説明

ディスク再生装置及びディスク再生装置のパラメータ調整方法

【課題】各種のパラメータ調整を正確に行うことができるディスク再生装置を提供する。
【解決手段】ディスク媒体に記録された情報を読取り可能な光ピックアップと、情報の再生時に光ピックアップのフォーカス補正及びトラッキング補正を行うサーボ制御回路と、ステッピンクモータを含みステッピンクモータの回転を制御して、光ピックアップをディスク媒体の径方向に移動制御するとともにトラッキング補正に追随して光ピックアップをトレース動作させる移動制御部と、ディスク媒体の再生動作に必要な各種パラメータの調整を行い、パラメータの調整が不調であった場合に、ステッピングモータを不調時の角度位置から所定の角度だけ回転させて再度パラメータの調整を行うパラメータ調整部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク媒体であるDVD(Digital Versatile Disk)等に記録された情報を再生するディスク再生装置に係り、特にディスク再生装置のパラメータ調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスク再生装置では、光ピックアップから光ディスク(ディスク媒体)に対してレーザ光を照射し、光ディスクからの情報を読み取るようにしている。光ピックアップには、対物レンズと、フォーカス/トラッキングの2軸アクチュエータが搭載されており、光ピックアップは、スレッドモータによって光ディスクの径方向に順次移動し、アクチュエータによりトラッキング方向及びフォーカス方向への移動制御が行われる。またスレッドモータとしては、ステッピングモータが用いられている。
【0003】
このようなディスク再生装置においては、製造時、電源投入時等の任意のタイミングで各種のパラメータを自動的に調整するようにしている。パラメータの調整項目としては、例えば光ピックアップから出力されるRF信号のイコライザ調整や、光ピックアップのトラッキングやフォーカシングに関するサーボ調整がある。一般的に光ピックアップ等の各種部品は、周辺環境(温度等)の変化等により特性が変化することがあるため、このような各種パラメータの調整が必要となる。
【0004】
また光ピックアップは、ディスク媒体の目的アドレスまでサーチ移動するサーチ動作と、トラッキング補正によって対物レンズがシフトしたときに、そのシフトをキャンセルするためにトレース動作を行うようにしている。トレース動作では、例えば光ピックアップをディスク媒体の内周から外周方向に移動させて再生している場合、再生中に対物レンズが外周方向にシフトしたことを検出すると、光ピックアップの送り機構は、そのシフトに追随して光ピックアップ本体を移動させようにステッピングモータを回転させる。
【0005】
ステッピングモータは、パルスを印加することによりモータを回転させるものであり、サーボLSIによって駆動される。サーボLSI内部の動きとしては、トラッキングのDCオフセット値等を基に対物レンズのシフト量をディジタル化し、一定値を超えていればレンズがシフトしたと判断する。そして対物レンズのシフトに追随して光ピックアップを一定量移動するようにステッピングモータにパルスを印加し、回転制御を行っている。
【0006】
ところで、光ピックアップの送り機構にステッピングモータを使用した場合、トレース動作時に、対物レンズによってレーサ光を照射し照射位置を移動している間、ステッピンクモータは待機状態にある。ステッピングモータは、この待機状態において光ピックアップの位置を保持するために、励磁電流を流し続ける必要がある。この待機状態は、データを読み取っている期間となる。
【0007】
一方、ステッピンクモータは、待機状態において常に励磁を実行していると発熱するため、間欠的に励磁電流を流し、発熱を抑え消費電力を低減するようにしている。しかしながら、このような間欠励磁を行った場合は、励磁時の磁極位置によりモータ振動が発生することがある。このため、モータ振動によって光ピックアップに外乱振動が印加され、トラッキング方向、フォーカシング方向に振動することがあり、ディスク媒体のデータの読み取りができなくなるという問題がある。
【0008】
前述した各種のパラメータ調整は、ディスク媒体の反りが少ない内周部の特定アドレスを指定して再生を行い、その再生処理中に自動的に行うのが一般的であるが、ステッピンクモータが振動して光ピックアップに外乱振動が印加されると、各種のパラメータ調整も適切に行えなくなり、パラメータの調整に失敗することがある。
