説明

ディスプレイの輝度ムラ評価方法および装置

【課題】ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを、表示画面の背景輝度や画面サイズの影響を考慮しつつ、しかも発生位置に応じて、人間の視覚特性に合わせて定量評価する。
【解決手段】ディスプレイの表示画面の輝度分布情報を取得し、この輝度分布情報と該輝度分布情報の背景輝度との差分から求めた輝度変化量に対する背景輝度との比を表すコントラスト画像を生成する。コントラスト画像を2次元フーリエ変換した2次元フーリエスペクトルに、背景輝度または表示画面のサイズの少なくともいずれかに応じて設定され人間の視覚特性に準じたコントラスト感度関数を乗算し、その結果を2次元フーリエ逆変換して輝度ムラ成分の強度が輝度情報に含まれる評価用2次元画像を生成する。この評価用2次元画像の輝度情報に基づいて輝度ムラを定量評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの輝度ムラ評価方法および装置に関し、特に人間の視感特性に合わせて輝度ムラの評価を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディプレイの表示画像の品質を評価する技術として種々の方法が提案されている。例えば特許文献1では、文字のボケ度合いを空間周波数を考慮して評価しており、特許文献2,3では、色ムラを空間周波数を考慮して評価を行っている。とりわけ、ディスプレイの表示画面に発生する輝度ムラに関しては、例えば非特許文献1に、表示画面の輝度情報を取得し、これをコントラストマップに変換した後、規定のコントラスト感度関数によりフィルタリングすることで人間の視感特性に合わせた輝度ムラの評価を行うことが記載されている。ここでのムラの検出結果は2次元状にマッピングされる。また、非特許文献2,3もコントラスト感度関数を用いており、周波数空間上でコントラスト感度関数を掛け合わせたパワースペクトルを評価値として採用している。
【特許文献1】特開平8-256364号公報
【特許文献2】特開2005−43174号公報
【特許文献3】特開2005−61856号公報
【非特許文献1】Sheng-Bo Wang, Zih-Jian Jhang, Chao-Hua Wen,“A Mura Metric Based on Human Vision Models”, SID 06 DIGEST, pp.291-296.
【非特許文献2】岸 卓人,阿久津 実,大谷 哲也,“視角系空間周波数特性に基づく輝度ムラ強度定量化手法”,映像情報メディア学会誌,Vol.60, No.5,(2006)
【非特許文献3】Peter G.J. Barten, “Formura for the contrast sensitivity of the human eye”,Proceedings of SPIE Vol.5294, 2004, pp.231-238.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に近年のディスプレイにおいて、表示画面中に輝度ムラが観察される場合、その表示画面の輝度ムラの見え方は背景輝度によって変化する。すなわち、表示画像データそのものの明暗差や、表示輝度の機器依存性による明暗差により輝度ムラは大きく変化する。また、近年のディスプレイは、数十インチ以上の大画面の液晶ディスプレイやプラズマディスプレイから、小サイズの携帯型液晶ディスプレイに至るまで多岐にわたる。輝度ムラの見え方は、これらディスプレイの表示サイズによっても大きく左右される。そのため、輝度ムラの定量評価値を算出する場合、輝度依存性や画面サイズ依存性の考慮が不可欠となる。
【0004】
ところが、上記特許文献および上記非特許文献のいずれの評価方法においても、表示画面の背景輝度や画面サイズの影響を考慮し、かつ、輝度ムラの発生位置に応じた評価を同時に行うことができなかった。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを、表示画面の背景輝度や画面サイズの影響を考慮しつつ、しかも発生位置に応じた評価基準で、人間の視覚特性に合わせた定量評価を可能とするディスプレイの輝度ムラ評価方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを定量評価するディスプレイの輝度ムラ評価方法であって、
ディスプレイの表示画面の輝度分布情報を取得し、
前記輝度分布情報と該輝度分布情報の背景輝度との差分から求めた輝度変化量に対する前記背景輝度との比を表すコントラスト画像を生成し、
前記コントラスト画像を2次元フーリエ変換して2次元フーリエスペクトルを求め、
前記2次元フーリエスペクトルに、前記背景輝度または前記表示画面のサイズの少なくともいずれかに応じて設定され人間の視覚特性に準じたコントラスト感度関数を乗算して畳み込みパワースペクトルを求め、
