説明

ディスク型高密度記録媒体

支持体およびこの支持体上に順番に配置される記録層および光透過層を備える光学記録媒体であって、支持体が、射出成形部品、成形表面層および成形コア層を有する射出成形サンドイッチ構造体または2つの射出成形部品であって紫外線結合されているもの、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の部品を備え、ASTM E 756−05に従って25℃において2000Hzで測定される支持体のヤング率Eが少なくとも2.15GPaでありかつQファクターが160以下である、光学記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
情報信号の記録および再生用の既知の記録媒体、例えばオーディオまたはビデオ用記録媒体、としては、ディスク型光学記録媒体およびディスク型磁気記録媒体が挙げられる。
【0002】
これらの記録媒体の中には、情報信号が例えばピットおよびグルーブによって微小な凸凹として書き込まれる光ディスク、相変化光ディスク、光磁気ディスク、光磁気効果利用記録フィルム(exploiting photomagnetic effect of the recording film)、および磁気書込信号用ハードディスクがある。
【0003】
光学記録媒体上に記録層を形成するために、情報信号、例えばデータ情報またはトラッキングサーボ信号、に関連して微小な凹凸、例えば位相ピットまたはプレグルーブ、を有するこれらの記録媒体の中で、プラスチック材料の支持体の射出成形が通常用いられる。特に、ディスク型支持体は、射出成形デバイス、金属金型およびスタンパーを使用して形成され、情報信号は、この時にスタンパーから転写される。
【背景技術】
【0004】
そのような光ディスクに対して情報を読み出し、かつ記録するために、通常、所定の開口数NAの単純な対物レンズを通して波長λのレーザービームを、厚さdがλよりも非常に大きい光透過層を通じて、λよりも非常に長い対物レンズと光透過層表面との間の作動距離WDで記録層に集光させる。ここで、集束レーザービームのスポット径DはD=λ/NAと示される。市販のディスク、例えばコンパクトディスク(CD、λ=780nm、NA=0.45、d=1.2mm)、デジタル多用途ディスク(DVD、λ=650nm、NA=0.60、d=0.6mm)、高密度デジタル多用途ディスク(HD−DVD、λ=405nm、NA=0.65、d=0.6mm)またはブルーレイディスク(BD、λ=405nm、NA=0.85、d=0.1mm)は、この遠距離場光学原理を使用している。λを低減させ、かつ、NAを増加させることによって、スポット径Dが低減され、従って、データ密度が増加する。
【0005】
しかしながら、そのような遠距離場光(dおよびWD>>λ)では、対物レンズのNAは1.0未満の値に制限される。データ密度を更に増加させるために、NAは1.0よりも大きくなる必要があり、これは近接場光(NFR)によって実現されうる。NFRの1つの手段は、いわゆるソリッドイマージョンレンズ(SIL)を利用することである(例えばS.M.Mansfield,W.R.Studenmund,G.S.Kino,and K.Osato,“High−numerical−aperture lens system for an optical storage head,”Opt.Lett.18,305頁以降(1993年)参照。この全ての内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)。例えば、NAが1.0未満の遠距離場レンズおよび屈折率nSILの材料で作られた半球レンズで構成されるレンズシステムにおいて、有効開口数NAeffは、NA・nSILで与えられ、これはnSILが十分大きいと1.0を超える。別の手段は、λよりも非常に小さい開口径DApによる。これは、末端開口が非常に狭い光ファイバー(例えばH.Brueckl,Physik in unserer Zeit,28,Jahrgang 1997年,第2巻,67頁以降参照。この全ての内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)によって、または光学非直線応答性の薄いマスキング層(いわゆる超解像強化近接場構造、例えばJ.Tominagaら,Applied Physics Letters,第73巻(15)1998年,2078〜2080頁参照。この全ての内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)によって実現される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NFRは、λよりも非常に短いレンズシステムの表面または開口とディスクの表面または記録層との間のWDで電磁場を利用する。例えば、K.Saitoら,Technical Digest ISOM 2001,244頁以降において、405nmよりも非常に短い作動距離WDにおいて、SILのエバネセント波の十分な光がディスクに結合することが示されており、SILのNAeffは遠距離場限界1.0を超えて上昇する。安定再生信号を得るためにWDの精度を数nmのレベルに制御しなければならないことも示されている。これは、レンズ表面からの距離とともにエバネセント波の強度が指数関数的に減衰すると理解される。そのような制御メカニズムを確立するために、T.Ishimotoら,Technical Digest ISOM/ODS 2002,WC3,287頁以降によってアクティブフィードバックサーボループが提供され、導入された(この全ての内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)。このサーボループは、回転ディスクのモード振動に由来するWDの変動も相殺できる(J.I.Leeら,Technical Digest ODS 2006 MC4,43頁以降。この全ての内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)。しかしながら、サーボループのバンド幅制限のために、そのような相殺は、低いディスク回転速度およびモード周波数が800Hz未満の低周波数モード振動でしかあまり作用しない。従って、例えば厚さ1.1mmの直径120mmの大型ポリカーボネートディスクの高周波数モード振動の振幅に起因して、データ転送速度に限界がある。上記文献に開示されている支持体は本発明の支持体の要求を満たさない。高いディスク回転速度でもギャップサーボ制御操作を改良するために、特にディスクの高い周波数モード振動挙動を改良しなければならない。
【0007】
モード振動は、モード周波数fによって識別され、モード周波数fが(E/ρ)0.5に比例するので、fはディスクのジオメトリおよびヤング率Eと質量密度ρとの比に関連する(更に、式1も参照。)。クオリティファクターQ(式2参照。)は、Q=3/tanδによってtanδに関連する。その意味で、Qは、tanδと同様に減衰の尺度として使用される。低いQは、tanδが高いので高い減衰を意味する。一般的に、EおよびQは、周波数fへの明瞭な依存性を示す。
【0008】
US 6,908,655 B2(この全ての内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)は、典型的な厚さ1.1mmの直径120mmの大型ポリカーボネートディスクにおいて約140Hzにおいて生じる低周波数(第1)モード振動の影響に焦点を合わせており、更に遠距離場光学ピックアップヘッドにも関連している。
【0009】
WO 00/48172(この全ての内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)は、ディスクの第1モード周波数(300Hz未満)挙動に焦点を合わせており、第1モード周波数が好ましくはディスクの回転操作範囲外に位置することが言われている。高周波数モード振動(2000Hz以下)の挙動に関する解決策は開示されていない。WO 00/48172の実施例2に基づくこの出願の実験部分にある比較例3は、減衰に関する低周波数要求を満たす解決策が本発明の高周波数要求に合わないことを示している。
【0010】
WO 2003/005354A1(この全ての内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)は、特別なコポリカーボネートがディスクの改良された減衰を達成することを記載している。この開示は、ポリマーの化学構造が本発明と異なるかまたは減衰に関する低い(第1)モード周波数要求を記載しており、本発明の高周波数要求を記載していない点で本発明と異なる。
【0011】
本発明の高周波数モード振動要求に十分でないが、低周波数(1Hz〜16Hz)における改良された減衰を達成するための別の解決策は、US 6,391,418B1、EP 1 158 024 A1およびUS 2004/0265605 A1に開示されている(これらそれぞれの全ての内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)。US 6,391,418 B1は、粘度平均分子量が10,000〜40,000であり、ビフェニル、テルフェニル化合物またはそれらの混合物ベースのポリカーボネートを含有するポリカーボネート組成物で作られた情報記録媒体用支持体を記載している。EP 1 158 024 A1は、(a)損失tanδが0.01〜0.04であり、かつ、荷重撓み温度が120℃以上であるアモルファス熱可塑性樹脂50〜90wt.%および(b)メチルメタクリレート樹脂50〜10wt.%を含有する振動減衰熱可塑性樹脂組成物であって、それらから成形される物品がある物理特性を有する振動減衰熱可塑性樹脂組成物を記載している。US 2004/0265605 A1は、フィジカル部分が少なくとも1種類のポリイミドを含有する支持体およびこの支持体上の少なくとも1つのデータ層を備える振動減衰データ記憶媒体を記載している。これは第1モード(低周波数)振動に関連している。
【0012】
NFRに関する別の重要な特性は、エバネセント場からの光をλよりも非常に短いWDを通して記録媒体の表面に結合させてDをλ/NAeffに低減させるためにSILのNAeffを完全に利用する能力である。そのために、記録媒体の最上部光透過層の屈折率の実部nは、NAeffよりも大きくなければならない。そのような層は、高屈折率層(HRIコーティング)であって、本発明によって記録媒体の最上層を形成し、エバネセント場中の光の記録媒体への結合を可能にする高屈折率層(HRIコーティング)によって実現されうる。HRIコーティングは、更に、2以上の再生層または記録層同士の間のスペーサー層としても使用されうる。それぞれの最良遠距離場光(NA<1.0)と比較して記録密度を少なくとも2倍増加させるために、NAeffは少なくとも1.41よりも大きくなくてはならず、従って、HRI層の屈折率の実部nは少なくとも1.41でなければならない。遠距離場光に焦点を合わせている先行技術はそのことを説明する必要がなかった。
【0013】
US 6,875,489 B2またはEP 1,518,880 A(これらのそれぞれの全内容を参照することによって本明細書中に組み込む。)は、これらの態様が遠距離場光学ディスク、例えばBD、に関連しているので、厚さdが3μmを超える光透過層に重点的に取り組んでいる。NFRでは有効NAeffが1.0よりも大きいので、例えば収差を補正することが容易であるので、光透過層の厚さdをより小さな値(例えば3μm以下)に限定することが重要である(Zijpら,Proc.of SPIE 第5380巻,209頁以降)。
【0014】
HRI層の上記光学特性に加え、NFR光ピックアップヘッドの非常に短いWDのために、偶発的なヘッドクラッシュの場合に、そのようなHRI層は、記録媒体に貯蔵される情報および光ピックアップヘッドの保護層の役割も果たさなければならない。そのために、HRI層は、WDがわずか数十nmの範囲内にあるので、耐引掻き性が高く、かつ、表面粗度Rが低いべきである。更に、HRI層で構成されるスペーサー層によって離される多重積層記録層からの十分高い反射を可能にするために、および、高い読み出し安定性を実現するために、HRI層の吸収または屈折率の虚部kもまた低いべきである。ここでもまた、先行技術はディスク構造のそのような複素特性プロファイルを説明する必要がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の様々な態様は、ギャップサーボ制御NFRディスク用光学記録媒体であって、少なくとも記録層および光透過層が支持体上に順番に形成されており、光が光透過層側から情報信号の記録および/または再生用に照射され、前記支持体が2000Hzの高周波数においてヤング率および減衰(Qファクター)に関する特定の要求を満たすギャップサーボ制御NFRディスク用光学記録媒体を提供する。更に、本発明の様々な態様は、屈折率、耐引掻き性および表面粗度に関する特定の要求を有する光透過層を有する上記のような光学記録媒体を提供する。
