油留分であってよく、特には、動粘度が摂氏100度(℃)で約5センチストークス(cSt)乃至約20cSt、好ましくは約7cSt乃至約16cSt、より好ましくは約9cSt乃至約15cStのものである。炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合により製造された油、すなわちポリアルファオレフィン又はPAO、あるいはフィッシャー・トロプシュ法のような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いた炭化水素合成法により製造された油を挙げることができる。好ましい基油は、重質留分を含む場合でもその量が僅かである、例えば約100℃粘度が20cSt又はそれ以上の潤滑油留分を殆ど含むことのない油である。
【0070】
基油は、天然の潤滑油、合成の潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な基油としては、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られた基材油、並びに粗原料の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出というよりはむしろ)水素化分解することにより生成した水素化分解基材油を挙げることができる。好適な基油としては、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定された全API分類I、II、III、IV及びVに含まれるものが挙げられる。第1表に、I、II及びIII種基油の飽和度レベルおよび粘度指数を記載する。IV種基油はポリアルファオレフィン類(PAO)である。V種基油には、I、II、III又はIV種に含まれなかったその他全ての基油が含まれる。II、III及びIV種基油が本発明に使用するのに好ましいが、これらの好ましい基油は、I、II、III、IV及びV種基材油又は基油を一種以上組み合わせることにより製造することができる。
【0071】
第 1 表
I、II及びIII種基材油の飽和度、硫黄分及び粘度指数
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種 飽和度(ASTM 粘度指数(ASTM D4294、
D2007で決定) ASTM D4297又は
硫黄分(ASTM ASTM D3120で決定)
D2270で決定)
─────────────────────────────────────
I 飽和度90%未満及び/又は 80以上、120未満
硫黄分0.03%より上
II 飽和度90%以上及び 80以上、120未満
硫黄分0.03%以下
III 飽和度90%以上及び 120以上
硫黄分0.03%以下
─────────────────────────────────────
【0072】
天然の潤滑油としては、動物油、植物油(例えば、ナタネ油、ヒマシ油およびラード油)、石油、鉱油、および石炭または頁岩から誘導された油を挙げることができる。
【0073】
合成油としては、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン類、アルキルベンゼン類、ポリフェニル類、アルキル化ジフェニルエーテル類、アルキル化ジフェニルスルフィド類、並びにそれらの誘導体、それらの類似物及び同族体等を挙げることができる。また、合成潤滑油としては、アルキレンオキシド重合体、真の共重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって変性したそれらの誘導体も挙げることができる。合成潤滑油の別の好適な部類には、ジカルボン酸と各種アルコールのエステル類が含まれる。また、合成油として使用できるエステル類としては、C5−C12モノカルボン酸とポリオールおよびポリオールエーテルとから製造されたものも挙げられる。トリアルキルリン酸エステル油、例えばトリ−n−ブチルホスフェートおよびトリ−イソ−ブチルホスフェートで例示されるものも、基油として使用するのに適している。
【0074】
ケイ素系の油(例えば、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油)は、合成潤滑油の別の有用な部類を構成する。その他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル類、高分子量テトラヒドロフラン類、およびポリアルファオレフィン類等が挙げられる。
【0075】
基油は、未精製、精製、再精製の油またはそれらの混合物から誘導してもよい。未精製油は、天然原料または合成原料(例えば、石炭、頁岩またはタール・サンド・ビチューメン)から直接、それ以上の精製や処理無しに得られる。未精製油の例としては、レトルト操作により直接得られた頁岩油、蒸留により直接得られた石油、またはエステル化法により直接得られたエステル油が挙げられ、次いで各々それ以上の処理無しに使用することができる。精製油は、一つ以上の性状を改善するために一以上の精製工程で処理されていることを除いては、未精製油と同じである。好適な精製技術としては、蒸留、水素化分解、水素化処理、脱ろう、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、ろ過、およびパーコレートが挙げられ、それらは全て当該分野の熟練者に知られている。再精製油は、使用済の油を精製油を得るために用いたのと同様の方法で処理することにより得られる。これらの再精製油は、再生又は再処理油としても知られていて、しばしば使用された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする技術により更に処理される。
