テンター装置
【課題】より厳密にフィルムを延伸できるテンター装置を提供する。
【解決手段】左右一対のテンターチェーン14,16の中の一方のテンターチェーンが延びて、前記各測長装置40,41がそれぞれ測定した前記移動距離の差が基準値より高くなると、延びた前記テンターチェーンとは反対側の前記テンターチェーンに関する前記エアーシリンダーによって、前記反対側のテンターチェーンの前記他動スプロケットを前記基準値内に移動させる、
【解決手段】左右一対のテンターチェーン14,16の中の一方のテンターチェーンが延びて、前記各測長装置40,41がそれぞれ測定した前記移動距離の差が基準値より高くなると、延びた前記テンターチェーンとは反対側の前記テンターチェーンに関する前記エアーシリンダーによって、前記反対側のテンターチェーンの前記他動スプロケットを前記基準値内に移動させる、
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを幅方向に延伸させるテンター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルムを延伸させるためにテンター装置が使用されている。このフィルムを延伸させる場合に、その延伸量を微調整する必要がある。そのため、左右一対のテンターチェーンの走行方向の各位置において、その幅を微調整する構造が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3858101号公報
【特許文献2】特開2002−20007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最近の液晶パネルなどに使用されている位相差フィルムなどの光学系フィルムにおいては、レターデーションや光軸方向の精度が高く、より厳密な延伸を要求される場合がある。
【0005】
しかし、左右一対のテンターチェーンの間にフィルムを拡布状態で張設し、走行させている場合に、左側のテンターチェーンの延びる長さと右側のテンターチェーンの延びる長さが異なり、フィルムの左側部と右側部の取付け位置が相対向する位置でなく、ずれた位置になることがある。
【0006】
上記従来のテンター装置では、フィルムの左右方向のずれは調整できるが、フィルムの走行方向のずれを調整することができない。すると、このずれによって、フィルムのレターデーションや光軸方向に悪影響を及ぼし、希望する性能を有する光学系フィルムを製造できないという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、より厳密にフィルムを延伸できるテンター装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、左右一対のテンターチェーンの間にフィルムを拡布状態で張設し、かつ、前後方向に走行させることによって、前記フィルムを幅方向に延伸させるテンター装置において、前記左右一対のテンターチェーンが、他動スプロケットと駆動スプロケットの間に掛け渡された無端チェーンであり、前記各駆動スプロケットが回動自在に、かつ、前後方向に移動できないように固定され、前記各他動スプロケットが回動自在に、かつ、移動手段によって前後方向に移動可能に取り付けられ、前記各他動スプロケットの前後方向の移動距離を測定する測定手段が設けられ、前記左右一対のテンターチェーンの中の一方のテンターチェーンが延びて、前記各測定手段がそれぞれ測定した前記移動距離の差が基準値より高くなると、延びた前記テンターチェーンとは反対側の前記テンターチェーンに関する前記移動手段によって、前記反対側のテンターチェーンの前記他動スプロケットを前記基準値内に移動させる制御部が設けられている、ことを特徴とするテンター装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、左右一対のテンターチェーンの延びた長さの差が基準値以内に収まるため、左右一対のテンターチェーンに拡布状態で張設されたフィルムの左側部と右側部が常に相対向する位置にあり、ずれが生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のテンター装置の平面図である。
【図2】本実施形態のテンター装置の側部から見た要部拡大図である。
【図3】本実施形態のテンター装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態のテンター装置10について図1〜図3に基づいて説明する。
【0012】
本実施形態のテンター装置10は、液晶表示装置などの平面表示装置に用いられる光学系フィルムFの一つである位相差フィルムFを製造する。この位相差フィルムFの材質は、ポリカーボネート、環状オレフィン・コポリマー(COC)や、メタセシス開環重合のシクロオレフィンポリマー(COP)などの熱可塑性樹脂であり、その厚みとしては、10μm〜200μmである。
【0013】
なお、本明細書において、「前後方向」とは、テンター装置10におけるフィルムFの搬入口側から搬出口側に向かう走行方向を意味し、「左右方向」とはフィルムFの幅方向を意味する。
