説明

ディスク装置のクランプ構造

【課題】ディスク装置のクランプ構造の動作不良を抑止する。
【解決手段】ディスク装置1は、ディスクDをターンテーブル5に押し付けるクランプレバー11と、クランプレバー11が上方に回動しているとき、クランプレバー11を保持するカムアーム12と、カムアーム12によるクランプレバー11の保持の有無を切り替えるスライダ13と、クランプレバー下降ばね15による下方への付勢力がカムアーム12を介してスライダ13に作用しないようシャシ2のヒンジ部4によって回動可能に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置のクランプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置に挿入されたコンパクトディスクやDVD、ブルーレイディスク等の読取媒体(以下、単にディスクと称する)を保持するための構造として、ディスク装置のターンテーブルにディスクを押し付けて保持させるクランプ構造が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
図3に従来のディスク装置のクランプ構造100の斜視図を示す。
ディスク装置のクランプ構造100は、クランプレバー111を有する。クランプレバー111は、ターンテーブル(図示略)の上方でその先端部が上下方向に回動する。クランプレバー111は、ばね112によって下方へと引張られており、回動軸111aを支点として下方へと回動するよう設けられている。クランプレバー111は、クランプレバー111と一体に設けられた係止部111bがスライダ113の上辺に係止されており、その回動角度を維持される。
【0004】
スライダ113は、ディスク装置に対するディスクの挿入方向に沿って稼動する板状の部材である。スライダ113は、その内側に摺動部ピン102を擁するガイド溝124を有する。摺動部ピン102はディスク装置のシャシと一体に設けられたピンであり、ガイド溝124との協働によりスライダ113の稼動方向を案内する。スライダ113の稼動時、ガイド溝124の内壁と摺動部ピン102とは摺動する。
スライダ113は、その下面を支持部材103によって支持される。スライダ113の稼動時、スライダ113と支持部材103とは摺動する。
【0005】
スライダ113は、その上辺に、クランプレバー案内部120を有する。クランプレバー案内部120は、傾斜部121を有する。クランプレバー案内部120は、傾斜部121を挟んで、上下方向の高さが異なる上辺部122,123を有する。以下の説明及び図3、図4(a)、(b)において、傾斜部121を挟んで上下方向の高さが高く設けられた上辺部を上辺部122、低く設けられた上辺部を上辺部123とする。
【0006】
図4に、クランプレバー111の回動動作の仕組みを示す。図4(a)はクランプレバー111の上昇時、図4(b)はクランプレバー111の下降時を示す。
クランプレバー111の回動は、スライダ113の稼動により行われる。具体的には、図4(a)に示すように、上辺部122に係止部111bが係止される場合、クランプレバーは上昇し、図4(b)に示すように、上辺部123に係止部111bが係止される場合、クランプレバーは下降する。即ち、スライダ113の稼動により、クランプレバー111の係止部111bが傾斜部121に沿って昇降することでクランプレバー111は回動する。
【0007】
ディスクのクランプ構造100によるディスクの保持、非保持の切り替えは、クランプレバー111の昇降と対応する。具体的には、クランプレバー111が上昇している場合、ディスクはターンテーブル102に押し付けられないので保持されず、クランプレバー111が下降している場合、ディスクはターンテーブル102に押し付けられて保持される。
【特許文献1】特開平07−161109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のディスク装置のクランプ機構100は、ディスクの保持または開放動作について動作不良を生じることがあった。即ち、クランプレバー111の係止部111bを介してばね112による下向きの付勢力がスライダ113に付加されることにより、係止部111bとクランプレバー案内部120、スライダ113の下面と支持部材、ガイド溝124と摺動部ピン102との間等の各摺動面に強い摩擦が生じ、スライダ113の動作を阻害してクランプレバー111の回動動作を妨げるからである。
【0009】
本発明は、ディスク装置のクランプ構造の動作不良を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、ディスクをディスク装置の読取装置側に付勢して保持するクランプ部と、少なくとも前記ディスクに対する前記クランプ部の付勢が行われないときに当該クランプ部の位置を保持する保持部と、前記保持部による前記クランプ部の保持の有無を切り替える作動部と、前記クランプ部の付勢力が前記保持部を介して前記作動部に作用しないよう前記保持部を支持する支持部と、を備えることを特徴とするディスク装置のクランプ構造である。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のディスク装置のクランプ構造において、前記保持部は、ディスク装置のシャシに回動可能に支持された回動部材を有することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載のディスク装置のクランプ構造において、前記作動部は、前記回動部材と係合して当該回動部材の回動角度を変更するよう動作するガイド部材を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載のディスク装置のクランプ構造において、前記ガイド部材は、当該ガイド部材の稼動方向に対して垂直に設けられた壁面部を介して前記回動部材と係合することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載のディスク装置のクランプ構造において、前記ガイド部材は、当該ガイド部材の稼動方向に沿った溝と当該稼動方向に直交する方向に沿った溝とが連続するL字形の溝を介して前記回動部材と係合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ディスク装置のクランプ構造の動作不良を抑止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1に、本発明の実施形態によるディスク装置のクランプ構造10の構成を示す。
