説明

ディスクブレーキ装置

【課題】自動車等に用いられ、車輪と共に回転するディスクロータ2を両側面から挟み込むように配置される一対のパッド71,72と、両パッド71,72をリテーナ6を介してディスクロータ2の軸方向に摺動自在に支承する支承体4とを備え、両パッド71,72をディスクロータ2の側面に押し付けて制動を行うディスクブレーキ装置1において、ブレーキダストの飛散を抑制する。
【解決手段】リテーナ6に、両パッド71,72及びディスクロータ2の径方向外側を覆う覆い部6aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられるディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪と共に回転するディスクロータと、ディスクロータの一方の側面に対向しピストンを内挿するシリンダ部と、ディスクロータの他方の側面に対向する爪部と、シリンダ部と爪部とをディスクロータを跨いで接続するブリッジ部とを有するキャリパボディと、ピストンとディスクロータとの間、及びキャリパボディの爪部とディスクロータとの間に配置された一対のパッドと、両パッドをリテーナを介してディスクロータの軸方向に摺動自在に支持するキャリパブラケットとを備え、両パッドをディスクロータの側面に押し付けて制動を行うディスクブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の如く構成されるディスクブレーキ装置は、パッドをディスクロータの側面に押し付けて制動を行うため、摩擦によりパッドやディスクロータの削れ粉(ブレーキダスト)が発生する。また、ディスクブレーキ装置のキャリパボディとキャリパブラケットとの間には隙間がある。そして、この隙間からブレーキダストが飛散し、ディスクブレーキ装置と、ディスクブレーキ装置の周辺に配置された自動車のホイール等の周辺部材とが、ブレーキダストによって汚れる虞がある。
【特許文献1】実開平5−73330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の点に鑑み、ブレーキダストの飛散を抑制することができるディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、車輪と共に回転するディスクロータを両側面から挟み込むように配置される一対のパッドと、両パッドをリテーナを介してディスクロータの軸方向に摺動自在に支承する支承体とを備え、両パッドをディスクロータの側面に押し付けて制動を行うディスクブレーキ装置において、リテーナに、両パッド及びディスクロータの径方向外側を覆う覆い部が設けられたことを特徴とする。
【0006】
かかる構成によれば、リテーナの覆い部の内面にブレーキダストが付着し、ブレーキダストの外方へ飛散を抑制され、ディスクブレーキ装置の外観を損うことなく良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜3を参照して、本発明のディスクブレーキ装置の実施形態を説明する。図中、1は自動車に用いられるディスクブレーキ装置である。ディスクブレーキ装置1は、車輪と共に回転するディスクロータ2と、ナックル等の車体側に固定され一対のパッドによりディスクロータ2を挟み込むことにより制動する浮動型のキャリパ機構3とを備える。尚、図中の矢印Aは、車両前進走行時のディスクロータの回転方向を示している。
【0008】
キャリパ機構3は、ナックル等の車体側に固定されるキャリパブラケット4と、キャリパブラケット4にスライドピン5a,5a(図3参照)を介してディスクロータ2の軸方向に移動自在に取り付けられたキャリパボディ5と、ディスクロータ2を側方から挟みこむように配置されると共に、キャリパブラケット4にリテーナ6を介してディスクロータ2の軸方向に摺動自在に支承される一対のパッド71,72とを備える。実施形態においては、キャリパブラケット4が本発明の支承体に相当する。パッド71,72は、ディスクロータ2の側面に摺接するライニング71a,72aと、ライニング71a,72aを保持する金属製の裏板71b,72bとからなる。
【0009】
キャリパボディ5は、図2に示すように、ディスクロータ2の一方の側面に対向するシリンダ部51と、ディスクロータ2の他方の側面に対向する爪部52と、シリンダ部51と爪部52とをディスクロータ2を跨いで接続するブリッジ部53とで構成される。
【0010】
