説明

テープ剥離装置

【課題】半導体ウエハの厚みのばらつき等があっても、半導体ウエハを破損させることなく保護テープの剥離を確実に且つ良好に行うことが可能なテープ剥離装置を提供する。
【解決手段】表面に保護テープ14が貼付された半導体ウエハ12が載置されるテーブル54と、上下動可能に設けられた昇降部材22を有する。保護テープ14の端面に差し込まれる剥離用穿刺突起36と、昇降部材22に設けられ剥離用穿刺突起36を保持した剥離部24と、36剥離用穿刺突起により剥離された保護テープ14を挟持する挟持部40とを備える。可動台18に対して上下方向に位置調整可能に固定され昇降部材22の下降位置を制限するストッパ軸42と、昇降部材22及び可動台18の各移動動作を制御する移動制御装置を備える。ストッパ軸42は、保護テープ14の端面に剥離用穿刺突起36が差し込まれる前に、前記剥離用穿刺突起36が半導体ウエハ12に当接しない相対位置が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハに貼付された保護テープを剥がして除去するテープ剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC等の半導体素子の製造において、近年、半導体の高密度化に伴い、ウエハ表面上に凹凸の大きいバンプなどが形成されたウエハや、MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)など、表面の凹凸が大きいウエハが増加している。一方、半導体パッケージの小型、薄型化の進展に伴い、半導体ウエハ自体の薄型化が求められている。
【0003】
そこで、半導体製品の製造工程においては、上記のように表面に多数の回路パターンや素子などが形成された半導体ウエハの裏面を研磨して薄くする研磨(バックグラインド)工程を経た後、機能素子毎に切断するダイシング工程を経て、個々の半導体チップに分割している。ここで、半導体ウエハの裏面を研磨やエッチングする際には、半導体ウエハ表面保護のため、その半導体ウエハ表面に粘着性のある保護テープが貼付され、その保護テープは、研磨後に半導体ウエハから剥離される。
【0004】
従来、半導体ウエハに貼付された保護テープ等の薄板を剥離するテープ剥離装置として、特許文献1に開示されているように、上下動可能に保持された上部可動板と、下部挿入板と、これを支持する軸とを備えた剥離装置があった。この剥離装置は、下部挿入板を半導体ウエハと薄板との間に挿入し、上部可動板を下降して、下部挿入板と上部可動板とで薄板の端部を把持し、その後、端部を引き上げつつ薄板の折り返し方向に移動して剥離する動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−171934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された剥離装置は、半導体ウエハの厚みのばらつきが大きいと、薄板の剥離を良好に行うことができなかった。例えば半導体ウエハが薄めにばらつくと、下部挿入板が薄板と半導体ウエハの間に挿入できず、薄板を捲り上げることができず、反対に半導体ウエハが厚めにばらつくと、下部挿入板の半導体ウエハに接触し、高価な半導体ウエハを破損させてしまうことがあった。また、下部挿入板の先端は比較的変形しやすいため、薄板の剥離を繰り返すうちに先端の高さ位置が変化してしまうことがある。すると、半導体ウエハの厚みがばらついたときと同様に、薄板の剥離を良好に行うことができないという問題が生じていた。
【0007】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、半導体ウエハの厚みのばらつき等が生じても半導体ウエハを破損させることなく保護テープの剥離を確実に且つ良好に行うことが可能なテープ剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、表面に保護テープが貼付された半導体ウエハが載置されるテーブルと、前記テーブルに対して水平方向に移動可能に設けられた可動台と、前記可動台に対して上下動可能に設けられた昇降部材と、前記保護テープの端面に差し込まれる剥離用穿刺突起と、前記昇降部材に設けられ前記剥離用穿刺突起を保持した剥離部と、前記剥離用穿刺突起により剥離された前記保護テープを挟持する挟持部とを