【0014】
(1)テンター装置10の構成
テンター装置10の構成について図1及び図2に基づいて説明する。
【0015】
テンター装置10は、左右一対のテンターチェーン12,14を有している。左テンターチェーン12は、左他動スプロケット16と左駆動スプロケット18に掛け渡された無端チェーンであり、右テンターチェーン14も、右他動スプロケット20と右駆動スプロケット22との間に掛け渡された無端チェーンである。左他動スプロケット16と右他動スプロケット20は、フィルムFの搬入口側に配され、左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22はフィルムFの搬出口側に配されている。
【0016】
このテンター装置10は、クリップテンター装置であり、左右一対のテンターチェーン12,14には、所定間隔毎にクリップ56がそれぞれ設けられ、各クリップ56は、フィルムFの左右両側部(両耳部)を挟持しながら、左右一対のテンターレール24,26に沿って移動する。左テンターレール24と右テンターレール26はテンター台28の上に設置されている。
【0017】
搬出口側にある左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22は、左テンターレール24と右テンターレール26に前後方向に移動しないように固定されている。
【0018】
左右一対のテンターチェーン12,14の間隔は、搬入口側から搬出口側に向かって拡がるように設置され、この拡がりによってフィルムFを延伸させる。なお、図1では簡単に説明するために左右一対のテンターチェーン12,14は平行に記載している。
【0019】
テンター装置10の中央部分には、フィルムFを加熱処理するための熱処理室30が設けられている。この熱処理室30内部には、不図示のノズルがフィルムFの走行路の上下に配され、フィルムFに対し熱風を噴射して熱処理して拡げる。
【0020】
(2)調整部分の構成
左右一対のテンターチェーン12,14の前後方向の長さの調整部分の構成について図2に基づいて説明する。
【0021】
左テンターチェーン12を移動させるための左他動スプロケット16は、左スライド部32の上に回動自在に取り付けられ、この左スライド部32は、左エアーシリンダ34によって前側(搬入口側)に押圧されている。これによって、左テンターチェーン12は、一定の張力を保持して、掛け渡されている。
【0022】
右テンターチェーン14においても同様に右スライド部36の上方に回動自在に取り付けられ、この右スライド部36が右エアーシリンダ38によって前側に押圧されることにより、右テンターチェーン14が一定の張力を保持して、掛け渡されている。
【0023】
左他動スプロケット16には、マグネスケールなどの左測長装置40が設けられている。図2に示すように左他動スプロケット16の回転しない中央部分から、突部42が突出し、一方、テンター台28から台座44が突出し、この台座44に前記した左測長装置40が取り付けられている。この左測長装置40の測定部46が前記した突部42に常に接触しており、左テンターチェーン12が熱処理室30の熱などによって延びると、左他動スプロケット16に取り付けられた突部42が測定部46を前方向に押し、左テンターチェーン12の延びた長さLLを左測長装置40が測定する。
【0024】
左エアーシリンダ34の先端部には左ロードセル48が取り付けられており、左エアーシリンダ34の押圧力を測定することができ、この押圧力により左テンターチェーン12の張力を求める。
【0025】
また、右テンターチェーン14側にも同様に、右測長装置41及び右ロードセル49が設けられている。なお、右測長装置41は、右テンターチェーン14の延びた長さLRを測定する。右ロードセル49は、右エアーシリンダ38の押圧力を測定して、この押圧力により右テンターチェーン14の張力を求める。
【0026】
(3)テンター装置10の電気的構成
テンター装置10の電気的構成について図3に基づいて説明する。
【0027】
コンピュータよりなる制御部50には、左駆動スプロケット18及び右駆動スプロケット22を駆動させる駆動モータ52が接続されている。また、これ以外に制御部50には、左エアーシリンダ34、右エアーシリンダ38、左測長装置40、ロードセル48がそれぞれ接続されている。
【0028】
(4)テンター装置10の動作状態
テンター装置10の動作状態について説明する。
【0029】
熱処理室30内部のノズルから熱風を吹き出し、熱処理室30内部を150℃〜190℃に設定する。
【0030】
左右一対のテンターチェーン12,14の間にクリップ56によってフィルムFを拡布状態で張設し、左モータ52と右モータ54によって左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22を駆動し、フィルムFを30〜60m/分で前後方向に走行させる。
【0031】
