説明

ディスク再生装置及びディスク再生方法

【課題】ディスク媒体の再生時に、傷などの欠陥領域がある場合の読み取り精度を向上させたディスク再生装置を提供する。
【解決手段】ディスク媒体を回転制御する駆動部と、対物レンズを含みディスク媒体に記録された情報を読み取り可能な光ピックアップと、ディスク媒体に対して対物レンズの傾斜角度を制御可能なアクチュエータと、光ピックアップによって読み取られた情報を基にディスク媒体の情報の欠陥領域を検出する欠陥検出部と、ディスク媒体からの情報の読み取り時に欠陥領域を検出した場合にアクチュエータを制御し、対物レンズをディスク媒体の回転方向と逆方向に所定の角度だけ傾斜させ、欠陥領域を通過後に元の姿勢に復帰させるチルト制御回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク媒体に記録された情報を再生するディスク再生装置に係り、特にディスク再生時のプレアビリティの改善を図ったディスク再生装置及びディスク再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスク再生装置では、光ピックアップからディスク媒体(光ディスク)に対してレーザ光を照射し、ディスク媒体に記録された情報を読み取るようにしている。光ピックアップには、対物レンズと、フォーカス/トラッキング制御を行うアクチュエータが搭載されており、光ピックアップは、スレッドモータによって光ディスクの径方向に順次移動し、アクチュエータによりトラッキング方向及びフォーカス方向への移動制御が行われている。またディスク媒体の傾きに対して光スポットの出射光をチルト制御するチルト制御機構が設けられている。
【0003】
ところで、光ピックアップでは、対物レンズの光軸のズレや、光ピックアップを構成する部品の光学的なズレによりジッタが増加し、光ディスクの再生能力(プレアビリティ)の悪化を招くことがある。またディスク媒体に傷などの欠陥領域がある場合、ディスク媒体の信号が読み取れなくなり、プレアビリティの悪化を招き、傷に対するプレアビリティは、傷幅が広く(長く)なるほど低下する。
【0004】
このため、ディスク媒体の傷に対するプレアビリティの向上施策として、例えば傷通過時にフォーカス/トラッキングサーボをホールドして光ピックアップを固定する方法を用いたり、SPM(Shock Proof Memory)と呼ばれる耐震機能を搭載したディスク再生装置もある。
【0005】
また特許文献1には、ディスク上の傷の部分を光ビームが通過するときに、対物レンズに正逆の加速度を交互に加えることで、ディスクに対する対物レンズの位置を静止させ、傷通過後に正常位置へ素早く復帰できるようにした光ディスク駆動制御回路について記載されている。
【0006】
また非特許文献1には、チルト制御が可能なアクチュエータを備えたディスク再生装置について記載されている。
【0007】
しかしながら、従来及び特許文献1、非特許文献1に記載された例では、ディスク媒体に傷などの欠陥領域がある場合はプレアビリティが悪化するため、ディスク媒体に傷などがある場合の施策としては未だ不十分であり、更なる改善が要求されている。
【特許文献1】特開2007−193930号公報
【非特許文献1】Ricoh Technical Report NO.31 December 2005 p47〜p51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のディスク再生装置では、ディスク媒体に傷などの欠陥領域がある場合の施策が不十分であり、更なる改善が要求されている。
【0009】
本発明は、ディスク媒体に傷などの欠陥領域がある場合に、光ピックアップによる光ビームの通過時間を短縮することで読み取り精度を向上させたディスク再生装置及びディスク再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明のディスク再生装置は、ディスク媒体を回転制御する駆動部と、対物レンズを含み、前記ディスク媒体に記録された情報を読み取り可能な光ピックアップと、前記ディスク媒体に対して前記対物レンズの傾斜角度を制御可能なアクチュエータと、前記光ピックアップによって読み取られた情報を基に前記ディスク媒体の情報の欠陥領域を検出する欠陥検出部と、前記ディスク媒体からの情報の読み取り時に、前記欠陥検出部によって前記欠陥領域を検出した場合に前記アクチュエータを制御し、前記対物レンズを前記ディスク媒体の回転方向と逆方向に所定の角度だけ傾斜させ、前記欠陥領域を通過後に元の姿勢に復帰させるチルト制御回路と、を具備したことを特徴とする。