ディスク装置のクランプ構造10は、クランプレバー11と、カムアーム12と、スライダ13と、を備える。
【0017】
クランプレバー11は、シャシ2に設けられた回動軸3によって上下に回動可能に支持される。
クランプレバー11は、その先端部にクランパ14を有する。クランプレバー11は、下降時にクランパ14を介してディスク読取装置のターンテーブル5(図2参照)にディスクDを押し付けるよう付勢してディスクを保持する。図1に示すクランプレバー11の回動角度は、上昇時の角度である。
【0018】
カムアーム12は、回動支持軸12eによってシャシ2のヒンジ部4に回動可能に支持される。カムアーム12は、第1の支持面12a及び第2の支持面12dがクランプレバー11の下面部と当接する。カムアーム12は、クランプレバー11を下方から支持することでクランプレバー11の回動角度を保持する。
【0019】
スライダ13は、ディスク装置内でディスクの挿入・排出方向に沿って稼動可能に設けられた板状の部材であり、その稼動によってカムアーム12によるクランプレバー11の保持の有無を切り替える。スライダ13の稼動は、図示しないモータ等の駆動部による。スライダ13は、シャシ2等に設けられたガイド部(図示略)によりその稼動方向をガイドされる。即ち、スライダ13は当該ガイド部と摺動する。
スライダ13は、その内側にカム溝21を有する。カム溝21は、スライダ13の盤面及びディスクの挿入・排出方向に沿った溝と、スライダ13の盤面及び上下方向に沿った溝と、が連結するL字形の溝である。カム溝21は、その内側にカムアームピン12bを擁する。
【0020】
カムアームピン12bは、カムアーム12の回動腕12cと一体に形成され、回動腕12cから突出するよう設けられた突起部である。以下、クランプレバー11及びカムアーム12の回動角度の維持について説明する。
【0021】
クランプレバー11は、クランプレバー11とシャシ2との間に介在するクランプレバー下降ばね15によって下方に引張られる。従って、カムアーム12は、支持面12a及びクランプレバー11を介してクランプレバー下降ばね15による下向きの押圧力を受けるが、第1の支持面12aは回動支持軸12eとの位置関係からクランプレバー下降バネ15による力がカムアーム12自体に回動力を生じさせないため、カムアーム12は、カムアームピン12bがカム溝21の上下の内縁部22,23と接触しない回動角度に維持される。
【0022】
次に、クランプレバー11が下降する仕組みについて説明する。
図2に、クランプレバー11が下降している場合のディスク装置のクランプ構造10を示す。
スライダ13が稼動して、カムアームピン12bが側壁24と当接すると、カムアームピン12bはスライダ13の稼動に伴ってスライダ13の稼動方向(図1,2の左方向)へと誘導される。カムアームピン12bが誘導されることでカムアーム12は回動支持軸12eを中心に回動し、クランプレバー11の下面と支持面12aとの当接が解消される。このとき、クランプレバー11は、クランプレバー下降ばね15の引張り力によって下方へと回動する。即ち、カムアーム12は、支持面12aを介してクランプレバー11の下面と当接している場合にクランプレバー11を上昇位置で支持し、クランプレバー11の下面と支持面12aとの当接が解消された場合にクランプレバー11を下降させるよう設けられる。
【0023】
側壁24は、スライダ13の稼動方向に対して垂直に設けられる。スライダ13の稼動に伴い側壁24がカムアームピン12bを押すとき、カムアームピン12bはスライダ13の稼動方向に動き、カムアーム12は図1,2の右方向に回動する。これにより、クランプレバー11と第1の支持面12aとの当接が解消され、クランプレバー11が下降する。クランプレバー11は下降中に第2の支持面12dと当接する。
【0024】
クランプレバー11の下降により、図2に示すように、クランパ14はディスクDをターンテーブル5に押し付けて保持する。このとき、クランプレバー11と第2の支持面12dとの間には一定のクリアランスが保たれている。
【0025】
クランプレバー11の下降後、クランプレバー11を上昇させる場合、スライダ13はクランプレバー11の下降時と逆方向に稼動する。このとき、カム溝21の側壁25がカムアームピン12bを押してカムアーム12を上方へと回動させ、図1に示すクランプレバー11及びカムアーム12の回動角度へと誘導する。側壁25は、側壁24の対面に位置し、スライダ13の稼動方向に対して垂直に設けられる。従って、スライダ13の稼動に伴い側壁25がカムアームピン12bを押すとき、カムアームピン12bはスライダ13の稼動方向に動く。
【0026】
なお、図1及び図2ならびに前述の説明は、ディスク装置のクランプ構造10のみについて記載しているが、ディスク装置のクランプ構造10はディスク装置の他の部分と連動してもよい。例えば、図3に示すスライダ113のように、ディスク搬送ローラ31の位置変更を行うための溝32をスライダ13に設けてもよい。この場合、スライダ13の稼動により、クランプレバー11の回動動作とディスク搬送ローラ13の位置変更動作とを同時に行える。
【0027】
