説明

ディスク記録再生装置

【課題】データを記録する際の光ビームの記録用パワーを最適に調整する調整処理を行なうディスク記録再生装置を提供する。
【解決手段】光ディスク装置1は、光ディスク1a上のPCA領域に記録されたデータをピックアップ11が再生した場合にRF信号生成部12が生成するRF信号に基づいて、OPC処理部13がOPC処理を行なう。OPC処理部13によるOPC処理が正常に終了しなかった場合、制御部10は、失敗したOPC処理を行なった領域から所定の領域に対して所定の記録用パワーでの記録処理を行なう。その後、制御部10は、次の領域においてOPC処理を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク形状の記録媒体上に光ビームを照射させてデータを記録し、記録したデータを再生するディスク記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−ROM、CD−R及びCD−RW等の光ディスク上に光ビームを用いて情報を書き込む光ディスク装置は、光ディスク上に情報を書き込む際、最適な記録用パワーを決定するためにOPC(Optimum Power Control)処理を行なうように構成されている。OPC処理とは、光ディスク上に予め設けられたテスト領域に対して、記録用パワーを段階的に変化させつつテストパターンの書き込みを行ない、書き込まれたテストパターンを読み出して再生することにより得られたRF(Radio Frequency)信号に基づいて最適な記録用パワーを決定する処理のことである。このようなOPC処理によって決定された最適な記録用パワーで光ディスクへの書き込みを行なうことにより、各別の光ディスクにおける記録感度のばらつき、光ディスクと光ディスク装置の光ピックアップとの特性の相違、周辺温度等を考慮した最適な条件での書き込み処理が可能になり、光ディスク上に書き込まれた情報の信頼性を確保することができる。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、光ディスク上のテスト領域に書き込まれたテストパターンを再生して得られたRF信号の最大値及び最小値から算出したβ値に基づいて、最適な記録用パワーを決定するOPC処理を行なう構成の光ディスク装置が開示されている。具体的には、予め設定された最適なβ値が予めメモリに格納されている。そして、ピックアップの記録用パワーを段階的に変化させた場合、それぞれに応じて得られるRF信号の最大値及び最小値に基づいて算出したβ値と、メモリに格納されている最適なβ値とを比較することにより最適な記録用パワーを特定することができる。このように特定された記録用パワーが以降の記録処理に用いられる。
【特許文献1】特開2003−091852号公報
【特許文献2】特開2002−288833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4は従来のOPC処理を説明するための説明図であり、図4(a)及び(b)はそれぞれ光ディスク上に設定されたテスト領域を模式的に示している。なお、光ディスク上には同心円状のトラックが形成されており、上述したようなOPC処理は、テスト領域における外周側のトラックから内周側のトラックへ、螺旋状にデータの記録処理を行なっている。図4(a)及び(b)はOPC処理の際にデータが記録される領域を直線状に表示している。従って、光ディスク装置において、OPC処理は、図4中の白抜き矢符Bで示すように光ディスクの外周側から内周側へ向かう方向に、所定の領域に対して順次行なわれる。図4(a)中401はN回目のOPC処理における領域を、402はN+1回目のOPC処理における領域を、403はN+2回目のOPC処理における領域をそれぞれ示している。
【0005】
ここで、上述したようなOPC処理において、何らかの原因で、RF信号に基づいて算出したβ値によっては、予めメモリに格納されている最適なβ値に基づいて最適な記録用パワーを特定できず、正常に終了できない場合がある。例えば、光ディスク上の塵埃、汚れ又は傷等が付着している領域に対してOPC処理を行なった場合、RF信号に基づくβ値が予め設定されている最適なβ値を取らない虞がある。図4においては、図4(b)中400が光ディスク上の塵埃、汚れ又は傷等を示しており、領域402に対して行なったOPC処理は正常に終了しなかったことを示している。
【0006】
