説明

テルペン系液状樹脂およびそれを配合してなる粘着剤組成物

【課題】本発明は、新規な液状樹脂およびそれを配合してなる粘着物性の優れた粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】テルペン単量体と芳香族単量体を、フリーデルクラフト触媒存在下に共重合させて得られるテルペン系液状樹脂である。このテルペン系液状樹脂は、水素添加されていることが好ましい。また、テルペン単量体が、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン及びd−リモネンから選ばれた少なくとも1種であり、芳香族単量体がスチレンであることが好ましい。また、上記テルペン系液状樹脂をエラストマーまたはアクリルポリマー100重量部に対して0.1〜50重量部の割合で配合してなる粘着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルペン系液状樹脂およびそれを配合してなる粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石油系の液状樹脂は各種開発されている。(特許文献1)これら、液状樹脂は、各種オイルと比べて粘度が高く、また、粘着付与樹脂のような樹脂と比較すると粘度が低く、粘度調整等の各種分野で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2676053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な液状樹脂およびそれを配合してなる粘着物性の優れた粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、次のようなテルペン系液状樹脂およびそれを配合してなる粘着剤組成物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、テルペン単量体と芳香族単量体を、フリーデルクラフト触媒存在下に共重合させて得られるテルペン系液状樹脂である。
このテルペン系液状樹脂が水素添加されていることが好ましい。
また、テルペン単量体が、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン及びd−リモネンから選ばれた少なくとも1種であり、芳香族単量体がスチレンであることが好ましい。
また、上記テルペン系液状樹脂をエラストマーまたはアクリルポリマー100重量部に対して0.1〜50重量部の割合で配合してなる粘着剤組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のテルペン系液状樹脂は、オイル等と同様に、各種ポリマーやゴム、粘着付与樹脂等に幅広く相溶可能であり、相溶化剤、粘度調整剤として好適である。したがって、接着剤の他、塗料、インキ、コーティング材料、シーリング材やバインダー等としても、接着性などの性能を活かして用いることが可能である。
また、本発明のテルペン系液状樹脂を配合した粘着剤組成物は、ボールタックやポリエチレン等低エネルギー表面への密着性等に優れている。
【0007】
ここで、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるテルペン単量体としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネン、デルタスリカレン、ミルセン、α−テルピネン、ターピノーレン、アロオシメン等のモノテルペン類があげられる。
好ましくは、価格面等から、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネンである。
【0008】
本発明で用いられる芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン、2−フェニル−ブテン、ジビニルベンゼン、イソプロペニルトルエン等である。
好ましくは、スチレンである。
また、本発明では、上記、テルペン単量体、芳香族単量体以外にも、各種重合性モノマーを添加し、反応させてもよい。
【0009】
本発明のテルペン単量体と芳香族単量体の割合は、モル比で、7/1〜1/12である。好ましくは、2/1〜1/3である。
7/1を超えると、收率が低下し、1/12未満であると、高分子量化する。
【0010】
通常、芳香族系炭化水素類、アルコール類、エーテル類などの溶媒を使用する。
【0011】
本発明で用いられるフリーデルクラフト触媒としては、無水塩化アルミニウム、各種BF3錯体、BF3エーテル、BF3、BF3ガス、四塩化チタン、硫酸などが挙げられる。
【0012】
反応温度は、20〜80℃、好ましくは、40〜70℃である。
80℃を超えると、発熱が大きく危険性が増し、20℃未満であると、高分子量化する。
反応形態は、バッチ式あるいは連続式、どちらで行ってもよい。
【0013】
本発明のテルペン系液状樹脂の粘度は、139000〜300000mPa・sが好ましく、分子量は、数平均分子量Mnは250〜600が好ましい。粘度が300000mPa・sを超えると、室温での取り扱いが難しく、10000mPa・s未満であると、加熱減量が大きくなる。
【0014】
本発明のテルペン系液状樹脂は水添し、透明化することが好ましい。
水添する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属またはそれらを活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの坦体上に担持したものを触媒として使用して行う方法が挙げられる。
