説明

ディスク再生装置

【課題】 カード類などの異物が誤挿入された際に、その異物がメカ内部の奥行まで挿入されるのを防止し、万一、メカ内部の奥行まで異物が挿入された場合でも、その異物をイジェクト動作で排出することができるディスク再生装置を得ることにある。
【解決手段】 再生ユニットベース2と、この再生ユニットベース2に昇降可能に組み付けられたカートリッジホルダ3と、このカートリッジホルダ3に摺動可能に保持され、挿入されたディスクカートリッジ20を保持して搬送するカートリッジ搬送トレー4とを備え、前記カートリッジ搬送トレー4に、前記再生ユニットベース2との間隙を遮る方向へ延びる異物排除部17を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばクレジットカードやテレフォンカード等の異物の誤挿入防止対策および排除対策を施したMDカートリッジのディスク再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のMDカートリッジのディスク再生装置は、ディスク再生系統機構が搭載された再生ユニットベースと、この再生ユニットベースに対して昇降可能に組み付けられたカートリッジホルダと、このカートリッジホルダに摺動可能に保持され、当該カートリッジホルダに挿入されたディスクカートリッジを保持してディスク再生方向およびディスク排出方向に搬送するカートリッジ搬送トレーとを備えた構成となっている。ここで、前記カートリッジ搬送トレーには、ディスクカートリッジの挿入方向先端を当接させるための後端垂下片部が一体形成され、前記カートリッジホルダの上昇位置では前記後端垂下片部の下端と前記再生ユニットベースとの間には間隙が生じるようになっている。このような従来のディスク再生装置において、MDカートリッジの誤挿入を防止するためのカートリッジ誤挿入防止機構を設けたものは既に知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
すなわち、従来のディスク再生装置に設けられたカートリッジ誤挿入防止機構は、特許文献1ではカートリッジ搬送トレーの両側部に、かつ特許文献2では筐体シャーシと挿入口枠に誤挿入防止用のレバーを回動可能に軸支し、そのレバーをばね力でカートリッジ搬送経路に突出させ、MDカートリッジの正規の挿入方向先端で前記レバーを押圧回動させてカートリッジ搬送経路から退避させることにより、当該レバーを前記MDカートリッジが通過するようにし、かつ、前記MDカートリッジが逆差し挿入された際には当該MDカートリッジの逆差し挿入先端部が前記レバーに当接しても当該レバーが回動しない構成として前記MDカートリッジの逆差し挿入を防止するものである。なお、特許文献2では、MDカートリッジを裏返し挿入した場合でも、その挿入を阻止できるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−220348号公報(第2頁右欄及び第3頁左欄、図1)
【特許文献2】特開平11−306634号公報(第3頁、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のディスク再生装置は以上のように構成されているので、特許文献1および特許文献2のいずれの場合もMDカートリッジのみを対象としたカートリッジ誤挿入防止機構によって、MDカートリッジの逆差し等を防止することはできるが、MDカートリッジ以外の異物の誤挿入を阻止することはできないという課題があった。