説明

ディスク駆動装置

【課題】大型化や駆動性能の低下を抑制しつつ流体動圧軸受の剛性を向上できる構造を有するディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】ディスク駆動装置は軸受ユニットと駆動ユニットを含む。軸受ユニットは、シャフト28と当該シャフト28を軸として相対的な回転を許容するスリーブ42と、シャフト28の半径方向に突出し、当該シャフト28と一体で回転するフランジ30と、スリーブ42に連続して設けられ、フランジ30を回転自在に収納するフランジ収納空間部42bと、フランジ30の軸方向の端面と対向すると共にフランジ収納空間部42bを封止する第1面44aとその反対側の第2面44bとで構成されるカウンタープレート44とを含む。そして、フランジ30の突出寸法は、フランジ収納空間部42bを画成するフランジ周囲壁部42eのフランジの半径方向の肉厚寸法より大きく形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク駆動装置、特に大型化や駆動性能の低下を抑制しつつ流体動圧軸受の剛性を向上させたディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの記憶装置等に使用されるメディアとして、ハードディスクドライブ(HDD)がある。このような記録ディスクを駆動する装置は総称してディスク駆動装置と呼ばれている。ディスク駆動装置は、磁気データを記録するための記録トラックが形成された記録ディスクをブラシレスモータにより高速で回転させている。そして、記録ディスクに対して磁気データのリード/ライトを実行する磁気ヘッドが記録ディスクの記録面の上方に僅かな隙間をもって配置され、記録トラックをトレースするように構成されている。
【0003】
このようなディスク駆動装置の軸受部には、流体動圧軸受が採用されている場合が多い。流体動圧軸受の一般的な構造が、例えば特許文献1に開示されている。流体動圧軸受は、シャフトなどの回転体の一部に動圧発生用の動圧溝を備え、回転体の回転時に周囲に充填された油などの潤滑剤と相互に作用して動圧を発生させる。そして、発生した動圧により潤滑剤中の回転体を周囲の構造部品から離反させて非接触状態とすることにより荷重を受ける軸受である。
【0004】
このような流体動圧軸受を備えることによりディスク駆動装置の回転精度が飛躍的に向上し磁気データの高密度・大容量化が可能になった。その結果、流体動圧軸受を備えるディスク駆動装置は、様々な機器に搭載されるようになり使用環境が広範囲となった。例えば、モバイル機器に搭載される場合が増えた。このような使用状況下において、ディスク駆動装置は、当該ディスク駆動装置またはディスク駆動装置を搭載する機器に衝撃等が加えられても安定した回転駆動を実現し、正常に磁気データのリード/ライトが実行できる性能が求められている。特にモバイル機器に搭載されるディスク駆動装置は、耐衝撃性能が重要視される傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−304052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスク駆動装置において、例えばスラスト方向の衝撃が加えられた場合でも当該ディスク駆動装置の動作を安定的に維持するためには、記録ディスクのスラスト位置が衝撃に対して変動しないようにすることが望ましいということを本発明者らは認識している。つまり、流体動圧軸受のスラスト方向の剛性を高めることが有効であるとの認識を得ている。例えば、記録ディスクを回転させるシャフトに固定されたフランジと、このフランジを回転自在に収納するフランジ収納部を備えると共にシャフトを収納できるスリーブを含むディスク駆動装置を考える。この場合、フランジはスラスト方向の動圧を発生する機能を有するので、フランジの直径を増加させればスラスト方向の剛性を向上させられる。しかしながら、小型化が強く要求されるディスク駆動装置においては、その外形を構成するハウジングを大きくすることは望ましくない。そのため、フランジの直径を大きくすると、フランジより外周側に配置される駆動ユニットの配置スペースの圧迫を招く。駆動ユニットが小さくなると、必要なトルクを発生させるための駆動電流が増大し、当該ディスク駆動装置を搭載する電子機器側の要求性能を満たせなくなる場合がある。また、駆動電流を増大させない場合、最大トルクが低下するので回転が不安定となり、磁気データのリード/ライト精度を低下させてしまうことがあった。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、大型化や駆動性能の低下を抑制しつつ流体動圧軸受の剛性を向上できる構造を有するディスク駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のディスク駆動装置は、ベース部材と、ベース部材に配置され当該ベース部材に対して記録ディスクを回転自在に支持する軸受ユニットと、軸受ユニットに支持される記録ディスクを回転駆動する駆動ユニットと、を含む。軸受ユニットは、回転中心となるシャフトと、シャフトを収納する収納部を有すると共に、当該シャフトを軸として相対的な回転を許容するスリーブと、スリーブの収納部の内壁面とシャフトの外壁面とで定義されるラジアル空間部と、ラジアル空間部を定義するスリーブの内壁面とシャフトの外壁面の少なくとも一方に形成されてラジアル動圧を発生させるラジアル動圧溝と、シャフトの半径方向に突出し、当該シャフトと一体で回転するフランジと、スリーブに連続してフランジの半径方向外側に形成されるフランジ周囲壁部により画成され、フランジを回転自在に収納するフランジ収納空間部と、フランジの軸方向の端面と対向すると共にフランジ収納空間部を封止する第1面と、当該第1面の反対側の第2面とで構成されるカウンタープレートと、フランジとフランジ収納空間部のスラスト方向に対向する面との少なくとも一方、及びフランジとカウンタープレートの第1面との少なくとも一方に形成されてスラスト動圧を発生させるスラスト動圧溝と、ラジアル空間部とフランジ収納空間部とに充填される潤滑剤と、を備える。フランジの突出寸法は、フランジ周囲壁部のフランジの半径方向の肉厚寸法より大きく形成する。