【0011】
また請求項5記載の本発明のディスク再生方法は、ディスク媒体を回転制御し前記ディスク媒体に記録された情報を、対物レンズを含む光ピックアップで読み取り、前記ディスク媒体に対して前記対物レンズの傾斜角度を制御可能なアクチュエータを備え、前記光ピックアップによって読み取られた情報を基に前記ディスク媒体の情報の欠陥領域を検出し、前記ディスク媒体からのデータの読み取り時に、前記欠陥領域を検出した場合に前記アクチュエータを制御して、前記対物レンズを前記ディスク媒体の回転方向と逆方向に所定の角度だけ傾斜させ、前記欠陥領域を通過後に前記対物レンズを、前記欠陥領域を検出する前の姿勢に復帰させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のディスク再生装置では、ディスク媒体に傷などの欠陥領域がある場合に、光ビームの通過時間を短縮することができ、ディスク再生時のプレアビリティを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明のディスク再生装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係るディスク再生装置の全体構成を示すブロック図である。
【0015】
図1において、1は光ディスク等のディスク媒体(以下、ディスク1と称す)であり、スピンドルモータ2によって回転される。ディスク1に対する情報の記録・再生は、光ピックアップ3によって行われる。光ピックアップ3は、スレッドモータ4によってディスク1の径方向に駆動され、スピンドルモータ2及びスレッドモータ4は、モータ制御回路5によりそれぞれ制御される。尚、スピンドルモータ2及びモータ制御回路5は、ディスク1を回転制御する駆動部を構成する。
【0016】
光ピックアップ3には、対物レンズ31が設けられ、この対物レンズ31は、アクチュエータ20によってフォーカシング方向(レンズ31の光軸方向)への移動とトラッキング方向(レンズ31の光軸と直交する方向)への移動が制御される。またチルト制御が可能となっている。
【0017】
ディスク1への情報の書き込みは、半導体レーザ発振器32から発せられた光ビームを、コリメータレンズ33及びビームスプリッタ34を介してディスク1に照射して行い、ディスク1からの情報の読取り(リード)は、ディスク1からの反射光を、対物レンズ31、ビームスプリッタ34、集光レンズ35、及びシリンドリカルレンズ36を介して、光検出器37に導くことによって行う。
【0018】
半導体レーザ発振器32は、レーザ制御回路6によって駆動制御され、レーザ制御回路6は、半導体レーザ発振器32から発せられる光ビームを記録/再生に応じて制御する。
【0019】
光検出器37は、例えば4分割の光検出セルから成り、各光検出セルの出力信号は、電流/電圧変換用のアンプを介して信号処理回路38に供給される。信号処理回路38は、光検出器37の出力信号を基に、フォーカス制御用の信号、トラッキング制御用の信号、及びデータ再生用の信号を出力する。
【0020】
フォーカス制御用の信号は、フォーカシング制御回路7に供給され、フォーカシング制御回路7の出力信号は、アクチュエータ20に供給される。これにより、光ビームが、ディスク1上に常時ジャストフォーカスとなるような制御が行われる。
【0021】
トラッキング制御用の信号はトラッキング制御回路8に供給され、トラッキング制御回路8は、トラック駆動信号を作成してアクチュエータ20に供給する。これにより、光ピックアップ3のトラッキング方向の移動が制御される。また、トラッキング制御回路8からのトラック駆動信号は、モータ制御回路5にも供給され、スレッドモータ4を制御する。トラッキング制御回路8によって対物レンズ31が移動されているとき、スレッドモータ4を制御することで、対物レンズ31が光ピックアップ3内の中心位置近傍に位置するよう光ピックアップ3が移動制御される。
【0022】
また、ディスク1の傾きに対して光ビームの出射光をチルト制御するため、チルト制御回路9が設けられている。チルト制御回路9からは、ディスク1の傾きに応じたチルト制御信号が生成され、アクチュエータ20に供給される。また、アクチュエータ20には、ディスク1に傷などの欠陥領域がありディスク1の情報が読み取れない場合にもチルト制御信号が供給される。チルト制御の詳細については後述する。また、アクチュエータ20には、フォーカス制御、トラッキング制御及びチルト制御のための各コイルが設けられているが、これも詳細は後述する。
【0023】
