説明

ディスクモータ及びそれを備えた電動作業機

【課題】従来と比較して放熱性の良好なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を提供する。
【解決手段】各面の隣り合う放射状パターン群92Bの間には、コイルパターン92の存在しない放射状パターン群間領域がある。この放射状パターン群間領域に、独立放熱用パターン93又は延長放熱用パターン95が設けられる。独立放熱用パターン93は、略円周方向に複数延びていて、自身の存在する層のコイルパターン92とは非接続である。一方、延長放熱用パターン95は、自身の存在する層の延長元放射状パターンから延長している。第1層の独立放熱用パターン93と、第2層の延長放熱用パターン95とは、放熱用スルーホール94で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルパターンが形成されたコイルディスクを有するディスクモータ及びそれを備えた電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のディスクモータは、出力軸と、出力軸に固定され略円板状であってコイルパターンが印刷されたコイルディスクと、コイルパターンと接続される整流子と、コイルパターンに対向するように配置される磁石と、整流子に電流を供給するためのブラシとから主に構成される。
【0003】
ディスクモータの回転数は、ブラシから供給される電圧、ディスクモータの電流、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数(極数)等により決定される。ブラシから供給される電圧及びディスクモータの電流が一定である場合には、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数を変更することによりディスクモータを所望の回転数に設定することが可能となる。
【0004】
また、特許文献2では、整流子モータにおいて、固定子コイルの冷却放熱表面積を増加させ固定子コイルの冷却放熱性能を向上させる技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3636700号公報
【特許文献2】特開2004−80996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスクモータにおいて高出力を得るためには、コイルパターンに流す電流を増やす必要がある。電流を増やすと、コイルパターンの電気抵抗による発熱が問題となる。この発熱の問題への対応策については、いずれの特許文献にも好適な開示はない。なお、特許文献2の技術は、コアに巻線を施した構成のコイルの冷却に関するものであり、コイルパターンを有するコイルディスクの放熱には不向きである。
【0007】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、従来と比較して放熱性の良好なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、ディスクモータである。このディスクモータは、
出力軸と、
前記出力軸に同軸的に固定され、中心側から半径方向外方に延びる複数の放射状パターン又は放射状パターン群を含むコイルパターンが片面又は両面に形成された少なくとも1枚のコイルディスクと、
前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記放射状パターン又は放射状パターン群に対して磁束を発生する磁束発生手段とを備え、
前記コイルディスクに、前記コイルパターンから延びる延長放熱用パターンが形成されている。
【0009】
前記延長放熱用パターンは、少なくとも一方の面の隣り合う前記放射状パターン又は放射状パターン群の間に形成されていてもよい。
【0010】
前記延長放熱用パターンは、任意の1つの前記放射状パターンのみから延長していてもよい。
【0011】
前記延長放熱用パターンは、前記コイルパターンのうち自身の延長元になっている部分と同等以下の幅であってもよい。
【0012】
前記延長放熱用パターンが前記放射状パターンから略円周方向に延びていてもよい。
【0013】
前記延長放熱用パターンは、隣り合う前記放射状パターンの双方から櫛の歯状に複数延び、一方側から延びる延長放熱用パターン同士の間に他方側から延びる延長放熱用パターンが入り込むパターン形状であってもよい。
【0014】
前記放射状パターンと前記延長放熱用パターンとが同材質であってもよい。