備え、前記剥離用穿刺突起により剥離された端縁部を捲り上げ、この捲り上げられた前記保護テープ端縁部を前記挟持部により挟んで保持し、その保持した部分を移動させて前記保護テープを前記半導体ウエハから剥離するテープ剥離装置であって、前記可動台に対して上下方向に位置調整可能に固定され、前記昇降部材の下降位置を、前記剥離用穿刺突起が前記半導体ウエハの表面位置よりも高い位置に制限するストッパ部材と、前記昇降部材及び前記可動台の各移動動作を制御する移動制御装置とを備え、前記ストッパ部材は、前記保護テープの端面に前記剥離用穿刺突起が差し込まれる前に前記可動台に対する相対位置が固定され、前記昇降部材が下降移動したときに、所定の係止位置で前記昇降部材の下降移動を停止可能に設けられたテープ剥離装置である。
【0009】
前記ストッパ部材は、前記昇降部材の貫通孔に挿通された軸部とその一端に形成され前記貫通孔の下側周縁部に係止可能な当接部とから成り、前記ストッパ部材の前記当接部は、前記昇降部材が下降移動したときに、前記昇降部材を前記貫通孔の下方で係止し、前記昇降部材の下降移動を停止させるものである。
【0010】
さらに、前記昇降部材と前記ストッパ部材の所定位置との相対的な位置関係を検出する位置センサを備え、前記位置センサは、前記昇降部材と前記ストッパが接触する位置よりも前記昇降部材が僅かに高い位置で前記昇降部材を検知して出力し、前記移動制御装置により前記昇降部材の移動を停止させるものである。
【0011】
また、前記移動制御装置は、前記昇降部材の下降移動の許容限度位置を示す所定の基準値と前記位置センサの出力とを比較し、前記位置センサの出力が前記基準値を逸脱すると、前記昇降部材及び前記可動台の移動動作を停止させる制御を行う停止制御手段を備え、前記許容限度位置は、前記昇降部材が下降移動して前記昇降部材の一部が前記ストッパ部材に当接して係止される位置よりも高い位置に設定されているものである。
【0012】
また、前記ストッパ部材が前記可動台に対して固定された位置は、前記昇降部材とともに下降移動した前記剥離用穿刺突起の先端が前記テーブルに載置された前記半導体ウエハ表面に達する前に、前記昇降部材の下降移動を停止させる位置である。
【0013】
前記位置センサは、前記昇降部材が前記ストッパから離れて、前記穿刺突起が前記半導体ウエハのバンプを回避可能な高さまで上昇したときにもその出力がなされ、前記移動制御装置は、前記可動台による前記半導体ウエハの前記バンプ上方での動作を許可するものでも良い。
【0014】
また、前記剥離用穿刺突起の先端位置を測定する測定ブロックと、所定の位置から前記測定ブロックと前記保護テープ表面の位置までの上下方向距離を検知する測定手段とを備え、前記移動制御装置は、前記測定ブロックを用いた測定結果と前記測定手段の検知結果とに基づいて前記ストッパ部材の固定位置及び前記昇降部材の下降移動の許容限度位置を算出するものである。
【0015】
またこの発明は、表面に保護テープが貼付された半導体ウエハが載置されるテーブルと、前記テーブルに対して水平方向に移動可能に設けられた可動台と、前記可動台に対して上下動可能に設けられた昇降部材と、前記保護テープの端面に差し込まれる剥離用穿刺突起と、前記昇降部材に設けられ前記剥離用穿刺突起を保持した剥離部と、前記剥離用穿刺突起により剥離された前記保護テープを挟持する挟持部とを備え、前記剥離用穿刺突起により剥離された端縁部を捲り上げ、この捲り上げられた前記保護テープ端縁部を前記挟持部により挟んで保持し、その保持した部分を移動させて前記保護テープを前記半導体ウエハから剥離するテープ剥離装置であって、前記昇降部材及び前記可動台の各移動動作を制御する移動制御装置と、前記保護テープ表面の位置を検知するテープ検知センサとを備え、前記移動制御装置は、前記テープ検知センサにより検知された前記保護テープ表面の位置と、あらかじめ設定された保護テープ表面位置との差が、所定の閾値を超えていた場合に、前記昇降部材及び前記可動台の移動動作を停止させる制御を行う停止制御手段を備えたテープ剥離装置である。
【0016】
前記移動制御装置は、使用する前記半導体ウエハと前記保護テープの厚み情報をあらかじめ設定する設定手段を有するものである。
【0017】
