ディスプレイ用ガラスにおける即時緩和の組成制御
【課題】 ディスプレイ製造プロセスにおけるガラス板の寸法変化を減少させる。
【解決手段】 プロセス中にガラス板のガラスのピーク膨張を増加させるようにガラスの組成を変更する工程を有してなる。変更工程が、ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度を増加させる工程を含んでも差し支えない。ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が少なくとも0.25モル%だけ増加されることが好ましく、1.0モル%だけ増加させることがより好ましい。変更工程が、ガラスの水濃度を増加させる工程を含んでも差し支えない。ディスプレイ装置を製造する製造プロセスにおいて基板として使用するためのガラス板も提供される。
【解決手段】 プロセス中にガラス板のガラスのピーク膨張を増加させるようにガラスの組成を変更する工程を有してなる。変更工程が、ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度を増加させる工程を含んでも差し支えない。ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が少なくとも0.25モル%だけ増加されることが好ましく、1.0モル%だけ増加させることがより好ましい。変更工程が、ガラスの水濃度を増加させる工程を含んでも差し支えない。ディスプレイ装置を製造する製造プロセスにおいて基板として使用するためのガラス板も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディスプレイ、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)の製造に使用されるガラス基板に関し、特に、そのような基板がディスプレイ製造プロセス中に示す寸法変化に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの製造プロセスは、高温で行われる加工工程を含むことがよく知られている。使用される特定の温度は、製造されるディスプレイのタイプによる。例えば、ポリシリコン(p−Si)技術を利用するディスプレイでは、アモルファスシリコンに基づくディスプレイ(a−Siディスプレイ)よりも高い加工温度が使用される。
【0003】
ディスプレイ製造プロセスにおける基板として、大型のガラス板が使用され、それゆえ、それらのプロセスで使用される高温に曝露されることもよく知られている。このような高温のために、基板が寸法変化、すなわち、圧密を示すことがある。現代のディスプレイのピクセルサイズは小さいので、たとえ数ppmほど小さい寸法変化でも、完成したディスプレイの品質が損なわれ得る。
【0004】
この寸法変化の問題に対処するために、数多くの手法が使用されてきた。例えば、基板は、ディスプレイ製造プロセスに使用される前に、ある期間に亘り高温に保持されることによって、予備圧密されてきた。そのような熱処理により、ガラスの仮想温度が低下し、それゆえ、高温に上昇せしめられたときにガラスが示す寸法変化が減少する(以下の式(1)参照)。他の手法として、高い歪み点および/または高いアニール点を有し、それゆえ、高温曝露に対してより耐性のあるガラス組成物が開発されてきた。
【0005】
ディスプレイ製造プロセスの全ての工程が、寸法変化の問題の影響を等しく受けやすいわけではないことが重要である。むしろ、そのようなプロセスには通常、ガラス基板の寸法変化(例えば、基板の圧密)が最終的なディスプレイへの最も有害な影響を与える重大なサイクルがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、そのような重大なサイクルにおいて生じる寸法変化を減少させることに向けられている。それゆえ、ここに開示された技法は、上述したものなどの寸法変化を減少させるための他の技法への追加、または代替として使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、ディスプレイ製造サイクルにおけるガラス板の寸法変化を減少させる方法であって、そのサイクル中のガラスのピーク膨張を増加させるようにガラスの組成を変更する工程を含む方法が開示されている。ある実施の形態において、この組成は、アルカリをその組成に添加することによって変更されるのに対し、他の実施の形態において、ガラスの含水量が増加させられる。
【0008】
第2の態様によれば、ディスプレイ装置を製造する製造プロセスにおいて基板として使用するためのガラス板が開示されており、その製造プロセスでは、ガラス板が少なくとも第1と第2の加熱段階に施され、第1の加熱段階が最高温度T1および段階後冷却速度r1により特徴付けられ、第2の加熱段階が最高温度T2および段階後冷却速度r2により特徴付けられ、ここで、
