説明

ディスク成形用金型、調整部材及びディスク基板の成形方法

成形品の平面度を高くすることができ、品質を向上させることができるディスク成形用金型及びディスク基板の成形方法を提供する。第1の鏡面盤と、該第1の鏡面盤に取り付けられたスタンパ(29)と、前記第1の鏡面盤と対向させて配設され、型締め時に第1の鏡面盤との間にキャビティ空間を形成する第2の鏡面盤と、前記スタンパ(29)と摺動する面を有し、前記第1の鏡面盤の外周縁の近傍に、径方向外方にかけて前記キャビティ空間側に突出させて形成される調整部材とを有する。ディスク基板の全体が冷却されるときに、収縮する量が、外周縁の近傍において少なく、他の部分において多くなっても、ディスク基板の厚さが外周縁の近傍で大きくなるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク成形用金型、調整部材及びディスク基板の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され溶融させられた樹脂を、高圧で射出して金型装置のキャビティ空間に充填し、該キャビティ空間内において冷却して固化させた後、成形品を取り出すようになっている。
【0003】
前記射出成形機は前記金型装置、型締装置及び射出装置を有し、前記型締装置は、固定プラテン及び可動プラテンを備え、型締用モータによって可動プラテンを進退させることにより金型装置の型閉じ、型締め及び型開きを行う。
【0004】
一方、前記射出装置は、前記加熱シリンダ、及び溶融させられた樹脂を射出する射出ノズルを備え、前記加熱シリンダ内にスクリューが回転自在に、かつ、進退自在に配設される。そして、計量用モータを駆動してスクリューを回転させると、ホッパから加熱シリンダ内に供給された樹脂が加熱され、溶融させられて、スクリューヘッドより前方に溜められ、それに伴って、スクリューが後退させられる。次に、射出用モータを駆動して前記スクリューを前進させると、スクリューヘッドより前方に溜められた樹脂が射出ノズルから射出され、前記キャビティ空間に充填される。
【0005】
ところで、前記成形品としてディスク基板を成形する場合、前記金型装置を構成する固定側の金型組立体にスタンパが取り付けられ、キャビティ空間に充填される樹脂にスタンパの微細パターンが転写されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−166396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の金型装置においては、樹脂はキャビティ空間の中央に形成されたゲートに供給された後、キャビティ空間を径方向外方に向けて流れるようになっているが、このとき、金型装置の外周縁が外気に触れているので、樹脂の温度は、キャビティ空間の外周縁の近傍において他の部分より低くなり、外周縁の近傍の樹脂は、密度が高い状態で固化し、他の部分の樹脂は、密度が低い状態で固化してしまう。
【0007】
したがって、その後、型開きが行われ、ディスク基板の全体が冷却されると、収縮する量が、キャビティ空間の外周縁の近傍において、密度が高い分だけ少なく、他の部分において、密度が低い分だけ多くなり、ディスク基板の厚さが外周縁の近傍で10〜20〔μm〕大きくなり、ディスク基板の平面度が低くなり、品質が低下してしまう。
【0008】
本発明は、前記従来の金型装置の問題点を解決して、ディスク基板の平面度を高くする
ことができ、品質を向上させることができるディスク成形用金型、調整部材及びディスク基板の成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明のディスク成形用金型においては、第1の鏡面盤と、該第1の鏡面盤に取り付けられたスタンパと、前記第1の鏡面盤と対向させて配設され、型締め時に第1の鏡面盤との間にキャビティ空間を形成する第2の鏡面盤と、前記スタンパと摺動する面を有し、前記第1の鏡面盤の外周縁の近傍に、径方向外方にかけて前記キャビティ空間側に突出させて形成される調整部材とを有する。
【0010】
本発明の他のディスク成形用金型においては、さらに、前記面はテーパ面である。
【0011】
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記面は湾曲させて形成される。
【0012】
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記調整部材は、内周縁がディスク基板の外周縁から0.2〜2〔mm〕径方向内方に位置するように配設される。