一方、信号処理回路38からのデータ再生用の信号は、RFアンプを介してデータ再生回路10に供給される。データ再生回路10は、RFアンプの出力をアナログ・デジタル変換回路によってデジタル化し、デジタル化された信号をPLL回路11からの再生用クロックに基づき、記録データを再生する。
【0024】
モータ制御回路5、レーザ制御回路6、チルト制御回路9、データ再生回路10、PLL回路11は、バス12に接続され、これらの回路はバス12を介して制御部13によって制御される。制御部13はCPU131を含み、このCPU131は、ROM14に記録されたプログラムに従って所定の動作を行う。
【0025】
さらにバス12には、RAM15、データプロセッサ16、インターフェース回路17が接続され、インターファース回路17にはホスト18が接続されている。データプロセッサ16は、エラー訂正回路を含み、CPU131により指定された領域の情報をディスク1から読み出し、エラー訂正してRAM15に書き込むようにしている。
【0026】
また、インターファース回路17は、ホスト18からのコマンドを制御部13に送ったり、ディスク1のデータを、ホスト18を介して外部に出力する役割を有する。例えば、音楽、画像DVDを再生可能なディスク再生装置では、ホスト18からのデータリード要求(読取り指令)に応じて目標アドレスの情報を読取るようにしている。
【0027】
次に、図2、図3を参照して対物レンズ31の駆動装置であるアクチュエータ20の構成について説明する。尚、図2、図3において、矢印Xはトラッキング方向を示し、Yはフォーカシング方向を示す。また、Zはトラッキング方向X及びフォーカシング方向Yと直交するタンデンシャル方向を示している。
【0028】
図2はアクチュエータ20の一例を示す斜視図である。また図3はアクチュエータ20の要部の分解斜視図であり、主に磁石とコイルの配置を示す。アクチュエータ20は、例えば、非特許文献1に記載されたものと類似の構成を有する。
【0029】
図2において、対物レンズ31は、レンズホルダ21に保持されており、レンズホルダ21のタンジェンシャル方向Zの両側面には平面状の駆動コイル22a,22bが取り付けられている。またレンズホルダ21のトラッキング方向の両側面には中継基板23が取り付けられている。中継基板23には駆動コイル22a,22bの端子が接続されている。
【0030】
また、レンズホルダ21の下部には磁性体の板金を折り曲げて形成した金属ベース24が設けられている。金属ベース24は直角に折り曲げられ、折り曲げ部241はヨークになっており、ヨーク241には駆動磁石25a,25bが取り付けられ磁気回路を構成している。駆動磁石25a,25bの表面部は、駆動コイル22a,22bと所定の隙間を隔てて配置されている。
【0031】
さらに、金属ベース24の一端部には固定部材26が固定され、この固定部材26からタンジェンシャル方向にワイヤ27が配置されている。ワイヤ27の一端は中継基板23のランド部に固定され、ワイヤ27の他端は固定部材26に固定されている。
【0032】
ワイヤ27は導電性であり、固定部材26に設けた回路基板28から駆動コイル22a,22bに電流を供給することによって、レンズホルダ21を含む可動部を任意の方向に駆動することができる。ワイヤ27で支持されたレンズホルダ21及びそれに取り付けられた駆動コイル22a,22b等は、対物レンズ31とともに可動部を構成する。
【0033】
駆動コイル22a,22bは、図3に示すように、トラッキングコイル41とフォーカシングコイル42、及びチルトコイル43で構成され、トラッキングコイル41のトラッキング方向の両側にフォーカシングコイル42が配置されている。またフォーカシングコイル42に重なるように、三角形状のチルトコイル43が配置されている。
【0034】
また、駆動磁石25a,25b(図3では駆動磁石25bのみを示す)は、S極の磁石とN極の磁石(斜線を施して示す)で構成されている。尚、駆動磁石25a,25bは、一つの磁石を多極に着磁しても良いし、幾つかの磁石を複数並べて構成してもよい。
【0035】
このようなアクチュエータ20は、トラッキングコイル41、フォーカシングコイル42、チルトコイル43に流れる電流を制御することで対物レンズ31を、トラッキング方向X、フォーカシング方向Yに移動することができる。また、タンジェンシャル方向Zに対してラジアルチルト方向R及びタンジェンシャルチルト方向Tに傾斜させることができる。尚、チルトコイル43と駆動磁石25a,25bはタンジェンシャルチルト機構を構成する。
【0036】
