説明

ディスク装置およびディスク装置におけるシーク制御方法

【課題】シーク不良を低減しつつ、シーク中の制御異音の発生を抑えたディスク装置およびディスク装置におけるシーク制御方法を提供する。
【解決手段】フォーカスエラー信号を生成する信号生成手段と、第1のサーボ伝達特性を実現する第1のフィルタと、光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動する移動手段の共振周波数におけるサーボ伝達特性のゲインが第1のサーボ伝達特性のゲインよりも高い第2のサーボ伝達特性を実現する第2のフィルタとを記憶する記憶部と、シーク時において、移動手段の制御周波数が移動手段の共振周波数を含む所定の周波数帯域にある期間は、記憶部に記憶された第2のフィルタを用いてフォーカスエラー信号をフィルタリングし、制御周波数が所定の周波数帯域にない期間は、記憶部に記憶された第1のフィルタを用いてフォーカスエラー信号をフィルタリングするフィルタ手段とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置およびディスク装置におけるシーク制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンパクトディスク(CD)やデジタルヴァーサタイルディスク(DVD)などの光ディスクに情報を記録したり、光ディスクに記録された情報を再生したりするディスク装置では、光ピックアップの対物レンズと光ディスクの情報記録面との間の距離を一定に保つためフォーカスサーボ制御を行っている。ディスク装置は、ピックアップ、回路部品、ディスクのバラツキに対して、ディスク面ぶれ、傷、外部振動発生時に光ディスク情報記録面と対物レンズとの間の距離が変動し情報の読み取りが不安定とならないように、ディスク毎にフォーカスサーボ制御のゲイン(以後、フォーカスゲインという)の調整を実施している。
【0003】
ところで、ディスク装置は、記録時及び再生時だけでなく光ピックアップを光ディスク上の目的位置(アドレス)へ移動させるシーク時にも、光ピックアップの対物レンズと光ディスクの情報記録面との間の距離が変動しないようにフォーカスサーボ制御を実行する。光ピックアップがアドレスに到達したかどうかを判定するために、光ピックアップは、光ディスクに書き込まれたアドレス情報を読み取る必要がある。
ここで、シーク時に光ディスクの情報記録面と対物レンズとの間の距離が変動し記録媒体の情報の読み取りが不安定になる原因として、ステッピングモータのメカ共振があげられる。ステッピングモータは、高精度の位置決めが可能であるため、シーク時に光ピックアップが移動する位置を決める位置決め制御に使用されることが多い。しかし、ステッピングモータがステッピングモータの共振周波数で駆動されると、メカ共振が発生する。メカ共振が発生すると、光ピックアップもメカ共振を起因として振動するため、光ピックアップの対物レンズとディスク間の衝突や移動中のトラック数を誤検出するなど、光ディスクに記録された情報の読み取りが不安定となるシーク不良が発生する。そこで、特許文献1から3では、シーク時にフォーカスゲインを上げることにより、シーク不良の問題を解決している。
【特許文献1】特開平8−194956
【特許文献2】特開2000−132847
【特許文献3】特開2003−317270
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1と2の発明では、シーク中は常時フォーカスゲインを増加させており、シーク中にディスク装置から発生する制御異音が大きくなるという課題が存在する。また、特許文献1から3の発明では、フォーカスサーボ制御周波数の全周波数帯域にわたってフォーカスゲインを増加させているため、メカ共振が発生しない周波数帯のフォーカスゲインも増加する。