【0013】
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記調整部材の外周縁の厚さは、内周縁の厚さより10〜50〔μm〕大きくされる。
【0014】
本発明の更に他のディスク成形用金型においては、さらに、前記調整部材は、前記第1の鏡面盤より熱伝導性が低い材料によって形成される。
【0015】
本発明の調整部材においては、第1の鏡面盤、該第1の鏡面盤に取り付けられたスタンパ、及び前記第1の鏡面盤と対向させて配設され、型締め時に第1の鏡面盤との間にキャビティ空間を形成する第2の鏡面盤を備えたディスク成形用金型に配設されるようになっている。
【0016】
そして、前記スタンパと摺動する面を有し、前記第1の鏡面盤の外周縁の近傍に、径方向外方にかけて前記キャビティ空間側に突出させて形成される。
【0017】
本発明の他の調整部材においては、さらに、前記面はテーパ面である。
【0018】
本発明の更に他の調整部材においては、さらに、前記面は湾曲させて形成される。
【0019】
本発明の更に他の調整部材においては、さらに、内周縁がディスク基板の外周縁から0.2〜2〔mm〕径方向内方に位置するように配設される。
【0020】
本発明の更に他の調整部材においては、さらに、外周縁の厚さは、内周縁の厚さより10〜50〔μm〕大きくされる。
【0021】
本発明の更に他の調整部材においては、さらに、前記第1の鏡面盤より熱伝導性が低い材料によって形成される。
【0022】
本発明のディスク基板の成形方法においては、可動側の金型組立体及び固定側の金型組立体のうちの一方の金型組立体に配設されたスタンパの微細パターンを転写してディスク基板を成形するようになっている。
【0023】
そして、可動側の金型組立体を固定側の金型組立体に向けて移動させ、前記可動側の金
型組立体と固定側の金型組立体との間に、成形材料を充填するためのキャビティ空間を形成し、該キャビティ空間に成形材料を充填するのに伴って、前記スタンパが、前記一方の金型組立体と接触した状態で膨張したときに、ディスク基板の外周方向に向けての厚さの変動を調整するための調整部材によってスタンパを摺動させ、前記キャビティ空間内の成形材料を冷却し、該成形材料が冷却するのに伴って、前記スタンパが、前記一方の金型組立体との接触した状態で収縮したときに、前記調整部材によってスタンパを摺動させ、前記可動側の金型組立体を固定側の金型組立体から離れる方向に移動させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ディスク成形用金型においては、第1の鏡面盤と、該第1の鏡面盤に取り付けられたスタンパと、前記第1の鏡面盤と対向させて配設され、型締め時に第1の鏡面盤との間にキャビティ空間を形成する第2の鏡面盤と、前記スタンパと摺動する面を有し、前記第1の鏡面盤の外周縁の近傍に、径方向外方にかけて前記キャビティ空間側に突出させて形成される調整部材とを有する。
【0025】
この場合、前記第1の鏡面盤の外周縁の近傍に調整部材が形成され、該調整部材は、スタンパと摺動する面を有するので、ディスク基板の全体が冷却されるときに、収縮する量が、キャビティ空間の外周縁の近傍において、密度が高い分だけ少なくなり、他の部分において、密度が低い分だけ多くなっても、ディスク基板の厚さがキャビティ空間の外周縁の近傍で大きくなるのを防止することができる。したがって、ディスク基板の平面度を高くすることができ、品質を向上させることができる。
【0026】
また、厚さ調整部材と第1の鏡面盤との間に段差が形成されないので、スタンパの裏面が段差によって繰り返し擦られることがなくなる。したがって、スタンパの裏面の外周縁の近傍が局部的に摩耗するのを抑制することができるので、スタンパの温度に局部的なむらが形成されるのを防止することができる。その結果、局部的な複屈折むら、ランド・グルーブの形状崩れ等が発生するのを防止することができ、ディスク基板の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態における金型装置の要部を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における金型装置の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における金型装置の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 金型装置
16、36 鏡面盤
29 スタンパ
52 厚さ調整部材
p1 内周縁
p3 外周縁