これによって、フィルムFが熱処理されて幅方向に延伸し、例えば、光軸が±0.5度で所定のレターデーションを有する位相差フィルムFを製造できる。
【0032】
しかしながら、製造を行なっていると、熱処理室30の熱などによって左テンターチェーン12又は右テンターチェーン14の長さが延びてくる。例えば、左他動スプロケット16が、この延びた長さだけ、前方向に移動する。
【0033】
そこで、制御部50は、次のような制御を行う。
【0034】
ステップ1において、左測長装置40が左テンターチェーン12の延びた長さLLを常に測定し、右測長装置41が右テンターチェーン14の延びた長さLRを測定する。
【0035】
ステップ2において、制御部50が、|LL−LR|を計算して、|LL−LR|>=L0になるとステップ3に進む。例えば、基準値L0=0.5mmである。
【0036】
ステップ3において、制御部50は、延びた方のテンターチェーン(例えば、左テンターチェーン12とする)とは、反対側のテンターチェーン(例えば、右テンターチェーン14とする)を、右エアーシリンダー38によって押圧して、右テンターチェーン14の長さを長くして、|LL−LR|<L0になるようにフィードバック制御を行う。
【0037】
ステップ4において、右ロードセル49によって右エアーシリンダー38の押圧力を測定し、右テンターチェーン14の張力が基準力以上になると、右テンターチェーン14が外れる切れる可能性があるので、これを防止するために警報を鳴らす。この張力の基準としては、元の長さより延びた長さが1〜2%延びたときの張力とする。
【0038】
なお、上記とは反対に右テンターチェーン14が延びた場合には、左エアーシリンダ34によって左テンターチェーン12を押圧してその長さを長くする。
【0039】
(5)効果
上記実施形態のテンター装置10であると、例えば、左テンターチェーン12の延びて、左右一対のテンターチェーン12,14の長さの差が基準値以上になると、右エアーシリンダー38によって、右テンターチェーン14を延ばすため、フィルムFの左側部と右側部が相対向する位置で熱処理を行なうことができる。したがって、位相差フィルムFのような厳密な延伸を必要とされるフィルムFであっても、希望通りフィルムFを延伸させることができる。
【0040】
(6)変更例
上記実施形態では、クリップテンター装置で説明したが、これに代えてピンでフィルムFを固定するピンテンター装置であってもよい。
【0041】
上記実施形態では、光学系フィルムで説明したが、これに代えて二次電池に用いられる二次電池系フィルム、又は、太陽電池に用いられる太陽電池系フィルムの製造にも適用できる。
【符号の説明】
【0042】
F フィルム
10 テンター装置
12 左テンターチェーン
14 右テンターチェーン
16 左他動スプロケット
18 左駆動スプロケット
20 右他動スプロケット
22 右駆動スプロケット
34 左エアーシリンダ
38 右エアーシリンダ
40 左測長装置
41 右測長装置
50 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを幅方向に延伸させるテンター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルムを延伸させるためにテンター装置が使用されている。このフィルムを延伸させる場合に、その延伸量を微調整する必要がある。そのため、左右一対のテンターチェーンの走行方向の各位置において、その幅を微調整する構造が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3858101号公報
【特許文献2】特開2002−20007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最近の液晶パネルなどに使用されている位相差フィルムなどの光学系フィルムにおいては、レターデーションや光軸方向の精度が高く、より厳密な延伸を要求される場合がある。
【0005】
しかし、左右一対のテンターチェーンの間にフィルムを拡布状態で張設し、走行させている場合に、左側のテンターチェーンの延びる長さと右側のテンターチェーンの延びる長さが異なり、フィルムの左側部と右側部の取付け位置が相対向する位置でなく、ずれた位置になることがある。
【0006】
上記従来のテンター装置では、フィルムの左右方向のずれは調整できるが、フィルムの走行方向のずれを調整することができない。