すなわち、カートリッジホルダがMDカートリッジ挿入前の上昇待機位置に保持された状態では、そのカートリッジホルダに保持されたカートリッジ搬送トレーと再生ユニットベースとの間には間隙が生じているため、例えばクレジットカードやテレフォンカード等のカード類が前記カートリッジホルダに挿入された場合、その挿入を阻止する手段がないため、前記カード類は前記間隙に入り込んでメカ内部(再生ユニットベース上)に落ち込んでしまい、落ち込んだカード類を取り出すことができないという課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ディスクカートリッジ以外のカード類などの異物が誤挿入された際に、その異物がメカ内部の奥行まで挿入されるのを防止することができると共に、万一、メカ内部の奥行まで異物が挿入された場合でも、その異物を取り出し可能な位置までイジェクト動作で排出することができるディスク再生装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るディスク再生装置は、ディスク再生系統機構が搭載された再生ユニットベースと、この再生ユニットベースに対して昇降可能に組み付けられたカートリッジホルダと、このカートリッジホルダに摺動可能に保持され、挿入されたディスクカートリッジを保持して搬送するカートリッジ搬送トレーとを備えたディスク再生装置において、前記カートリッジ搬送トレーに、前記再生ユニットベースとの間隙を遮る方向へ延びて前記カートリッジ搬送トレーと一体に移動し、かつ前記カートリッジホルダのローディング時の下降を許容する異物排除部を設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、カートリッジホルダに摺動可能に保持されたカートリッジ搬送トレーに、再生ユニットベースとの間隙を遮る方向に延びて前記カートリッジ搬送トレーと一体に移動する異物排除部を設けるように構成したので、前記カートリッジ搬送トレーがディスクカートリッジ挿入前の中間待機位置に保持された状態において、カード類の異物が前記カートリッジホルダ内に誤挿入されると、その異物の挿入先端が前記異物排除部に当接するため、メカ内部の奥まで前記異物が挿入されるのを防止することができるという効果がある。また、誤挿入された前記異物が万一ローディングされた場合でも、前記異物排除部は常に再生ユニットベースとカートリッジ搬送トレーとの間隙を遮っているので、イジェクト動作時に前記カートリッジ搬送トレーと一体に移動する前記異物排除部によって前記異物を取り出し可能な位置まで排出することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるMDカートリッジのディスク再生装置を示す外観斜視図、図2は図1の要部を切欠した正面図、図3は図2中の再生ユニットベースの平面図、図4は図2の概略的な側面図、図5は図1の上下方向を逆にした背面図、図6は図5の概略的な下面図、図7(A)は図6では示されていない他の機構部分を表した図5の下面図、図7(B)は図7(A)の左側面図、図7(C)は図7(A)の右側面図、図8は図6および図7中の誤挿入防止レバー取り付け部分の拡大平面図である。
図1に示すディスク再生装置は、前面にカートリッジ挿入口1aを有する装置筐体のシャーシ1と、このシャーシ1内に組み付けられた再生ユニットベース2(図2参照)と、この再生ユニットベース2の上方に配置されて当該再生ユニットベース2に昇降可能に保持されたカートリッジホルダ3と、このカートリッジホルダ3に摺動可能に保持されたカートリッジ搬送トレー4とを備えている。
【0010】
前記再生ユニットベース2には、図2および図3に示すように、スピンドルモータ5の回転軸に取り付けられたターンテーブル6と、ディスク再生用のピックアップ7と、このピックアップ7をネジ送り機構(図示せず)を介して駆動するピックアップ駆動モータ8等のディスク再生系統機構が搭載されている。このような再生ユニットベース2は、その複数箇所が前記シャーシ1に弾性体9(図1参照)を介して弾性的に支持されている。また、前記再生ユニットベース2の後部両側には、図7に示すようにピンP1を介してホルダ支持アーム10の両側後部が上下方向へ回動可能に取り付けられ、そのホルダ支持アーム10に前記カートリッジホルダ3が取り付けられている。また、前述のようにホルダ支持アーム10の両側を軸支している左右のピンP1において、その一方のピンP1には回動レバー11が前記ホルダ支持アーム10と同一方向へ回動可能に取り付けられている。その回動レバー11は下向き回動方向の付勢力を有しており、その付勢限界位置で前記ホルダ支持アーム10に係合するようになっている。
【0011】