【0015】
前記コイルパターンのうち前記延長放熱用パターンの延長元になっている部分を流れる電流が、前記延長放熱用パターンを流れる電流よりも大きくてもよい。
【0016】
前記コイルパターンが少なくとも第1層及び第2層に形成され、
前記第1層の隣り合う前記放射状パターン又は放射状パターン群の間に、前記第1層の前記コイルパターンとは絶縁された独立放熱用パターンが形成され、
前記第2層に前記延長放熱用パターンが形成され、
前記独立放熱用パターンと前記延長放熱用パターンとが、層間を貫く熱伝導性材で相互に接続されていてもよい。
【0017】
前記第1層及び前記第2層は、それぞれ1枚のコイルディスクの一方の面上と他方の面上に位置する層であってもよい。
【0018】
前記独立放熱用パターンと前記延長放熱用パターンとを渡す放熱用穴が前記コイルディスクの基板を貫通し、前記放熱用穴は内面に導体膜を有する又は内側が導体で埋められていてもよい。
【0019】
前記第2層は、自身が形成されているコイルディスクと、当該コイルディスクに積層された別のコイルディスクとに挟まれる位置に存在してもよい。
【0020】
前記独立放熱用パターンの表面が全面的に空気と接していてもよい。
【0021】
前記独立放熱用パターンは、前記放射状パターンと同等以下の幅であってもよい。
【0022】
前記複数の放射状パターン又は放射状パターン群は、前記コイルディスクの周方向について所定の間隔をもって配置形成されていてもよい。
【0023】
本発明の別の態様は、前記ディスクモータを備えた電動作業機である。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コイルパターンから延びる延長放熱用パターンがコイルディスクに形成されているため、従来と比較して放熱性の良好なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る電動作業機としての刈払機の斜視図。
【図2】図1に示す刈払機の駆動部の正断面図。
【図3】図2に示すステータの模式的平面図。
【図4】図2に示すロータの、左半分を断面とした正面図。
【図5】図4に示す整流子ディスクの平面図。
【図6】図4に示すロータの平面図。
【図7】図6の一部透視図。
【図8】(A)は、独立放熱用パターンが無い場合の第1コイルディスクの参考平面図。(B)は、延長放熱用パターンが無い場合の第1コイルディスクの参考底面図。
【図9】図4に示すロータのコイルディスク各層の一部透視平面図。
【図10】層間の独立放熱用パターンと延長放熱用パターンとの接続構造を示す概略断面図。
【図11】独立放熱用パターンと延長放熱用パターンの幅、及び放射状パターンの幅の説明図。
【図12】第2層の放熱用パターンの変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る刈払機1の斜視図である。電動作業機の例示である刈払機1は、電源部3と、パイプ部4と、ハンドル部5と、駆動部6と、刈刃7とを備える。
【0029】
電源部3は、電源たるバッテリ301を着脱可能に有する。パイプ部4は、電源部3と駆動部6とを機械的に接続する(連結する)。また、パイプ部4の内部には、電源部3と駆動部6とを電気的に接続する配線(図示せず)が挿通されている。この配線により、電源部3から駆動部6に電力が供給される。駆動部6は、ヘッドハウジング61の内部にディスクモータを収容しており、電源部3からの供給電力により刈刃7を回転駆動する。ディスクモータの構成は後述する。
【0030】
ハンドル部5は、パイプ部4の中間、すなわち電源部3と駆動部6との間に取り付け固定されている。ハンドル部5は、一対のアーム51の先端にそれぞれグリップ52を取り付けてなる。一方のグリップ52には、スロットル53が設けられている。作業者は、スロットル53を操作することにより、駆動部6への供給電力を調整可能、すなわち刈刃7の回転数を調整可能である。刈刃7は、略円板状で、その周縁に鋸歯が形成されている。また、刈刃7中心には後述するディスクモータの出力軸に装着される孔(図には現れず)が形成されている。
【0031】
図2は、図1に示す刈払機1の駆動部6の正断面図である。なお、図2に示すように、出力軸31の延出方向を上下方向と定義する。駆動部6は、ヘッドハウジング61の内部にディスクモータ80を有する。ヘッドハウジング61は、カバー部62及びベース部63を嵌合一体化してなる。ディスクモータ80は、ステータ81と、ロータ82と、一対のブラシ83とを有する。一対のブラシ83は、ディスクモータ80の回転軸(出力軸31)について対称に設けられ、カバー部62のブラシホルダ65に支持される。各ブラシ83は、下面が後述する整流子ディスク35上の銅等の導体の整流子パターンと当接するように、バネ83Aによって整流子ディスク35側(下側)に付勢される。ブラシ83は、図1の電源部3に接続されており、ロータ82の後述するコイルパターンに電流を供給する電流供給部として機能する。