OPC処理が正常に終了できなかった場合、正常に終了できなかったOPC処理を行なった領域402の次の領域403において再度OPC処理を行なって最適な記録用パワーを決定するが、上述したように光ディスク上の塵埃、汚れ又は傷等が原因でOPC処理が正常に終了できない場合には、同一トラック上の隣り合う領域403に対するOPC処理も、光ディスク上の塵埃、汚れ又は傷等の影響によって正常に終了できない可能性が高い。また、同一トラック上の隣り合う領域ではなくても、近隣のトラックにおける領域402の近傍の領域においても、光ディスク上の塵埃、汚れ又は傷等の影響を受けてOPC処理が正常に終了しない可能性が高い。従って、光ディスク上に塵埃、汚れ又は傷等が付着している場合、連続する複数回のOPC処理に亘って正常に終了できず、また、複数のトラックに亘ってOPC処理が正常に終了できず、OPC処理の効率が低下する虞があるという問題を有している。
【0007】
また、特許文献2で開示された装置は、OPC処理が正常に終了しなかった場合、OPC処理を再度実行するのではなく、RF信号に基づいて最適な記録用パワーを算出する構成を有している。しかし、上述したように光ディスク上の塵埃、汚れ又は傷等が原因でOPC処理が正常に終了できなかった場合、このときのRF信号に基づいて最適な記録用パワーを算出することは非常に困難であるという問題を有している。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光ディスク上の塵埃、汚れ又は傷等による光ビームの記録用パワーの調整処理への影響を軽減し、安定した調整処理を行ない、より最適な記録用パワーでの書き込み処理が可能なディスク記録再生装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、何らかの原因で調整処理が正常に行なえなかった領域を、通常の調整処理に用いられた領域とは明確に区別することが可能なディスク記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るディスク記録再生装置は、螺旋状又は同心円状のトラックが形成されたディスク形状の記録媒体上に光ビームを照射させてデータを記録する記録手段と、該記録手段が記録したデータを再生して再生信号を出力する再生手段と、該再生手段が出力した再生信号に基づいて、データを記録する際の前記光ビームの記録用パワーを最適に調整する調整処理を行なう調整手段とを備えるディスク記録再生装置において、前記調整手段による調整処理が正常に終了したか否かを判断する判断手段と、該判断手段による判断結果が否である場合、正常に終了しなかった調整処理のために前記記録手段が前記データを記録したトラックから所定数離隔したトラックにデータの記録位置を変更する位置変更手段とを備え、前記記録手段は、前記判断手段による判断結果が否である場合、前記位置変更手段が変更した記録位置にデータを記録するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ディスク記録再生装置が、螺旋状又は同心円状のトラックが形成されたディスク形状の記録媒体上に記録したデータを再生して出力した再生信号に基づいて、データを記録する際の光ビームの記録用パワーを最適に調整する調整処理を行なっており、この調整処理が正常に終了できなかった場合、この調整処理のためにデータを記録したトラックから所定数離隔したトラックにデータの記録位置を変更し、変更した記録位置に次の調整処理のためのデータを記録する。よって、記録用パワーの調整処理が正常に終了しなかった場合に、所定の間隔を隔てたトラックに記録されたデータを再生して出力した再生信号に基づいて調整処理を行なうので、例えば、記録媒体上の塵埃、汚れ又は傷等が原因で調整処理が正常に終了できなかった場合に、この塵埃、汚れ又は傷等を回避して次の調整処理を行なうことが可能となる。
【0012】