【0009】
フランジの突出寸法は、シャフトの半径方向外側に突出した部分の寸法であり、この突出寸法が大きくなれば、その分スラスト動圧を発生させるスラスト動圧溝を増やすことが可能になりスラスト動圧が増大できる。つまり、スラスト動圧の発生に関与しないフランジ収納空間部を画成するフランジ周囲壁部の肉厚部分を低減しつつ、スラスト動圧の発生に直接関与するフランジの突出寸法を増大することで、スリーブの外形寸法に影響を与えることなく大型化を回避しつつスラスト動圧の増大ができる。また、スリーブより外周側にある駆動ユニットの配置スペースが狭くなることが抑制できる。その結果、大型化や駆動性能の低下を抑制しつつ流体動圧軸受の剛性が向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型化や駆動性能の低下を抑制しつつ流体動圧軸受の剛性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態のディスク駆動装置の一例であるHDDの内部構成を説明する説明図である。
【図2】本実施形態のディスク駆動装置におけるブラシレスモータの概略断面図である。
【図3】本実施形態のディスク駆動装置のブラシレスモータにおいて、スリーブの端部とカウンタープレートとによって形成されるフランジ収納空間部とその周辺の拡大断面図である。
【図4】比較例のブラシレスモータにおいて、スリーブの端部とカウンタープレートとによって形成されるフランジ収納空間部とその周辺の拡大断面図である。
【図5】本実施形態のディスク駆動装置のブラシレスモータにおいて、スリーブの端部とカウンタープレートの間に塗布される接着剤の硬化状態を説明する説明図である。
【図6】比較例のブラシレスモータにおいて、スリーブの端部とカウンタープレートの間に塗布される接着剤の硬化状態を説明する説明図である。
【図7】本実施形態のディスク駆動装置の他の構造を説明する部分断面図である。
【図8】本実施形態のディスク駆動装置の他の構造を説明する部分断面図である。
【図9】本実施形態のディスク駆動装置の他の構造を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
本実施形態は、ハードディスクドライブ装置(単にHDD、ディスク駆動装置という場合もある)に搭載されて記録ディスクを駆動するブラシレスモータや、CD(Compact Disc)装置、DVD(Digital Versatile Disc)装置等の光学ディスク記録再生装置(単に、ディスク駆動装置ともいう)に搭載されるディスク駆動モータ等に用いられる。
【0013】
図1は、本実施形態のディスク駆動装置の一例であるHDD10(以下、単にディスク駆動装置10という)の内部構成を説明する説明図である。なお、図1は、内部構成を露出させるためにカバーを取り外した状態を示している。
【0014】
ベース部材12の上面には、ブラシレスモータ14、アーム軸受部16、ボイスコイルモータ18等が載置されている。ブラシレスモータ14は、記録ディスク20を搭載するためのハブ部材22を回転軸上に支持し、例えば磁気的にデータを記録可能な記録ディスク20を回転駆動する。ブラシレスモータ14は、例えばスピンドルモータとすることができる。ブラシレスモータ14はU相、V相、W相からなる3相に駆動電流が流れることにより駆動する。アーム軸受部16は、スイングアーム24を可動範囲AB内でスイング自在に支持する。ボイスコイルモータ18は外部からの制御データにしたがってスイングアーム24をスイングさせる。スイングアーム24の先端には磁気ヘッド26が取り付けられている。ディスク駆動装置10が稼働状態にある場合、磁気ヘッド26はスイングアーム24のスイングに伴って記録ディスク20の表面から僅かな隙間を介して可動範囲AB内を移動し、データをリード/ライトする。なお、図1において、点Aは記録ディスク20の最外周の記録トラックの位置に対応する点であり、点Bは記録ディスク20の最内周の記録トラックの位置に対応する点である。スイングアーム24は、ディスク駆動装置10が停止状態にある場合に記録ディスク20の脇に設けられた待避位置に移動してもよい。
【0015】
なお、本実施形態において、記録ディスク20、スイングアーム24、磁気ヘッド26、ボイスコイルモータ18等の磁気データをリード/ライトする構造を全て含むものをディスク駆動装置と表現する場合もあるし、HDDと表現する場合もある。また、記録ディスク20を回転駆動する部分のみをディスク駆動装置と表現する場合もある。
【0016】
図2は、本実施形態のディスク駆動装置10におけるブラシレスモータ14の概略断面図である。
ブラシレスモータ14はディスク駆動装置に搭載される例えば直径が約95mmの3.5インチ型の記録ディスク20を2枚回転させる。なお、この場合、2枚の記録ディスク20のそれぞれの中央の孔の直径は25mm、厚みは1.27mmである。ブラシレスモータ14は、略カップ状のハブ部材22と、シャフト28と、フランジ30と、ヨーク32と、円筒状マグネット34とで、回転体として機能するロータ36を構成する。具体的には、シャフト28の一端がハブ部材22の中心に設けられた開口部22aに圧入と接着を併用して固着されている。また、シャフト28の他端にはフランジ30が圧入状態で固着されている。したがって、ブラシレスモータ14の回転時にはロータ36が一体となってモータ回転軸Rの回りを回転する。
