説明

ディスクブレーキ

【課題】 パッドのラトル音を十分に抑制しうるディスクブレーキを提供する。
【解決手段】 トルク受部22bによって支持される耳部50aを有するパッド5と、トルク受部22bとパッド5との間に設けられるパッドサポート4とを備え、トルク受部22bが断面L字状であってトルク受面22b1と支持受面22b2とを備えるディスクブレーキで1あり、パッドサポート4は、パッド5の耳部50aをロータ中心方向に付勢する中心方向付勢部41と、支持受面22b2と耳部50aとの間に設けられて耳部50aをロータ径方向外方に付勢する外方向付勢部42とを有し、中心方向付勢部41は、耳部50aのロータ径方向外側の側面に対向してトルク受板部40aから延在する第1ばね部41aと、第1ばね部41aから延在して耳部50aのロータ径方向外側の側面に弾性的に当接するとともに第1ばね部41aよりもばね定数が小さい第2ばね部41bとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に使用されるディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプのディスクブレーキが知られており、たとえば特許文献1に記載のディスクブレーキが知られている。
特許文献1に係るディスクブレーキは、ロータの外周外方にてロータを軸方向に跨ぐ一対の腕を有するマウンティングと、該腕に形成されたトルク受部によって支持される耳部を両端部に有するパッドと、トルク受部と耳部との間に設けられるパッドサポートとを備えている。
【0003】
トルク受部は、断面L字状であって耳部からロータ周方向に力を受けるトルク受面と、耳部のロータ中心側の側面を支持する支持受面とを有している。
パッドサポートは、トルク受部のトルク受面に沿う部分と、支持受面に沿う部分とを有している。さらにパッドサポートは、パッドの耳部がロータ径方向に抜けることを防止するために、耳部のロータ径方向外側の側面に張り出して耳部をロータ中心方向に向けて付勢する中心方向付勢部と、マウンティングに掛け止められる掛止部とを有している。
【特許文献1】特許第2910970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ディスクブレーキは、パッドがロータ径方向に振動することでラトル音(ガタガタ音)が発生する場合がある。これに対し、特許文献1に係るディスクブレーキは、中心方向付勢部によってラトル音を抑制し得る構成になっているものの、ばね定数が一定であるため、パッドが重い場合には、パッドの動き量が大きくなってラトル音を十分に抑制できないことがあった。
また、ラトル音を抑制するために、中心方向付勢部の付勢力を大きくする形態も考えられるが、この場合には、パッドのロータ軸方向の移動が阻害されてパッドの引きずりトルクが増大し、ひいてはパッドの偏摩耗につながるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、断面L字状のトルク受部によってパッドの耳部を支持するディスクブレーキにおいて、パッドの引きずりトルクを増大させることなくラトル音を十分に抑制し得るディスクブレーキを提供することを課題とする。
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、各請求項に記載のとおりの構成を備えるディスクブレーキであることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によると、パッドサポートは、マウンティングに掛け止められる掛止部と、パッドの耳部をロータ中心方向に付勢する中心方向付勢部と、トルク受部の支持受面と耳部との間に設けられて中心方向付勢部とともに耳部を挟持する支持部と、トルク受部のトルク受面と耳部との間に設けられて中心方向付勢部と支持部とを連結する基部とを有し、中心方向付勢部は、耳部のロータ径方向外側の側面に対向して基部から延在する第1ばね部と、第1ばね部から延在して耳部のロータ径方向外側の側面に弾性的に当接するとともに第1ばね部よりもばね定数が小さい第2ばね部とからなる構成になっている。
【0007】
したがって、パッドの耳部をロータ中心方向に付勢する中心方向付勢部部が、ばね定数の大きい第1ばね部と第1ばね部よりばね定数の小さい第2ばね部とから構成されているため、制動時は耳部が第1ばね部と第2ばね部とによって大きな付勢力で付勢され、パッドのロータ径方向の動きが規制されるので、ラトル音の発生が防止される。また、非制動時は耳部が第2ばね部によって小さな付勢力で付勢され、ロータ軸方向のパッドの移動が阻害されずパッドの引きずりが発生し難く、パッドの偏摩耗が防止される。
【0008】
請求項2に記載の発明によると、支持部が耳部をロータ径方向外方に弾性的に付勢しているため、耳部がフローティングしている状態となり、制動時に耳部が確実にトルク受面に当接してパッドの姿勢が安定し、鳴きの発生が防止される。
【0009】
請求項3に記載の発明によると、ばね定数の大きい第1ばね部が耳部のロータ径方向外側の側面から所定距離離間しているため、非制動時に第2ばね部のみが耳部のロータ径方向外側の側面を付勢し、非制動時に確実に小さな付勢力で付勢されるので、パッドの引きずりが発生し難い。
【0010】
請求項4に記載の発明によると、第1ばね部が耳部のロータ径方向外側の側面から0.2ないし0.9mm離間しているため、非制動時に確実に第1ばね部のみが耳部のロータ径方向外側の側面を付勢するので、パッドの引きずりが発生し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る一の実施の形態を図1ないし図6にしたがって説明する。