また、前記移動制御装置は、前記停止制御手段に加えて、前記剥離用穿刺突起を前記保護テープに突き刺す高さよりわずかに低い位置に前記昇降部材が移動した場合は、前記昇降部材の移動動作を停止させる制御を行うものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明のテープ剥離装置は、剥離用穿刺突起が取り付けられた昇降部材の下降をストッパ部材によって電気的、機械的に制限する構造的のため、例えば、各部材を動作させる移動制御装置の制御回路が外来ノイズ等に起因する誤動作によって一時的に昇降部材が制御不能の状態になっても、剥離用穿刺用突起が所定の位置以下に下降することを確実に制限することができる。そして、この剥離用穿刺用突起の下降が制限される位置を半導体ウエハの表面より僅かに高い位置に設定すれば、剥離用穿刺突起が半導体ウエハに接触して破損させることを回避することができる。
【0019】
また、上記の機械的な制限手段に加え、移動制御装置の停止制御手段による制御によって剥離用穿刺用突起が所定の位置以下に下降することを防止する電気的な制限手段を設けることにより、より確実に昇降部材の誤動作を制限することができる。
【0020】
さらに、測定ブロックや測定手段によって、保護テープが貼付された半導体ウエハごとに各部の移動距離を微調整することにより、半導体ウエハの厚みのばらつきや剥離用穿刺突起の先端の変形等が補正され、保護テープの剥離をより良好に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の保護テープ剥離装置の一実施形態の構造を示す模式図である。
【図2】この実施形態の保護テープ剥離前の初期設定動作を説明するフローチャートである。
【図3】この実施形態の保護テープ剥離前の初期設定動作を説明する概略側面図である。
【図4】この実施形態の保護テープ剥離前の初期設定動作を説明する概略側面図である。
【図5】この実施形態の保護テープ剥離前の初期設定動作を説明する概略側面図である。
【図6】この実施形態の保護テープ剥離前の初期設定動作を説明する概略側面図である。
【図7】この実施形態の保護テープ剥離動作を説明するフローチャートである。
【図8】この実施形態の保護テープ剥離動作を説明する概略側面図である。
【図9】この実施形態の保護テープ剥離動作を説明する概略側面図である。
【図10】この実施形態の保護テープ剥離動作を説明する概略側面図である。
【図11】この実施形態の保護テープ剥離動作を説明する概略側面図である。
【図12】この実施形態の保護テープ剥離動作を説明する概略側面図である。
【図13】この実施形態のテープ剥離装置を示す斜視図である。
【図14】この実施形態の剥離部を示す斜視図である。
【図15】この実施形態の剥離用穿刺突起を示す正面図(a)、側面図(b)、斜視図(c)である。
【図16】この実施形態の他の剥離用穿刺突起を示す正面図(a)、側面図(b)、斜視図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のテープ剥離装置の一実施形態について図に基づいて説明する。この実施形態のテープ剥離装置10は、半導体ウエハ12の表面に貼付された保護テープ14の剥離に使用される。テープ剥離装置10の構成は、図13に示すように、基台16とその上方に水平方向に設けられた載置部16aとを備えている。基台16上には左右一対に設けられ、水平方向に移動可能な可動台18と、可動台18の一対の支柱18aに両端が保持された水平部材20と、支柱18aに設けられたガイドレール21に沿って上下移動自在に設けられた昇降部材22を備えている。さらに昇降部材22には、保護テープ14を剥離する剥離部24が設けられている。
【0023】
可動台18は、図示しないモータにより、基台16上の一対の図示しないガイドレール上を移動可能に設けられている。さらに、基台16の側方には、可動台18の移動距離を検知するセンサレール26が設けられている。また、昇降部材22は、可動台18の支柱18aに設けられたガイドレール21に沿って昇降可能に設けられ、昇降部材22を昇降動作させるモータ28とボールネジ30により成る駆動装置が、水平部材20に設けられている。
【0024】
剥離部24は、図14に示すように、水平方向に櫛歯状に突出した差込部34と、差込部34の間に位置して差込部34の突出方向に対して斜めに突出した複数の剥離用穿刺突起36が等間隔に水平方向に並べられて設けられている。差込部34は、突出方向に移動可能に剥離部24の本体に取り付けられている。なお、剥離用穿刺突起36は、図15に示す形状であるが、その上面に凹凸部や粗面等の滑り止めが形成されていてもよい。また、図16に示すように、剥離用穿刺突起36の上方に、捲り上げた保護テープ14の反り返りを防ぐガイド38が設けられていてもよい。