その結果、制御異音が大きくなるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、シーク不良を低減しつつ、シーク中の制御異音の発生を抑えたディスク装置およびディスク装置におけるシーク制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、データの記録された光ディスクに光ビームを照射して該光ディスクからの反射光に基づく光検出信号を出力する光ピックアップを備えるディスク装置であって、光検出信号に基づき前記光ビームが前記光ディスク上で焦点を結ぶように対物レンズの位置をサーボ制御するフォーカスエラー信号を生成する信号生成手段と、第1のサーボ伝達特性を実現する第1のフィルタと、前記光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動する移動手段の共振周波数におけるサーボ伝達特性のゲインが第1のサーボ伝達特性のゲインよりも高い第2のサーボ伝達特性を実現する第2のフィルタとを記憶する記憶部と、前記光ピックアップを前記光ディスク上の目的位置へ移動させるシーク時において、前記移動手段の制御周波数が前記移動手段の共振周波数を含む所定の周波数帯域にある期間は、前記記憶部に記憶された第2のフィルタを用いて前記フォーカスエラー信号をフィルタリングし、前記制御周波数が前記所定の周波数帯域にない期間は、前記記憶部に記憶された第1のフィルタを用いて前記フォーカスエラー信号をフィルタリングするフィルタ手段とを備えることを特徴とする。
本構成によれば、フィルタ手段は、移動手段の制御周波数が移動手段の共振周波数を含む所定の周波数帯にある期間のみゲインをあげるので、シーク中に常時ゲインを上げる場合と比較して、ディスク装置から発生する制御音が小さくなる。
【0007】
上記のディスク装置において、前記第2のサーボ伝達特性のゲインは、全周波数帯にわたり前記第1のサーボ伝達特性のゲインよりも高いことを特徴とする。
本構成によれば、フィルタ手段は、所定の期間のみフォーカスゲインを上げるため、モータ共振によるシーク不良を低減しつつ、制御音を小さくすることができる。
【0008】
上記のディスク装置において、前記第2のサーボ伝達特性のゲインは、前記移動手段の共振周波数を含む所定の低周波数帯では第1のサーボ伝達特性のゲインよりも高く、所定の高周波数帯域では第1のサーボ伝達特性と同一であることを特徴とする。
本構成によれば、フィルタ手段は、高周波数帯のゲインは上げないため、制御音を更に小さくできる。
【0009】
請求項4に係る発明は、データの記録された光ディスクに光ビームを照射して該光ディスクからの反射光に基づく光検出信号を出力する光ピックアップを備えるディスク装置におけるシーク制御方法であって、光検出信号に基づき前記光ビームが前記光ディスク上で焦点を結ぶように対物レンズの位置をサーボ制御するフォーカスエラー信号を生成する信号生成ステップと、前記光ピックアップを前記光ディスク上の目的位置へ移動させるシーク時において、前記光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動する移動手段の制御周波数が前記移動手段の共振周波数を含む所定の周波数帯域にない期間は、第1のサーボ伝達特性を実現する第1のフィルタを選択し、前記制御周波数が前記所定の周波数帯域にある期間は、前記移動手段の共振周波数におけるサーボ伝達特性のゲインが第1のサーボ伝達特性のゲインよりも高い第2のサーボ伝達特性を実現する第2のフィルタを選択する選択ステップと、前記選択ステップが選択したフィルタを用いて前記フォーカスエラー信号をフィルタリングするフィルタステップとを有することを特徴とする。
本構成によれば、フィルタステップは、移動手段の制御周波数が移動手段の共振周波数を含む所定の周波数帯にある期間のみゲインをあげるので、シーク中に常時ゲインを上げる場合と比較して、ディスク装置から発生する制御音が小さくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シーク不良を低減しつつ、シーク中の制御異音の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明を適用したディスク装置のシステム構成の一例である。ディスク装置は、スピンドルモータ10と、光ピックアップ30と、ステッピングモータ40と、ドライバ50と、デジタル信号処理装置60と、外部I/F80とを備える。
【0013】
光ピックアップ30は、光ディスク20に光ビームを照射するレンズ31と、光ディスク20に反射した光ビームの反射光を光検出信号として検出する検出回路33と、光ビームが光ディスク20上で焦点を結ぶようにレンズ31の位置を調整するアクチュエータ32とを備える。
【0014】
外部I/F80は、外部の制御装置(不図示)とデジタル信号処理装置60と接続され、外部の制御装置から出力されたディスク装置に対する命令を入力し、デジタル信号処理装置60へと出力する。外部の制御装置からのディスク装置に対する命令とは、例えば光ピックアップ30を光ディスク20上の目的位置へ移動させる命令(以後、シーク要求という)である。