【0017】
ハブ部材22は、モータ回転軸Rを中心とする外形が凸状の部品である。本実施形態のブラシレスモータ14は、2枚の記録ディスク20がハブ部材22に載置されるタイプを示す。ハブ部材22の図中矢印A方向に突出した円筒部の外筒面22bに2枚の記録ディスク20a,20bの中央の孔が嵌合される。なお、本実施形態において図中矢印A方向を「上方向」や「上面側」という場合がある。2枚の記録ディスク20のうち記録ディスク20aは、ハブ部材22の外筒面22bの端部から半径方向に張り出した着座部22cに着座する。記録ディスク20a,20bの間には、円環状の第1スペーサ46が配置されている。そして、第1スペーサ46が記録ディスク20bを着座部22cに対して支持する。また、記録ディスク20bの上面側には第2スペーサ48が配置され、2枚の記録ディスク20を固定するクランパ50により押圧固定されている。クランパ50は複数のクランプネジ52によってハブ部材22に固定される。なお、本実施形態の場合、ハブ部材22の外筒面22bの直径は例えば25mmである。
【0018】
ハブ部材22は、ヨーク32と2枚の記録ディスク20a,20bとによって挟まれる円筒状の隔壁部22dを有する。ヨーク32はその断面形状がL字型であり、鉄などの磁性材料により形成されている。ヨーク32は隔壁部22dの内周面に接着と圧入との併用により固定されている。隔壁部22dの内周面には、ヨーク32が圧入される際にヨーク32が押し当てられる複数の凸部が形成されている。そして、隔壁部22dの内周面に適量の接着剤を塗布しておき、ヨーク32をハブ部材22に圧入することにより、隔壁部22dの内周面とヨーク32の外周面との間に接着剤が充填され、均質な接着強度が得られるようにしている。
【0019】
さらに、ヨーク32の内周面には円筒状マグネット34が接着固定されている。円筒状マグネット34は、ネオジウム、鉄、ホウ素などの希土類材料によって形成され、積層コア38に形成された例えば12個の突極と径方向に対向可能に配置されている。円筒状マグネット34にはその周方向にn極(nは2以上の偶数)の駆動用着磁が施されている。つまり、円筒状マグネット34はヨーク32を介してハブ部材22に固定される。
【0020】
本実施形態のブラシレスモータ14において、ベース部材12と、積層コア38と、コイル40と、スリーブ42と、カウンタープレート44とが固定体として機能するステータ54を構成する。ステータ54は、ブラシレスモータ14の回転時にロータ36を回転自在に支持する。ベース部材12はディスク駆動装置10のハウジングとしても機能することができる。ベース部材12にはモータ回転軸Rを中心とした円筒状部12aが設けられ、その円筒状部12aの内周面にスリーブ42が接着固定されている。スリーブ42は、円筒中空形状の収納部42aを有し、さらに、スリーブ42の端部には、当該スリーブ42に連続して形成され、シャフト28の端部に固定されたフランジ30を回転自在に収納するフランジ収納空間部42bを有する。フランジ収納空間部42bは、スリーブ42に連続してフランジ30の半径方向外側に形成されるフランジ周囲壁部42eにより画成される。つまり、収納部42a、フランジ収納空間部42bを含むスリーブ42にフランジ30が固定されたシャフト28が回転自在に収まることになる。また、スリーブ42のフランジ収納空間部42bを画成するフランジ周囲壁部42eの端面にはカウンタープレート44が接着剤56により固定されている。なお、ベース部材12はHDDのハウジングと別体とされてもよい。
【0021】
ロータ36の一部であるシャフト28およびフランジ30と、ステータ54の一部であるスリーブ42およびカウンタープレート44との間には潤滑剤が注入されている。そして、シャフト28、フランジ30、潤滑剤、スリーブ42およびカウンタープレート44はハブ部材22を回転自在に支持する軸受ユニット100を構成する。
【0022】
スリーブ42の内周面には、上下に離間した1組のヘリングボーン形状のラジアル動圧溝RB1,RB2が形成されている。また、フランジ30のスリーブ対向面には、ヘリングボーン形状の第1スラスト動圧溝SB1が形成され、カウンタープレート対向面にはヘリングボーン形状の第2スラスト動圧溝SB2が形成されている。ブラシレスモータ14の回転時には、これらの動圧溝と潤滑剤とによって生成される動圧によって、シャフト28およびフランジ30を周囲の壁面から離反させ、ロータ36をラジアル方向およびスラスト方向に支持する。なお、ラジアル動圧溝RB1,RB2は、スリーブ42の内壁面とシャフト28の外壁面の少なくとも一方に形成されればよく、同様のラジアル動圧を発生できる。同様に、スラスト動圧溝SB1,SB2は、フランジ30とフランジ収納空間部42bのスラスト方向に対向する面との少なくとも一方、及びフランジ30とカウンタープレート44の第1面44aとの少なくとも一方に形成されればよく、同様のスラスト動圧を発生できる。
【0023】
なお、スリーブ42の開放端側には、スリーブ42の内周面とシャフト28の外周面との間の隙間が上方に向けて徐々に広がるキャピラリーシール部58が形成されている。キャピラリーシール部58は毛細管現象により潤滑剤がその充填部から漏れ出すのを防止する機能を有する。
【0024】