すると、このずれによって、フィルムのレターデーションや光軸方向に悪影響を及ぼし、希望する性能を有する光学系フィルムを製造できないという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、より厳密にフィルムを延伸できるテンター装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、左右一対のテンターチェーンの間にフィルムを拡布状態で張設し、かつ、前後方向に走行させることによって、前記フィルムを幅方向に延伸させるテンター装置において、前記左右一対のテンターチェーンが、他動スプロケットと駆動スプロケットの間に掛け渡された無端チェーンであり、前記各駆動スプロケットが回動自在に、かつ、前後方向に移動できないように固定され、前記各他動スプロケットが回動自在に、かつ、移動手段によって前後方向に移動可能に取り付けられ、前記各他動スプロケットの前後方向の移動距離を測定する測定手段が設けられ、前記左右一対のテンターチェーンの中の一方のテンターチェーンが延びて、前記各測定手段がそれぞれ測定した前記移動距離の差が基準値より高くなると、延びた前記テンターチェーンとは反対側の前記テンターチェーンに関する前記移動手段によって、前記反対側のテンターチェーンの前記他動スプロケットを前記基準値内に移動させる制御部が設けられている、ことを特徴とするテンター装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、左右一対のテンターチェーンの延びた長さの差が基準値以内に収まるため、左右一対のテンターチェーンに拡布状態で張設されたフィルムの左側部と右側部が常に相対向する位置にあり、ずれが生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のテンター装置の平面図である。
【図2】本実施形態のテンター装置の側部から見た要部拡大図である。
【図3】本実施形態のテンター装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態のテンター装置10について図1〜図3に基づいて説明する。
【0012】
本実施形態のテンター装置10は、液晶表示装置などの平面表示装置に用いられる光学系フィルムFの一つである位相差フィルムFを製造する。この位相差フィルムFの材質は、ポリカーボネート、環状オレフィン・コポリマー(COC)や、メタセシス開環重合のシクロオレフィンポリマー(COP)などの熱可塑性樹脂であり、その厚みとしては、10μm〜200μmである。
【0013】
なお、本明細書において、「前後方向」とは、テンター装置10におけるフィルムFの搬入口側から搬出口側に向かう走行方向を意味し、「左右方向」とはフィルムFの幅方向を意味する。
【0014】
(1)テンター装置10の構成
テンター装置10の構成について図1及び図2に基づいて説明する。
【0015】
テンター装置10は、左右一対のテンターチェーン12,14を有している。左テンターチェーン12は、左他動スプロケット16と左駆動スプロケット18に掛け渡された無端チェーンであり、右テンターチェーン14も、右他動スプロケット20と右駆動スプロケット22との間に掛け渡された無端チェーンである。左他動スプロケット16と右他動スプロケット20は、フィルムFの搬入口側に配され、左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22はフィルムFの搬出口側に配されている。
【0016】
このテンター装置10は、クリップテンター装置であり、左右一対のテンターチェーン12,14には、所定間隔毎にクリップ56がそれぞれ設けられ、各クリップ56は、フィルムFの左右両側部(両耳部)を挟持しながら、左右一対のテンターレール24,26に沿って移動する。左テンターレール24と右テンターレール26はテンター台28の上に設置されている。
【0017】
搬出口側にある左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22は、左テンターレール24と右テンターレール26に前後方向に移動しないように固定されている。
【0018】
左右一対のテンターチェーン12,14の間隔は、搬入口側から搬出口側に向かって拡がるように設置され、この拡がりによってフィルムFを延伸させる。なお、図1では簡単に説明するために左右一対のテンターチェーン12,14は平行に記載している。
【0019】
テンター装置10の中央部分には、フィルムFを加熱処理するための熱処理室30が設けられている。この熱処理室30内部には、不図示のノズルがフィルムFの走行路の上下に配され、フィルムFに対し熱風を噴射して熱処理して拡げる。
【0020】
(2)調整部分の構成
左右一対のテンターチェーン12,14の前後方向の長さの調整部分の構成について図2に基づいて説明する。
【0021】
左テンターチェーン12を移動させるための左他動スプロケット16は、左スライド部32の上に回動自在に取り付けられ、この左スライド部32は、左エアーシリンダ34によって前側(搬入口側)に押圧されている。これによって、左テンターチェーン12は、一定の張力を保持して、掛け渡されている。
【0022】
右テンターチェーン14においても同様に右スライド部36の上方に回動自在に取り付けられ、この右スライド部36が右エアーシリンダ38によって前側に押圧されることにより、右テンターチェーン14が一定の張力を保持して、掛け渡されている。
【0023】
