説明

デアセチラーゼ阻害剤およびその使用



本発明は、式(I)の新規化合物、およびその医薬組成物を提供する。本発明化合物は、デアセチラーゼ阻害剤(例えば、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤)として有用であり、癌のような増殖性疾患の処置に有用でありうる。特に、本発明化合物は、HDAC6阻害剤である。本発明は、さらに、本発明化合物の調製のための合成法も提供する。他の態様において、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物、および医薬的に許容される賦形剤を含んで成る医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、医薬組成物は、癌のような増殖性疾患の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年7月23日に出願された米国仮特許出願第61/082,899号の優先権を米国特許法§119(e)の下で主張し、この出願は本明細書に参照として援用される。
【0002】
発明の背景
特定の生物学的機能に影響を与える小有機分子を同定することは、生物学および医療の両方に強い影響を与える取り組みである。そのような分子は、治療薬として、および生物学的機能のプローブとして、有用である。小分子が、それらが結合している生物学的分子の機能を変化させるために使用される、化学遺伝学の新興分野からの単なる一例において、これらの分子は、化学タンパク質ノックアウトとして作用し、それによってタンパク質機能の損失を生じさせることによって、シグナル伝達経路を解明するのに有用となっている(非特許文献1;非特許文献2)。さらに、これらの小分子と特定の生物学的標的との相互作用、および特定の生物学的機能に影響を与えるそれらの能力により、それらは療法開発の候補としての役割をする場合もある。
【0003】
特に関心の持たれる1つの生物学的標的は、ヒストンデアセチラーゼである(例えば、癌の処置のためのヒストンデアセチラーゼの阻害剤の使用についての論文:非特許文献3;非特許文献4;ならびに特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照;各文献は、参照により本明細書に組み入れられる)。リシン残基のアセチル化および脱アセチル化によるタンパク質の翻訳後修飾は、細胞機能の調節において重要な役割を果たしている。HDACは、ヒストンタンパク質のN−アセチル−リシン残基および他の転写制御因子の脱アセチル化によって、遺伝子発現を調節するジンクヒドロラーゼである(非特許文献5)。HDACは、細胞形態および分化を制御する細胞経路に関与し、少なくとも1つのHDAC阻害剤が、それ以外のものに対しては不応性の癌を処置するのに有効であることが示されている(非特許文献6)。Znを補助因子として使用する11のヒトHDACが特性決定されている(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;Zhouら、Proc.非特許文献12;非特許文献13)。これらのメンバーは、3つの関連する種類(種類I、IIおよびIII)に分類される。NADを補助因子として使用するさらに7つのHDACが同定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7250504号明細書
【特許文献2】米国特許第6777217号明細書
【特許文献3】米国出願公開第2005/0287629号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Schreiberら、J.Am.Chem.Soc.,1990,112,5583
【非特許文献2】Mitchison,Chem.and Biol.,1994,1,3
【非特許文献3】Marksら、Nature Reviews Cancer 2001,1,194
【非特許文献4】Johnstoneら、Nature Reviews Drug Discovery 2002,1,287
【非特許文献5】Hassingら、Curr.Opin.Chem.Biol,1997,1,300−308
【非特許文献6】Warrelら、J.Natl.Cancer Inst.1998,90,1621−1625
【非特許文献7】Tauntonら、Science 1996,272,408−411
【非特許文献8】Yangら、J.Biol.Chem.1997,272,28001−28007
【非特許文献9】Grozingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1999,96,4868−4873
【非特許文献10】Kaoら、Genes Dev.2000,14,55−66
【非特許文献11】Huら、J.Biol.Chem.2000,275,15254−15264
【非特許文献12】Natl.Acad.Sci.U.S.A.2001,98,10572−10577
【非特許文献13】Venterら、Science 2001,291,1304−1351
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌のような異常デアセチラーゼ活性に関連した疾患を処置するために、より強力なおよび/またはより特異的なデアセチラーゼ阻害剤(例えばHDAC阻害剤)が現在も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は、新規デアセチラーゼ阻害剤、ならびに該新規化合物の製造法および使用法を提供する。特定の実施形態において、デアセチラーゼ阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼ(HADC)阻害剤である。特定の実施形態において、デアセチラーゼ阻害剤は、チューブリンデアセチラーゼ(TDAC)阻害剤である。本発明化合物は、癌のような増殖性疾患の処置に有用となりうる。
【0008】
例えば、1つの態様において、本発明は式(I)の新規化合物を提供する:
【0009】
【化1】

[式中、R、R、R、R、m、n、kおよびpは、本明細書に定義される通りである]。特定の実施形態において、m、kおよびpは0である。特定の実施形態において、nは3、4、5、6、または7である。特定の実施形態において、Rは金属キレート部分である。特定の実施形態において、RはZn2+キレート基である。特定の実施形態において、Rはアシル部分である。特定の実施形態において、Rは下記から成る群から選択される:
【0010】
【化2】