このように回動レバー11が組み付けられたホルダ支持アーム10で保持されているカートリッジホルダ3は、前記ホルダ支持アーム10の回動によって前記再生ユニットベース2上に接離する方向へ昇降可能となっている。そして、前記カートリッジホルダ3内に前記カートリッジ搬送トレー4が摺動自在に組み付けられている。そのカートリッジ搬送トレー4は、前記カートリッジホルダ3内に正しく挿入されたMDカートリッジ20をロック保持してローディング開始方向に往復搬送するものである。
【0012】
ここで、前記カートリッジホルダ3とカートリッジ搬送トレー4との詳細な関連構成を図6および図7に基づいて説明する。
まず、カートリッジホルダ3の前端部両側には、MDカートリッジ20の両側がスライド自在に嵌め込まれる対称的断面コ字状をなした左右一対のカートリッジガイド片部3aが形成されている。また、前記カートリッジホルダ3には、MDカートリッジ20の搬送方向へ一直線状に延びて互いに平行するガイドスリット3b,3cが設けられ、それらのガイドスリット3b,3cに前記カートリッジ搬送トレー4と一体のガイド突起4a,4bがスライド自在に嵌めまれている。そして、前記カートリッジホルダ3の表面側には、中央のガイドスリット3bを介して前記カートリッジホルダ3とカートリッジ搬送トレー4とに跨るトグルばね12が配置されている。このトグルばね12は、カートリッジ搬送トレー4をディスク再生方向およびディスク排出方向に付勢するものである。
【0013】
また、前記カートリッジホルダ3内の一側には、MDカートリッジ20のシャッタ21をロック解除する凸部AA(後述する)とシャッタを保持・開閉するシャッタ開閉用の板ばね13が配置してある。それらの板ばね13は内向きの屈曲係合部13aを有している。さらに、前記カートリッジホルダ3の表面部一側には、カートリッジ誤挿入防止レバー(以下、誤挿入防止レバーという)14が回動可能に取り付けられている。この誤挿入防止レバー14の自由端側には、図8に示すように、前記カートリッジホルダ3に設けられた窓穴3dを介して当該カートリッジホルダ3の裏面側に出没させる係止爪部14aが屈曲形成されている。すなわち、前記カートリッジホルダ3には、前記係止爪部14aを出没させるための窓穴3dが設けられており、この窓穴3dから前記係止爪部14aが出没する方向へ前記誤挿入防止レバー14が水平回動するようになっている。
【0014】
その誤挿入防止レバー14は係止爪部14aが前記窓穴3dからカートリッジホルダ3の裏面側に突出する方向(カートリッジホルダ2内のカートリッジ移動経路を遮る方向)にスプリング15で付勢されている。このスプリング15の付勢で前記カートリッジホルダ3の裏面側に突出した状態の誤挿入防止レバー14には、前記カートリッジホルダ4の一側後部に形成された爪部4gが係合するようになっている。したがって、前記誤挿入防止レバー14、カートリッジ搬送トレー4がカートリッジ挿入前にローディング開始方向に移動するのを規制するストッパ機能を有している。このような誤挿入防止レバー14は、その係止爪部14aがMDカートリッジ20の正規の挿入方向先端部で押されることによって、前記スプリング15の付勢力に抗する方向へ回動し、これにより、前記係止爪部14aが前記窓穴3dから没入して前記カートリッジ搬送トレー4およびMDカートリッジ20の通過を許容するようになっている。
【0015】
次に、前記カートリッジ搬送トレー4は、前記MDカートリッジ20の正規の挿入方向先端を当接させるための後端片部4cを有し、この後端片部4cの後ろ側には前記カートリッジ搬送トレー4の幅方向に沿ったコ字状の係合溝部4dが形成されており、その係合溝部4dの機能については後述する。また、前記カートリッジ搬送トレー4の両側には、その後端片部4cの両端から前方に向かって延びる左右のカートリッジロック保持用板ばね16(図6参照)が取り付けられている。それらの板ばね16は、MDカートリッジ20の挿入方向先端寄りの両側部に形成されたロック用切欠部22(図9参照)に係脱させるための内向きの屈曲係合部16aを有している。このようなカートリッジ搬送トレー4においても、その一側にはカートリッジ誤挿入防止用の内向きストッパを兼ねたカートリッジガイド片部(以下、単にガイド片部という)4fが折曲形成されている。このガイド片部4fは、MDカートリッジ20の一側に形成された挿入ガイド溝24を嵌め込む位置に折曲形成されている。