【0016】
本発明は、様々な情報信号、例えば近接場光ピックアップヘッド(Near Field Optical Pick up Head)に適合するデジタルデータ、の記録用の特別な構造を有するディスク型高密度記録媒体に関する。
【0017】
ギャップサーボ制御近接場記録および近接場読み出しにおいて、レンズとディスク表面との間の作動距離WDは、レーザー光の波長λをはるかに下回って減らされなければならず、狭い範囲内に制御されなければならない。従って、ディスクの高周波数モード振動挙動並びに光透過層の厚さ、光学および機械的特性に関する厳しい要求が存在する。本発明は、上記問題を解決するのに好適な材料で実現されるディスクアーキテクチャ(disc architectures)の特別な選択を示す。
【0018】
本発明の一態様としては、支持体並びにこの支持体上に順番に配置される記録層および光透過層を備える光学記録媒体であって、支持体が、射出成形部品、成形面層および成形コア層を有する射出成形サンドイッチ構造体または2つの射出成形パーツであって紫外線結合されているもの、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上のパーツを含有し、かつ、ASTM E 756−05に従って25℃において2000Hzで測定される支持体のヤング率Eが少なくとも2.15GPaであり、Qファクターが160未満である光学記録媒体が挙げられる。
【0019】
上記の要旨、並びに下記本発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解できる。本発明の説明を補助する目的で、実例と理解されるそれぞれの態様を図面に示す。しかしながら、本発明が示される正確な配置および手段に決して限定されないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、ASTM E 756−05に記述されているものと同様のレーザドップラ振動計(LDV)の構成(set−up)であって、本発明の様々な態様に使用される支持体のヤング率EおよびQファクターの測定に用いられるレーザドップラ振動計の構成を図示している。
【0021】
本明細書中で特に数を示さずに使用される名詞は、言い回しおよび/または文脈が特に明確に示さない限り、その数は「1以上」および「少なくとも1つ」である。従って、例えば、本明細書または添付の特許請求の範囲中、「樹脂」は、単一樹脂または1種類よりも多くの樹脂を示す。加えて、全ての数値は、特に他に示さない限り、用語「約」によって修飾されていると理解される。
【0022】
高周波数のディスクのモード振動に影響を及ぼすものとしては、モード振動を高周波数にシフトさせ、それによって振幅を所定の減衰で低減させる、ヤング率E(弾性率)の上昇;または振動振幅を低減させるクオリティファクターQの低減(減衰を増加させる)が挙げられる。前記問題を解決するために、弾性率または減衰が単一パラメータまたは両方のパラメータとして改良されうる。
【0023】
本発明の様々な態様は、少なくとも記録層と光透過層とを備える光学記録媒体を含む。記録層および光透過層は支持体上に順番に形成され、光は情報信号の記録および/または再生のために光透過層側から照射される。支持体は、射出成形部品で構成されるかまたは成形面層(スキン層)と成形コア層とを有する射出成形サンドイッチ構造を有するかまたは紫外線結合される2つの射出成形パーツで構成される。ASTM E 756−05に従って25℃において2000Hzで測定される支持体のヤング率Eは少なくとも2.15GPaであり、かつ、Qファクターは160以下である。
【0024】
光透過層の厚さは、好ましくは1nm〜3000nm、より好ましくは200nm〜2000nm、特に500nm〜1500nmである。
【0025】
支持体材料:
支持体の形成に好適な支持体材料の例としては、支持体がヤング率EおよびQファクターの要求を満たすポリマー、ブンレンドおよびコンパウンド(充填剤入り熱可塑性樹脂組成物)が挙げられる。しかしながら、前記支持体用の本発明のポリマー樹脂は、下記の例に限定されない。
【0026】
熱可塑性樹脂それ自体が塊状射出成形部品においてヤング率EおよびQファクターに関する要求を満たさない場合、その熱可塑性樹脂のブレンドもしくは充填剤入り組成物またはサンドイッチ構造もしくは結合構造における熱可塑性樹脂支持体材料の組み合わせが使用されうる。
【0027】
ヤング率EおよびQファクターに関する要求に加えて、熱可塑性樹脂、ブレンドまたはコンパウンドは、吸水性が低く、耐熱性が高く、かつ、常套の方法、例えば射出成形、射出圧縮成形などを用いてディスクに加工可能でなければならない。
【0028】
そのような熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル酸樹脂、ポリスチレン樹脂およびアモルファス多環式オレフィン並びに水素化ポリスチレンが挙げられる。熱可塑性樹脂は、異種熱可塑性樹脂からなるブレンド並びに熱可塑性樹脂と充填剤および/または添加剤とのコンパウンドであってもよい。
【0029】
ポリカーボネート樹脂:
ポリカーボネート樹脂は、一般的に、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体との溶液重合または溶融重合によって得られる。上記条件を満たせば、あらゆる芳香族ジヒドロキシ化合物が許容可能である。
【0030】
好ましい芳香族ジヒドロキシ化合物としては、式(1):
HO−Z−OH (1)
(式中、Zは、式(1a)
【化1】

(式中、
およびRは、互いに独立して、HまたはC〜C−アルキル、好ましくはHまたはC〜C−アルキル、特に水素またはメチルであり、
Xは、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデンまたはC〜C−シクロアルキリデンであって、C〜C−アルキル、好ましくはメチルもしくはエチルで置換されていてもよいものであり、
但し、Xが3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンである場合、RおよびRは水素である。)
の基である。)
の化合物が挙げられる。
【0031】
最も好ましくは、Xは、単結合、メチレン、イソプロピリデンまたはシクロヘキシリデンまたは3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンであり、特に、Xは、イソプロピリデンまたは3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンである。
【0032】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、一般的に知られており、一般的に知られている方法に従って製造されうる。
【0033】
芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、ヒドロキノン、レソルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレン−ジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)m−ジイソプロピルベンゼンが挙げられる。好ましいジヒドロキシ化合物は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−(m−フェニレン−ジイソプロピリデン)ジフェノールおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0034】
ポリカーボネート樹脂は、上記芳香族ジヒドロキシ化合物をホモ重合することによって得られるホモポリカーボネート、または2種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物を共重合することによって得られるコポリカーボネートである。更に、上記芳香族ジヒドロキシ化合物を1種類以上の別のジヒドロキシ化合物と重合させることによって得られるコポリカーボネートであってもよい。
【0035】
溶液法による反応は、通常、二価フェノールとホスゲンとの間の反応であり、通常、酸カップリング剤および有機溶媒の存在下において行われる。酸カップリング剤として、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、またはアミン化合物、例えばピリジン、が使用される。有機溶媒として、ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロベンゼン、が使用される。反応を促進するために、触媒、例えば第三級アミン、第四級アンモニウム化合物または第四級ホスホニウム化合物、例えばトリエチルアミン、N−エチル−ピペリジン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、またはテトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド、もそれぞれ使用されうる。好ましくは、反応温度は、通常0〜40℃であり、反応時間は10分〜5時間であり、かつ、反応中のpHは9以上である。
【0036】
重合反応において、通常、末端キャッピング剤が用いられる。これらの使用される末端キャッピング剤は、単官能性フェノールでありうる。これらの単官能性フェノールは、分子量を調節するための末端キャッピング剤として日常的に使用されている。得られるポリカーボネート樹脂は、上記のように得られていないポリカーボネート樹脂よりも熱安定性が優れるように、単官能性フェノールベース基によってキャップされた末端を有する。単官能性フェノールは、一般的に、フェノールまたは低級アルキル置換フェノール、例えば、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、イソオクチルフェノールまたは長鎖アルキルフェノール、例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールである。
【0037】
末端キャッピング剤は、適切な分子量を達成する量で導入される。末端キャッピング剤は単独で使用されても組み合わせで使用されてもよい。
【0038】
ポリカーボネートまたはコポリカーボネートの平均分子量は、Ubbelhodeキャピラリー粘度計(キャピラリータイプ0C)を用いるポリマーのジクロロメタン溶液の相対溶液粘度によって同定される。ポリマー濃度は5g/lであり、測定は温度25℃において行われる。相対溶液粘度は、1.15〜1.30、好ましくは1.18〜1.25、特に好ましくは1.19〜1.23である。
【0039】
溶融法による反応は、通常、二価フェノールと炭酸エステルとのエステル交換反応であり、二価フェノールと炭酸エステルとを不活性ガスの存在下で、加熱および生じるアルコールまたはフェノールの留去のもとで混合することを含む方法によって行われうる。反応温度は、例えば生じるアルコールまたはフェノールの沸点と異なるが、通常120〜350℃である。反応の後半で、この反応システムの圧力を約1.33×10〜13.3Paに低減させて生じるアルコールまたはフェノールの蒸留を促進する。反応時間は、通常、1〜4時間である。
【0040】
炭酸エステルの中には、エステル、例えばC〜C10アリール基またはアラルキル基またはC1〜4アルキル基であって、場合によっては置換されていてもよいもの、があり、特にジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートがある。もちろん、ジフェニルカーボネートが最も好ましい。
【0041】
重合を加速するために、重合触媒を使用してもよい。これらの重合触媒として、エステル化またはエステル交換反応に通常使用される触媒、例えばアルカリ金属化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または二価フェノールのナトリウムもしくはカリウム塩、アルカリ土類金属化合物、例えば水酸化カルシウム、水酸化バリウムまたは水酸化マグネシウム、窒素含有塩基性化合物、例えばテトラメチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物、トリメチルアミンまたはトリエチルアミン、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のアルコキシド、リン含有塩基性化合物、例えばテトラフェニルホスホニウムフェノレートまたはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、オスミウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物またはジルコニウム化合物、が使用されうる。これらの触媒は単独で使用されても組み合わせで使用されてもよい。これらの触媒は、出発原料としての二価フェノール1molに対して、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の量で使用される。