s1 前端面
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は本発明の第1の実施の形態における金型装置の要部を示す断面図、図2は本発明の第1の実施の形態における金型装置の断面図である。
【0030】
図において、10は金型装置、11は固定プラテン、12は、該固定プラテン11に取り付けられた固定金型としての、かつ、第1の金型組立体としての固定側の金型組立体、32は、図示されない可動プラテンに取り付けられた可動金型としての、かつ、第2の金
型組立体としての可動側の金型組立体であり、前記金型組立体12、32によって前記金型装置10が構成される。前記可動プラテンの後方には、図示されない型締機構が配設され、該型締機構は、例えば、型締用の駆動部としての型締用モータ、トグル機構等から成り、前記型締用モータを駆動し、トグル機構を作動させることによって前記可動プラテンを進退させ、前記金型組立体32を進退(図2において左右方向に移動)させ、金型組立体12と接離させることによって、金型装置10の型閉じ、型締め及び型開きを行うことができる。そして、型締めが行われると、前記金型組立体12と金型組立体32との間に図示されないキャビティ空間が形成される。なお、前記固定プラテン11、可動プラテン、型締機構等によって型締装置が構成される。
【0031】
前記金型組立体12は、第1の支持部材としてのベースプレート15、該ベースプレート15に取り付けられた第1の鏡面盤としての鏡面盤16、該鏡面盤16より径方向外方に配設され、前記ベースプレート15に取り付けられた第1の外周リングとしての環状のガイドリング18、前記ベースプレート15及び鏡面盤16を貫通して軸方向に延在させて配設されたスプルーブッシュ24を備える。
【0032】
該スプルーブッシュ24の中心には、射出装置21において、シリンダ部材としての加熱シリンダ22の前端(図2において左端)に取り付けられた射出ノズル23から射出された成形材料としての樹脂を通すスプルー26が形成される。また、前記スプルーブッシュ24には、前端をキャビティ空間に臨ませて配設され、前端に凹部から成るダイ28が形成される。
【0033】
ところで、前記キャビティ空間に樹脂を供給し、固化させると、成形品としてのディスク基板の原型となる原型基板が形成されるが、このとき、ディスク基板の一方の面に微小な凹凸が形成され、情報面が形成されるようになっている。そのために、前記鏡面盤16の前端面(図2において左端面)に、中央に穴が形成され、表面に微細パターンが形成された入れ子としての円盤状のスタンパ29が取り付けられる。該スタンパ29は、前端面に微小な凹凸が形成され、外周縁がアウタホルダ31によって、内周縁がインナホルダ60によって、鏡面盤16に押し付けられ、保持される。なお、前記金型組立体12には、図示されない固定側エアブローブシュ等も配設される。また、スタンパを金型組立体32に配設することができる。
【0034】
一方、前記金型組立体32は、第2の支持部材としてのベースプレート35、該ベースプレート35に取り付けられた第2の鏡面盤としての鏡面盤36、該鏡面盤36より径方向外方に配設された第2の外周リングとしての環状のガイドリング38、前記ベースプレート35及び鏡面盤36を貫通して軸方向に延在させて、かつ、前記スプルーブッシュ24と対向させて進退自在に配設されたカットパンチ48を備え、該カットパンチ48の前端(図2において右端)は前記ダイ28に対応する形状を有する。
【0035】
また、前記鏡面盤36における鏡面盤16と対向する面の外周縁には、成形されるディスク基板の厚さに対応する分だけ鏡面盤16側に突出させて、図示されない環状のキャビリングが配設される。
【0036】
そして、前記カットパンチ48より後方(図2において左方)には図示されない穴開け加工用の駆動部としての図示されない駆動シリンダが配設され、該駆動シリンダを駆動することによって前記カットパンチ48を前進(図2において右方向に移動)させることができるようになっている。
【0037】
なお、前記金型組立体32には、図示されないエジェクタブシュ、エジェクタピン、可動側エアブローブシュ等も配設される。
【0038】