特定の実施形態において、化合物は下記の式で示される:
【0011】
【化3】

本発明は、本発明化合物の種々の医薬的に許容される形態、例えば、立体異性体、鏡像異性体、互変異性体、塩、溶媒化合物、水化物、共結晶、および多形体も提供する。
【0012】
他の態様において、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物、および医薬的に許容される賦形剤を含んで成る医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、医薬組成物は、癌のような増殖性疾患の処置に有用である。
【0013】
さらに他の態様において、本発明は、被験体または生物学的試料におけるデアセチラーゼ活性を阻害する方法を提供し、該方法は、被験体または生物学的試料におけるデアセチラーゼ活性を阻害するのに有効なある量の本発明化合物を、該被験体に投与するか、または該生物学的試料に接触させることを含んで成る。特定の実施形態において、該方法は、被験体または生物学的試料におけるヒストンデアセチラーゼ活性を特異的に阻害するために使用される。特定の実施形態において、該方法は、被験体または生物学的試料における特定のヒストンデアセチラーゼ活性を特異的に阻害するために使用される。特定の実施形態において、化合物は、特定のHDAC(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10、HDAC11)またはHDACのクラス(例えば、クラスI、IIおよび/またはIII)を特異的に阻害する。特定の実施形態において、本発明化合物はHDAC6を特異的に阻害する。特定の実施形態において、該方法は、被験体または生物学的試料におけるチューブリンデアセチラーゼ活性を特異的に阻害するために使用される。
【0014】
特定の実施形態において、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物を、増殖性疾患を有する被験体に投与することを含んで成る、増殖性疾患(例えば、癌、良性新生物、自己免疫性疾患、炎症性疾患、糖尿病性神経障害)の処置法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物を、それを必要とする被験体に投与することによって、癌を処置する(例えば、腫瘍細胞死をもたらすか、または腫瘍細胞の増殖を阻害する)方法を提供する。癌の例は、乳癌、子宮頸癌、結腸および直腸癌、白血病、肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌および胃癌を包含するが、それらに限定されない。特定の実施形態において、本発明化合物は、白血病細胞および黒色腫細胞に対して活性であり、従って、白血病(例えば、骨髄性、リンパ球性、骨髄球性およびリンパ球芽性白血病)および悪性黒色腫の処置に有用である。特定の実施形態において、本発明化合物は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の処置に有用である。該化合物は、当分野で既知の任意の方法によって投与してよい。特定の実施形態において、該化合物は、経口的または非経口的に投与される(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、および/または皮下注射による)。
【0015】
本発明化合物は、生物学的機能を検査するツールとしても有用である。該化合物は、遺伝子発現を検査するか、または生物学的経路を解明するために使用しうる。特定の実施形態において、該化合物は、シグナル伝達経路のプローブとして使用される。
【0016】
さらに他の態様において、本発明は、本発明化合物およびその中間体を調製する方法を提供する。そのような方法は、アルデヒド含有化合物とヒドラジド含有化合物とを反応させて、式(I)の化合物を得ることを含んで成る。
【0017】
定義
特定の官能基および化学用語の定義を、以下に詳しく記載する。本発明の解釈上、化学元素は、元素の周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75版、内表紙に従って同定され、特定の官能基は、一般に、それに記載されているように定義される。さらに、有機化学の一般原理、ならびに特定の官能部分および反応性が、下記の文献に記載されている:Organic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry、第5版、John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;Carruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis、第3版、Cambridge University Press,Cambridge,1987;各文献の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0018】
本明細書に記載されている化合物は、任意の数の置換基または官能性部分で置換されていてもよいことを認識されたい。一般に、「置換されている」という用語(「任意」という語がその前にあるか否かにかかわらない)および本発明の式に含有されている置換基は、所定の構造中の水素遊離基の、特定置換基の遊離基での置き換えを意味する。任意所定構造における2つ以上の位置が、特定の群から選択される2つ以上の置換基で置換されていてもよい場合、該置換基は、各位置で同じでも異なってもよい。本明細書において使用される場合、「置換されている」という用語は、有機化合物の全ての許容できる置換基を包含するものと考えられる。広い態様において、許容できる置換基は、有機化合物の、非環式および環式、分岐鎖および非分岐鎖、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族、脂肪族および複素脂肪族(heteroaliphatic)、炭素およびヘテロ原子置換基を包含する。本発明の解釈上、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載されている有機化合物の任意の許容できる置換基を有しうる。さらに、本発明は、いかなる方法においても、有機化合物の許容できる置換基によって限定されないものとする。本発明によって想定される置換基および変数の組合せは、好ましくは、例えば癌を包含するがそれに限定されない増殖性疾患の処置に有用な、安定化合物の生成を生じる組合せである。本明細書において使用される場合、「安定な」という用語は、好ましくは、製造を可能にするのに充分な安定性を有し、かつ、検出されるために充分な期間にわたって、および好ましくは本明細書に詳述されている目的に有用であるために充分な期間にわたって、その化合物の完全性を維持する化合物を意味する。
【0019】
本発明の特定化合物は、1つまたはそれ以上の不斉中心を含んで成ることができ、従って、種々の異性形、例えば立体異性体および/またはジアステレオ異性体として存在することができる。従って、本発明化合物およびその医薬組成物は、個々の鏡像異性体、ジアステレオ異性体または幾何異性体の形態であってよく、または立体異性体の混合物の形態であってもよい。特定の実施形態において、本発明化合物はエナンチオピュア化合物である。特定の他の実施形態において、立体異性体またはジアステレオ異性体の混合物が提供される。
【0020】
さらに、本明細書に記載される場合、特定の化合物は、他に指定されない限り、ZまたはE異性体として存在できる1つまたはそれ以上の二重結合を有しうる。本発明は、さらに、他の異性体を実質的に含有しない個々の異性体としての、または、種々の異性体の混合物、例えば立体異性体のラセミ混合物としての、化合物も包含する。前記化合物自体に加えて、本発明は、これらの化合物の医薬的に許容される誘導体、および1つまたはそれ以上の化合物を含んで成る組成物も包含する。
【0021】
特定の鏡像異性体が所望される場合、それは、いくつかの実施形態において、対応する鏡像異性体を実質的に含有せずに提供してよく、「光学的豊富」と称してもよい。本明細書において使用される場合、「光学的豊富」は、化合物が、有意により大きい比率の1つの鏡像異性体から構成されていることを意味する。特定の実施形態において、化合物は、少なくとも約90wt%の好ましい鏡像異性体から構成されている。他の実施形態において、化合物は、少なくとも約95wt%、96wt%、97wt%、98wt%または99wt%の所望の鏡像異性体から構成されている。好ましい鏡像異性体は、当業者に既知の任意の方法(キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ならびにキラル塩の形成および結晶化を包含する)によってラセミ混合物から分離しうるか、または不斉合成によって調製しうる。例えば、下記の文献を参照:Jacquesら、Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilenら、Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill,NY,1962);Wilen,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)。
【0022】
本明細書において使用される場合、「アシル」という用語は、カルボニル含有官能基、例えば、−C(=O)R’を意味し、ここで、R’は、脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、(脂肪族アリール)、(複素脂肪族)アリール、複素脂肪族(アリール)または複素脂肪族(ヘテロアリール)部分であり、それにより、各脂肪族、複素脂肪族、アリールまたはヘテロアリール部分は、置換または非置換であるか、または置換された(例えば、水素または脂肪族、複素脂肪族、アリールまたはヘテロアリール部分)酸素または窒素含有官能基である(例えば、カルボン酸、エステル、またはアミド官能基を形成する)。
【0023】
本明細書において使用される場合、「脂肪族」という用語は、飽和および不飽和の、直鎖(即ち、非分岐鎖)または分岐鎖脂肪族炭化水素を包含し、それらは、1つまたはそれ以上の官能基で任意に置換されている。当業者によって認識されるように、「脂肪族」は、本明細書において、アルキル、アルケニル、アルキニル部分を包含するものとするが、それらに限定されない。従って、本明細書において使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖または分岐鎖アルキル基を包含する。類似の規定が、他の総称語「アルケニル」、「アルキニル」等にも適用される。さらに、本明細書において使用される場合、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」等の用語は、置換および非置換基の両方を包含する。特定の実施形態において、本明細書において使用される場合、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基(置換、非置換、分岐鎖または非分岐鎖)を示すために使用される。
【0024】
特定の実施形態において、本発明において使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含有する。特定の他の実施形態において、本発明に使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜10個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、本発明に使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、本発明に使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜6個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、本発明に使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜4個の炭素原子を含有する。従って、例示的脂肪族基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、アリル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、イソペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、s−ヘキシル等の部分を包含するが、それらに限定されず、これらは、さらに、1個またはそれ以上の置換基を有しうる。アルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテニル−1−イル等を包含するが、それらに限定されない。代表的アルキニル基は、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニル等を包含するが、それらに限定されない。
【0025】
本明細書において使用される場合、「脂環式」という用語は、脂肪族化合物および環式化合物の特性を合わせ持つ化合物を意味し、環式または多環式脂肪族炭化水素および架橋シクロアルキル化合物を包含するがそれらに限定されず、それらは1個またはそれ以上の官能基で任意に置換されている。当業者に認識されるように、「脂環式」は、本明細書において、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル部分を包含するものとするが、それらに限定されず、それらは、1個またはそれ以上の官能基で任意に置換されている。従って、例示的脂環式基は、例えば、シクロプロピル、−CH−シクロプロピル、シクロブチル、−CH−シクロブチル、シクロペンチル、−CH−シクロペンチル、シクロヘキシル、−CH−シクロヘキシル、シクロヘキセニルエチル、シクロヘキサニルエチル、ノルボルビル部分等を包含するが、それらに限定されず、それらは、さらに、1個またはそれ以上の置換基を有しうる。
【0026】
本明細書において使用される場合、「アルコキシ」(または「アルキルオキシ」)、または「チオアルキル」という用語は、酸素原子または硫黄原子を介して親分子部分に結合している先に定義したアルキル基を意味する。特定の実施形態において、アルキル基は1〜20個の脂肪族炭素原子を含有する。特定の他の実施形態において、アルキル基は1〜10個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、本発明において使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は1〜8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、アルキル基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、アルキル基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含有する。アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、ネオペントキシおよびn−ヘキソキシを包含するが、それらに限定されない。チオアルキルの例は、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ等を包含するが、それらに限定されない。
【0027】
「アルキルアミノ」という用語は、−NHR’の構造を有する基を意味し、ここで、R’は本明細書に定義されているアルキルである。「アミノアルキル」という用語は、NHR’−の構造を有する基を意味し、ここで、R’は本明細書に定義されているアルキルである。特定の実施形態において、アルキル基は1〜20個の脂肪族炭素原子を含有する。特定の他の実施形態において、アルキル基は1〜10個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、本発明において使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は1〜8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、アルキル基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、アルキル基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含有する。アルキルアミノの例は、メチルアミノ、エチルアミノ、イソ−プロピルアミノ等を包含するが、それらに限定されない。
【0028】
本発明化合物の前記脂肪族(および他の)部分の置換基のいくつかの例は、脂肪族;複素脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アルキルアリール;アルキルヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−OH;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;−C(O)R;−CO(R);−CON(R;−OC(O)R;−OCO;−OCON(R;−N(R;−S(O);−NR(CO)Rを包含するが、それらに限定されず、Rの各存在は、独立に、脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールを包含するが、それらに限定されず、それにおいて、前記および本明細書に記載の任意の脂肪族、複素脂肪族、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール置換基は、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖、環式または非環式であってよく、前記および本明細書に記載の任意のアリールまたはヘテロアリール置換基は、置換または非置換であってよい。一般に適用可能な置換基の他の例は、本明細書に記載されている実施例に示されている特定の実施形態によって例示される。
【0029】
一般に、本明細書において使用される場合、「アリール」という用語は、好ましくは3〜14個の炭素原子を有する安定な単環式または多環式不飽和部分を意味し、各炭素原子は置換または非置換であってよい。特定の実施形態において、「アリール」という用語は、各環原子において環の平面に垂直なp軌道を有し、ヒュッケル則(この法則において、環中のπ電子の数は(4n+2)であり、ここでnは整数である)を満たす平面環を意味する。芳香族性についてのこれらの基準の1つまたは全てを満たさない単環式または多環式不飽和部分は、本明細書において、「非芳香族」と定義され、「脂環式」という用語に包含される。
【0030】
一般に、本明細書において使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、好ましくは3〜14個のそれぞれ置換または非置換であってよい炭素原子を有し、O、SおよびNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を環中に(即ち、環炭素原子の代わりに)含んで成る、安定な単環式または多環式不飽和部分を意味する。特定の実施形態において、「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を含んで成り、各環原子において環の平面に垂直なp軌道を有し、ヒュッケル則(この法則において、環中のπ電子の数は(4n+2)であり、ここでnは整数である)を満たす平面環を意味する。
【0031】
本明細書において定義される場合、アリールおよびヘテロアリール部分は、アルキルまたはヘテロアルキル部分を介して結合してもよく、従って、−(アルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)ヘテロアリール、および−(ヘテロアルキル)ヘテロアリール部分も包含することも認識される。従って、本明細書において使用される場合、「アリールまたはヘテロアリール部分」、および「アリール、ヘテロアリール、−(アルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)ヘテロアリール、および−(ヘテロアルキル)ヘテロアリール」という語句は、交換可能である。置換基は、安定化合物の生成を生じる任意の前記置換基、即ち、脂肪族部分に関してかまたは本明細書に開示されている他の部分に関して列挙されている置換基を包含するが、それらに限定されない。
【0032】
本明細書において使用される場合、「アリール」という用語は、当分野における該用語の一般的な意味と有意に異ならず、少なくとも1個の芳香環を含んで成る不飽和環式部分を意味する。特定の実施形態において、「アリール」は、1個または2個の芳香環を有する単環式または二環式炭素環系を意味し、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニル等を包含するが、それらに限定されない。
【0033】
本明細書において使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、当分野における該用語の一般的な意味と有意に異ならず、1個の環原子がS、OおよびNから選択される5〜10個の環原子を有する環式芳香族基を意味し;0、1または2個の環原子が、S、OおよびNから独立に選択される付加的ヘテロ原子であり;残りの環原子は炭素であり;該基は、任意の環原子を介して、分子の残部に結合し、その例は、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル等である。
【0034】
アリールおよびヘテロアリール基(二環式アリール基を包含する)は非置換または置換でありうることが認識され、置換は、該基上の1個またはそれ以上の水素原子が、独立に、下記部分を包含するがそれらに限定されないいずれか1個またはそれ以上の部分によって置き換えられることを包含する:脂肪族;脂環式;複素脂肪族;複素環式;芳香族;複素環式芳香族;アリール;ヘテロアリール;アルキルアリール;ヘテロアルキルアリール;アルキルヘテロアリール;ヘテロアルキルヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−OH;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;−C(O)R;−CO(R);−CON(R;−OC(O)R;−OCO;−OCON(R;−N(R;−S(O)R;−S(O);−NR(CO)R、ここで、Rの各存在は、独立に、下記を包含するが、それらに限定されない:脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、芳香族、複素環式芳香族、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアルキルアリールまたはヘテロアルキルヘテロアリール、ここで、前記および本明細書に記載の任意の脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール置換基は、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖、飽和または不飽和であってよく、前記および本明細書に記載の任意の芳香族、複素環式芳香族、アリール、ヘテロアリール、−(アルキル)アリールまたは−(アルキル)ヘテロアリール置換基は、置換または非置換であってよい。さらに、任意の2個の隣接基が一緒になって、4、5、6または7員の置換または非置換脂環式または複素環式部分を表わしうることも認識される。一般的に適用可能な置換基の他の例は、本明細書に記載されている特定の実施形態によって例示される。
【0035】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、3〜7個、好ましくは3〜10個の炭素原子を有する基を特に意味する。好適なシクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等を包含するが、それらに限定されず、脂肪族、脂環式、複素脂肪族または複素環式部分の場合のように、それらは、下記を包含するが、それらに限定されない置換基で任意に置換されてもよい:脂肪族;脂環式;複素脂肪族;複素環式;芳香族;複素環式芳香族;アリール;ヘテロアリール;アルキルアリール;ヘテロアルキルアリール;アルキルヘテロアリール;ヘテロアルキルヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−OH;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;−C(O)R;−CO(R);−CON(R;−OC(O)R;−OCO;−OCON(R;−N(R;−S(O);−NR(CO)R、ここで、Rの各存在は、独立に、下記を包含するが、それらに限定されない:脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、芳香族、複素環式芳香族、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアルキルアリールまたはヘテロアルキルヘテロアリール、ここで、前記および本明細書に記載の任意の脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール置換基は、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖、飽和または不飽和であってよく、前記および本明細書に記載の任意の芳香族、複素環式芳香族、アリールまたはヘテロアリール置換基は、置換または非置換であってよい。一般的に適用可能な置換基の他の例は、本明細書に記載されている実施例に示されている特定の実施形態によって例示される。
【0036】
本明細書において使用される場合、「複素脂肪族」という用語は、主鎖中の1個またはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている脂肪族部分を意味する。従って、複素脂肪族基は、例えば、炭素原子に代わって、1個またはそれ以上の酸素、硫黄、窒素、燐または珪素原子を含有する脂肪族鎖を意味する。複素脂肪族部分は、直鎖または分岐鎖、および飽和または不飽和であってよい。特定の実施形態において、複素脂肪族部分は、該部分上の1個またはそれ以上の水素原子の、下記を包含するがそれらに限定されない1個またはそれ以上の部分での独立置き換えによって、置換されている:脂肪族;脂環式;複素脂肪族;複素環式;芳香族;複素環式芳香族;アリール;ヘテロアリール;アルキルアリール;アルキルヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−OH;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;−C(O)R;−CO(R);−CON(R;−OC(O)R;−OCO;−OCON(R;−N(R;−S(O);−NR(CO)R、ここで、Rの各存在は、独立に、下記を包含するが、それらに限定されない:脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、芳香族、複素環式芳香族、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアルキルアリールまたはヘテロアルキルヘテロアリール、ここで、前記および本明細書に記載の任意の脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール置換基は、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖、飽和または不飽和であってよく、前記および本明細書に記載の任意の芳香族、複素環式芳香族、アリールまたはヘテロアリール置換基は、置換または非置換であってよい。一般的に適用可能な置換基の他の例は、本明細書に記載されている特定の実施形態によって例示される。
【0037】