【0015】
デジタル信号処理装置60は、検出回路33とドライバ50と外部I/F80と接続される。デジタル信号処理装置60は、検出回路33からの光検出信号を入力して、光ビームが光ディスク20上で焦点を結ぶようにレンズ31の位置を調整するために、アクチュエータ32を制御する制御信号を生成し、ドライバ50へと出力する。また、デジタル信号処理装置60は、外部I/F80から入力されたシーク要求を受けて、ステッピングモータ40を駆動する制御信号を生成し、ドライバ50へ出力する。
【0016】
ドライバ50は、デジタル信号処理装置60とアクチュエータ32とステッピングモータ40と接続される。ドライバ50は、デジタル信号処理装置60から出力されたアクチュエータ32を制御する制御信号を、アクチュエータ32へ出力する。また、ドライバ50は、デジタル信号処理装置60から出力されたステッピングモータ40を駆動する制御信号を、ステッピングモータ40へと出力する。アクチュエータ32は、ドライバ50からの制御信号に基づいて、光ビームが光ディスク20上で焦点を結ぶようにレンズ31の位置を調整する。ステッピングモータ40はドライバ50からの制御信号を受けて、光ピックアップ30を光ディスク20の半径方向へ移動させる。
【0017】
次に、デジタル信号処理装置60のハードウェア構成について説明する。図2は、デジタル信号処理装置60のハードウェア構成の一例を示した図である。
デジタル信号処理装置60は、信号入出力を行う入出力部64と、格納されたプログラムを読み込んで実行する中央処理演算装置(CPU)61と、後述するデジタル信号処理装置60が行うフォーカスエラー信号の生成を実現するためのプログラムなどが格納されたROM(Read Only Memory)63と、プログラムを実行する際に使用される一時的なデータを保存するRAM(Random Access Memory)62とから構成される。
【0018】
ROM63に格納されたプログラムはCPU61により実行される。このプログラムによってステッピングモータの制御処理やアクチュエータの制御処理が行われる。また、この制御処理中に使用されるデータはRAM62に保存され、その後の処理に利用される。
また、ROM63に格納されたプログラムのCPU61による演算によって、図3に示す信号生成手段651、フィルタ手段652、ステッピングモータ制御部66が構成される。
【0019】
図3は、上述したCPU61などのハードウェアとROM63に格納されたソフトウェアとの協働によって実現されるデジタル信号処理装置60の機能ブロック図の一例を示した図である。
デジタル信号処理装置60は、アクチュエータ制御部65とステッピングモータ制御部66とを備える。
ステッピングモータ制御部66は、外部I/F80とドライバ50と接続され、外部I/F80からの命令に応じて、ステッピングモータ40を駆動する制御信号をドライバ50へと出力する。
【0020】
アクチュエータ制御部65は、信号生成手段651とフィルタ手段652と記憶部653とを有する。
信号生成手段651は、検出回路33とフィルタ手段652と接続する。信号生成手段651は、検出回路33から、光検出信号を入力して、光ディスク20へ照射された光ビームの焦点ずれを補正するフォーカスエラー信号を生成し、フィルタ手段652へ出力する。
【0021】
フィルタ手段652は、信号生成手段651とステッピングモータ制御部66と記憶部653とドライバ50と接続する。フィルタ手段652は、信号生成手段651からフォーカスエラー信号を入力し、フォーカスエラー信号のフィルタリングを行う。フィルタ手段652は、フィルタリングに使用するフィルタを記憶部653から取得する。また、フィルタ手段652は、ステッピングモータ40の制御周波数に基づいて、フィルタリングに使用するフィルタを変更するため、ステッピングモータ制御部66からステッピングモータ40の制御周波数を取得する。なお、本実施例ではステッピングモータ40の制御周波数をステッピングモータ制御部66から取得するが、ステッピングモータ40の制御周波数が取得できれば他の方法でも良く、例えば、ステッピングモータ40から直接制御周波数を取得してもよい。
