説明

テレビ受信機

【課題】スノーノイズ表示時に画面から放射される電磁波によるEMIを低減しつつ、ユーザの利便性を損なうことの無いテレビ受信機を提供する。
【解決手段】受信したテレビ放送信号から映像信号を抽出して所定の画面に映像表示させるテレビ受信機において、マイコン17は、画面に表示される映像にスノーノイズが含まれているか否かを検出し、スノーノイズを検出しない場合はそのまま映像表示を行わせ、スノーノイズを検出すると所定の半透明画像の表示を行ってスノーノイズを表示させつつ画面の輝度振幅を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の条件に従って輝度レベルを制御する技術として、IF−AGC電圧のレベルに応じて輝度信号のレベルを抑圧する技術(例えば特許文献1参照)、AGC回路の出力レベル差に基づいてビデオ信号の輝度を低減させ、表示画面に現れる白ノイズを低減させる技術(例えば特許文献2参照)、受信電界強度に応じて無段階的に輝度を低下させて受信状態が悪化するにつれて徐々に画面の色が薄くなるようにする技術(例えば特許文献3参照)、が知られている。
【特許文献1】特開平9−322019号公報
【特許文献2】特開2005−236816号公報
【特許文献3】特開2007−43501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1,3記載の技術のように、IF−AGC電圧のレベルや受信状況に応じた輝度レベルの低下を行った場合、ユーザはどの程度のスノーノイズ状態であるかを確認しづらい。さらに、最終的に輝度レベルを真っ暗な状態にすると、故障との区別がつかず、ユーザの利便性を損なうことになる。また、特許文献2記載の技術はアンテナ切換動作時の受信レベル変動に起因する白い横筋のノイズを防ぐものであって、スノーノイズに対応するものではない。さらに、特許文献1〜3においては、EMI(Electro-Magnetic Interference)については全く考慮されていない。
【0004】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、スノーノイズ表示時に画面から放射される電磁波によるEMIを低減しつつ、ユーザの利便性を損なうことの無いテレビ受信機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明では、受信したテレビ放送信号から映像信号を抽出して所定の画面に映像表示させるテレビ受信機において、前記画面に表示される映像のスノーノイズを検出するスノーノイズ検出手段と、前記スノーノイズ検出手段がスノーノイズを検出すると、所定の半透明画像の表示を行ってスノーノイズを表示させつつ画面の輝度振幅を低減する輝度振幅低減手段と、を備える構成としてある。
【0006】
前記構成において、前記半透明画像の表示とは、所定色の一様な色画像を、画面全体に重ね合わせることである。この半透明画像の表示は、実際に半透明画像を映像信号に重ね合わせることで実現しても良いし、各色信号や輝度信号の操作により輝度低下やコントラスト低下、さらにはぼかしフィルタ等の画像処理フィルタを組み合わせて実現されても良い。
【0007】
また、本発明の他の態様として、前記スノーノイズ検出手段は、前記テレビ放送信号の入力が無い場合にスノーノイズを検出する構成にしても良い。該構成においては、テレビ放送信号の入力が有る場合はスノーノイズ状態ではないと判断する一方、テレビ放送信号の入力が無い場合にはスノーノイズ状態であると判断する。すなわちスノーノイズ状態であるか否かの判断において、テレビ放送信号の入力の有無を判断基準とするのである。
【0008】
また、本発明の他の態様として、前記スノーノイズ検出手段は、前記テレビ放送信号の電界強度が所定のしきい値よりも低い場合にスノーノイズを検出する構成としてもよい。該構成においては、テレビ放送信号の電界強度が所定のしきい値よりも低い場合にスノーノイズ状態であると判断し、テレビ放送信号の電界強度が所定のしきい値よりも高い場合にスノーノイズ状態であると判断する。無論、電界強度が所定のしきい値よりも高いか低いかでテレビ放送信号の有無を判断することも可能である。すなわちスノーノイズ状態であるか否かの判断において、テレビ放送信号の電界強度を判断基準とするのである。
【0009】