本明細書において使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」、「複素環」または「複素環式」という用語は、複素脂肪族化合物および環式化合物の特性を合わせ持つ化合物を意味し、少なくとも1個の環原子がO、SおよびN(窒素および硫黄ヘテロ原子は、任意に酸化されていてよい)から選択されるヘテロ原子である5〜16個の原子を有する飽和および不飽和単環式または多環式環系を包含するが、それらに限定されず、該環系は、本明細書に定義されている1個またはそれ以上の官能基で任意に置換されている。特定の実施形態において、「ヘテロシクロアルキル」、「複素環」または「複素環式」という用語は、少なくとも1個の環原子がO、SおよびN(窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてよい)から選択されるヘテロ原子である非芳香族5、6または7員環または多環式基を意味し、下記を包含するが、それらに限定されない:酸素、硫黄および窒素から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する縮合6員環を含んで成る2または3環式基、それにおいて、(i)各5員環が0〜2個の二重結合を有し、各6員環が0〜2個の二重結合を有し、各7員環が0〜3個の二重結合を有し、(ii)窒素および硫黄ヘテロ原子が任意に酸化されていてよく、(iii)窒素ヘテロ原子が任意に四級化されていてよく、(iv)前記複素環のいずれかがアリールまたはヘテロアリール環に縮合していてよい。代表的な複素環は、下記のような複素環を包含するが、それらに限定されない:フラニル、チオフラニル、ピラニル、ピロリル、チエニル、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリル、イソキサゾリジニル、ジオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、トリアゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、ジチアゾリル、ジチアゾリジニル、テトラヒドロフリル、およびそれらのベンゾ縮合誘導体。特定の実施形態において、「置換された複素環またはヘテロシクロアルキルまたは複素環式」基が使用され、それは、本明細書において使用される場合、該基上の1、2または3個の水素原子の、下記を包含するがそれらに限定されない置換基での独立置き換えによって置換されている先に定義した複素環またはヘテロシクロアルキルまたは複素環式基を意味する:脂肪族;脂環式;複素脂肪族;複素環式;芳香族;複素環式芳香族;アリール;ヘテロアリール;アルキルアリール;ヘテロアルキルアリール;アルキルヘテロアリール;ヘテロアルキルヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−OH;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;−C(O)R;−CO(R);−CON(R;−OC(O)R;−OCO;−OCON(R;−N(R;−S(O);−NR(CO)R、ここで、Rの各存在は、独立に、下記を包含するが、それらに限定されない:脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、芳香族、複素環式芳香族、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアルキルアリールまたはヘテロアルキルヘテロアリール、ここで、前記および本明細書に記載の任意の脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール置換基は、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖、飽和または不飽和であってよく、前記および本明細書に記載の任意の芳香族、複素環式芳香族、アリールまたはヘテロアリール置換基は、置換または非置換であってよい。一般的に適用可能な置換基の他の例は、本明細書に記載されている特定の実施形態によって例示される。
【0038】
さらに、前記および本明細書に記載のいずれの脂環式または複素環式部分も、それに縮合したアリールまたはヘテロアリール部分を含んで成ってよいことが認識される。一般的に適用可能な置換基の他の例は、本明細書に記載されている特定の実施形態によって例示される。本明細書において使用される場合、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を意味する。
【0039】
本明細書において使用される場合、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を意味する。
【0040】
「ハロアルキル」という用語は、それに結合した1、2または3個のハロゲン原子を有する前記のように定義されるアルキル基を示し、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロメチル等のような基によって例示される。
【0041】
本明細書において使用される場合、「アミノ」という用語は、第一級(−NH)、第二級(−NHR)、第三級(−NR)または第四級(−N)アミンを意味し、ここで、R、RおよびRは、独立に、本明細書に定義される脂肪族、脂環式、複素脂肪族、複素環式、アリールまたはヘテロアリール部分である。アミノ基の例は、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ジエチルアミノカルボニル、メチルエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ピペリジノ、トリメチルアミノおよびプロピルアミノを包含するが、それらに限定されない。
【0042】
本明細書において使用される場合、「アルキリデン」という用語は、炭素および水素原子だけから成り、1〜n個の炭素原子を有し、基の両端に自由原子価「−」を有する、置換または非置換、直鎖または分岐鎖、飽和二価基を意味する。特定の実施形態において、アルキリデン部分は1〜6個の炭素原子を有する。
【0043】
本明細書において使用される場合、「アルケニリデン」という用語は、炭素および水素原子だけから成り、2〜n個の炭素原子を有し、基の両端に自由原子価「−」を有する、置換または非置換、直鎖または分岐鎖、不飽和二価基を意味し、該基において、不飽和は二重結合としてのみ存在し、二重結合は鎖の第一炭素と分子の残部との間に存在することができる。特定の実施形態において、アルケニリデン部分は2〜6個の炭素原子を有する。
【0044】
本明細書において使用される場合、「アルキニリデン」という用語は、炭素および水素原子だけから成り、2〜n個の炭素原子を有し、基の両端に自由原子価「−」を有する、置換または非置換、直鎖または分岐鎖、不飽和二価基を意味し、該基において、不飽和は三重または二重結合としてのみ存在し、三重または二重結合は鎖の第一炭素と分子の残部との間に存在することができる。特定の実施形態において、アルキニリデン部分は2〜6個の炭素原子を有する。
【0045】
他に指定されない限り、本明細書において使用される場合、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」、「アルキリデン」、「アルケニリデン」、−(アルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)ヘテロアリール等という用語は、置換および非置換、ならびに直鎖および分岐鎖基を包含する。同様に、「脂肪族」、「複素脂肪族」等という用語は、置換および非置換、飽和および不飽和、ならびに直鎖および分岐鎖基を包含する。同様に、「シクロアルキル」、「複素環」、「複素環式」等という用語は、置換および非置換、ならびに飽和および不飽和基を包含する。さらに、「シクロアルケニル」、「シクロアルキニル」、「ヘテロシクロアルケニル」、「ヘテロシクロアルキニル」、「芳香族」、「複素環式芳香族」、「アリール」、「ヘテロアリール」等という用語は、置換基および非置換基の両方を包含する。
【0046】
本明細書において使用される場合、「医薬的に許容される誘導体」という語句は、そのような化合物の、任意の医薬的に許容される塩、エステル、またはそのようなエステルの塩、または任意の他のアダクトもしくは誘導体を示し、それは、患者に投与した際に、本明細書においてそれ以外で記載されている化合物、またはその代謝物もしくは残留物を与えることができる(直接的または間接的に)。従って、医薬的に許容される誘導体は、特にプロドラッグを包含する。プロドラッグは、通常は有意に減少した薬理学的活性を有する化合物の誘導体であって、それは、生体内での除去を受けて薬理学的活性種としての親分子を生じる付加的部分を含有する。プロドラッグの例はエステルであって、それは、生体内で開裂されて目的とする化合物を生じる。種々の化合物のプロドラッグ、ならびにプロドラッグを生成するために親化合物を誘導体化するための物質および方法が既知であり、本発明に適用しうる。医薬的に許容される誘導体は、「リバースプロドラッグ」も包含する。リバースプロドラッグは、活性化されるのではなく、吸収時に不活性化される。例えば、本明細書に記載する場合、本発明のエステル含有化合物の多くは、生物学的に活性であるが、特定の生理学的環境、例えば、エステラーゼ活性を有する血液、リンパ液、漿液、細胞外液等への暴露時に、不活性化される。リバースプロドラッグおよびプロドラッグの生物学的活性は、化合物への官能基の付加によって変化させてもよく、これは酵素によって触媒しうる。さらに、酵素触媒酸化および還元反応を包含する酸化および還元反応も包含される。特定の例示的医薬組成物および医薬的に許容される誘導体は、本明細書において以下にさらに詳しく記載される。
【0047】
本明細書において使用される「保護基」という用語により、特定の官能部分、例えば、O、SまたはNが、一時的にブロックされ、それによって多官能性化合物の他の反応性部位において反応を選択的に行なうことができることを意味する。好ましい実施形態において、保護基は、高歩留りで選択的に反応して、計画反応に安定な保護基質を与え;保護基は、他の官能基を攻撃しない容易に入手可能な、好ましくは非毒性の試薬によって、高歩留りで選択的に除去されなければならず;保護基は、容易に分離可能な誘導体を形成し(より好ましくは、新しいステレオジェン中心を生成せずに);かつ、保護基は、さらなる反応部位を避けるために最小限の付加的官能基を有する。本明細書に詳述されているように、酸素、硫黄、窒素および炭素保護基を使用しうる。例えば、本明細書に詳述されている特定の実施形態において、特定の例示的酸素保護基が使用される。これらの酸素保護基は、下記を包含するが、それらに限定されない:メチルエーテル、置換メチルエーテル(例えば、少しの例を挙げると、MOM(メトキシメチルエーテル)、MTM(メチルチオメチルエーテル)、BOM(ベンジルオキシメチルエーテル)、PMBMまたはMPM(p−メトキシベンジルオキシメチルエーテル))、置換エチルエーテル、置換ベンジルエーテル、シリルエーテル(例えば、少しの例を挙げると、TMS(トリメチルシリルエーテル)、TES(トリエチルシリルエーテル)、TIPS(トリイソプロピルシリルエーテル)、TBDMS(t−ブチルジメチルシリルエーテル)、トリベンジルシリルエーテル、TBDPS(t−ブチルジフェニルシリルエーテル))、エステル(例えば、少しの例を挙げると、ホルメート、アセテート、ベンゾエート(Bz)、トロフルオロアセテート、ジクロロアセテート)、カーボネート、環式アセタールおよびケタール。特定の他の例示的実施形態において、窒素保護基が使用される。これらの窒素保護基は、少しの例を挙げると、下記を包含するが、それらに限定されない:カルバメート(少しの例を挙げると、メチル、エチルおよび置換エチルカルバメート(例えば、Troc)を包含する)、アミド、環状イミド誘導体、N−アルキルおよびN−アリールアミン、イミン誘導体、およびエナミン誘導体。他の特定の例示的保護基が本明細書に詳述されているが、本発明はこれらの保護基に限定されるものではなく、種々の他の同等の保護基を、前記の基準を使用して容易に同定でき、本発明に使用しうることが認識される。さらに、種々の保護基が、下記の文献に記載されている:Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Greene,T.W.およびWuts,P.G.編、John Wiley & Sons,Ne York:1999(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0048】
本明細書において使用される場合、「医薬的に許容される塩」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、不当な毒性、刺激、アレルギー反応等を有さずに、ヒトおよび下等動物の組織に接触して使用するのに好適であり、合理的な便益/リスク比に相応する塩を意味する。医薬的に許容される塩は、当分野において周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19(これは参照により本明細書に組み入れられる)において、医薬的に許容される塩について詳しく記載している。本発明化合物の医薬的に許容される塩は、好適な無機および有機酸および塩基から誘導される塩を包含する。医薬的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、燐酸、硫酸および過塩素酸を用いて、または有機酸、例えば、酢酸、蓚酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、琥珀酸またはマロン酸を用いて、または当分野において使用される他の方法、例えばイオン交換を使用して、形成されるアミノ基の塩である。他の医薬的に許容される塩は、下記の塩を包含する:アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、硼酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロ燐酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、沃化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、蓚酸塩、パルミチン酸塩、パモエート、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、燐酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、琥珀酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等。適切な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN(C1−4アルキル)塩を包含する。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム塩等を包含する。他の医薬的に許容される塩は、適切な場合に、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸、硫酸、燐酸、硝酸、低級アルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸のような対イオンを使用して形成される非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウムおよびアミンカチオンを包含する。
【0049】
さらに、本明細書において使用される場合、「医薬的に許容されるエステル」という用語は、生体内で加水分解するエステルを意味し、ヒトの体内で容易に分解して、親化合物またはその塩を生じるエステルを包含する。好適なエステル群は、例えば、医薬的に許容される脂肪族カルボン酸、特に、アルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸(それらにおいて、各アルキルまたはアルケニル部分は、好都合には、6個以下の炭素原子を有する)から誘導されるエステルを包含する。特定のエステルの例は、蟻酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステルおよびエチル琥珀酸エステルを包含する。
【0050】
さらに、本明細書において使用される場合、「医薬的に許容されるプロドラッグ」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、不当な毒性、刺激、アレルギー反応等を有さずに(with)、ヒトおよび下等動物の組織(issues)に接触して使用するのに好適であり、合理的な有益性/リスク比に相応し、それらの意図する使用に有効であり、かつ、可能な場合に、本発明化合物の両性イオン形態である、本発明化合物のプロドラッグを意味する。「プロドラッグ」という用語は、例えば血中での加水分解により、生体内で急速に変換されて、前記式の親化合物を生じる化合物を意味する。詳細な記載が、下記の文献に示されている:T.HiguchiおよびV.Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14,A.C.S.Symposium Series、およびEdward B.Roche編、Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987(これら両文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0051】
本明細書において使用される場合、「互変異性体」という用語は、水素原子の少なくとも1つの形式移動および少なくとも1つの原子価変化(例えば、単結合から二重結合、三重結合から単結合、またはその逆)から生じる2つまたはそれ以上の相互変換可能な化合物を包含する。互変異性体の正確な比率は、温度、溶媒およびpHを包含するいくつかの要素に依存する。互変異性化(即ち、互変異性体対を与える反応)は、酸または塩基によって触媒しうる。例示的互変異性化は、ケトとエノール;アミドとイミド;ラクタムとラクチム;エナミンとイミン;およびエナミンと(異なる)エナミンの互変異性化を包含する。
【0052】
本明細書において使用される場合、「異性体」という用語は、あらゆる幾何異性体および立体異性体を包含する。例えば、「異性体」は、シス−およびトランス−異性体、E−およびZ−異性体、R−およびS−鏡像異性体、ジアステレオ異性体、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を、本発明の範囲に含まれるものとして包含する。例えば、異性体/鏡像異性体は、いくつかの実施形態において、対応する鏡像異性体を実質的に含有せずに与えることができ、「光学的豊富」と称することもできる。本明細書において使用される場合、「光学的豊富」は、化合物が、有意により大きい比率の1つの鏡像異性体で構成されていることを意味する。特定の実施形態において、本発明化合物は、少なくとも約90wt%の好ましい鏡像異性体で構成されている。他の実施形態において、該化合物は、少なくとも約95wt%、98wt%または99wt%の好ましい鏡像異性体で構成されている。好ましい鏡像異性体は、当業者に既知の任意の方法(キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ならびにキラル塩の形成および結晶化)によってラセミ混合物から分離しうるか、または不斉合成によって調製しうる。例えば、下記の文献を参照:Jacquesら、Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen,S.H.ら、Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L.Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill,NY,1962);Wilen,S.H.Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel編、Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)。
【0053】
「化合物」: 本明細書において使用される場合、「化合物」または「化学化合物」という用語は、有機金属化合物、有機化合物、金属、遷移(transitional)金属錯体、および小分子を包含することができる。特定の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドが化合物の定義から除外される。他の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドおよびペプチドが化合物の定義から除外される。特に好ましい実施形態において、化合物という用語は、小分子(例えば、好ましくは、非ペプチドおよび非オリゴマー)を意味し、ペプチド、ポリヌクレオチド、遷移金属錯体、金属および有機金属化合物を除外する。
【0054】
「小分子」: 本明細書において使用される場合、「小分子」という用語は、実験室で合成されるかまたは自然に見出される非ペプチド、非オリゴマー有機化合物を意味する。本明細書において使用される場合、小分子は「天然物様」である化合物を意味しうるが、用語「小分子」は「天然物様」化合物に限定されない。むしろ、小分子は、数個の炭素−炭素結合を含有し、2000g/mol未満、好ましくは1500g/mol未満の分子量を有するものとして一般的に特性決定されるが、この特性決定は、本発明の解釈上、限定するものではない。自然に存在する「小分子」の例は、タキソール、ダイネミシンおよびラパマイシンを包含するが、それらに限定されない。実験室で合成される「小分子」の例は、下記の文献に記載されている化合物を包含するが、それらに限定されない:Tanら、(「Stereoselective Synthesis of over Two Million Compounds Having Structural Features Both Reminiscent of Natural Products and Compatible with Miniaturized Cell−Based Assays」J.Am.Chem.Soc.120:8565,1998;この文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0055】
「金属キレート化剤」: 本明細書において使用される場合、「金属キレート化剤」という用語は、金属イオンとの錯体(即ち、「キレート」)を形成することができる任意の分子または部分を意味する。特定の例示的実施形態において、金属キレート化剤は、溶液中で、金属イオンに「結合し」、化学/酵素反応においてそれを使用不能にする任意の分子または部分を意味する。特定の実施形態において、溶液は、生理学的条件下に水性環境を含んで成る。金属イオンの例は、Ca2+、Fe3+、Zn2+、Na等を包含するが、それらに限定されない。特定の実施形態において、金属キレート化剤はZn2+に結合する。特定の実施形態において、金属イオンを沈降させる部分の分子は、金属キレート化剤とみなされない。
【0056】
本明細書において使用される場合、「生物学的試料」という用語は、下記を包含するが、それらに限定されない:細胞培養物またはその抽出物;動物(例えば、哺乳動物)から得られる生検材料またはその抽出物;および、血液、唾液、尿、便、精液、涙、または他の体液、またはそれらの抽出物。例えば、「生物学的試料」という用語は、下記を包含する任意の生体から得られるか、排泄されるか、または分泌される、任意の固体または液体試料を意味する:単細胞微生物(例えば、細菌および酵母)および多細胞生物(例えば、植物および動物、例えば、脊椎動物または哺乳動物、特に、健康なまたは外見上健康なヒト被験体、または診断されるかまたは検査される症状または疾患を有するヒト被験体)。
【0057】
生物学的試料は、固体材料、例えば、組織、細胞、細胞ペレット、細胞抽出物、細胞ホモジネート、または細胞画分;または、生検材料、または生物体液を包含する任意の形態であることができる。生物体液は、任意の部位から得ることができ(例えば、血液、唾液(または口腔内細胞を含有する洗口液)、涙、血漿、漿液、尿、胆汁、脳脊髄液、羊水、腹膜液および胸膜液、またはそれらからの細胞、房水または硝子体液、または任意の体分泌物)、漏出液、滲出液(例えば、膿瘍または任意の他の感染もしくは炎症部位から得られる液体)、または関節(例えば、正常関節、または慢性関節リウマチ、骨関節炎、痛風または化膿性関節炎のような疾患を有する関節)から得られる液体であってよい。
【0058】
生物学的試料は、任意の器官または組織(生検材料または剖検材料を包含する)から得ることができ、または細胞(一次細胞または培養細胞)、または任意の細胞、組織または器官によって条件付けされた培地を含んで成ってよい。生物学的試料は、組織の切片、例えば、組織学的目的のために採取された凍結切片も包含しうる。生物学的試料は、細胞または組織ホモジネートの部分または完全分画によって生じたタンパク質、脂質、炭水化物および核酸を包含する生物学的分子の混合物も包含する。試料は、好ましくは、ヒト被験体から採取されるが、生物学的試料は、任意の動物、植物、細菌、ウイルス、酵母等から採取されてもよい。本明細書において使用される場合、動物という用語は、任意の発育段階の、ヒトならびに非ヒト動物を意味し、例えば、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、魚、虫および単細胞を包含する。細胞培養物および生組織試料は、多数の動物と考えられる。特定の例示的実施形態において、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類またはブタ)である。動物は、トランスジェニック動物またはヒトクローンであってもよい。所望であれば、生物学的試料を、予備分離法を包含する予備処理に付してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、HDACバイアスライブラリーの合成を示す図である。ライブラリーの化合物は、金属キレート化部分を用いて、アルデヒド含有化合物をヒドラジド含有化合物にコンジュゲートさせることによって調製した。
【図2】図2は、HDAC阻害剤を同定する、ハイスループット、高含有量、定量的検出法を示す図である。細胞を384穴プレートに播種し(2,000細胞/穴)、試験化合物で処理し、固定し、次に、ヘキスト(核)、一次抗Acチューブリンモノクローナル抗体および抗Acヒストンポリクローナル抗体、次に、適合性蛍光体コンジュゲート二次抗体で染色する。自動画像収集後に、カスタム・アナリシス・スクリプトが細胞を同定し、マスクし、次に、FITC(Acチューブリン)およびローダミン(Acヒストン)チャンネル(MetaXpress;Molecular Devices)から定量的蛍光データを得る。
【図3】図3は、HCSによるAcチューブリン(赤色)およびAcヒストン(青色)のWT−161誘導を示す図である。図2に示されているように、高含有量アセチル化アッセイを使用して、WT−161の用量範囲でのアセチル化ヒストン対アセチル化チューブリンの比較誘導を測定した。これらのデータは、培養細胞におけるHDAC6の選択的阻害を裏付けている。
【図4】図4は、細胞アッセイにおけるWT−161によるHDAC6の選択的阻害を示す図である。図3の用量−反応データを使用して、WT−161の細胞ヒストンおよびチューブリンアセチル化作用のEC50値を得た。これらのデータが、対照化合物トリコスタチンおよびチューバシンに関して並行して得た実験データと比較して示されている。ヒストン脱アセチル化を媒介するタンパク質の生物学的活性を示すために、HDAC活性を使用する(なぜなら、これはアセチル化における全体的作用を測定する(measuting)細胞アッセイであるから)。TDAC活性は、培養細胞におけるHDAC6阻害の代用測定である。
【図5】図5は、HDAC生化学アッセイ概略図である。7−アミノ−4−メチルクマリン(7AMC)を、アイソフォーム選択的基質の脈絡の中で、アミド結合によってアセチル化リシンに結合させる。ここに図示されているのは、HDAC1、2、3および6のための誘導基質である。HDACはアセチル化リシンを加水分解し、次に、それは、蛍光プレートリーダーによってリアルタイムで検出される7AMC(緑色で示す)を放出する急速トリプシン消化の基質である。プレインキュベーション段階(30分)後に捕捉された線形データは、デアセチラーゼ活性の速度論的評価を与える。
【図6】図6は、均質アッセイにおけるWT−161によるHDAC6の選択的阻害を示す図である。HDAC1、2、3、5、6および8についてのロバストアッセイが確立されている。HDAC阻害剤の阻害定数(K)が示され、効力によって色分けされる(<10nM=赤色;11nM〜100nM=黄色;101〜1000nM=緑色;>1000nM=青色)。阻害定数は、下記の方程式によって求めた:K=[I]/(((V/V)x(1+[S]/K))−([S]/K)−1)、式中、[I]は阻害剤の濃度であり、[S]は基質の濃度であり、Vは阻害剤の不存在下の酵素の初期活性であり、Vは阻害剤の存在下の酵素の活性であり、Kはミカエリス定数である。WT−161によるHDAC6の強力阻害が枠で囲まれている。
【図7】図7は、他のHDAC阻害剤と比較した、WT−161およびボルテゾミブの組合せの優れた相乗作用を示す図である。細胞増殖における相乗作用を、種々の濃度のプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブの存在下の、変化濃度の各HDAC阻害剤によって測定した。ヒト多発性骨髄腫細胞の2つの培養物を、この試験に使用した。示されているデータは、増加濃度のボルテゾミブ(0、2.5nM、または5.0nM)の存在下に試験されたHDAC阻害剤(第一欄)のIC50データである。使用された細胞増殖の測定は、Cell TiterGloアッセイ(Promega)であり、これは培養細胞中のATP含有量を記録するために生物発光を使用する。試験した全てのHDAC阻害剤の中で、最も顕著な相乗作用が、WT−161およびHDAC6阻害剤チューバシンで観測され、両方とも赤色で示されている(用量減少指数が最大)。
【図8】図8は、5mg/kgでの静脈内投与後の、CD−1マウスにおけるWT−161の濃度−時間曲線を示す図である。WT−161を、尾静脈注射によってレシピエントマウスに注射した。血漿における薬剤濃度の三重反復測定値を、LCMSによって求めた。
【図9】図9は、アセチル化チューブリンおよびアセチル化ヒストンに基づく、HDAC阻害剤の大ライブラリーからの一次スクリーニングデータからの、WT−161(赤色で示す)の同定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
発明の詳細な説明
本発明は、一般式(I)の新規化合物およびその医薬組成物を提供する。該化合物は、リンカーを介してキャップに結合された金属キレート化部分を一般に含む。図1参照。特定の実施形態において、デアセチラーゼ阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤である。ある特定の実施形態において、デアセチラーゼ阻害剤はHDAC6阻害剤である。特定の実施形態において、デアセチラーゼ阻害剤はチューブリンデアセチラーゼ(TDAC)阻害剤である。本発明は、本発明化合物を合成する方法および使用する方法も提供する。該化合物は、デアセチラーゼ阻害剤(例えば、HDAC阻害剤)として有用であり、増殖性疾患、例えば癌の処置に有用である。
【0061】
本発明の化合物
一般に、本発明は、式(I)の化合物、およびその医薬的に許容される形態を提供する:
【0062】
【化4】