この時、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式にすることも、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式にすることも可能であり、反応形式に特に制限はない。
【0015】
触媒の使用量は、反応がバッチ方式の場合、原料であるテルペン系液状樹脂に対し0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜20重量%である。触媒量が0.1重量%未満では、水素化反応速度が遅くなり、一方、50重量%を超えても経済的に不適であり好ましくない。
【0016】
水添の際、反応溶媒は用いなくてもよいが、通常、アルコール類、エーテル類、エステル類、飽和炭化水素類を使用してもよい。
【0017】
水添の際の反応温度は、通常20〜300℃、好ましくは、50〜250℃である。反応温度が20℃未満であると、水素化速度が遅くなり、一方、300℃を超えると、水添物の分解が多くなり、分子量の低下、回収率の低下を招くため好ましくない。
【0018】
水添の際の水素圧は、通常5〜300kg/cm2(0.49〜29.40MPa)である。好ましくは、30〜100kg/cm2である。5kg/cm2未満であると、水素化速度が遅くなり、一方、300kg/cm2を超えると、水添物の分解が多くなるため好ましくない。
【0019】
本発明の水添されたテルペン系液状樹脂の色相は、APHA 5〜100が好ましい。
【0020】
本発明のテルペン系液状樹脂を配合した粘着剤組成物について説明する。
本発明の粘着剤組成物は、天然ゴム、合成ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエラストマーまたはアクリルモノマーを主剤とし、これに必要に応じて可塑剤、軟化剤、顔料、充填剤、希釈剤、架橋剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、剥離調整剤、静電防止剤等の添加剤を含ませてなるもので、溶液型、水分散型、UV硬化型、ホットメルト型等のいずれの形態であってもよい。
【0021】
エラストマーやアクリル系ポリマー、上記種々の添加剤は、従来公知のものをいずれも使用でき、それらの種類や配合については特に限定されずに、1種類または2種類以上使用可能である。
【0022】
本発明の粘着剤組成物は、上記エラストマーやアクリル系ポリマー100重量部に対して、本発明のテルペン系液状樹脂を0.1〜50重量部配合したものである。
好ましくは、1〜30重量部、より好ましくは、5〜20重量部である。0.1重量部未満では、テルペン系液状樹脂を配合した効果が分かりづらくなる。50重量部を超えると、粘着剤の粘度が低下し、ボールタック、接着力、保持力の粘着特性のバランスが悪くなる。
【0023】
本発明の粘着剤組成物は、粘着シートまたは粘着テープに塗布して使用する事も出来る。その場合、支持体としては、特に制限されないが、例えば、プラスチックフィルム、紙、不織布のほか、金属箔やプラスチック製あるいはゴム製の発泡体などのシートあるいはテープ状のものが等が適用できる。
【0024】
本発明の粘着剤組成物を上記支持体へ加工する方法としては、特に限定されない。
例えば、アクリル系ポリマーを主剤とする溶剤型アクリル系粘着剤組成物の製造方法としては、有機溶剤、例えばトルエンや酢酸エチルと、アクリル系ポリマーと本発明のテルペン系液状樹脂および架橋剤の混合物を攪拌溶解させ、固形分含有量10〜70重量%の粘着液として調製する。このように調整した粘着剤組成物を、例えばロールコーターやバーコーターなどで支持体に塗布し、加熱して溶剤を揮散させることにより粘着テープまたは粘着シートが得られる。粘着剤層の厚みは特に制限されないが、通常0.01〜1.0mm程度である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。尚、実施例中、部および%は特に断らない限り、重量基準を示す。
【実施例】
【0026】
実施例1
(テルペン系液状樹脂Aの合成)
温度計、撹拌装置、滴下ロートおよび冷却管を備えた内容積2リットルの4つ口フラスコを使用して、トルエン800g(水分:900ppmに調整)、触媒としてBF3ガス、6.0gを仕込んだのち、60℃の温度に保持しながら攪拌し、α−ピネン(ヤスハラケミカル(株)製α−ピネン、純度95%)160g(約1.2モル相当)、β−ピネン(ヤスハラケミカル(株)製β−ピネン、純度95%)160g(約1.2モル相当)、d−リモネン(ヤスハラケミカル(株)製d−リモネン、純度95%)160g(約1.2モル相当)とスチレン(新日鐵化学(株)製スチレン、純度99%)320g(約3.4モル相当)の混合液を3時間かけて滴下し、その後、1時間撹拌して反応させた。
次いで、該混合液を水洗し、触媒を除いた後、10mmHgの減圧条件下、最高到達温度200℃でトルエンおよび未反応モノマー、低分子量化合物を蒸留により留去し、淡黄色樹脂状物のテルペン系液状樹脂A、760gを得た。このテルペン系液状樹脂のTg(ガラス転移温度)は−20℃、GPCによる数平均重量分子量は300、重量平均分子量は400、Z平均重量分子量は500、臭素価53(gBr2/100g)、粘度100000mPa・s(20℃)であった。
【0027】
実施例2
(テルペン系液状樹脂Aの水添)
実施例1で得られたテルペン系液状樹脂Aを249g、粉末状の安定化ニッケル触媒12.5gを仕込み、次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス10kg/cm2(約1MPa)の圧力をかけながら導入した。そして攪拌しながら加熱し250℃となったところで、水素の圧力を50kg/cm2とし、吸収された水素を補うことで圧力を50kg/cm2に保ちながら1.5時間反応させ、水添されたテルペン系液状樹脂Aを212.2g得た。