(1) T1<T2およびr1=r2、または
(2) T1=T2およびr1<r2、または
(3) T1<T2およびr1<r2、
前記ガラス板は、毎時少なくとも500ポンド(約227kg)のガラスを製造するプロセス(例えば、フロート法またはフュージョン法)により製造され、SiO2、Al2O3、CaO、SrO、およびMgOを含み、
状態調節段階(図3における31,32,33;図4における43)および測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)を含む試験手順を使用して試験した場合、ガラス板のガラスが、測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)において、EXPPより大きいppmで表された膨張ピークを示し、ここで、
Tannは、℃で表されたガラスのアニール点であり、
状態調節段階(図3における31,32,33;図4における43)が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され(図3の31参照);
(ii) 段階2において、ガラスは8時間に亘り675℃に保持され(図3の32参照);
(iii) 段階3において、ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される(図3の33参照);
測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され(最初の繰返しを表す図3の34参照);
(ii) 段階2において、ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され(6回の繰返し後には累積120分間)(最初の繰返しを表す図3の35参照);
(iii) 各繰返しの段階3において、ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され(最初の繰返しを表す図3の36参照);
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定される。
【0009】
第3の態様によれば、ガラスにおいて速い緩和要因(relaxer)と遅い緩和要因の影響を区別する方法であって、(i)ガラスが、予め設定された高温に加熱され(31)、その温度に保持され(32)、次いで、冷却される(33)状態調節段階(図3における31,32,33;図4における43)、および(ii)ガラスが、同じ予め設定された高温に加熱され(34)、その温度に保持され(35)、次いで、冷却される(36)測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)を含み、高温での保持(32,35)は、測定段階よりも状態調節段階のほうが長く、状態調節段階の冷却(33)は、測定段階の冷却(36)よりも遅い方法が開示されている。ある実施の形態において、測定段階の加熱(34)、保持(35)、および冷却(36)は複数回繰り返される。
【0010】
開示された様々な態様の上記の要約に使用した参照番号は、読者の便宜のためだけであり、本発明の範囲を制限するものと解釈されることを意図しておらず、そうすべきではない。より一般には、先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示であり、本発明の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することが意図されていることが理解されよう。
【0011】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、またはここの記載により例証された本発明を実施することによって認識される。添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。本明細書および図面に開示された本発明の様々な特徴は、任意の組合せと全ての組合せで使用できることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】450℃に保持された代表的なディスプレイ用ガラス(コーニング社(Corning Incorporated)のJADE(登録商標)ガラス)に関するppmで表された寸法変化(縦軸)対分で表された時間(横軸)のグラフ。
【図2】生産量で製造され、4分、8分および12分の期間の温度の段階的変化に曝露された4種類のガラスに関するppmで表された寸法変化(縦軸)対分で表された時間(横軸)のグラフ。30秒のデータ点は、4分、8分および12分での値に指数近似(exponential fit)に基づく。