[式中、
nは、1〜10の整数であり(両端の整数を含む);
mは、0〜5の整数であり(両端の整数を含む);
kは、0〜5の整数であり(両端の整数を含む);
pは、0〜5の整数であり(両端の整数を含む);
は、任意に置換されたアシル部分であり;
は、水素;ハロゲン;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシル;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリール;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(=O)R;または−C(R;であり、ここで、Rの各存在は、独立に、水素、保護基、脂肪族部分、複素脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
は、水素;ハロゲン;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシル;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリール;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(=O)R;または−C(R;であり、ここで、Rの各存在は、独立に、水素、保護基、脂肪族部分、複素脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
は、水素;ハロゲン;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシル;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリール;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(=O)R;または−C(R;であり、ここで、Rの各存在は、独立に、水素、保護基、脂肪族部分、複素脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分である]。
【0063】
特定の実施形態において、nは1〜8の整数である(両端の整数を含む)。特定の実施形態において、nは2〜8の整数である(両端の整数を含む)。特定の実施形態において、nは4〜8の整数である(両端の整数を含む)。特定の実施形態において、nは3〜6の整数である(両端の整数を含む)。特定の実施形態において、nは4〜6の整数である(両端の整数を含む)。特定の実施形態において、nは3である。特定の実施形態において、nは4である。特定の実施形態において、nは5である。特定の実施形態において、nは6である。特定の実施形態において、nは7である。特定の実施形態において、nは8である。
【0064】
特定の実施形態において、mは0である。特定の実施形態において、mは1である。特定の実施形態において、mは2である。特定の実施形態において、mは3である。特定の実施形態において、mは4である。
【0065】
特定の実施形態において、kは0である。特定の実施形態において、kは1である。特定の実施形態において、kは2である。特定の実施形態において、kは3である。特定の実施形態において、kは4である。
【0066】
特定の実施形態において、pは0である。特定の実施形態において、pは1である。特定の実施形態において、pは2である。特定の実施形態において、pは3である。特定の実施形態において、pは4である。
【0067】
特定の実施形態において、m、kおよびpは全て0である。特定の実施形態において、m、kおよびpの合計は1である。特定の実施形態において、m、kおよびpの合計は2である。特定の実施形態において、m、kおよびpの合計は3である。特定の実施形態において、m、kおよびpの合計は4である。特定の実施形態において、m、kおよびpの合計は5である。
【0068】
特定の実施形態において、Rは水素である。特定の実施形態において、Rはハロゲンである。特定の実施形態において、Rはフッ素である。特定の実施形態において、Rは塩素である。特定の実施形態において、Rは臭素である。特定の実施形態において、Rはヨウ素である。特定の実施形態において、環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族である。特定の実施形態において、RはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rはメチルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。特定の実施形態において、Rはプロピルである。特定の実施形態において、Rはブチルである。特定の実施形態において、Rは環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族である。特定の実施形態において、Rは置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシルである。特定の実施形態において、Rは置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリールである。特定の実施形態において、Rは置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリールである。特定の実施形態において、Rは−N(Rである。特定の実施形態において、Rは−N(Rであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−NHRである。特定の実施形態において、Rは−NHである。特定の実施形態において、Rは−ORであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。ある特定の実施形態において、Rは−OHである。ある特定の実施形態において、Rは−OMeである。特定の実施形態において、Rは−SRであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。ある特定の実施形態において、Rは−SHである。ある特定の実施形態において、Rは−SMeである。特定の実施形態において、Rは分岐鎖または非分岐鎖のアシルである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)Rである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)Rであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)CHである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)ORである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)ORであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)N(Rである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)NHRである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)NHである。特定の実施形態において、Rは−NHC(=O)Rである。特定の実施形態において、Rは−NHC(=O)Rであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−SORである。特定の実施形態において、Rは−SOである。特定の実施形態において、Rは−CNである。特定の実施形態において、Rは−SCNである。特定の実施形態において、Rは−NOである。
【0069】
特定の実施形態において、Rは水素である。特定の実施形態において、Rはハロゲンである。特定の実施形態において、Rはフッ素である。特定の実施形態において、Rは塩素である。特定の実施形態において、Rは臭素である。特定の実施形態において、Rはヨウ素である。特定の実施形態において、環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族である。特定の実施形態において、RはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rはメチルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。特定の実施形態において、Rはプロピルである。特定の実施形態において、Rはブチルである。特定の実施形態において、Rは環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族である。特定の実施形態において、Rは置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシルである。特定の実施形態において、Rは置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリールである。特定の実施形態において、Rは置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリールである。特定の実施形態において、Rは−N(Rである。特定の実施形態において、Rは−N(Rであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−NHRである。特定の実施形態において、Rは−NHである。特定の実施形態において、Rは−ORであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。ある特定の実施形態において、Rは−OHである。ある特定の実施形態において、Rは−OMeである。特定の実施形態において、Rは−SRであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。ある特定の実施形態において、Rは−SHである。ある特定の実施形態において、Rは−SMeである。特定の実施形態において、Rは分岐鎖または非分岐鎖のアシルである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)Rである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)Rであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)CHである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)ORである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)ORであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)N(Rである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)NHRである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)NHである。特定の実施形態において、Rは−NHC(=O)Rである。特定の実施形態において、Rは−NHC(=O)Rであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−SORである。特定の実施形態において、Rは−SOである。特定の実施形態において、Rは−CNである。特定の実施形態において、Rは−SCNである。特定の実施形態において、Rは−NOである。
【0070】
特定の実施形態において、Rは水素である。特定の実施形態において、Rはハロゲンである。特定の実施形態において、Rはフッ素である。特定の実施形態において、Rは塩素である。特定の実施形態において、Rは臭素である。特定の実施形態において、Rはヨウ素である。特定の実施形態において、環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族である。特定の実施形態において、RはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rはメチルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。特定の実施形態において、Rはプロピルである。特定の実施形態において、Rはブチルである。特定の実施形態において、Rは環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族である。特定の実施形態において、Rは置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシルである。特定の実施形態において、Rは置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリールである。特定の実施形態において、Rは置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリールである。特定の実施形態において、Rは−N(Rである。特定の実施形態において、Rは−N(Rであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−NHRである。特定の実施形態において、Rは−NHである。特定の実施形態において、Rは−ORであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。ある特定の実施形態において、Rは−OHである。ある特定の実施形態において、Rは−OMeである。特定の実施形態において、Rは−SRであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。ある特定の実施形態において、Rは−SHである。ある特定の実施形態において、Rは−SMeである。特定の実施形態において、Rは分岐鎖または非分岐鎖のアシルである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)Rである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)Rであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)CHである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)ORである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)ORであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)N(Rである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)NHRである。特定の実施形態において、Rは−C(=O)NHである。特定の実施形態において、Rは−NHC(=O)Rである。特定の実施形態において、Rは−NHC(=O)Rであり、ここでRは水素またはC〜Cアルキルである。特定の実施形態において、Rは−SORである。特定の実施形態において、Rは−SOである。特定の実施形態において、Rは−CNである。特定の実施形態において、Rは−SCNである。特定の実施形態において、Rは−NOである。
【0071】
前記に一般的に定義したように、Rは、任意に置換されたアシル部分である。特定の実施形態において、Rは−C(=O)Rであり、ここで、Rは−ORまたは−N(Rから選択され、ここで、Rは、水素または任意に置換されたアルキル部分であり、Rは、水素、−OH、任意に置換されたアリール部分、または任意に置換されたヘテロアリール部分である。
【0072】
特定の実施形態において、Rは、基−C(=O)Rであり、ここでRは−ORであり、ここで、Rは水素および任意に置換されたアルキル部分から選択される。
【0073】
特定の実施形態において、Rは−COHである。
【0074】
特定の実施形態において、Rは基−C(=O)ORであり、ここで、Rは任意に置換されたアルキル部分である。特定の実施形態において、Rは、−COCH、−COCHCH、−COCHCHCH、または−COCH(CHである。
特定の実施形態において、Rは−COCHである。
【0075】
特定の実施形態において、Rは基−C(=O)Rであり、ここでRは−N(Rであり、ここで、Rは、水素、−OH、任意に置換されたアリール部分、または任意に置換されたヘテロアリール部分である。
【0076】
特定の実施形態において、Rは基−C(=O)Rであり、ここでRは−NHRであり、ここで、Rは、−OH、任意に置換されたアリール部分、または任意に置換されたヘテロアリール部分である。
【0077】
特定の実施形態において、Rは−C(=O)NHOHである。
【0078】
特定の実施形態において、Rは基−C(=O)NHRであり、ここで、Rは、任意に置換されたアリールまたは任意に置換されたヘテロアリールである。特定の実施形態において、Rは基−C(=O)NHRであり、ここでRは任意に置換されたアリール部分である。
【0079】
特定の実施形態において、Rは基−C(=O)NHRであり、ここでRは下記の構造のアリール部分である:
【0080】
【化5】