積層コア38は、円環部とそこから半径方向外側に伸びる12個の突極を有する。この積層コア38は、例えば18枚の薄型電磁鋼板を積層してレーザ溶接等により一体化して形成されている。それぞれの突極にはコイル40が巻回されている。このコイル40に3相の略正弦波状の駆動電流を流すことにより突極に沿って駆動磁束が発生する。積層コア38は、円環部の内周面がベース部材12の円筒状部12aの外周面に隙間ばめによって嵌め込まれ、接着剤等により固定されている。そして、積層コア38とコイル40と円筒状マグネット34によって、駆動ユニット102が構成されている。
【0025】
このように構成されるブラシレスモータ14の動作について説明する。ブラシレスモータ14を回転させるために、3相の駆動電流がブラシレスモータ14のコイル40に供給される。駆動電流がコイル40を流れることにより、12個の突極に沿って駆動磁束が発生し、円筒状マグネット34に回転方向のトルクが与えられてロータ36全体が回転する。
【0026】
次に、本実施形態における流体動圧軸受の剛性を向上させるための構造を当該本実施形態の構造と比較例の構造を用いて説明する。
図3は、本実施形態のディスク駆動装置10のブラシレスモータ14において、スリーブ42の端部とカウンタープレート44とによって形成されるフランジ収納空間部42bとその周辺の拡大断面図である。また、図4は、比較例におけるディスク駆動装置のブラシレスモータにおいて、スリーブ200の端部とカウンタープレート202とによって形成されるフランジ収納空間部200aとその周辺の拡大断面図である。
【0027】
まず、比較例においてフランジ204を収納するフランジ収納空間部200aの構成およびカウンタープレート202の接続構造について説明する。なお、ブラシレスモータの軸受ユニットや駆動ユニットの基本構造は、図2に示すブラシレスモータ14の構造と同等であり、その詳細な説明は省略する。
【0028】
比較例を含め従来のブラシレスモータの多くの構造において、フランジ収納空間部200aを塞ぐカウンタープレート202は、スリーブ200におけるカウンタープレート202の嵌込部の内周面に接着剤206を塗布してから嵌め込み、その後に接着剤206を硬化させる。したがって、カウンタープレート202を嵌め込むとき、接着剤206はカウンタープレート202によって余剰分が押し出され、カウンタープレート202とスリーブ200の対向面である径方向接合部200bに移動する。このとき、フランジ収納空間部200aに対して径方向接合部200bの距離が短いと、接着剤206がフランジ収納空間部200aに侵入してしまう場合がある。例えば、接着剤206がフランジ204とスリーブ200との隙間やフランジ204とカウンタープレート202との隙間に入り込んでしまう場合がある。これらの隙間は極めて狭く構成されているため、接着剤206の侵入はそのままブラシレスモータの回転不具合の原因となる。
【0029】
以下、比較例における各部材の具体的なサイズの一例を示す。図4において、シャフト208の外周直径(以下外径という)は4.0mmで、カウンタープレート202の外径φaは9.0mm、厚みmは0.5mmとする。また、フランジ204の外径φbは6.5mm、フランジ収納空間部200aの内周直径(以下内径と略す)φcは6.8mmで、フランジ収納空間部200aに対応するスリーブ200の外径φdは10.7mmである。したがって、接着剤206の塗布部とフランジ収納空間部200aとの距離LSは、(a−c)/2=1.1mmとなる。
【0030】
ところで、流体動圧軸受を構成するフランジ付きのシャフトが回転することより発生するスラスト動圧に基づくスラスト方向の剛性は、フランジの外形の大きさに概ね比例するという実験結果を本発明者らは得ている。このため、比較例においても、フランジ204の外径φbを大きくしてスラスト方向の剛性を高めることができる。この場合、フランジ204の外径とフランジ収納空間部200aの内径部との隙間を同じにしつつ、フランジ204の外径φbを大きくするとフランジ収納空間部200aの内径φcも同様に大きくなる。内径φcが大きくなると接着剤206の存在領域である径方向接合部200bの距離LSが短くなる。前述したように径方向接合部200bの距離LSが短くなると接着剤206がフランジ収納空間部200aに侵入する確率が高くなり、ブラシレスモータが回転不良を起こす確率が高くなるという問題が生じる。
【0031】
一方、流体動圧軸受のスラスト方向の剛性を高めるのに、フランジ204の外径φbを大きくすると共に、スリーブ200の外形φdを大きくすれば、フランジ204の外径とフランジ収納空間部200aの内径部との隙間を維持しつつ径方向接合部200bの距離も維持できる。しかし、ブラシレスモータを含むディスク駆動装置のハウジングの大きさは、当該ディスク駆動装置が搭載される機器における搭載スペースにより制限を受けるため大きくすることが困難である。したがって、スリーブ200の外径φdが大きくなれば、その分だけ駆動ユニットを収納するスペースが減少することになる。つまり、積層コアの配置位置が半径方向外側に押し出され、積層コアの内径が大きくなる。その結果、コイルを巻ける巻線空間が減少し、コイルの巻数が大幅に減る。コイルの巻数が減ると、その減少分に比例してトルクが減少しロータの回転が不安定となり、正常な磁気データのリード/ライト動作の障害となるという問題が生じる。また、必要なトルクを維持しようとすると駆動電流を増大する必要が生じて省電力化の妨げとなり性能上好ましくない。
【0032】
本発明者らは、比較例の検討から、流体動圧軸受のスラスト方向の剛性を高めるためには、フランジ収納空間部の内径を大きく構成しつつ積層コアの内径を小さくできるように、フランジ収納空間部に対応するスリーブの外径を小さく構成することが望ましいとの考えに到った。
【0033】