このようなディスク再生装置において、ディスク1に傷がある場合、或いは異物が付着したり、指紋等による汚れがある場合は、ディスク1の情報を読取れないことがある。特に傷があり、その傷幅が広い(長い)場合はプレイアビリテイの悪化を招くことになる。
【0037】
そこで本発明では、ディスク1に傷などの情報の欠陥領域がある場合は、アクチュエータ20を制御して対物レンズ31をディスク1の回転方向とは逆方向に傾けることにより、光ビームの傷部分の通過時間を実質的に短縮し、再生時のディスク1に対するプレイアビリテイを向上させた点に特徴がある。
【0038】
尚、上記の情報の欠陥領域とは、本来ディスク1に記録されていた情報が読み取れない領域を総称したものであり、引っ掻き傷や、ディスクに異物が付着して情報を読み取れない領域を言う。以下の説明では、ディスク1に傷がある場合を例に説明する。
【0039】
図4は、本発明のディスク再生装置におけるチルト制御回路9を中心とする対物レンズ31の駆動回路を示すブロック図である。
【0040】
図4において、ディスク1は、スピンドルモータ2によって回転され、ディスク1に対向してアクチュエータ20が設けられている。アクチュエータ20には対物レンズ31が取り付けられており、トラッキング方向、フォーカシング方向に移動制御されるようになっている。
【0041】
またディスク1の下部には、ディスク1の傾きを検出する第1のチルトセンサ51が配置され、アクチュエータ20の下部には対物レンズ31の傾斜を検出する第2のチルトセンサ52が配置されている。第1、第2のチルトセンサ51,52はディスク1及び対物レンズ31の傾斜を検出して電気信号に変換し、この電気信号をチルト制御回路9に供給する。
【0042】
チルト制御回路9は、第1、第2のチルトセンサ51,52の出力信号の差をもとに第1のチルト制御信号を生成し、出力端子53から第1のチルト制御信号を出力し、アクチュエータ20のチルトコイル43に供給する。第1のチルト制御信を使用したチルト制御は通常再生時の制御である。
【0043】
また、チルト制御回路9にはコントローラ13が接続されており、ディスク1に傷があって情報の読み出しができない場合に第2のチルト制御信号を生成し、対物レンズ31をディスク1の回転方向とは逆方向に傾けるようにしている。
【0044】
即ち、光ピックアップ3によってディスク1からの情報を読み出しているときに傷が検出された場合、コントローラ13の入力端子54には傷検出信号(欠陥検出信号)が供給される。このときコントローラ13はチルト制御回路9を制御して第2のチルト制御信号を生成し、対物レンズ31をディスク1の回転方向とは逆方向に所定角度だけ傾け、ピックアップ3からの光ビームが傷部分を通過した後は、対物レンズ31を、傷を検出する前の姿勢に戻すように制御する。
【0045】
尚、入力端子54に供給される傷検出信号は、信号処理回路38からのRF信号を基に得ることができる。したがって、信号処理回路38は傷などの欠陥領域を検出する欠陥検出部を含む。一般的にディスクからの再生信号を処理する場合、CDプレーヤ用のLSIやDVD/CD用のLSIが使用されており、例えば、東芝製のLSI、TC94A73MFGや、TC94A85MFGを用いた場合、それらLSIから得られるDFCT信号を上記傷検出信号として利用することができる。
【0046】
また、アクチュエータ20には、端子55,56からトラッキング制御信号と、フォーカシング制御信号が供給され、トラッキングコイル41及びフォーカシングコイル42にそれぞれトラッキング制御用の信号と、フォーカシング制御用の電流を供給するようにしている。
【0047】
図5は、図4の駆動回路の動作を説明する動作説明図である。
【0048】
図5は、ディスク1のトラックピットの一例と傷検出信号の一例を示す図であり、矢印zはディスク1の回転方向を示し、一点鎖線は対物レンズ31からの光ビームが当たる部分を示している。図5において斜線の陰で示す部分57はディスクの傷を示している。また58は傷検出信号を示し、Hレベルの期間が傷57によって情報が読み取れない期間を表している。
【0049】
図5(a)は、対物レンズ31からの光ビームが傷57に到達する前の状態を示し、(b)はの光ビームが傷57を通過している期間を示し、(c)は光ビームが傷57を通過した後の状態を示している。
【0050】
本発明では、光ビームが傷57に到達する前の期間は、図5(a)で示すように対物レンズ31はチルトすることなく、光ビームはディスク1に対してほぼ直交するように照射されている。一方、傷検出信号58がHレベルになると、アクチュエータ20には、端子53から第2のチルト制御信号が供給される。これにより図5(b)で示すように、対物レンズ31はタンジェンシャルチルト機構によってディスク1の回転方向zと逆方向に所定角度傾斜し、光ビームの照射方向も傾斜する。