【図3】ディスプレイ用ガラスにおける速い緩和を観察するために使用できる試験手順のための温度(縦軸)対時間(横軸)のグラフ。この図に示された時間、温度および勾配は、一定の縮尺で描かれていない。この試験手順は状態調節段階31,32,33および測定段階34,35,36を含む。
【図4】図3の試験手順の実施の形態を示す説明図。縦軸は、加熱期間43,44,45,46については温度であり、曲線41と42については仮想温度である。横軸は時間である。この図は一定の縮尺で描かれていない。
【図5】図4の試験手順の測定段階の結果としての寸法変化を示す説明図。縦軸は、例えば、百万分の一(ppm)で表された寸法変化であり、横軸は時間である。この図は一定の縮尺で描かれていない。
【図6】速い緩和へのバッチ配合したLi2Oの影響を示すグラフ。縦の目盛りはppmで表された寸法変化であり、横の目盛りは分で表された時間である。
【図7】速い緩和への含水量の影響を示すグラフ。縦の目盛りはppmで表された寸法変化であり、横の目盛りは分で表された時間である。
【図8】ディスプレイ製造プロセスの重大な熱サイクル中の最終的な寸法変化への最大膨張の影響を示す説明図。この図の上部は重大な熱サイクルを示し、下部はガラス基板の寸法変化を示す。横軸は、図の上部と下部の両方について時間であり、縦軸は、上部については温度であり、下部については寸法変化である。
【図9】図4に示された手順にしたがって試験した6種類の生産ガラスと3種類の開発ガラスに関するppmで表された寸法変化(縦軸)対分で表された時間(横軸)のグラフ。
【図10】図9の9種類のガラスに関するピーク膨張対アニール点のグラフ。
【図11】ディスプレイ製造プロセスの重大な熱サイクルにおいて異なるレベルの速い緩和を示す2種類のガラスに関する計算された寸法変化を示すグラフ。横軸は分で表された時間であり、縦軸はppmで表された寸法変化である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ガラス溶融物を高温から急激に冷却した場合、冷却されている液体内の原子の動きは、温度の減少と共に遅くなり、やがて、振動状態(vibrational state)の通常の熱分布(thermal population)のために固定位置の周りでの振動(oscillation)へと減退する。これらの位置は、一般に、ガラスが長期間に亘り(数秒から数日に及ぶ)中間温度(例えば、ガラス転移温度もしくは歪み点またはアニール点)に保持されたときに取られたであろう位置ではない。ゆえに、急冷されたガラスが中間温度に再加熱されたときに、熱分布の振動状態により、原子が個々と集合的の結合要件をよりうまく満たす位置に緩和できる。このことには、一般に、ガラスの塊状片の物理的寸法の減少が伴うので、再加熱の際の熱緩和は、ガラスの圧密を生じると言われる。
【0014】
再加熱の際にガラスの任意の特定のサンプルが示す圧密の量は、再加熱の開始時のガラスの仮想温度、すわち、Tf(t0)、および再加熱の過程に及ぶ仮想温度の変化、すなわち、Tf(t)に依存する。温度Tまでの再加熱により生じる時間による仮想温度の変化は、以下の式:
【数1】
【0015】
により記載することができ、ここで、bは「伸張定数(stretching constant)」であり、τ(T)は熱処理温度でのガラスの緩和時間である。
【0016】
所定の温度Tでのガラスの緩和時間は、式:
【数2】
【0017】
により近似することができ、ここで、η(T)は所定の温度でのガラスの剪断粘度であり、Gは、粘度を時間空間(time space)に計り分ける、一次近似では温度に関係ないガラスの剪断弾性係数である。
【0018】
式(1)および(2)から分かるように、例えば、η(T)を増加させることによって、緩和時間が増加するにつれて、所定の時間でのガラスの仮想温度の変化は著しく減少し、それによって、所定の熱サイクルにおいて測定される圧密が減少する。
【0019】
仮想温度は、一般に、所定の急冷速度に対する単一温度と称されるが、これは単に、ディスプレイ用基板として使用されるタイプのガラスにおける緩和時間の分布の存在が実験の証拠により明らかに示されたので、言葉の便宜上である。図1において、寸法変化のデータ(圧密データ)は、単純指数(single exponential)(曲線12)および引き延ばされた指数(stretched exponential)(曲線11)の両方に合っている。データが単純指数にうまく合うことができれば、それは単純な緩和時間を表すであろう。引き延ばされた指数が必要とされる事実は、多数の緩和時間が実施されるという明らかな証拠である。
【0020】
本開示によれば、ディスプレイの製造に使用されるタイプの熱サイクルが施されたときのガラスの寸法挙動が、そのガラスが緩和種の2つの分布、すなわち、「速い緩和」と「遅い緩和」からなるものと考えることによって、合理的に近似し、制御できることが分かった。特に、寸法変化の制御への速い緩和/遅い緩和の手法は、ガラス板が少なくとも第1と第2の加熱段階に施される熱サイクルに適用でき、この第1の加熱段階は最高温度T1および段階後冷却速度r1により特徴付けられ、第2の加熱段階は最高温度T2および段階後冷却速度r2により特徴付けられ、ここで、