また、本発明の他の態様として、前記テレビ放送信号の受信強度に応じて利得調整する自動利得調整手段を備え、前記スノーノイズ検出手段は、前記受信強度が所定のしきい値を下回るとスノーノイズであると判断する構成としてもよい。該構成においては、テレビ放送信号の自動利得調整手段の受信強度が所定のしきい値よりも低い場合にスノーノイズ状態と判断し、テレビ放送信号の自動利得調整手段の受信強度が所定のしきい値よりも高い場合にスノーノイズ状態ではないと判断する。無論、自動利得調整手段の受信強度で、テレビ放送信号の入力の有無や、テレビ放送信号の電界強度を判断することも可能である。すなわちスノーノイズ状態であるか否かの判断において、自動利得調整手段の受信強度を判断基準とするのである。
【0010】
また、本発明の他の態様として、所定の画像を前記映像信号に重畳するオンスクリーンディスプレイ手段を備え、前記輝度振幅低減手段は、前記オンスクリーンディスプレイ手段を制御して半透明の黒画像を前記映像信号に重畳させる構成としてもよい。すなわち、複雑な輝度調整やコントラスト調整などを必要とせず、通常のテレビ受信機であれば搭載済みのOSD表示機能を利用することで、本発明を容易に実現可能となる。
【0011】
また、本発明の他の態様として、スノーノイズ検出時用の設定値が記憶される第一レジスタと、スノーノイズ非検出時用の設定値が記憶される第二レジスタとを備え、前記輝度振幅低減手段は、前記スノーノイズ検出手段がスノーノイズ検出すると前記第一レジスタから設定値を取得して該設定値に対応した輝度振幅の低減を実行すると共に、前記スノーノイズ検出手段がスノーノイズ非検出すると前記第二レジスタから設定値を取得して該設定値に対応した輝度振幅の低減を実行する構成としてもよい。すなわち、設定値が記憶されたレジスタを2種類用意しておき、スノーノイズ検出手段の判断に応じて何れのレジスタから設定値を読み出すかを切り換えて選択することになる。よって、各機体の特性に合わせた設定値を作成してレジスタに値を設定すれば、その他のプログラムの変更を行うことなく、最適な半透明画像を表示可能になる。つまり、本発明を、僅かな設計変更で、複数種類の機体に適用可能となる。
【0012】
また、本発明の他の態様として、前記テレビ受信機は、アンテナを介して入力された映像信号から所定のチャンネルに対応する搬送周波数を選局して中間周波信号に変換して出力するチューナと、IF−AGC電圧に対応する増幅率で中間周波信号を必要な必要な大きさに増幅して出力する中間周波増幅回路と、前記中間周波増幅回路の出力する中間周波信号から復号映像信号を取り出して出力する映像検波回路と、前記映像検波回路から複合映像信号を取得して該復号映像信号の同期信号の大きさに応じたIF−AGC電圧を生成する自動利得調整回路と、前記映像検波回路の出力した複合映像信号をさらに増幅するとともにY/C分離を行って輝度信号と搬送色信号を出力し且つ同期分離を行ってと同期信号を出力する映像信号処理回路と、カラーバースト信号の入力があれば該カラーバースト信号の周波数を利用して前記搬送色信号を色差信号に復調して出力する色復調回路と、前記輝度信号と前記色差信号とに基づいてマトリクス変換処理を行なって画像データとしてのRGB信号を生成するマトリクス回路と、前記RGB信号に基づいて液晶モジュールを駆動して画像を表示させる液晶ドライバ回路と、前記チューナと前記中間周波増幅回路と前記映像検波回路と前記自動利得調整回路と前記映像信号処理回路と前記色復調回路と前記マトリクス回路と前記液晶ドライバ回路とを制御するマイコンとを備えており、前記マイコンにて実行されるプログラムにて、前記スノーノイズ検出手段と前記輝度振幅低減手段とが実現される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、ユーザにスノーノイズ状態であることを視認可能にて利便性を損なうことの無く、スノーノイズ表示時に画面から放射される電磁波によるEMIを低減可能なテレビ受信機を提供することができる。
また請求項2〜4にかかる発明によれば、スノーノイズ状態の判断を具体的な基準で容易に行うことができる。
また請求項5にかかる発明によれば、輝度振幅の低減を容易に実現可能となる。
そして請求項6にかかる発明によれば、僅かな設計変更で、複数種類の機体に適用可能となる。