【0016】
ここで、MDカートリッジ20について説明する。図9(A)はMDカートリッジの裏面図、図9(B)は図9(A)の左側面図、図9(C)は図9(A)の右側面図である。
MDカートリッジ20は、その前・後端辺部20a,20bが左右の側辺部20c,20dに比べて長い平面長方形状をなしており、一方の側辺部20cに沿って設けられたシャッタガイド溝23と、他方の側辺部20dの前端側に設けられた挿入ガイド溝24とを有している。前記シャッタガイド溝23と挿入ガイド溝24は、MDカートリッジ20の肉厚中心部から位置ずれ状態に形成されてそれぞれの前端が開放され、かつ後端が閉塞されている。そして、前記シャッタガイド溝23にシャッタ21の折り返し片部がスライド自在に嵌め込まれている。また、前記シャッタ21の側面部には、前記シャッタ開閉用板ばね13の屈曲係合部13aを係合させるための係合穴21aが設けられている。一方、前記MDカートリッジ20の内部には、前記シャッタ21を閉位置で内側からロックするためのシャッタロックレバー25が取り付けられている。このシャッタロックレバー25はシャッタ21をロックする方向の付勢力を有している。さらに、前記MDカートリッジ20にはシャッタガイド溝23内に開口するロック解除穴26が設けられており、このロック解除穴26を介して前記凸部AAが前記シャッタロックレバー25をロック解除方向に押動するようになっている。
【0017】
以上において、前記カートリッジ搬送トレー4には、図2および図4に示すように異物排除部17が設けられている。この異物排除部17は、前記再生ユニットベース2とカートリッジ搬送トレー4との間隙を遮る方向に延びてMDカートリッジ20以外の異物(例えば、クレジットカードやテレフォンカード等のカード類)の誤挿入を阻止し、万一、メカ内部(ローディング位置)まで誤挿入された異物であってもそれを取り出し可能な位置まで搬出可能とするもので、前記カートリッジ搬送トレー4の幅方向中間部に一体的に設けられている。すなわち、前記異物排除部17は、カートリッジホルダ3の内側面からクレジットカード等のカード類の幅寸法以下の距離に位置に設けられている。ここで、クレジットカード等の一般的なカードサイズは、おおよそ幅54mm×長さ86mm×重さ0.8gとなっているので、このようなカードサイズの場合、前記カートリッジ搬送トレー4の内側面と異物排除部17との間の距離<カード幅54mmとなる位置に前記異物排除部17を設ける。
【0018】
この実施の形態1において、前記異物排除部17は、前記カートリッジ搬送トレー4の後端(MDカートリッジ20の挿入方向先端をローディング開始位置で当接させる部位)に連続形成されて垂下し、前記カートリッジ搬送トレー4と一体に移動する異物ストッパ片部からなっている。したがって、この実施の形態1では前記異物排除部17を異物ストッパ片部17と呼称して説明する。一方、前記再生ユニットベース2には、図3に示すように、前記異物ストッパ片部17の垂下端部を摺動自在に嵌合させるガイド溝18が設けられている。このガイド溝18は、前記再生ユニットベース2上のターンテーブル6やピックアップ駆動モータ8等の搭載機器を避けてカートリッジ搬送トレー4の移動方向へ一直線状に延びており、そのガイド溝18の後端側には、前記カートリッジ搬送トレー4のローディング下降時に前記異物ストッパ片部17を嵌入させるためのストッパ逃げ穴(ストッパ逃げ部)19が設けられている。
【0019】
次に、ディスク再生装置の駆動系統について説明する。