【0076】
ろうの水素異性化から誘導された基油も、単独で、あるいは前記天然及び/又は合成基油と組み合わせて使用することができる。そのようなろう異性化油は、天然又は合成ろうまたはそれらの混合物を水素異性化触媒を用いて水素異性化することにより生成する。
【0077】
本発明の潤滑油には主要量の基油を使用することが好ましい。主要量の基油は、本明細書で定義するとき、II、III及びIV種基油のうちの少なくとも一種を約50質量%より多く約97質量%まで含み、あるいはより好ましくは、II、III及びIV種基油のうちの少なくとも一種を約60質量%乃至約97質量%含んでいる。質量%は、本明細書で使用するとき、特に明記しない限り潤滑油に対する質量%を意味する。本発明のより好ましい態様は、潤滑油の約85質量%乃至約95質量%を占める量の基油を含有することができる。
【0078】
[油溶性モリブデン化合物]
油溶性モリブデン化合物およびモリブデン/硫黄錯体は、当該分野で知られ、例えば米国特許第4263152号(キング、外)及び第6962896号(ルーエ)の各明細書にも記載されていて、特に好ましいものである。本発明に使用することができるモリブデン化合物の他の代表的なものとしては、次のものが挙げられる:米国特許第3285942号(プライス、外)明細書に記載されているモリブデン酸グリコール錯体;モリブデンを含む過塩基性アルカリ金属及びアルカリ土類金属スルホネート、フェネート及びサリチレート組成物、例えば米国特許第4832857号(ハント、外)明細書に開示され特許請求されているもの;米国特許第4889647号(ローワン、外)明細書に記載されているように、脂肪油、ジエタノールアミンおよびモリブデン源を反応させることにより製造されたモリブデン錯体;有機アミドの無硫黄無リンオルガノモリブデン錯体、例えば米国特許第5137647号(カロル)明細書に記載されているように、脂肪酸と2−(2−アミノエチル)アミノエタノールから製造されたモリブデン含有化合物、および脂肪油または脂肪酸から誘導された脂肪残基が置換した1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリンから製造されたモリブデン含有化合物;米国特許第5143633号(ガロ、外)明細書に記載されているように、アミン、ジアミン、アルコキシル化アミン、グリコールおよびポリオールから製造された過塩基性モリブデン錯体;米国特許第5412130号(カロル)明細書に記載されている2,4−ヘテロ原子置換−モリブデナ−3,3−ジオキサシクロアルカン類;およびそれらの混合物。上記のうち代表的なモリブデン化合物は市販されていて、これらに限定されるものではないが、次のものが挙げられる:サクラ−ルーベ(Sakura-Lube、商標)700、旭電化工業(株)(Asahi Denka Kogyo K.K.、日本国東京) 製、モリブデンアミン錯体;モリブデンHEX−CEM(商標)、OMグループ(OM Group, Inc.、オハイオ州クリーブランド)社製、2−エチルヘキサン酸モリブデン;オクタン酸モリブデン、シェファード・ケミカル・カンパニー(Shepherd Chemical Company、オハイオ州シンシナティ)製、2−エチルヘキサン酸モリブデン;モリヴァン(Molyvan、商標)855、R.T.ヴァンダービルト・カンパニー(R.T. Vanderbilt Company, Inc.、コネチカット州ノーウォーク)製、有機アミドの無硫黄無リンオルガノモリブデン錯体;モリヴァン(商標)856−B、同じくR.T.ヴァンダービルト製、オルガノモリブデン錯体。
【0079】
特に好ましい油溶性モリブデン錯体は、(i)酸性モリブデン化合物と、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、ホスホルアミド、チオホスホルアミド、マンニッヒ塩基、分散型粘度指数向上剤またはそれらの混合物からなる分散剤群から選ばれた塩基性窒素化合物とを、極性促進剤の存在下で反応させてオキシモリブデン錯体にすることにより製造することができる、未硫化又は硫化オキシモリブデン含有組成物である。このオキシモリブデン錯体を硫黄含有化合物と反応させて、それにより、本発明との関係で有用な硫化オキシモリブデン含有組成物とすることができる。分散剤はポリイソブテニルコハク酸イミドであることが好ましい。オキシモリブデン又は硫化オキシモリブデン含有組成物は一般に、塩基性窒素分散剤化合物の硫黄/モリブデン錯体とみることができ、硫黄とモリブデンの質量比は好ましくは約(0.01−1.0)対1、より好ましくは約(0.05−0.5)対1であり、窒素とモリブデンの質量比は好ましくは約(1−10)対1、より好ましくは(2−5)対1である。これらオキシモリブデン組成物の正確な分子式は、確実には分かっていない。だが、モリブデンの価数が酸素または硫黄の原子で満たされ、そしてモリブデンが、これら組成物の製造に用いた塩基性窒素含有化合物の塩基性窒素原子のうちの一以上の窒素原子と錯体を形成しているか、あるいはその塩であるような化合物であると考えられる。一態様では、摂氏120度又はそれ以下の反応温度でオキシモリブデン錯体を製造し、また任意に硫化する場合でも摂氏120度又はそれ以下で反応させる。そのような方法によって、同等の圧力でもっと高温の反応条件に比べてより淡色の生成物が生じる。
【0080】