左他動スプロケット16には、マグネスケールなどの左測長装置40が設けられている。図2に示すように左他動スプロケット16の回転しない中央部分から、突部42が突出し、一方、テンター台28から台座44が突出し、この台座44に前記した左測長装置40が取り付けられている。この左測長装置40の測定部46が前記した突部42に常に接触しており、左テンターチェーン12が熱処理室30の熱などによって延びると、左他動スプロケット16に取り付けられた突部42が測定部46を前方向に押し、左テンターチェーン12の延びた長さLLを左測長装置40が測定する。
【0024】
左エアーシリンダ34の先端部には左ロードセル48が取り付けられており、左エアーシリンダ34の押圧力を測定することができ、この押圧力により左テンターチェーン12の張力を求める。
【0025】
また、右テンターチェーン14側にも同様に、右測長装置41及び右ロードセル49が設けられている。なお、右測長装置41は、右テンターチェーン14の延びた長さLRを測定する。右ロードセル49は、右エアーシリンダ38の押圧力を測定して、この押圧力により右テンターチェーン14の張力を求める。
【0026】
(3)テンター装置10の電気的構成
テンター装置10の電気的構成について図3に基づいて説明する。
【0027】
コンピュータよりなる制御部50には、左駆動スプロケット18及び右駆動スプロケット22を駆動させる駆動モータ52が接続されている。また、これ以外に制御部50には、左エアーシリンダ34、右エアーシリンダ38、左測長装置40、ロードセル48がそれぞれ接続されている。
【0028】
(4)テンター装置10の動作状態
テンター装置10の動作状態について説明する。
【0029】
熱処理室30内部のノズルから熱風を吹き出し、熱処理室30内部を150℃〜190℃に設定する。
【0030】
左右一対のテンターチェーン12,14の間にクリップ56によってフィルムFを拡布状態で張設し、左モータ52と右モータ54によって左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22を駆動し、フィルムFを30〜60m/分で前後方向に走行させる。
【0031】
これによって、フィルムFが熱処理されて幅方向に延伸し、例えば、光軸が±0.5度で所定のレターデーションを有する位相差フィルムFを製造できる。
【0032】
しかしながら、製造を行なっていると、熱処理室30の熱などによって左テンターチェーン12又は右テンターチェーン14の長さが延びてくる。例えば、左他動スプロケット16が、この延びた長さだけ、前方向に移動する。
【0033】
そこで、制御部50は、次のような制御を行う。
【0034】
ステップ1において、左測長装置40が左テンターチェーン12の延びた長さLLを常に測定し、右測長装置41が右テンターチェーン14の延びた長さLRを測定する。
【0035】
ステップ2において、制御部50が、|LL−LR|を計算して、|LL−LR|>=L0になるとステップ3に進む。例えば、基準値L0=0.5mmである。
【0036】
ステップ3において、制御部50は、延びた方のテンターチェーン(例えば、左テンターチェーン12とする)とは、反対側のテンターチェーン(例えば、右テンターチェーン14とする)を、右エアーシリンダー38によって押圧して、右テンターチェーン14の長さを長くして、|LL−LR|<L0になるようにフィードバック制御を行う。
【0037】
ステップ4において、右ロードセル49によって右エアーシリンダー38の押圧力を測定し、右テンターチェーン14の張力が基準力以上になると、右テンターチェーン14が外れる切れる可能性があるので、これを防止するために警報を鳴らす。この張力の基準としては、元の長さより延びた長さが1〜2%延びたときの張力とする。
【0038】
なお、上記とは反対に右テンターチェーン14が延びた場合には、左エアーシリンダ34によって左テンターチェーン12を押圧してその長さを長くする。
【0039】
(5)効果
上記実施形態のテンター装置10であると、例えば、左テンターチェーン12の延びて、左右一対のテンターチェーン12,14の長さの差が基準値以上になると、右エアーシリンダー38によって、右テンターチェーン14を延ばすため、フィルムFの左側部と右側部が相対向する位置で熱処理を行なうことができる。したがって、位相差フィルムFのような厳密な延伸を必要とされるフィルムFであっても、希望通りフィルムFを延伸させることができる。
【0040】
(6)変更例
上記実施形態では、クリップテンター装置で説明したが、これに代えてピンでフィルムFを固定するピンテンター装置であってもよい。
【0041】
上記実施形態では、光学系フィルムで説明したが、これに代えて二次電池に用いられる二次電池系フィルム、又は、太陽電池に用いられる太陽電池系フィルムの製造にも適用できる。
【符号の説明】
【0042】
F フィルム
10 テンター装置
12 左テンターチェーン
14 右テンターチェーン
16 左他動スプロケット
18 左駆動スプロケット
20 右他動スプロケット
22 右駆動スプロケット
34 左エアーシリンダ
38 右エアーシリンダ
40 左測長装置
41 右測長装置