【0042】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、重合における異性化反応の結果としてポリマー中に3官能性以上の芳香族化合物を含むかまたは分枝成分を含みうる。3官能性以上の芳香族化合物の例としては、好ましくは、フロログルシン、フロログルシド、トリスフェノール、例えば4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、および4−(4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン)−α,α−ジメチルベンジルフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびそれらの酸塩化物が挙げられる。これらの中で、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよび1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0043】
リンベースの熱安定剤を熱可塑性樹脂に添加してもよい。好適なリンベースの熱安定剤は、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびそれらのエステルである。特に、ホスファイト化合物、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、およびホスフェート化合物、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロロフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルモノオルトキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェートおよびジイソプロピルホスフェートが望ましい。別のリンベースの熱安定剤は、例えばテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトである。これらの中で、トリスノニルフェニルホスホナイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトが好ましい。これらの熱安定剤は単独で使用しても混合物として使用してもよい。これらの熱安定剤の量は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.0001〜0.5重量部、より好ましくは0.0005〜0.2重量部、最も好ましくは0.002〜0.2重量部である。
【0044】
一般的に知られている酸化防止剤を本発明の熱可塑性樹脂に添加して酸化を防いでもよい。酸化防止剤の例は、フェノールベースの酸化防止剤である。酸化防止剤の量は、好ましくは熱可塑性樹脂に対して0.0001〜0.05wt%である。
【0045】
要すれば、一価アルコールまたは多価アルコールの高級脂肪酸エステルを本発明の熱可塑性樹脂に添加してもよい。一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルをブレンドすることによって、熱可塑性樹脂の成形時における離型性が改良され、ディスク支持体の成形における離型負荷が小さくなり、それによってディスク支持体の変形および離型不良によって生じるピットの抜けを防ぐことを可能にする。熱可塑性樹脂の溶融物流動性もまた改良する。
【0046】
アルコールと高級脂肪酸とのエステルの量は、熱可塑性樹脂に対して0.01〜2wt%、好ましくは0.015〜0.5wt%、より好ましくは0.02〜0.2wt%である。
【0047】
転写性および成形ディスクの吸湿および脱湿工程におけるそりを減らす効果が損なわれない範囲で、添加剤、例えば別の熱可塑性樹脂、光安定剤、着色剤、帯電防止剤および滑剤を、本発明の光ディスク支持体用の樹脂に添加してもよい。
【0048】
本発明の樹脂組成物の製造において、ポリカーボネート樹脂同士の混合および/またはポリカーボネート樹脂と別の樹脂との混合が、ポリマー溶液または成形物品、例えば粒子もしくはペレット、の段階で行われることが考えられる。これは特に限定されない。混合手段に関しては、ポリマー溶液の段階では、スターラを備える容器が主に使用され、成形品、例えば粒子もしくはペレット、の段階では、タンブラー、V型ブレンダー、Nauterミキサー、バンバリーミキサー、混練ロールまたは押出機が使用されうる。いずれの場合も、あらゆる技術が使用され、特に限定されない。
【0049】
上記樹脂組成物中に、弾性率および振動減衰特性改良のために様々な充填剤が追加の成分として添加されうる。充填剤としては、グラスファイバー、ガラスフレーク、カーボンファイバー、ミルドファイバー、ウォラストナイトホイスカー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、タルク、マイカおよび別の無機材料が挙げられる。耐熱性有機充填剤、例えばアラミド繊維、ポリアリーレートファイバー、ポリベンゾチアゾールファイバー、およびアラミドパウダーもまた使用されうる。そのような成分を使用する場合、タルク充填剤およびグラファイト充填剤が好ましい。この成分の添加量は、好ましくは樹脂組成物の重量に対して1〜30wt%である。
【0050】
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれの成分を、ニーダー、例えばタンブラー、V型ブレンダー、Nautaミキサー、バンバリーミキサー、混練ロールまたは押出機、によって混合することによって製造されうる。より好ましくは、それぞれの成分を押出機、特に二軸押出機によって共に溶融し、混練する。
【0051】
アクリル酸樹脂:
好適なアクリル酸樹脂としては、ポリメチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートと1種類以上の別の成分とのコポリマーが挙げられる。そのようなコモノマーの例は、アクリル酸アルキルエステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、およびベンジルアクリレート、メタクリル酸アルキルエステル、例えばエチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、およびベンジルメタクリレート、およびそれらのコポリマーである。アクリル酸樹脂の混合物もまた使用されうる。ポリメチルメタクリレートが最も好ましいアクリル酸樹脂である。
【0052】
アクリル酸樹脂の分子量M(重量平均)は、好ましくは50,000〜2,000,000g/mol、より好ましくは60,000〜1,000,000g/mol、最も好ましくは70,000〜500,000g/mol、特に80,000〜300,000g/molである(光散乱によって測定。)。
【0053】
これらのアクリル酸樹脂を、上記ポリカーボネートとのブレンドで使用してもよい。この場合、アクリル酸樹脂の量は、組成物全体に対して好ましくは50wt%以下、より好ましくは20wt%以下、特に好ましくは10wt%以下である。
【0054】
ポリカーボネートとのブレンドにおいて、アクリル酸樹脂は、アクリル弾性材料であってもよい。この場合、必須成分としてのアクリレートゴム成分、メチルメタクリレート、C〜Cアルキル基を有するアルキルアクリレート、および必要に応じて、コポリマー成分としてそれらと共重合性のビニルモノマーで構成される。そのようなアクリル弾性材料中、メチルメタクリレートの量は、弾性材料100wt%中、15〜65wt%である。
【0055】
アクリレートゴムは、C〜C10アルキルアクリレートおよび、必要に応じて、それらと共重合性の成分として、スチレン、メチルメタクリレートまたはブタジエンを含む。
【0056】
〜C10アルキルアクリレートとして、2−エチルヘキシルアクリレートおよびn−ブチルアクリレートが好ましい。このアルキルアクリレートは、好ましくはアクリレートゴム100wt%中50wt%の量で含まれる。更に、好ましくは、アクリレートゴムは、少なくとも部分的に架橋されている。架橋に使用される架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレートおよびポリプロピレングリコールジアクリレートが挙げられる。好ましくはこれらの架橋剤0.01〜3wt%がアクリレートゴム中で使用される。
【0057】
アクリル弾性材料の好ましい形態として、アクリル弾性材料は、好ましくは、アクリレートゴム成分、メチルメタクリレート、C〜Cアルキル基を有するアルキルアクリレート、スチレンおよびそれらと共重合性のビニルモノマーを、必要に応じて複数の層で重合すると得られるコアシェル構造体および多層構造体である。このアクリル弾性材料はあらゆる既知の方法、例えば、ブロック重合、サスペンジョン重合、ブロック−サスペンジョン重合、溶液重合またはエマルジョン重合、によって製造されうる。多層構造体は、更に、多段階重合でグラフトベース上にグラフトされない成分も含みうる。
【0058】
これらの弾性アクリル酸樹脂は、上記ポリカーボネートとのブレンドで使用する場合、好ましくは全組成物の10wt%以下で使用される。より好ましくはそれらの含量は5wt%以下である。
【0059】
ポリスチレン樹脂:
本発明の様々な態様に好適な合成樹脂としては、スチレンのホモポリマー、スチレンコポリマーまたはスチレン熱可塑性エラストマーまたはブレンド、例えばポリスチレンとポリフェニレンオキシドとのブレンドが挙げられる。それらの材料はいくつかの形態で提供されるが、そのほとんどの部分はスチレン、イソプレンおよびブタジエンを含有するコポリマーを含む。コポリマーとしては、トリブロック、例えばS−B−S、S−I−S、S−EB−S、およびS−EP−S;交互ブロックコポリマー、例えば(S−I);分枝ブロックコポリマー、例えば(S−B)および(S−I)およびトリブロック/ジブロックブレンド(例えば、S−B−S/S−B)が挙げられる。
【0060】
これらのスチレン樹脂は、重合の既知のルールに従って、既知の手順によって製造されうる。スチレンポリマーは、例えば、Houben Weyl,Methods of Organic Chemistry,第4版,第XIV/1巻,761〜841頁,Georg Thieme−Verlag(1961)の方法によって製造されうる。それらは更に市場でも好適な形態で入手可能である。フリーラジカル手順が好ましいが、イオン重合手順もまた使用されうる。本発明によって使用されるポリマーの分子量Mは、通常2000ダルトン以上、好ましくは5000〜5,000,000ダルトン、特に好ましくは20,000〜200,000ダルトンである(光散乱によって測定;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第4版,第15巻,285〜387頁,Verlag Chemie 1978参照。)。
【0061】
ホモポリマーおよびコポリマーは既知の手順によって製造されうる(H.Rauch−Puntigam,Th.Volker,Acrylic and Methacrylic Compounds,Springer−Verlag 1967参照。)。原理的にはそれらをアニオン重合または基転移重合(更にO.W.Websterら,J.Am.Chem.Soc.,105,5706(1983)も参照。)によって製造することが可能であるが、製造の好ましい形態はフリーラジカル重合である。
【0062】
スチレン熱可塑性エラストマーの分子量M(重量平均)は一般的に2000ダルトン以上、一般的に10,000〜2,000,000ダルトン、好ましくは20,000〜200,000ダルトンである(光散乱によって測定。)。
【0063】
更に、アモルファスポリオレフィンの群からのポリマーもまた使用されうる。そのようなポリマーは、環状オレフィンの重合、環状オレフィンの開環重合、並びに特別の水素化ポリオレフィン、例えば水素化ポリスチレンベースポリマーから生じる。
【0064】
ポリシクロオレフィン樹脂:
環状オレフィンの好適なポリマーとしては、例えば、オレフィンおよびノルボルネン構造、例えばノルボルネンそれ自体、テトラシクロドデセン、ビニルノルボルネンまたはノルボルナジエンの重合生成物が挙げられる。好適なポリシクロオレフィン樹脂としては、更に、そのようなノルボルネン構造を有するオレフィンとオレフィンとのコポリマー、例えばエチレンとノルボルネンとのコポリマーおよびエチレンとテトラシクロドデセンとのコポリマーも挙げられる。そのような生成物は、例えば、特開昭61−292601、特開昭60−26024、特開昭62−19801および特開昭62−19802並びにEP−A 317 262およびEP−A 532 337に記述されている(それぞれの内容を全て参照することによって本明細書中に組み込む。)。
【0065】
水素化ポリスチレン樹脂:
好適な水素化ポリスチレンベースポリマーは、直鎖または星形分枝構造の水素化ポリスチレンベースポリマーである。直鎖タイプは、例えば、特公平07−114030に開示されており、星形分枝構造を有するポリマーは、例えば、WO 0148031に開示されている。
【0066】
支持体樹脂として、上記ポリマーのブレンドも使用されうる。好適な添加剤、例えば熱安定剤、離型剤など並びに充填剤もまたアクリル酸樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂および水素化ポリスチレン樹脂に添加されうる。
【0067】
ボンダー材料:
ボンダー材料は、一般的に、紫外線硬化性でありスピンコート可能な樹脂であって、バインダーおよび反応性シンナーおよび添加剤、例えば紫外線開始剤または溶媒で構成される樹脂である。典型的な光開始剤(紫外線開始剤)は、α−ヒドロキシケトン(Irgacure 184(登録商標)、Ciba)、(Darocur 1173(登録商標)、Ciba)またはアシルホスフィン(Darocur TPO(登録商標)、Ciba)である。
【0068】
バインダーは、例えば、ウレタンアクリレート、例えばBayer MaterialScience AG製のDesmolux(登録商標)XP 2513、Desmolux(登録商標)U 100、Desmolux(登録商標)U 200、Desmolux(登録商標)XP 2614もしくはDesmolux(登録商標)VP LS 2220または アミン変性ポリエーテルアクリレート、例えばBayer MaterialScience AG製のDesmolux(登録商標)VP LS 2299またはポリエステルアクリレート、例えばBayer MaterialScience AG製のDesmolux(登録商標)LP WDJ 1602のクラスから選択されうる。
【0069】
ウレタンアクリレートは、アルコールと(メタ)アクリロイル基を含むジ−もしくはポリイソシアネートとから合成されうる。ウレタンアクリレートの合成方法は既知であり、例えばDE−A−1 644 798、DE−A 2 115 373またはDE−A−2 737 406に記述されている。(メタ)アクリロイル基を含むアルコールは、アクリル酸またはメタクリル酸と二官能性アルコールとのエステルであって、1つのフリーヒドロキシル基を含むエステル、例えば2−ヒドロキシエチル−、2もしくは3−ヒドロキシプロピルまたは2−、3−、4−、ヒドロキシブチル−(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物である。更に、単官能性(メタ)アクリロイル基を含むアルコールを使用しても、n官能性アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化であって、nが2〜4の整数もしくは平均値、好ましくは3になるような異種アルコールの混合物をアルコールとして使用していてもよく、上記アルコール1モルあたり最も好ましくは(n−1)molの(メタ)アクリル酸を使用するエステル化によって得られるアルコールで主に構成される生成物を使用してもよい。
【0070】
更に、単官能性(メタ)アクリロイル基を含むアルコールとε−カプロラクトンとの生成物を使用してもよい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとからの生成物が好ましい。
【0071】
ジイソシアネートまたはポリイソシアネートとして、原則として全ての(環状)脂肪族、脂肪族および芳香族構造体が好適であり、好ましい(環状)脂肪族構造体は、例えばヘキサメチレン−ジ−イソシアネートまたはイソホロンジ−イソシアネート、トリ−メチルヘキサ−メチレンジ−イソシアネート、ジ−(イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはそれらのウレタン−イソシアヌレート−、アロファネート−、ビウレット−、ウレトジオン−構造を有する誘導体およびそれらの混合物である。
【0072】
好適なアミン変性ポリエーテルアクリレートは原則として既知であり、メタクリル酸と3官能性アルコールまたはそれらの混合物とのエステル化および次の第1級アミンとの反応によって製造されうる。これらのアルコールまたはそれらの混合物には、例えばアルコキシル化oグリセロールまたはトリメチロールプロパンの低分子量生成物、例えばエチレンオキシドとトリメチロールプロパンとのOH価550mgKOH/gの反応生成物、が属する。アルコール1molあたり、好ましくは0.7〜0.9molの(メタクリル)酸を使用する。次の第1級アミンとの反応に関して、モノアルキルアミンおよびヒドロキシアルキルアミン、例えばヒドロキシエチルアミン、が好適である。使用されるモノアルキルアミンの量は、モノアルキルアミンと(メタ)アクリル酸二重結合とのモル比0.005:1〜0.4:1、好ましくは0.01:1〜0.3:1と同等である。
【0073】
好適なポリエステルアクリレートは、原理的に既知の共沸エステル化方法によって合成される低粘度生成物である。α,β−エチレン性不飽和炭酸、アルコキシル化ポリエーテルトリオール、特にプロポキシル化トリオールおよびアクリル酸、で構成されるポリエステルアクリレートが特に好適であり、それによるOH基対カルボキシル基の比1.2〜1.6が好ましい。
【0074】
反応性シンナーは、エトキシル化アルキルアクリレート、例えば2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート(Sartomer SR 256(登録商標)、Sartomer)、およびtアクリル酸の単官能性エステル、例えばエトキシル化フェニルアクリレート、例えばエトキシル化(3)フェノールモノアクリレート(Photomer 4039 F(登録商標)、Cognis)、アルキルアクリレート、例えばラウリル−またはステアリルアクリレート、脂環式アクリル酸エステル、例えばイソボルニルアクリレートおよび複素環式アクリル酸エステル、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレートのクラスから選択されうる。
【0075】
光透過層:
光透過層は、一般的に、405nmにおいて測定される屈折率の実部が少なくとも1.41である、紫外線硬化性でありスピンコート可能な樹脂である。この樹脂は、バインダーおよび反応性シンナー分子および別の添加剤、例えば紫外線開始剤または溶媒で構成されうる。典型的な光開始剤(紫外線開始剤)は、α−ヒドロキシケトン、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、Ciba)もしくは例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Darocur 1173(登録商標)、Ciba)、またはモノアシルホスフィン、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド(Darocur(登録商標)TPO、Ciba)である。バインダー分子は、例えば、ウレタンアクリレートまたはポリエーテルアクリレートのクラスから選択されうる。反応性シンナーは、エトキシル化アルキルアクリレート、エトキシル化フェニルアクリレート、脂環式アクリル酸エステルおよび複素環式アクリル酸エステルのクラスから選択されうる。
【0076】
高屈折率層コーティングA(HRI)としての光透過層:
高屈折率光透過層(コーティングA)は、キャスティング溶液Aから得られ、キャスティング溶液Aは支持体(S)または情報および記録層(B)に塗布され、架橋されている。
【0077】
成分A(キャスティング溶液)
【0078】
本発明の態様によるキャスティング溶液Aは、下記成分を含む:
A1:ナノ粒子および水と少なくとも1種類の有機溶媒との混合物を含むサスペンジョン、
A2:バインダー
および要すれば
A3:別の添加剤
【0079】
本明細書中で使用されるナノ粒子は、平均粒度(d50)が100nm以下、好ましくは0.5〜50nm、特に好ましくは1〜40nm、より特に好ましくは5〜30nmの粒子であると理解される。更に、好ましいナノ粒子のd90値は、200nm以下、特に100nm以下、特に好ましくは40nm以下、より特に好ましくは30nm以下である。ナノ粒子は、好ましくは、サスペンジョン中の単分散形態である。平均粒度d50は、その上下にそれぞれ50wt%の粒子が存在する直径である。d90値は、その下に90wt%の粒子が存在する直径である。レーザー光散乱または、好ましくは、分析超遠心分離(AUC)の使用が粒度の測定および単分散性の証明に好適である。AUCは、例えば“Particle Characterization”,Part.Part.Syst.Charact.,1995,12,148〜157に記述されているように、当業者に既知である。
【0080】
成分A1(ナノ粒子および水と少なくとも1種類の有機溶媒との混合物を含むサスペンジョン)の製造には、Al、ZrO、ZnO、Y、SnO、SiO、CeO、Ta、Si、Nb、NbO、HfOまたはTiOのナノ粒子の水性サスペンジョンが好適であり、CeOナノ粒子の水性サスペンジョンが特に好適である。特に好ましくは、ナノ粒子の水性サスペンジョンは、1種類以上の酸、例えばカルボン酸RC(O)OH(式中、R=H、C〜C18−アルキルであって任意にハロゲン、好ましくは塩素および/もしくは臭素によって置換されていてもよいもの、またはC〜C−シクロアルキル、C〜C20−アリールまたはC〜C12−アラルキルであってそれぞれ任意にC〜C−アルキルおよび/もしくはハロゲン、好ましくは塩素、臭素によって置換されていてもよいものである。)を含む。Rは、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはフェニルであり、特に好ましくはエチルである。ナノ粒子サスペンジョンは、更に、酸として、鉱酸、例えば硝酸、塩化水素酸または硫酸も含みうる。ナノ粒子の水性サスペンジョンは、酸および水の重量部の合計に対して好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部の酸を含む。例えば、米国のNyacol NanoTechn.,Inc.製のナノ粒子サスペンジョンNanoCeria(登録商標)CeO−ACT(酢酸で安定化されたCeOナノ粒子の水性サスペンジョン、pH=3.0)およびCeO−NIT(硝酸で安定化されたCeOナノ粒子の水性サスペンジョン、pH=1.5)が好適である。
【0081】
これらの水性サスペンジョン由来の水の中には少なくとも1種類の有機溶媒によって置換されるものもある。この部分溶媒交換は、蒸留によってまたは膜濾過によって、好ましくは限外濾過によって、例えば「クロスフロー(cross−flow)」プロセスに従って、行われる。クロスフロー限外濾過は、工業規模の限外濾過の形態(M.Mulder:Basic Principles of Membrane Technology,Kluwer Acad.Publ.,1996年,第1版)であって、濾過される溶液(供給溶液)はこの膜を接線方向に通って流れる。この溶媒交換に、好ましくは、アルコール、ケトン、ジケトン、環状エーテル、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドおよびプロピレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種類の溶媒が使用される。上記群からの少なくとも2種類の溶媒の溶媒混合物の使用が好ましく、1−メトキシ−2−プロパノールとジアセトンアルコールとの溶媒混合物が特に好ましく使用される。1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)とジアセトンアルコール(DAA)との、好ましくは95:5〜30:70、特に好ましくは90:10〜50:50の比の溶媒混合物の使用が特に好ましい。水は、使用される溶媒中に、好ましくは20wt.%以下の量で、より好ましくは5〜15wt.%の量で存在しうる。