本発明に係るディスク記録再生装置は、前記記録手段は、前記判断手段による判断結果が否である場合、正常に終了しなかった調整処理のためにデータを記録した記録位置から、前記位置変更手段が変更した記録位置までの領域に、所定の記録用パワーの光ビームでデータを記録するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、ディスク記録再生装置が、光ビームの記録用パワーの調整処理を正常に終了できなかった場合、正常に終了できなかった調整処理のためにデータを記録した記録位置から、次の調整処理のためにデータを記録する記録位置までの領域に、所定の記録用パワーの光ビームでデータを記録する。よって、何らかの原因で調整処理が正常に行なえなかった領域の近傍の領域を、通常の調整処理に用いられた領域とは明確に区別することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ディスク記録再生装置が、光ビームの記録用パワーを最適に調整する調整処理を正常に終了できなかった場合、正常に終了できなかった調整処理のためにデータが記録されたトラックから所定数離隔したトラックにおいて調整処理を再度行なう。これにより、例えば、記録媒体上の塵埃、汚れ又は傷等が原因で調整処理が正常に終了できなかった場合に、この塵埃、汚れ又は傷等を回避して次の調整処理を行なうことができる。よって、記録媒体上の塵埃、汚れ又は傷等による調整処理への影響を軽減し、安定した調整処理を行なうことができ、記録媒体上に書き込まれた情報の信頼性をより安定に確保することができる。
【0015】
本発明では、ディスク記録再生装置が、正常に終了できなかった調整処理のためにデータが記録された記録位置から、次の調整処理のためにデータを記録する記録位置までの領域に、所定の記録用パワーの光ビームでデータを記録する。よって、何らかの原因で調整処理が正常に行なえなかった領域の近傍の領域を、通常の調整処理に用いられた領域とは明確に区別することができ、調整処理が正常に行なえなかった領域に対する更なる調整処理の実行を回避できると共に、記録媒体における分析及び解析等に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係るディスク記録再生装置を、その実施の形態である光ディスク装置を示す図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係るディスク記録再生装置としての光ディスク装置の要部構成例を示すブロック図であり、図中1は本発明のディスク記録再生装置としての光ディスク装置を示している。
【0017】
なお、本実施形態では、ピックアップ11からのレーザ光(光ビーム)のみにより光ディスク1aにデータの記録再生処理を行なう光ディスク装置1を例として説明する。但し、本発明は、レーザ光を用いてディスク形状の記録媒体にデータを記録再生するものであればよい。例えば、ピックアップ11からのレーザ光と磁気ヘッドからの磁界とにより光磁気ディスクにデータを記録再生する光磁気ディスク記録再生装置にも本発明を適用することができる。従って、記録媒体としては、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、DVD+RW等の光ディスク、MO等の光磁気ディスクを用いることができる。
【0018】
本実施形態の光ディスク装置1は、図示しない載置トレイに載置された光ディスク1aを回転させる回転駆動部14、回転駆動部14によって回転駆動している光ディスク1aの表面にレーザ光を照射させてデータの記録再生処理を行なうピックアップ11、光ディスク1a上に記録されたデータをピックアップ11が再生出力する電気信号からRF信号を生成するRF信号生成部12、RF信号生成部12によって生成されたRF信号に基づいてOPC処理を行なうOPC処理部13等を備えている。
【0019】
また、光ディスク装置1は、ROM及びRAMが内蔵されたCPU(Central Processing Unit )又はMPU(Micro Processor Unit)等で構成された制御部10を備えている。制御部10は、上述したようなハードウェア各部の動作を制御すると共に、自身に内蔵されたROMに予め格納されている制御プログラムを適宜RAMに読み出して実行する。ROMには、光ディスク装置1を本発明に係るディスク記録再生装置として動作させるために必要な種々の制御プログラムが予め格納されている。RAMはSRAM又はフラッシュメモリ等で構成されており、制御部10による制御プログラムの実行時に発生するデータを一時的に記憶する。
【0020】
回転駆動部14は、光ディスク1aを回転させるモータ、制御部10による制御に従ってモータを駆動させるモータ駆動回路等を備えている。このような回転駆動部14は、制御部10からの指示に従って、光ディスク1aを定角速度(CAV:Constant Angular Velocity)又は定線速度(CLV:Constant Linear Velocity)で回転させる。
【0021】