【0009】
例えば、サーボ調整を行う場合を説明すると、ステッピングモータが待機状態にあり特定の磁極位置で停止している場合に、ステッピングモータが振動すると、フォーカス或いはトラッキングが外れてディスク媒体のデータが読み取り不能となり、サーボ調整に失敗してしまう。
【0010】
この場合、パラメータ調整部は再びサーボ調整を試みることになるが、ステッピングモータは特定の磁極位置で停止しているため振動が発生し、フォーカス或いはトラッキングが再び外れしまい、サーボ調整に失敗してしまう。したがって、パラメータ調整の失敗を繰り返してしまい、パラメータ調整に時間がかかるという問題があった。
【0011】
特許文献1には、対物レンズを支持したキャリッジをステッピングモータによって駆動する光ディスク装置について記載されている。この例では、ステッピングモータのA相励磁コイルとB相励磁コイルの励磁特性のバラつきを低減するため、各励磁コイルの通電量を調整するようにしている。
【0012】
また特許文献2には、ステッピングモータを用いた光ピックアップ送り駆動装置について記載されている。この例では、モータのロータ位置を検出してモータを高精度で駆動するようにしている。
【0013】
しかしながら、上記した例ではパラメータ調整時のモータの振動についての対処法については何ら考慮されていない。
【特許文献1】特開2007−66451号公報
【特許文献2】特開2002−354890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来のディスク再生装置では、ステッピングモータの待機状態において間欠励磁をしたときに、磁極位置によってモータ振動が発生するという不具合があった。このためパラメータ調整時に光ピックアップに外乱振動が印加されると、正確なパラメータ調整ができないという問題点があった。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みて、パラメータ調整を正確に行うことができるディスク再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の本発明のディスク再生装置は、ディスク媒体に記録された情報を読取り可能な光ピックアップと、前記光ピックアップによって読み取った情報を再生するデータ再生回路と、前記情報の再生時に前記光ピックアップのフォーカス補正及びトラッキング補正を行うサーボ制御回路と、ステッピンクモータを含み前記ステッピンクモータの回転を制御して、前記光ピックアップを前記ディスク媒体の径方向に移動制御するとともに前記トラッキング補正に追随して前記光ピックアップをトレース動作させる移動制御部と、前記ディスク媒体の再生動作に必要な各種パラメータの調整を行い、前記パラメータの調整が不調であった場合に、前記ステッピングモータを前記不調時の角度位置から所定の角度だけ回転させて再度パラメータの調整を行うパラメータ調整部と、を具備したことを特徴とする。
【0017】
また、請求項8記載の本発明のディスク再生装置のパラメータ調整方法は、ディスク媒体に記録された情報を読取り可能な光ピックアップを有し、前記光ピックアップをステッピンクモータの回転を利用して前記ディスク媒体の径方向に移動制御し、前記光ピックアップをトラッキング補正に追随してトレース動作させ前記ディスク媒体の再生動作に必要な各種パラメータの調整を行い、前記パラメータ調整の成否を判断し、前記パラメータの調整が不調に終わった場合は、そのときの前記ステッピングモータの磁極位置を記憶部に記憶し、前記ステッピングモータを前記記憶部に記憶した磁極位置以外の磁極位置に回転させて再度パラメータ調整を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のディスク再生装置及びパラメータ調整方法では、ステッピンクモータを間欠励磁した場合であってもステッピンクモータの振動を低減することができ、パラメータ調整を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明のディスク再生装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明のディスク再生装置100の全体構成を示すブロック図である。図1において、1はディスク媒体(例えばDVD等の光ディスク)であり、スピンドルモータ2によって一定の線速度で回転される。ディスク媒体1に対する情報の記録、再生は、光ピックアップ3によって行われる。
【0021】