本発明に用いることができるオキシモリブデン及びオキシモリブデン/硫黄錯体を製造するのに使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物である。酸性とは、ASTM D−664又はD−2896試験の滴定法で測定できる塩基性窒素化合物と、モリブデン化合物が反応することを意味する。一般に、これらモリブデン化合物は六価であり、代表的なものは次のような組成物である:モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよび他のアルカリ金属モリブデン酸塩、および水素塩など他のモリブデン塩、例えばモリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo23Cl6、三酸化モリブデン、ビス(アセチルアセトナト)−ジオキソモリブデン(VI)、または類似の酸性モリブデン化合物。好ましい酸性モリブデン化合物は、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウムおよびアルカリ金属モリブデン酸塩である。特に好ましいのはモリブデン酸およびモリブデン酸アンモニウムである。
【0081】
オキシモリブデン錯体を製造するのに使用される塩基性窒素化合物は、少なくとも1個の塩基性窒素を持ち、そして油溶性であることが好ましい。そのような組成物の代表的な例としては、コハク酸イミド類、カルボン酸アミド類、炭化水素モノアミン類、炭化水素ポリアミン類、マンニッヒ塩基類、ホスホルアミド類、チオホスホルアミド類、ホスホンアミド類、分散型粘度指数向上剤、およびそれらの混合物がある。窒素含有組成物は何れも、組成物が塩基性窒素を含有し続ける限り、当該分野で公知の手段を用いて例えばホウ素で後処理してもよい。これらの後処理は、特にコハク酸イミド類およびマンニッヒ塩基組成物に適用できる。
【0082】
上記のモリブデン錯体を製造するのに使用することができるモノ及びポリコハク酸イミド類は、多数の文献に開示され、当該分野でもよく知られている。コハク酸イミド類のある基本的な種類、および「コハク酸イミド」なる技術用語に包含される関連物質は、米国特許第3219666号、第3172892号及び第3272746号の各明細書に教示されている。「コハク酸イミド」には、生成しうるアミド、イミド及びアミジン種の多くも含まれると当該分野では理解されている。だが、主生成物はコハク酸イミドであり、この用語は一般に、アルケニル置換コハク酸又は無水物と窒素含有化合物との反応の生成物を意味すると認められている。好ましいコハク酸イミド類は、市販されているゆえに、炭化水素基が炭素原子約24−約350個を含む炭化水素コハク酸無水物とエチレンアミンから製造されたコハク酸イミド類であり、該エチレンアミン類は特に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンおよびテトラエチレンペンタアミンで特徴づけられる。特に好ましいのは、炭素原子数70−128のポリイソブテニルコハク酸無水物と、テトラエチレンペンタアミンまたはトリエチレンテトラアミンまたはそれらの混合物とから製造されたコハク酸イミド類である。
【0083】
また、「コハク酸イミド」には、炭化水素コハク酸又は無水物と、2個以上の第二級アミノ基に加えて少なくとも1個の第三級アミノ窒素を含むポリ第二級アミンとのコオリゴマー類も含まれる。通常、この組成物の平均分子量は1500から50000の間にある。代表的な化合物としては、ポリイソブテニルコハク酸無水物とエチレンジピペラジンを反応させることで製造されたものがある。
【0084】
カルボン酸アミド組成物も、本発明に用いることができるオキシモリブデン錯体を製造するのに適した出発物質である。そのような化合物の代表例としては、米国特許第3405064号明細書に開示されているものがある。これらの組成物は通常、主脂肪鎖の脂肪族炭素原子数が少なくとも12−約350で、所望により分子を油溶性とするのに充分な脂肪族側基を持つカルボン酸又はその無水物又はエステルを、アミンまたはエチレンアミンなどの炭化水素ポリアミンと反応させて、モノ又はポリカルボン酸アミドとすることにより製造される。好ましいのは、(1)式:R’COOH(ただし、R’はC12-20アルキルである)を有するカルボン酸、またはこの酸とポリイソブテニル基が炭素原子72−128個を含むポリイソブテニルカルボン酸との混合物、および(2)エチレンアミン、特にはトリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンまたはそれらの混合物、から製造されたアミド類である。
【0085】
本発明に使用できる別の部類の化合物は、炭化水素モノアミン類および炭化水素ポリアミン類であり、好ましくは米国特許第3574576号明細書に開示されている種類のものである。炭化水素基は、アルキルまたは一乃至二箇所に不飽和があるオレフィンであることが好ましく、通常は炭素原子9−350個、好ましくは20−200個を含んでいる。特に好ましい炭化水素ポリアミン類としては、例えば、ポリ塩化イソブテニルと、ポリアルキレンポリアミン、例えばエチレンアミン、具体的にはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、2−アミノエチルピペラジン、1,3−プロピレンジアミンおよび1,2−プロピレンジアミン等とを反応させることにより誘導されたものがある。
【0086】