【0051】
また傷57を通過したあとは、図5(c)で示すように、対物レンズ31は、タンジェンシャルチルトが解除され元の姿勢に復帰し、対物レンズ31からの光ビームはディスク1に対してほぼ直交するように照射される。
【0052】
図6は、従来との比較を説明する図であり、図6(a)はディスク1のトラックピット上の傷の状態を示し、(b)は従来における光ビームの傷の通過時間を示し、(c)は本発明における光ビームの傷の通過時間を示している。
【0053】
本発明では、傷57の発生期間は対物レンズ31がディスクの回転方向と逆方向に傾斜するため、光ビームが傷57の終端に達するタイミングが従来(b)よりも早くなる。したがって、光ビームの傷の通過時間が距離Lに相当する分だけ短縮され、光ビームがそれだけ速く傷部分を通過することになる。
【0054】
図6(d)は、上記した距離Lの算出方法を説明する図である。対物レンズ31とディスク1の反射面との距離をA、対物レンズ31のタンジェンシャル方向の傾きをαとすると、距離Lは、L=A×tanα[mm]となり、光ビームの傷の通過時間を距離Lの分だけ縮めることができる。
【0055】
したがって、ディスク1に傷があった場合、対物レンズ31からの光ビームの通過時間を短縮することで傷部分の再生時間を減少させることができ、それだけ読み取り精度が向上し、プレアビリティを向上することができる。
【0056】
図7は、傷検出時の再生動作を説明するフローチャートである。傷検出時の再生動作はコントローラ13の制御のもとに行われ、ステップS1は再生中であることを示している。次のステップS2で傷が検出されるとステップS3では、光ピックアップ3をタンジェンシャル方向に所定の角度αだけチルトする(図5(b)参照)。
【0057】
傷部分を通過し、次のステップS4で傷を脱出したと判断すると、ステップS5では光ピックアップ3を元の角度状態に戻し、ステップS6でディスク1に記録された情報の読み取りを再開する。その後は、再びステップS2に戻って傷の有無を検出して同様の動作を繰り返す。ステップS7は再生の終了ステップである。
【0058】
また傷がない場合の通常の再生動作にあっては、第1、第2のチルトセンサ51,52の出力信号を利用した第1のチルト制御信号により、ディスク1の傾きに対応したチルト制御が行われる。
【0059】
以上述べたように、本発明のディスク再生装置では、ディスク1に傷があった場合に、対物レンズ31からの光ビームの通過時間を短縮することができ、傷のついたディスクに対するプレアビリティを向上することができる。
【0060】
尚、以上の説明ではディスクに傷があり情報が読み取れない場合の対応について説明したが、傷に限らず異物が付着して情報が読み取れない場合等であっても同様に対応することができる。またタンジェンシャルチルト機構を含むアクチュエータ20の構成は、図2、図3の例に限らず他の機構を用いることもできる。
【0061】
また、以上の説明に限定されることなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク再生装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明のディスク再生装置に用いるアクチュエータの一例を示す斜視図。
【図3】本発明のディスク再生装置におけるアクチュエータの要部の構成を示す分解斜視図。
【図4】本発明のディスク再生装置における対物レンズの駆動回路を示すブロック図。
【図5】本発明のディスク再生装置の動作を説明する動作説明図。
【図6】本発明のディスク再生装置の動作を説明する他の説明図。
【図7】本発明のディスク再生装置の動作を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0063】
1…ディスク媒体
2…スピンドルモータ
3…光ピックアップ
4…スレッドモータ
5…モータ制御回路
6…レーザ制御回路
7…フォーカシング制御回路
8…トラッキング制御回路
9…チルト制御回路
10…データ再生回路
11…PLL回路
12…バスライン
13…コントローラ
14…ROM
15…RAM
16…データプロセッサ
17…インターフェース回路
18…ホスト
20…アクチュエータ
31…対物レンズ
41…トラッキングコイル
42…フォーカシングコイル
43…チルトコイル
51,52…チルトセンサ
54…傷検出信号(欠陥検出信号)の入力端子