さらに請求項7のような、より具体的な構成において、前述した請求項1〜請求項6の各発明と同様の作用を奏することはいうまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)テレビ受信機の構成:
(2)スノーノイズによるEMIについて:
(3)EMIを低減するマイコンの処理:
(4)まとめ:
【0015】
(1)テレビ受信機の構成:
以下、図1〜図4を参照しつつ、本発明のテレビ受信機について説明する。図1は、本発明の実施形態におけるテレビジョンの構成を示すブロック図である。また、本実施形態では表示器として液晶パネルを供えた液晶テレビを例にとって説明を行うが、むろん、ブラウン管テレビやプラズマテレビであってもよいし、チューナを備えさえすれば自機内には表示器を備えなくともよく、例えば、HDDレコーダやDVDレコーダ等の録画/再生機器などであっても本発明を適用可能である。なお、図1においては図の簡略化のため映像信号の処理系統のみを示してある。
【0016】
図1において、テレビ受信機100は、チューナ10と中間周波増幅回路11と映像検波回路12と映像信号処理回路13と液晶ドライバ回路14と液晶モジュール15とAGC回路16とマイコン17とから構成されている。テレビ受信機100にはアンテナ端子を介してアンテナ10aが接続されており、アンテナ10aで受信したテレビ電波がチューナ10に入力される。
【0017】
チューナ10は、例えば、PLLシンセサイザ方式の選局方式が採用可能であり、固定分周器や可変分周器の分周比を選択することによって受信可能な周波数を制御することができる。この周波数制御はマイコン17の制御に従って行われる。マイコン17の制御に従ってチューナ10はチャンネルに対応する搬送周波数を選局し、受信した周波信号を高周波増幅するとともにヘテロダイン検波によって中間周波信号に変換する。この高周波増幅においては、後述のAGC回路16の出力するRF−AGC電圧に対応して増幅率が決定される。
【0018】
中間周波増幅回路11は、中間周波信号を必要な大きさに増幅する。この中間周波増幅においては、後述のAGC回路16から出力されるIF−AGC電圧に対応して増幅率が決定される。
【0019】
映像検波回路12は、変調された信号(搬送波信号+被搬送波信号)から被搬送波信号を取り出す。すなわち、中間周波信号から復号映像信号(輝度信号+搬送波抑圧直角二相変調された搬送色信号+同期信号)を取り出す。
【0020】
AGC回路16は映像検波回路12から出力された複合映像信号(映像検波出力)を取得し、映像検波出力の同期信号の大きさ(受信強度)に応じたRF−AGC電圧およびIF−AGC電圧を生成する。一般に、放送電波の電界強度が強い(強電入力)場合はIF−AGC電圧は高くなり、放送電波の電界強度が弱い(弱電入力)場合はIF−AGC電圧は低くなる。このAGC回路16には、同期信号の大きさに比例したAGC電圧を出力するもの(例えば先頭値形AGCと呼ばれる回路)、電波がある程度大きくなった時点から電圧を発生させるもの(例えば、キード形AGCと呼ばれる回路)、等がある。無論、電圧の強弱を反転させれば、電波の強弱に対して負の相関を持つIF−AGC電圧も可能である。このAGC回路16が自動利得調整手段を構成する。
【0021】
RF−AGC電圧はチューナ10に入力され、チューナ10はRF−AGC電圧が高いほど増幅率を低下させる自動利得調整を行う。同様にIF−AGC電圧は中間周波増幅回路11に入力され、中間周波増幅回路11もIF−AGC電圧が高いほど増幅率を低下させる自動利得調整が行われる。このチューナ10と中間周波増幅回路11で行われる増幅により、映像信号処理回路13に入力される映像信号強度は、同期信号の大きさで規格化された理想的な値に調整されることになる。ちなみに、これらチューナ10や中間周波増幅回路11はフォワード型で記載してあるが、無論、リバース型であっても本発明は実現可能である。
【0022】
映像信号処理回路13では、複合映像信号をさらに増幅し、Y/C分離回路13aにてY/C分離を行って輝度信号(Y)をマトリクス回路13cに、搬送色信号(C)を色復調回路13bにそれぞれ出力し、さらに同期分離によって得られる同期信号をマイコン17に出力する。
【0023】