特定の実施形態において、Rは金属キレート化官能基を含んで成る。例えば、RはZn2+キレート化基を含んで成る。特定の実施形態において、Rは、下記の構造から選択されるいずれか1つである:
【0081】
【化6】

特定の実施形態において、Rは下記の式で示される:
【0082】
【化7】

特定の実施形態において、Rは下記の式で示される:
【0083】
【化8】

特定の実施形態において、Rは下記の式で示される:
【0084】
【化9】

特定の実施形態において、Rは下記の式で示される:
【0085】
【化10】

例えば、特定の実施形態において、式(I)の化合物は、下記の化合物のいずれか1つ、またはその医薬的に許容される形態から選択される:
【0086】
【化11】

【0087】
【化12】

[式中、nは、4、5、6または7である]。
特定の実施形態において、nは4である。特定の実施形態において、nは5である。特定の実施形態において、nは6である。特定の実施形態において、nは7である。
【0088】
特定の実施形態において、本発明化合物は:
【0089】
【化13】

またはその医薬的に許容される形態である。
【0090】
いくつかの前記化合物は、1つまたはそれ以上の不斉中心を含んで成ることができ、従って、種々の異性形、例えば立体異性体および/またはジアステレオ異性体として存在することができる。従って、本発明化合物およびその医薬組成物は、個々の鏡像異性体、ジアステレオ異性体または幾何異性体の形態であってよく、または立体異性体の混合物の形態であってもよい。特定の実施形態において、本発明化合物はエナンチオピュア化合物である。特定の他の実施形態において、立体異性体またはジアステレオ異性体の混合物が提供される。
【0091】
さらに、本明細書に記載されている場合、特定の化合物は、他に指定されない限り、ZまたはE異性体として存在することができる1個またはそれ以上の二重結合を有しうる。本発明は、さらに、他の異性体を実質的に含有しない個々の異性体としての、または、種々の異性体の混合物、例えば立体異性体のラセミ混合物としての、化合物も包含する。前記化合物自体に加えて、本発明は、これらの化合物の医薬的に許容される誘導体、ならびに1つまたはそれ以上の本発明化合物および1つまたはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤または添加剤を含んで成る組成物も包含する。
【0092】
本発明化合物は、種々の条件下での化合物の結晶化によって調製でき、本発明の一部を形成する化合物の多形体の1つまたは組合せとして存在しうる。例えば、種々の多形体は、再結晶のために、種々の溶媒、または種々の溶媒混合物を使用し;種々の温度で結晶化を行なうことによって;または、結晶化の間に、極めて速い〜極めて遅い冷却に及ぶ種々の冷却モードを使用することによって;同定および/または調製しうる。多形体は、化合物の加熱または溶融、次に、緩やかなまたは速い冷却を行なうことによっても得られる。多形体の存在は、固体プローブNMR分光法、IR分光法、示差走査熱量測定法、粉末X線回折図形および/または他の方法によっても測定しうる。従って、本発明は、本発明化合物、それらの誘導体、それらの互変異性形、それらの立体異性体、それらの多形体、それらの医薬的に許容される塩、それらの医薬的に許容される溶媒化合物、およびそれらを含有する医薬的に許容される組成物を包含する。
【0093】
本発明化合物の合成
有機化学の当業者によって認識されるように、本発明化合物は、任意の数の合成経路によって調製しうる。特定の実施形態において、式(I)の化合物は、下記のスキーム1に示されるように、式(II)のヒドラジド化合物および式(III)のアルデヒド化合物の縮合によって調製される:
スキーム1
【0094】
【化14】

特定の実施形態において、本発明は、下記式の化合物またはその医薬的に許容される形態を調製する方法を提供し:
【0095】
【化15】

[式中、
nは、1〜10の整数であり(両端の整数を含む);
は、
【0096】
【化16】

であり;
mは、0〜5の整数であり(両端の整数を含む);
kは、0〜5の整数であり(両端の整数を含む);
pは、0〜5の整数であり(両端の整数を含む);
は、任意に置換されたアシル部分であり;
は、水素;ハロゲン;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシル;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリール;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(=O)R;または−C(R;であり、ここで、Rの各存在は、独立に、水素、保護基、脂肪族部分、複素脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
は、水素;ハロゲン;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシル;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリール;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(=O)R;または−C(R;であり、ここで、Rの各存在は、独立に、水素、保護基、脂肪族部分、複素脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
は、水素;ハロゲン;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシル;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリール;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(=O)R;または−C(R;であり、ここで、Rの各存在は、独立に、水素、保護基、脂肪族部分、複素脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分である]
該方法は、下記の工程を含んで成る:
(i) 式(II)のヒドラジドを準備する工程:
【0097】
【化17】