図1および図5,図6に示すように、シャーシ1の後部には、ローディングモータ30とギア連(動力伝達機構)31が搭載されている。ギア連31は、ローディングモータ30の出力ウォーム30aに噛合した入力ギア31aと、この入力ギア31aに複数の中間ギア31bを介して噛合する出力ギア31cとからなっており、前記出力ギア31cは偏心位置に係合ピン32を有している。また、前記シャーシ1には、前記係合ピン32およびギア連31を介してローディングモータ30により駆動される第1および第2のアーム33,34が共通の支軸35で水平回動可能に取り付けられている。それらのアーム33,34は、それぞれの基端側回動部位にスイッチ押圧片部33a,34aを有している。前記両アーム33,34は、それらに形成されたカム形状縁部間で前記係合ピン32を挟み込む方向にスプリング36で付勢されている。前記第1のアーム33の先端部には、カートリッジ搬送トレー4後部の係合溝部4dにスライド自在に係合させる係合ピン33a(図6参照)が突設され、その係合ピン33aによって第1のアーム33とカートリッジ搬送トレー4とが連動関係に保持されている。
【0020】
前記シャーシ1には基板45が取り付けられ、その基板45にはローディング検出スイッチSW1とイジェクト検出スイッチSW2が実装されている。ここで、前記第1のアーム33のスイッチ押圧片部33aは前記ローディング検出スイッチSW1をON・OFF制御し、かつ第2のアーム34のスイッチ押圧片部34aは前記イジェクト検出スイッチSW2をON・OFF制御するものである。また、前記シャーシ1の後部には、図7(A)に示すように、前記出力ギア31cに連動して水平回動することにより前記カートリッジホルダ3をロックおよびロック解除する系統の第1,第2のホルダロックレバー37,38が軸37a,38aを介して取り付けられている。それらのホルダロックレバー37,38には、前記シャーシ1の両側に配置されて前後方向に移動する左右のスライダ39,40が連係させてある。
【0021】
スライダ39,40には、図7(B)(C)に示すように、前記カートリッジホルダ3の両側から突出しているピンP1,P2を昇降方向に導入・導出させるテーパガイド面41a,42aを有するピン係合溝41,42が設けられている。また、前記スライダ39,40の前端側には、前記各ピン係合溝41,42にピンP1,P2が導入された状態において、前側のピンP2をロックするピンロックカム(ピンロック部材)43,44が回動可能に軸支されており、それらのピンロックカム43,44は前記スライダ39,40の前後移動に追従連動して回動するようになっている。
【0022】
次に動作について説明する。
図10(A)はMDカートリッジ挿入時の動作説明のために示したカートリッジホルダの表面図、図10(B)は図10(A)の裏面図、図11(A)(B)は図4の動作説明図である。
カートリッジホルダ3内にMDカートリッジ20が挿入されていない状態では、前記カートリッジホルダ3が図4に示すようにMDカートリッジ20を挿入可能な位置に持ち上げ保持され、かつカートリッジ搬送トレー4が前記カートリッジホルダ3の前端開口側(図1のカートリッジ挿入口1a側)に待機保持されている。このような待機状態のカートリッジホルダ3内にMDカートリッジ20を図9(A)に示す正規の前端辺部20aから挿入すると、当該MDカートリッジ20の一側の挿入ガイド溝24がカートリッジ搬送トレー4のガイド片部4fに、かつMDカートリッジ20の他側のシャッタガイド溝23が凸部AAとシャッタ開閉用板ばね13の屈曲係合部13aにそれぞれ嵌まり込んでMDカートリッジ20が押し込まれる。このとき、MDカートリッジ20の挿入方向先端部によって、前記シャッタ開閉用板ばね13とカートリッジロック保持用板ばね16が押し広げられた後、誤挿入防止レバー14がスプリング15の付勢力に抗して押圧回動させられることにより、前記MDカートリッジ20の挿入方向先端が前記誤挿入防止レバー14を通過する。
【0023】
そして、MDカートリッジ20の挿入方向先端がカートリッジ搬送トレー4の後端片部4cに当接すると、その時点で前記カートリッジロック保持用板ばね16が弾性復帰することにより、当該板ばね16の屈曲係合部16aがMDカートリッジ20のロック用切欠部22に係合する。これによって、MDカートリッジ20がカートリッジ搬送トレー4にロック保持される。この状態からMDカートリッジ20がさらに若干押し込まれると、ディスク装置駆動系の第1のアーム33が押し動かれることにより、当該アーム33のスイッチ押圧片部33aでローディング検出スイッチSW1がOFF動作させられてローディングモータ30がローディング方向に起動する。ローディングモータ30が起動すると、ギア連31を介して第1,第2のアーム33,34がカートリッジ引き込み方向に回動駆動されことにより、第1のアーム33の先端係合ピン33aでカートリッジ搬送トレー4がローディング開始方向に引き込まれる。