そこで、本実施形態のブラシレスモータ14のフランジ30、スリーブ42、カウンタープレート44は、図3に示すような寸法の関係を有するようにしている。第1段階として、フランジ30の突出寸法Xをフランジ収納空間部42bを画成するフランジ周囲壁部42eのフランジ30の半径方向の肉厚寸法Yより大きく形成する。そして、第2段階として、カウンタープレート44の厚み寸法Dをフランジ収納空間部42bを封止するときにカウンタープレート44の第1面44aがフランジ周囲壁部42eの端部42cと対向する対向幅寸法Zより大きくする。
【0034】
第1段階の構成を採用することによりフランジ30の外形を増大できるので、ブラシレスモータ14のスラスト方向の剛性を向上できる。また、第2段階の構成を採用することにより、接着剤56の塗布位置をフランジ収納空間部42bからカウンタープレート44の厚み寸法Dの増加分だけ遠ざけられる。つまり、カウンタープレート44を接着固定するための接着剤56がフランジ収納空間部42bに至るまでの距離を長くすることができて、接着剤56のフランジ収納空間部42bへの侵入の可能性を低減できる。
【0035】
図3に示すように、スリーブ42は、フランジ収納空間部42bをカウンタープレート44で封止するために当該カウンタープレート44を受け入れる嵌込部42dをフランジ周囲壁部42eより下方に有している。この嵌込部42dはスリーブ42の端部外周部を延出することで形成できる。本実施形態において、スリーブ42にカウンタープレート44を接着固定する場合、まずカウンタープレート44を嵌込部42dに嵌め込む。その後、カウンタープレート44の第1面44aの反対側である第2面44bに接着剤56を塗布する。より具体的には、カウンタープレート44と嵌込部42dとの間で、カウンタープレート44の周部に沿って接着剤56を塗布して硬化させる。なお、接着剤56の接着強度に応じて、接着剤56は、カウンタープレート44における第2面44b側の外縁角部と、当該外縁角部と対向する嵌込部42dとを跨ぐように外縁角部の周部に沿って連続して塗布してもよいし、周部に間欠的に塗布してもよい。このように、カウンタープレート44の外縁角部と対向する嵌込部42dとを跨ぐように接着剤56を塗布することにより接着強度を容易に向上できる。
【0036】
上述した第1段階の構成および第2段階の構成において、接着剤56を上述のように塗布することにより、接着剤56の塗布位置からフランジ収納空間部42bまでの距離をカウンタープレート44の厚み寸法Dの増加分だけ長くできる。したがって、フランジ収納空間部42bへ接着剤56が侵入する可能性を効果的に低減できる。特に、第1段階の構成と第2段階の構成を兼ね備えたブラシレスモータ14において、上述のような接着剤56の塗布を行うことにより、ブラシレスモータ14のスラスト方向の剛性向上と接着剤56の侵入回避が同時に可能になりブラシレスモータ14の品質向上に寄与できる。
【0037】
以下、図3のブラシレスモータにおける各部材の具体的なサイズの一例を示す。
シャフト28の外径は4.0mmで、フランジ30の外径φAは7.8mmに、フランジ収納空間部42bの内径φBは8.1mmに拡大する。一方、カウンタープレート44の外径φCは9.0mmで、フランジ収納空間部42bが対応するスリーブ42の外径φEは10.7mmとする。この構成により、フランジの径方向寸法X=1.9mmで、スリーブ42のフランジ収納空間部42bに対応するフランジ周囲壁部42eのフランジの半径方向の肉厚寸法Y=1.3mmが確保できる。このような寸法構成にすることにより、比較例に対して流体動圧軸受のスラスト方向の剛性を高めながら、積層コア38の内径を小さいままとし、コイル40の巻回数低下による駆動電流の増大やトルクの低下を防止できる。その結果、安定したブラシレスモータ14の回転も実現できる。なお、コイル40の巻回数低下による駆動電流の増大を防止できるので、ディスク駆動装置10の省電力化も維持できる。
【0038】
また、本実施形態においては、スラスト方向の剛性を向上しながらトルク低下を防止するために、フランジ30の外径を大きくする一方で、スリーブ42の外径は大きくしない。つまり、カウンタープレート44の第1面44aとスリーブ42におけるフランジ周囲壁部42eの端部42cが対向する対向寸法Zはできるだけ小さくする。その一方で、接着剤56の塗布領域とフランジ収納空間部42bとの距離を長くするために、カウンタープレート44の厚み寸法Dを大きくしている。具体的には、カウンタープレート44の第1面44aがスリーブ42におけるフランジ周囲壁部42eの端部42cと対向する対向寸法Zは、Z=(φC−φB)/2=(9.0−8.1)/2=0.45mmのように小さくしている。また、カウンタープレート44の厚み寸法Dは、D=1.0mmのように大きくしている。この結果、スラスト方向の剛性向上とトルク低下防止を実現しつつ、接着剤56の塗布領域とフランジ収納空間部42bとの距離LSは、LS=Z+D=1.45mmになり、比較例における距離LS=1.1より長くできる。その結果、接着剤56がフランジ収納空間部42bに侵入する可能性を低下させることが可能となり、ブラシレスモータ14の信頼性向上に寄与できる。
【0039】
ところで、カウンタープレート44の接合強度をより向上しようとする場合、接着剤56の塗布量を増加させることが考えられるが、その反面、接着剤56がフランジ収納空間部42bに侵入する可能性も高くなる。そこで、本実施形態においては、図5に示すように、嵌込部42dは、カウンタープレート44の第2面44b側の外縁角部44cに対応する位置とカウンタープレート44の第1面44a側の外縁角部44dに対応する位置との間にシャフトの半径方向に窪んだ第1凹部60を有する。このような第1凹部60を形成することにより、第1凹部60の容積分だけ多くの量の接着剤56を塗布することが可能になり接着強度を向上できると共に、第1凹部60がない場合より多くの接着剤56を塗布しても、接着剤56がフランジ収納空間部42bに侵入する可能性を低減できる。