図1に示すように、ディスクブレーキ1は、ロータRを挟んで配設される一対のパッド5と、パッド5をロータRに向けて押圧するキャリパ3と、パッド5とキャリパ3を支持するマウンティング2を有している。マウンティング2とパッド5との間には、パッド5がマウンティング2に直接当たることを防止するために、一対のパッドサポート4が設けられている。
【0012】
図1、図2に示すように、マウンティング2は、ロータRよりも車両側(図1上側)においてロータ周方向に延出する取付け部20と、取付け部20の両端から延出してロータRの外周外方にてロータRを軸方向に跨ぐ一対の腕21,22を有している。
図2に示すように、取付け部20は、車両側の部材に取付けられる取付け部20aを有しており、車両側の部材に固定される。
【0013】
腕21,22は、基端部に形成されたトルク受部21a,22aと先端部に形成されたトルク受部21b,22bを有している。基端部のトルク受部21a,22aは、インナ側に配設されたパッド5の耳部50aをロータ軸方向に移動可能に支持する。先端部のトルク受部21b,22bは、アウタ側に配設されたパッド5の耳部50aをロータ軸方向に移動可能に支持する。
【0014】
図3に示すように、先端部のトルク受部22bは、L字状であって、パッド5の耳部50aからロータ周方向(図3右方向)に力を受けるトルク受面22b1と、耳部50aのロータ中心側(図3下側)の側面を支持する支持受面22b2とを有している。
【0015】
キャリパ3は、ロータ周方向の両端部にロータ周方向に張出す一対の張出部3cを有していて、張出部3cとスライドピン10とを介してマウンティング2の腕21,22に対してロータ軸方向に移動可能に支持されている。
キャリパ3の本体部は、ロータRをロータ軸方向に跨いでおり、腕21,22の間にて延出している。キャリパ3は、先端部に複数の爪部3aを有しており(図2参照)、基端部にピストン30が内挿されるシリンダ部3bを有している(図1参照)。
【0016】
ピストン30は、油圧によってロータ軸方向に移動して、インナ側のパッド5をロータRに向けて押圧する(図1参照)。一方、キャリパ3は、押圧反力によってインナ側(図1上側)に移動し、爪部3aによってアウタ側のパッド5をロータRに向けて押圧する(図2参照)。そのため、一対のパッド5は、ピストン30とキャリパ3とによってロータRに押圧される。
【0017】
パッド5は、摩擦材51と摩擦材51を支持する裏板50とを有している。裏板50は、ロータ周方向の両端部にロータ周方向に突出する耳部50aを有していて、耳部50aは、先端面がパッドサポート4に当接する当接部51a1となっている。
【0018】
図5に示すように、パッドサポート4は、耳部50aとトルク受部22bとの
間に設けられ、インナ側のパッド5が取付けられるインナ側部4aと、アウタ側のパッド5が取付けられるアウタ側部4bと、インナ側部4aとアウタ側部4bとを架橋する架橋部43とを一体に有している。
【0019】
インナ側部4aとアウタ側部4bは、平面状のトルク受板部40と、トルク受板部40の上端縁に形成された中心方向付勢部41と、下端縁に形成された外方向付勢部42とを有している。
図3に示すように、トルク受板部40は、トルク受部22bのトルク受面22b1と耳部50aとの間に配設され、耳部50aの当接部50a1からロータ周方向の力を受ける。
中心方向付勢部41は、耳部50aのロータ径方向外側の側面に対向してトルク受板部から延在する第1ばね部41aと、第1ばね部41aから延在して耳部50aのロータ径方向外側の側面に弾性的に当接するとともに第1ばね部41aよりもばね定数が小さい第2ばね部41bとからなり、第2ばね部41bは、耳部50aをロータ中心側に弾性的に付勢する。
【0020】
図3および図4に示すように、第1ばね部41aは、耳部50aのロータ径方向外側の側面から所定距離Dだけ離間していて、第2ばね部41bが耳部50aのロータ径方向外側の側面に弾性的に当接している。なお、ラトル音を効果的に防止するとともにパッド5の引きずりを効果的に防止するために、所定距離Dは、0.2mmないし0.9mmとしているが、効果的にラトル音を防止するためには、0.2mmないし0.5mmが好ましい。
【0021】
外方向付勢部42は、トルク受板部40の下端縁から耳部50aのロータ中心側の側面に張出して当接し、耳部50aをロータ径方向外方に弾性的に付勢する。また、外方向付勢部42は、トルク受板部40の下端縁から延出する複数の延出部42a,42b,42Dと、延出部42a,42bの先端間を連接する連接部42cとを有している。
連接部42cは、耳部50aの下端面に当接している。一方、延出部42a,42bの基端部と中央の延出部42dの先端部は、支持受面22b2に当接している。
【0022】
図3ないし図5に示すように、トルク受板部40のロータ軸方向の両端縁には、係止片44,45が形成されている。係止片44,45は、トルク受板部40に対して立設されており、マウンティング2に係止されることでパッドサポート4がロータ軸方向に移動することを規制する。また、係止片44,45は、トルク受板部40に対して立設されているため、トルク受板部40を構造的に補強する構成にもなっている。
【0023】
図5、図6に示すように、架橋部43は、係止部47を有している。
図4に示すように、係止部47は、ロータRを跨ぐマウンティング2の一部に掛け止められていて、パッドサポート4がマウンティング2に対してロータ径方向外方に抜けることを防止する。