前記畳み込みパワースペクトルを2次元フーリエ逆変換して輝度ムラ成分の強度が輝度情報に含まれる評価用2次元画像を生成し、
前記評価用2次元画像の輝度情報に基づいて輝度ムラを定量評価するディスプレイの輝度ムラ評価方法。
【0006】
このディスプレイの輝度ムラ評価方法によれば、まず、輝度分布情報と該輝度分布情報の背景輝度との差分から輝度変化量を求め、この輝度変化量と背景輝度との比を表すコントラスト画像を生成し、得られたコントラスト画像を2次元フーリエ変換して2次元フーリエスペクトルを求める。この2次元フーリエスペクトルに、背景輝度または表示画面のサイズの少なくともいずれかに応じて設定され人間の視覚特性に準じたコントラスト感度関数を乗算して畳み込みパワースペクトルを求め、この畳み込みパワースペクトルを2次元フーリエ逆変換して輝度ムラ成分の強度が輝度情報に含まれる評価用2次元画像を生成する。そして、この評価用2次元画像に基づいて輝度ムラを定量評価する。
このため、コントラスト感度関数を背景輝度や表示画面のサイズに応じて任意に設定できるので、ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを、表示画面の背景輝度や画面サイズの影響を考慮しつつ、人間の視覚特性に合わせて定量評価することができる。また、評価用2次元画像は周波数空間から実空間に変換された画像であるので、輝度ムラの定量値の2次元的な分布が分かるようになる。これにより、高精度にディスプレイの輝度ムラ評価を行うことができる。
ここで、輝度変化量を求める際の背景輝度は表示画面内の局所位置に対する背景輝度であり、コントラスト画像を求める際の背景輝度は表示画面内の局所位置に対する背景輝度または表示画面全体の平均背景輝度のいずれかである。そして、コントラスト感度関数は表示画面全体の平均背景輝度に応じて設定される。
【0007】
(2) (1)記載のディスプレイの輝度ムラ評価方法であって、
前記評価用2次元画像の画像内位置に応じて異なる重み係数に設定された重み付けフィルタを用い、前記評価用2次元画像の輝度情報を画像内位置に応じて補正するディスプレイの輝度ムラ評価方法。
【0008】
このディスプレイの輝度ムラ評価方法によれば、評価値を輝度ムラの発生位置に応じた値にすることができ、ディスプレイの領域選択的な評価が可能となって、ディスプレイ評価の実用性を高められる。
【0009】
(3) (1)または(2)記載のディスプレイの輝度ムラ評価方法であって、
前記評価用2次元画像の各画素のうち画素値が所定の閾値以上となる画素の総画素数に基づいて前記輝度ムラの定量評価値を求めるディスプレイの輝度ムラ評価方法。
【0010】
このディスプレイの輝度ムラ評価方法によれば、評価用2次元画像の所定の閾値以上の画素数を求めることで、輝度ムラの定量評価値を得ることができる。
【0011】
(4) (1)〜(3)のいずれか1項記載のディスプレイの輝度ムラ評価方法であって、
前記評価用2次元画像に対する最大輝度値に基づいて前記輝度ムラの定量評価値を求めるディスプレイの輝度ムラ評価方法。
【0012】
このディスプレイの輝度ムラ評価方法によれば、評価用2次元画像の最大輝度値を求めることで、輝度ムラの定量評価値を得ることができる。
【0013】
(5) ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを定量評価するディスプレイの輝度ムラ評価装置であって、
被評価ディスプレイの表示画面に対する輝度情報を取得する輝度情報入力部と、
取得した前記輝度情報を保存する画像メモリと、
請求項1〜請求項5に記載されたディスプレイの輝度ムラ評価方法を実行させるための演算部と、を備えた。ディスプレイの輝度ムラ評価装置。
【0014】
このディスプレイの輝度ムラ評価装置によれば、輝度情報入力部で取得した表示画面の輝度情報を画像メモリに保存し、この保存された輝度情報を演算部が処理することで、輝度ムラの定量評価値を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のディスプレイの輝度ムラ評価方法および装置によれば、背景輝度依存性や画面サイズ依存性を考慮しつつ、しかも輝度ムラの発生位置に応じた評価基準でディスプレイの輝度ムラを人間の視感特性に合わせて定量評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るディスプレイの輝度ムラ評価方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は輝度ムラ評価装置の概略的なブロック構成図である。