分離された搬送色信号は、色復調回路13bにおいてR‐Y及びB‐Yの色差信号に復調された後、マトリクス回路13cに出力される。マトリクス回路13cにおいては、入力された輝度信号と色差信号とに基づいてマトリクス変換処理を行い、画像データとしてのRGB信号を生成する。なお、色復調回路13bは、マイコン17からカラーバースト信号の入力があればこのカラーバースト信号の周波数(色副搬送波周波数)を利用して色差信号を復調する。
【0024】
液晶ドライバ回路14は、画素数変換回路と、画質調整回路と、出力処理回路と、フレームメモリとを有している。画素数変換回路は、マトリクス回路13cから入力されたRGB信号に対してスケーリング処理を行って、液晶パネル15aに表示される1画面分のRGB信号を生成する。そして、1画面分のRGB信号を画素情報としてフレームメモリに格納する。画質調整回路は、画素数変換回路によってフレームメモリに格納されたRGB信号に対して、ブライトネス、コントラスト、黒バランスおよび白バランスの調整を行う。出力処理回路は、画質調整回路によって画質調整が施されたRGB信号に対して、ガンマ補正、ディザ処理等を行うとともに、背景信号、OSD信号、ブランキング信号等を付加して液晶パネル15aに出力し、画像を表示させる。
【0025】
液晶モジュール15は、液晶パネル15aと、液晶パネル15aを背面から照射するバックライト15bと、入力された電源電圧から生成した所定の電圧をバックライト15bに供給して点灯させるインバータ15cとから構成される。ちなみにバックライト15bが放電灯で構成される場合は、インバータ15cは入力された電源電圧を交流電圧に変換した上でバックライト15bに供給することになる。
【0026】
マイコン17はCPU17aとRAM17bとROM17cと第一レジスタ17d(第一記憶媒体)と第二レジスタ17e(第二記憶媒体)とから構成される。第一レジスタにはスノーノイズ状態で無い時の設定値(通常時設定値)、第二レジスタにはスノーノイズ状態の時の設定値(スノーノイズ時設定値)、がそれぞれ記憶されている。マイコン17は、テレビ受信機100の各部と電気的に接続されており、各部を有機的に制御することによりテレビ受信機として動作させている。
【0027】
CPU17aは、ROM17cからプログラムデータを読み出してRAM17b上に展開することにより、EMI低減プログラムPを実行する。EMI低減プログラムPは、複数のモジュール(スノーノイズ検出部M1、輝度振幅低減部M2)によって構成される。これらのモジュールM1,M2が実行されることにより本発明の各手段が具体的に実現される。以下、各モジュールについて説明する。
【0028】
スノーノイズ検出部M1は、AGC回路16の出力するIF−AGC電圧に基づいて、アンテナ10aに入力されている放送電波の電界強度を判定する。マイコン17にはAGC回路16からIF−AGC電圧が入力されており、スノーノイズ検出部M1はIF−AGC電圧を取得して所定のしきい値でIF−AGC電圧の大小を判定する。この判定の結果、所定のしきい値より電圧が高い場合は強電入力(通常電界)と判定し、所定のしきい値よりも電圧が低い場合は弱電入力(弱電界)と判定する。但し、ビデオ入力等の外部入力も所定のしきい値より高いIF−AGC電圧となり、通常電界と判断されることになる。この判定結果は輝度振幅低減部M2に通知される。
【0029】
輝度振幅低減部M2は、第一レジスタもしくは第二レジスタの設定値に従って、画面の輝度を全体的に低下させたり、画面のコントラストを低下させたりした上で、画面全体にモノトーンの画像を重畳して画像のざらつきを抑える。より具体的には、半透明な黒画像のOSD(On Screen Display)表示を行わせ、輝度振幅の低減を行う。ここで、輝度振幅低減部M2で表示する半透明画像としては黒画像に限るものではなく、例えば、半透明な白、赤、緑、青等の有色の画像であってもよい。具体的には、ROM17cには予め半透明な黒画像のデータが記憶されており、輝度振幅低減部M2はこのデータを液晶ドライバ回路14の出力処理回路に出力してOSD表示を行わせることになる。この輝度振幅低減部は液晶ドライバ回路14を制御してオンスクリーンディスプレイ表示を行わせるオンスクリーンディスプレイ手段も構成する。
【0030】
(2)スノーノイズによるEMIについて:
以下、図2,3を参照して、スノーノイズ表示時のEMI(Electro-Magnetic Interference)について説明する。図2はスノーノイズ無しの画面から放射される電磁波の実測値のグラフ、図3はスノーノイズ有りの画面から放射される電磁波の実測値のグラフ、である。なお、両図には、参考の為にFCC(Federal Communications Commission)Part.15Subpart.Bで要求されている限度値も記入してある。
【0031】
ここで本発明においてEMI対策を行いたいスノーノイズとは、地上アナログテレビ放送を受信する際のノイズの一種で、本発明におけるスノーノイズとは、受信する信号レベルが低下したときに発生するものであり、受信レベルの低下により同期の乱れや画面がざらざらだけになり何も受信できていない砂嵐状態を指す。但し、受信レベル低下の原因は限定されるものではなく、
・アンテナの向きのずれ
・アンテナケーブルやコネクターの不良
・受信チャンネルの周波数微調整がうまく出来ていない
・送信所との距離が遠過ぎる
・電波の妨げになるようなものや近くの周波数の電波による干渉(感度抑圧)
・屋外の天候不良
等、いかなる原因であってもよい。要は、テレビ受信機に入力されるテレビ放送信号の電界強度が低下(弱電入力)した際に発生するスノーノイズ全般を指すものである。
【0032】
スノーノイズ有りの画像は白黒の細かい映像であり、画面を構成する各画素が短い周期で絶えず白黒反転する。従って、非常に高振幅レベルで高周波の電磁波(ノイズ)が放射されることになる。図2,3を比較する。まず、図2のスノーノイズ無しの画面では、FCC限度値に近接するピークは、88〜216MHzであれば約35dBμV/mのピークが1つと、216〜960MHzであれば約48dBμV/mのピークが1つ、測定される程度であり、全般にEMIの基準を満たしているといえる。
【0033】
一方、図3のスノーノイズ有りの画面では、図2と比べると、100〜200MHzの電磁波放射が大きくなっていることが分かる。この周波数帯(88〜216MHz)のFCC限度値は43.5dBμV/mであるが、少なくとも4つのピークが38dBμV/m以上であり、ピークの1つは40dBμV/mを超えていることが分かる。FCC限度値の範囲内に収まってはいるものの、好ましい状態とは言えない。そこで、以下のように、テレビ放送信号の入力の有無やテレビ放送信号の電界強度の判定によりスノーノイズを検出し、スノーノイズを検出すると画面から放射されるEMIを低減するための処理を実行する。
【0034】
(3)EMIを低減するマイコンの処理:
図4は、EMI低減プログラムの処理の流れを示したフローチャートである。図4の処理は、テレビ受信機の電源が投入されている間は、常に実行されている。
【0035】
電源が投入されて処理が開始されると、ステップS10で通常電界強度に対応する設定値を取得する。すなわち、第一レジスタから、デフォルトの設定として『半透明の黒画像のOSD表示無し』の通常時設定値を取得する。弱電入力にならない限りこのステップS10で取得されたデフォルトの設定が使用され続ける。マイコン17はステップS10で設定値を取得すると半透明の黒画像のOSD信号の出力を行わないので、液晶ドライバ回路14も半透明の黒画像を映像信号に重畳しない。無論、マイコン17は本処理以外にも処理を実行しており、他の処理においては適宜OSD信号の出力が行われる。
【0036】
続くステップS20では、スノーノイズの有無を判定するための情報としてIF−AGC電圧を取得する。IF−AGC電圧は、電界強度(受信状況、電波状況)を示すものでもあり、テレビ放送信号の入力の有無を示す情報でもある。
【0037】
続くステップS30では、スノーノイズの有無を判断する。すなわち、ステップS20で取得したIF−AGC電圧が所定のしきい値(例えばS/N比が30dB)よりも高いか否かを判断する。所定のしきい値以下場合は弱電入力と判断(条件成立)してステップS40に進み、一方、所定のしきい値を超える場合は強電入力(通常電界)と判断(条件不成立)してステップS20からの処理を繰り返す。なお、この電界強度の判定においては、VHSやDVD等の記録媒体を映像ソースとする映像信号も強電入力(通常電界)と判断される。
【0038】