(1) T1<T2およびr1=r2、または
(2) T1=T2およびr1<r2、または
(3) T1<T2およびr1<r2。
【0021】
ディスプレイ製造プロセスにおける重大な熱サイクルは、通常、そのような二段階加熱プロセスの第2の加熱段階であり、それゆえ、板を構成するガラスにおける速い緩和要因と遅い緩和要因の相対量の調節によってそのような第2の加熱段階注のガラス板の寸法変化を制御する能力は、ディスプレイ製造プロセスに重大に寄与する。
【0022】
一般に、遅い緩和要因は、ガラスの粘度対温度挙動、例えば、ガラスのアニール温度(すなわち、ガラスが1013.18ポアズの粘度を有する温度)により記載される寸法変化に含まれる。特に、ここに用いたように、遅い緩和要因は、その挙動が最初の近似で式(2)により記載できる緩和要因であるのに対し、速い緩和要因は、式(2)により予測されるものよりも速い緩和時間を有するものである。
【0023】
実際に、遅い緩和要因と速い緩和時間の存在により、ガラスが、二相の温度工程に施されたときに寸法変化を示し得る。詳しくは、ガラスは、膨張とその後の圧密を経験し得る。このことは、速い緩和要因が、従来の圧密の代わりに短時間で膨張させることによってガラスの正味の寸法変化に重大な役割を果たすことのできる、ディスプレイの製造に一般に使用される重大な「急速熱アニール」または「RTA」などの短い熱サイクルにおいて特にそうである。
【0024】
図2は、生産量で製造される4種類のガラスに関するこの影響を示している。この図において、ガラスは、4分、8分および12分の期間に亘り高温に曝された。ガラスを室温まで冷却した後に、その結果生じた寸法変化を測定し、指数関数を、測定データに近似させ、30秒での寸法変化を予測するのに使用した。図2に示されるように、最終的な寸法変化は、ガラス間で幅広く異なり、ピーク膨張とそのピーク膨張後の曲線の勾配の両方に依存する。特に、曲線21は、試験期間に亘り膨張のみを示すガラスを表し、曲線24は、大きいピーク膨張とそれに続く強烈な圧密を示すガラスを表し、曲線22と23は、幅広く離れたゼロ交差点を有する中間の挙動を表している。
【0025】
本開示によれば、図2に示された全体の挙動は、ガラスにおける速い緩和要因の量を選択/調節することによって制御できる。しかしながら、そのようにするには、速い緩和要因の影響を、遅い緩和要因の影響から区別する能力が必要である。図3は、遅い緩和要因と速い緩和要因の影響の間のそのような分離を得るための試験手順を示している。
【0026】
この図から分かるように、その試験手順は、状態調節段階(図3における31,32,33;図4における43)および測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)を含む。この状態調節段階は、以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され(図3の31参照);
(ii) 段階2において、ガラスは8時間に亘り675℃に保持され(図3の32参照);
(iii) 段階3において、ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される(図3の33参照);
ある実施の形態において、測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され(最初の繰返しを表す図3の34参照);
(ii) 段階2において、ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され(6回の繰返し後には累積120分間)(最初の繰返しを表す図3の35参照);
(iii) 各繰返しの段階3において、ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され(最初の繰返しを表す図3の36参照);
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定される。測定変化は、市販のまたはカスタマイズされた設備を使用して、様々な様式で決定することができる。例えば、寸法変化は、サンプルの縁の周りに基準線を刻み、次いで、例えば、ミツトヨApex Vision Systemを使用して、周囲の変化を測定することによって決定しても差し支えない。
【0027】
試験手順に、所定の高温での長い保持および遅い急冷速度を有する状態調節段階と、その後の同じ選択された高温および速い急冷速度を使用する測定段階とを使用するという条件で、他の時間、温度、および測定段階の繰返し数を利用した試験手順を使用して、速い緩和要因の影響を遅い緩和要因の影響から区別しても差し支えないことが、本開示から当業者には認識されるであろう。