ピックアップ(記録手段、再生手段)11は、光ディスク1aに対向配置されており、光ディスク1aの表面にレーザ光を照射するレーザダイオード、レーザダイオードを駆動させるレーザダイオード駆動回路等を備えている。ピックアップ11は、データを光ディスク1a上に記録する際には記録用パワーのレーザ光を、光ディスク1a上のデータを再生する際には再生用パワーのレーザ光をそれぞれ照射する。制御部10が回転駆動部14及びピックアップ11を適切に制御することにより、光ディスク装置1は、回転駆動部14が回転させている光ディスク1a上の適切なアドレスに対して、ピックアップ11によるデータの記録処理又は再生処理を行なうことができる。
【0022】
光ディスク装置1が光ディスク1aからデータを再生する場合、ピックアップ11は、自身が照射したレーザ光の光ディスク1aからの反射光を電気信号に変換してRF信号生成部12へ出力する。また、光ディスク装置1が光ディスク1aへデータを記録する場合、制御部10は、最適な記録条件として予め設定された記録パルス幅、記録用パワー等に基づいて、光ディスク1aに記録すべきデータに応じた記録パルスを生成してピックアップ11へ出力する。そして、ピックアップ11は、制御部10から出力された記録パルスに従ってレーザ光を照射し、光ディスク1a上の適切なアドレスへデータの記録処理を行なう。
【0023】
RF信号生成部12は、ピックアップ11から出力された電気信号に対して増幅処理を行ない、増幅した電気信号に所定の閾値電圧に基づいて2値化処理する。また、RF信号生成部12は、2値化処理によって得られた2値化信号に対してPLL(Phase Locked Loop)回路によるクロック検出処理を行ない、検出したクロック信号に基づいて2値化信号を復号処理することにより、再生信号であるRF信号を生成する。このようにして得られたRF信号はOPC処理部13へ出力される。更に、RF信号生成部12は、ピックアップ11によるデータの再生処理の際のノイズ、光ディスク1a上の傷又は汚れ等により発生したデータの誤り(エラー)を検出する処理を行なっており、誤り訂正が可能な場合にはデータの訂正処理も行なう。
【0024】
OPC処理部13は、ピックアップ11が最適な記録用パワーのレーザ光を照射するためのOPC処理における各種の処理を行なう。具体的には、光ディスク1a上に予め設定されたPCA(Power Calibration Area)領域(テスト領域)に対して、ピックアップ11が、記録条件を段階的に変化させつつ記録処理を行なった後、このPCA領域に記録されたデータの再生処理を行なった場合にRF信号生成部12が生成したRF信号に基づいて、OPC処理部(調整手段)13が最適な記録用パワーを決定するOPC処理(調整処理)を行なう。
【0025】
より具体的には、OPC処理部13は、光ディスク1a上のPCA領域に記録されたデータを再生して得られたRF信号に対して、それぞれの記録条件毎に、所定期間内における最大値A1及び最小値A2を以下の式1に代入することによりβ値を算出する。また、図示しないメモリには、予め設定された最適なβ値が格納されている。従って、OPC処理部13は、それぞれの記録条件毎に算出した各β値と、メモリに格納されている最適なβ値とを比較することにより、最適な記録用パワーを特定することができる。
【0026】
β=(A1+A2)/(A1−A2) …(式1)
【0027】
このようにして特定された記録用パワーは、光ディスク1aに対して最適な記録用パワーであり、この記録用パワーは所定のメモリに格納され、光ディスク1aに対する以降の記録処理の際に用いられる。なお、光ディスク装置1が、光ディスク1a上へのデータの書き込み処理を行ないつつ、上述したように記録用パワーを逐次調整するランニングOPC処理を行なう構成の場合、上述のように特定された記録用パワーは、光ディスク1a上の対応する領域に対する記録処理の際に用いられる。
【0028】
また、OPC処理部13は、ピックアップ11が光ディスク1a上のPCA領域の再生処理を行なった場合に、RF信号生成部12による2値化処理によって得られた2値化信号と、PLL回路によるクロック検出処理によって検出されたクロック信号との位相差に基づいてRF信号のジッタ値を算出し、算出したジッタ値に基づいて最適な記録用パワーを決定してもよい。具体的には、OPC処理部13は、OPC処理のために段階的に設定された記録用パワーのそれぞれに対応するジッタ値を算出し、算出したジッタ値が、例えば最小値となる記録用パワーを最適な記録用パワーに決定する。なお、光ディスク装置1にジッタ測定部を別途に設け、ジッタ測定部によってジッタ値を測定するようにしてもよい。