【0082】
本発明の別の態様において、ナノ粒子のサスペンジョンは、上記有機溶媒の少なくとも1種類における溶媒交換によって製造され、次に別の溶媒が添加され、この別の溶媒は、アルコール、ケトン、ジケトン、環状エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサン、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ソルケタール(solketal)、プロピレンカーボネートおよびアルキルアセテート、例えばブチルアセテート、からなる群から選択される。この態様においても、水は使用される溶媒中に、好ましくは20wt.%以下の量で、より好ましくは5〜15wt.%の量で存在してもよい。
【0083】
ポリエーテルポリスルホンで作られた限外濾過膜であって、好ましくはカットオフ(cut−off)が200,000D以下、好ましくは150,000D以下、特に好ましくは100,000D以下である限外濾過膜の使用が好ましい。膜のカットオフは、下記のように定義される:対応サイズ(例えば200,000以上)の分子が保持され、よりサイズが小さい分子および粒子が通過できる(“Basic Principles of Membrane Technology”,M.Mulder,Kluwer Academic Publishers,1996,第1版)。そのような限外濾過膜は、高い流量においてもナノ粒子を保持し、溶媒は通過する。本発明によると、溶媒交換は、連続濾過によって行われ、通過する水は対応量の溶媒または溶媒混合物によって置換される。ポリマー膜の代わりに、溶媒交換の処理工程中にセラミック膜を使用することもまた可能である。
【0084】
本発明のそのような態様による方法は、1種類の上記有機溶媒または溶媒混合物による水の置換が生じるナノ粒子サスペンジョン(成分A1)中、5wt.%の限界値を下回らないことを特徴とする。好ましくは、有機溶媒または溶媒混合物による水の置換を、生じるナノ粒子サスペンジョン(成分A1)の含水量が5〜50wt.%、好ましくは7〜30wt.%、特に好ましくは10〜20wt.%になるように行う。生じるナノ粒子サスペンジョンは、好ましくは1〜50wt.%、より好ましくは5〜40wt.%、特に好ましくは15〜35wt.%のナノ粒子を含む(以下、「ナノ粒子固形分」という。)。
【0085】
含水量が5wt.%よりも低くなるようにメンブランセル(membrane cell)においてナノ粒子サスペンジョンの溶媒交換を長く行うと、粒子の凝集が起こり、生じるコーティングが単分散性および高い透明度の条件に合わない。他方、有機ベースのナノ粒子サスペンジョン中の含水量が50wt.%よりも高いと、次の工程で使用されるバインダーが含水サスペンジョン中に溶解せずクリアな溶液を生じないので、これらのいずれの場合も、すなわち、溶解せずクリアな溶液を生じなかった凝集ナノ粒子またはバインダーを用いると、生じるコーティングは高い屈折率nおよび高い透明度に関する同時の要求を満たさない。
【0086】
バインダー(成分A2)として、非反応性熱乾燥熱可塑性樹脂、例えばポリメチルメタクリレート(Elvacite(登録商標)、Tennants)またはポリビニルアセテート(Mowilith 30(登録商標)、Synthomer)と、反応性モノマー成分であって、コーティング後に化学反応によってまたは光化学反応によって反応して高架橋ポリマーマトリクスを生じる反応性モノマー成分の両方が使用されうる。例えば、架橋は、紫外線照射によって行われる。紫外線照射による架橋は、耐引掻き性の増加の観点から特に好ましい。反応性成分は、好ましくは、例えばP.G.Garratt in“Strahlenhaertung”1996,C.Vincentz Vlg.,ハノファーに記述されているような紫外線架橋製アクリレートシステムである。バインダー(成分A2)は、好ましくは、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンおよびアクリレートからなる群の少なくとも1つから選択される。バインダー(成分A2)は、特に好ましくは、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTTA)、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌレートトリアクリレートおよびヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0087】
キャスティング溶液中で別の添加剤として使用される成分(成分A3)は、好ましくは、光開始剤および熱開始剤からなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤である。コーティング溶液の成分の重量部の合計に対して、3重量部以下、好ましくは0.05〜1重量部、特に好ましくは0.1〜0.5重量部の添加剤(成分A3)を使用する。典型的な光開始剤(紫外線開始剤)は、α−ヒドロキシケトン(Irgacure(登録商標)184、Ciba)またはモノアシルホスフィン(Darocure(登録商標)TPO、Ciba)である。紫外線重合を開始するのに要求されるエネルギー(紫外線照射のエネルギー)の量は、被覆面1cmあたり約0.5〜4J/cm、特に好ましくは2.0〜3.0J/cmである。いわゆるコーティング添加剤、例えば Byk/Altana(ドイツ46483ヴェーゼル)によって商品名BYK、例えばBYR 344(登録商標)、で供給されているコーティング添加剤もまた別の添加剤として好適である。
【0088】
本発明のこの態様による高屈折率コーティング用のキャスティング溶液Aは、少なくとも1種類のバインダー(成分A2)および要すれば別の添加剤(成分A3)を、有機溶媒または溶媒混合物であって、水を含んでいてもよいものの中に溶解することによって製造されうる。生じる溶液(以下、バインダー溶液という。)を成分A1と混合し、要すれば濾過および脱ガスする。好ましい態様において、成分A1は、バインダー溶液と同じ有機溶媒または溶媒混合物を含む。
【0089】
キャスティング溶液Aの組成は、好ましくは下記の通りである:
ナノ粒子固形分、12〜30重量部、好ましくは13〜25重量部、特に好ましくは14〜19重量部、
バインダー、2〜8重量部、好ましくは2.5〜5重量部、
別の添加剤(成分A3)、0〜3重量部、好ましくは0.05〜1重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部、
水、7〜28重量部、好ましくは15〜27重量部、特に好ましくは20〜26重量部、
有機溶媒、32〜79重量部、好ましくは42〜70重量部、特に好ましくは50〜63重量部
(成分の重量部の合計は100に標準化されている。)
【0090】
キャスティング溶液Aの固形分は、一般的に、10〜50wt.%、好ましくは14〜28wt.%である。キャスティング溶液Aの固形分は、成分A2、A3およびナノ粒子固形分の合計である。キャスティング溶液中のバインダー(成分A2)とナノ粒子固形分との比は、好ましくは40:60〜7:93、特に好ましくは26:74〜12:88である。
【0091】
コーティングAの層厚は、一般的に、1nm〜3000nm、好ましくは200nm〜2000nm、特に好ましくは500nm〜1500nmである。層厚は、特にスピンコーティング法の場合、キャスティング溶液の固形分によって調節されうる。高いコーティングの層厚が望ましい場合、固形分の高いキャスティング溶液を使用し、薄いコーティングが望ましい場合、固形分の低いキャスティング溶液を使用する。
【0092】
被覆製品のコーティングAの特性を以下のように測定した。複素屈折率の実部nおよび虚部kを波長400〜410nm(すなわち、青色レーザーの波長範囲)において測定した。AFM(原子間力顕微鏡)によって表面粗度をR値として測定した。耐引掻き性の測定に関して、半径50μmのチップを用いてダイヤモンド針をコーティング上で前進速度1.5cm/秒かつ適用重量40gで動かし、生じる掻き傷の深さを測定した。それぞれの測定方法の詳細を被覆製品の製造および試験に関する段落に示す。
【0093】
支持体S:
支持体(S)は、上記ポリマー樹脂から下記方法によって製造されるディスク型物品を備える。少なくとも1つの記録層および1つの光透過層をその支持体上に順番に適用することによって光学記録媒体を製造する。
【0094】
光学記録媒体用支持体の製造方法:
上記樹脂から光学記録媒体用の支持体を製造するために、光学記録媒体に要求される仕様を満たすピットおよびグルーブおよび表面精度を有するスタンパーを備える射出成形マシーン(射出圧縮成形マシーンを含む。)を使用して光ディスク支持体を射出成形によって製造する。ディスク支持体の厚さは0.3〜2.0mmである。この射出成形マシーンは一般的に使用されるマシーンであってもよいが、好ましくはカーバイドの生成を抑制し、かつ、ディスク支持体の信頼性を改良するためにシリンダーおよびスクリューが樹脂に対して低接着性、耐腐食性かつ耐摩耗性の材料で作られたマシーンである。成形工程の環境は、好ましくは本発明の対象に関してできるだけクリーンである。成形される材料を完全に乾燥して水を除去すること、および溶融樹脂の分解を引き起こす残留物を防ぐことも重要である。
【0095】
本発明の光ディスク支持体用樹脂は、好ましくは十分高い流動性を有し、この十分高い流動性は射出成形または射出圧縮成形中の転写性に有利である。
【0096】
光学記録媒体は、少なくとも反射フィルムを本発明の支持体の少なくとも片側に形成することによって製造されうる。反射フィルムの材料は、元素金属または複合金属である。AlもしくはAuを単独で使用するか、または好ましくはTiを0.5〜10wt%、好ましくは3.0〜10wt%の量で含むAl合金もしくはCrを0.5〜10wt%の量で含むAl合金を使用する。反射フィルムは、物理蒸着、イオンビームスパッタリング、DCスパッタリングまたはRFスパッタリングによって生成されうる。この金属薄膜(反射層)だけで本発明の事前記録光学記録媒体に十分であるが、この反射層に加えて、記録層(例えば、書換可能または追記型および追記型光学記録媒体の場合、相変化フィルムおよび染料、光磁気光学記録媒体の場合、光磁気記録フィルム)および光透過層を形成して本発明の書換可能または追記型光学記録媒体を得てもよい。
【0097】
相変化フィルム記録材料層は、カルコゲン単独またはカルコゲン化合物から作られる。特に、Te、Seまたはカルコゲナイトベースの材料、例えばGe−Sb−Te、Ge−Te、In−Sb−Te、In−Se−Te−Ag、In−Se、In−Se−Tl−Co、In−Sb−Se、BiTe、BiSe、SbSeまたはSbTeが使用されうる。
【0098】
カー効果またはファラデー効果を含む光磁気特性を有する垂直に磁化されたフィルム、例えばTb−Fe−Coのアモルファス合金薄膜が光磁気記録フィルム層として使用される。
【0099】
光透過層は、記録層上に形成される。光透過層は、レーザー光を透過させる材料で作られ、光透過層の概要の段落および高屈折率層コーティング(HRI)としての光透過層の概要の段落により詳細に記述されている。
【0100】
光透過層の製造方法は、光透過層の製造方法の段落および高屈折率層としての光透過層の製造方法の段落により詳細に記述されている。更に、光透過層の厚さは、球面収差および色収差を抑制するために1nm〜3000nm、好ましくは200nm〜2000nm、特に好ましくは500〜1500nmに制限される。
【0101】
本発明の光学記録媒体のベーシックな構成を上に記述した。誘電層を上記構成に加えて光学記録媒体の光学特性および熱特性を制御してもよい。この場合、光反射層、第1誘電層、記録層、第2誘電層および光透過層が支持体上に上記順序で形成されうる。加えて、上記本発明の光学記録媒体は、上記さまざまな層で構成される支持体上1つの層スタックだけに限定されない。本発明の光学記録媒体は、更に光透過層にも使用される材料で作られるスペーサー層によってそれぞれ離される多層スタックも有しうる。
【0102】
単一成分射出成形プロセス(1−K成形):
以下に、本発明による態様による光学記録媒体における使用に好適な標準1−K成形支持体の製造を記述する。この方法は実施例部分で使用され、支持体がヤング率EとQファクターの要求を満たす限り本発明の範囲を限定しない。直径120mmかつ厚さ1.2mmのディスク支持体を、金型AWM2313およびDVD−ROMスタンパーを備えるArburg Alldiscを使用してそれぞれのペレットから射出成形する。代わりに、サンドイッチプレート、Philips CD−MouldおよびDVD−ROMスタンパーを備えるArburg 370 U 700 30/30 2−K射出成形マシーンを使用する。そのために変性ランナーを金型に使用してサンドイッチプレートに適合させる。1−K成形支持体のために、マシーンに同一樹脂のペレットを供給する。