【0040】
ディスク駆動装置10に落下などの原因で衝撃力が加わると、シャフト28はカウンタープレート44に衝突して、カウンタープレート44が嵌込部42dから脱落する方向の衝撃応力Fを受けることなる。本実施形態では、図5に示すように、カウンタープレート44の第2面44bの外縁角部44cが第1凹部60の窪みに対応させてカウンタープレート44を嵌込部42dに嵌め込むようにしている。この場合、第1凹部60の窪みの中央部分と外縁角部44cが対応するようにすることが好ましい。このような配置にすることより、接着剤56は、カウンタープレート44の第2面44bと第1凹部60を覆い、第1凹部60と第2面44bが対応しない場合に比べてより多くの接着剤56が第2面44bを支持固定して接着強度を向上できる。その結果、ディスク駆動装置10に衝撃が加わった場合でもその衝撃力を接着剤56により吸収して、カウンタープレート44の脱落抑制の効果を向上できる。
【0041】
図6に、カウンタープレートの接着の比較例を示す。この比較例の場合、硬化した接着剤206がカウンタープレート202の第2面202aを覆っていない。前述したように、ディスク駆動装置に衝撃力が加えられた場合、衝撃応力Fが作用する。この場合の衝撃応力Fは、接着剤206の接着部に剪断応力R又は引張応力として作用する。このような剪断応力R又は引張応力により接着部の一部に剥離が生じると、残った接着部に応力が集中するため剥離が連鎖的に拡大して接合強度が低下する。
【0042】
一方、図5に示す本実施形態のように、硬化した接着剤56がカウンタープレート44の第2面44bと第1凹部60を覆う場合は、衝撃応力Fは矢印Pで示すように接着部に圧縮の応力として作用する。このような圧縮の応力は、接着剤56の連続的な剥離を誘発させ難く、カウンタープレート44の接合強度を比較例より高く維持することが可能になる。その結果、接着剤56の塗布を第1凹部60と第2面44bの周辺のみでとどめることが可能になり、接着剤56がフランジ収納空間部42b側へ侵入する可能性をさらに軽減できる。
【0043】
また、本実施形態では図5に示すように、スリーブ42の嵌込部42dには、カウンタープレート44の第1面44a側でシャフト28の半径方向に窪んだ第2凹部62を設けられる。この第2凹部62は、接着剤56の余剰分を捕捉できるので、接着剤56がフランジ収納空間部42b側へ侵入する確率をさらに軽減できる。
【0044】
また、図5に示すように、本実施形態では、カウンタープレート44の側面44eにプレート凹部64を設けることもできる。この場合、プレート凹部64の凹部にも余剰分の接着剤56が捕捉され、接着剤56のフランジ収納空間部42bへの侵入抑制効果をさらに高める。また、プレート凹部64にも接着剤56が溜まることによりカウンタープレート44の接着強度の向上に寄与できるので、ディスク駆動装置10に衝撃が加わった場合のカウンタープレート44の脱落を防止する効果を高められる。また、この部分でも衝撃応力Fは圧縮応力Pとして作用するので、接着剤56の隔離の拡大を抑制する効果が得られる。
【0045】
図7は、本実施形態のディスク駆動装置10の他の構造を説明する部分断面図である。この例の場合、図3等に示す構造に対し、カウンタープレート44の側面44eの形状と、スリーブ42の嵌込部42dの形状が異なる。この変形例では図7に示すように、カウンタープレート44の側面44eに斜面を設けている。具体的には、第1面44a側より第2面44b側が小形化されている。本実施形態の場合、カウンタープレート44は円盤形状なので、第1面44a側の直径より第2面44b側の直径が小径化されていることになる。また、スリーブ42のカウンタープレート44の嵌込部42dはフランジ収納空間部42bを画成するフランジ周囲壁部42e側に向かって拡形化されている。本実施形態の場合、スリーブ42は円筒形状なので、嵌込部42dがフランジ周囲壁部42eに向かい拡径化されている。このような形状にすることで、嵌込部42dとカウンタープレート44の側面44eとの間の空間が拡大され、余剰分の接着剤56の捕捉能力が向上できて、接着剤56がフランジ収納空間部42bに侵入する可能性をさらに軽減できる。また、スリーブ42とカウンタープレート44を接着するための接着剤56の量を増やすことも可能であり、接着強度を容易に向上できる。さらに、ディスク駆動装置10に衝撃が加わったときも、接着剤56は斜面に挟まれて存在するため、そこに作用する応力は圧縮応力となり、前述のように衝撃応力Fが加えられた場合でも接着面の剥離拡大を抑制する効果が得られる。
【0046】
図8は、本実施形態のディスク駆動装置10のさらに他の構造を説明する部分断面図である。この例の場合、図7等に示す構造に対し、カウンタープレートの構成が異なる。この例の場合、2枚のカウンタープレート66a、66bにより図7に示すカウンタープレート44と同等の厚みを実現している。例えば、カウンタープレート66a、66bの厚みを各々0.5mmとして積層して、カウンタープレート44と同等の1.0mmにしている。その結果、図3で説明した例と同様に接着剤56の塗布位置からフランジ収納空間部42bまでの距離を増大可能となり、フランジ収納空間部42bへの接着剤56の侵入抑制効果を得られる。また、カウンタープレート66a、66bの側面に互いに逆方向に傾く斜面を形成することにより、プレート凹部64と同等の機能を発揮する窪みを容易に形成できる。なお、カウンタープレート66a、66bは、接着剤、レーザ溶接またはその両方を用いて接合できる。