塩基性窒素を供給するのに使用できる別の部類の化合物としては、マンニッヒ塩基組成物がある。これらの組成物は、フェノールまたはC9-200アルキルフェノールと、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド前駆体と、アミン化合物とから製造される。アミンはモノアミンでもポリアミンでもよく、そして代表的な組成物は、アルキルアミン、例えばメチルアミンまたはエチレンアミン、具体的にはジエチレントリアミンまたはテトラエチレンペンタアミン等から製造される。フェノール系物質は硫化されていてもよいが、好ましくはドデシルフェノールまたはC80-100アルキルフェノールである。本発明に使用することができる代表的なマンニッヒ塩基類は、米国特許第4157309号及び第3649229号、第3368972号及び第3539663号の各明細書に開示されている。最後の参照特許文献には、炭素原子数が少なくとも50、好ましくは炭素原子数50−200のアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドおよびアルキレンポリアミンHN(ANH)nH(ただし、Aは炭素原子数2−6の飽和二価アルキル炭化水素であり、そしてnは1−10である)とを反応させることにより製造されたマンニッヒ塩基、および該アルキレンポリアミンの縮合物を更に尿素またはチオ尿素と反応させてもよいこと、が開示されている。マンニッヒ塩基を従来技術を用いて処理して組成物にホウ素を導入することによって、これらマンニッヒ塩基類の潤滑油添加剤製造の出発物質としての有用性を、しばしば著しく改善することができる。
【0087】
本発明に用いられるオキシモリブデン錯体を製造するのに使用できる別の部類の組成物としては、ホスホルアミド類およびホスホンアミド類、例えば米国特許第3909430号及び第3968157号明細書に開示されているものがある。これらの組成物は、少なくとも1個のP−N結合を持つリン化合物を生成させることで製造することができる。例えば、酸塩化リンと炭化水素ジオールをモノアミンの存在下で反応させることにより、あるいは酸塩化リンと二官能性第二級アミンおよび一官能性アミンとを反応させることにより製造することができる。チオホスホルアミド類は、炭素原子2−450個又はそれ以上を含む不飽和炭化水素化合物、例えばポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、エチレン、1−ヘキセン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレンおよび4−メチル−1−ペンテン等と、五硫化リンおよび前に明示した窒素含有化合物、特にはアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルポリアミン、またはアルキレンアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンおよびテトラエチレンペンタアミン等とを反応させることにより製造することができる。
【0088】
本発明に用いられるモリブデン錯体を製造するのに使用できる別の部類の窒素含有組成物としては、いわゆる分散型粘度指数向上剤(VI向上剤)が挙げられる。これらVI向上剤は普通は、炭化水素重合体、特には、脂環式又は脂肪族オレフィン又はジオレフィン類などの一以上のコモノマーから誘導された付加単位を任意に含む、エチレンおよび/またはプロピレンから誘導された重合体を官能化することにより製造される。官能化は、通常は少なくとも1個の酸素原子を持つ反応性部位(群)を、重合体に導入する各種の方法により行うことができる。次いで、重合体を窒素含有源と接触させて重合体の主鎖に窒素含有官能基を導入する。普通用いられる窒素源としては、任意の塩基性窒素化合物、特には前述したような窒素含有化合物及び組成物が挙げられる。好ましい窒素源は、エチレンアミン類などのアルキレンアミン類、アルキルアミン類およびマンニッヒ塩基類である。
【0089】
本発明に使用するのに好ましい塩基性窒素化合物は、コハク酸イミド類、カルボン酸アミド類およびマンニッヒ塩基類である。より好ましくは、平均分子量が1000又は1300又は2300のコハク酸イミド類、およびそれらの混合物である。そのようなコハク酸イミド類は、当該分野で知られているようにホウ素またはエチレンカーボネートで後処理することができる。
【0090】
本発明のオキシモリブデン錯体を硫化することもできる。本発明に用いられるオキシモリブデン/硫黄錯体を製造するための代表的な硫黄源としては、硫黄、硫化水素、一塩化硫黄、二塩化硫黄、五硫化リン、R”2X(ただし、R”は炭化水素基、好ましくはC1-40アルキルであり、そしてxは少なくとも2である)、(NH42y(ただし、yは少なくとも1である)などの無機硫化物及び多硫化物、チオアセトアミド、チオ尿素、および式:R”SH(ただし、R”は上に定義した通りである)を有するメルカプタン類がある。また、従来の硫黄含有酸化防止剤、例えばワックススルフィド及びポリスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化カルボン酸及びエステル類および硫化エステル・オレフィン類、および硫化アルキルフェノール類及びそれらの金属塩も硫化剤として使用できる。
【0091】
硫化脂肪酸エステル類は、硫黄、一塩化硫黄および/または二塩化硫黄と不飽和脂肪酸エステルとを高温で反応させることにより製造される。代表的なエステル類としては、C8−C24不飽和脂肪酸、例えばパルミトオレイン酸、オレイン酸、リシノール酸、ペトロセリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、オレオステアリン酸、リカン酸、パラナリン酸、タリル酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、セトレイン酸等のC1−C20アルキルエステル類を挙げることができる。混合不飽和脂肪酸エステル類、例えばタル油、アマニ油、オリーブ油、ヒマシ油、ピーナッツ油、ナタネ油、魚油およびマッコウ鯨油等の動物脂肪および植物油から得られたものでは、特に優れた結果が得られている。典型的な脂肪酸エステル類としては、ラウリルタレート、メチルオレエート、エチルオレエート、ラウリルオレエート、セチルオレエート、セチルリノレエート、ラウリルリシノレエート、オレイルリノレエート、オレイルステアレート、およびアルキルグリセリド類を挙げることができる。