光ピックアップ3は、スレッド(SLED)モータ4を含む移動機構によってディスク媒体1の径方向に駆動され、スレッドモータ4は、スレッドモータ制御回路5により制御される。スレッドモータ4を含む移動機構及びスレッドモータ制御回路5は、光ピックアップ3の移動制御部を構成する。
【0022】
光ピックアップ3には、対物レンズ31が設けられ、この対物レンズ31は、2軸アクチュエータ32によってフォーカシング方向(レンズ31の光軸方向)への移動とトラッキング方向(レンズ31の光軸と直交する方向)への移動が制御される。
【0023】
ディスク媒体1に記録された情報は、光ピックアップ3によって読み取られ、RFアンプ6に供給される。RFアンプ6からは、フォーカス制御用の信号、トラッキング制御用の信号、及びデータ再生用の信号が出力される。
【0024】
フォーカス制御用の信号は、フォーカシング制御回路7に供給され、フォーカシング制御回路7の出力信号は、アクチュエータ32に供給される。これにより、光ビームが、ディスク媒体1上に常時ジャストフォーカスとなるように制御される。
【0025】
また、トラッキング制御用の信号はトラッキング制御回路8に供給される。トラッキング制御回路8は、トラック駆動信号を作成してアクチュエータ32に供給する。これにより、光ピックアップ3のトラッキング方向の移動が制御される。また、トラッキング制御回路8からのトラック駆動信号は、スレッドモータ制御回路5にも供給される。
フォーカシング制御回路7とトラッキング制御回路8は、光ピックアップ3のサーボ制御回路を構成する。また、スピンドルモータ2はモータ制御回路9によって制御される。
【0026】
スレッドモータ制御回路5によりスレッドモータ4を制御することで、光ピックアップ3は、ディスク媒体の目的アドレスまでサーチ移動するサーチ動作と、トラッキング補正によって対物レンズがシフトしたときに、そのシフトをキャンセルするためにトレース動作を行う。トレース動作では、トラッキング制御によって対物レンズ31がディスク媒体1の径方向にシフトすると、そのシフトを解消するため光ピックアップ3本体が追随して移動する。
【0027】
また、RFアンプ6からのデータ再生用の信号は、イコライザ61で波形等化され、さらに2値化回路によって2値化されてデータ再生回路10に供給される。データ再生回路10は、2値化されたデータをPLL回路11からの再生用クロックに基づいて復調する。また、データ再生回路10は、エラー訂正回路を含み、誤り訂正処理を行ってデジタルデータを出力する。
【0028】
スレッドモータ制御回路5、フォーカシング制御回路7、トラッキング制御回路8、モータ制御回路9、データ再生回路10、PLL回路11は、バス13に接続され、これらの回路はバス13を介してシステムコントローラ14によって制御される。
【0029】
システムコントローラ14はCPUを含み、さらにメモリ141、パラメータ調整部142を含む。システムコントローラ14は、ROM15に記録されたプログラムに従ってディスク再生装置100の全体の動作を制御する。
【0030】
また、パラメータ調整部142の制御のもとに、フォーカシング制御回路7、トラッキング制御回路8、及びRFアンプ6等のパラメータ調整を実行する。パラメータ調整は、例えばディスク再生装置の製造時等に行われ、光ピックアップから出力されるRF信号のイコライザ調整や、光ピックアップのトラッキングやフォーカシングに関するサーボパラメータの調整を行う。
【0031】
イコライザ調整としては、RF信号の特定の周波数をブースト処理して高域強調を行う際の周波数特性の調整がある。またサーボパラメータの調整としては、トラッキングバランスやフォーカスバランスの調整、トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に対する位相補償量や増幅ゲイン等の調整がある。
【0032】
パラメータ調整が終了したあとは、位相補償量、ゲイン等の設定された調整値が記憶部141に記憶され、以後は記憶された調整値に基づいて各回路が動作する。尚、パラメータの調整は製造時に限らず、電源投入時やユーザの指示があったとき等でも調整可能である。
【0033】
また、バス13にはRAM16が接続され、RAM16にはプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶するようにしている。さらにバス13には、映像・音声デコーダ(図示せず)が接続され、データ再生回路11で再生したデータから、映像信号及び音声信号をデコードし、映像信号及び音声信号を再生するようにしている。