【0025】
また、図14に示すように、差込部34と剥離用穿刺突起36の垂直方向上方には、剥離部24に揺動自在に保持された挟持部40が設けられている。挟持部40は、剥離用穿刺突起36が位置する部分が円弧状に切り欠かれて凹部40aが形成され、その凹部40aの間の凸部40b先端と差込部34とで保護テープ14を挟持することができる。
【0026】
テープ剥離装置10のさらに詳細な構成を、図1に基づいて説明する。剥離部24は、昇降部材22の下端部に取り付けられ、モータ28とボールネジ30から成る駆動装置によって、昇降部材22とともに昇降自在に設けられている。水平部材20の可動台18側部分には貫通孔20aが形成され、昇降部材22にも貫通孔20aと上下に対向した位置に貫通孔22aが形成されている。貫通孔20a,22aには、ストッパ部材であるストッパ軸42の軸部42aが垂直に挿通され、貫通孔22aから下方に突出したストッパ軸42の下端部には、ストッパ部であるフランジ部42bが形成されている。水平部材20の貫通孔20aの下面側周縁部には、軸部42aを保持するとともに水平部材20に対して上下移動させて保持する軸クランプユニット44が取り付けられ、ストッパ軸42が水平部材20に固定されている。また、昇降部材22の貫通孔22a周縁部には、ストッパ軸42の軸部42aが挿通された筒状の本体46aと、本体46aの上方にばね46bを挟んで設けられた円盤状のガイド46cとから成る軸支持部46が取り付けられている。軸支持部46はストッパ軸42の軸部42aが傾かないように支持するものであり、ストッパ軸42の上下移動や昇降部材22の昇降動作を妨げない。しかし、ストッパ軸42のフランジ部42bは、本体46aの内径よりも大きく形成されているため、フランジ部42bが本体46aの下面46dに係止されると、それ以上は移動できない。また、昇降部材22が上昇して軸支持部46のガイド46cが軸クランプユニット44に当接すると、ばね46bに下向きの付勢力が生じて昇降部材22の上昇動作が妨げられ、衝突が回避される。
【0027】
ストッパ軸42のフランジ部42bの下面側には、位置センサ48が設けられている。位置センサ48は、フランジ部42bと昇降部材22の相対的な位置関係を検知するもので、ここでは、フランジ部42b上面と軸支持部46の下面46dとの隙間の距離を検知する。
【0028】
昇降部材22には、接触プローブ50aを備えた高さ検知用の測定手段50が設けられ、ている。また、基台16には高さ検知の基準とする測定ブロック52が固定されている。測定手段50は、半導体ウエハ12の高さや測定ブロック52の高さを測定することができる。測定ブロック52は、テープ剥離装置10が有する制御系座標の較正用の基準面となる部材である。
【0029】
載置部16a上には、テープ剥離作業の対象である半導体ウエハ12を保持可能なテーブル54が固定されている。半導体ウエハ12は、バンプ12aが形成された上面にテープ基材14aと粘着部14bとで成る保護テープ14が貼付されており、テーブル54は、保護テープ14と反対の下面をエアー吸引するなどして半導体ウエハ12を保持することができる。
【0030】
また、テープ剥離装置10は図示しないマイクロコンピュータ等により構成された移動制御装置を備えている。移動制御装置は、昇降部材22、ストッパ軸42、可動台18の各移動動作を制御する制御命令を、昇降部材22の駆動装置やストッパ軸42の駆動装置である軸クランプユニット44等に送る。さらに、移動制御装置は、位置センサ素子48の出力を受け、位置センサ48の出力が所定の基準値を逸脱すると昇降部材22及び可動台18の移動動作を停止させる制御命令を出す停止制御手段を備えている。さらに、移動制御装置は、使用する半導体ウエハ12と保護テープ14の厚み情報をあらかじめ入力して設定する設定手段を有する。また、移動制御装置は、停止制御手段に加えて、剥離用穿刺突起36を保護テープ12に突き刺す高さよりわずかに低い位置に穿刺突起36が位置するように、昇降部材22が移動した場合は、昇降部材22の移動動作を停止させる制御をおこなうものである。移動制御装置及び停止制御手段の機能については、後の動作説明の中で詳しく述べる。