【0024】
その引き込み動作過程では、前記凸部AAがシャッタ21のロック解除穴26に入り込んでシャッタロックレバー25を押し込むことにより、シャッタ21のロックを解除する。その後、前記シャッタ開閉用板ばね13の屈曲係合部13aはシャッタ21の係合穴21aに嵌入係合して当該シャッタ21を開き、この状態を維持してカートリッジ搬送トレー4がローディング開始方向への移動を継続する。
【0025】
そして、前記カートリッジ搬送トレー4がローディング開始位置に到達すると、ギア連31の回転がホルダロックレバー37,38に伝達されることにより、当該ホルダロックレバー37,38でスライダ39,40がホルダロック解除方向に駆動される。同時にカートリッジホルダ3が下降動作を始め、下降動作完了後、そのスライダ39,40に連動するピンロックカム43,44が回動してピンP2のロックが解除される。カートリッジホルダの下降動作時には、カートリッジホルダ3内のカートリッジ搬送トレー4と一体に異物ストッパ片部17が下降するが、この場合、異物ストッパ片部17は図11に示すように再生ユニットベース2のストッパ逃げ穴19に嵌入するため、前記カートリッジホルダ3の下降動作が前記異物ストッパ片部17で阻止されるようなことはない。そして、前記カートリッジホルダ3の下降により、カートリッジ搬送トレー4内にロック保持されたMDカートリッジ20がターンテーブル6上に磁気吸着されて再生位置に保持される。これによって、ローディングが終了する。なお、イジェクト動作は前記ローディングとは逆に行われる。
【0026】
以上は、MDカートリッジ20が正しく挿入された場合であって、前記MDカートリッジ20が誤挿入された場合の動作について以下に説明する。
まず、MDカートリッジ20を前後逆向きにして挿入した場合、当該MDカートリッジ20の挿入方向先端となる正規の後端辺部20b(図9(A)参照)にはシャッタガイド溝23および挿入ガイド溝24のいずれも開放されていないので、カートリッジホルダ3の誤挿入防止レバー14で移動が規制されているカートリッジ搬送トレー4のガイド片部4fに前記MDカートリッジ20の挿入方向先端が当接して当該MDカートリッジ20の誤挿入が阻止される。また、MDカートリッジ20表裏面逆にして誤挿入した場合、MDカートリッジ20の肉厚中心部よりシャッタガイド溝23および挿入ガイド溝24が位置ずれしてカートリッジ搬送トレー4のガイド片部4fに挿入ガイド溝24が対応しないため、この場合においてもMDカートリッジ20の挿入方向先端が前記ガイド片部4fに当接して誤挿入が阻止される。
【0027】
さらにMDカートリッジ20を横向きにして挿入した場合、その挿入方向先端となる側辺部20cもしくは20d(図9(A)参照)は、前後端辺部20a,20bよりも短く(幅狭く)なっているためにMDカートリッジ20の挿入方向先端20cもしくは20dは、前記ガイド片部4fおよび誤挿入防止レバー14を通過してカートリッジ搬送トレー4の後端片部4cに当接する。しかしながら、この場合のカートリッジ搬送トレー4は、一側の爪部4gが図8(A)に示すように誤挿入防止レバー14に当接係合して移動できないため、前記カートリッジ搬送トレー4によるMDカートリッジ20の引き込みが不可能となって当該MDカートリッジ20の挿入が阻止される。すなわち、前記MDカートリッジ20が誤挿入防止レバー14をスプリング15の付勢力に抗する方向へ押圧回動させない限り、カートリッジ搬送トレー4の爪部4fが誤挿入防止レバー14に係合したままの状態を維持するため、前記カートリッジ搬送トレー4がMDカートリッジ20の引き込み方向に移動するようなことはなくなってMDカートリッジ20がローディング開始位置まで挿入されるようなことがなくなる。