【0092】
架橋硫化エステルオレフィン類、例えばC10−C25オレフィン類と、C10−C25脂肪酸とC10−C25アルキル又はアルケニルアルコールの脂肪酸エステル類(ただし、脂肪酸および/またはアルコールは不飽和である)との硫化混合物も使用することができる。
【0093】
硫化オレフィン類は、C3−C6オレフィンまたはそれから誘導された低分子量ポリオレフィンと、硫黄、一塩化硫黄および/または二塩化硫黄などの硫黄含有化合物との反応により製造される。
【0094】
また、芳香族及びアルキルスルフィド類、例えばジベンジルスルフィド、ジキシリルスルフィド、ジセチルスルフィド、ジパラフィンワックススルフィド及びポリスルフィド、および分解ワックス−オレフィンスルフィド類等も使用できる。それらは、オレフィン不飽和化合物などの出発物質を硫黄、一塩化硫黄および二塩化硫黄で処理することにより製造することができる。特に好ましいのは、米国特許第2346156号明細書に記載されているパラフィンワックスチオマー類である。
【0095】
硫化アルキルフェノール及びそれらの金属塩類としては、硫化ドデシルフェノール及びそのカルシウム塩などの組成物が挙げられる。アルキル基は通常は炭素原子9−300個を含んでいる。金属塩は、I族又はII族の塩であることが好ましく、特にはナトリウム、カルシウム、マグネシウムまたはバリウムである。
【0096】
好ましい硫黄源は、硫黄、硫化水素、五硫化リン、R'"2Z(ただし、R'"は炭化水素基、好ましくはC1−C10アルキルであり、そしてzは少なくとも3である)、R'"がC1−C10アルキルであるメルカプタン、無機硫化物及び多硫化物、チオアセトアミド、およびチオ尿素である。最も好ましい硫黄源は、硫黄、硫化水素、五硫化リンおよび無機硫化物及び多硫化物である。
【0097】
本発明に用いられるモリブデン錯体の製造に使用される極性促進剤は、酸性モリブデン化合物と塩基性窒素化合物間の相互作用を促すものである。多種多様のそのような促進剤は当該分野の熟練者によく知られている。代表的な促進剤としては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ブチルセロソルブ、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、メチルカルビトール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラヒドロフラン、および水がある。好ましいのは水およびエチレングリコールである。特に好ましいのは水である。通常は極性促進剤を反応混合物に別個に添加するが、特に水の場合には促進剤は、無水ではない出発物質の成分として、あるいは(NH46Mo724・H2Oなど酸性モリブデン化合物の水和水として存在してもよい。また、水を水酸化アンモニウムとして添加してもよい。
【0098】
本発明に用いられるオキシモリブデン錯体を製造する方法は、塩基性窒素含有化合物を含む酸性モリブデン前駆体と極性促進剤の溶液を、希釈剤を用いてまたは用いないで調製することにある。必要ならば、希釈剤を用いて撹拌を容易にするのに適した粘度にする。代表的な希釈剤は、潤滑油、および炭素と水素のみを含む液体化合物である。所望により、水酸化アンモニウムも反応混合物に加えてモリブデン酸アンモニウムの溶液としてもよい。この反応は様々な温度で行えるが、一般には混合物の融点以下で還流温度までで行なう。通常は大気圧で行うが、所望によりそれより高い又は低い圧力を使用してもよい。この反応混合物を任意に、前に明示した硫黄源を用いて、硫黄源が酸性モリブデン化合物および塩基性窒素化合物と反応するのに適した圧力と温度で処理してもよい。場合によっては、硫黄源との反応終了前に反応混合物から水を取り除くことが望ましい。オキシモリブデン錯体の好ましい改良製造法では、反応器をかき混ぜながら摂氏約120度以下、好ましくは摂氏約70度乃至摂氏約90度の温度に加熱する。次いで、酸化モリブデンまたは他の好適なモリブデン源を反応器に入れ、モリブデンが充分に反応するまで温度を摂氏約120度以下、好ましくは摂氏約70度乃至摂氏約90度に維持する。反応混合物から余分な水を取り除く。除去方法としては、これらに限定されるものではないが、反応器の温度を摂氏約120度以下、好ましくは摂氏約70度から摂氏約90度の間の温度に維持しながらの、減圧蒸留または窒素ストリッピングを挙げることができる。モリブデン含有組成物の色度を低く維持するために、ストリッピング工程の温度を摂氏約120度以下の温度に保つ。通常は大気圧で行うが、それより高い又は低い圧力を使用してもよい。ストリッピング工程は一般に約0.5乃至約5時間かけて行なう。
【0099】
所望により、この反応混合物を前に明示した硫黄源を用いて、硫黄源が酸性モリブデン化合物および塩基性窒素化合物と反応するのに適した圧力と温度、摂氏約120度を越えない温度で処理することにより、この生成物を硫化することができる。硫化工程は一般には約0.5乃至約5時間、好ましくは約0.5乃至約2時間かけて行なう。場合によっては、硫黄源との反応終了前に反応混合物から極性促進剤(水)を除去することが望ましい。
【0100】
反応混合物において、モリブデン化合物と塩基性窒素化合物との比は重要ではないが、塩基性窒素に対してモリブデンの量が増加するにつれて生成物のろ過がより難しくなる。モリブデン成分がおそらくはオリゴマー化するので、組成物中に容易に保持できる限り多量のモリブデンを加えることが有利である。通常、反応混合物には、塩基性窒素原子当りモリブデン0.01乃至2.00原子が入っている。好ましくは塩基性窒素原子当りモリブデン0.3乃至1.0、最も好ましくは0.4乃至0.7原子が反応混合物に加えられている。