【0031】
次に、テープ剥離装置10のテープ剥離作業前に行う初期設定動作を、図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
(ステップS11)各部材が各々の初期位置に移動する。ここでは、図3に示す状態が原点位置であり、挟持部40は、凸部40bが剥離用穿刺突起36の上方の離れた状態で保持され、差込部34は、先端が剥離用穿刺突起36の先端よりも後ろの方に収められている。
【0033】
図3に現した各部の寸法と距離を示す記号の定義を説明すると、Twが半導体ウエハ12の基板厚さ、Tpがバンプ高さ、Boが測定ブロック52の上面からテーブル54の上面までの高さ方向の距離である。
【0034】
(ステップS12)水平部材20とともに昇降部材22が原点位置から移動して、図4に示すように、接触プローブ50aを測定ブロック52上面に当接させ、原点位置から測定ブロック52までの距離Aoを検知する。そして、その検知結果は図示しない移動制御装置に送られ、移動制御装置はこの検知結果に基づいて制御系座標の較正を行う。
【0035】
(ステップS13)水平部材20と昇降部材22が移動して、図5に示すように接触プローブ50aを半導体ウエハ12上に貼付された保護テープ14上面に当接させ、原点位置から保護テープ14上面までの距離Eoを検知する。そして、その検知結果は図示しない移動制御装置に送られる。
【0036】
(ステップS14)水平部材20とともに昇降部材22が移動して、図6に示すように剥離用穿刺突起36を測定ブロック52上面に当接させ、剥離用穿刺突起36先端の位置を、原点から測定ブロック52までの距離Doとして検知する。そして、その検知結果は図示しない移動制御装置に送られる。
【0037】
(ステップS15)移動制御装置は、半導体ウエハ12上に貼付された保護テープ14上面の位置を示す距離Eoが、所定の規格範囲内であるか否かを判定する。そして、距離Eoが規格範囲を逸脱したときはステップS16へ、規格範囲内のときはステップS17に進む。
【0038】
(ステップS16)距離Eoが規格範囲を逸脱している場合、移動制御装置はアラームを発報すると共にテープ剥離装置10の動作を停止させる。従って、例えば、テーブル54上で半導体ウエハ12が水平に固定されていない等の異常があれば、距離Eoが規格範囲よりも短い値を示すことにより検知することができ、また、半導体ウエハ搬送機構の搬送エラーによりテーブル54に半導体ウエハ12が供給されていない等の異常があれば、距離Eoが規格範囲よりも長い値を示すことにより検知することができる。
【0039】
(ステップS17)距離Eoが規格範囲内である場合、移動制御装置は半導体ウエハ12の状態に異常がないと判断し、水平部材20と昇降部材22は、ステップ11で説明した初期位置に移動する。
【0040】
(ステップS18)移動制御装置の制御命令により、軸クランプユニット44が動作し、ストッパ軸42及びフランジ42bの高さ位置を調節する。ストッパ軸42が固定される位置は、昇降部材22と一体に下降移動する剥離用穿刺突起36の先端が、半導体ウエハ12表面よりも距離αだけ高いところで停止させることができる位置であり、移動制御装置に設定された制御系座標が有する各部材の位置情報に基づく演算処理によって算出される。そして、剥離用穿刺突起36先端の原点位置から停止位置までの距離ST1は、式(1)で表される。
【数1】

【0041】
距離αは、半導体ウエハ12自体の厚みのばらつきとテープ剥離装置10の位置決め誤差を考慮して、剥離用穿刺突起36の先端が半導体ウエハ12表面に接触しないように極力短い距離に設定する。従って、剥離用穿刺突起36先端の位置、バンプ12aの高さよりも下方になるように距離ST1が設定されるのが好ましい。
【0042】
(ステップS19)停止処理手段が昇降部材22及び可動台18の移動動作を停止させる制御命令を発する判断基準とする第1の基準値を設定する。ここでは、第1の基準値を、ストッパ軸42のフランジ42bの上面と軸支持部46の下面46dとの隙間が距離β1になったときの位置センサ48の出力とする。すなわち、この第1の基準値によって、昇降部材22と一体に下降移動する剥離用穿刺突起36の先端が、半導体ウエハ12表面よりも距離(α+β1)だけ高いところで停止させることを定めることができ、剥離用穿刺突起36先端の原点位置から停止位置までの距離ST2は、式(2)で表される。