(ii) 式(III)のアルデヒドを準備する工程:
【0098】
【化18】

および、
(iii) 式(II)のヒドラジドと、式(III)のアルデヒドを、好適な条件下に反応させて、下記式の化合物を得る工程:
【0099】
【化19】

当業者は、スキームIに示されている各合成変換を促進するために、広範囲の反応条件を使用しうることを認識し;従って、種々の反応条件が考えられる(一般に下記文献が参照される:March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,M.B.SmithおよびJ.March、第5版、John Wiley & Sons,2001;および、Comprehensive Organic Transformations,R.C.Larock、第2版、John Wiley & Sons,1999)。
【0100】
特定の実施形態において、反応は有機溶媒中で行なわれる。特定の実施形態において、有機溶媒は極性非プロトン溶媒である。特定の実施形態において、反応はジメチルスルホキシド(DMSO)中で行なわれる。特定の実施形態において、反応はジメチルホルムアミド(DMF)中で行なわれる。特定の実施形態において、反応は約40℃〜約80℃、または約50℃〜約70℃の温度で行なわれる。特定の実施形態において、反応は約60℃の温度で行なわれる。特定の実施形態において、それぞれ約1当量のアルデヒドおよびヒドラジドが使用される。特定の実施形態において、反応において、約1当量のアルデヒドが使用され、約2〜5当量のヒドラジドが使用される。特定の実施形態において、反応において、約1当量のヒドラジドが使用され、約2〜5当量のアルデヒドが使用される。特定の実施形態において、約1当量のより高価な出発物質が使用され、多当量のあまり高価でない出発物質が使用される。
【0101】
特定の実施形態において、合成法は、ハイ−スループット法、またはコンビナトリアルケミストリーに一般に使用される方法に従う。従って、特定の実施形態において、本発明化合物のライブラリーは、多くの反応器中で、種々のアルデヒドおよび/またはヒドラジドを使用して調製される。例えば、図1は、本発明化合物のライブラリーの合成に使用された多くの出発物質を示している。
【0102】
処置法
一般に、本発明化合物は、デアセチラーゼ活性の阻害剤である。該化合物は、ヒストンデアセチラーゼ、チューブリンデアセチラーゼまたは他のデアセチラーゼ活性を阻害しうる。特定の実施形態において、本発明化合物は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤であり、従って、ヒストンデアセチラーゼによって調節される疾患の処置に有用である。例えば、特定の実施形態において、本発明は、生物学的試料または被験体におけるデアセチラーゼ活性を阻害する方法を提供し、該方法は、有効量の本発明化合物またはその組成物を、被験体に投与するか、または生物学的試料に接触させることを含んで成る。
【0103】
特定の実施形態において、デアセチラーゼ活性はヒストンデアセチラーゼ活性である。特定の実施形態において、該化合物は、特定のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10、HDAC11)またはHDACのクラス(例えば、クラスI、IIおよび/またはIII)を特異的に阻害する。特定の実施形態において、該化合物はHDAC1を特異的に阻害する。特定の実施形態において、該化合物は、HDAC2を特異的に阻害する。特定の実施形態において、該化合物はHDAC6を特異的に阻害する。
【0104】
特定の実施形態において、デアセチラーゼ活性はチューブリンデアセチラーゼ活性である。特定の実施形態において、本発明化合物は、チューブリンデアセチラーゼ(TDAC)の阻害剤であり、従って、チューブリンデアセチラーゼによって調節される障害または疾患の処置に有用である。
【0105】
他の態様において、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物を、それを必要とする被験体に投与することを含んで成る増殖性疾患の処置法を提供する。特定の実施形態において、増殖性疾患は、異常なヒストンデアセチラーゼ活性に関連し、かつ/またはヒストンデアセチラーゼ活性を調節することによって制御される。特定の実施形態において、増殖性疾患は、異常なチューブリンデアセチラーゼ活性に関連し、かつ/またはチューブリンデアセチラーゼ活性を調節することによって制御される。
【0106】
被験体は任意の動物であってよい。特定の実施形態において、被験体は任意の哺乳動物である(例えば、ヒト、家畜/獣医学/農場動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ等)である。特定の実施形態において、被験体はヒトである(例えば、小児、青年、成人、男性、女性)。特定の実施形態において、被験体は、実験動物、例えば、マウス、ラット、イヌまたは非ヒト霊長類である。
【0107】
例示的増殖性疾患は、下記を包含するが、それらに限定されない:癌(例えば、グリア芽細胞腫、網膜芽細胞腫、乳癌、子宮頸癌、結腸および直腸癌、白血病、リンパ腫、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌を包含するが、それらに限定されない)、黒色腫および/または他の皮膚癌、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、および他のリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、子宮癌、腎臓癌、精巣癌、胃癌、脳癌、肝臓癌、および食道癌)、良性新生物、炎症性疾患、および自己免疫性疾患。
【0108】
特定の実施形態において、本発明化合物は、白血病細胞(例えば、白血病細胞および黒色腫細胞)に対しても活性であり、従って、白血病(例えば、顆粒球性、リンパ球性、骨髄性およびリンパ芽球性白血病)の処置に有用である。特定の実施形態において、本発明化合物は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)および皮膚癌(例えば、扁平上皮細胞癌腫、基底細胞癌腫、悪性黒色腫など)の処置に有用である。特定の実施形態において、本発明化合物は、多発性骨髄腫の処置に有用である。特定の実施形態において、本発明化合物は、悪性黒色腫の処置に有用である。
【0109】
例えば、特定の実施形態において、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物を、それを必要とする被験体に投与することを含んで成る癌の処置法を提供する。特定の実施形態において、癌は、グリア芽細胞腫、網膜芽細胞腫、乳癌、子宮頸癌、結腸および直腸癌、白血病、リンパ腫、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌を包含するが、それらに限定されない)、黒色腫および/または他の皮膚癌、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、子宮癌、腎臓癌、精巣癌、胃癌、脳癌、肝臓癌または食道癌である。
【0110】
本発明化合物は、脱アセチル化活性の阻害(例えば、HDACまたはTDAC阻害)から益を得る他の疾患または症状、例えば、特定の皮膚および/または頭髪症状(例えば、乾癬、皮膚炎、脱毛、神経線維腫症、皮膚色素沈着に関連した疾患)の処置にも有用である。
【0111】
特定の実施形態において、化合物は、皮膚の炎症性疾患、例えば、乾癬または皮膚炎の処置に有用である。
【0112】
特定の実施形態において、化合物は、神経線維腫症の処置に有用である。
【0113】
治療有効量の本発明化合物は、所望の結果を得るために必要な量および時間にわたって、投与することを含んで成る。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および全身状態、疾患の重症度、特定の抗癌剤、その投与方法、所望される結果等に依存して、被験体ごとに変化する。
【0114】
本発明の特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物の「治療有効量」は、被験体または生物学的試料(例えば、細胞)においてデアセチラーゼ活性(例えば、HDACおよび/またはTDAC活性)を阻害するのに有効な量である。特定の実施形態において、特定のデアセチラーゼ活性(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10、HDAC11)が、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%または約99%で阻害される。特定の実施形態において、本発明化合物はHDAC6を阻害し、治療有効量の該化合物は、HDAC6を、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%で阻害する。
【0115】
本発明の特定の実施形態において、「治療有効量」は、細胞増殖を阻害するのに充分な化合物または組成物の量を意味するか、または増殖性疾患の作用を減少させるのに充分な量を意味する。
【0116】
本発明の特定の実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物の「治療有効量」は、腫瘍細胞の増殖を減少させるかまたは阻害し、かつ/または腫瘍細胞を殺すのに有効な量である。
【0117】
例えば、特定の実施形態において、化合物は、HDAC阻害(特に、HDAC6阻害)は、hsp90を介するアンドロゲンシグナル伝達をブロックするという発見に基づいて、脱毛症の処置に有用である。HDAC阻害は、エストロゲンシグナル伝達を阻害することも示されている。
【0118】
さらに、特定の実施形態において、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物を、それを必要とする被験体に投与することを含んで成る原虫感染の処置法も提供する。
【0119】
特定の実施形態において、本発明化合物は、血管形成術およびステント術のような外傷を受ける血管の、再狭窄の予防にも用途を見出す。例えば、本発明化合物は、埋め込み医療装置、例えば、チューブ、シャント、カテーテル、人工インプラント、ピン、電気インプラント、例えばペースメーカー、および特に、動脈または静脈ステント(バルーン拡張式ステントを包含する)のコーティングとして有用であると考えられる。特定の実施形態において、本発明化合物は、埋め込み可能医療装置に結合させてもよく、または埋め込み可能装置の表面に受動的に吸着させてもよい。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、外科装置もしくは医療装置またはインプラント、例えば、ステント、縫合糸、留置カテーテル、プロテーゼ等の中に含有されるように配合でき、またはそれによって放出するように適合させることができる。例えば、抗増殖および抗炎症活性を有する薬剤が、ステントコーティングとして評価されており、再狭窄(retenosis)の予防において有望であることを示している(例えば、下記文献を参照:Presbitero P.ら、「Drug eluting stents do they make the difference?」、Minerva Cardioangiol,2002,50(5):431−442;Ruygrok P.N.ら、「Rapamycin in cardiovascular medicine」、Intern.Med.J.,2003,33(3):103−109;およびMarx S.O.ら、「Bench to bedside:the development of rapamycin and its application to stent restenosis」、Circulation,2001,104(8):852−855;これらの各文献の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0120】
従って、いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、出願人は、抗増殖作用を有する本発明化合物を、ステントコーティングとして、および/またはステント薬剤送達装置において、特に、再狭窄の予防または再狭窄率の減少のために、使用できることを提示する。好適なコーティングおよびコーティングされた埋め込み可能装置の一般的調製が、米国特許第6099562号、第5886026号および第5304121号に記載されている。コーティングは、一般的には、生物適合性高分子材料、例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリグリコール酸、エチレンビニルアセテート、およびそれらの混合物である。コーティングは、組成物において制御放出特性を付与するために、任意に、フルオロシリコーン、ポリサッカリド、ポリエチレングリコール、ホスホリピドまたはそれらの組合せの、好適なトップコートによって、さらに覆ってもよい。再狭窄を予防するための、ステントコーティングおよび/または局所ステント薬剤送達に関連した種々の組成物および方法が当技術分野で既知である(例えば、下記の文献を参照:米国特許第6517889号、第6273913号、第6258121号、第6251136号、第6248127号、第6231600号、第6203551号、第6153252号、第6071305号、第5891507号、第5837313号、および米国特許出願公開第US2001/0027340号;各文献の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる)。例えば、ステントは、ステントをポリマー−薬剤溶液に浸漬するか、またはそのような溶液をステントに吹付けることによって、ポリマー−薬剤コンジュゲートでコーティングしうる。特定の実施形態において、埋め込み可能装置の好適な材料は、生物適合性および非毒性材料を包含し、金属、例えば、ニッケル−チタン合金、鋼、または生物適合性ポリマー、ヒドロゲル、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレンビニルアセテートコポリマー等から選択しうる。特定の実施形態において、本発明化合物は、バルーン血管形成術後に動脈または静脈に挿入されるステントにコーティングされる。
【0121】
本発明化合物またはそれらの医薬的に許容される組成物は、埋め込み可能医療装置、例えば、プロテーゼ、人工弁、人工血管、ステントおよびカテーテルをコーティングする組成物に組み込んでもよい。従って、本発明は、他の態様において、埋め込み可能装置をコーティングする組成物を包含し、該組成物は、先に一般的に記載され、本明細書においてクラスおよびサブクラスに記載されている本発明化合物、および該埋め込み可能装置をコーティングするのに好適な担体を含んで成る。さらに他の態様において、本発明は、先に一般的に記載され、本明細書においてクラスおよびサブクラスに記載されている本発明化合物、および該埋め込み可能装置をコーティングするのに好適な担体を含んで成る組成物でコーティングされた埋め込み可能装置を包含する。
【0122】
本発明の他の態様において、身体通路の内腔を拡張させる方法を提供し、該方法は、ステントを該通路に挿入することを含んで成り、ステントは一般に管状構造物を有し、該構造物の表面が本発明化合物または組成物でコーティングされ(または、そうでない場合は、放出するために適合され)、それによって通路が拡張される。特定の実施形態において、胆管、胃腸、食道、気管/気管支、尿道および/または血管の閉塞を除去するために、身体通路の内腔が拡張される。
【0123】
ステントを使用して、胆管、胃腸、食道、気管/気管支、尿道および/または血管の閉塞を除去する方法は、当分野において既知である。当業者は、これらの方法を本発明の実施に適合させる方法を知っている。例えば、指針を米国特許出願公開第2003/0004209のパラグラフ[0146]−[0155]に見出すことができ、それらのパラグラフは参照により本明細書に組み入れられる。
【0124】
医薬組成物
他の態様において、本発明は、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される形態、および医薬的に許容される賦形剤を含んで成る医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、治療有効量の本発明化合物が、医薬組成物中に含有される。
【0125】
特定の本発明化合物は、処置のために、遊離形態で、または適切であれば、その医薬的に許容される形態として、存在できることも認識される。本発明によれば、医薬的に許容される形態は、下記を包含するが、それらに限定されない:本発明化合物の医薬的に許容される塩、エステル、そのようなエステルの塩、またはプロドラッグまたは他のアダクトもしくは誘導体であって、それは、必要とする被験体に投与した際に、本明細書においてそれ以外で記載されている化合物、またはその代謝物もしくは残留物を、直接的または間接的に与えることができる。
【0126】
前記のように、本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体を含んで成り、該担体は、本明細書において使用される場合、所望される特定投与形態に適したあらゆる溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、粘稠化または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤等を包含する。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton PA,1980)は、医薬組成物の配合に使用される種々の担体、および既知のその調製法を開示している。
任意の従来担体媒体が本発明化合物に不適合である場合(例えば、何らかの望ましくない生物学的作用を生じるか、またはそうでなければ、医薬組成物のいずれかの他の構成成分と有害的に作用することによる)を除いて、その使用は、本発明の範囲内であると考えられる。医薬的に許容される担体として機能しうる物質のいくつかの例は、下記を包含するが、それらに限定されず:糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、カカオ脂および坐剤ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含有しない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、および燐酸塩緩衝液、ならびに他の非毒性相溶性潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤も、配合者の判断によって、組成物に存在しうる。
【0127】
経口投与用の液体投与形態は、医薬的に許容される乳濁液、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを包含するが、それらに限定されない。活性化合物に加えて、液体投与形態は、当分野において一般に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有しうる。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、佐剤、例えば、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味、香味および芳香剤も含有しうる。
【0128】
注射可能製剤、例えば、滅菌注射可能水性または油性懸濁液は、好適な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、既知の方法によって配合しうる。滅菌注射可能製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、滅菌注射可能溶液、懸濁液または乳濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用しうる許容されるビヒクルおよび溶媒の例として挙げられるのは、水、リンゲル液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液であってよい。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒質として慣例的に使用される。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを包含する任意の無刺激不揮発性油を使用しうる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸が、注射可能物質の調製に使用される。
【0129】
注射可能配合物は、例えば、細菌保持フィルターでの濾過によるか、または滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって滅菌でき、該組成物は、使用前に、滅菌水または他の滅菌注射可能媒質に溶解または分散させることができる。
【0130】
薬剤の作用を長引かせるために、皮下または筋肉注射からの薬剤の吸収を遅くすることが望ましい場合が多い。これは、低水溶性を有する液体懸濁物または結晶性もしくは非晶性物質の使用によって達成しうる。この場合、薬剤の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次に、結晶の大きさおよび結晶形に依存しうる。または、非経口投与薬剤形態の遅延吸収は、薬剤を油ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成される。注射可能デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中の薬剤のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬剤/ポリマー比、および使用される特定ポリマーの種類に依存して、薬剤放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例は、(ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)を包含する。デポー注射可能配合物は、体組織に適合性のリポソームまたはミクロエマルジョンに、薬剤を閉じ込めることによっても調製される。
【0131】
直腸または膣投与用の組成物は、好ましくは坐剤であり、該坐剤は、本発明の化合物を、好適な非刺激性賦形剤または担体、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックス(これらは、周囲温度で固体であるが、体温で液体であり、従って、直腸または膣腔において融解し、活性化合物を放出する)と混合することによって調製できる。
【0132】
経口投与用の固体投与形態は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤および顆粒剤を包含する。そのような固体投与形態において、活性化合物が、少なくとも1つの不活性の医薬的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたは燐酸二カルシウム、および/または下記の物質と混合される:(a)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および珪酸、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレー、およびi)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投与形態は、緩衝剤も含んで成ってよい。
【0133】
同様のタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使用して、軟および硬ゼラチンカプセルにおける充填物として使用してもよい。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固定投与形態は、コーティングおよび外皮、例えば、医薬配合分野において周知の腸溶コーティングおよび他のコーティングを使用して調製できる。それらは、不透明剤を任意に含有してもよく、腸管の特定部分で、任意に遅延的に、専らまたは優先的に活性成分を放出する組成物であることもできる。使用できる埋め込み組成物の例は、高分子物質およびワックスを含有する。同様のタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使用して、軟および硬ゼラチンカプセルにおける充填物として使用してもよい。
【0134】
活性化合物は、1つまたはそれ以上の前記賦形剤を使用してマイクロカプセル化形態にすることもできる。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体投与形態は、コーティングおよび外皮、例えば、医薬配合分野において周知の、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび他のコーティングを使用して調整できる。そのような固定投与形態において、活性成分を、少なくとも1つの不活性希釈剤、例えば、スクロース、ラクトースおよびデンプンと混合しうる。そのような投与形態は、通常の慣行のように、不活性希釈剤以外の付加的物質、例えば、錠剤化潤滑剤および他の錠剤化助剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースも含んで成ってよい。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投与形態は緩衝剤も含んで成ってよい。それらは、不透明剤を任意に含有してもよく、腸管の特定部分で、任意に遅延的に、専らまたは優先的に活性成分を放出する組成物であることもできる。使用できる埋め込み組成物の例は、高分子物質およびワックスを含有する。
【0135】
本発明は、本発明化合物の医薬的に許容される局所配合物を包含する。本明細書において使用される場合、「医薬的に許容される局所配合物」は、表皮への配合物の適用による本発明化合物の皮内投与のために、医薬的に許容される任意の配合物を意味する。本発明の特定の実施形態において、局所配合物は、担体系を含んで成る。医薬的に有効な担体は、下記を包含するが、それらに限定されない:溶媒(例えば、アルコール、ポリアルコール、水)、クリーム、ローション、軟膏、油、プラスター、リポソーム、パウダー、エマルジョン、ミクロエマルジョン、および緩衝液(例えば、低張または緩衝食塩水)または、局所投与医薬に関して当分野で既知の任意の他の担体。当分野で公知の担体のより完全な列挙が、当分野で標準的な参考テキスト、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、1980、および第17版、1985に見出される;両方ともMack Publishing Company,Easton,Pennsylvaniaにより出版;それらの開示の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。特定の他の実施形態において、本発明の局所配合物は、賦形剤を含んで成ってよい。当分野で既知の任意の医薬的に許容される賦形剤を、本発明の医薬的に許容される局所配合物の調製に使用しうる。本発明の局所配合物に含有できる賦形剤の例は、防腐剤、酸化防止剤、モイスチャライザー、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、他の浸透剤、皮膚保護剤、界面活性剤、および液体発泡剤、および/または本発明化合物と組み合わせて使用される付加的治療薬を包含するが、それらに限定されない。好適な防腐剤は、アルコール、第四級アミン、有機酸、パラベンおよびフェノールを包含するが、それらに限定されない。好適な酸化防止剤は、アスコルビン酸およびそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、およびEDTAのようなキレート化剤、およびクエン酸を包含するが、それらに限定されない。好適なモイスチャライザーは、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素およびプロピレングリコールを包含するが、それらに限定されない。本発明と共に使用するのに好適な緩衝剤は、クエン酸、塩酸および乳酸緩衝剤を包含するが、それらに限定されない。好適な可溶化剤は、塩化第四級アンモニウムクロリド、シクロデキストリン、ベンジルベンゾエート、レシチンおよびポリソルベートを包含するが、それらに限定されない。本発明の局所配合物に使用できる好適な皮膚保護剤は、ビタミンE油、アラントイン(allatoin)、ジメチコーン、グリセリン、石油および酸化亜鉛を包含するが、それらに限定されない。
【0136】
特定の実施形態において、本発明の医薬的に許容される局所配合物は、少なくとも本発明化合物および浸透促進剤を含んで成る。局所配合物の選択は、いくつかの要素に依存し、該要素は、処置される症状、本発明化合物および存在する他の賦形剤の物理化学的特性、配合物におけるそれらの安定性、使用できる製造装置、およびコスト制限を包含する。本明細書において使用される場合、「浸透促進剤」という用語は、薬理学的活性化合物を、好ましくは全身的吸収がほとんどまたは全くなしに、角質層を経て表皮または真皮に輸送することができる薬剤を意味する。多種の化合物が、皮膚を通る薬剤の浸透速度の促進における有効性に関して評価されている。例えば、下記文献を参照:Percutaneous Penetration Enhancers,Maibach H.I.およびSmith H.E.(編者)、CRC Press,Inc.,Boca Raton,Fla.(1995)(それは、種々の皮膚浸透促進剤の使用および試験を調査している);およびBuyuktimkinら、Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Gosh T.K.,Pfister W.R.,Yum S.I.(編者)、Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,Ill.(1997)。特定の例示的実施形態において、本発明と共に使用される浸透剤は、下記を包含するが、それらに限定されない:トリグリセリド(例えば、ダイズ油)、アロエ組成物(例えば、アロエベラゲル)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクチル(octoly)フェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N−デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、イソプロピルミリステート、メチルラウレート、グリセロールモノオレエート、およびプロピレングリコールモノオレエート)、およびN−メチルピロリドン。
【0137】
特定の実施形態において、組成物は、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、吸入剤または貼付剤の形態であってよい。特定の例示的実施形態において、本発明による組成物の製剤はクリーム剤であり、それは、飽和または不飽和脂肪酸、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸、セチルまたはオレイルアルコールをさらに含有してよく、ステアリン酸が特に好ましい。本発明のクリーム剤は、非イオン界面活性剤、例えばポリオキシ−40−ステアレートも含有しうる。特定の実施形態において、活性構成成分を、滅菌条件下に、医薬的に許容される担体、および要求に応じて、任意の必要とされる防腐剤または緩衝剤と混合する。眼用配合物、点耳剤および点眼剤も、本発明の範囲に含まれるものとする。
さらに、本発明は、経皮貼付剤の使用も意図し、該経皮貼付剤は、体への化合物の制御送達を与えるという付加的利点を有する。そのような投与形態は、化合物を適切な媒質に溶解または分散(dispensing)させることによって作製される。前記のように、皮膚を通る化合物の流動を増加させるために、浸透促進剤も使用できる。その速度は、速度制御膜を与えることによるか、または化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることによって、制御できる。
【0138】
本発明化合物は、好ましくは、投与の容易性および用量の均一性のために用量単位形態に配合される。本明細書において使用される場合、「用量単位形態」という表現は、処置される被験体に適した治療薬の、物理的に分離した単位を意味する。しかし、本発明の化合物および組成物の合計1日使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医によって決定されることが理解される。任意の特定被験体または生体のための特定の治療有効投与量レベルは、下記を包含する種々の要素に依存する;処置される障害、および障害の重症度;使用される特定化合物の活性;使用される特定組成物;被験体の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事;投与時刻、投与経路、および使用される特定化合物の排出速度;処置期間;使用される特定化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬剤;および医療分野において周知の同様の要因等(例えば、下記の文献を参照:Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版、A.Gilman,J.HardmanおよびL.Limbird編、McGraw−Hill Press,155−173,2001;この全内容は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0139】
さらに、適切な医薬的に許容される賦形剤を用いて所望用量に配合した後、本発明の医薬組成物を、ヒトおよび他の動物に、処置される感染症の重症度に依存して、経口的、直腸的、非経口的、槽内的、膣内的、腹腔内的、静脈内的、動脈内的、筋肉内的、皮下的、局所的(例えば、粉末剤、軟膏剤、クリーム剤または滴剤による)、口腔内的(bucally)、口内または鼻内スプレー等によって、投与することができる。特定の実施形態において、本発明化合物は経口的または静脈内的に投与される。
【0140】
特定の実施形態において、本発明化合物は、所望の治療効果を得るために、約0.001mg/kg〜約50mg/kg、約0.01mg/kg〜約25mg/kg、または約0.1mg/kg〜約10mg/kg被験体体重/日の投与量レベルで、1日に1回またはそれ以上、投与される。0.001mg/kgより少ないか、または50mg/kgより多い(例えば50〜100mg/kg)投与量を、被験体に投与しうることも認識される。
【0141】
本発明の化合物および医薬組成物は、併用療法において配合し使用しうることも認識され、即ち、該化合物および医薬組成物を、1つまたはそれ以上の他の所望の治療薬または医学的処置と共に配合できるか、またはそれと同時に、その前に、またはその後に、投与することができる。併用計画において使用するための療法(治療薬または処置)の特定の組合せは、所望の治療薬および/または処置と、達成すべき所望の治療効果との適合性を考慮に入れる。使用される療法は、同じ障害に関して所望の効果を達成しうる(例えば、本発明化合物を、他の免疫調節剤、抗癌剤、または乾癬の処置に有用な薬剤と同時に投与しうる)か、またはそれらは異なる効果を達成しうる(例えば、なんらかの副作用の抑制)ことも認識される。
【0142】
例えば、本発明化合物と組み合わせて使用しうる他の療法または抗癌剤は、手術、放射線療法(少しの例にすぎないが、γ線、中性子線放射線療法、電子線放射線療法、陽子療法、近接照射療法、および全身ラジオアイソトープ)、内分泌療法、生物反応調節剤(少しの例を挙げると、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法および寒冷療法、なんらかの副作用を軽減する薬剤(例えば、制吐剤)、および他の認可化学療法薬を包含し、該認可化学療法薬は、少しの例を挙げれば、下記の薬剤を包含するが、それらに限定されない:アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、代謝拮抗薬(メトトレキサート)、プリン拮抗薬およびピリミジン拮抗薬(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル、ゲムシタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソ尿素化合物(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)。最新癌療法のより広範囲な記載については、The Merck Manual、第17版、1999を参照;その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。National Cancer Institute(CNI)ウェブサイト(www.nci.nih.gov)、およびFDA認可腫瘍薬のリストに関する食品医薬品局(FDA)ウェブサイト(www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe)も参照される。
【0143】
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1つまたはそれ以上の付加的治療薬(例えば、化学療法薬および/または緩和(palliative)剤)をさらに含んで成る。例えば、本発明化合物と共に、共同投与されるか、または医薬組成物に含有される、付加的治療薬は、認可化学療法薬および/または緩和剤であってよく、または、食品医薬品局における認可を受けている多くの薬剤のいずれかであってよい。本発明の解釈上、「緩和」という用語は、疾患の症状および/または治療計画の副作用の軽減に焦点を当てるが、治癒的でない処置を意味する。例えば、緩和処置は、鎮痛剤、制吐剤、および抗吐き気剤を包含する。さらに、化学療法、放射線療法および手術は全て、緩和的に(即ち、治癒を目指さずに症状を軽減するため;例えば、腫瘍を収縮させるため、ならびに圧迫、出血、痛み、および癌の他の症状を軽減させるため)使用することができる。
【0144】
キット
特定の実施形態において、本発明は、本発明の方法を、便利かつ有効に実施するためのキットを提供する。一般に、パックまたはキットは、本発明の医薬組成物の1つまたはそれ以上の部分を充填された1個またはそれ以上の容器を含んで成る。そのような容器に投与指示書を任意に添えることができ、該指示書は、投与量推奨基準、および/または医薬製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式における通知書を包含し、該通知書は、該機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の承認を示す。キットは、多くの投与単位を含有しうる。例えば、キットは、多くの日数、週数または月数のための投与単位を含有しうる。特定の実施形態において、キットは、本発明化合物またはその組成物の1週間分の量を含有する。特定の実施形態において、キットは、本発明化合物またはその組成物の1ヵ月分の量を含有する。
【0145】
研究使用およびアッセイ
本発明化合物は、生物学的機能を調査するためのツールとしても有用である。例えば、本発明化合物は、デアセチラーゼ(例えば、HDACまたはTDAC)活性に依存する生物学的経路を調査するのに使用しうる。特定の実施形態において、本発明化合物は、遺伝子発現を調査するために使用しうる。特定の実施形態において、本発明化合物は、自食作用を調査するために使用しうる。
【0146】
例えば、本発明によれば、抗原虫、HDAC阻害、発毛、アンドロゲンシグナル伝達阻害、エストロゲンシグナル伝達阻害、自食作用阻害および/または抗増殖活性を有する化合物を同定するために、当分野で既知の任意の利用可能アッセイにおいて、本発明化合物を検定しうる。例えば、アッセイは、細胞または非細胞、生体内または生体外、ハイ−またはロー−スループットフォーマット等であってよい。
【0147】
従って、1つの態様において、特に関心が持たれる本発明化合物は、下記を示す化合物を包含する:HDAC阻害活性を示す;HDACクラスI阻害活性を示す(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC8);HDACクラスII阻害活性を示す(例えば、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC9a、HDAC9b、HDRP/HDAC9c、HDAC10);HDACクラスIII阻害活性を示す;HDAC1(Genbank Accession No.NP 004955;参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC2(Genbank Accession No.NP_001518;参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC3(Genbank Accession No.O15739;参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC4(Genbank Accession No.AAD29046;参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC5(Genbank Accession No.NP_005465;参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC6(Genbank Accession No.NP_006035;参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC7(Genbank Accession No.AAP63491;参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC8(Genbank Accession No.AAF73428、NM_018486、AF245664、AF230097;それぞれ、参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC9(Genbank Accession No.NM_178425、NM_178423、NM_058176、NM_014707、BC111735、NM_058177;それぞれ、参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC10(Genbank Accession No.NM_032019;参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;HDAC11(Genbank Accession No.BC009676;参照により本明細書に組み入れられる)を阻害する能力を示す;チューブリン脱アセチル化(TDAC)を阻害する能力を示す;Ure2pの下流の遺伝子のグルコース−感受性サブセットを調節する能力を示す;生体外で、または科学的に許容される癌細胞異種移植モデルを使用する動物試験において、維持される癌細胞系において、細胞毒性または増殖阻害作用を示す;および/または既存化学療法薬より優れた治療プロフィール(例えば、最適安全性および治癒作用)を示す。
【0148】
本明細書の実例において詳述されるように、癌細胞増殖を阻害する化合物の能力を判定するアッセイにおいて、特定の本発明化合物は、IC50値≦100μMを示し得る。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦50μMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦40μMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦30μMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦20μMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦10μMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦7.5μMを示す。特定の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦5μMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦2.5μMを示す。特定の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦1μMを示す。特定の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦0.75μMを示す。特定の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦0.5μMを示す。特定の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦0.25μMを示す。特定の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦0.1μMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦75nMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦50nMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦25nMを示す。特定の他の実施形態において、本発明化合物は、IC50値≦10nMを示す。他の実施形態において、例示的化合物は、IC50値≦7.5nMを示す。他の実施形態において、例示的化合物は、IC50値≦5nMを示す。
【実施例】
【0149】
下記の代表的な実施例は、本発明を例示することを助けるものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、そのように解釈すべきでない。実際に、本明細書に示され記載されているものの他に、本発明の種々の変形および多くのさらなるその実施形態が、下記の実施例および本明細書に引用されている科学および特許文献の参照を包含する本明細書の全内容から、当業者に明らかである。さらに、他に指示しない限り、本明細書に引用されている各文献の全内容は、技術の現状を例示するのを助けるために、参照により本明細書に組み入れられることも認識すべきである。下記の実施例は、その種々の実施形態およびその等価物において、本発明の実施に応用することができる重要な追加の情報、例示および指針を含有する。
【0150】
(実施例1)
HDAC阻害剤として使用するための例示化合物の合成
合成法の一般的説明
本明細書に引用した種々の文献は、本明細書に記載されている本発明化合物または関連中間体に類似した化合物の調製に関する有用な背景情報、ならびに関心が持たれると考えられるそのような化合物の配合、使用および投与に関する情報を提供している。
【0151】
さらに、実施者は、種々の例示的化合物およびその中間体に関して本明細書に示されている特定の指針および例に従う。
【0152】
本発明化合物およびそれらの調製は、これらの化合物が調製または使用される方法のいくつかを例示する実施例によって、さらに理解することができる。しかし、これらの実施例は本発明を限定しないことが認識される。現在既知であるかまたはさらに開発される本発明の変形は、本明細書および下記の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲に含まれるものとみなされる。
【0153】
本発明によれば、任意の利用可能な方法を使用して、本発明化合物またはそれを含有する組成物を作成または調製することができる。例えば、以下に詳しく記載するような、種々の組合せ法、並列合成および/または固相合成法を使用しうる。選択的または付加的に、本発明化合物を、当分野において既知の種々の液相合成法のいずれかを使用して調製しうる。
【0154】
以下に記載のように、種々の本発明化合物を本明細書に記載の方法に従って合成できることが認識される。これらの化合物の調製に使用される出発物質および試薬は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)、Bachem(Torrance,CA)、Sigma(St.Louis,MO)のような商業的供給者から入手可能であるか、または下記のような文献に記載されている手順に従って、当業者に周知の方法で調製される:Fieser and Fieser 1991,Reagents for Organic Synthesis、第1〜17巻、John Wiley and Sons,New York,NY,1991;Rodd 1989,Chemistry of Carbon Compounds、第1〜5巻および増補、Elsevier Science Publishers,1989;Organic Reactions、第1〜40巻、John Wiley and Sons,New York,NY,1991;2001年3月、Advanced Organic Chemistry、第5版、John Wiley and Sons,New York,NY;および、Larock 1990、Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations、第2版、VCH Publishers。これらの方法は、本発明化合物を合成することができるいくつかの方法を単に例示するものであり、これらの方法の種々の変更が可能であり、本開示を考慮して当業者に示唆される。
【0155】
出発物質、中間体および本発明化合物は、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー等を包含する従来法を使用して、分離し、精製しうる。それらは、物理定数およびスペクトルデータを包含する従来法を使用して、特性決定しうる。
【0156】
他に指示しない限り、出発物質は、商業的に入手可能であるか、または当分野に適切に精通した者により、実験室合成によって容易に入手できる(accessibly)。本明細書において、一般的に、ならびに本明細書のサブクラスおよび化学種において、記載されている化合物の合成の、手順および一般指針が以下に一般的に記載される。
【0157】
【化20−1】