【0101】
任意に硫化した場合に、硫化オキシモリブデン含有組成物は一般に、塩基性窒素分散剤化合物の硫黄/モリブデン錯体とみなすことができ、硫黄とモリブデンの質量比は好ましくは約(0.01−1.0)対1、より好ましくは約(0.05−0.5)対1であり、窒素とモリブデンの質量比は好ましくは約(1−10)対1、より好ましくは(2−5)対1である。硫黄の極めて少ない取込みでは、硫黄とモリブデンの質量比は(0.01−0.08)対1であってよい。
【0102】
本発明の硫化及び未硫化オキシモリブデン錯体は、一般に潤滑油に0.01乃至10%の量で用いられ、より好ましくは0.04乃至1質量%の量で用いられる。
【0103】
有機基質の耐酸化性を助成するために、成分a)と成分b)の相乗的組合せに追加の成分を加えてもよく、相乗作用を向上させることが可能である。特に好ましいのは、ペルオキシラジカル捕捉剤として作用する成分である。これらのヒドロペルオキシド分解剤は、ヒドロペルオキシドを非ラジカル生成物に変換し、それにより連鎖生長反応を防ぐ。普通は有機硫黄化合物および有機リン化合物がこの目的に役立ち、多数の好適な化合物をオキシモリブデン成分に関連して前記に明らかにしているから、改めて繰り返すまでもない。特に好ましい有機リン化合物は、金属ジチオリン酸塩類、リンエステル類(リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、ホスフィン酸エステル類、酸化ホスフィン類、亜リン酸エステル類、亜ホスホン酸エステル類、亜ホスフィン酸エステル類およびホスフィン類等を含む)、アミンリン酸エステル類及びアミンホスフィン酸エステル類、ホスホロモノチオン酸エステルおよびホスホロジチオン酸エステルを含む硫黄含有リンエステル類、ホスホルアミド類、およびホスホンアミド類等からなる群より選ばれる油溶性のリン含有耐摩耗性化合物である。より好ましくはリン含有化合物は金属ジチオリン酸塩であり、更に好ましくはジチオリン酸亜鉛である。好適なリン化合物は米国特許第6696393号明細書に開示されている。
【0104】
下記の添加剤成分は、本発明の潤滑油添加剤と組み合わせて好ましく用いることができる成分の例である。本発明を説明するためにこれら添加剤の例を記すのであって、これらは本発明を限定しようとするものではない。
【0105】
(A)無灰分散剤:アルケニルコハク酸イミド類、エチレンカーボネートなど他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド類、ポリコハク酸イミド類、およびホウ酸で変性したアルケニルコハク酸イミド類、アルケニルコハク酸エステル。
【0106】
(B)酸化防止剤:
1)フェノール型(フェノール系)酸化防止剤:4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)。
【0107】
2)ジフェニルアミン型酸化防止剤:アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化α−ナフチルアミン。
【0108】
3)その他のタイプ:金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、およびメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)。
【0109】
(C)さび止め添加剤(さび止め剤):
1)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
【0110】
2)その他の化合物:ステアリン酸および他の脂肪酸類、ジカルボン酸類、金属石鹸、脂肪酸アミン塩類、重質スルホン酸の金属塩類、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0111】
(D)抗乳化剤:アルキルフェノールとエチレンオキシドの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0112】
(E)極圧剤(EP剤):硫化油、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛。
【0113】
(F)摩擦緩和剤:脂肪アルコール、脂肪酸、アミン、ホウ酸化エステル、および他のエステル類。
【0114】
(G)多機能添加剤:硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン・モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0115】
(H)粘度指数向上剤:ポリメタクリレート型重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤。
【0116】
(I)流動点降下剤:ポリメチルメタクリレート。
【0117】
(K)消泡剤:アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【0118】
(L)摩耗防止剤:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP、第一級アルキル型及び第二級アルキル型)。
【実施例】
【0119】
本発明について以下の実施例により更に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。以下の限定的ではない製造法および実施例にて本発明の更なる理解を得ることができる。逆に特に断わらない限り、温度および温度範囲は全て摂氏度系を意味し、「周囲温度」又は「室温」は約20乃至25℃を意味する。「パーセント又は%」は質量%を意味し、「モル」はグラムモルを意味する。「当量」は、その実施例で一定モルまたは一定質量又は容量で記した前後の反応体のモル数と、モル数が等しい試薬の量を意味する。