【0047】
図9は、本実施形態のディスク駆動装置10のさらに他の構造を説明する部分断面図である。この例の場合、図3等に示す構造に対し、カウンタープレートの形状が異なる。この例の場合、カウンタープレート68の外周部にシャフト28の軸方向に延びる周状壁部68aが周設されている。そして、この周状壁部68aの内周面をフランジ収納空間部42bの一部としている。この構造の場合も図3で説明した例と同様に接着剤56の塗布位置からフランジ収納空間部42bまでの距離を増大できるので、フランジ収納空間部42bへの接着剤56の侵入抑制効果を得られる。
【0048】
ところで、通常カウンタープレートをスリーブの嵌込部に接着固定する場合、熱硬化型の液状の接着剤が利用される場合が多い。この場合、加熱炉に入れるまでの間や加熱炉内で硬化するまでの間に液状の接着剤が流れて拡がってしまうことがある。このため、粘度の低い液状接着剤が使用できず、接着剤をカウンタープレート外周に均一塗布するために要する作業時間が長くなってしまう不都合が生じていた。そこで、本実施形態で使用する接着剤56は、紫外線照射と加熱との併用が可能なものを使用する。つまり、まず必要な接着領域に液状の接着剤56を塗布する。そして、直ぐに紫外線を照射をして表面を硬化させる。この紫外線照射時間は、実験等により適宜設定可能であるが、接着剤56の表面が硬化すれば、内部は非硬化状態でも接着剤の流れは防止できるので、短時間の照射で十分である。そして、その後、バッチ処理や連続処理など生産方式に従い加熱炉に入れて内部の硬化を実施する。この結果、粘度の低い液状の接着剤56が使用可能となり作業時間の短縮や作業者の作業負荷の軽減に寄与できる。
【0049】
このような接着剤56としては、例えば、エポキシアクリルハイブリッド接着剤を主成分としたものが好適である。この接着剤の場合、波長が200〜400nmの紫外線照射により短時間で接着剤56の表面を硬化させることが可能で、流れを防止して作業時間の短縮および労力の軽減を行う。さらに加熱することで内部を硬化させて接着強度の確保を図る。なお、紫外線による表面硬化後は、接着剤56の内部から接着剤成分の揮発を抑制可能となるのでアウトガス対策を別途行う必要がなくなり、生産面および品質面でも有利である。なお、液状の接着剤56の25℃における粘度を例えば16Pa・s以下に保つことでカウンタープレート44の接着位置に均一塗布が容易に実施可能となり、作業に必要な時間も十分に短くできる。また、接着剤56の粘度を4Pa・s以上に保つとことで液状の接着剤56の過剰な拡がりを防止できる。そのため、接着剤56の粘度は、4Pa・s以上、16Pa・s以下の範囲に保つことが作業面、および品質面において好ましい。
【0050】
前述したように、近年ディスク駆動装置10はモバイル機器への搭載の要望が高く、落下時の耐衝撃性能の向上が求められている。例えば、図4,図6等に示す比較例の場合、カウンタープレート202の接合強度が600N程度のものもあり、耐えられる衝撃が2msの短時間の衝撃付加で200G程度のものもあるという実験結果が得られた。上述のようにディスク駆動装置10のモバイル機器への搭載が盛んに行われる中で、300G以上の衝撃が加えられてしまう場合もあり、それに対する対策が求められている。
【0051】
本実施形態のディスク駆動装置10におけるカウンタープレート44の構造および接着構造によれば、カウンタープレート44の接合強度は1000N以上にできるという結果が得られた。例えば、図3に示すように、シャフト外径を4.0mm、フランジ30の外径φAを7.8mm、フランジ収納空間部42bの内径φBを8.1mm、カウンタープレート44の外径φCを9.0mm、スリーブ42の外径φEを10.7mm、カウンタープレート44の厚み寸法Dを1.0mmする。また、図5に示すように、スリーブ42のカウンタープレート44の嵌込部42dの内筒面の開放側の位置に第1凹部60を設け、当該第1凹部60とカウンタープレート44の第2面44bとを跨ぐように接着剤56を塗布する。このとき、カウンタープレート44の第2面44b側の外縁角部44cが第1凹部60の凹部中央に位置するよう配置して接着する。そして、このときの接着剤56の量を調整することで、フランジ収納空間部42bへの接着剤56の侵入を防止しつつカウンタープレート44の接合強度を1000N以上に向上できることが実験により確認できた。なお、この構成において必要な接着剤56の量は実験により求められる。このように、カウンタープレート44の接合強度が1000N以上であるディスク駆動装置10については、2msの短時間の衝撃付加で350Gが加わってもカウンタープレート44の接合部分は破壊されないことが確認された。
【0052】
なお、カウンタープレート44の接合強度を過剰に大きくすると、より多くの接着剤56を用いることになり硬化に必要な時間が長くなり、省資源化の観点からも好ましくない。このためカウンタープレート44の接合強度は3000N以下が作業効率の点で有利である。
【0053】
上述した各実施形態では、円筒状マグネット34が積層コア38の外側に位置する、いわゆるアウターロータ型のブラシレスモータについて説明したが、例えばマグネットが積層コアの内側に位置する、いわゆるインナーロータ型のブラシレスモータであっても本実施形態と同様な効果を得られる。
【0054】
また、上述した各実施形態では、積層コアを用いる場合について説明したが、コアは積層コアでなくてもよい。また、各実施形態では、HDD用のブラシレスモータ14の構造について説明したが、この他、CD装置、DVD装置等の光学ディスク記録再生装置に搭載されるディスク駆動モータにおいても本実施形態の技術が適用可能であり、同様の効果を得られる。
【0055】