【0103】
それぞれの光学記録媒体を製造するために、反射層(Ag100nm)を物理蒸着(Leybold A1100)によってまたはDCスパッタリング(Reuter LP 800)によって1−K成形支持体上に形成する。その反射層上にHRIタイプの光透過層を上記方法に従って形成する。
【0104】
ASTM E 756−05に従うヤング率EおよびクオリティファクターQの測定用試験ビーム(test beam)を形成するために、ビームを、それぞれの光学記録媒体の支持体、または記録層スタックでカバーされた支持体または記録層スタックと光透過層とでカバーされた支持体から切り取るか、または本発明の支持体に使用されるそれぞれの樹脂からの試験ビームの直接1−K射出成形による。
【0105】
2成分サンドイッチ射出成形プロセス(2−K成形):
以下に、本発明の態様による光学記録媒体における使用に好適な標準2−Kサンドイッチ成形支持体の製造を記述する。この方法は、実施例部分で使用され、支持体がヤング率EおよびQファクターの要求を満たす場合、本発明の範囲を限定しない。直径120mmかつ厚さ1.2mmのディスク支持体をそれぞれのペレットから、サンドイッチプレート、Philips CD−MouldおよびDVD−ROMスタンパーを備えるArburg 370 U 700 30/30 2−K射出成形マシーンを使用して射出成形する。そのために変性ランナーを金型に使用してサンドイッチプレートに適合させる。2−Kサンドイッチ成形支持体に、1種類の樹脂でできたコア層および他の樹脂でできた2つのスキン層を有する3層サンドイッチ支持体を形成させる異種樹脂のペレットをマシーンに供給する。コア層の厚さとスキン層の厚さとの比は、主に計量添加される材料の相対量によって制御される。第1ショットにおいて、スキン層樹脂を金型のキャビティに射出し、第2ショットにおいて、コア層を金型のキャビティに射出し、かつ、第3ショットにおいて、スプルーを再度スキン層材料でシールする。均質なコア層の厚さを達成するために、樹脂および処理温度を、スキンが流動性の高い樹脂によって形成されるように選択することが好ましい。
【0106】
それぞれの光学記録媒体を形成するためおよびヤング率EおよびクオリティファクターQ測定用の試験ビームを切り取るために、試験ビームの直接1−K射出成形以外、単一成分射出成形プロセス(1−K成形)に記述されているのと同じ手順を使用する。
【0107】
紫外線結合プロセス(紫外線結合):
以下に、本発明の態様による光学記録媒体における使用に好適な標準紫外線結合支持体の製造を記述する。この方法は実施例部分において使用され、支持体がヤング率EおよびQファクターの要求を満たす場合、本発明の範囲を制限しない。直径120mmかつ厚さ0.6mmのディスクを、Axxicon moulds製のST−mouldsおよびDVD+RまたはDVD−Rスタンパーを備えるSingulus Streamline II DVD−Rに取り付けられたSingulus E Mould DVD−Rマシーンを使用してそれぞれのペレットから射出成形する。紫外線結合支持体を、2つの厚さ0.6mmのディスクから、下流の染料ディスペンスが奪活され、かつ、金属化が奪活されているが、紫外線結合が活性化されている上記Singulus Streamline II DVD−Rのプロセスを使用することによって製造する。そのために紫外線結合材料をSingulus Streamline II DVD−Rボンダータンクに供給する。示される結合層厚に到達するように下記セッティングを使用することによってスピンスタンドにおける紫外線ボンダー分散および紫外線硬化を行う:
・結合層厚: 〜90μm 〜40μm
・回転速度1: 1800RPM 4500RPM
・回転速度2: 2600RPM 6500RPM
・ボンダーの添加量: 1.2gr 0.6gr
・照明時間: 1.5秒 0.9秒
・ベース出力: 1.8kW 1.8kW
・最大出力: 4.0kW 4.0kW
・タンク温度: 34℃ 34℃
・ニードル温度: 34℃ 34℃
【0108】
代わりに、紫外線結合支持体を、2つの厚さ0.6mmのディスクから、実験室のスピンコーター(Karl Suss CT62)であって、1つの0.6mmディスクをクランプし、紫外線結合材料をスリンジ(sringe)によって既にクランプされているディスクの内周に低い回転速度200RPMにおいて分配するスピンコーターを使用することによって製造してもよい。第2の0.6mmディスクを、クランプされた第1ディスク上に置き、次にスピンコーターを1500RPMで8秒間回転させることによって紫外線結合材料をこれらの2つのディスクの間に広げる。
【0109】
ヤング率EおよびクオリティファクターQ測定のためにそれぞれの光学記録媒体を形成し、試験ビームを切り取るために、試験ビームの直接1−K射出成形以外、単一成分射出成形プロセス(1−K成形)に記述しているのと同じ手順を使用する。
【0110】
光透過層の製造方法:
樹脂をスピンコーティングによって支持体の表面または情報および記録層の表面に塗布する。次の樹脂の架橋は、例えば紫外線暴露装置において行われる。このために、被覆支持体をコンベヤベルト上に置き、これを速度約1m/1分において紫外線光源(Hgランプ、80W)を通過させて動かす。このプロセスを更に繰り返して、1cmあたりの照射エネルギーを左右してもよい。少なくとも1J/cm、好ましくは2〜10J/cmの照射量が好ましい。次に被覆支持体に、例えば5〜30分間、温度60℃〜120℃において、好ましくは熱風を用いて、熱による後処理をしてもよい。
【0111】
高屈折率層(HRI)としての光透過層の製造方法:
コーティング(A)は下記のように製造されうる:
(i) 水性ナノ粒子サスペンジョン中に含まれる水のうちいくらかを少なくとも1種類の有機溶媒によって置換して生じるナノ粒子サスペンジョン(成分A1)の含水量を5〜50wt.%にし、
(ii) 少なくとも1種類のバインダー(成分A2)をナノ粒子サスペンジョン(成分A1)に添加してキャスティング溶液(A)を生じ、
(iii) キャスティング溶液(A)を支持体(S)または情報および記録層(B)に塗布し、
(iv) キャスティング溶液(A)を熱またはフォトケミカル法によって架橋させる。
【0112】
好ましくは、工程(iii)の後に、残留溶媒をキャスティング溶液(A)で被覆された支持体(S)から完全にまたは部分的に除去し、かつ/または、熱による処理後を工程(iv)の後に得られるコーティングに適用する。
【0113】
キャスティング溶液Aを、要すれば5分以下、好ましくは10〜60秒間、超音波で処理し、かつ/またはフィルターを通して、好ましくは0.2μm膜(例えばRCメンブラン、Sartorius)を用いて、濾過する。ナノ粒子凝集体が存在する場合、ナノ粒子凝集体を破壊するために超音波処理を利用してもよい。
【0114】
キャスティング溶液を支持体の表面または情報および記録層の表面に塗布する。過剰キャスティング溶液の、好ましくはスピンによる、除去後、キャスティング溶液の残留物が支持体上に残り、この残留物の厚さはキャスティング溶液の固形分に依存し、かつ、スピンコーティングの場合、スピン条件に依存する。任意に、キャスティング溶液中に含まれる溶媒のいくつかまたは全てを、好ましくは熱処理によって、除去してもよい。次のキャスティング溶液、または残留物の架橋は、熱による方法(例えば熱風を使用する。)またはフォトケミカル方法(例えば紫外線)によって行われる。フォトケミカル架橋は、例えば、紫外線暴露装置において行われうる。このために、被覆支持体はコンベヤベルト上に置かれ、速度約1m/分において紫外線光源(Hgランプ、80W)を通過して動かされる。このプロセスを更に繰り返して、1cmあたりの照射エネルギーを左右してもよい。少なくとも1J/cm、好ましくは2〜10J/cmの照射量が好ましい。次に被覆支持体に、例えば5〜30分間、温度60℃〜120℃において、好ましくは熱風を用いて、熱による後処理を行ってもよい。
【0115】
従って、本発明は、更に、下記工程:
(i) 水性ナノ粒子サスペンジョンから出発して、水性ナノ粒子サスペンジョン中に存在する水を除去し、同時に少なくとも1種類の有機溶媒によって置換してナノ粒子サスペンジョンの含水量を5〜50wt.%にする、少なくとも1種類の有機溶媒中の単分散ナノ粒子サスペンジョンの製造工程、
(ii) 少なくとも1種類のバインダー(成分A2)および要すれば別の添加剤(成分A3)をナノ粒子サスペンジョン(成分A1)に添加してキャスティング溶液(A)を生じる工程、
(iii) 工程(ii)で得られるキャスティング溶液を支持体または情報および記録層(B)に塗布する工程、
(iv) 要すればキャスティング溶液中に含まれる溶媒のいくらかまたは全てを、好ましくは熱処理によって、除去して支持体上に残留物を生じる工程、
(v) キャスティング溶液または残留物を熱による方法またはフォトケミカル方法によって架橋する工程、並びに
(vi) 要すればコーティングを、好ましくは60〜120℃において、熱処理する工程
を包含する、光透過層の製造方法も提供する。
【0116】
試験手順の説明:
【0117】
1.ヤング率EおよびクオリティファクターQの測定
周波数領域約10Hz〜10KHzにおける材料のヤング率Eおよび減衰に関連するファクターQ(クオリティファクター)を測定するために、ASTM E 756−05に記述されているのと同様の構成(set up)(図1)を使用する。この測定原理は、注目されている材料の振動ビームの共鳴周波数fの評価ベースである。共鳴周波数を起こすために、ビームの片側をピエゾ振動子(Piezo−shaker)にクランプする。このピエゾ振動子は1mHzから10KHzまで広がるアナログホワイトノイズ信号によって駆動する。その励振に対するビーム応答、例えばピエゾ振動子にクランプされているビームの末端における励振の周波数に対する速度に標準化された、レーザドップラ振動計(LDV)で測定されるピエゾ振動子にクランプされていないビームの先端における周波数に対する速度、を記録する。この応答曲線から、EおよびQを以下のように計算する:

(E =ビーム材料のヤング率(Pa)、
=モードnに対する共鳴周波数(Hz)、
Δf=モードnの半値幅における全帯域幅(FWHM)(Hz)、
=クランプフリー(均一)ビームのモードnに関する係数、
H =振動方向におけるビームの厚さ(メートル)、
l =ビームの長さ(メートル)、
n =モード数:1、2、3、
Q =ビーム材料のクオリティファクター(無次元)、
ρ =ビームの質量密度(kg/m))
【0118】
例えば、ビームは、上記手順に従って製造されたディスクから切り取られるかまたは射出成形される。この説明は、ビームの製造方法を限定せず、少なくともビームの厚さの方向でみられる層構造は同じである。ビームの幅Wは、0.013mになるように選択され、長さlは、共鳴周波数が10Hz〜10kHzの測定周波数領域によく合うように選択される。2000HzにおけるEおよびQの値は、2000Hzよりも下の測定fと2000Hzよりも上の測定fn+1とにおいて式1および式2から導き出されるそれぞれの値を使用する直線補間によって計算される。
【0119】
2.AFMを用いるピットの高さの測定
ピットの高さを、原子間力顕微鏡によってタッピングモードで測定した。
【0120】
3.AFMを用いる表面粗度
原子間力顕微鏡によってASTM E−42.14 STM/AFMに従ってタッピングモードで測定される表面粗度をRで示す。
【0121】
4.質量密度
ディスクから切り取られたサンプルの質量密度ρを、Mettler密度キットMettler AT 250 H66765を用いて、室温において浸液としてエタノールを使用して測定した。または代わりに幅W、高さHおよび長さlが既知のディスクの方形片をこのディスクから切り取った。はかり(例えばMettler AT 250)を用いてディスクの方形片の質量mを検量し、ρ=m/(l・H・W)によってρを計算した。
【0122】
5.ボンダー(bonder)の厚さの測定
2つのハーフディスクの厚さdおよびdを、DVD支持体モードにおいてSchenk Prometheus 140オフラインスキャナを用いて測定した。結合ディスクの全厚dを、CD支持体モードにおいてSchenk Prometheus 140オフラインスキャナを用いて測定した。これらの厚さからボンダーの厚さd
=d−(d+d) 式3
によって計算した。
【0123】
6.コア層厚dおよびスキン層厚dS1およびdS2の測定
2つのスキン層の厚さdS1およびdS2並びにコア層の厚さdを、ディスクのミクロトーム処理切片の断面に対して立体顕微鏡によって測定した。
【0124】
7.傾斜測定
