説明

ディスク・ドライブ及びサーボ・データ検出のための処理タイミングの制御方法

【課題】、効率的な処理によってサーボ・セクタ間の時間間隔の変化に応じてタイミングを調整する。
【解決手段】本発明の一実施形態のHDDは、ユーザ・データのリードあるいはライトのためのフォローイング中にサーボ・セクタの時間間隔を測定し、その測定結果に応じてサーボ・セクタ検出のためのタイミング信号を制御する。HDDは、時間間隔の測定結果を規定の複数ゾーンの内のいずれに含まれるか特定する。過去の複数の時間間隔のゾーンによって時間間隔の変化について判定し、時間間隔の変化が規定範囲にある場合にサーボ・セクタ検出のためのタイミングを変化させる。これにより、効率的な処理によってサーボ・セクタ間の時間間隔の変化に応じてタイミングを調整することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスク・ドライブ及びサーボ・データ検出のための処理タイミングの制御方法に関し、特に、サーボ・セクタ間の時間間隔の変動に対応するサーボ・データ検出のためのタイミング制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク・ドライブ装置として、光ディスクやフレキシブル磁気ディスクなどの様々な態様のディスクを使用する装置が知られている。その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、現在のコンピュータ・システムにおいて欠かすことができない記憶装置の一つとなっている。さらに、コンピュータ・システムにとどまらず、動画像記録再生装置、カーナビゲーション・システム、携帯電話など、HDDの用途は、その優れた特性により益々拡大している。
【0003】
図11は、磁気ディスク11の記録面全体のデータ構成を模式的に示している。磁気ディスク11の記録面には、磁気ディスク11の中心から半径方向に放射状に延び、所定の角度毎に離間して形成された複数のサーボ領域111と、隣り合う2つのサーボ領域111の間にデータ領域112が形成されている。各サーボ領域111には、ヘッド・スライダ12の位置決め制御を行うためのサーボ・データが記録される。各データ領域112には、ユーザ・データが記録される。
【0004】
磁気ディスク11の記録面には、半径方向に所定幅を有し、同心円状に形成された複数のデータ・トラックが形成される。ユーザ・データは、データ・トラックに沿って記録される。一つのデータ・トラックは、ユーザ・データの記録単位であるデータ・セクタを有し、典型的には、複数のデータ・セクタから構成されている。典型的には、各複数データ・トラックは、磁気ディスク11の半径方向の位置に従って、複数のゾーン113a〜113cにグループ化されている。1つのデータ・トラックに含まれるデータ・セクタの数は、ゾーンのそれぞれに設定される。
【0005】
同様に、磁気ディスク11は、半径方向に所定幅を有し、同心円状に形成された複数のサーボ・トラックを備えている。各サーボ・トラックは、データ領域112で分離された複数のサーボ・セクタから構成されている。サーボ領域111における同一半径位置には、ひとつのサーボ・セクタが存在する。サーボ・セクタは、プリアンブル、サーボ・アドレス・マーク、サーボ・トラック番号、サーボ・トラック内におけるサーボ・セクタ番号、そして細かい位置制御をするためのバースト・パターンを備えている。バースト・パターンは、例えば、半径位置の異なる4つのバースト・パターンA、B、C、Dからなっている。各バースト・パターンの再生信号の振幅によって、サーボ・トラック内の位置を決定することができる。
【0006】
HDDは、磁気ディスク上を浮上するヘッド・スライダによって、サーボ・データを読み出すことで、ヘッド・スライダを所望のターゲット半径位置に位置決めする。HDDは、位置決めした半径位置において、そのヘッド・スライダによりユーザ・データの読み出しあるいは書き込み(読み出し/書き込み)を行う。
【0007】
HDDは、一つのヘッド・スライダとチャネル回路によって、サーボ・データの読み出しとユーザ・データの読み出し/書き込みを行う。HDDは、サーボ・データの処理とユーザ・データの処理を、順次、異なる期間において行うために、それらの処理のタイミング制御を行う。ヘッド・スライダとチャネル回路とは、コントローラからのタイミング制御信号に応じて、サーボ・データ処理のための動作とユーザ・データ処理ための動作を切り替える。
【0008】
磁気ディスク上のサーボ・データを正確かつ確実に検出するためには、サーボ・データ処理を制御するタイミング信号を適切なタイミングで制御することが必要である。各サーボ・セクタ間の時間間隔が正確に一定である場合、コントローラは決められた固定時間間隔でタイミング信号をONとすることで、正確にサーボ・データを検出し、読み出すことができる。しかし、実際のサーボ・セクタ間の時間間隔は一定ではなく、円周方向におけるサーボ・セクタの位置によって変化する。
【0009】
サーボ・セクタの時間間隔が変化する主な原因は二つである。その一つは、ディスク・シフトである。ディスク・シフトは、スピンドル・モータに固定されている磁気ディスクの中心が、スピンドルの回転中心からずれる現象である。ディスク・シフトは、例えば、外部から衝撃により発生する。また、HDDを構成する機械部品の膨張率の違いにより、ドライブ内温度が大きく変化すると、磁気ディスクの中心がスピンドル軸中心からずれる。磁気ディスクがスピンドル軸からずれると、サーボ・データの書き込み中心(サーボ・トラックの中心)が磁気ディスクの回転中心からずれる。そのため、同じサーボ・トラック内のサーボ・セクタの時間間隔が変化する。
【0010】