本図に示すように、輝度ムラ評価装置100は、主に、被評価ディスプレイ11の表示画面に対する輝度情報を取得する2次元輝度計13を含む輝度情報入力部15と、取得した輝度情報を保存する画像メモリ17と、被評価ディスプレイ11の輝度ムラを検出し評価を行うための演算部19とを有して構成されている。被評価ディスプレイ11は、信号発生器21から表示用信号が入力されて、評価に適した画像情報を映出する。2次元輝度計13は、インターフェース25を介して演算部19に輝度情報(撮像画像)を出力し、演算部19はこの2次元輝度計13からの輝度情報を画像メモリ17に一旦保存する。2次元輝度計13、演算部19、および信号発生器21は、それぞれ制御部23からの制御信号を受けて動作する。演算部19は、輝度ムラを定量評価するために、詳細は後述するコントラスト感度関数(CSF)の記憶されたCSFテーブル27や重み付けテーブル29からの情報を用いて画像メモリ17に保存された輝度情報を演算処理する。
【0017】
ここで、2次元輝度計13は、例えばCCD型イメージセンサなどの固体撮像素子を用いることができ、適宜なレンズやステージが取り付けられることで、任意の大きさの被評価ディスプレイに対応可能な構成となっている。
【0018】
本実施形態においては、被評価ディスプレイ11の表示画面における輝度ムラを定量評価するものであるが、ここでいう「ムラ」とは次のように定義される。
一般に「ムラ」とは、均一性を目指して製造された面内に存在し、観察者の視覚に不快感をもたらす局所的かつ明瞭な輪郭を持たない明暗変動を表す。しかし、本明細書において評価対象となる「ムラ」とは、2次元輝度計などによって得られた2次元的輝度分布情報のうち、局所的とは視覚的に認識されない非局所的な緩やかな輝度変化、および非常に局所的であり欠陥として認識される急激な輝度変化を除いた、人間の視覚的に認識されやすい成分として得られる輝度変化を意味する。該成分は一般に知られているような周波数解析によって選択的に抽出することができる。
【0019】
次に、ムラ評価方法の具体的な手順について図2を参照して説明する。
図2はムラ評価の手順を示すフローチャートである。
まず、制御部23からの指令により、信号発生器21に被評価ディスプレイ11へ画面全体が所定の一定輝度(白ベタ画面や単色ベタ画面)となるような一定輝度パターンの信号を出力させ、そのパターンを映出した表示画面の輝度を2次元輝度計13で測定し、得られた輝度情報を画像データとして画像メモリ17に保存する。これにより表示画面の輝度情報が取得される(S1)。
【0020】
次に、測定した輝度情報の画像データの各画素に対して輝度変化を算出する(S2)。具体的な処理内容について図3を用いて概念的に説明する。
図3(a)に示すように、S1で取得された輝度情報である撮像画像31には輝度勾配が発生することがあり、例えばラインLA上の輝度分布は画像内位置で右側ほど輝度が高くなっている。そこで、画像を複数のブロックに分割して、それぞれのブロックに対してブロック内の平均輝度を求める等して画像内の局所位置に対する背景輝度LAVを求め、この背景輝度LAVと撮像画像31の輝度との差分を輝度変化量ΔLとして求める。
【0021】
次に、求めた輝度変化量ΔLを背景輝度LAVで除算したΔL/LAV画像(コントラスト画像)を生成する(S3)。すると、図3(b)に示すように、撮像画像31に現れていたシェーディングのキャンセルされたコントラスト画像33が得られる。例えばラインLA上の分布をみると、輝度ムラ35の位置に明瞭なピーク35Aが現れている。ここで、輝度変化量ΔLを除算する背景輝度は、上記の撮像画像31内の局所位置(ディスプレイの各点またはブロック毎)に対する背景輝度の他、画面全体の平均値、あるいは輝点など局所的な異常値を除外するためにメディアン値などの一定値を用いてもよい。
【0022】
そして、得られたコントラスト画像33に対して2次元のフーリエ変換を行う(S4)。これにより、コントラスト画像33は、実空間から周波数空間に変換されて2次元フーリエスペクトルとなる。この2次元フーリエスペクトルに対して、後述するコントラスト感度関数を乗算して畳み込みパワースペクトルを求める(S5)。
【0023】
畳み込みパワースペクトルを求める処理を図4に概念的に示した。ここでは、説明を簡単化するために、1次元のデータとして表している。
図4に示すように、コントラスト画像のパワースペクトル37に対して、コントラスト感度関数CSFを乗算すると、コントラスト感度関数の感度が高い周波数帯域は強調され、感度が低い周波数帯域は抑制された畳み込みパワースペクトル39が得られる。この畳み込みパワースペクトル39は、コントラスト画像の物理的な輝度変化成分を人間の視覚特性に準じて感知したときの検出強度に相当する。したがって、この処理により人間の視覚特性に準じたコントラスト感度でムラの定量評価が行えることになる。
【0024】
ここで、コントラスト感度関数について詳細に説明する。