【0029】
このようにRF信号におけるβ値又はジッタ値に基づいて決定された最適な記録用パワーに基づいて、制御部10が、光ディスク1aに記録すべきデータに応じた記録パルスを生成し、ピックアップ11が、制御部10によって生成された記録パルスに従ってレーザ光を照射して光ディスク1aへデータの記録処理を行なうことにより、光ディスク1a上に書き込まれたデータの信頼性を確保することができる。
【0030】
ここで、本実施形態の光ディスク装置1において、OPC処理部13は、RF信号に基づいて算出したそれぞれの記録パワーに応じたβ値が、予めメモリに格納されている最適なβ値とならない場合、OPC処理が正常に終了しなかったとして、その旨を制御部10へ通知する。制御部10は、OPC処理部13からの通知に従って、OPC処理が正常に終了したか否かを判断する判断手段として動作する。OPC処理が正常に終了しない場合としては、例えば、光ディスク1a上の塵埃、汚れ又は傷等が付着している領域に対してOPC処理を行なった場合がある。
【0031】
図2は本発明に係る光ディスク装置1によるOPC処理を説明するための説明図である。図2は、光ディスク1aを模式的に示すと共に、光ディスク1a上に設定されたPCA領域の一部を拡大表示している。光ディスク1a上には、同心円状(螺旋状)のトラックが形成されており、本実施形態の光ディスク装置1は、光ディスク1a上のPCA領域において、光ディスク1aの外周側のトラックから内周側のトラックの順に、螺旋状にOPC処理を順次実行する。各トラックについては、図2中の白抜き矢符Aで示す方向にOPC処理を実行する。なお、図2中の破線は、光ディスク1a上の各トラックにおいて、それぞれのOPC処理に用いられる領域(記録位置)を模式的に示している。
【0032】
また、図2中101はN回目のOPC処理における領域を、102はN+1回目のOPC処理における領域を、104はN+2回目のOPC処理における領域をそれぞれ示している。また、図2中100は光ディスク1a上の塵埃、汚れ又は傷等(以下、代表して塵埃という)を示しており、領域102に対して行なったOPC処理は正常に終了しなかったものとする。
【0033】
本実施形態の光ディスク装置1では、上述したようにOPC処理が正常に終了しなかった場合、即ち何らかの原因でOPC処理が失敗した場合、制御部10は、失敗したOPC処理を行なった領域102から、この領域102のトラックから所定数、図2においては2つ内周側のトラックにおける領域104に記録位置を変更する位置変更手段として動作する。従って、制御部10は、このように記録位置を変更した領域104に対して次のOPC処理をOPC処理部13に実行させる。
【0034】
なお、制御部10は、失敗したOPC処理を行なった領域102から、次にOPC処理を行なう領域104までの領域103(図2においてはハッチングを付加した部分)に対して、予め設定された所定の記録用パワーのレーザ光による記録処理をピックアップ11によって実行しており、この領域103への記録処理が終了した後に、領域104に対する次のOPC処理におけるデータの記録処理をピックアップ11によって実行する。
【0035】
ここで、光ディスク1aには、光ディスク1aにデータを記録する際に必要な各種の情報が予め製造メーカによって記録されており、前述の予め設定された所定の記録用パワーとは、このように製造メーカによって光ディスク1aに予め記録された記録用パワーを用いる。なお、前述の予め設定された記録用パワーとしては、失敗したOPC処理よりも以前に正常に実行されたOPC処理によって決定された最適な記録用パワーを用いてもよい。また、予め設定された所定の記録用パワーでの記録処理を行なう領域103は、失敗したOPC処理を行なった領域102のトラックと、次のOPC処理を行なう領域104のトラックとが所定数離隔する程度の大きさを有していればよく、例えば、5ECCブロック(1ECCブロックは16セクタ)分の領域とする。なお、この領域の大きさは、例えば制御部10のROM等に予め格納してある。
【0036】