サーボ・セクタの時間間隔が変化する主な原因のもう一つは、スピンドル・モータの回転変動である。現在のHDDに実装されているスピンドル・モータは、流体軸受け機構を有している。流体軸受けに使用されるオイルは、ドライブ内温度によってその特性が変化する。特に、低温においてHDDを起動すると、低いオイルの粘性が一定状態に安定するまでにサーボ・セクタ間の時間間隔が変化する。
【0011】
このようなサーボ・セクタ間の時間間隔の変動を無視してサーボ・ゲート信号を制御すると、サーボ・セクタを検出することができずに、エラーの原因となる。そこで、ディスク・シフトによるサーボ・セクタ間の時間間隔の変動に対応するためのサーボ・ゲート信号の制御方法が提案されている。例えば、特許文献1は、規定周分のサーボ・セクタ間の間隔を測定し、その測定結果を演算処理することでサーボ・アドレス・マーク検出のためのタイミングを補正することを提案している。
【特許文献1】特開2008−186521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、1周全てのサーボ・セクタ間隔を測定し、各セクタにおけるシフト量(時間間隔の変化量)を算出することで、ディスク・シフトに応じたより正確なタイミング制御を行うことができる。しかし、全てのサーボ・セクタ間隔の測定は多くの時間が必要である。また、シフト量算出ためには多くの演算処理を必要とする。また、このような処理を起動時に行うことができたとしても、起動後にホストからのコマンドに対応した処理を行っている間に行うことはできない。このため、オイルの粘性に起因するサーボ・セクタ間の時間間隔変動にように、起動後に起きている時間間隔変動に対応することができない。従って、効率的かつ正確に、処理動作中におけるサーボ・セクタ間隔の変動に随時対応できる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、ディスク・ドライブにおいて、サーボ・データ検出のための処理タイミングを制御する方法である。この方法は、ディスクにおいて円周方向に離間して配置されている複数のサーボ・セクタを読み出してサーボ・セクタ間の時間間隔を測定する。測定した時間間隔が規定の複数ゾーンの内のいずれに入るかを決定する。過去の複数の時間間隔のゾーンによって前記時間間隔の変化について判定し、前記時間間隔の変化が規定範囲にある場合にサーボ・セクタ検出のためのタイミングを変化させる。これにより、効率的な処理によって、タイミング制御の信頼性を維持しながらサーボ・セクタ間隔の変動への処理タイミングの追従性を高めることができる。
【0014】
好ましい例において、前記タイミングは、サーボ・セクタの読み出し処理を開始するタイミングである。これにより、サーボ・セクタの読み取り処理の全体のタイミングを変化させることができ、サーボ処理のための時間を長くする必要がない。さらに、好ましい例において、サーボ・セクタの読み出し処理を開始するタイミングとサーボ・セクタ内の規定の信号の検出タイミングとの間の時間を測定することで、前記サーボ・セクタ間の時間間隔を測定する。これにより、現在のタイミングとセクタ間隔のずれを効率的な測定を行うことができる。
【0015】
前記複数のゾーンは、基準値との差分が負の数値範囲である負のゾーンと正の数値範囲である正のゾーンとを含み、前記複数の時間間隔の前記負のゾーンに含まれる回数と前記正のゾーンに含まれる回数とから、前記時間間隔の変化について判定することが好ましい。これにより、効率的な処理によりセクタ間隔の変動に対する追従性とサーボ検出の信頼性を図ることができる。前記複数のゾーンは、前記基準値との差分が0を挟む負の数値と正の数値とで規定されるゾーン・ゼロを含み、測定した時間間隔が前記ゾーン・ゼロに含まれるときは、その時間間隔の変化を無視することが好ましい。これにより、信頼性をより高めることができる。
【0016】
測定した時間間隔が前記正のゾーン含まれとき増減の一方の方向にカウントを行い、測定した時間間隔が前記負のゾーン含まれとき増減の他方の方向にカウントを行い、測定した時間間隔が前記ゾーン・ゼロに含まれるときはカウントをスキップし、前記カウントによる値が、前記一方における規定値に達すると前記タイミングを遅くし、前記他方における規定値に達すると前記タイミングを早くすることが好ましい。これにより、効率的な処理によりセクタ間隔の変動に対する追従性とサーボ検出の信頼性を図ることができる。
【0017】
好ましくは、基準値との差分が負の数値範囲である複数の負のゾーンと、正の数値範囲である複数の正のゾーンとを含み、前記基準値からより遠いゾーンはより大きな重み付けがなされており、測定した時間間隔が各ゾーンに含まれる回数とその重み付けとから前記時間間隔の変化について判定する。これにより、セクタ間隔の変動対する追従性を高めることができる。
【0018】
複数の時間間隔の測定値から、前記時間間隔の変化の早さについて判定を行い、前記判定の結果により前記規定のゾーンを変更することが好ましい。これにより、セクタ間隔の変動対する追従性を高めることができる。
【0019】
本発明の他の態様は、円周方向に離間して配置されている複数のサーボ・セクタを有するディスクと、回転する前記ディスクから前記サーボ・セクタを読み出すヘッドと、前記ヘッドが読み出したサーボ・セクタ間の時間間隔を測定する測定部と、前記測定部が測定した時間間隔が規定の複数ゾーンの内のいずれに入るかを決定するゾーン決定部と、過去の複数の時間間隔のゾーンによって前記時間間隔の変化について判定し、前記時間間隔の変化が規定範囲にある場合にサーボ・セクタ検出のためのタイミングを変化させる、タイミング調整部を有するディスク・ドライブである。これにより、効率的な処理によって、タイミング制御の信頼性を維持しながらサーボ・セクタ間隔の変動への処理タイミングの追従性を高めることができる
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ディスク上のサーボ・セクタを、効率的な処理により、より正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。以下においては、ディスク・ドライブの一例であるハードディスク・ドライブ(HDD)に本発明を適用した例を説明する。