ディスクの傾斜をSchenk Prometheus 140オフラインスキャナを用いて測定した。
【0125】
8.複素屈折率n=n+ikの測定
コーティングの複素屈折率nの実部nおよび複素屈折率の虚部k(以下、吸光係数kともいう。)は、その透過および反射スペクトルから得られる。これらのスペクトルを得るために、厚さ約100〜300nmのコーティングのフィルムを希釈溶液からスピンコーティングによって石英ガラスキャリアに塗布した。この層構造の透過および反射スペクトルを、STEAG ETA−Optik製の分光計CD−Measurement System ETA−RTによって測定し、次にコーティングの層厚およびnおよびkのスペクトル依存性を測定透過率および反射スペクトルに適合させる。この適合は、分光計の内部ソフトウェアを使用して行われ、これは予めブランク測定において測定された石英ガラス支持体のnおよびkのスペクトル依存性を必要とする。kは、以下のように光強度の減衰定数αに関連する

(式中、λは光の波長である。)。
【0126】
9.耐引掻き性の測定
ディスク支持体上のコーティングの耐引掻き性を測定するために、被覆支持体の半径方向に、内側から外側へ、半径50μmのチップを有するダイヤモンド針を使用して前進速度1.5cm/秒かつ適用重量40gで掻き傷をつける。Tencor製のAlpha Step 500段差計を使用して掻き傷の深さを測定する。この掻き傷の深さを、耐引掻き性の尺度とする。掻き傷の深さの小さな値は、対応コーティングの高い耐引掻き性を意味する。
【0127】
10.コーティング溶液の含水量の測定
コーティング溶液の含水量をKarl Fischerの方法によって測定する。
【0128】
11.光透過層の厚さの測定
1nm〜1500nmの厚さ範囲に関して、光透過層を、本発明の光学記録媒体の支持体に塗布するのと同じ方法で、ブランクスタンパー(ピットもグルーブも存在しない。)を用いて成形された透明BPA−ポリカーボネートCD−支持体に塗布する。この層構造の透過および反射スペクトルを、STEAG ETA−Optik製の分光計CD−Measurement System ETA−RTによって測定し、次にコーティングの層厚を測定透過および反射スペクトルに適合させる。この適合は、分光計の内部ソフトウェアを使用して行われ、これはブランク測定で予め決定されたポリカーボネート支持体のnおよびkのスペクトル依存性と複素屈折率n=n+ikの測定の説明に従って決定された光透過層のnおよびkとを要求する。厚さ1500nm〜150000nmに関しては、モジュール「ETA−DVR Measuring System for Blu−ray/Digital Video Recording(DVR)Disks」を有するCD−Measurement System ETA−RTによって、光学記録媒体の支持体に塗布された光透過層の厚さを測定する。そのためには複素屈折率n=n+ikの測定の説明に従って測定された光透過層の複素屈折率の実部nが必要とされる。
【0129】
下記非限定の実施例を参照して本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0130】
Ag100nmの反射層(B)を、塗布する場合、DCスパッタリングによって支持体(S)上に生じる(Reuter LP 800)。
【0131】
光透過層を、支持体(S)上の、塗布される場合、反射層のトップに、下記成分および手順から得た:
【0132】
成分A.0
セリアCeO−ACT(登録商標):CeOの水性サスペンジョン:水77wt.%および酢酸3wt.%中にCeOナノ粒子20wt.%、このサスペンジョンのpH:3.0、懸濁CeOナノ粒子の粒度:10〜20nm、比重:1.22g/ml、粘度10mPa.s、製造業者:米国マサチューセッツ州アッシュランドのNyacol Inc.
【0133】
成分A.2−1
バインダー:ジペンタエリトリトールペンタ−/ヘキサ−アクリレート(DPHA、Aldrich)
【0134】
成分A.2−2
バインダー:ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、Aldrich)
【0135】
成分A.3
紫外線光開始剤:Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン)、スイスのバーゼルのCiba Specialty Chemicals Inc.
【0136】
下記成分を実施例中で有機溶媒として使用した:
1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)、製造業者:Aldrich
ジアセトンアルコール(DAA)、製造業者:Aldrich
【0137】
水性CeOナノ粒子サスペンジョン(成分A.0)を下記のようにクロスフロー限外濾過によって水およびMOPを含むナノ粒子サスペンジョン(成分A.1)に転化した:
【0138】
UF膜カセット(UF membrane cassette)(PES、MW 100,000)を有するPALL製の膜モジュール(Centramate OS070C12)をクロスフロー限外濾過(UF)に使用した。含水浸透を廃棄し、かつ、減少する透過残液(retentate)をアルコール溶媒1−メトキシ−2−プロパノール(MOP)によって置換する浸透を圧力2.5barにおいて行った。成分A.0を6.5リットル使用した。下記表に示されるように、濾過を異なる長さの3つのサイクルの後に終わらせ、そのようにして有機溶媒MOPと水との混合物中のナノ粒子サスペンジョン(成分A.1)を得た。
【表1】

【0139】
溶液Aと溶液Bとを混合することによって含水量10wt.%のキャスティング溶液(成分A)を得た:
溶液A: 成分A.2−1 25gと成分A.2−2 6.2gとを撹拌しながら溶媒DAA 108g中に溶解した。次に成分A.3 2.35gを添加し、その結果クリアな溶液が生じる。
溶液B: ガラスビーカー中で、溶媒DAA 54gを成分A.1 435gに添加し、この混合物を撹拌し、その結果透明黄色サスペンジョンを得た。これを超音波で30秒間処理した。その間、水32.5gを添加した。
【0140】
溶液AおよびBを組み合わせ、次に再度超音波で30秒間処理し、0.2μmフィルター(Minisart RCメンブラン)で濾過した。キャスティング溶液(成分A)の計算組成は以下の通りである。
【表2】

【0141】
複素屈折率の実部nは、405nmにおいて1.84であることが測定され、複素屈折率の虚部kは、405nmにおいて0.004であることが測定された。
【0142】
コーティング溶液(成分A)をディスク型支持体(S)上の反射層(B)に塗布するために、クランプされた支持体の内径におけるスリンジ(sringe)からの低い回転速度240RPMにおける2.1秒間にわたる成分Aの添加、750RPMにおける3.5秒間にわたるディスクの全エリアにわたる成分Aの分配、分配成分Aの10RPMにおける40秒間にわたるコンディショニング、高い回転速度3000RPMにおける40秒間にわたるスピニングによる過剰成分Aの除去によって、成分Aをスピンコートした。このコーティングを水銀灯で5.5J/cmにおいて架橋した。光透過層の残りの層厚は730mmであった。
【0143】
比較例1
単一成分射出成形プロセス(1−K成形)、本発明の光学記録媒体の標準1−K成形支持体の製造、に記述している手順に従って、厚さ1.2mmかつ直径120mmのディスクを、金型AWM2313およびDVD−ROMスタンパーを備えるArburg Alldisc射出成形マシーンにおいてビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC、相対溶液粘度1.202)Makrolon DO 2015(登録商標)から成形した。ASTM E 756−05に従うヤング率EおよびクオリティファクターQの測定用の試験ビームを生じるために、ビームをそれぞれのディスクから長さl=114mm、厚さH=1.2mmかつ幅W=12.7mmで切り取った。Mettler密度キットMettler AT 250 H66765を用いて質量密度が1.190g/cmであると決定した。それを用いて、2000Hzにおけるヤング率EおよびクオリティファクターQをE=2.53GPaかつQ=167と決定した。
【0144】
比較例2
単一成分射出成形プロセス(1−K成形)、本発明の光学記録媒体の標準1−K成形支持体の製造、に記述している手順に従って、厚さ1.64mm、幅W 13.1mmかつ長さl 81mmの試験ビームを、ポリスチレン(CAS番号298−07−7、分子量140000ダルトン、Aldrich/ドイツ)からArburg 370射出成形マシーンにおいて直接射出成形した。Metttler密度キットMettler AT 250 H66765を用いて質量密度が1.014g/cmであると決定した。それを用いて、ASTM E 756−05に従う2000Hzにおけるヤング率EおよびクオリティファクターQをE=3.28GPaかつQ=175と決定した。
【0145】
比較例3
単一成分射出成形プロセス(1−K成形)、本発明の光学記録媒体の標準1−K成形支持体の製造、に記述している手順に従って、厚さ1.64mm、幅W 13.1mmかつ長さl 81mmの試験ビームを、ビスフェノールAで作られた溶液粘度1.202のポリカーボネートとカーボンファイバー(ドイツヴッパータールのToho Tenax Europe GmbH製のカーボンファイバーTenax−U Type 234)20重量%とのコンパウンド(コンパウンド4)からArburg 370射出成形マシーンにおいて、直接射出成形した。質量密度を、Mettler密度キットMettler AT 250 H66765を用いて1.206g/cmであると決定した。それを用いて、2000Hzにおけるヤング率EおよびクオリティファクターQを、ASTM E 756−05に従ってE=6.18GPaかつQ=170であると決定した。
【0146】
実施例1(支持体)
コンパウンド(コンパウンド1)を、溶液粘度1.202のBPA−ポリカーボネート(Makrolon OD 2015(登録商標)、Bayer MaterialScience)79.95wt.%、ポリメチルメタクリレート(PMMA 6N(登録商標)、Degussa)5wt.%、タルク(Finntalc MO5SL(登録商標)、Mondo Minerals、フィンランド/ヘルシンキ)15wt.%およびグリセリンモノステアレート(Diomodan、Danisco/ドイツ)0.05wt.%から、それぞれの成分をZSK 25/4押出機(Coperion Holding GmbH,ドイツ/シュトゥットガルト)において配合し、溶融ストランドをウォーターバス中で冷却後にペレット化することによって製造した。これらのペレットを1−K射出成形プロセスにおいて上記のように単一成分射出成形プロセス(1−K成形)において、サンドイッチプレート、Philips CD−MouldおよびDVD−ROMスタンパーを備えるArburg 370 U 700 30/30 2−K射出成形マシーンを使用して直径120mmかつ厚さ1.2mmのディスクに成形した。それからディスク支持体試験ビームを単一成分射出成形プロセス(1−K成形)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表3に示す。
【0147】
実施例2(光学記録媒体)
上記のように、反射層および光透過層を実施例1のディスク支持体に塗布した。掻き傷の深さは0.638μmと測定され、表面粗度はR=9.99nmと測定された。そのディスク支持体から、試験ビームを、単一成分射出成形プロセス(1−K成形)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表3に示す。
【0148】
実施例3(支持体)
コンパウンド(コンパウンド2)を、BPA−ポリカーボネート(Makrolon OD 2015(登録商標)、Bayer MaterialScience)59.90wt.%、ポリメチルメタクリレート(PMMA 6N(登録商標)、Degussa)10wt.%、タルク(Finntalc MO5SL(登録商標)、Mondo Minerals、フィンランド/ヘルシンキ)30wt.%、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(CAS番号298−07−7、Alfa Aesar GmbH&Co KG、ドイツ/カールスルーエ)0.05wt.%およびグリセリンモノステアレート(Dimodan、Danisco/ドイツ)0.05wt.%から、それぞれの成分をZSK 25/4押出機(Coperion Holding GmbH、ドイツ/シュトゥットガルト)において配合し、溶融ストランドをウォーターバス中で冷却後にペレット化することによって製造した。これらのペレットを1−K射出成形プロセスにおいて上に単一成分射出成形プロセス(1−K成形)において記述されているように、サンドイッチプレート、Philips CD−MouldおよびDVD−ROMスタンパーを備えるArburg 370 U 700 30/30 2−K射出成形マシーンを使用して、直径120mmかつ厚さ1.2mmのディスクに成形した。そのディスク支持体から、試験ビームを、単一成分射出成形プロセス(1−K成形)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表3に示す。