上述の実施形態によれば、クランプレバー下降ばね15の引張り力による下方への付勢力は、シャシ2のヒンジ部4により支持されるためスライダ13に作用しない。従って、スライダ13は良好に稼動することができるので、ディスク装置のクランプ構造10は、カムアーム12の回動動作を介したクランプレバー11の回動動作を良好に行える。即ち、従来のディスク装置のクランプ構造の問題点であった、ディスクの保持または開放動作の動作不良を効果的に抑止できる。
【0028】
さらに、カムアーム12の回動角度の変化により、クランプレバー11の上昇時の回動角度の維持の有無を切り替えられる。即ち、簡易な機械的動作により、クランプレバー11の上昇と下降を行うことができ、ディスク装置のクランプ構造を簡素化できる。
加えて、カムアーム12はディスク装置のシャシ2に回動可能に支持されるので、クランプレバー11の回動角度の維持において、シャシ2の強度による支持力を利用することができ、クランプレバー11の支持を安定させられる。
【0029】
さらに、係止部17を設けた場合、係止部17によりカムアーム12の回動角度が維持されるので、クランプレバー11の上昇時の回動角度の維持はより安定する。
【0030】
さらに、カムアーム12はカムアームピン12bを介してスライダ13のカム溝21と係合し、スライダ13の稼動によって回動する。従って、ディスク装置の他の稼動部、例えば図3に示すディスク搬送ローラ31の位置変更を行うための駆動部と、クランプレバー11の回動動作のための駆動部とを一体に設けることができるので、部品点数の低減によるコスト低下や、ディスク装置のコンパクト化等の優れた効果を得られる。
【0031】
さらに、スライダ13の稼動方向に対して垂直に設けられた側壁24がカムアームピン12bを押してカムアーム12を回動させるので、カムアームピン12bの応力はスライダ13の稼動方向と逆方向に働く。即ち、カムアームピン12bの応力ベクトルは上下方向に生じず、スライダ13は上下方向のベクトルの力を受けない。従って、スライダ13が上下方向に付勢されることによりスライダ13とガイド部とが強い摩擦を生じてスライダ13の稼動が阻害される、等の問題は生じない。即ち、スライダ13はより良好に稼動できるので、クランプレバー11の回動動作がより良好に行える。
加えて、スライダ13の稼動方向に対して垂直に設けられた側壁25がカムアームピン12bを押してカムアーム12を回動させるので、カムアームピン12bの応力はスライダ13の稼動方向と逆方向に働く。従って、前述と同様、スライダ13はより良好に稼動できるので、クランプレバー11の回動動作がより良好に行える。
【0032】
さらに、スライダ13はL字形のカム溝21を有し、上下方向即ちカムアーム12の稼動方向に対して垂直に設けられた溝の側壁24及び側壁25を介してカムアームピン12bを押してカムアーム12を回動させる。従って、クランプレバー11の上昇動作時及び下降動作時の双方について、カムアームピン12bの応力ベクトルは上下方向に生じず、スライダ13は上下方向のベクトルの力を受けず、スライダ13はより良好に稼動できるので、クランプレバー11の回動動作がより良好に行える。
【0033】
なお、本発明の実施形態は、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
例えば、カム溝21は、L字形に限らず、傾斜によりカムアームピン12bをガイドしてカムアームピン12bの上下位置を変更するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態によるディスク装置のクランプ構造の構成図である。
【図2】クランプレバーが下降している場合のディスク装置のクランプ構造を示す図である。
【図3】従来のディスク装置のクランプ構造を示す斜視図である。
【図4】従来のクランプレバーの回動動作の仕組みを示す図である。図4(a)はクランプレバーの上昇時、図4(b)はクランプレバーの下降時を示す。
【符号の説明】
【0036】
11 クランプレバー
12 カムアーム
13 スライダ
14 クランパ
15 クランプレバー下降ばね
17 係止部
21 カム溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクをディスク装置の読取装置側に付勢して保持するクランプ部と、
少なくとも前記ディスクに対する前記クランプ部の付勢が行われないときに当該クランプ部の位置を保持する保持部と、
前記保持部による前記クランプ部の保持の有無を切り替える作動部と、
前記クランプ部の付勢力が前記保持部を介して前記作動部に作用しないよう前記保持部を支持する支持部と、
を備えることを特徴とするディスク装置のクランプ構造。
【請求項2】
前記保持部は、ディスク装置のシャシに回動可能に支持された回動部材を有することを特徴とする請求項1に記載のディスク装置のクランプ構造。
【請求項3】
前記作動部は、前記回動部材と係合して当該回動部材の回動角度を変更するよう動作するガイド部材を有することを特徴とする請求項2に記載のディスク装置のクランプ構造。
【請求項4】
前記ガイド部材は、当該ガイド部材の稼動方向に対して垂直に設けられた壁面部を介して前記回動部材と係合することを特徴とする請求項3に記載のディスク装置のクランプ構造。
【請求項5】
前記ガイド部材は、当該ガイド部材の稼動方向に沿った溝と当該稼動方向に直交する方向に沿った溝とが連続するL字形の溝を介して前記回動部材と係合することを特徴とする請求項4に記載のディスク装置のクランプ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−67328(P2010−67328A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234502(P2008−234502)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】