【0022】
本実施形態は、磁気ディスク上のサーボ・セクタの検出するためのタイミング制御に特徴を有している。本形態のHDDは、ユーザ・データのリードあるいはライトのためのフォローイング中にサーボ・セクタの時間間隔を測定し、その測定結果に応じてサーボ・セクタ検出のためのタイミング信号を制御する。HDDは、時間間隔の測定結果を規定の複数ゾーンの内のいずれに含まれるか特定する。過去の複数の時間間隔のゾーンによって時間間隔の変化について判定し、時間間隔の変化が規定範囲にある場合にサーボ・セクタ検出のためのタイミングを変化させる。これにより、効率的な処理によってサーボ・セクタ間の時間間隔の変化に応じてタイミングを調整することができる。
【0023】
本形態のサーボ・データ検出タイミング制御について詳細に説明する前に、HDDの全体構成について、図1のブロック図を参照して説明する。図1は、HDD1の全体構成を模式的に示すブロック図である。HDD1は、エンクロージャ10内に、データを記憶するディスクである磁気ディスク11を有している。スピンドル・モータ(SPM)は、磁気ディスク11を所定の角速度で回転する。磁気ディスク11の各記録面に対応して、磁気ディスク11にアクセスするヘッドであるヘッド・スライダ12が設けられている。アクセスは、リード及びライトの上位概念である。各ヘッド・スライダ12は、磁気ディスク上を浮上するスライダと、スライダに固定され磁気信号と電気信号との間の変換を行うヘッド素子部とを備えている。
【0024】
各ヘッド・スライダ12はアクチュエータ16の先端部に固定されている。アクチュエータ16はボイス・コイル・モータ(VCM)15に連結され、回動軸を中心に回動することによって、ヘッド・スライダ12を回転する磁気ディスク11上においてその半径方向に移動する。アクチュエータ16とVCM15とは、ヘッド・スライダ12の移動機構である。
【0025】
エンクロージャ10の外側の回路基板20上には、回路素子が実装されている。モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23からの制御データに従って、SPM14及びVCM15を駆動する。RAM24は、リード・データ及びライト・データを一時的に格納するバッファとして機能する。エンクロージャ10内のアーム電子回路(AE)13は、複数のヘッド・スライダ12の中から磁気ディスク11へのアクセスを行うヘッド・スライダ12を選択し、その再生信号を増幅してリード・ライト・チャネル(RWチャネル)21に送る。また、RWチャネル21からの記録信号を選択したヘッド・スライダ12に送る。
【0026】
RWチャネル21は、リード処理において、AE13から供給されたリード信号を一定の振幅となるように増幅し、取得したリード信号からデータを抽出し、デコード処理を行う。読み出されるデータは、ユーザ・データとサーボ・データとを含む。デコード処理されたリード・ユーザ・データ及びサーボ・データは、HDC/MPU23に供給される。また、RWチャネル21は、ライト処理において、HDC/MPU23から供給されたライト・データをコード変調し、更にコード変調されたライト・データをライト信号に変換してAE13に供給する。RWチャネル21は、HDC/MPU23からのタイミング制御信号に従って、サーボ・データの読み出し処理、ユーザ・データの読み出し/書き込み処理を行う。
【0027】
コントローラであるHDC/MPU23は、リード/ライト処理制御、コマンド実行順序の管理、サーボ信号を使用したヘッド・スライダ12のポジショニング制御(サーボ制御)、ホスト51との間のインターフェース制御、ディフェクト管理、エラーが発生した場合のエラー対応処理など、データ処理に関する必要な処理及びHDD1の全体制御を実行する。特に、本形態のHDC/MPU23は、ホスト51からのコマンドに対応する通常処理を行っているときにサーボ・セクタ間隔の測定を行い、その測定結果に応じてサーボ・データ検出のためのタイミング信号を制御する。
【0028】
図11を参照して説明したように、磁気ディスク11の記録面には、磁気ディスク11の中心から半径方向に放射状に延び、所定の角度毎に離間して形成された複数のサーボ領域と、隣り合う2つのサーボ領域の間にデータ領域が形成されている。各サーボ領域は、ディスク半径方向に連なる複数のサーボ・セクタで構成れている。サーボ・トラックは、1周分のサーボ・セクタで構成され、各サーボ・セクタは円周方向において互いに離間している。
【0029】
図2は、サーボ・トラックの一部を構成するサーボ・セクタ及びサーボ・セクタのデータ・フォーマットを模式的に示す図である。図2は、連続する3つのサーボ・セクタSV_k−1、SV_k、SV_k+1を示している。ヘッド・スライダ12は、図の左側から右側に向かって飛行し、サーボ・セクタSV_k−1、SV_k、SV_k+1の順で、順次読み出す。図2の例において、各サーボ・セクタは、プリアンブル(PRE)、サーボ・アドレス・マーク(SAM)、グレイ・コードからなるトラックID(GRAY)、サーボ・セクタ・ナンバ(SEC)及びバースト・パターン(BURST)から構成されている。
【0030】
プリアンブルは、小さい回転変動の吸収やプリアンプのゲイン調整のためのフィールドである。SAMはダイビット・パルスを含むフィールドであり、トラックID等の実際の情報が始まることを示す。本形態のHDD1は、このSAMの検出タイミングを使用して、サーボ・セクタ間の時間間隔を測定する。正確な測定のためにはSAMの検出タイミングを使用することが好ましいが、他のデータ(信号)の検出タイミングを使用して測定を行ってもよい。
【0031】