この水添されたテルペン系液状樹脂AのTgは、−10℃、GPCによる数平均重量分子量は310、重量平均分子量は400、Z平均重量分子量は520、臭素価27(gBr2/100g)、粘度250000mPa・s(20℃)、色相はAPHAが45であった。
【0028】
以下に応用例(実施例)をあげて、テルペン系液状樹脂を配合してなる粘着剤組成物を具体的に説明する。なお、以下において部とあるのは重量部を意味する。
【0029】
応用例1〜2、比較応用例1〜2
以下応用例及び比較応用例においては下記配合からなる粘着剤組成物を38μm厚のPETフィルム上に30μm厚の粘着剤層となるように塗工・乾燥して粘着シートを作成した。
【0030】
応用例1
BA系アクリル粘着剤A :100部
(注1:製造方法記載)
テルペン系液状樹脂A :20部
イソシアネート架橋剤 :4.5部
(商品名;コロネートL、日本ポリウレタン社製)
注1:
BA系アクリル粘着剤Aの製造方法:
n−ブチルアクリレート100重量部、アクリル酸5重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2重量部および重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.2重量部をトルエン/酢酸エチル=80/20(重量比)の合計200重量部の混合溶媒中に添加した。その後、60℃で6時間溶液重合してBA系アクリル粘着剤Aを得た。得られた溶液中のBA系アクリル粘着剤Aはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は60万であった。
【0031】
応用例2
BA系アクリル粘着剤A :100部
(注1:製造方法記載)
テルペンフェノール樹脂 :10部
(商品名;ポリスターT115、ヤスハラケミカル社製)
テルペン系液状樹脂A :10部
イソシアネート架橋剤 :2部
(商品名;コロネートL、日本ポリウレタン社製)
【0032】
比較応用例1
BA系アクリル粘着剤A :100部
(注1:製造方法記載)
テルペンフェノール樹脂 :20部
(商品名;ポリスターT115、ヤスハラケミカル社製)
イソシアネート架橋剤 :2部
(商品名;コロネートL、日本ポリウレタン社製)
【0033】
比較応用例2
BA系アクリル粘着剤A :100部
(注1:製造方法記載)
ロジンエステル樹脂 :20部
(商品名;スーパーエステルA100、荒川化学社製)
イソシアネート架橋剤 :2部
(商品名;コロネートL、日本ポリウレタン社製)
【0034】
応用例及び比較応用例で得られた粘着シートについて、以下に記載した方法によりボールタック、接着力(対SUS、PE)、保持力(対SUS、PE)を評価した。これらの結果は表1に示される通りであった。
【0035】
(ボールタック)
JIS−Z−0237に準じ、幅25mm、長さ約200mmに切断したシートを30°の傾斜面に留め、助走距離100mmの地点からボールを転がして糊面の100mm内で止まったときの最大のボール番号を数値とした。その際の測定温度は5℃で行った。
【0036】
(接着力)
幅25mm、長さ約200mmに切断したシートをSUS板もしくはPE板に23℃雰囲気下で2kgのローラーを2往復させて貼り合わせ、貼り合わせ30分後に23℃雰囲気下で180°ピール接着力を測定した。測定には引っ張り試験機を使用し、引っ張り速度は300mmで行った。
【0037】
(保持力)
幅25mm、長さ約200mmに切断したシートをSUS板もしくはPE板に40℃雰囲気下で2kgのローラーを2往復させて貼り合わせた。貼り合わせた面積は25mm×25mmで、貼り合わせ30分後1kgの荷重をかけて試験片が被着体からずれて落下するまでの時間を測定した。測定時間は最高48時間とした。
【0038】
【表1】

【0039】
表1からも明らかなように本発明で作成した応用例1の粘着シートではタックとPEに対する密着性は向上した。さらに応用例2のシートでは柔らかさはそのままでSUSに対する接着力も向上した。
【0040】
本発明のテルペン系液状樹脂を配合してなる粘着剤組成物は、上記の如き使用方法でBA系の接着剤に柔らかさと、SUS、PEを問わず接着性を向上させる効果を持っている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のテルペン系液状樹脂は、各種ポリマーやゴム、粘着付与樹脂等に相溶可能であり、接着剤、粘着剤、樹脂改質剤、塗料、防水剤、止水剤等、きわめて広範な用途として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルペン単量体と芳香族単量体を、フリーデルクラフト触媒存在下に共重合させて得られるテルペン系液状樹脂。
【請求項2】
請求項1記載の液状樹脂を水素添加して得られるテルペン系液状樹脂。
【請求項3】
テルペン単量体が、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン及びd−リモネンから選ばれた少なくとも1種であり、芳香族単量体がスチレンである請求項1もしくは請求項2いずれか記載のテルペン系液状樹脂。
【請求項4】
エラストマーまたはアクリル系ポリマー100重量部に対して、請求項1〜3のいずれかに記載のテルペン系液状樹脂を0.1〜50重量部の割合で配合してなる粘着剤組成物。

【公開番号】特開2010−215880(P2010−215880A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93434(P2009−93434)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】