【0028】
次に、前記MDカートリッジ20以外のクレジットカードやテレフォンカード等の異物としてカード類が挿入された場合の動作について説明する。
図2および図4に示すように、カートリッジホルダ3と共にカートリッジ搬送トレー4がカートリッジ挿入前の上昇待機位置に保持された状態においては、カートリッジ搬送トレー4と一体の異物ストッパ片部17が再生ユニットベース2とカートリッジ搬送トレー3との間隙を遮る方向に垂下しているため、幼児等によって誤挿入されたカード類は挿入方向先端が前記異物ストッパ片部17に当接する。このため、前記カード類がメカ内部に完全に挿入されるのを阻止できる。
【0029】
以上は、カートリッジホルダ3の誤挿入防止レバー14を避けてカード類が挿入された場合であり、そのカード類が前記誤挿入防止レバー14を押圧回動させて挿入された場合には、当該誤挿入防止レバー14とカートリッジ搬送トレー4の爪部4fとの係合が解除され、前記カートリッジ搬送トレー4がローディング開始方向へ移動することにより、そのカートリッジ搬送トレー4に追従して前記カード類がさらに押し込まれると、メカ内部(再生ユニットベース2上)に落下し、落下したカード類は通常は取り出すことができなくなる。しかし、この場合、ディスク再生装置の駆動系統をイジェクト動作させると、前記カートリッジ搬送トレー4と一体に移動する異物ストッパ片部17によって、前記再生ユニットベース2上のカード類を取り出し可能な位置まで搬出される。
【0030】
以上説明した実施の形態1によれば、カートリッジホルダ3内に摺動可能に保持されてディスク再生方向およびディスク排出方向に駆動されるカートリッジ搬送トレー4に、再生ユニットベース2との間隙を遮る方向に延びて前記カートリッジ搬送トレー4の幅方向中間部に位置し、かつ当該カートリッジ搬送トレー4と一体に移動する異物ストッパ片部17を設けるように構成したので、MDカートリッジ20以外のカード類の異物が誤挿入された場合、そのカード類の挿入方向先端が前記異物ストッパ片部17に当接することにより、カード類の異物全体が挿入されるのを阻止することができるという効果がある。また、誤挿入されたカード類の異物がローディングされてメカ内部の再生ユニットベース2上に落下した場合であっても、イジェクト動作時にカートリッジ搬送トレー4と一体に移動する前記異物ストッパ片部17が再生ユニットベース2上面のガイド溝18内にまで延びているので、前記異物ストッパ片部17によって再生ユニットベース2上の異物を取り出し可能な位置(カートリッジ挿入口1aから異物の一部が突出する位置)まで確実に搬出することができるという効果がある。
【0031】
また、前記再生ユニットベース2には、前記カートリッジ搬送トレー4の引き込み終端位置(ローディング開始位置)で前記異物ストッパ片部17の下降を許容するストッパ逃げ穴19を設けるように構成したので、ローディング時における前記カートリッジホルダ3の下降動作が前記異物ストッパ片部17によって阻止されるようなこともないという効果がある。さらに、前記異物ストッパ片部17はカートリッジ搬送トレー4の成形加工時に当該カートリッジ搬送トレー4と一体形成できると共に。前記異物ストッパ片部17のガイド溝18にあっても、再生ユニットベース2上のターンテーブル6やピックアップ駆動モータ8等の搭載機器を避けて容易に形成することができるという効果がある。
【0032】
さらに、前記異物ストッパ片部17は、前記カートリッジ搬送トレー4におけるMDカートリッジ20の挿入終端部位に設けられているので、前記異物ストッパ片部17がMDカートリッジ20の挿入弊害となるようなこともないという効果がある。さらに、前記異物ストッパ片部17は、その垂下端部が再生ユニットベース2上のガイド溝18内にはまり込んで状態でカートリッジ搬送トレー4と一体にローディング開始方向へ往復移動するので、前記再生ユニットベース2上に落ち込んだ薄いカード類であっても、それを前記異物ストッパ片部17によって取り出し可能な位置まで確実に排出することができるという効果がある。
【0033】
実施の形態2.