57…傷(欠陥領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク媒体を回転制御する駆動部と、
対物レンズを含み、前記ディスク媒体に記録された情報を読み取り可能な光ピックアップと、
前記ディスク媒体に対して前記対物レンズの傾斜角度を制御可能なアクチュエータと、
前記光ピックアップによって読み取られた情報を基に前記ディスク媒体の情報の欠陥領域を検出する欠陥検出部と、
前記ディスク媒体からの情報の読み取り時に、前記欠陥検出部によって前記欠陥領域を検出した場合に前記アクチュエータを制御し、前記対物レンズを前記ディスク媒体の回転方向と逆方向に所定の角度だけ傾斜させ、前記欠陥領域を通過後に元の姿勢に復帰させるチルト制御回路と、
を具備したことを特徴とするディスク再生装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記対物レンズを前記ディスク媒体のトラッキング方向に移動制御するためのトラッキングコイルと、前記対物レンズをフォーカシング方向に移動制御するためのフォーカシングコイルと、前記対物レンズをトラッキング方向及びフォーカシング方向と直交するタンデンシャル方向に傾斜させるためのチルトコイルとを有し、
前記チルト制御回路は、前記チルトコイルに流れる電流を制御して、前記欠陥領域の検出時に前記対物レンズを前記所定の角度だけ傾斜させることを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。
【請求項3】
前記チルト制御回路は、前記ディスク媒体の傾きに応じて前記チルトコイルに流れる電流を制御して、前記対物レンズを前記ディスク媒体の傾きに対応して傾斜させる第1のチルト制御信号と、
前記欠陥検出部によって前記欠陥領域を検出した場合に前記チルトコイルに流れる電流を制御して、前記対物レンズを前記ディスク媒体の回転方向と逆方向に所定の角度だけ傾斜させる第2のチルト制御信号を生成することを特徴とする請求項2記載のディスク再生装置。
【請求項4】
前記チルト制御回路は、前記ディスク媒体の傾きを検出する第1のチルトセンサの出力信号と、前記対物レンズの傾斜を検出する第2のチルトセンサの出力信号との差分信号を利用して前記第1のチルト制御信号を生成することを特徴とする請求項3記載のディスク再生装置。
【請求項5】
ディスク媒体を回転制御し前記ディスク媒体に記録された情報を、対物レンズを含む光ピックアップで読み取り、
前記ディスク媒体に対して前記対物レンズの傾斜角度を制御可能なアクチュエータを備え、
前記光ピックアップによって読み取られた情報を基に前記ディスク媒体の情報の欠陥領域を検出し、
前記ディスク媒体からのデータの読み取り時に、前記欠陥領域を検出した場合に前記アクチュエータを制御して、前記対物レンズを前記ディスク媒体の回転方向と逆方向に所定の角度だけ傾斜させ、
前記欠陥領域を通過後に前記対物レンズを、前記欠陥領域を検出する前の姿勢に復帰させることを特徴とするディスク再生方法。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記対物レンズを前記ディスク媒体のトラッキング方向、及びフォーカシング方向に移動制御するとともに、前記対物レンズを前記トラッキング方向及びフォーカシング方向と直交するタンデンシャル方向にチルト制御可能であって、
前記欠陥領域の検出時に前記対物レンズを前記所定の角度だけ傾斜させることを特徴とする請求項5記載のディスク再生方法。
【請求項7】
前記ディスク媒体からの情報の読み取り時に、前記ディスク媒体の正常領域では、前記ディスク媒体の傾きと前記対物レンズの傾斜をそれぞれ検出し前記ディスク媒体と前記対物レンズの傾斜角度の差分に応じて前記対物レンズを傾斜させ、
前記欠陥領域では、前記対物レンズを前記ディスク媒体の回転方向と逆方向に所定の角度だけ傾斜させることを特徴とする請求項5記載のディスク再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−259313(P2009−259313A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104815(P2008−104815)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(504113008)東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社 (110)
【Fターム(参考)】