【0032】
ステータ81は、磁束発生部としてのマグネット41と、軟磁性体である上ヨーク42及び下ヨーク43とを有する。リング状の上ヨーク42は、カバー部62の下面に例えばネジ622で固定される。上ヨーク42と略同径のリング状の下ヨーク43は、ベース部63の下面に形成されたリング状溝部631内に例えばネジ632で固定される。マグネット41は、ベース部63の上面に形成された穴部633内に嵌め込み固定される。
【0033】
図3は、図2に示すステータ81の模式的平面図である。本図に示すように、例えば円板形状のマグネット41は、例えば10個、円周上に等角度ピッチで並んで配置される(マグネット41を収容する図2の穴部633も円周上に同数並んで存在する)。円周の中心は、ディスクモータ80の回転中心と略一致する。隣り合うマグネット41は、上面の磁極が相互に異なる。マグネット41としては、ネオジム磁石等の希土類磁石が好ましいが、フェライト磁石等の焼結磁石を用いてもよい。上ヨーク42及び下ヨーク43は、後述するロータ82のコイルパターンに印加される磁束密度を高めるものである。
【0034】
図2に示すように、ロータ82は、出力軸31(ロータシャフト)と、整流子ディスク35と、コイル部36と、フランジ37とを有する。出力軸31は、カバー部62に固定された上側軸受け311及びベース部63に固定された下側軸受け312によって回転自在に支持される。出力軸31の下方側端部には雄ネジ31Aが形成されており、図示せぬ留め具によって図1の刈刃7が固定される。整流子ディスク35の上面は、ブラシ83の摺動面である。図1に示す電源部3からブラシ83及び整流子ディスク35を介してコイル部36に電流が供給される。
【0035】
図4は、図2に示すロータ82の、左半分を断面とした正面図である。本図に示すように、出力軸31に同軸的に固定された例えばアルミ等の金属製のフランジ37は、略円筒形状の円筒部37Aと、略円板形状の円板部37Bとから構成される。円板部37Bは、円筒部37Aの側面から出力軸31と垂直に外側に突出する。軸方向視で円板部37Bと同形状の絶縁板38,39が、同じく同形状のシート状の接着層502,503(絶縁性)によって円板部37Bの上下面に接着固定される。絶縁板38の上面には、シート状の接着層501(絶縁性)を介して整流子ディスク35が接着固定される。整流子ディスク35は、円板状の絶縁基板に整流子パターンを形成したものである。絶縁板39の下面には、シート状の接着層505(絶縁性)を介してコイル部36が接着固定される。
【0036】
コイル部36は、第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364をシート状の接着層507(絶縁性)を挟んで積層してなる。シート状の接着層507は、各コイルディスクと軸方向視で同形状であり、各コイルディスクの表面略全体を覆う。第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364はそれぞれ、円板部37Bよりも大径の円板状の絶縁基板の両面に後述のコイルパターンを形成してなる。整流子ディスク35から第4コイルディスク364までを貫く導体ピン40は、整流子ディスク35の整流子パターンと、第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364の少なくともいずれかのコイルパターンとを電気的に接続する。円板部37Bの貫通孔(ピン40の挿通孔)には絶縁パイプ401が嵌め込まれ、ピン40とフランジ37との絶縁を確保する。
【0037】
図5は、図4に示す整流子ディスク35の平面図である。整流子ディスク35の中心にある貫通孔35Aは、図4の円筒部37Aを挿通させるものである。ピン挿通孔35Bは、整流子ディスク35の中心から等距離に所定数設けられ、図4に示すピン40が一部のピン挿通孔35Bに選択的に挿通される。整流子ディスク35の整流子パターン351は、放射状に40セグメントに分かれている。間に7つのセグメントを挟んだ2つのセグメント(1番目と9番目、2番目と10番目等)は、内側に形成された接続パターン352と反対面に形成された不図示の接続パターンにより相互に接続されている。