【数2】

【0043】
距離β1は、フランジ42bの上面と軸支持部46の下面46との接触を回避するための距離であり、動作停止動作までの通常の所要時間などを考慮して比較的短い距離に設定する。
【0044】
(ステップS20)停止処理手段が昇降部材22及び可動台18の移動動作を停止させる制御命令を発する判断基準とする第2の基準値を設定する。ここでは、第2の基準値を、ストッパ軸42のフランジ42bの上面と軸支持部46の下面46dとの隙間が距離β2になったときの位置センサ48の出力とする。すなわち、この第2の基準値によって、昇降部材22と一体に下降移動する剥離用穿刺突起36の先端が半導体ウエハ12表面のバンプ12aよりも距離(α+β2)だけ高いところで停止させることを定めることができ、剥離用穿刺突起36先端の原点位置から停止位置までの距離ST2は、式(3)で表される。
【数3】

【0045】
距離β2は、剥離用穿刺突起36の先端が半導体ウエハ12表面に接触しないように半導体ウエハ12自体の厚みのばらつきも考慮しつつ、保護テープの剥離動作に支障のない範囲で極力長い距離に設定する。従って、距離β2は距離β1よりも長いほうが望ましい。上述したステップS10〜S20の工程が完了すると、テープ剥離作業前の初期設定動作が終了する。
【0046】
次に、テープ剥離装置10のテープ剥離作業を行う動作を、図7のフローチャートに基づいて説明する。まず、(ステップS21)図8に示すように、剥離用穿刺突起36の先端を半導体ウエハ12の外周端位置に移動する。このとき、剥離用穿刺突起36先端の原点位置から当該外周端位置までの距離D1は、式(5)の条件の範囲内で、式(4)によって決定される。
【数4】

【数5】

【0047】
距離Eoは原点位置から保護テープ12表面までの距離であり、保護テープ剥離の作業性確保の観点から、距離γは、保護テープ14の基材14aの厚み分程度とすることが望ましい。これにより、半導体ウエハ12自体の厚みのばらつきの影響もキャンセルすることができる。
【0048】
(ステップS22)剥離用穿刺突起36が先端の方向に徐々に移動し、図9、図10に示すように、保護テープ14を捲り上げる。(ステップS23)移動制御装置は、挿入進度ΔCが距離Trに達したか否かを判定する。距離Trは、半導体ウエハ12の外周端からの距離であってバンプ12aが存在しない領域を示す距離としてあらかじめ設定されており、一般的には2.5〜3mm程度である。挿入進度ΔCは、移動制御装置に設定された制御系座標が有する各部材の位置情報に基づいて認識する。
【0049】
そして、図9に示す状態のように挿入進度ΔCが距離Trに達していないときは、ステップS22に戻る。また、図10に示す状態のように挿入進度ΔCが距離Trに達したときはステップS24に進む。
【0050】
(ステップS24)剥離用穿刺突起36が進入方向から僅かに斜め上方に移動して、保護テープ14の端部を斜め上方に引き上げる。従って、万一、剥離用穿刺突起36が半導体ウエハ12の表面に接触しそうになっても、電子素子となる半導体ウエハ12上のバンプ12a等を傷付けることはない。そして、差込部34が剥離用穿刺突起36の前方に向けて移動し、同時に挟持部40が下方に揺動して、図11に示すように凸部40bの先端と差込部34とで保護テープ14の端縁部を挟持する。そして、剥離部24は、図12に示すように、保護テープ14の端縁部を挟持したまま前進し、保護テープ14を半導体ウエハ12から剥離する(ステップS25)。
【0051】
テープ剥離装置10は、テープ剥離作業のステップS21〜S25で特に異常が生じなければ、次の半導体ウエハ12がテーブル54上に搬入され、上述のステップS10〜S25の工程を繰り返す。
【0052】
万一、テープ剥離作業中のステップS21〜S25において、剥離用穿刺突起36が下降移動して上記の距離ST1,ST2,ST3の少なくとも1つを超えた位置に達すると、即時にテープ剥離作業が停止する。
【0053】
以上のように、移動制御装置には、剥離用穿刺突起36先端の下降移動の許容限度位置として互いに異なる3つの距離ST1,ST2,ST3が設定され、さらに剥離用穿刺突起36先端が距離ST1,ST2,ST3に達したことは、各々異なる手段で検知し所定の停止機構によって下降移動を停止させる。