【0028】
一般論として、この試験手順の状態調節段階は、遅い緩和種の、測定段階において測定される寸法変化への寄与を劇的に減少させるように働く。一般に、ガラスサンプルは、状態調節段階中に約3300〜1500ppmの寸法変化(圧密)を示す。遅い緩和要因を停止することに加え、状態調節段階は、測定段階において膨張するように低い仮想温度状態で速い緩和要因を設定する。次いで、測定段階において観察された膨張の相対量が、関心のあるガラスに存在する速い緩和要因の尺度として働く。
【0029】
遅い緩和要因と速い緩和要因の挙動を区別する図3の手順の能力は、図4および5を参照することにより理解することができる。図4の曲線41と42は、それぞれ、試験手順中の時間の関数としての遅い緩和要因と速い緩和要因の仮想温度をプロットしている。この図に示されるように、試験手順の第1の部分(状態調節段階)は遅い緩和要因を停止する、すなわち、図4の曲線41は、状態調節段階43の終わりまでに実質的に平らになり、測定段階中、すなわち、図4の加熱/高速急冷段階44,45,および46中に実質的に平らなままである。
【0030】
図5は、測定段階中に生じる寸法変化を示している。特に、曲線51は、速い緩和要因に帰因する寸法変化を示しており、曲線52は、測定データ点54,55および56を生じる組み合わさった寸法変化、例えば、以下に示される実験結果において、ガラスの膨張ピークの尺度を提供するために平均される5分、10分および15分での寸法変化を示している。これらの曲線が示すように、遅い緩和要因は、状態調節段階によって実質的に停止されてきたので、速い緩和要因は、測定段階中に実質的に観察可能な膨張挙動を生じることができる。
【0031】
図3〜5の試験手順を使用して、組成変化の速い緩和要因への影響を決定することができる。速い緩和要因の影響を高める組成変化の手法は、現在公知のまたは後に開発される様々なディスプレイ用ガラスにも適用できる。当該技術分野に知られているように、一般論で、ディスプレイ用ガラスは、ガラス形成材としてSiO2とAl2O3を含み、ガラスの性質、例えば、ガラスのCTE、歪み点、アニール点、融点、粘度などを変更するための成分としてCaO,SrOおよびMgOを含む。これらの成分に加え、それらのガラスは、様々な他の成分、例えば、B2O3、BaO、清澄剤などを含み得る。本開示を適用できるガラスのタイプの例としては、コーニングのフュージョン形成された1737、EAGLE XG(登録商標)、およびJADE(登録商標)ガラス、NEGのOA10とOA10G、並びに旭硝子のフロート形成されたAN−100ガラスが挙げられる。図3〜5の手順を使用して試験したときの、これらの市販のガラスの寸法挙動が、後に表1〜3に示されており、ここで、91はOA10を表し、92がOA10Gを表し、93が、予め圧密を施したコーニングの1737ガラスを表し、94が旭硝子のAN−100ガラスを表し、595がコーニングの「EAGLE XG」を表し、696がコーニングの「JADE」ガラスを表す。
【0032】
熱サイクル中のガラスの全体的な寸法変化への速い緩和要因の寄与を操作するために、様々な組成変化を使用して差し支えない。典型的に場合において、組成変化は、基本的なガラス形成材および改質剤とは異なり、ガラスの微量成分に基づく。実際に、組成変化は、通常、所望の膨張/圧密特性を与えるために、基礎ガラスの「ドーピング」の形態として特徴付けられるレベルである。
【0033】
図6および7は、基礎ガラスの寸法挙動を変更するために少量の添加剤の使用の特定の非限定的例を示している。特に、図6はアルカリ添加の影響を示しており、図7は含水量の影響を示している。これらの図の曲線は、上述した試験手順を使用して得られた、寸法変化対時間のプロファイルである。基礎ガラスの寸法挙動は、図6においては曲線61により、図7において曲線72により示されている。水の影響をなくすために、基礎ガラスを製造するために使用したバッチ材料は、225℃で一晩か焼した。図6の曲線62と63は、それぞれ、基礎ガラスへの0.25モル%および1.0モル%のLi2Oの添加の影響を示すのに対し、図7の曲線71は、より湿ったバッチ材料、すなわち、溶融前に225℃で一晩の追加のか焼工程を経験していない材料を使用する影響を示している。図6にプロットされた測定値が表1に示されている。
【0034】
寸法測定に関する誤差は±3ppm程度であり、それゆえ、図7のデータをさらに分析した。特に、曲線71と72に多項式フィット法を行い、多項式曲線からの各パラメータの値を比較した。乾燥サンプル(曲線72)の各パラメータは全て、湿ったサンプル(曲線71)のそれぞれのパラメータに関する95%信頼限界から外れており、これらの曲線は互いに統計的に異なり、この差はより長い時間で明らかに分離したという結論に至った。
【0035】