【0038】
図6は、図4に示すロータ82の平面図である。図7は、図6の一部透視図であり、第1コイルディスク361の下面の導電パターンを図中右上部分に透視して示す。これらの図に示すように、第1コイルディスク361は、上面にコイルパターン92及び独立放熱用パターン93を有し、下面にコイルパターン92及び延長放熱用パターン95を有する。図8(A)は、独立放熱用パターン93が無い場合の第1コイルディスク361の参考平面図である。図8(B)は、延長放熱用パターン95が無い場合の第1コイルディスク361の参考底面図である。なお、他のコイルディスクも第1コイルディスク361と同じコイルパターンを有するので、ここでは第1コイルディスク361のコイルパターンについてのみ説明する。
【0039】
銅などの導電材からなるコイルパターン92は、円板状の絶縁基板の両面に銅箔等の導電材を積層したものにマスクを被せてエッチング処理することで形成されている。コイルパターン92は、相互に近接した略同一幅の4列の部分コイルパターンからなる部分コイルパターン群920を片面(1層)につき20個ずつ有する。部分コイルパターン群920は、内側連絡パターン群92Aと、放射状パターン群92Bと、外側連絡パターン群92Cとを順に接続したものである。両面の内側連絡パターン群92A同士は、端部近傍に形成されたスルーホール921によって相互に電気的に接続される。両面の外側連絡パターン群92C同士は、端部近傍に形成されたスルーホール922によって相互に電気的に接続される。放射状パターン群92Bは、絶縁基板90の中心側から半径方向外側に延びて内側連絡パターン群92Aと外側連絡パターン群92Cとを渡す。両面の放射状パターン群92B同士は、軸方向視で略同一位置に存在する。放射状パターン群92Bは、図2及び図3に示すマグネット41の配列円周(各マグネット41の中心が配列される円周)の真上に位置する。つまり、各コイルディスクの回転に伴って放射状パターン群92Bはマグネット41の真上を通過する。放射状パターン群92Bに流れる電流とマグネット41の発生する磁界との間の電磁力により回転力が得られる。
【0040】
各々の面の放射状パターン群92Bは、コイルディスク中心から等角度ピッチで存在する。したがって、各面の隣り合う放射状パターン群92Bの間には、コイルパターン92の存在しない領域(以下「放射状パターン群間領域」とも表記)がある。この放射状パターン群間領域に、図6及び図7に示すように、独立放熱用パターン93又は延長放熱用パターン95が設けられる。
【0041】
図9は、図4に示すロータ82のコイルディスク各層の一部透視平面図である。本図において、第1コイルディスク361の上面の層を第1層361A、下面の層を第2層361B、第2コイルディスク362の上面の層を第3層362A、下面の層を第4層362B、第3コイルディスク363の上面の層を第5層363A、下面の層を第6層363B、第4コイルディスク364の上面の層を第7層364A、下面の層を第8層364Bとしている。
【0042】
第1層361Aの放射状パターン群間領域には、独立放熱用パターン93が設けられている。同様に、第3層362A、第6層363B、及び第8層364Bの放射状パターン群間領域に独立放熱用パターン93が設けられている。また、第2層361Bの放射状パターン群間領域には、延長放熱用パターン95が設けられている。同様に、第4層362B、第5層363A、及び第7層364Aの放射状パターン群間領域に延長放熱用パターン95が設けられている。第1層361A及び第8層364Bの独立放熱用パターン93の表面は、全面的に露出して空気と接している。
【0043】
図10は、層間の独立放熱用パターン93と延長放熱用パターン95との接続構造を示す概略断面図である。第1層361Aの独立放熱用パターン93と、第2層361Bの延長放熱用パターン95とは、放熱用穴としての放熱用スルーホール94で接続されている。第3層362Aと第4層362B、第5層363Aと第6層363B、並びに第7層364Aと第8層364Bの各組についても、独立放熱用パターン93と延長放熱用パターン95とが放熱用スルーホール94で接続されている。放熱用スルーホール94は、内面が銅などの高熱伝導率材料がメッキされている。あるいは、放熱用スルーホール94は、内側が銅などの高熱伝導率材料で埋められていてもよい。
【0044】