【0120】
本明細書に開示する潤滑油組成物は、当該分野の熟練者に知られている任意の潤滑油製造方法により製造することができる。態様によっては基油を、N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミン化合物それのみと、あるいは他の添加剤成分(群)とも組み合わせて、ブレンドまたは混合することができる。N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミン化合物および任意の添加剤を、基油に別個に加えてもあるいは同時に加えてもよく、一回以上の添加は任意の順序であってよい。態様によっては、N,N,N’,N’−テトラアルキル−ナフタレン−1,8−ジアミン化合物または如何なる固体添加剤でも基油に可溶化するのを、混合物を約25℃乃至約200℃、約50℃乃至約150℃、又は約75℃乃至約125℃の温度に加熱することで助長してもよい。
【0121】
成分をブレンド、混合または可溶化するのに、当該分野の熟練者に知られている任意の混合装置または分散装置を用いることができる。ブレンダ、撹拌器、分散機、ミキサ(例えば、遊星形ミキサおよび二段遊星形ミキサ)、ホモジナイザ(例えば、ガウリン・ホモジナイザおよびラニー・ホモジナイザ)、微粉砕機(例えば、コロイドミル、ボールミルおよびサンドミル)、もしくは当該分野で知られている他の任意の混合又は分散装置を用いて、ブレンド、混合または可溶化を行うことができる。
【0122】
[性能例]
選択した実施例の生成物の酸化研究を、E.S.ヤマグチ(E.S.Yamaguchi)、外著、トライボロジー・トランスアクションズ(Tribology Transactions)、第42(4)巻、p.895−901(1999年)に記載されているようにして、バルク油酸化台上試験にて行った。この試験では、定圧で一定質量の油による酸素消費の速度をモニタした。試料25グラム当りの急速酸素消費に要する時間(誘導時間)を、171℃、酸素圧1.0気圧で測定した。試料を毎分1000回転で撹拌した。だが、結果は、試料100グラム当りの急速酸素消費に要した時間で報告する。油は、油溶性ナフテネートとして加えた触媒を含み、鉄26ppm、銅45ppm、鉛512ppm、マンガン2.3ppmおよびスズ24ppmであった。
【0123】
(性能例1−13)
成分A)のシグマ−アルドリッチ社よりプロトン−スポンジ(商品名)として販売されている、N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミンと、成分B1)のチバ−ガイギー(Ciba-Geigy)社よりイルガノックス(Irganox、商標)L−57として販売されている、市販のアルキル化ジフェニルアミン(ジフェニルアミンを2,4,4−トリメチルペンテンでアルキル化することにより製造されたt−ブチルとt−オクチル−の混合物)、または成分B2)のケムチュラ(Chemtura)社よりノーガルーベ(Naugalube、商標)438Lとして販売されている、市販のビス(ノニルフェニルアミン)アミンとの混合物の性能を酸化台上試験で評価するために、基準配合物を製造した。基準配合物−配合物Aは、2+種基油中に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛12.5ミリモル/kg、ポリイソブテニルコハク酸イミド5.0%、過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤35.0ミリモル/kg、カルシウムフェネート清浄剤15.0ミリモル/kg、およびVI向上剤0.3%を含有した。基準配合物Aを上記のバルク油酸化台上試験で試験して、その結果、急速O2消費に7.0時間の値を得た。この基準(配合物A)に対して、成分A)の量を変え、また添加成分B1)又はB2)の量も変えた。下記第1表および第2表に、その結果を記載する。
【0124】
第 1 表
────────────────────────────────────
性能 配合物Aに仕上げ処理した相乗混合物 結果
例 成分A) 成分B1) 急速O2
N,N,N’,N’−テトラ アルキル化 消費時間
メチル−ナフタレン−1,8 ジフェニルアミン1
−ジアミン濃度(質量%) 濃度(質量%)
────────────────────────────────────
0 0 7.0
1 0 0.5 15.0
2 0.5 0 15.0
3 0.5 0.5 42.0
4 1.0 0.5 66.0
────────────────────────────────────
1:イルガノックス(商標)L−57はチバ−ガイギー社より市販されている。
【0125】
第 2 表
────────────────────────────────────
性能 配合物Aに仕上げ処理した相乗混合物 結果
例 成分A) 成分B2) 急速O2
N,N,N’,N’−テトラ アルキル化 消費時間
メチル−ナフタレン−1,8 ジフェニルアミン1
−ジアミン濃度(質量%) 濃度(質量%)
────────────────────────────────────
0 0 7.0
5 0 0.5 12.0
6 0.5 0 15.0
7 0.25 0.5 16.0
8 0.5 0.5 19.0
9 0.75 0.5 33.0
10 1.0 0.5 43.0
11 1.25 0.5 49.0
12 1.5 0.5 67.0
13 2.0 0.5 116.0
────────────────────────────────────
1:ノーガルーベ(商標)438Lはケムチュラ社より市販されている。