コントラスト感度関数は、人間の視感特性に準じた感度関数を呈するものであれば基本的に利用可能であるが、本発明においては視覚効果に背景輝度依存性を考慮する。または、画面サイズ依存性を考慮する。さらに好ましくは背景輝度依存性と画面サイズ依存性を共に考慮する。そのためには、例えば非特許文献2,3に記載のBartenの式が好適に用いられる。
【0025】
Bartenのコントラスト感度関数S(u)は以下の式で表すことができる。
【数1】


ここで、係数a,b,cはそれぞれ次式で表される。
【0026】
【数2】

【0027】
上式において、Lはディスプレイ全体の平均背景輝度(cd/m2)、X0はディスプレイの表示面積の平方根を一辺とする正方形領域に対して、所定距離からこの正方形領域を観察した場合の視角(見込み角度)の値(deg)、uは輝度ムラによる輝度変化の山谷の周期の逆数(cycle/deg)である。
またサイズ効果を考慮せず、X0を26インチTVを3H(Hは表示画面の垂直方向高さ)の視距離から観察した場合に固定すれば、X0≒12(deg)となるので、(1)式におけるaの代わりに下記(5)式のa’を用いても良い。
【0028】
【数3】

【0029】
また、上記の(1)〜(5)式に限らず、例えば下記の(6)式を用いることもできる。
【数4】

【0030】
(6)式においても同様に、サイズ効果を考慮せず、X0を、26インチTVを3Hの視距離で観察した場合に固定すれば、X0≒12(deg)となるので、(6)式は(7)式の形で表せる。
【0031】
【数5】

上記の(1)、(6)式は、非特許文献3に記載の式に基づくものであって、式中の係数は適宜変更しても構わない。
【0032】
再び図2に戻り、コントラスト感度関数を乗じた畳み込みパワースペクトルを2次元フーリエ逆変換を行うことにより実空間に変換する(S6)。
すると、図5(a)に示すように、人間の視覚特性に応じて輝度ムラが強調あるいは抑制された逆フーリエ変換画像41が得られる(S7)。つまり、この逆フーリエ変換画像41は、図3に示した撮像画像31やコントラスト画像33における輝度ムラ35等を、人間の目から見た場合のムラの「ひどさ」を輝度ムラの定量値の大小で2次元分布にして表している。
【0033】
ここで、フーリエ変換処理によりパワースペクトルを算出するだけの方法では、一画面全体の輝度ムラ評価は可能であるが、画面上の2次元的なムラ発生位置が分からず、重点を置く評価領域を選択的に評価することができない。したがって、ディスプレイの品質を評価、判断する際に著しく実用性を欠く問題がある。そこで、本実施形態のように、逆フーリエ変換処理を行い、パワースペクトルを実空間に変換し、ムラ発生位置のマッピングを行えば、輝度ムラの定量値の2次元的な分布が分かるようになる。これにより、ディスプレイの領域選択的な評価が可能となり実用性を高められる。
【0034】
逆フーリエ変換画像41から輝度ムラの定量評価値を直接的に導出することも可能であるが、この逆フーリエ変換画像41に種々のフィリタリング処理を施した画像データを用いれば、評価対象ディスプレイそれぞれの評価基準に即した定量評価を容易に行うことができる。ここでは一例として、ムラ発生位置に対する重み付けを行う場合を示す。
【0035】
図5(b)はディスプレイの表示画面に対して、画面中央に生じる輝度ムラを、画面周辺に生じる輝度ムラよりも重大な欠陥であると評価する場合の重み付けフィルタ43を示している。画面中央部4の重み係数K1は大きな値に設定され、画面周辺に近づくにつれて重み係数K2,K3,K4は順次小さい値に設定される。このような画面位置に応じて異なる重み係数を有する重み付けフィルタを図5(a)に示す逆フーリエ変換画像に掛け合わせて、図5(c)に示す重み付け処理画像45を得る。
【0036】
輝度ムラの定量評価値は、例えば重み付け処理画像45に対して所定の閾値以上の輝度を有する画素数を求め、この画素数の大小によって定量評価してもよい。また、重み付け処理画像45の最大輝度値に基づいて定量評価してもよい。その他、輝度ムラの発生した領域の輝度積算値や、輝度ムラの発生個数など、評価目的に応じて適宜なパラメータが設定される。
【0037】
この重み付け処理画像45は、画面中央付近の輝度ムラ47が強調され、画面周辺付近の輝度ムラ49は抑制される。つまり、評価対象のディスプレイで致命的となる画面中央付近の輝度ムラは過大に評価され、特に重用視されない画面周辺付近の輝度ムラは、仮に発生したとしても評価値に大きな影響を及ぼさない。
【0038】
このように、人間の視感特性を加味して輝度ムラを定量評価するとともに、輝度ムラの発生位置に応じて定量評価値を適正化することが容易に行える。
【0039】