【0054】
距離ST1,ST2,ST3は、式(1)〜(3)に示すように、距離ST1>距離ST2、距離ST1>距離ST3の関係を有し、例えば10μm以下の精度で設定され、かつ同様な精度の検知が可能である。従って、保護テープの剥離作業中に剥離用穿刺突起36先端が距離ST2,ST3のいずれか一方を超えて下降した時点で、速やかに停止処理手段の制御命令によって昇降部材22及び可動台18の移動動作を停止させ、剥離用穿刺突起36が半導体ウエハ12に接触することを回避する。そして、仮に昇降部材22及び可動台18の停止が想定以上に遅れたとしても、剥離用穿刺突起36先端が距離ST1に達したところでストッパ軸42のフランジ42aが軸支持部46の下面46dを係止し、機械的方法によって時間遅れなくその移動動作を停止させることができる。従って、テープ剥離装置10は、3重の保護によって、半導体ウエハ12の破損を回避する動作と、フランジ42aが軸支持部46の下面46dを係止する動作が頻繁に起こらないようにして当該係止部分に磨耗や破損が生じにくくする動作を実現することができる。
【0055】
なお、この発明のテープ剥離装置は上記実施形態に限定されるものではなく、昇降部材及び可動台の各移動動作を制御する移動制御装置と、保護テープ表面の位置を検知するテープ検知センサにより、テープ検知センサで検知された保護テープ表面の位置と、あらかじめ入力されて設定された保護テープ表面位置との差が所定の値を超えていた場合に、昇降部材及び可動台の移動動作を停止させる制御を行うようにしてもよい。
【0056】
位置センサは、複数の出力を有し、穿刺突起が半導体ウエハ表面のバンプを回避する高さまで上昇したときに、その出力がなされ、剥離用穿刺突起が半導体ウエハ表面のバンプに接することなく、可動台がバンプ領域を動作するように制御しても良い。
【0057】
さらに、ストッパ部材は、昇降部材と一体に下降移動する部材を係止する構造であればよく、昇降部材の下面を直接係止する構造や、軸支持部以外の部材の下面等を係止する構造であってもよい。
【0058】
また、低コストで汎用のテープ剥離装置を構成する場合は、停止制御手段を設けなくともよい。また、テープ剥離装置の始業点検を行い、テープ剥離作業の開始前に制御系座標の調整が行われるとき等は、テープ剥離装置に測定ブロック及び測定手段を設けなくともよい。停止制御手段を設ける場合でも、停止制御手段に設定する基準値は、必要に応じて1つ又は3つ以上設定してもよい。
【0059】
さらに、テープ検知センサや位置センサ等の測定手段は接触式のセンサに限定するものではなく、例えばレーザ光等の光学的計測手段を利用した非接触式のセンサ等であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 テープ剥離装置
12 半導体ウエハ
14 保護テープ
16 基台
18 可動台
20 水平部材
22 昇降部材
24 剥離部
28 モータ
30 ボールネジ
34 差込部
36 剥離用穿刺突起
40 挟持部
42 ストッパ軸
42a 軸部
42b フランジ
44 軸クランプユニット
46 軸支持部
46a 本体
46d 下面
48 位置センサ
50 測定手段
50a 接触プローブ
52 測定ブロック
54 テーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に保護テープが貼付された半導体ウエハが載置されるテーブルと、前記テーブルに対して水平方向に移動可能に設けられた可動台と、前記可動台に対して上下動可能に設けられた昇降部材と、前記保護テープの端面に差し込まれる剥離用穿刺突起と、前記昇降部材に設けられ前記剥離用穿刺突起を保持した剥離部と、前記剥離用穿刺突起により剥離された前記保護テープを挟持する挟持部とを備え、前記剥離用穿刺突起により剥離された端縁部を捲り上げ、この捲り上げられた前記保護テープ端縁部を前記挟持部により挟んで保持し、その保持した部分を移動させて前記保護テープを前記半導体ウエハから剥離するテープ剥離装置において、
前記可動台に対して上下方向に位置調整可能に固定され、前記昇降部材の下降位置を、前記剥離用穿刺突起が前記半導体ウエハの表面位置よりも高い位置に制限するストッパ部材と、
前記昇降部材及び前記可動台の各移動動作を制御する移動制御装置とを備え、