これにより、光ディスク1a上の塵埃100が原因で領域102に対するN+1回目のOPC処理が失敗した場合に、領域102から5ECCブロック分の領域103を隔てた領域104、即ち、領域102のトラックから2つ内周側のトラックの領域104に対してN+2回目のOPC処理を行なうので、塵埃100によってN+2回目のOPC処理が失敗する可能性は非常に低い。よって、光ディスク1a上に塵埃100が付着している場合であっても、OPC処理が連続して失敗することを防止し、安定したOPC処理を可能とし、光ディスク1a上に書き込まれたデータの信頼性をより安定に確保することができる。また、領域102に対するN+1回目のOPC処理が失敗した場合に、領域103に対して予め設定された記録用パワーのレーザ光による記録処理を行なうことにより、OPC処理を失敗した領域102とその近傍の領域103を、正常に終了したOPC処理を行なった領域101,104と明確に区別することができる。
【0037】
以下に、上述した構成の光ディスク装置1において、OPC処理によって最適な記録用パワーを設定する処理について説明する。図3は本発明に係る光ディスク装置1における最適な記録用パワーの設定処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下の処理は、制御部10に内蔵されたROMに予め格納されている制御プログラムに従って制御部10によって実行される。
【0038】
光ディスク装置1において、制御部10は、光ディスク1a上に予め設定されたPCA領域に対してピックアップ11による記録処理を行ない、このPCA領域に記録されたデータをピックアップ11が読み出して再生した場合に、RF信号生成部12によって生成されたRF信号に基づいて、OPC処理部13によるOPC処理を実行する(S1)。制御部10は、OPC処理部13からの通知に従って、OPC処理が正常に終了したか否かを判断し(S2)、OPC処理が正常に終了したと判断した場合(S2:YES)、このOPC処理によって決定した記録用パワーを最適な記録用パワーとして自身のRAMに記憶することにより設定し(S3)、以降の記録処理に用いる。
【0039】
制御部10は、OPC処理が正常に終了しなかったと判断した場合(S2:NO)、予め設定された所定の記録用パワーでの記録処理をピックアップ11によって実行する(S4)。制御部10は、所定領域、例えば5ECCブロック分の領域に対する所定の記録用パワーによる記録処理が終了したか否かを判断し(S5)、終了していないと判断した場合(S5:NO)、ステップS4へ処理を戻し、所定の記録用パワーでの記録処理を継続する(S4)。
【0040】
制御部10は、所定領域に対する記録処理が終了したと判断した場合(S5:YES)、ステップS1へ処理を戻し、OPC処理を再度実行する(S1)。なお、具体的には、制御部10は、光ディスク1a上のPCA領域に対してピックアップ11によって記録処理を行ない、このPCA領域に記録されたデータをピックアップ11が読み出して再生した場合に、RF信号生成部12によって生成されたRF信号に基づいて、OPC処理部13によって最適な記録用パワーを決定する。
【0041】
制御部10は、上述したように決定した最適な記録用パワーを自身のRAMに格納しておき、以降の記録処理の際に、この最適な記録用パワーに基づいて、光ディスク1aに記録すべきデータに応じた記録パルスを生成してピックアップ11へ出力する。これにより、制御部10から出力された記録パルスに従って、ピックアップ11が最適な記録用パワーでのレーザ光を照射するので、光ディスク1a上に記録されたデータの信頼性を安定に確保することができる。
【0042】
上述したように、本実施形態の光ディスク装置1では、OPC処理が正常に終了できなかった場合、失敗したOPC処理を行なった領域102から5ECCブロック分の領域103を隔てた領域104、即ち、領域102のトラックから2つ内周側のトラックの領域104に対して次のOPC処理を行なうことにより、例えば塵埃100によってOPC処理が失敗した場合であっても、次のOPC処理が失敗する可能性を低減することができる。また、失敗したOPC処理を行なった領域102から5ECCブロック分の領域103に対して所定の記録用パワーでの記録処理を行なうことにより、OPC処理を失敗した領域102及びその近傍の領域103を、正常に終了したOPC処理を行なった領域101,104と明確に区別することができる。
【0043】