【0034】
尚、フォーカシング制御回路7、トラッキング制御回路8、モータ制御回路9、データ再生回路10、PLL回路11は、サーボLSI12として集積化されている。或いはスレッドモータ制御回路5も含めて同じサーボLSI12に構成することもできる。
【0035】
スレッドモータ4としては、ステッピングモータが使用され、以下、ステッピングモータ4として説明する。スレッドモータ制御回路5は、ステッピングモータ4を駆動するため、コントローラ51とドライバ52を含む。
【0036】
ステッピングモータ4は例えば2相(A相、B相)の励磁コイルを有する。コントローラ51は、マイクロステップ制御方式によりステッピングモータ4を駆動するもので、ステッピングモータ4の回転位置を決めるN通り(例えば16通り、32通り、64通り等)の出力データを生成し、パルス幅変調(PWM)された2組の駆動信号をドライバ52に供給する。2相の励磁コイルは、ドライバ52からの駆動電流によって駆動され、光ピックアップ3を目的とする位置に移動させる。
【0037】
図2は、ステッピングモータ4の簡略構成図を示し、固定子巻線41,42及びロータ43で構成されている。固定子巻線41,42に励磁パターンに従う電流を供給することにより、ロータ43が回転する。固定子巻線41は、A相、−A相の励磁コイルを構成し、固定子巻線42は、B相、−B相の励磁コイルを構成する。
【0038】
図3は、励磁パターンの一例(1−2相励磁の例)を示しており、CKはクロックであり、φ1はA相の励磁パターン、φ2はB相の励磁パターンを示し、φ3は−A相の励磁パターン、φ4は−B相の励磁パターンを示している。
【0039】
クロックCKは、基準となるタイミング信号をもとに生成され、クロックCKによって各励磁パターンの相状態が決まる。クロックの周期を変えることでステッピングモータ4の回転速度を制御することができ、クロック周期を短くすればステッピングモータ4は高速回転となり、クロック周期を長くすれば低速回転となる。
【0040】
また、光ピックアップ3の送り機構にステッピングモータ4を使用した場合、トレース動作時には、対物レンズ31によってレーサ光をディスク媒体1に照射し、照射位置を移動している間、ステッピンクモータ4は回転を停止した待機状態にある。ステッピングモータ4は、この待機状態において光ピックアップ3の位置を保持するために、励磁電流を継続して流し続ける必要がある。
【0041】
しかしながら、励磁電流を継続して流し続けるとステッピングモータ4が発熱するため、図3で示すように待機状態にあっては、間欠的に励磁電流を流すようにしている。
【0042】
図3において、期間(a)はステッピングモータ4の駆動時を示し、(b)はステッピングモータ4の待機状態(停止時)を示している。こうして、ステッピングモータ4を間欠励磁することにより、発熱を抑え消費電力を低減することができる。
【0043】
しかし、このような間欠励磁を行った場合は、励磁時の磁極位置によりモータ振動が発生することがある。このため、モータ振動によって光ピックアップ3に外乱振動が印加され、トラッキング方向、フォーカシング方向に振動することがあり、ディスク媒体1のデータを読み取れなくなる。特にパラメータ調整時にステッピンクモータ4が振動すると、パラメータ調整が不調に終わり、調整に失敗する可能性が高くなる。
【0044】
間欠励磁による振動の発生は、ステッピンクモータ4の特性に依存するものであり、ステッピンクモータ4が特定の磁極位置(回転角度)で停止している場合に振動が起き、全ての磁極位置で振動が発生するものではない。
【0045】
本発明は、このようなステッピングモータ4の振動発生に対処したものであり、ステッピングモータ4の振動発生に起因してパラメータ調整が不調に終わった場合は、そのときのステッピングモータ4の磁極位置を記憶部141に記憶し、再びパラメータ調整を行う場合は、記憶した磁極位置から少しずれた位置にステッピンクモータを回転させることにより振動を低減し、パラメータ調整の失敗を低減するようにしたものである。
【0046】
以下、本発明のディスク再生装置の特徴部について説明する。図4はステッピンクモータ4の磁極位置(回転角度)と振動の発生状態の関係を図示したものである。
【0047】
図4(a)は、ステッピングモータ4の磁極位置を概略的に示したものであり、1回転を16ステップで回転させる例を示している。0〜15の数値はステップ数を示し、また、矢印Xはステッピングモータ4の磁極位置の1つを表している。
【0048】