トラックIDは、サーボ・トラックを識別するデータであり、サーボ・セクタ・ナンバはサーボ・トラックにおけるサーボ・セクタを識別するデータである。バースト・パターン(BURST)はトラックIDで示されるトラックの更に精密な位置を示す信号で、この例ではトラックごとに周回上に位置を少し違えたところに千鳥状に書かれたA、B、C、Dの4つの振幅信号を備える。HDC/MPU23は、サーボ・セクタ内のトラックIDによりサーボ・トラック位置を特定し、さらに、バースト・パターンを使用することで、トラック内での詳細な半径位置を特定することができる。円周方向における位置は、サーボ・セクタ・ナンバで知ることができる。
【0032】
いくつかの異なるサーボ・セクタ・フォーマットが知られており、サーボ・セクタ・ナンバを有してないフォーマット、あるいは、上記の各フィールドの他に周期的振動(RRO)の情報を格納するフィールドを有するフォーマットなどが知られている。本発明はいかなるフォーマットのサーボ・セクタを使用するHDDにも適用することができる。
【0033】
AE13及びRWチャネル21は、HDC/MPU23からのタイミング信号に従って処理を行う。サーボ・データの処理において、HDC/MPU23は、サーボ・ゲートSGとサーチ・ウィンドウSWのタイミング信号を使用する。サーボ・ゲートSGは、サーボ処理モードの設定信号であり、この信号がHIGHの間、AE13とRWチャネル21とはサーボ処理モードにあり、サーボ・データの読み出し処理を行う。サーチ・ウィンドウSWは、サーボ・セクタのSAMを探索(検出)するためのタイミング信号である。RWチャネル21は、サーチ・ウィンドウSWがHIGHの間にSAMを検出しないと、SAM非検出のエラーをHDC/MPU32に知らせる。
【0034】
図3は、サーボ・ゲートSGとサーチ・ウィンドウSWのタイミングを模式的に示すチャートである。HDC/MPU23は、ヘッド・スライダ12がサーボ・セクタ上に到達する直前にサーボ・ゲートSGを開ける(HIGH)。サーボ・セクタの読み出し処理が終了した後、サーボ・ゲートSGを閉じる(LOW)。HDC/MPU23は、サーボ・ゲートSGをHIGHにしてから、規定時間経過後に、サーチ・ウィンドウを開け(HIGH)、規定時間経過後にそれを閉じる(LOW)。
【0035】
RWチャネル21は、サーチ・ウィンドウSWが空いている間にSAMを検出すると、そのタイミングを基準にその後のサーボ・データ処理を行う。また、RWチャネル21は、SAM検出タイミングをHDC/MPU23に通知し、HDC/MPU23はそのタイミングを基準にしてサーボ・ゲートSGを制御する。例えば、HDC/MPU23は、一つ前のサーボ・セクタのSAM検出タイミングからT1時間の経過のタイミングで、次のサーボ・セクタのためにサーボ・ゲートをON(HIGH)にする。図3におけるT1に付したサフィックスは、サーボ・セクタに対応している。
【0036】
HDC/MPU23は、サーボ・セクタ間の時間間隔を測定し、その測定結果に応じてサーボ・ゲートSGのタイミングを変化させる。サーボ・ゲートSGのタイミング変化により、サーチ・ウィンドウSWのタイミングも変化する。図4は、異なるタイミングのサーボ・ゲートSGを模式的に示している。現在のサーボ・ゲートSG_1に対して、サーボ・ゲートSG_2は、ΔT1(例えば、50ns)だけ早いタイミングで開いている。一方、サーボ・ゲートSG_3は、現在のサーボ・ゲートSG_1に対して、ΔT1だけ遅いタイミングで開いている。
【0037】
HDC/MPU23は、測定したサーボ・セクタ間の時間間隔が短い場合、サーボ・ゲートの立ち上がりタイミングを早め、長い場合には遅くする。これにより、ディスク・シフトやスピンドル回転変動によるサーボ・セクタ間の時間間隔の変動に対応して、より正確にサーボ・データを読み出すことができる。HDC/MPU23は、タイミング変化量を測定結果に応じて変化させてもよい。そのような制御の例については後に言及する。ここでは、好ましい例として、HDC/MPU23が調整するサーボ・ゲートSGの時間は、固定値としてのΔT1である制御方法を説明する。これにより、効率的な処理によりサーボ・データ検出のためのタイミング制御を行うことができる。
【0038】
本形態において、HDC/MPU23は、SAM検出タイミングを基準として、サーボ・ゲートSGとサーチ・ウィンドウSWのタイミングを調整する。図5は、SAM検出タイミングと、サーボ・ゲートSGの立ち上がりと立下りのタイミング、そしてサーチ・ウィンドウSWの立ち上がりと立下りのタイミング、の間の関係を模式的に示すチャートである。
【0039】
図3を参照して説明したように、HDC/MPU23は、既読のサーボ・セクタ(典型的に一つ前のセクタ)のSAM検出タイミングを基準として、サーボ・ゲートSGの立ち上がりタイミングを決定する。HDC/MPU23は、サーボ・ゲートSGの立ち上がりタイミングを基準に、サーチ・ウィンドウSWの立ち上がりタイミングを決定する。これらの間の間隔T4_kは、サーボ・セクタに拠らず一定である。また、サーチ・ウィンドウSWが開いている(HIGHにある)時間も一定値である。なお、図3におけるT2〜T4に付したサフィックスは、サーボ・セクタに対応している。
【0040】
HDC/MPU23は、サーボ・セクタSV_kのSAM検出タイミングから、T3_kの後に、サーボ・ゲートSGを閉じる。このT3_kも固定値であり、一定である。なお、T3_k、T4_kあるいはサーチ・ウィンドウSWが開いている時間をサーボ・セクタ間隔の測定値に応じて変化させてもよい。このように、HDC/MPU23は、サーボ・セクタSV_k−1のSAM検出タイミングからT1_k後にサーボ・ゲートSGを開ける。さらに、サーボ・ゲートSGの立ち上がりタイミングからT4_k後にサーチ・ウィンドウSWを開ける。サーボ・セクタSV_kのSAMを検出すると、そのタイミングからT3_k後に、サーボ・ゲートSGを閉じる。
【0041】