上述した実施形態では、RF信号の所定期間内におけるβ値に基づいて最適な記録用パワーを決定するOPC処理を行なう構成の光ディスク装置1を例として説明した。しかし、RF信号の所定時間内におけるジッタ値に基づくOPC処理を行なう構成の光ディスク装置1においては、算出したジッタ値が本来取り得る値とならない場合、OPC処理が正常に終了しなかったとし、失敗したOPC処理を行なった領域から所定領域(上述した実施形態では5ECCブロック分の領域)を隔てた領域に対して次のOPC処理を行なうように構成すればよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、OPC処理が正常に終了しなかった場合、5ECCブロック分の領域103に対する所定の記録用パワーでの記録処理を行なった後に、領域104に対して次のOPC処理を行なう構成の光ディスク装置1について説明した。しかし、領域102に対するOPC処理が正常に終了しなかった場合、領域102から5ECCブロック分の領域103を隔てた領域104に対する次のOPC処理を先に行なった後に、領域103に対する記録処理を行なうように光ディスク装置1を構成してもよい。例えば、光ディスク装置1に光ディスク1aを装着した際の初期処理として実行されるOPC処理において、このOPC処理が終了した場合に、領域103に対する記録処理を行なえばよい。
【0045】
更に、上述した実施形態の光ディスク装置1は、OPC処理が正常に終了しなかった領域102から所定の5ECCブロック分の領域103を隔てた領域104に対して次のOPC処理を行なう。しかし、領域102においてOPC処理が正常に終了しなかった場合、領域102から内周側に所定数(図2においては1つ)のトラックを離隔したトラックにおける領域104を次のOPC処理のための領域としてもよい。この場合、OPC処理が正常に終了しなかった領域102から確実に所定数のトラックを離隔したトラックにおいて次のOPC処理を行なうことができ、次のOPC処理において光ディスク1a上の塵埃、汚れ又は傷等の影響をより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るディスク記録再生装置としての光ディスク装置の要部構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る光ディスク装置によるOPC処理の説明図である。
【図3】本発明に係る光ディスク装置における最適な記録用パワーの設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】従来のOPC処理の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 光ディスク装置(ディスク記録再生装置)
1a 光ディスク(記録媒体)
10 制御部(判断手段、位置変更手段)
11 ピックアップ(記録手段、再生手段)
13 OPC処理部(調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状又は同心円状のトラックが形成されたディスク形状の記録媒体上に光ビームを照射させてデータを記録する記録手段と、該記録手段が記録したデータを再生して再生信号を出力する再生手段と、該再生手段が出力した再生信号に基づいて、データを記録する際の前記光ビームの記録用パワーを最適に調整する調整処理を行なう調整手段とを備えるディスク記録再生装置において、
前記調整手段による調整処理が正常に終了したか否かを判断する判断手段と、
該判断手段による判断結果が否である場合、正常に終了しなかった調整処理のために前記記録手段が前記データを記録したトラックから所定数離隔したトラックにデータの記録位置を変更する位置変更手段と
を備え、
前記記録手段は、前記判断手段による判断結果が否である場合、前記位置変更手段が変更した記録位置にデータを記録するように構成してあることを特徴とするディスク記録再生装置。
【請求項2】
前記記録手段は、前記判断手段による判断結果が否である場合、正常に終了しなかった調整処理のためにデータを記録した記録位置から、前記位置変更手段が変更した記録位置までの領域に、所定の記録用パワーの光ビームでデータを記録するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載のディスク記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−41148(P2008−41148A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212349(P2006−212349)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】