図4(b)は、パラメータ調整時にステッピンクモータ4が振動し、パラメータ調整に失敗した時の磁極位置を示している。例えば、ステッピンクモータ4が×印で示す磁極位置(ステップ2とステップ9)にあるときに振動してパラメータ調整に失敗した場合、システムコントローラ14はメモリ141にその磁極位置を示すデータを記憶する。
【0049】
尚、ステッピンクモータ4の磁極位置は、コントローラ51からの出力データをもとにしてA相、B相の相状態から判断することができる。したがって、ステッピングモータ4を間欠駆動させたときに振動が発生し、パラメータ調整に失敗したときに、A相、B相の相状態(励磁パターン等)を確認することで、振動の発生した磁極位置を学習することができる。
【0050】
また図4(b)は、所定のステップ間隔でステッピングモータ4を回転駆動する例を示しており、例えば再生開始の励磁位置を0とし、○印の位置に励磁するように2,4,6…の2ステップ間隔で規則的にモータ4を回転させる場合を示している。
【0051】
そして本発明の実施形態では、記憶した磁極位置でステッピンクモータ4を待機するのは避け、次にパラメータ調整を試みる場合は、記憶した磁極位置を少し避けた磁極位置でステッピンクモータ4を待機させるように制御する。
【0052】
これを、図4(c)を参照して説明する。即ち、パラメータ調整に失敗した磁極位置がステップ2とステップ9にあり、○印で示すように0,2,4,6…の2ステップ間隔で規則的にモータ4を回転させながらトレースしているものと仮定する。
【0053】
本発明では、パラメータ調整に失敗し再びリトライする場合、ステッピングモータ4が待機状態になりステップ2の位置で停止しようとするときは、この位置を避け、例えばステップ3の位置で停止させて間欠励磁を行う。
【0054】
同様に、ステップ3,5.7…の2ステップ間隔で回転しながらトレースしている状態で、ステッピングモータ4が待機状態になり、ステップ9の位置で停止しようとする場合は、この位置を避け、例えばステップ10の位置で停止させて間欠励磁を行う。
【0055】
この結果、ステッピンクモータ4は、振動が発生する磁極位置を避けて停止するため、間欠励磁を行ってもステッピングモータ4の振動を低減することができる。こうしてディスク媒体1のデータを正確に読み取ることが可能になり、パラメータ調整を実行できるようになる。したがってパラメータ調整のリトライを何度繰り返すことがなくなり、短時間に正確にパラメータ調整を実行可能となる。
【0056】
次にパラメータ調整部142の制御に基づくパラメータ調整の動作フローを図5を参照してさらに詳しく説明する。
【0057】
図5(a)は、パラメータの調整項目が複数ある場合の全体的なフローチャートを示している。S1はパラメータ調整の開始ステップであり、S2はトラッキングサーボのパラメータ調整ステップであり、S3はフォーカスサーボのパラメータ調整ステップである。またS4は、イコライザ61のパラメータ調整ステップであり、S5は、終了ステップである。
【0058】
図5(b)は、ステップS2,S3,S4の個々のステップのフローチャートを示している。図5(b)において、S11はパラメータ調整の開始ステップである。ステップS12では、記憶部141からステッピンクモータ4の磁極位置のデータを読み出し、その読み出した結果をもとに所定のパラメータの調整を実行する。
【0059】
ここで、記憶部141にステッピングモータ4の磁極位置のデータが記憶されている場合、ステップS12では記憶されている磁極位置を避けた位置にステッピンクモータ4を回転させ、その上でパラメータの調整を実行する。
【0060】
ステップS13はパラメータ調整が成功したか否かを判断するステップであり、成功した場合(YES)は、ステップS14に移行して次の調整項目があるか否かを判断する。次の調整項目があれば次のパラメータ調整に移行し、次の調整項目がなければ終了ステップS15にて終了する。
【0061】
一方、ステップS13においてパラメータ調整に失敗した場合(NO)は、ステップS16においてステッピングモータ4の磁極位置を記憶部141に記憶し、次のステップS17ではステッピングモータ4を所定の角度だけ回転させ、パラメータ調整ステップS12にて再び調整を試みる。
【0062】
これにより、パラメータ調整に成功すればステップS14に移行する。それでもなおパラメータ調整に失敗した場合は、ステップS16においてステッピングモータ4の磁極位置を記憶部141に記憶し、再度ステップS17においてステッピングモータ4をさらに所定の角度だけ回転させる。