前記実施の形態1では、金属製のカートリッジ搬送トレー3に異物ストッパ片部17を一体形成するように構成したが、前記異物ストッパ片部17はカートリッジ搬送トレー4とは別体の金属部材もしくは弾性部材をカートリッジ搬送トレー4に取り付けもよく、この場合も前記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施の形態1によるMDカートリッジのディスク再生装置を示す外観斜視図である。
【図2】図1の要部を切欠した正面図である。
【図3】図2中の再生ユニットベースの平面図である。
【図4】図2の概略的な側面図である。
【図5】図1の上下方向を逆にした背面図である。
【図6】図5の概略的な下面図である。
【図7】図7(A)は図6では示されていない他の機構部分を表した図5の下面図、図7(B)は図7(A)の左側面図、図7(C)は図7(A)の右側面図である。
【図8】図8(A)は図6および図7中の誤挿入防止レバー取り付け部分の拡大平面図、図8(B)は図8(A)の動作説明図である。
【図9】図9(A)はMDカートリッジの裏面図、図9(B)は図9(A)の左側面図、図9(C)は図9(A)の右側面図である。
【図10】図10(A)はMDカートリッジ挿入時の動作説明のために示したカートリッジホルダの表面図、図10(B)は図10(A)の裏面図である。
【図11】図11(A)(B)は図4の動作説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 シャーシ、1a ディスク挿入口、2 再生ユニットベース、3 カートリッジホルダ、3a カートリッジガイド片部、3b,3c ガイドスリット、3d 窓穴、4 カートリッジ搬送トレー、4a,4b ガイド突起、4c 後端片部、4d 係合溝部、4e 後端切欠縁部、4f ガイド片部、4g 爪部、5 スピンドルモータ、6 ターンテーブル、7 ピックアップ、8 ピックアップ駆動モータ、9 弾性体、10 ホルダ支持アーム、11 回動レバー、12 トグルばね、13 板ばね、13a 屈曲係合部、14 誤挿入防止レバー、14a 係止爪部、15 スプリング、16 板ばね、16a 屈曲係合部、17 異物排除部(異物ストッパ片部)、18 ガイド溝、19 ストッパ逃げ穴、20 MDカートリッジ、20a 前端辺部、20b 後端辺部、20c 側辺部、21 シャッタ、21a 係合穴、22 ロック用切欠部、23 シャッタガイド溝、24 挿入ガイド溝、25 ロックレバー、26 ロック解除穴、30 ローディングモータ、30a ウォーム、31 ギア連、31a 入力ギア、31b 中間ギア、31c 出力ギア、32 係合ピン、33 第1のアーム、33a 係合ピン、34 第2のアーム、35 支軸、36 スプリング、37,38 ホルダロックレバー、39,40 スライダ、41,42 ピン係合溝、41a,42a テーパガイド面、43,44 ピンロックカム、45 基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク再生系統機構が搭載された再生ユニットベースと、この再生ユニットベースに対して昇降可能に組み付けられたカートリッジホルダと、このカートリッジホルダに摺動可能に保持され、挿入されたディスクカートリッジを保持して搬送するカートリッジ搬送トレーとを備えたディスク再生装置において、前記カートリッジ搬送トレーに、前記再生ユニットベースとの間隙を遮る方向へ延びて前記カートリッジ搬送トレーと一体に移動し、かつ前記カートリッジホルダのローディング時の下降を許容する異物排除部を設けたことを特徴とするディスク再生装置。
【請求項2】
異物排除部は、カートリッジ搬送トレーにおけるディスクカートリッジの挿入先端当接部位の幅方向中間部に一体形成されて再生ユニットベースとの間隙を遮る方向に垂下する異物ストッパ片部からなっており、前記再生ユニットベースには、前記異物ストッパ片部の垂下端部をスライド自在に嵌合させたガイド溝と、カートリッジホルダのローディング下降時に前記異物ストッパ片部の垂下部を嵌入させるストッパ逃げ部とが設けられていることを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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