バイアス物質の合成の代表的手順
メタノール(150mL)中のジメチルエステル(300mmol)の溶液に、ヒドラジン(4.5mL、150mmol)を室温で添加した。溶液を60℃で48時間撹拌した。有機溶媒を真空蒸発させた。得られた白色固形物を石油エーテル(100mL)に懸濁させた。固形物を濾過し、石油エーテル(3x200mL)で洗浄し、過剰の出発物質を除去した。短シリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィー(塩化メチレン中の5%メタノールで溶離)に付して、モノメチルエステルモノヒドラジドを白色固形物として得た。
【0158】
メタノール(100mL)中のモノメチルエステルモノヒドラジド(91.6mmol)の溶液に、メタノール中の水酸化ナトリウム(14.65g、366.3mmol)の溶液、次に、メタノール中のヒドロキシルアミンヒドロクロリド(12.73g、183.2mmol)の溶液を添加した。反応を室温で24時間撹拌した。もう1回分の、メタノール中のヒドロキシルアミンヒドロクロリド(12.73g、183.2mmol)を反応に添加して、過剰の塩基を鎮めた。メタノール中の懸濁液を、濾過の前に加熱還流した。固形物を熱エタノール500mLで洗浄した。合わせた液体を真空蒸発させた。得られた固形物をエタノールで2回再結晶して、純粋生成物を得た。
【0159】
アシルヒドラジドとアルデヒドとのカップリングの代表的手順
25μLのアルデヒド溶液(DMSO中0.2M)を、25μLのヒドラジド溶液(DMSO中0.2M)に添加した(アルデヒドが塩基性の場合、25mol%のHOAcが必要である。)。混合物を、75℃で12時間加熱後に、450μLのDMSOで希釈した。得られた溶液(10mM)を再び75℃で12時間加熱した。アシルヒドラゾンの純度をLCMSによって分析し、ほぼ全ての化合物について、主に1つのピークが観測された。
【0160】
(実施例2)
WT−161の薬物動態
WT−III−161(Wt:遊離塩基について458.55)を、25% DMSO、25% Cremophor EL、および50%食塩水に溶解して、静脈内投与のために2mg/mLの最終濃度を得た(pH=6〜7)。溶液は透明薄黄色であり、その中のWT−III−161の濃度は、116.92%の正確度でHPLC法によって確認した(表I)。
【表1−1】