【0024】
以上のようにしてディスクブレーキ一が構成されている。
すなわち、図3ないし図5に示すように、パッドサポート4は、耳部50aをロータ中心方向に付勢する中心方向付勢部41と、支持受面22b2と耳部50aとの間に設けられて耳部50aを支持受面22b2から離間する方向へ付勢する外方向付勢部42とを有し、中心方向付勢部41と外方向付勢部42とによって耳部50aを弾性的に挟持する構成になっている。
【0025】
中心方向付勢部41は、耳部50aのロータ径方向外側の側面に対向してトルク受板部から延在する第1ばね部41aと、第1ばね部41aから延在して耳部50aのロータ径方向外側の側面に弾性的に当接するとともに第1ばね部41aよりもばね定数が小さい第2ばね部41bとからなり、第2ばね部41bは、耳部50aをロータ中心側に弾性的に付勢する。
【0026】
したがって、制動時にパッドが大きく振動する場合には、耳部50aが第1ばね部41aと第2ばね部41bとによって大きな付勢力で付勢され、パッド5のロータ径方向の動きが規制されるので、ラトル音の発生が防止される。また、非制動時は耳部50aが第2ばね部41bによって小さな付勢力で付勢され、パッド耳部50aが外方向付勢部42に押圧される力が小さいため、ロータ軸方向のパッド5の移動が阻害されずパッド5の引きずりが発生し難く、パッド5の偏摩耗が防止される。
【0027】
(他の実施の形態)
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、下記の形態などであってもよい。
(1)すなわち、上記の実施の形態に係るパッドサポートは、中心方向付勢部と外方向付勢部とトルク受板部とを一体に有する形態であった。しかし、これらが別体状に形成される形態であってもよい。
(2)また、上記の実施の形態に係るパッドサポートは、インナ側のパッドを支持するインナ部と、アウタ側のパッドを支持するアウタ部とを一体に有する形態であった。しかし、これらが別体状に形成される形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ディスクブレーキの上面図である。
【図2】図1の矢印A方向からのディスクブレーキの正面図である。
【図3】図2のパッドサポート近傍の拡大正面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】パッドサポートの斜視図である。
【図6】パッドサポートの斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1・・・ディスクブレーキ 2・・・マウンティング 3・・・キャリパ 4・・・パッドサポート 5・・・パッド 21,22・・・腕 21a,21b,22a,22b・・・トルク受部 21b1・・・トルク受面 21b2・・・支持受面 30・・・ピストン 40・・・トルク受板部 41・・・中心方向付勢部 41a・・・第1ばね部 41b・・・第2ばね部 42・・・外方向付勢部(支持部) 43・・・架橋部 44,45・・・係止片 47・・・掛止部 50・・・裏板 50a・・・耳部 50a1・・・当接部 51・・・摩擦材 R・・・ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの外周外方にてロータを軸方向に跨ぐ一対の腕を有するマウンティングと、前記腕に形成されたトルク受部によって支持される耳部を両端部に有するパッドと、前記トルク受部と前記耳部との間に設けられるパッドサポートとを備え、前期トルク受部が断面L字状であって前記耳部からロータ周方向に力を受けるトルク受面と前記耳部のロータ中心側の側面を支持する支持受面とを備えるディスクブレーキであって、
前記パッドサポートは、前記マウンティングに掛け止められる掛止部と、前記パッドの耳部をロータ中心方向に付勢する中心方向付勢部と、前記トルク受部の支持受面と前記耳部との間に設けられて前記中心方向付勢部とともに前記耳部を挟持する支持部と、前記トルク受部のトルク受面と前記耳部との間に設けられて前記中心方向付勢部と前記支持部とを連結する基部とを有し、前記中心方向付勢部は、前記耳部のロータ径方向外側の側面に対向して前記基部から延在する第1ばね部と、前記第1ばね部から延在して前記耳部のロータ径方向外側の側面に弾性的に当接するとともに前記第1ばね部よりもばね定数が小さい第2ばね部とからなることを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項2】
請求項1において、前記支持部が前記耳部をロータ径方向外方に弾性的に付勢することを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記第1ばね部が非制動時に前記耳部のロータ径方向外側の側面から所定距離離間していることを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項4】
請求項3において、前記所定距離が0.2ないし0.9mmであることを特徴とするディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−194312(P2006−194312A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5179(P2005−5179)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】