【0063】
こうしてパラメータ調整に失敗した磁極位置は記憶部141に随時記憶され、次にパラメータ調整する際は、その磁極位置を避けた位置でステッピンクモータ4を待機状態にするため、パラメータ調整に成功する確率が高くなる。
【0064】
尚、パラメータ調整の成否は、光ピックアップ3によるデータの読み取り結果を基に判別することができる。即ち、振動が発生すると光ピックアップ3に外乱振動が印加されるため、トラッキングエラーやフォーカスエラーといったサーボエラーが発生する。このため、サーボエラーが所定値を越えたときはパラメータ調整に失敗したものと判断することができる。
【0065】
また、振動の発生する磁極位置を避けてステッピンクモータの停止させた場合、1ステップだけ停止位置がずれてしまうが、マイクロステップ制御での1ステップは、トラック方向に数10μm程度のズレであるため、対物レンズ31が行き過ぎるといった問題を生じることはない。但し、振動の発生する磁極位置からあまり遠い位置で停止させるのは望ましくないため、振動の発生する磁極位置に比較的近い位置で停止させると良い。
【0066】
また、パラメータ調整に失敗したときの磁極位置を記憶部141に記憶する代わりに、パラメータ調整に成功した磁極位置を記憶部141に記憶し、パラメータ調整を行う場合は、その記憶された磁極位置でステッピングモータ4を待機状態にするようにしても良い。
【0067】
また車載用のディスク再生装置では、車体の振動等、外部力による振動があるため、ステッピングモータ4の振動が原因でパラメータ調整に失敗したのか、車体の振動が原因でパラメータ調整に失敗したのかを判別できない場合がある。
【0068】
このような場合は、図1で示すように、ディスク再生装置100内のステッピングモータ4と分離されている電気基板などに加速度センサ17(ショックセンサー)を取り付ければ良い。
【0069】
システムコントローラ14は、加速度センサ17からの振動検出結果を受け、加速度センサ17によって振動を検出した場合は、外部力による振動と判断して、スレッドモータ制御部5に伝える。これにより、ステッピンクモータ4の振動の発生原因が間欠励磁によるものか、外部要因によるものかを区別することができる。
【0070】
こうして本発明のディスク再生装置では、間欠励磁によるステッピンクモータ4の振動を低減することができ、ディスク媒体からのデータの読み取り性能を向上させることができパラメータ調整の失敗を低減し、正確なパラメータ調整を行うことができる。
【0071】
尚、以上の説明では、スレッドモータ制御回路5にコントローラ51を設けた例を述べたが、コントローラ51の機能をシステムコントローラ14に持たせることもできる。この場合は、システムコントローラ14によってステッピングモータ4の励磁状態を制御することができる。
【0072】
また以上の説明に限定されることなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のディスク再生装置の一実施形態を示す全体構成図。
【図2】同実施形態に使用するステッピンクモータの概略構成図。
【図3】同実施形態に使用するステッピンクモータの励磁パターンの一例を示す説明図。
【図4】同実施形態におけるステッピンクモータの振動発生とその対応策を説明する動作説明図。
【図5】同実施形態におけるパラメータ調整時の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0074】
1…ディスク媒体
2…スピンドルモータ
3…光ピックアップ
4…ステッピングモータ
5…スレッドモータ制御回路
51…コントローラ
52…ドライバ
6…RFアンプ
61…イコライザ
7…フォーカシング制御回路
8…トラッキング制御回路
9…モータ制御回路
10…データ再生回路
11…PLL回路
12…サーボLSI
13…バス
14…システムコントローラ
141…記憶部
142…パラメータ調整部
15…ROM
16…RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク媒体に記録された情報を読取り可能な光ピックアップと、
前記光ピックアップによって読み取った情報を再生するデータ再生回路と、
前記情報の再生時に前記光ピックアップのフォーカス補正及びトラッキング補正を行うサーボ制御回路と、
ステッピンクモータを含み前記ステッピンクモータの回転を制御して、前記光ピックアップを前記ディスク媒体の径方向に移動制御するとともに前記トラッキング補正に追随して前記光ピックアップをトレース動作させる移動制御部と、