続くステップS40では、弱電入力に対応する設定値を取得する。すなわち、第二レジスタから、『半透明の黒画像のOSD表示有り』のスノーノイズ時設定値を取得する。マイコン17はステップS40で設定値を取得すると半透明の黒画像のOSD信号の出力を行うので、液晶ドライバ回路14が半透明の黒画像を映像信号に重畳することになる。半透明の黒画像が映像信号に重畳されると、輝度が低下するとともにコントラストが低下し且つ、全体的に画像がぼかしフィルタをかけた状態となる。すなわち各画素の白黒反転の変化幅を低減しつつもスノーノイズそのものは表示した状態にする。よってテレビ受信機100の画面から放射されるEMIが低減される。
【0039】
続くステップS50では、ステップS20と同じく、スノーノイズの有無を判定するための情報としてIF−AGC電圧を取得する。スノーノイズ状態が改善されていないかを判定するためである。
【0040】
続くステップS60では、スノーノイズの有無を判断する。すなわちステップS50で取得したIF−AGC電圧が所定のしきい値より高いか否かを判断する。所定のしきい値よりも高い場合はスノーノイズ状態が改善されたと判断(条件成立)してステップS10に戻り、通常電界強度に対応する設定値の取得を行う。一方、所定のしきい値よりも低い場合はスノーノイズ状態は改善されていないと判断(条件不成立)しステップS50からの処理を繰り返す。すなわち条件不成立の場合、マイコン17は弱電入力に対応する設定値に基づく処理を繰り返すことになる。
【0041】
(4)まとめ:
以上をまとめると、受信したテレビ放送信号から映像信号を抽出して所定の画面に映像表示させるテレビ受信機において、マイコン17は、画面に表示される映像にスノーノイズが含まれているか否かを検出し、スノーノイズを検出しない場合はそのまま映像表示を行わせ、スノーノイズを検出すると所定の半透明画像の表示を行ってスノーノイズを表示させつつ画面の輝度振幅を低減することにより、スノーノイズ表示時に画面から放射される電磁波によるEMIを低減しつつ、ユーザの利便性を損なうことの無いテレビ受信機を提供できることになる。
【0042】
ところで、前述した実施形態は、以下の変形例も可能である。
・前述の実施形態においてはスノーノイズ検出部M1はAGC回路16の出力するIF−AGC電圧に基づいてスノーノイズの有無を検出する構成としてあるが、スノーノイズの検出はこの構成に限るものではない。例えば、(a)映像信号処理部にて生成されたRGB信号を所定の基準レベルと比較したり、(b)同期信号の入力の有無の判断とY/C分離の可/不可とを組み合わせたり、することによってもスノーノイズの検出が可能である。(a)の場合であれば、RGB信号の少なくとも1色を所定の基準レベルと比較して、基準レベルを超えた場合にスノーノイズであると判断する。(b)の場合であれば、同期信号の有無を判断し、同期信号有りであれば更にY/C分離の可/不可を判断する。すなわち同期信号が無く且つ、Y/C分離不可能な場合がスノーノイズとなる。
【0043】
・前述した実施形態では、半透明の黒画像を表示する構成としたが、無論、輝度低下やコントラストの低下、ぼかしフィルタを適宜組み合わせて適用することにより各画素の輝度振幅を抑制し、EMIを低減させても構わない。その際、マイコン17は輝度、コントラスト、ぼかしフィルタ等の画質調整処理を、映像信号処理回路13に、適宜、指示することになる。
【0044】
・前述した実施形態では、IF−AGC電圧に基づいてスノーノイズ状態であるか否かを判断したが、無論、RF−AGC電圧に基づいて判断したり、IF−AGC電圧とRF−AGC電圧とを組み合わせて判断したりする構成も可能である。
【0045】
なお、本発明は前記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・前記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態にかかるテレビ受信機のブロック構成図である。
【図2】スノーノイズ無しの画面から放射される電磁波の実測値のグラフである。
【図3】スノーノイズ有りの画面から放射される電磁波の実測値のグラフである。
【図4】EMI低減プログラムの処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