以上説明したように、本発明に係るディスプレイの輝度ムラ評価方法によれば、コントラスト感度関数を背景輝度や表示画面のサイズに応じて任意に設定できるので、ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを、表示画面の背景輝度や画面サイズの影響を考慮しつつ、人間の視覚特性に合わせて定量評価することができる。また、評価用2次元画像は周波数空間から実空間に変換された画像であるので、輝度ムラの定量値の2次元的な分布が分かるようになる。これにより、高精度にディスプレイの輝度ムラ評価を行うことができる。
なお、被評価ディスプレイ11に映出する画像信号としては、白ベタ画面や単色ベタ画面が挙げられるが、その輝度値を複数段階に設定して、各段階毎に評価を行ってもよい。その場合は、背景輝度に応じてコントラスト感度関数が適宜最適なものに調整される。
【0040】
なお、本発明のムラの評価方法は、上記で例示した輝度ムラに限らず、例えば「感覚・知覚の科学1 視覚I(朝倉書店)228〜230ページ」などに記載のある、色覚の空間コントラスト関数を併用して考慮することにより色ムラに応用することも可能である。またO plus E Vol23 No.10(2001)などに記載のある動画ぼけの視覚効果を併用して考慮し、動画上のムラに対しても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】輝度ムラ評価装置の概略的なブロック構成図である。
【図2】ムラ評価の手順を示すフローチャートである。
【図3】測定した輝度情報の画像データ(a)とコントラスト画像(b)とを示す説明図である。
【図4】畳み込みパワースペクトルを求める処理を示す説明図である。
【図5】逆フーリエ変換画像(a)と、重み付けフィルタ(b)と、重み付け処理画像(c)を示した説明図である。
【符号の説明】
【0042】
11 被評価ディスプレイ
13 2次元輝度計
15 輝度情報入力部
17 画像メモリ
19 演算部
21 信号発生器
23 制御部
25 インターフェース
27 CSFテーブル
29 重み付けテーブル
31 撮像画像
33 コントラスト画像
35 輝度ムラ
35A ピーク
37 パワースペクトル
39 畳み込みパワースペクトル
41 逆フーリエ変換画像
43 重み付けフィルタ
45 重み付け処理画像デルタ
100 輝度ムラ評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを定量評価するディスプレイの輝度ムラ評価方法であって、
ディスプレイの表示画面の輝度分布情報を取得し、
前記輝度分布情報と該輝度分布情報の背景輝度との差分から求めた輝度変化量に対する前記背景輝度との比を表すコントラスト画像を生成し、
前記コントラスト画像を2次元フーリエ変換して2次元フーリエスペクトルを求め、
前記2次元フーリエスペクトルに、前記背景輝度または前記表示画面のサイズの少なくともいずれかに応じて設定され人間の視覚特性に準じたコントラスト感度関数を乗算して畳み込みパワースペクトルを求め、
前記畳み込みパワースペクトルを2次元フーリエ逆変換して輝度ムラ成分の強度が輝度情報に含まれる評価用2次元画像を生成し、
前記評価用2次元画像の輝度情報に基づいて輝度ムラを定量評価するディスプレイの輝度ムラ評価方法。
【請求項2】
請求項1記載のディスプレイの輝度ムラ評価方法であって、
前記評価用2次元画像の画像内位置に応じて異なる重み係数に設定された重み付けフィルタを用い、前記評価用2次元画像の輝度情報を画像内位置に応じて補正するディスプレイの輝度ムラ評価方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のディスプレイの輝度ムラ評価方法であって、
前記評価用2次元画像の各画素のうち画素値が所定の閾値以上となる画素の総画素数に基づいて前記輝度ムラの定量評価値を求めるディスプレイの輝度ムラ評価方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のディスプレイの輝度ムラ評価方法であって、
前記評価用2次元画像に対する最大輝度値に基づいて前記輝度ムラの定量評価値を求めるディスプレイの輝度ムラ評価方法。
【請求項5】
ディスプレイの表示画面に生じる輝度ムラを定量評価するディスプレイの輝度ムラ評価装置であって、
被評価ディスプレイの表示画面に対する輝度情報を取得する輝度情報入力部と、
取得した前記輝度情報を保存する画像メモリと、
請求項1〜請求項5に記載されたディスプレイの輝度ムラ評価方法を実行させるための演算部と、
を備えたディスプレイの評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−180583(P2009−180583A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18884(P2008−18884)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】