フィルタ手段652は、アクチュエータ32を制御するためにフィルタリングしたフォーカスエラー信号をドライバ50へと出力する。
【0022】
記憶部653は、フィルタ手段652がフォーカスエラー信号のフィルタリングに用いるフィルタを記憶している。フィルタは、後述する所定のサーボ伝達特性を実現するようフォーカスエラー信号をフィルタリングできるものとなっている。記憶部653としては、電源が供給されていない場合でもフィルタを記憶しておくことができるよう不揮発性であればよく、例えばROM63やフラッシュメモリ、ハードディスク等を用いることができる。
【0023】
次に、図4及び図5を用いて、フィルタ手段652がフォーカスエラー信号のフィルタリングに用いるフィルタを変更するタイミングと、フィルタリングに用いるフィルタについて説明する。
図4は、ステッピングモータ40の制御周波数とフォーカスエラー信号のゲインを上げる必要のあるタイミングとの関係の一例を示した図である。図4の上図は、シーク時におけるステッピングモータ40の制御周波数の変化を示しており、縦軸がステッピングモータ40の制御周波数を表し、横軸が時間を表している。また、図4の下図は、フォーカスエラー信号のゲインを上げるタイミングを示しており、縦軸がゲインを上げる(ゲインアップ)のタイミングを表し、横軸は時間を表している。
外部I/F80からシーク要求を受けたステッピングモータ制御部66は、ステッピングモータ40の制御周波数を徐々に上げていく。その際、ステッピングモータ40の制御周波数が、ステッピングモータ40の共振周波数をまたぐ場合がある。ステッピングモータ40がステッピングモータ40の共振周波数で駆動されると、メカ共振が発生するため、光ピックアップ30もメカ共振を起因として振動する。したがって、光ピックアップ30のレンズ31と光ディスク20との間の距離が変動し光ビームの焦点がずれるため、光ディスク20に記録された情報の読み取りが不安定となるシーク不良が発生する。したがって、レンズ31から光ディスク20に照射される光ビームの焦点ずれを抑制するために、フォーカスエラー信号のゲインをあげる必要がある。
そこで、本実施例では、図4に示すようにステッピングモータ40の制御周波数が、ステッピングモータの共振周波数を含む閾値Bから閾値Aの周波数帯にある期間にはフォーカスエラー信号のゲインを上げる。ここで、閾値Aおよび閾値Bは、各ディスク装置の特性に依存して決定するものであるが、例えば共振周波数の前後20%の周波数帯とすることができる。
この構成によれば、ステッピングモータの制御周波数がステッピングモータの共振周波数を含む所定の周波数帯にある期間のみゲインをあげるので、シーク中に常時ゲインを上げる場合と比較して、ディスク装置から発生する制御音が小さくなる。
【0024】
次に、図5を用いて、上述したタイミングでゲインを上げる方法について説明する。図5は、記憶部653に記憶されているフィルタが実現するサーボ伝達特性の一例を示した図である。
まず、図5(a)について説明する。図5(a)は、ディスク装置が光ディスク20を再生している再生時のサーボ伝達特性(第1の伝達特性に該当)を実線で示し、ディスク装置がシークをしているシーク時のサーボ伝達特性(第2の伝達特性に該当)を破線で示している。また、図5(a)において、縦軸はサーボ制御のゲインを表し、横軸はサーボ制御周波数を表す。シーク時のサーボ伝達特性のゲインは、サーボ制御周波数がステッピングモータの制御周波数と一致する点で、再生時のサーボ伝達特性のゲインよりも所定量高くなっている。ここで、シーク時のサーボ伝達特性のゲインを再生時のサーボ伝達特性のゲインよりも、どれほど高く設定するかは制御の安定性を考慮して決定する必要があるが、例えば3dBとすることができる。そして、図5(a)では、シーク時のサーボ伝達特性のゲインは、全周波数帯にわたり、再生時のサーボ伝達特性のゲインよりも高いことを特徴とする。
記憶部653は、上述したシーク時のサーボ伝達特性を実現するように設計されたシーク時フィルタ(第2のフィルタ)および再生時のサーボ伝達特性を実現するように設計された再生時フィルタ(第1のフィルタ)を記憶する。
したがって、フィルタ手段652が、ステッピングモータ40の制御周波数がステッピングモータ40の共振周波数を含む所定の周波数帯にある期間以外では、再生時フィルタを用いてフォーカスエラー信号をフィルタリングし、ステッピングモータ40の制御周波数がステッピングモータ40の共振周波数を含む所定の周波数帯にある期間には、シーク時のフィルタを用いてフォーカスエラー信号をフィルタリングすることで、上述したゲインをあげる必要のあるタイミングで、フォーカスエラー信号のゲインを上げることができる。