前記構成の金型装置10において、前記型締用モータを駆動して前記可動プラテンを前進させ、金型組立体32を前進させると、型閉じが行われるとともに、ガイドリング18、38がいんろう結合され、前記キャビリング及び鏡面盤36と鏡面盤16及びスタンパ29との心合せが行われる。そして、前記型締用モータを更に駆動して型締めを行い、型締状態において、前記射出ノズル23から溶融させられた樹脂が射出されると、樹脂は、前記スプルー26を介してキャビティ空間に充填され、続いて、冷却されて原型基板になる。なお、前記ガイドリング18、38をいんろう結合するために、ガイドリング18の内周側及びガイドリング38の外周側に環状の凹部18a、38aがそれぞれ形成され、凹部18aより径方向外方に第1のテーパ面18bが、凹部38aより径方向内方に第2のテーパ面38bが形成される。なお、前記キャビティ空間内の樹脂を冷却するために、前記鏡面盤16、36内に図示されない温調用流路が形成される。
【0039】
続いて、前記駆動シリンダを駆動することによってカットパンチ48を前進させると、該カットパンチ48の前端がダイ28内に進入し、前記キャビティ空間内の原型基板に穴開け加工を施す。そして、穴開け加工が施された原型基板を更に冷却することによって、ディスク基板が成形される。
【0040】
次に、前記型締用モータを駆動して、可動プラテンを後退させて金型組立体32を後退(図2において左方向に移動)させ、型開きを行うとともに、前記エジェクタピンを前進させ、ディスク基板を突き出して金型組立体32から離型させる。このようにして、ディスク基板を取り出すことができる。
【0041】
ところで、樹脂は射出ノズル23から射出されると、スプルー26内を流れ、キャビティ空間の中央に形成されたゲートに供給された後、キャビティ空間内を径方向外方に向けて流れる。このとき、前記金型装置10の外周縁が外気に触れているので、樹脂の温度はキャビティ空間の外周縁の近傍において他の部分より低くなり、前記キャビティ空間の外周縁の近傍の樹脂は、密度が高い状態で固化し、他の部分の樹脂は、密度が低い状態で固化することになる。
【0042】
したがって、その後、型開きが行われ、ディスク基板の全体が冷却されると、収縮する量が、キャビティ空間の外周縁の近傍において、密度が高い分だけ少なく、他の部分において、密度が低い分だけ多くなるが、これに伴って、ディスク基板の厚さが前記キャビティ空間の外周縁の近傍で大きくなると、ディスク基板の平面度が低くなり、品質が低下してしまう。
【0043】
そこで、鏡面盤16、36の少なくとも一方、本実施の形態においては、鏡面盤16におけるスタンパ29と当接する前端面の外周縁の近傍を、前方(図2において左方)、すなわち、金型組立体32側に向けて突出させるようにしている。
【0044】
そのために、本実施の形態においては、鏡面盤16におけるスタンパ29と当接する前端面の外周縁の近傍に環状の溝51が形成され、該溝51に、ディスク基板の外周方向に向けての厚さの変動を調整するための環状の調整部材としての厚さ調整部材52が取り付けられる。該厚さ調整部材52の前端面s1には、内周縁p1から中央部分p2まで、キャビティ空間側に向けて、すなわち、前方に向けて突出させて形成され、スタンパ29の収縮に対して摺動する面(以下「摺動面」という。)が形成される。該摺動面は、内周縁p1から所定の距離にわたって径方向外方に向けて、かつ、鏡面盤16の前端面と平行に延びる平坦部sa、該平坦部saの外周縁から所定の距離にわたって径方向外方に向けて、かつ、傾斜して中央部分p2まで延びる傾斜部sb、及び該傾斜部sbの外周縁から所定の距離にわたって径方向外方に向けて、かつ、鏡面盤16の前端面と平行にスタンパ2
9の外周縁まで延びる平坦部scを備える。
【0045】
また、溝51内に厚さ調整部材52を配設したときに、該厚さ調整部材52の内周縁p1において鏡面盤16との間に段差が形成されないように、溝51の内周縁の深さと厚さ調整部材52の内周縁p1の厚さとが等しくされる。なお、前記前端面s1を、径方向内方から外方に向けて同じ傾きで形成してテーパ面とすることができるが、前端面s1を湾曲させて、前記内周縁p1の部分の傾き及び中央部分p2の部分の傾きを零(0)にし、内周縁p1から外方に向けて傾きを徐々に大きくした後、中央部分p2にかけて傾きを徐々に小さくすることもできる。すなわち、前記前端面s1が形成されるので、キャビティ空間に樹脂を充填したときの、前記スタンパ29の外周方向への延びによる摺動が容易になる。
【0046】
また、前記厚さ調整部材52は、内周縁p1がディスク基板の外周縁から0.2〜2〔mm〕程度径方向内方に位置するように配設され、かつ、中央部分p2から厚さ調整部材52の外周縁p3にかけての厚さは内周縁p1の厚さより10〜50〔μm〕程度大きくされる。
【0047】