HDC/MPU23は、サーボ・ゲートSGの立ち上がりタイミングから、SAM検出タイミングまでの時間T2_kを測定することによって、サーボ・セクタ間の時間間隔を測定する。上述のように、HDC/MPU23は、一つ前のサーボ・セクタのSAM検出タイミングを基準に、サーボ・ゲートSGを開く。サーボ・ゲートSGの立ち上がりタイミングと、一つ前のサーボ・セクタのSAM検出タイミングとの間の時間間隔は、規定の時間T1_kである。
【0042】
HDC/MPU23はこの時間T1_kを変化させる。そのため、時間T2_kは、現在のサーボ・ゲートSGのタイミング(立ち上がりタイミング)を基準とした、サーボ・セクタ間の時間間隔を示す。これにより、HDC/MPU23は、現在のサーボ・ゲートSGタイミングが、実際のサーボ・セクタ間の時間間隔に対して適切な範囲内にあるか否かを容易に知ることができる。
【0043】
なお、HDC/MPU23とRWチャネル21とは、例えば、RWチャネル21が生成するクロック信号により、時間測定や信号のタイミング制御を行うことができる。このクロック信号の周期は、サーボ・データ処理におけるタイミング制御のための各時間に対して十分に小さい値である。
【0044】
本形態においては、HDC/MPU23は、一つ前のサーボ・セクタ間隔のみではなく、過去の複数のサーボ・セクタ間隔に基づいて、サーボ・ゲートのタイミングを制御する。具体的には、HDC/MPU23は、サーボ・セクタ間の過去の複数の測定時間間隔により、サーボ・ゲート・タイミングを変更するか否かを決定する。特に、本形態のHDC/MPU23は、過去の複数の測定時間間隔のそれぞれがいずれのゾーンに含まれるかを特定し、その特定結果から時間間隔の変化について判定を行う。これにより、効率的な処理で時間間隔の変化について判定することができる。時間間隔の変化が一定方向において大きいことを示す規定範囲にあるとき、サーボ・ゲートSGのタイミングを変化させる。
【0045】
図6は、HDC/MPU23による判定手法の好適な例を説明する図である。HDC/MPU23は、サーボ・ゲートSGの立ち上がりタイミングとSAM検出タイミングとの間の時間T2_kの、規定の基準値T2_refに対するずれ(T2_k−T2_ref)を特定する。このずれが、規定の複数ゾーンの内のいずれに入るかを判定することで、測定した時間間隔の対応ゾーンを決定する。図6の例において、三つのゾーンZ0〜Z2が規定されている。ずれが±15nsであるゾーンZ0、ずれが−15ns〜−75nsの負のゾーンであるゾーンZ1、そして、ずれが+15ns〜+75nsの正のゾーンであるゾーンZ2である。
【0046】
HDC/MPU23は、カウンタ(変数)を有している。T2_kのずれがゾーンZ1にあると、HDC/MPU23はカウンタをディクリメントする。ディクリメントの数は、例えば、1である。T2_kのずれがゾーンZ2にあると、HDC/MPU23はカウンタをインクリメントする。インクリメントの単位数は、例えば、1である。T2_kのずれがゾーンZ0にあるとき、HDC/MPU23はカウンタを操作することなく(カウントをスキップ)、そのカウンタ値を維持する。なお、正負のゾーンによりカウントの方向が別であれば、いずれがインクリメントでもディクリメントでもよい。
【0047】
カウンタの値が正の閾値に達すると、HDC/MPU23は、サーボ・ゲートSGのタイミングをΔT1(例えば50ns)だけ遅くする。この正の閾値以上の範囲は、サーボ・ゲートSGのタイミングを変化させる(遅くする)規定範囲である。一方、カウンタの値が負の閾値に達すると、HDC/MPU23は、サーボ・ゲートSGのタイミングをΔT1だけ早くする。この負の閾値以上の範囲は、サーボ・ゲートSGのタイミングを変化させる(早くする)規定範囲である。
【0048】
正負の閾値は、例えば、−3と+3である。HDC/MPU23は、サーボ・ゲートSGのタイミングを変化させると、カウンタをクリアする。上記ゾーンを規定する数値、カウンタを変化させる単位、そしてサーボ・ゲートSGのタイミングを変化させる規定範囲を特定する閾値は一例であり、HDD1の設計により適切な値を使用する。各数値は、上記例のように正負で対称であることが好ましい。
【0049】
図7は、ディスク・シフトによるサーボ・セクタのスピンドル中心からの距離R及びサーボ・セクタ時間間隔TSの変化を模式的に示している。ディスク・シフトにおいて、サーボ・セクタ間隔は、ディスク回転に同期するサイン波の変化を示す。低温における回転変動によるサーボ・セクタ間隔の変動(不図示)は、ディスク回転とは非同期であり、より緩やかな変化を示す。このため、基本的に、サーボ・セクタ間隔は、図7に示すような、ディスク回転に同期する周期変化を示す。
【0050】
サーボ・セクタ間隔TSは、増加と減少とを繰り返す。効率的な処理によってサーボ・ゲート・タイミングをこの変化に追従させることができると共に、誤ったタイミング調整によりサーボ・エラー(例えばSAM検出エラー)が起きることを避けることが重要である。HDC/MPU23は、サーボ・セクタ間の時間間隔TSが大きく増加あるいは減少を続ける領域(図7におけるLの領域)では、その変化応じてサーボ・ゲート・タイミングを遅くするあるいは早くすることが望ましい。
【0051】
これにより、サーボ・セクタ間隔の変動に追従し、サーボ・データを正確に読み出すことができる。一方、サーボ・セクタ間隔TSの変化が小さい領域、特に、増加から減少あるいは減少から増加へと、変化の方向が切り替わる領域(図7におけるSの領域)においては、タイミング調整におけるエラーによるサーボ・エラーを避けるため、サーボ・ゲート・タイミングを維持することが望ましい。
【0052】