50 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のテンターチェーンの間にフィルムを拡布状態で張設し、かつ、前後方向に走行させることによって、前記フィルムを幅方向に延伸させるテンター装置において、
前記左右一対のテンターチェーンが、他動スプロケットと駆動スプロケットの間に掛け渡された無端チェーンであり、
前記各駆動スプロケットが回動自在に、かつ、前後方向に移動できないように固定され、
前記各他動スプロケットが回動自在に、かつ、移動手段によって前後方向に移動可能に取り付けられ、
前記各他動スプロケットの前後方向の移動距離を測定する測定手段が設けられ、
前記左右一対のテンターチェーンの中の一方のテンターチェーンが延びて、前記各測定手段がそれぞれ測定した前記移動距離の差が基準値より高くなると、延びた前記テンターチェーンとは反対側の前記テンターチェーンに関する前記移動手段によって、前記反対側のテンターチェーンの前記他動スプロケットを前記基準値内に移動させる制御部が設けられている、
ことを特徴とするテンター装置。
【請求項2】
前記移動手段が、エアーシリンダであり、
前記エアーシリンダが、前記他動スプロケットを押圧することにより前記テンターチェーンに一定の張力をかけ、かつ、前記押圧する力を調整して前記他動スプロケットを移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のテンター装置。
【請求項3】
前記制御部は、左右一対の前記テンターチェーンの間に張設された前記フィルムの左側部と右側部が、相対向するように走行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のテンター装置。
【請求項4】
前記フィルムが、光学系フィルム、二次電池系フィルム、又は、太陽電池系フィルムである、
ことを特徴とする請求項1に記載のテンター装置。
【請求項5】
前記フィルムが、位相差フィルムであり、
前記位相差フィルムを幅方向に延伸させることにより、所定のレターデーション及び光軸方向に製造する、
ことを特徴とする請求項1に記載のテンター装置。
【請求項1】
左右一対のテンターチェーンの間にフィルムを拡布状態で張設し、かつ、前後方向に走行させることによって、前記フィルムを幅方向に延伸させるテンター装置において、
前記左右一対のテンターチェーンが、他動スプロケットと駆動スプロケットの間に掛け渡された無端チェーンであり、
前記各駆動スプロケットが回動自在に、かつ、前後方向に移動できないように固定され、
前記各他動スプロケットが回動自在に、かつ、移動手段によって前後方向に移動可能に取り付けられ、
前記各他動スプロケットの前後方向の移動距離を測定する測定手段が設けられ、
前記左右一対のテンターチェーンの中の一方のテンターチェーンが延びて、前記各測定手段がそれぞれ測定した前記移動距離の差が基準値より高くなると、延びた前記テンターチェーンとは反対側の前記テンターチェーンに関する前記移動手段によって、前記反対側のテンターチェーンの前記他動スプロケットを前記基準値内に移動させる制御部が設けられている、
ことを特徴とするテンター装置。
【請求項2】
前記移動手段が、エアーシリンダであり、
前記エアーシリンダが、前記他動スプロケットを押圧することにより前記テンターチェーンに一定の張力をかけ、かつ、前記押圧する力を調整して前記他動スプロケットを移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のテンター装置。
【請求項3】
前記制御部は、左右一対の前記テンターチェーンの間に張設された前記フィルムの左側部と右側部が、相対向するように走行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のテンター装置。
【請求項4】
前記フィルムが、光学系フィルム、二次電池系フィルム、又は、太陽電池系フィルムである、
ことを特徴とする請求項1に記載のテンター装置。
【請求項5】
前記フィルムが、位相差フィルムであり、
前記位相差フィルムを幅方向に延伸させることにより、所定のレターデーション及び光軸方向に製造する、
ことを特徴とする請求項1に記載のテンター装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2010−264647(P2010−264647A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117531(P2009−117531)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390002015)ヒラノ技研工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390002015)ヒラノ技研工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
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