このように、鏡面盤16の外周縁の近傍に、キャビティ空間に樹脂を充填した際に、前記スタンパの外周方向への延びによる摺動を容易にするためのテーパ面を備えた厚さ調整部材52が配設されるので、キャビティ空間の外周縁の近傍における厚さが、他の部分より10〜50〔μm〕程度薄くなる。したがって、型開きが行われ、ディスク基板の全体が冷却されるときに、収縮する量が、キャビティ空間の外周縁の近傍において、密度が高い分だけ少なく、他の部分において、密度が低い分だけ多くなっても、ディスク基板の厚さが前記キャビティ空間の外周縁の近傍で大きくなるのを防止することができる。その結果、ディスク基板の平面度を高くすることができ、品質を向上させることができる。
【0048】
ところで、成形が行われている間、キャビティ空間に樹脂が間欠的に充填され、続いて、冷却されるので、スタンパ29は加熱及び冷却が繰り返され、膨張と収縮とが繰り返されるが、前記内周縁p1において、鏡面盤16との間に段差が形成されないので、前記鏡面盤36との間にキャビティ空間を形成する厚さ調整部材52及び鏡面盤16の形状に沿ってスタンパ29が取り付けられることになる。したがって、スタンパ29の裏面が段差によって繰り返し擦られることがなくなり、スタンパ29の裏面の外周縁の近傍が局部的に摩耗するのを抑制することができるので、スタンパ29の温度に局部的なむらが形成されるのを防止することができる。その結果、ディスク基板に局部的な複屈折むら、ランド・グルーブの形状崩れ等が発生するのを防止することができ、ディスク基板の品質を向上させることができる。
【0049】
また、前記段差が形成されると、段差の部分において鏡面盤16とスタンパ29と厚さ調整部材52との間に環状の空間が形成され、スタンパ29の膨張と収縮とが繰り返されるのに伴って、前記環状の空間がスタンパ29と接触する部分がそのたびに移動する。その結果、スタンパ29の温度に局部的なむらが形成されてしまう。ところが、本実施の形態においては、段差が形成されないので、スタンパ29と鏡面盤16及び厚さ調整部材52との熱伝達を安定させることができ、スタンパ29の温度に局部的なむらが形成されるのを防止することができる。したがって、ディスク基板に局部的な複屈折むら、ランド・グルーブの形状崩れ等が発生するのを一層防止することができ、ディスク基板の品質を一層向上させることができる。
【0050】
本実施の形態においては、厚さ調整部材52を鏡面盤16と同じ材料で形成するようになっているが、厚さ調整部材52を鏡面盤16より熱伝導性の低い材料、断熱性を有する材料等で形成することができる。この場合、キャビティ空間の外周縁の近傍の樹脂の温度
が他の部分より低くなるのを防止することができるので、樹脂が、キャビティ空間内の外周縁の近傍において、密度が高い状態で固化するのを防止することができる。
【0051】
したがって、その後、型開きが行われ、ディスク基板の全体が冷却されるときに、キャビティ空間の外周縁の近傍において、収縮する量が他の部分より小さくなるのを防止することができるので、ディスク基板の平面度を高くすることができ、品質を向上させることができる。
【0052】
ところで、本実施の形態においては、厚さ調整部材52に平坦部saを形成する必要があるので、傾斜部sbを加工するのが困難であり、厚さ調整部材52のコストが高くなってしまう。
【0053】
そこで、厚さ調整部材52のコストを低くすることができるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。
【0054】
図3は本発明の第2の実施の形態における金型装置の要部を示す断面図である。
【0055】
この場合、前記前端面s1に形成される摺動面は、内周縁p1から所定の距離にわたって径方向外方に向けて、かつ、傾斜して傾斜部sd、及び該傾斜部sdの外周縁から所定の距離にわたって径方向外方に向けて、かつ、鏡面盤16の前端面と平行にスタンパ29の外周縁まで延びる平坦部seを備える。
【0056】
したがって、キャビティ空間に樹脂を充填させたとき、前記スタンパ29の外周方向への延びによる摺動が容易になる。
【0057】
その結果、傾斜部sdを容易に加工することができ、厚さ調整部材52のコストを低くすることができる。
【0058】
前記構成のディスク成形金型を使用してディスク基板を成形する成形方法においては、金型組立体32を金型組立体12に向けて移動させ、金型組立体32と金型組立体23との間にキャビティ空間を形成し、該キャビティ空間に樹脂を充填するのに伴って、スタンパ29が、前記金型組立体12と接触した状態で膨張したときに、厚さ調整部材52によってスタンパ29が摺動させられる。そして、前記キャビティ空間内の樹脂を冷却すると、ディスク基板が成形される。このとき、樹脂が冷却するのに伴って、前記スタンパ29が、前記金型組立体12と接触した状態で収縮するが、前記厚さ調整部材52によってスタンパ29が摺動させられる。