図6を参照して説明した上記の制御において、サーボ・セクタ間隔TSが規定値を越える増加率で増加を続けると、カウンタの値が正の閾値に達し、HDC/MPU23は、サーボ・ゲート・タイミングを遅らせる。サーボ・セクタ間隔TSが規定値を越える減少率で減少を続けるとカウンタの値が負の閾値に達し、HDC/MPU23は、サーボ・ゲート・タイミングを早める。このように、サーボ・セクタ間隔TSの増加あるいは減少が(閾値より)大きい領域において、HDC/MPU23はサーボ・ゲート・タイミングを調整する。
【0053】
一方、隣接セクタ間のサーボ・セクタ間隔TSの変動量が規定内にある場合(ゾーンZ0にある場合)、HDC/MPU23は、サーボ・ゲート・タイミングを変化させない。小さい変動に対してはサーボ・ゲート・タイミングを維持しても追従性を確保することができ、また、サーボ・ゲート・タイミング変化によるサーボ・エラーの発生を避けることでサーボ・タイミング制御における信頼性を増すことができる。さらに、HDC/MPU23は、サーボ・セクタ間隔TSの増加と減少のカウントを足すことで、増加と減少の切り替わりの近傍領域において、サーボ・ゲート・タイミングを変化させることなく、現在値を維持する。これにより、サーボ・タイミング制御における信頼性を増すことができる。
【0054】
このように、サーボ・セクタ間隔TSの変動量が小さいとき(ゾーンZ0内にあるとき)は、カウンタ値を維持することで信頼性向上を図ることが好ましいが、設計によっては、ゾーンZ0を省略して、変動の増減のみによってカウンタ値を変化させてもよい。あるいは、HDC/MPU23は、サーボ・セクタ間隔TSの増減に応じた二つのカウンタを有してもよい。規定値を越える、あるいは変動量に係らず、増加/減少により対応するカウンタを変化させる。一方のカウンタのカウンタ値が閾値に達すると、HDC/MPU23は、サーボ・ゲート・タイミングを変化させる。
【0055】
図8のブロック図及び図9のフローチャートを参照して、サーボ・タイミング制御のより具体的な方法を説明する。図8において、HDC/MPU23内に示した機能ブロックは、HDC/MPU23の機能を示し、HDCの回路及び/もしくはMPUがファームウェアに従った処理を行うことで実現することができる。なお、HDC/MPU23の機能の一部をRWチャネル21に実装してもよい。例えば、SAM検出タイミングを使用したサーボ・セクタ間隔TSの測定を、RWチャネル21が行ってもよい。
【0056】
サーボ・タイミング制御部30は、サーボ・ゲートSG及びサーチ・ウィンドウSWにより、RWチャネル21の動作を制御する。タイミング信号出力部31は、タイミング設定部35の設定と予め規定されているタイミングに従い、サーボ・ゲートSG及びサーチ・ウィンドウSWをRWチャネル21に送る。RWチャネル21は、サーボ・ゲートSGに従ってサーボ・データ処理を開始し、さらに、サーチ・ウィンドウSWが示す期間内にSAMを検出すると、それをタイミング制御部35に通知する。
【0057】
タイミング測定部351は、RWチャネル21からのSAM検出の通知とクロック信号とにより、現在サーボ・セクタのためのサーボ・ゲート立ち上がりタイミングからSAM検出のタイミングまでの時間T2_kを測定することで、サーボ・セクタ間隔を測定する(S11)。タイミングずれ判定部352はゾーン決定部であり、時間T2_kと基準値T2_refとの間の差分を算出し、その値がゾーンZ0〜Z2のいずれに入るかを判定する(S12)。タイミングずれ判定部352は、特定したゾーンに応じてカウンタ353を操作する(インクリメント/ディクリメント/維持)(S13)。
【0058】
タイミング設定部35は、カウンタ353の値が正あるいは負の閾値に達するまで、上記工程を繰り返す(S14におけるNの処理)。カウンタ353の値が正あるいは負の閾値に達すると(S14におけるY)、タイミング設定部353はタイミング出力部31に対して、サーボ・ゲートSGの立ち上がりタイミングを調整するように指示する(S15)。具体的には、現在の立ち上がりタイミングから、ΔT1だけ早くする(T1_k−ΔT1)、あるいはΔT1だけ遅くする(T1_k+ΔT1)ことを指示する。
【0059】
サーボ・タイミング制御部30は、サーボ・ゲート・タイミングを変更すると、カウンタ353をクリアして、その値を初期値にセットする(S16)。サーボ・タイミング制御部30は、リード、ライトあるいは待機におけるフォローイングにおいて、これらの工程を繰り返し行うことで、ユーザ・データのリード/ライトにおけるサーボ検出をより正確に行うことができる。
【0060】
以下において、本形態の好ましい他の態様を説明する。上記の好ましい構成は、サーボ・セクタ間隔の測定値に対する3つのゾーンZ0〜Z1を使用している。これに対して、より多くのゾーンを用意することで、サーボ・セクタ間隔の変動に対する追従性を上げることができる。図10は、HDC/MPU23(タイミングずれ判定部352)が、5つのゾーンZ0〜Z4を使用する例を示している。
【0061】
本構成は、図6を参照して説明したゾーンに加え、ゾーンZ3、Z4が追加されている。ゾーンZ3、Z4は、ゾーンZ1、Z2よりも差分(T2_k−T2_ref)の絶対値が大きく、基準値から遠い領域である。さらに、これらのゾーンZ3、Z4に対応する重み付けが、ゾーンZ1、Z2よりも大きい。本形態ではカウンタを使用しているため、重み付けはカウンタの操作量(インクリメント/ディクリメント)に現れる。具体的には、ゾーンZ3、Z4のカウンタ操作量の絶対値は2であり、ゾーンZ1、Z2の操作量の絶対値1よりも大きい。
【0062】
図7を参照して説明したように、サーボ・セクタ間隔の変化率は、変化する。変化が大きい(早い)領域においては、より早いタイミングでサーボ・ゲート・タイミングを調整することが好ましい。従って、サーボ・セクタ間隔の変化率(隣接セクタ間における変化量)の増加に応じてカウンタの操作量(インクリメント/ディクリメントの量)を増加させることで、サーボ・セクタ間隔の変動に対するタイミングの追従性を上げることができる。
【0063】