【0025】
さらに、フィルタ手段652は、図5(a)に示されるサーボ伝達特性ではなく、図5(b)に示されるサーボ伝達特性を実現するように設計されたフィルタを用いてフィルタリングを行うこともできる。図5(b)に示されるシーク時のサーボ伝達特性のゲインは、ステッピングモータの共振周波数を含む低周波数帯域においては、再生時のサーボ伝達特性のゲインよりも所定量高くなっている。そして、高周波数帯域ではシーク時のサーボ伝達特性のゲインは、再生時のサーボ伝達特性のゲインと同一となっている。
したがって、このフィルタを用いれば、フィルタ手段652は、ステッピングモータ40の制御周波数がステッピングモータ40の共振周波数を含む所定の周波数帯にある期間にある場合でも、高周波数帯のゲインは上げないため、制御音を更に小さくできる。
【0026】
次に、デジタル信号処理装置60がシーク要求を受けて行う処理について説明する。図6は、デジタル信号処理装置60が行う処理の一例を表すフローチャートである。
ステッピングモータ制御部66は、外部I/F80からシーク要求を受けると(ステップS10/YES)、目標のアドレスへ光ピックアップ30を移動させるためにステッピングモータ40の制御を開始する(ステップS11)。フィルタ手段652は、ステッピングモータ制御部66から、ステッピングモータ40の制御周波数を取得する(ステップS12)。
フィルタ手段652は、ステッピングモータ40の制御周波数が、ステッピングモータ40の共振周波数を含む所定の周波数帯内である場合には(ステップS13/YES)、シーク時のフィルタを選択する(ステップS15)。本ステップによって、光ピックアップ30がステッピングモータ40の共振に起因して振動しても、ゲインを上げることで光ビームの焦点ずれを抑制することができる。
フィルタ手段652は、ステッピングモータ40の制御周波数が、ステッピングモータ40の共振周波数を含む所定の周波数帯外である場合には(ステップS13/NO)、再生時のフィルタを選択する(ステップS14)。本ステップによって、ステッピングモータ40が共振しない期間では、再生時と同様のゲインによって光ピックアップを制御することで、制御異音を抑えることができる。
ステッピングモータ制御部66は、ステッピングモータ40の移動量を確認する(ステップS16)。移動量の確認は、モータの回転数から換算して確認してもよいし、直接の移動量を確認してもよい。
ステッピングモータ制御部66は、光ディスク20のアドレス情報を取得して、光ピックアップ30が目標アドレスへ到達しているかどうか確認する。ステッピングモータ制御部66は、目的アドレスへの移動が完了するまで(ステップS17/NO)、ドライバへステッピングモータを制御する制御信号を出力する。一方、ステッピングモータ制御部66は、目的アドレスへ光ピックアップ30の移動が完了すると(ステップS17/YES)、処理を終了する。
【0027】
以上の説明から明らかなように、本実施例によれば、ステッピングモータ40の制御周波数が共振周波数をまたぐ場合にのみ、フィルタ手段652が再生時のサーボ伝達特性のゲインよりもゲインが高いシーク時のサーボ伝達特性を実現するシーク時のフィルタを選択するため、制御異音が減少する。また、シーク時のサーボ伝達特性のゲインがステッピングモータの共振周波数を含む低周波数帯域においては再生時のサーボ伝達特性のゲインよりも所定量高く、高周波数帯域では再生時のサーボ伝達特性のゲインと同一となるようなフィルタをフィルタ手段652が用いることで、さらに制御異音は減少する。
【0028】
以上本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0029】
本発明のシーク制御方法は、上述したデジタル信号処理装置60を用いることで実現できる。
また、デジタル信号処理装置60が実行するプログラムは、磁気ディスクや光ディスク、半導体メモリ、その他の記録媒体に格納して配布したり、ネットワークを介して配信したりすることにより提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明が適用されるディスク装置のシステム構成の一例を示す図である。