図9に示すように、独立放熱用パターン93は、略円周方向に複数延びていて、自身の存在する層のコイルパターン92とは非接続である(絶縁されている)。一方、延長放熱用パターン95は、自身の存在する層の放射状パターン群92Bを構成する放射状パターンのうち放射状パターン群間領域に臨むもの(以下「延長元放射状パターン」)から延長している。具体的には、延長放熱用パターン95は、放射状パターン群間領域を挟んで対向する延長元放射状パターンの双方から略円周方向に櫛の歯状に複数延び、一方の延長元放射状パターンから延びる延長放熱用パターン同士の間に他方の延長元放射状パターンから延びる延長放熱用パターンが入り込むパターン形状である。
【0045】
独立放熱用パターン93と延長放熱用パターン95は、銅などの高熱伝導率材料であって、好ましくはコイルパターン92と同材質とする。また、図11に示すように、独立放熱用パターン93と延長放熱用パターン95の幅W1は、延長元放射状パターンの幅W2と同等以下である(W1≦W2)。各々の延長放熱用パターン95は、1つの延長元放射状パターンの1箇所のみから延びるため、電流経路としては行き止まりである。延長放熱用パターン95を通る電流経路は、延長元放射状パターンを通る電流経路と比較して電気抵抗が高い。このため、コイルパターン92に供給された電流のうち延長放熱用パターン95に漏出するものは、延長元放射状パターンに流れる電流と比較して十分に小さくすることが可能である。
【0046】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0047】
(1) 独立放熱用パターン93及び延長放熱用パターン95を設けて放熱用スルーホール94で相互に接続したことにより、それらが無い場合と比較してコイルパターン92を効率的に冷却可能である。以下、具体的に説明する。コイルパターン92に電流が流れることで発生する熱は、延長放熱用パターン95に伝達され、放熱される。延長放熱用パターン95は、コイルパターン92の電流が通過する経路に対して電気抵抗が高く形成されていることから、電流が流れ難く、電流の損失を抑えながら放熱効率を向上させることができる。更に多層構造の場合、真ん中の層のコイルパターン92ほど冷却が難しくなる。本実施の形態の構成では、第4層362B及び第5層363Aの冷却が最も困難で、第3層362A及び第6層363B、第2層361B及び第7層364A、第1層361A及び第8層364Bと表層に行くほど冷却しやすくなる。そこで、第1層361Aよりも冷却が困難な第2層361Bには延長放熱用パターン95を設け、第1層361Aには独立放熱用パターン93を設け、それらを放熱用スルーホール94で相互に熱的に接続させている。このため、第2層361Bのコイルパターン92の発熱は、延長放熱用パターン95、放熱用スルーホール94、独立放熱用パターン93と順に伝わって、比較的冷却の容易な第1層361Aにおいて放熱される。第3層362A及び第4層362B、第8層364B及び第7層364A、第6層363B及び第5層363Aについても、同様の冷却効果が成り立つ。このように、冷却風の流れない積層コイルディスク内部の高熱部の熱を、延長放熱用パターン95及び放熱用スルーホール94を介して冷却しやすい表層側にある独立放熱用パターン93に伝えるため、冷却効率が良い。特に、第1層361Aと第8層364Bの独立放熱用パターン93は、空気と接するため冷却風で効率的に冷却できる。
【0048】
(2) 独立放熱用パターン93及び延長放熱用パターン95の幅は、放射状パターン幅と同等以下である。このため、幅広パターンの場合と比較して、独立放熱用パターン93及び延長放熱用パターン95に生じる渦電流による損失(発熱)を低減できるため、冷却効率が良い。
【0049】
(3) 延長放熱用パターン95が放射状パターンと同材質であるため、コイルパターン92で生じた発熱が延長放熱用パターン95に伝わり易くなり、冷却効率が良い。さらに、延長放熱用パターン95をコイルパターン92と同時にエッチング処理で形成することができるため、製造工程を簡略化でき、生産コストの上昇を抑制することができる。独立放熱用パターン93も放射状パターンと同材質であり、同時にエッチング処理で形成することができる。
【0050】
(4) 独立放熱用パターン93及び延長放熱用パターン95を通る電流経路は、放射状パターン群92Bを通る電流経路よりも電気抵抗が大きいため、コイルパターン92に供給した電流は独立放熱用パターン93及び延長放熱用パターン95には流れ難い。このため、独立放熱用パターン93及び延長放熱用パターン95の発熱量は非常に小さく、冷却効率が良い。また、独立放熱用パターン93及び延長放熱用パターン95を設けたことによるモータ駆動への悪影響は十分に少ない又は無いといえる。