図6を参照した説明と同様に、ゾーンは、正負において対称であることが好ましい。図10においては、ゾーンZ3とZ4とは、差分0を中心として、その境界値の絶対値(55ns、75ns)が同じであり、そのカウンタの変化値の絶対値も同じである。HDC/MPU23は、5より多いゾーンを使用してもよいが、あまり多くのゾーンを使用することは処理の効率性を低下させる。
【0064】
HDC/MPU23は、サーボ・セクタ間隔の同一方向(増加もしくは減少)の変化が早い(大きい)領域においては、サーボ・ゲート・タイミング調整を早く行うことが好ましい。このため、サーボ・セクタ間隔の測定値の変化に応じてカウンタ値を規定するゾーンを動的に変化させることは、好ましい方法の一つである。規定のゾーンを変化させる方法としては、ゾーンの追加と削除、既存のゾーン範囲の変更、あるいはそれら双方を行うことができる。
【0065】
例えば、HDC/MPU23は、直近の規定数(例えば3つ)の測定値T2_kと基準値T2_refの差分(T2_k−T2_ref)を加算する。全ての差分の符号(正負)が同一であり、かつ、加算値が規定の閾値を超える場合(条件A)に、HDC/MPU23は、図10に示すゾーン配置を使用する。いずれかの差分の符号が他と違う、もしくは、加算値が規定の閾値以下である場合(条件B)、図6に示すゾーン配置を使用する。
【0066】
あるいは、HDC/MPU23は、図10に示すゾーン配置において、ゾーンZ1〜Z4の範囲をサーボ・セクタ間隔の変化に応じて調整してもよい。例えば、上記条件Aにおいて、HDC/MPU23は、ゾーンZ3、Z4の広い範囲(例えば30ns)を使用し、ゾーンZ1、Z2の狭い範囲(例えば30ns)を使用する。上記条件Bにおいて、ゾーンZ3、Z4の狭い範囲(例えば20ns)を使用し、ゾーンZ1、Z2の広い範囲(例えば40ns)を使用する。このように、サーボ・セクタ間隔の変動に応じてカウンタ操作の判定基準となるゾーンを変更することで、サーボ・セクタ変動に対するサーボ検出タイミングの追従性を改善することができる。
【0067】
これまでの説明では、サーボ・ゲート・タイミングの一回の調整量は固定値ΔT1である。この調整量を変化させてもよい。サーボ・セクタ間隔の同一符号における変化(増加もしくは減少)が大きい領域において、より大きな量の調整を行うことで、追従性を上げることができる。サーボ・セクタ間隔の変化の大きさを判定する手法は、上記ゾーン(カウンタ操作の判定のためのゾーン)調整における方法と同様でよい。より精細な制御を行う場合には、調整量を決定する基準となる3つ以上の加算値のゾーンを用意し、各ゾーンに対して異なる調整量を割り当てる。
【0068】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。例えば、本発明はHDDに限らず、他の回転するディスクを使用するディスク・ドライブ装置に適用することができる。
【0069】
上記説明においては、サーボ・ゲートの立ち上がりタイミングとSAM検出タイミングとの間の時間間隔を測定することで、サーボ・セクタ間の時間間隔を測定するが、二つのサーボ・セクタのSAM検出タイミングを直接に比較することで、サーボ・セクタ間の時間間隔を測定することもできる。このとき、測定値と比較する基準値をサーボ・ゲート・タイミングの調整に応じて調整する。他の処理は上述の処理と同様である。本発明のサーボ・データ検出のためのタイミング制御により、サーボ・ゲートを変更することなく、サーチ・ウィンドウのみを変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態にかかるハードディスク・ドライブの構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本実施形態において、サーボ・トラックの一部を構成するサーボ・セクタ及びサーボ・セクタのデータ・フォーマットを模式的に示す図である。
【図3】本実施形態において、サーボ・ゲートSGとサーチ・ウィンドウSWのタイミングを模式的に示すチャートである。
【図4】本実施形態において、異なるタイミングのサーボ・ゲートSGを模式的に示している図である。
【図5】本実施形態において、SAM検出タイミングと、サーボ・ゲートSGの立ち上がりと立下りのタイミング、そしてサーチ・ウィンドウSWの立ち上がりと立下りのタイミング、の間の関係を模式的に示すチャートである。
【図6】本実施形態において、時間間隔の変化についての好ましい判定手法を説明する図である。
【図7】本実施形態において、ディスク・シフトによるサーボ・セクタのスピンドル中心からの距離R及びサーボ・セクタ時間間隔TSの変化を模式的に示す図である。
【図8】本実施形態において、サーボ・タイミング制御のより具体的な方法を説明する機能ブロック図である。
【図9】本実施形態において、サーボ・タイミング制御のより具体的な方法を説明するフローチャートである。
【図10】本実施形態において、時間間隔の変化についての好ましい態様の判定手法を説明する図である。
【図11】従来の技術において、磁気ディスクの記録面全体のデータ構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ハードディスク・ドライブ、10 エンクロージャ、11 磁気ディスク
12 ヘッド・スライダ、14 スピンドル・モータ、15 ボイス・コイル・モータ
16 アクチュエータ、20 回路基板、21 リード・ライト・チャネル
22 モータ・ドライバ・ユニット、23 ハードディスク・コントローラ/MPU
31 タイミング出力部、35 タイミング設定部、351 タイミング測定部
352 タイミングずれ判定部、353 カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク・ドライブにおいて、サーボ・データ検出のための処理タイミングを制御する方法であって、
ディスクにおいて円周方向に離間して配置されている複数のサーボ・セクタを読み出してサーボ・セクタ間の時間間隔を測定し、