シリンダ部51内にはピストン51aがディスクロータ2の軸方向に摺動自在に内挿され、シリンダ部51とピストン51aとにより油圧室51bを画成する。また、ピストン51aとディスクロータ2との間にピストン側パッド71が配置され、爪部52とディスクロータ2との間に爪部側パッド72が配置される。
【0011】
キャリパ機構3は、油圧室51bに作動油が供給されると、ピストン51aがピストン側パッド71をディスクロータ2に押し付け、同時に、キャリパボディ5がピストン51aの押圧力の反力によりピストン51aの押圧方向とは逆の方向へ移動し、爪部52を介して爪部側パッド72をディスクロータ2に押し付けることにより、ディスクロータ2を制動する。
【0012】
ブリッジ部53の中央部には、軽量化のため肉厚が薄く形成された薄肉部53aが形成され、他の部分はシリンダ部51と爪部52との接続強度を高めるべく肉厚が厚い厚肉部53bとなっている。薄肉部53aの中央部には、パッド71,72の磨耗度合いを視認できるように窓部53cが形成されている。
【0013】
又、爪部52はその先端から基端に向かって大きく切り欠かれた切欠部52aが形成され二股状となっており、切欠部52aを介してピストン51aを挿入するシリンダ部51を加工し易くしている。
【0014】
ところで、上記の如く構成されるディスクブレーキ装置1は、ディスクロータ2とパッド71,72とが接触することによりパッド71,72やディスクロータ2の削れ粉(ブレーキダスト)が発生する。キャリパブラケット4とブリッジ部53との間に隙間が空いていると、この隙間からブレーキダストが飛散してディスクブレーキ装置1が汚れ、外観が損われる。
【0015】
そこで、実施形態のディスクブレーキ装置1では、図3に示すように、リテーナ6のディスクロータ2の径方向外方端部を、キャリパブラケット4とキャリパボディ5のブリッジ部53との間の隙間を閉塞するようにブリッジ部53に向けて延ばした覆い部としての閉塞部6aを設けている。これにより、閉塞部6aの内面にブレーキダストが付着して、キャリパ機構3外へのブレーキダストの飛散を抑制し、ディスクブレーキ装置1がブレーキダストにより汚れ外観が損われることを防止できる。閉塞部6aに付着したブレーキダストは、パッド71,72の交換時に回収する。
【0016】
尚、実施形態においては、浮動型のキャリパ機構3を用いているが、対向型のキャリパ機構を用いてもよい。ここで、対向型のキャリパ機構では、爪部が存在しないためブリッジ部もなく、浮動型のキャリパ機構3のブリッジ部に対応する部分も開口している。このため、対向型のキャリパ機構を用いる場合には、ブリッジ部に対応する部分の開口も覆うようにリテーナの覆い部を構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のディスクブレーキ装置の実施形態を示す説明図。
【図2】図1のII−II線切断断面図。
【図3】図2のIII−III線切断断面図。
【符号の説明】
【0018】
1…ディスクブレーキ装置、 2…ディスクロータ、 3…キャリパ機構、 4…キャリパブラケット(支承体)、 5…キャリパボディ、 5a…スライドピン、 51…シリンダ部、 51a…ピストン、 51b…油圧室、 52…爪部、 52a…切欠部、 53…ブリッジ部、 53a…薄肉部、 53b…厚肉部、 53c…窓部、 6…リテーナ、 6a…閉塞部(覆い部)、 71…ピストン側パッド、 71a…ライニング、 71b…裏板、 72…爪部側パッド、 72a…ライニング、 72b…裏板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するディスクロータを両側面から挟み込むように配置される一対のパッドと、両パッドをリテーナを介してディスクロータの軸方向に摺動自在に支承する支承体とを備え、両パッドをディスクロータの側面に押し付けて制動を行うディスクブレーキ装置において、
リテーナに、両パッド及びディスクロータの径方向外側を覆う覆い部が設けられたことを特徴とするディスクブレーキ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−216163(P2009−216163A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59804(P2008−59804)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】