【0051】
(5) 独立放熱用パターン93及び延長放熱用パターン95は、従来は有効に使えていなかった放射状パターン群間領域に設けており、それらのパターンを設けるためにコイルディスクの基板面積を増大させる必要はない。すなわち、本実施の形態によれば、基板面積を増大させずに冷却性能を向上させることができる。
【0052】
(6) 上記のように冷却性能に優れるため、高出力のディスクモータとした場合の発熱にも耐えることができ、ディスクモータ及びそれを備える電動作業機の性能向上にも有利である。
【0053】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0054】
図12は、第2層361Bの放熱用パターンの変形例の説明図である。本図の例では、櫛の歯状に延びる延長放熱用パターン95の先端同士を渡す細パターン95Aが設けられている。そして、隣り合う延長放熱用パターン95の間には独立放熱用パターン93が設けられる。細パターン95Aの幅は、延長放熱用パターン95よりも狭く、電気抵抗が高い。このため、延長放熱用パターン95の先端同士を細パターン95Aで渡した本変形例でも、延長放熱用パターン95に流れる電流は十分に小さい。第4層362B、第5層363A、第7層364Aについても同様の変形が可能である。また、延長用放熱パターン95は、電気抵抗が極めて高く形成されていれば、隣り合う部分コイルパターン群920同士が接続されていても良い。
【0055】
独立放熱用パターン93は、径方向に延びていてもよい。この場合も、独立放熱用パターン93は一つの放射状パターン群間領域につき延長放熱用パターン95と同数設け、放熱用スルーホール94によって延長放熱用パターン95と熱的に接続する。
【0056】
また、延長放熱用パターン95についても、径方向に延びていてもよい。この場合、実施形態のように放射状に延びるコイルパターン92のうち磁石と対向する部分でなく、半径方向内側及び外側に位置する円周方向に屈曲した部分(例えば内側連絡パターン又は外側連絡パターン)から延びるようにしてもよい。
【0057】
尚、独立放熱用パターン93及び延長放熱用パターン95は、全周において均等な重量バランスになるよう配設されていることが望ましく、ロータ82が安定して回転することができる。実施形態においては、同様のパターンが回転軸について対称な位置に表れるよう形成されている。
【0058】
コイルディスク及び整流子ディスクの形状は、厳密な円板状でなくてもよいが、軸方向視で実質的に円とみなせる範囲であるとよい。
【0059】
上記に加え、マグネットの個数とその配置角度ピッチ、コイルパターンの周回数(コイルパターンの列数)、コイルディスクの積層数、ピン挿通孔やスルーホールの数、その他のパラメータは、要求される性能やコストに応じて適宜設定可能である。また、コイルパターンの周回数は、コイルディスクごとに異なってもよい。なお、コイルパターンが1列の場合は、実施の形態の説明における「部分コイルパターン群」、「内側連絡パターン群」、「放射状パターン群」、及び「外側連絡パターン群」の各用語を、「群」を除いて読み替える。
【0060】
電動作業機は、実施の形態で示した刈払機のほか、ディスクモータを搭載したベルトサンダーやロータリバンドソー等、ディスクモータによる回転駆動部を有する種々の電動工具であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 刈払機
3 電源部
4 パイプ部
5 ハンドル部
6 駆動部
7 刈刃
301 バッテリ
31 出力軸(ロータシャフト)
35 整流子基板
36 コイル部
37 フランジ
41 マグネット
42 上ヨーク
43 下ヨーク
51 アーム
52 グリップ
53 スロットル
61 ヘッドハウジング
62 カバー部
63 ベース部
65 ブラシホルダ
80 ディスクモータ
81 ステータ
82 ロータ
83 ブラシ
92 コイルパターン
92A 内側連絡パターン群
92B 放射状パターン群
92C 外側連絡パターン群
93 独立放熱用パターン
95 延長放熱用パターン
920 部分コイルパターン群
361〜364 コイルディスク
501〜503,505,507 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸と、
前記出力軸に同軸的に固定され、中心側から半径方向外方に延びる複数の放射状パターン又は放射状パターン群を含むコイルパターンが片面又は両面に形成された少なくとも1枚のコイルディスクと、