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得られる。
【符号の説明】
【0056】
10 ディスク駆動装置、 12 ベース部材、 20 記録ディスク、 28 シャフト、 30 フランジ、 42 スリーブ、 42a 収納部、 42b フランジ収納空間部、 42d 嵌込部、42e フランジ周囲壁部、 44 カウンタープレート、 44a 第1面、 44b 第2面、 44e 側面、 RB ラジアル動圧溝、 SB スラスト動圧溝、 56 接着剤、 60 第1凹部、 62 第2凹部、 64 プレート凹部、 66,68 カウンタープレート、 100 軸受ユニット、 102 駆動ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に配置され当該ベース部材に対して記録ディスクを回転自在に支持する軸受ユニットと、前記軸受ユニットに支持される記録ディスクを回転駆動する駆動ユニットと、
を含み、
前記軸受ユニットは、
回転中心となるシャフトと、
前記シャフトを収納する収納部を有すると共に、当該シャフトを軸として相対的な回転を許容するスリーブと、
前記スリーブの前記収納部の内壁面と前記シャフトの外壁面とで定義されるラジアル空間部と、
前記ラジアル空間部を定義する前記スリーブの内壁面と前記シャフトの外壁面の少なくとも一方に形成されてラジアル動圧を発生させるラジアル動圧溝と、
前記シャフトの半径方向に突出し、当該シャフトと一体で回転するフランジと、
前記スリーブに連続して前記フランジの半径方向外側に形成されるフランジ周囲壁部により画成され、前記フランジを回転自在に収納するフランジ収納空間部と、
前記フランジの軸方向の端面と対向すると共に前記フランジ収納空間部を封止する第1面と、当該第1面の反対側の第2面とで構成されるカウンタープレートと、
前記フランジと前記フランジ収納空間部のスラスト方向に対向する面との少なくとも一方、及び前記フランジと前記カウンタープレートの第1面との少なくとも一方に形成されてスラスト動圧を発生させるスラスト動圧溝と、
前記ラジアル空間部と前記フランジ収納空間部とに充填される潤滑剤と、
を備え、
前記フランジの突出寸法は、前記フランジ周囲壁部の前記フランジの半径方向の肉厚寸法より大きく形成することを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記カウンタープレートの厚み寸法は、前記フランジ収納空間部を封止するときに前記カウンタープレートの前記第1面が前記フランジ周囲壁部の端部と対向する対向幅寸法より大きいことを特徴とする請求項1記載のディスク駆動装置。
【請求項3】
前記スリーブは、前記フランジ収納空間部を前記カウンタープレートで封止するために当該カウンタープレートを受け入れる嵌込部を有し、
前記カウンタープレートと前記嵌込部との間に前記カウンタープレートの周部に沿って接着剤を塗布することを特徴とする請求項1または請求項2記載のディスク駆動装置。
【請求項4】
前記接着剤は、前記カウンタープレートにおける前記第2面側の外縁角部と、当該外縁角部と対向する前記嵌込部とを跨ぐように前記外縁角部の周部に沿って連続して塗布することを特徴とする請求項3記載のディスク駆動装置。
【請求項5】
前記嵌込部は、前記カウンタープレートの前記第2面側の外縁角部に対応する位置と当該カウンタープレートの前記第1面側の外縁角部に対応する位置との間に前記シャフトの半径方向に窪んだ第1凹部を有することを特徴とする請求項3または請求項4記載のディスク駆動装置。
【請求項6】
前記カウンタープレートは、前記第2面側の前記外縁角部が前記第1凹部の窪みに対応するように前記嵌込部に嵌め込まれることを特徴とする請求項5記載のディスク駆動装置。
【請求項7】
前記嵌込部は、前記第1凹部により前記第1面側の外縁角部に近い位置に前記シャフトの半径方向に窪んだ第2凹部を有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のディスク駆動装置。
【請求項8】
前記カウンタープレートの側面部に前記シャフトの半径方向に窪んだプレート凹部を有することを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか1項に記載のディスク駆動装置。
【請求項9】
前記カウンタープレートの前記第1面側より前記第2面側が小形化されていることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか1項に記載のディスク駆動装置。
【請求項10】
前記嵌込部は、前記フランジ収納空間部側に向かって拡形化されていることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか1項に記載のディスク駆動装置。
【請求項11】
前記接着剤は、紫外線照射と加熱とを併用して硬化することを特徴とする請求項3から請求項10のいずれか1項に記載のディスク駆動装置。
【請求項12】
前記カウンタープレートが前記フランジ収納空間部を封止する場合の接合強度は1000N以上であるとしたことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−281349(P2010−281349A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133407(P2009−133407)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(508100033)アルファナテクノロジー株式会社 (100)
【Fターム(参考)】