【0161】
試験設計: 試験設計、動物の選択、取扱および処置は、Shanghai Medicilon Inc.試験プロトコル(Shanghai Medicilon Inc Study No.BRD0701)に従った。雄CD0−1マウス(体重23g〜27g)をこの試験に使用した。薬物動態試験の前に、動物を、無作為に、処置群(各時点につき動物3匹)に割り振った。処置計画が表1に示されている。追加の10匹のマウスを使用して、校正曲線用の血漿を採集した。
【0162】
血液試料を、眼窩後穿刺によって、投与前、および投与後0.033、0.083、0.25、0.5、1、2、3、4、6、7および24時間で採集し、その後すぐに、心臓、脾臓、肝臓および脳組織を採取した。全ての試料および投与配合物を、生物分析または提出するための輸送まで、−20℃で保存した。
【0163】
血漿中のWT−161の濃度は、高圧液体クロマトグラフィー/質量分析(LC−MS/MS)法を使用して測定した。
【0164】
LC−MS/MS装置: LCシステムは、定組成ポンプ(1100シリーズ)、オートサンプラー(1100シリーズ)およびデガッサー(1100シリーズ)を取り付けたAligent液体クロマトグラフを含んでいた。質量分析は、ESIインターフェースを有するAB Inc(カナダ)からのAPI3000(トリプル四重極)機器を使用して行なった。データ取得およびコントロールシステムは、ABI Inc.からのAnalyst 1.4ソフトウェアを使用して形成した。アセトニトリルおよびメタノールは、HPLCグレードであった。他の全ての溶媒および化学薬品は、分析グレードまたはそれ以上であった。
【0165】
薬物動態ソフトウエア DAS 2.0(Gaosi Data Analysis Inc.,Wuhn,China)を使用した。
【0166】
LC−MS/MS条件
クロマトグラフィー条件: ColumnL Synergi Fusion−RP、4μm(150mm x 2.0mm);移動相:0.1%蟻酸:メタノール:アセトニトリル(5:90:5);溶離速度:350μL/分;カラム温度:25℃;注入量:2μL。
【0167】
質量分析条件
スキャン型:ポジティブMRM;イオン源;ターボスプレー;イオン化モード:ESI;噴霧ガス:8L/分;カーテンガス:8L/分;衝突ガス:4L/分;イオンスプレー電圧:5000V;温度:500℃
【0168】
【表1−2】

標準保存溶液の調製: WT−161の保存溶液は、その薬剤をメタノールに溶解して最終濃度200μg/mLとすることによって調製した。この溶液のアリコートをメタノールで希釈して、5、2.5、0.5、0.25、0.05および0.025μg/mLの一連の使用液を調製した。前記で調製した20μL使用液を、100μLブランク血漿を含有する6つのエッペンドルフ管に添加することによって、1000、500、100、50、10および5ng/mLを含有する6つの校正標準試料を得た。QC試料は、100μLブランク血漿に、4、1および0.04μg/mLの20μL使用液を添加して、最終濃度800、200および8ng/mLとすることによって調製した(表II参照)。
【0169】
【表2−1】

クエチアピン(内部標準、IS)の保存溶液は、その薬剤をエタノールに溶解して、最終濃度200μg/mLとすることによって調製した。この溶液をメタノールで希釈して、最終濃度50ng/mLとした。
【0170】
血漿試料処理: 血漿試料(0.1mL)をエッペンドルフ管に移し、次に、20μLのメタノール、500μL IS溶液(50ng/mL)をそれに添加した。1分間ボルテックスし、15,000rpmで5分間遠心分離した後、2μLの上澄みをLC−MS/MSに注入した。
【0171】
方法妥当性確認結果: クロマトグラフィー条件は、ブランク血漿がWT−161およびIS測定に干渉しないことを示した。
【0172】
校正曲線: 分析曲線は、5〜1000ng/mLの範囲の6つの非ゼロ標準を使用して構成した。ブランク試料(内部標準を使用せずに処理したマトリックス試料)を使用して、コンタミネーションを除外した。WT−161の線形回帰分析は、ng/mLのWT−161濃度(x)に対して、ピーク領域比(y)をプロットすることによって行なった。ピーク領域比と濃度との関係の直線性が、WT−161の線形回帰について得られた相関係数(R)によって立証された。
【0173】
アッセイ内正確度結果(99.86%〜121.96%)は、方法が信頼できることを示した(下記の表1〜2)。
【0174】
【表1−3】

【0175】
【表2−2】

薬物動態データ分析: 定量限界(LOQ=5ng/mL)未満の血漿中の濃度は、ゼロとした。薬物動態データ分析は、DAS2.0における非区画分析モジュールを使用して行なった。
【0176】
結果および考察
静脈注射後の薬物動態: 静脈投与群の個々のおよび平均の濃度−時間データを表3に示し、図8にグラフで示す。IV投与後の選択非区画薬物動態パラメーターを表4に示す。
【0177】
5mg/kgでのWT−161のIVボーラス注射後に、全身クリアランス値は1.64L/時/kgであり、これは、マウス肝血流(5.40L/時/kg)の30.37%に対応していた。WT−161の半減期値(T1/2)は1.41時間であった。
【0178】
名目投与量5mg/kgでのIV投与後のCmax値(投与後2分)は、1866.3μg/mLであった。WT−161のAUC値(0−∞)は、3049.28時ug/Lであった。
【0179】
WT−161は組織に充分に分布する。最終段階における分布量は、3.33L/kgであり、これはマウスにおける体内全水分量(0.73L/kg)の4.56倍に対応した。
【0180】
【表3】

【0181】
【表4】

(実施例3)
腫瘍に対する生体内活性の測定の一般的方法
種々の方法を使用できるが、本発明化合物の生体内活性を測定する1つの例示的方法は、所望腫瘍塊のマウスへの皮下移植による測定である。次に、腫瘍塊の移植後に腫瘍塊が約100mmに達した際に、薬剤処置を開始する。次に、好適な組成物を、好ましくは食塩水において、かつ好ましくは5、10および25mg/kgの用量で1日1回、マウスに投与する(しかし、他の用量も投与できることが認識される)。次に、体重および腫瘍の大きさを毎日測定し、初期値に対するパーセント比率の変化をプロットする。移植腫瘍が潰瘍化し、体重減少が対照体重減少の25〜30%を超え、腫瘍重量が癌を有するマウスの体重の10%に達し、または、癌を有するマウスが瀕死である場合に、動物を動物福祉の指針に従って犠牲にする。
【0182】
(実施例4)
一般的バイオアッセイ手順
細胞培養およびトランスフェクション: TAg−Jurkat細胞に、電気穿孔法によって、5μgのFLAG−エピトープ標識pBJ5構成物を、組換えタンパク質の発現のために、トランスフェクションした。細胞をトランスフェクション後48時間で収集した。
【0183】
HDACアッセイ: [H]アセテートを組み込んだヒストンを、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによって、ブチレート処理HeLa細胞から分離した(Tongら、Nature 1997,395,917−921に記載)。免疫沈降物を、1.4μg(10,000dpm)ヒストンと共に、37℃で3時間インキュベートした。HDAC活性を、酢酸エチル可溶性[H]−酢酸のシンチレーション計数によって測定した(Tauntonら、Science 1996,272,408−411に記載)。化合物を、最終アッセイ濃度が1%DMSOになるように、DMSOに添加した。IC50は、Prism 3.0ソフトウエアを使用して算出した。カーブフィッティングは、プログラムのS字状用量反応パラメーターを使用して、制約なしに行なった。全てのデータ点を二重に取得し、IC50は、少なくとも2つの別の実験の複合結果から計算される。
【0184】
等価物
当業者は、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を、認識するか、または日常試験だけによって確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、およびその医薬的に許容される形態:
【化20−2】

[式中、
nは、1〜10の整数であり(両端の整数を含む);
mは、0〜5の整数であり(両端の整数を含む);
kは、0〜5の整数であり(両端の整数を含む);
pは、0〜5の整数であり(両端の整数を含む);
は、任意に置換されたアシル部分であり;
は、水素;ハロゲン;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシル;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリール;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(=O)R;または−C(R;であり、ここで、Rの各存在は、独立に、水素、保護基、脂肪族部分、複素脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
は、水素;ハロゲン;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシル;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリール;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(=O)R;または−C(R;であり、ここで、Rの各存在は、独立に、水素、保護基、脂肪族部分、複素脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分であり;
は、水素;ハロゲン;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖の複素脂肪族;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアシル;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のアリール;置換または非置換、分岐鎖または非分岐鎖のヘテロアリール;−OR;−C(=O)R;−CO;−CN;−SCN;−SR;−SOR;−SO;−NO;−N(R;−NHC(=O)R;または−C(R;であり、ここで、Rの各存在は、独立に、水素、保護基、脂肪族部分、複素脂肪族部分、アシル部分;アリール部分;ヘテロアリール部分;アルコキシ;アリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールオキシ;またはヘテロアリールチオ部分である]。
【請求項2】
nが4〜7(両端を含む)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが4である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
nが5である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
nが6である、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
mが0、1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
pが0、1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
kが0、1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
m、pおよびkの合計(sume)が0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
m、pおよびkの合計が1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
m、pおよびkの合計が2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
が−C(=O)Rであり、ここで、Rは−OR’または−N(R”)から選択され、ここで、R’は水素または任意に置換されたアルキル部分であり、R”は水素、−OH、任意に置換されたアリール部分、または任意に置換されたヘテロアリール部分である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
が−COHである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
が−OR’であり、R’が任意に置換されたアルキルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
R’が、−CH、−CHCH、−CHCHCH、または−CH(CHである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
が−NHR”から選択され、ここで、R”は、−OH、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールから選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項17】
R”が−OHである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
R”が任意に置換されたアリール部分である、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
前記アリール部分が下記の構造:
【化21】

である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
下記の化合物:
【化22】

[式中、nは、4、5、6または7である]
およびそれらの医薬的に許容される形態から成る群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
下記の化合物:
【化23】

またはその医薬的に許容される形態である、請求項1に記載の化合物
【請求項22】
治療有効量の請求項1に記載の化合物、および医薬的に許容される賦形剤を含んで成る、医薬組成物。
【請求項23】
デアセチラーゼ活性を阻害する方法であって、デアセチラーゼを請求項1に記載の化合物と接触させる工程を含んで成る方法。
【請求項24】
前記デアセチラーゼが精製されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記デアセチラーゼが細胞中にある、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記デアセチラーゼがHDAC6である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
増殖性障害を有する被験体を処置する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を被験体に投与する工程を含んで成る方法。
【請求項28】
前記被験体が哺乳動物である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記増殖性障害が癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記増殖性障害が、炎症性疾患である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記増殖性障害が、皮膚に関係した増殖性障害である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記増殖性障害が、皮膚T細胞リンパ腫である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記投与する工程が、化合物を経口的または静脈内的に投与することを含んで成る、請求項27に記載の方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−529048(P2011−529048A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520034(P2011−520034)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/004235
【国際公開番号】WO2010/011296
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505061964)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (11)
【出願人】(399052796)ディナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】