前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記放射状パターン又は放射状パターン群に対して磁束を発生する磁束発生手段とを備え、
前記コイルディスクに、前記コイルパターンから延びる延長放熱用パターンが形成されている、ディスクモータ。
【請求項2】
前記延長放熱用パターンは、少なくとも一方の面の隣り合う前記放射状パターン又は放射状パターン群の間に形成されている、請求項1に記載のディスクモータ。
【請求項3】
前記延長放熱用パターンは、任意の1つの前記放射状パターンのみから延長している、請求項1又は2に記載のディスクモータ。
【請求項4】
前記延長放熱用パターンは、前記コイルパターンのうち自身の延長元になっている部分と同等以下の幅である、請求項1から3のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項5】
前記延長放熱用パターンが前記放射状パターンから略円周方向に延びている請求項1から4のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項6】
前記延長放熱用パターンは、隣り合う前記放射状パターンの双方から櫛の歯状に複数延び、一方側から延びる延長放熱用パターン同士の間に他方側から延びる延長放熱用パターンが入り込むパターン形状である、請求項1から5のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項7】
前記放射状パターンと前記延長放熱用パターンとが同材質である請求項1から6のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項8】
前記コイルパターンのうち前記延長放熱用パターンの延長元になっている部分を流れる電流が、前記延長放熱用パターンを流れる電流よりも大きい、請求項1から7のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項9】
前記コイルパターンが少なくとも第1層及び第2層に形成され、
前記第1層の隣り合う前記放射状パターン又は放射状パターン群の間に、前記第1層の前記コイルパターンとは絶縁された独立放熱用パターンが形成され、
前記第2層に前記延長放熱用パターンが形成され、
前記独立放熱用パターンと前記延長放熱用パターンとが、層間を貫く熱伝導性材で相互に接続されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項10】
前記第1層及び前記第2層は、それぞれ1枚のコイルディスクの一方の面上と他方の面上に位置する層である、請求項9に記載のディスクモータ。
【請求項11】
前記独立放熱用パターンと前記延長放熱用パターンとを渡す放熱用穴が前記コイルディスクの基板を貫通し、前記放熱用穴は内面に導体膜を有する又は内側が導体で埋められている、請求項9又は10に記載のディスクモータ。
【請求項12】
前記第2層は、自身が形成されているコイルディスクと、当該コイルディスクに積層された別のコイルディスクとに挟まれる位置に存在する、請求項9から11のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項13】
前記独立放熱用パターンの表面が全面的に空気と接している請求項9から12のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項14】
前記独立放熱用パターンは、前記放射状パターンと同等以下の幅である、請求項9から13のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項15】
前記複数の放射状パターン又は放射状パターン群は、前記コイルディスクの周方向について所定の間隔をもって配置形成されている、請求項1から14のいずれか一項に記載のディスクモータ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載されたディスクモータを備えた電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−13167(P2013−13167A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142461(P2011−142461)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】