【0059】
続いて、前記金型組立体32が金型組立体12から離れる方向に移動させられる。
【0060】
前記各実施の形態においては、ディスク基板からの熱伝達に伴い、スタンパ29が膨張したり収縮したりする場合について説明しているが、本発明を、樹脂を充填するときに発生するキャビティ空間内の圧力、前記キャビティ空間内の樹脂を圧縮する際の型締力によって発生するキャビティ空間内の圧力等によってスタンパ29が膨張したり収縮したりする場合について適用することもできる。
【0061】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
ディスク基板を成形するためのディスク成形金型に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の鏡面盤と、
(b)該第1の鏡面盤に取り付けられたスタンパと、
(c)前記第1の鏡面盤と対向させて配設され、型締め時に第1の鏡面盤との間にキャビティ空間を形成する第2の鏡面盤と、
(d)前記スタンパと摺動する面を有し、前記第1の鏡面盤の外周縁の近傍に、径方向外方にかけて前記キャビティ空間側に突出させて形成される調整部材とを有することを特徴とするディスク成形用金型。
【請求項2】
前記面はテーパ面である請求項1に記載のディスク成形用金型。
【請求項3】
前記面は湾曲させて形成される請求項1に記載のディスク成形用金型。
【請求項4】
前記調整部材は、内周縁がディスク基板の外周縁から0.2〜2〔mm〕径方向内方に位置するように配設される請求項1に記載のディスク成形用金型。
【請求項5】
前記調整部材の外周縁の厚さは、内周縁の厚さより10〜50〔μm〕大きくされる請求項1に記載のディスク成形用金型。
【請求項6】
前記調整部材は、前記第1の鏡面盤より熱伝導性が低い材料によって形成される請求項1に記載のディスク成形用金型。
【請求項7】
第1の鏡面盤、該第1の鏡面盤に取り付けられたスタンパ、及び前記第1の鏡面盤と対向させて配設され、型締め時に第1の鏡面盤との間にキャビティ空間を形成する第2の鏡面盤を備えたディスク成形用金型に配設される調整部材において、
(a)前記スタンパと摺動する面を有し、
(b)前記第1の鏡面盤の外周縁の近傍に、径方向外方にかけて前記キャビティ空間側に突出させて形成されることを特徴とする調整部材。
【請求項8】
前記面はテーパ面である請求項7に記載の調整部材。
【請求項9】
前記面は湾曲させて形成される請求項7に記載の調整部材。
【請求項10】
内周縁がディスク基板の外周縁から0.2〜2〔mm〕径方向内方に位置するように配設される請求項7に記載の調整部材。
【請求項11】
外周縁の厚さは、内周縁の厚さより10〜50〔μm〕大きくされる請求項7に記載の調整部材。
【請求項12】
前記第1の鏡面盤より熱伝導性が低い材料によって形成される請求項7に記載の調整部材。
【請求項13】
可動側の金型組立体及び固定側の金型組立体のうちの一方の金型組立体に配設されたスタンパの微細パターンを転写してディスク基板を成形する成形方法において、
(a)可動側の金型組立体を固定側の金型組立体に向けて移動させ、
(b)前記可動側の金型組立体と固定側の金型組立体との間に、成形材料を充填するためのキャビティ空間を形成し、
(c)該キャビティ空間に成形材料を充填するのに伴って、前記スタンパが、前記一方の金型組立体と接触した状態で膨張したときに、ディスク基板の外周方向に向けての厚さの
変動を調整するための調整部材によってスタンパを摺動させ、
(d)前記キャビティ空間内の成形材料を冷却し、
(e)該成形材料が冷却するのに伴って、前記スタンパが、前記一方の金型組立体との接触した状態で収縮したときに、前記調整部材によってスタンパを摺動させ、
(f)前記可動側の金型組立体を固定側の金型組立体から離れる方向に移動させることを特徴とするディスク基板の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/084910
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510764(P2006−510764)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003858
【国際出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(000147350)株式会社精工技研 (154)
【Fターム(参考)】