【図2】デジタル信号処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】デジタル信号処理装置の機能ブロック図の一例を示す図である。
【図4】制御信号のゲインを上げるタイミングの一例を示す図である。
【図5】記憶部に記憶されたフィルタが実現するサーボ伝達特性の一例を示す図である。
【図6】デジタル信号処理装置が行う処理の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
10…スピンドルモータ
20…光ディスク
30…光ピックアップ
31…レンズ
32…アクチュエータ
33…検出回路
40…ステッピングモータ
50…ドライバ
60…デジタル信号処理装置
61…CPU
62…RAM
63…ROM
64…入出力部
65…アクチュエータ制御部
66…ステッピングモータ制御部
651…信号生成手段
652…フィルタ手段
653…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの記録された光ディスクに光ビームを照射して該光ディスクからの反射光に基づく光検出信号を出力する光ピックアップを備えるディスク装置であって、
光検出信号に基づき前記光ビームが前記光ディスク上で焦点を結ぶように対物レンズの位置をサーボ制御するフォーカスエラー信号を生成する信号生成手段と、
第1のサーボ伝達特性を実現する第1のフィルタと、前記光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動する移動手段の共振周波数におけるサーボ伝達特性のゲインが第1のサーボ伝達特性のゲインよりも高い第2のサーボ伝達特性を実現する第2のフィルタとを記憶する記憶部と、
前記光ピックアップを前記光ディスク上の目的位置へ移動させるシーク時において、前記移動手段の制御周波数が前記移動手段の共振周波数を含む所定の周波数帯域にある期間は、前記記憶部に記憶された第2のフィルタを用いて前記フォーカスエラー信号をフィルタリングし、前記制御周波数が前記所定の周波数帯域にない期間は、前記記憶部に記憶された第1のフィルタを用いて前記フォーカスエラー信号をフィルタリングするフィルタ手段とを備えることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記第2のサーボ伝達特性のゲインは、全周波数帯にわたり前記第1のサーボ伝達特性のゲインよりも高いことを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記第2のサーボ伝達特性のゲインは、前記移動手段の共振周波数を含む所定の低周波数帯では第1のサーボ伝達特性のゲインよりも高く、所定の高周波数帯域では第1のサーボ伝達特性と同一であることを特徴とする請求項1または2に記載のディスク装置。
【請求項4】
データの記録された光ディスクに光ビームを照射して該光ディスクからの反射光に基づく光検出信号を出力する光ピックアップを備えるディスク装置におけるシーク制御方法であって、
光検出信号に基づき前記光ビームが前記光ディスク上で焦点を結ぶように対物レンズの位置をサーボ制御するフォーカスエラー信号を生成する信号生成ステップと、
前記光ピックアップを前記光ディスク上の目的位置へ移動させるシーク時において、前記光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動する移動手段の制御周波数が前記移動手段の共振周波数を含む所定の周波数帯域にない期間は、第1のサーボ伝達特性を実現する第1のフィルタを選択し、前記制御周波数が前記所定の周波数帯域にある期間は、前記移動手段の共振周波数におけるサーボ伝達特性のゲインが第1のサーボ伝達特性のゲインよりも高い第2のサーボ伝達特性を実現する第2のフィルタを選択する選択ステップと、
前記選択ステップが選択したフィルタを用いて前記フォーカスエラー信号をフィルタリングするフィルタステップとを有することを特徴とするシーク制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−102760(P2010−102760A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271900(P2008−271900)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】