【0149】
実施例4(光学記録媒体)
上記のように、反射層および光透過層を実施例3のディスク支持体に塗布した。掻き傷の深さは0.706μmと測定され、表面粗度はR=8.06nmと測定された。そのディスク支持体から、試験ビームを、単一成分射出成形プロセス(1−K成形)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表3に示す。
【0150】
実施例5(支持体)
コンパウンド(コンパウンド3)を、BPA−ポリカーボネート(Makrolon OD 2015(登録商標)、Bayer MaterialScience)77.95wt.%、ポリメチルメタクリレート(PMMA 6N(登録商標)、Degussa)10wt.%、グラファイトCond 5/99(Graphit Kropfmuehl AG、ドイツ/ハウツェンベルク)12wt.%およびグリセリンモノステアレート(Dimodan、Danisco/ドイツ)0.05wt.%から、 それぞれの成分をZSK 25/4押出機(Coperion Holding GmbH、ドイツ/シュトゥットガルト)において配合し、溶融ストランドをウォーターバス中で冷却後にペレット化することによって製造した。これらのペレットを1−K射出成形プロセスにおいて上に単一成分射出成形プロセス(1−K成形)において記述されているように、サンドイッチプレート、Philips CD−MouldおよびDVD−ROMスタンパーを備えるArburg 370 U 700 30/30 2−K射出成形マシーンを使用して、直径120mmかつ厚さ1.2mmのディスクに成形した。そのディスク支持体から、試験ビームを、単一成分射出成形プロセス(1−K成形)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表3に示す。
【0151】
実施例6(光学記録媒体)
上記のように、反射層および光透過層を実施例3のディスク支持体に塗布した。掻き傷の深さは0.690μmと測定され、表面粗度はR=3.7nmと測定された。そのディスク支持体から、試験ビームを、単一成分射出成形プロセス(1−K成形)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表3に示す。
【表3】

【0152】
実施例7
直径120mmかつ厚さ1.2mmの2−Kサンドイッチ射出成形ディスクを、上記のように2成分サンドイッチ射出成形プロセス(2−K成形)において、サンドイッチプレート、Philips CD−MouldおよびDVD−ROMスタンパーを備えるArburg 370 U 700 30/30 2−K射出成形マシーンを使用して、コア樹脂としての実施例3に記述されているコンパウンド2のペレットおよびスキン樹脂としてのBPA−ポリカーボネート(Makrolon OD 2015(登録商標)、Bayer MaterialScience)のペレットから製造した。マシーンのセッティングを第1ショットのスキン材料50%添加容積(50%dosage volume)および第2ショットのコア材料50%添加容積にセットした。このショットにおいて、スプルーをスキン材料でシールした。そのディスクにおいて測定される平均コア層厚dは全厚の57%であり、2つの平均スキン層厚dS1およびdS2はそれぞれ全層厚の21.5%であった。そのディスク支持体から、試験ビームを、2成分サンドイッチ射出成形プロセス(2−K成形)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表4に示す。
【0153】
実施例8
上記のように、反射層および光透過層を実施例7のディスク支持体に塗布した。掻き傷の深さは0.665μmと測定され、表面粗度はR=7.91nmと測定された。そのディスク支持体から試験ビームを、2成分サンドイッチ射出成形プロセス(2−K成形)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表4に示す。
【表4】

【0154】
実施例9
直径120mmかつ厚さ1.2mmの紫外線結合ディスクを上記のように紫外線結合プロセス(紫外線結合)において、BPA−ポリカーボネート(Makrolon OD 2015(登録商標)、Bayer MaterialScience)のペレットから上記構成のSingulus Streamline II DVD−Rを使用して成形された2つの厚さ0.6mmのハーフディスクから製造した。紫外線ボンダーは、Bayer MaterialScience製のDesmolux XP 2513(登録商標)67.9wt.%、Sartomer製のSartomer SR 256(登録商標)29.1wt.%および(Darocur 1173(登録商標)、Ciba)2.9wt.%の混合物で構成されていた。成分の混合を、当業者に既知の最先端技術に従ってSpeedMixerTMを使用して行った。スピンスタンド(spin stand)における紫外線ボンダー分配および紫外線硬化は、上にも記述されているようにこのセッティングを使用することによって行われて〜90μm結合層厚に達する。そのディスクにおいて測定される平均ボンダー層厚dは89μmであった。そのディスク支持体から試験ビームを紫外線結合プロセス(紫外線結合)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表5に示す。
【0155】
実施例10
上記のように、反射層および光透過層を実施例9のディスク支持体に塗布した。掻き傷の深さは0.523μmと測定され、表面粗度はR=3.6nmと測定された。そのディスク支持体から、試験ビームを、紫外線結合プロセス(紫外線結合)に記述されているように製造した。測定ヤング率EおよびクオリティファクターQを表5に示す。
【表5】

【0156】
広い発明の概念から逸脱せずに上記態様に変形が行われることが当業者に理解される。従って、本発明は開示している特定の態様に限定されるわけではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるように本発明の精神および範囲内で変形をカバーすることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および該支持体上に順番に配置される記録層および光透過層を備える光学記録媒体であって、該支持体が、射出成形部品、成形表面層および成形コア層を有する射出成形サンドイッチ構造体または紫外線結合される2つの射出成形部品、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の部品を備え、該支持体のASTM E 756−05に従って25℃において2000Hzで測定されるヤング率Eが少なくとも2.15GPaであり、かつ、Qファクターが160以下である、光学記録媒体。
【請求項2】
該支持体のASTM E 756−05に従って25℃において2000Hzで測定されるヤング率Eが少なくとも2.15GPaであり、かつ、Qファクターが100以下である、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項3】
該支持体のASTM E 756−05に従って25℃において2000Hzで測定されるヤング率Eが少なくとも2.93GPaであり、かつ、Qファクターが160以下である、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項4】
該光透過層が、屈折率の実部nが少なくとも1.41である紫外線硬化性スピンコート性樹脂を含有する、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項5】
該光透過層が、紫外線硬化性スピンコート性樹脂を含有し、(i)屈折率の実部nが少なくとも1.70であり、かつ、虚部kが0.016以下である複素屈折率を有し;(ii)表面粗度Rが20nm以下であり;(iii)掻き傷の深さが0.75μm以下である耐引掻き性を有し、該複素屈折率の実部nおよび虚部kが波長400〜410nmにおいて測定され;該表面粗度Rが原子間力顕微鏡によって測定され;該掻き傷の深さが半径50μmのチップを有するダイヤモンド針を適用重量40gのもとで該光透過層上を前進速度1.5cm/秒で動かすことによって測定される、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項6】
該光透過層が、平均粒度(d50)100nm以下のナノ粒子を含有する紫外線硬化性スピンコート可能樹脂を含有する、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項7】
該光透過層の厚さが1nm〜3000nmである、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項8】
該光透過層の厚さが200nm〜2000nmである、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項9】
該光透過層の厚さが500nm〜1500nmである、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項10】
該支持体が1−K射出成形法によって製造されるパーツを備える、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項11】
該支持体が2−Kサンドイッチ射出成形法によって製造されるパーツを備える、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項12】
該支持体が紫外線結合法によって結合される2つの射出成形支持体を備える、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項13】
該支持体が、ポリカーボネート樹脂、アクリル酸樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、水素化ポリスチレン樹脂、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される樹脂を含有する、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項14】
該支持体が、一般式(1):
HO−Z−OH (1)
(式中、Zは、一般式(1a):
【化1】

(式中、それぞれのRおよびRは、独立して、HまたはC〜C−アルキルであり、Xは、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデンまたは任意にC〜C−アルキル置換されていてもよいC〜C−シクロアルキリデンであり、但し、Xが3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンである場合、RおよびRはそれぞれ水素である。)の基である。)
の芳香族ジヒドロキシモノマー化合物で製造されるポリカーボネート樹脂を含有する、請求項1に記載の光学記録媒体。
【請求項15】
該支持体が、ポリカーボネート樹脂、アクリル酸樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、水素化ポリスチレン樹脂、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される樹脂を含有する、請求項2に記載の光学記録媒体。

【図1】
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【公表番号】特表2011−501336(P2011−501336A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529268(P2010−529268)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008454
【国際公開番号】WO2009/049797
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】