【0126】
N,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミンの優れた酸化についての性能は、例2で明らかである。ジフェニルアミンと組み合わせたN,N,N’,N’−テトラメチル−ナフタレン−1,8−ジアミンの優れた酸化についての性能は、例3、4及び7−13で明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む潤滑油組成物:
a)少なくとも一種の潤滑粘度の油、
b)下記I式に従う油溶性の酸化防止剤、
【化1】



(式中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、各々炭素原子数1乃至20のアルキル基群から選ばれる)、および
c)酸化防止剤、分散剤および清浄剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤。
【請求項2】
少なくとも一種の添加剤が酸化防止剤である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
酸化防止剤が、下記の成分を含む混合物である請求項2に記載の潤滑油組成物:
a)0.1乃至10質量%の下記I式に従う第一の酸化防止剤、
【化2】

(式中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、各々炭素原子数1乃至20のアルキル基群から選ばれる)、および
b)0.01乃至10質量%の下記式から選ばれる第二の酸化防止剤、
【化3】

(式中、RaおよびRbは各々独立に、炭素原子数6乃至10のアリールであって、アリールは未置換でも、あるいは各々炭素原子数1乃至20の1又は2個のアルキル基で置換されていてもよい)。
【請求項4】
成分a)と成分b)の比が、約0.75:1乃至約5:1である請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
組成物における酸化防止剤の混合物の全質量%が、5質量%未満である請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
1、R2、R3およびR4が各々独立に、各々炭素原子数1乃至10のアルキル基群から選ばれる請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
成分b)が、ジフェニルアミン、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、トリアルキル化ジフェニルアミンおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
成分b)が、ブチルジフェニルアミン、ジ−ブチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ−オクチルジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、ジ−ノニルジフェニルアミン、t−ブチル−t−オクチルジフェニルアミンおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
成分b)が、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、フェニル−ベータ−ナフチルアミン、t−オクチル化N−フェニル−1−ナフチルアミンからなる群より選ばれる請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
上記の少なくとも一種の酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
さらに、油溶性のモリブデン化合物を含む請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
油溶性モリブデン化合物が、(i)酸性モリブデン化合物と、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、ホスホルアミド、チオホスホルアミド、マンニッヒ塩基、分散型粘度指数向上剤またはそれらの混合物からなる分散剤群から選ばれた塩基性窒素化合物とを、極性促進剤の存在下で反応させてオキシモリブデン錯体とすることにより製造された、未硫化又は硫化オキシモリブデン含有組成物である請求項11に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
塩基性窒素化合物がコハク酸イミドである請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
さらに、金属ジチオリン酸塩類、リンエステル類、アミンリン酸エステル類及びアミンホスフィン酸エステル類、硫黄含有リンエステル類、ホスホルアミド類およびホスホンアミド類からなる群より選ばれた、油溶性のリン含有耐摩耗性化合物を含んでいる請求項2に記載の組成物。
【請求項15】
アミン系又はフェノール系酸化防止剤が配合された潤滑油の酸化防止性能を改善する方法であって、該潤滑油に下記I式に従う油溶性の酸化防止剤を供給することにより改善する方法:
【化4】



(式中、R1、R2、R3およびR4は各々独立に、各々炭素原子数1乃至20のアルキル基群から選ばれる)。

【公開番号】特開2009−149892(P2009−149892A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−324547(P2008−324547)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】