10…チューナ、10a…アンテナ、11…中間周波増幅回路、12…映像検波回路、13…映像信号処理回路、13a…Y/C分離回路、13b…色復調回路、13c…マトリクス回路、14…液晶ドライバ回路、15…液晶モジュール、15a…液晶パネル、15b…バックライト、15c…インバータ、16…AGC回路、17…マイコン、17a…CPU、17b…RAM、17c…ROM、17d…第一レジスタ、17e…第二レジスタ、17f…OSD回路、100…テレビ受信機、M1…スノーノイズ検出部、M2…輝度振幅低減部、P…EMI低減プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したテレビ放送信号から映像信号を抽出して所定の画面に映像表示させるテレビ受信機において、
前記画面に表示される映像のスノーノイズを検出するスノーノイズ検出手段と、
前記スノーノイズ検出手段がスノーノイズを検出すると、所定の半透明画像の表示を行ってスノーノイズを表示させつつ画面の輝度振幅を低減する輝度振幅低減手段と、
を備えることを特徴とするテレビ受信機。
【請求項2】
前記スノーノイズ検出手段は、前記テレビ放送信号の入力が無い場合にスノーノイズを検出する請求項1に記載のテレビ受信機。
【請求項3】
前記スノーノイズ検出手段は、前記テレビ放送信号の電界強度が所定のしきい値よりも低い場合にスノーノイズを検出する請求項1または請求項2の何れか一項に記載のテレビ受信機。
【請求項4】
前記テレビ放送信号の受信強度に応じて利得調整する自動利得調整手段を備え、
前記スノーノイズ検出手段は、前記受信強度が所定のしきい値を下回るとスノーノイズであると判断する請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のテレビ受信機。
【請求項5】
所定の画像を前記映像信号に重畳するオンスクリーンディスプレイ手段を備え、
前記輝度振幅低減手段は、前記オンスクリーンディスプレイ手段を制御して半透明の黒画像を前記映像信号に重畳させる請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のテレビ受信機。
【請求項6】
スノーノイズ検出時用の設定値が記憶される第一レジスタと、スノーノイズ非検出時用の設定値が記憶される第二レジスタとを備え、
前記輝度振幅低減手段は、前記スノーノイズ検出手段がスノーノイズ検出すると前記第一レジスタから設定値を取得して該設定値に対応した輝度振幅の低減を実行すると共に、前記スノーノイズ検出手段がスノーノイズ非検出すると前記第二レジスタから設定値を取得して該設定値に対応した輝度振幅の低減を実行する請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のテレビ受信機。
【請求項7】
前記テレビ受信機は、アンテナを介して入力された映像信号から所定のチャンネルに対応する搬送周波数を選局して中間周波信号に変換して出力するチューナと、IF−AGC電圧に対応する増幅率で中間周波信号を必要な大きさに増幅して出力する中間周波増幅回路と、前記中間周波増幅回路の出力する中間周波信号から復号映像信号を取り出して出力する映像検波回路と、前記映像検波回路から複合映像信号を取得して該復号映像信号の同期信号の大きさに応じたIF−AGC電圧を生成する自動利得調整回路と、前記映像検波回路の出力した複合映像信号をさらに増幅するとともにY/C分離を行って輝度信号と搬送色信号を出力し且つ同期分離を行ってと同期信号を出力する映像信号処理回路と、カラーバースト信号の入力があれば該カラーバースト信号の周波数を利用して前記搬送色信号を色差信号に復調して出力する色復調回路と、前記輝度信号と前記色差信号とに基づいてマトリクス変換処理を行なって画像データとしてのRGB信号を生成するマトリクス回路と、前記RGB信号に基づいて液晶モジュールを駆動して画像を表示させる液晶ドライバ回路と、前記チューナと前記中間周波増幅回路と前記映像検波回路と前記自動利得調整回路と前記映像信号処理回路と前記色復調回路と前記マトリクス回路と前記液晶ドライバ回路とを制御するマイコンとを備えており、
前記マイコンにて実行されるプログラムにて、前記スノーノイズ検出手段と前記輝度振幅低減手段とが実現された請求項6に記載のテレビ受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−294555(P2008−294555A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135628(P2007−135628)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】