前記ディスク媒体の再生動作に必要な各種パラメータの調整を行い、前記パラメータの調整が不調であった場合に、前記ステッピングモータを前記不調時の角度位置から所定の角度だけ回転させて再度パラメータの調整を行うパラメータ調整部と、を具備したことを特徴とするディスク再生装置。
【請求項2】
前記パラメータ調整部は、前記パラメータ調整の成否を判断し、前記パラメータの調整が不調に終わったときの前記ステッピングモータの磁極位置を記憶する記憶部を有し、
再度パラメータ調整を行う際には、前記ステッピングモータを前記記憶部に記憶した磁極位置以外の磁極位置に回転させてパラメータ調整を行うことを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。
【請求項3】
前記パラメータ調整部は、パラメータ調整が不調に終わり再度パラメータ調整を行う際には、前記ステッピングモータを前記記憶部に記憶した磁極位置から所定の角度範囲ずれた位置に回転させてパラメータ調整を行うことを特徴とする請求項2記載のディスク再生装置。
【請求項4】
前記パラメータ調整部は、前記データ再生回路による読み取り情報を基にサーボエラーを検出し、前記サーボエラーが所定値を越えたときに前記パラメータ調整が不調に終わったものと判断することを特徴とする請求項2記載のディスク再生装置。
【請求項5】
前記パラメータ調整の不調が前記ステッピンクモータの振動に起因するものか、外部力による振動に起因するものかを区別するため、前記ステッピンクモータが取り付けられた部位と異なる位置に振動検出部を備えたことを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。
【請求項6】
前記パラメータ調整部は、前記光ピックアップのフォーカス補正及びトラッキング補正に関するサーボパラメータを調整することを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。
【請求項7】
前記パラメータ調整部は、前記光ピックアップからのRF信号のイコライザ特性を調整することを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。
【請求項8】
ディスク媒体に記録された情報を読取り可能な光ピックアップを有し、
前記光ピックアップをステッピンクモータの回転を利用して前記ディスク媒体の径方向に移動制御し、
前記光ピックアップをトラッキング補正に追随してトレース動作させ前記ディスク媒体の再生動作に必要な各種パラメータの調整を行い、
前記パラメータ調整の成否を判断し、
前記パラメータの調整が不調に終わった場合は、そのときの前記ステッピングモータの磁極位置を記憶部に記憶し、
前記ステッピングモータを前記記憶部に記憶した磁極位置以外の磁極位置に回転させて再度パラメータ調整を行うことを特徴とするディスク再生装置のパラメータ調整方法。
【請求項9】
前記パラメータの調整が不調に終わり再度パラメータ調整を行う際には、前記ステッピングモータを前記記憶部に記憶した磁極位置から所定の角度範囲ずれた位置に回転させてパラメータ調整を行うことを特徴とする請求項8記載のディスク再生装置のパラメータ調整方法。
【請求項10】
前記ディスク媒体からの読み取り情報を基にサーボエラーを検出し、前記サーボエラーが所定値を越えたときに前記パラメータの調整が不調に終わったものと判断することを特徴とする請求項8記載のディスク再生装置のパラメータ調整方法。
【請求項11】
前記ステッピンクモータが取り付けられた部位と異なる位置に振動検出部を備え、前記振動検出部の検出出力を利用して、前記パラメータ調整の不調が前記ステッピンクモータ振動に起因するものか、外部力による振動に起因するものかを区別するようにしたことを特徴とする請求項8記載のディスク再生装置のパラメータ調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−287842(P2008−287842A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134314(P2007−134314)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(504113008)東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社 (110)
【Fターム(参考)】