前記ストッパ部材は、前記保護テープの端面に前記剥離用穿刺突起が差し込まれる前に前記可動台に対する相対位置が固定され、前記昇降部材が下降移動したときに、所定の係止位置で前記昇降部材の下降移動を停止可能に設けられたこと特徴とするテープ剥離装置。
【請求項2】
前記ストッパ部材は、前記昇降部材の貫通孔に挿通された軸部とその一端に形成され前記貫通孔の下側周縁部に係止可能な当接部とから成り、
前記ストッパ部材の前記当接部は、前記昇降部材が下降移動したときに、前記昇降部材を前記貫通孔の下方で係止し、前記昇降部材の下降移動を停止させること特徴とする請求項1記載のテープ剥離装置。
【請求項3】
前記昇降部材と前記ストッパ部材の所定位置との相対的な位置関係を検出する位置センサを備え、
前記位置センサは、前記昇降部材と前記ストッパが接触する位置よりも前記昇降部材が僅かに高い位置で前記昇降部材を検知して出力し、前記移動制御装置により前記昇降部材の移動を停止させることを特徴とする請求項1記載のテープ剥離装置。
【請求項4】
前記移動制御装置は、前記昇降部材の下降移動の許容限度位置を示す所定の基準値と前記位置センサの出力とを比較し、前記位置センサの出力が前記基準値を逸脱すると、前記昇降部材及び前記可動台の移動動作を停止させる制御を行う停止制御手段を備え、
前記許容限度位置は、前記昇降部材が下降移動して前記昇降部材の一部が前記ストッパ部材に当接して係止される位置よりも高い位置であることを特徴とする請求項3記載のテープ剥離装置。
【請求項5】
前記ストッパ部材が前記可動台に対して固定される位置は、前記昇降部材とともに下降移動した前記剥離用穿刺突起の先端が、前記テーブルに載置された前記半導体ウエハ表面に達する前に、前記昇降部材の下降移動を停止させる位置であることを特徴とする請求項2,3または4記載のテープ剥離装置。
【請求項6】
前記位置センサは、前記昇降部材が前記ストッパから離れて、前記穿刺突起が前記半導体ウエハのバンプを回避可能な高さまで上昇したときにもその出力がなされ、前記移動制御装置は、前記可動台による前記半導体ウエハの前記バンプ上方での動作を許可すること特徴とする請求項3記載のテープ剥離装置。
【請求項7】
前記剥離用穿刺突起の先端位置を測定する測定ブロックと、所定の位置から前記測定ブロックと前記保護テープ表面の位置までの上下方向距離を検知する測定手段とを備え、前記移動制御装置は、前記測定ブロックを用いた測定結果と前記測定手段の検知結果とに基づいて前記ストッパ部材の固定位置及び前記昇降部材の下降移動の許容限度位置を算出することを特徴とする請求項3記載のテープ剥離装置。
【請求項8】
表面に保護テープが貼付された半導体ウエハが載置されるテーブルと、前記テーブルに対して水平方向に移動可能に設けられた可動台と、前記可動台に対して上下動可能に設けられた昇降部材と、前記保護テープの端面に差し込まれる剥離用穿刺突起と、前記昇降部材に設けられ前記剥離用穿刺突起を保持した剥離部と、前記剥離用穿刺突起により剥離された前記保護テープを挟持する挟持部とを備え、前記剥離用穿刺突起により剥離された端縁部を捲り上げ、この捲り上げられた前記保護テープ端縁部を前記挟持部により挟んで保持し、その保持した部分を移動させて前記保護テープを前記半導体ウエハから剥離するテープ剥離装置において、
前記昇降部材及び前記可動台の各移動動作を制御する移動制御装置と、
前記保護テープ表面の位置を検知するテープ検知センサとを備え、
前記移動制御装置は、前記テープ検知センサにより検知された前記保護テープ表面の位置と、予め設定された保護テープ表面位置との差が、所定の閾値を超えていた場合に、前記昇降部材及び前記可動台の移動動作を停止させる制御を行う停止制御手段を備えたこと特徴とするテープ剥離装置。
【請求項9】
前記移動制御装置は、使用する前記半導体ウエハと前記保護テープの厚み情報をあらかじめ設定する設定手段を有すること特徴とする請求項8記載のテープ剥離装置。
【請求項10】
前記移動制御装置は、前記停止制御手段に加えて、前記剥離用穿刺突起を前記保護テープに突き刺す高さよりわずかに低い位置に前記昇降部材が移動した場合は、前記昇降部材の移動動作を停止させる制御を行うこと特徴とする請求項8記載のテープ剥離装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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