測定した時間間隔が規定の複数ゾーンの内のいずれに入るかを決定し、
過去の複数の時間間隔のゾーンによって前記時間間隔の変化について判定し、前記時間間隔の変化が規定範囲にある場合にサーボ・セクタ検出のためのタイミングを変化させる、
方法。
【請求項2】
前記タイミングは、サーボ・セクタの読み出し処理を開始するタイミングである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サーボ・セクタの読み出し処理を開始するタイミングとサーボ・セクタ内の規定の信号の検出タイミングとの間の時間を測定することで、前記サーボ・セクタ間の時間間隔を測定する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のゾーンは、基準値との差分が負の数値範囲である負のゾーンと正の数値範囲である正のゾーンとを含み、
前記複数の時間間隔の前記負のゾーンに含まれる回数と前記正のゾーンに含まれる回数とから、前記時間間隔の変化について判定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のゾーンは、前記基準値との差分が0を挟む負の数値と正の数値とで規定されるゾーン・ゼロを含み、
測定した時間間隔が前記ゾーン・ゼロに含まれるときは、その時間間隔の変化を無視する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
測定した時間間隔が前記正のゾーン含まれとき増減の一方の方向にカウントを行い、測定した時間間隔が前記負のゾーン含まれとき増減の他方の方向にカウントを行い、測定した時間間隔が前記ゾーン・ゼロに含まれるときはカウントをスキップし、
前記カウントによる値が、前記一方における規定値に達すると前記タイミングを遅くし、前記他方における規定値に達すると前記タイミングを早くする、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
基準値との差分が負の数値範囲である複数の負のゾーンと、正の数値範囲である複数の正のゾーンとを含み、
前記基準値からより遠いゾーンはより大きな重み付けがなされており、
測定した時間間隔が各ゾーンに含まれる回数とその重み付けとから前記時間間隔の変化について判定する、
請求項4に記載の方法。
【請求項8】
複数の時間間隔の測定値から、前記時間間隔の変化の早さについて判定を行い、
前記判定の結果により前記規定のゾーンを変更する、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
円周方向に離間して配置されている複数のサーボ・セクタを有するディスクと、
回転する前記ディスクから前記サーボ・セクタを読み出すヘッドと、
前記ヘッドが読み出したサーボ・セクタ間の時間間隔を測定する測定部と、
前記測定部が測定した時間間隔が規定の複数ゾーンの内のいずれに入るかを決定するゾーン決定部と、
過去の複数の時間間隔のゾーンによって前記時間間隔の変化について判定し、前記時間間隔の変化が規定範囲にある場合にサーボ・セクタ検出のためのタイミングを変化させる、タイミング調整部と、
を有するディスク・ドライブ。
【請求項10】
前記タイミングは、サーボ・セクタの読み出し処理を開始するタイミングである、
請求項9に記載のディスク・ドライブ。
【請求項11】
前記測定部は、サーボ・セクタの読み出し処理を開始するタイミングとサーボ・セクタ内の規定の信号の検出タイミングとの間の時間を測定することで、前記サーボ・セクタ間の時間間隔を測定する、
請求項10に記載のディスク・ドライブ。
【請求項12】
前記複数のゾーンは、基準値との差分が負の数値範囲である負のゾーンと正の数値範囲である正のゾーンとを含み、
タイミング調整部は、前記複数の時間間隔の前記負のゾーンに含まれる回数と前記正のゾーンに含まれる回数とから、前記時間間隔の変化について判定する、
請求項9に記載のディスク・ドライブ。
【請求項13】
前記複数のゾーンは、前記基準値との差分が0を挟む負の数値と正の数値とで規定されるゾーン・ゼロを含み、
タイミング調整部は、測定した時間間隔が前記ゾーン・ゼロに含まれるときは、その時間間隔の変化を無視する、
請求項12に記載のディスク・ドライブ。
【請求項14】
前記ゾーン決定部は、測定した時間間隔が前記正のゾーン含まれとき増減の一方の方向にカウントを行い、測定した時間間隔が前記負のゾーン含まれとき増減の他方の方向にカウントを行い、測定した時間間隔が前記ゾーン・ゼロに含まれるときはカウントをスキップし、
前記タイミング調整部は、前記カウントによる値が、前記一方における規定値に達すると前記タイミングを遅くし、前記他方における規定値に達すると前記タイミングを早くする、
請求項12に記載のディスク・ドライブ。
【請求項15】
基準値との差分が負の数値範囲である複数の負のゾーンと、正の数値範囲である複数の正のゾーンとを含み、
前記基準値からより遠いゾーンはより大きな重み付けがなされており、
前記タイミング調整部は、測定した時間間隔が各ゾーンに含まれる回数とその重み付けとから前記時間間隔の変化について判定する、
請求項12に記載のディスク・ドライブ。
【請求項16】
複数の時間間隔の測定値から前記時間間隔の変化の早さについて判定を行い、前記判定の結果により前記規定のゾーンを変更する、ゾーン変更部をさらに有する、
請求項9に記載のディスク・ドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−108544(P2010−108544A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278924(P2008−278924)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】