図6および7において、アルカリを増加させることにより(曲線62および63)、また含水量を増加させることにより(曲線71)、膨張が大きくなり、少なくともある程度はプロファイルの勾配が急になる。アルカリの曲線は、アルカリ含有量の増加により膨張が増加する(したがって、速い緩和)という直接的な相関性を断定的に示した、すなわち、3種類のガラスは、ゼロ、0.25モル%、および1.0モル%のLi2Oの添加により、約10ppm、約18ppm、および約26ppm膨張したので、特に重要である。さらに、Li2Oをたった0.25モル%添加しただけで、120分後の圧密は、−4ppmから−1ppmに減少した。このことはそれ自体で重要な結果であるが、アニール点を考慮すると、すなわち、Li2O含有ガラスが、Li2Oを含まないガラスよりも11℃低いアニール点を有したことを考慮すると、より一層重要であり、これは、アニール点がより低いガラスは、アニール点がより高いガラスよりも圧密が少ないことを意味し、これは予期されていなかった。
【0036】
上述したように、本開示によれば、寸法変化制御は、ディスプレイ製造プロセスの重大な熱サイクルに向けられる。図8はその計画を示している。この図において、81は重大な熱サイクルであり、84は、サイクル中に基板により示された寸法変化対時間であり、83と86は、それぞれ、基板のピーク寸法変化と最終寸法変化である。この図から分かるように、重大なサイクルの終わりに特定の値の寸法変化を達成することには、膨張ピークのとその後の収縮の傾斜の両方の制御が含まれる。図6および7に示されるように、膨張ピークの変化は、寸法変化対時間の曲線の収縮相の勾配における変化に関連付けられる。
【0037】
図9はさらに、大量に、例えば、毎時500ポンド(約267kg)より多い量で製造される様々なガラスにとってのこの影響を示す。ガラスは大量に製造されるので、使用されるバッチ材料は工業生産量で入手できるものであり、それゆえ、ガラスは、そのようなバッチ材料に関連する従来の含水量およびアルカリレベルを有する。ディスプレイ用ガラスにより示される非常に様々なピーク膨張値および勾配が、この図から明らかである。プロットされた特定の値が表1に示されている。ピークと「ピーク後勾配」の値(すなわち、ピーク後勾配=60分−120分の値)が表2に示されている。
【0038】
一般論で、膨張ピーク後の寸法変化対時間の曲線の勾配(以後、「ピーク後勾配」)は、ガラスのアニール点の関数である。特に、アニール点が上昇すると、ピーク後勾配は減少する。したがって、膨張ピークを上昇させる際に、アニール点が低下した場合、全体の寸法安定性への正味の影響は、増加したピークが、増加したピーク後勾配により相殺されるので、小さいであろう。評価の基準として、基板として使用するのに好ましいガラスのアニール点は、700℃より高い、より好ましくは720℃より高い、より好ましくは740℃より高い、より好ましくは760℃より高い、より好ましくは780℃より高い、より好ましくは800℃より高い。
【0039】
本開示によれば、速い緩和と遅い緩和の相対的な寄与の制御を行わない場合、ディスプレイ用ガラスは、以下の式:
【数3】
【0040】
にしたがってアニール点により変動する膨張ピークを示し、ここで、Tannはガラスのアニール点(℃で表される)であり、675はこのサイクルで使用した熱処理温度(℃で表される)であり、1.87はフィッティング・パラメータである。図10は、図9のガラスのこの関係を示している。この図の曲線101は、プロットされたデータ点に合わせてフィッティングさせたものである、すなわち、曲線101はこの式を満たす。このフィッティングに関するR2値は0.93であった。プロットされた値が表2に示されている。
【0041】
このグラフから分かるように、ピークが上昇すると、アニール温度が低下する。したがって、上述したように、寸法変化対時間の曲線のピーク後勾配は増加する。すなわち、図9の従来のガラスについて、ピーク膨張の増加は、全体の寸法変化を減少させるのには効果的ではない。何故ならば、そのような増加は、寸法変化対時間の曲線のピーク後勾配の増加に関連し、これは、ピーク増加の影響を相殺してしまうからである。実際に、むしろ典型的なRTAサイクルに近いより短いサイクルにおいて、従来の組成方法によるガラスアニール点の低下は、全体の寸法変化を支配し、速い緩和がわずかに増加しているにもかかわらず、元のガラスに対して全体の寸法変化が悪化する。しかしながら、速い緩和要因の相対量を不釣り合いに増加させるように組成が制御されるここに開示されたガラスについて、ピークは、アニール温度が低下するより速く増加するようにできる、すなわち、ピークは、ピーク後勾配が増加するより速く増加させることができる。表3は、この影響を示しており、ここで、ピーク値とピーク後勾配との間の関連が壊されている(図10の曲線102)ガラスのカットオフが式:
【数4】
【0042】
により与えられており、ここで、
【数5】
【0043】
表3に示されるように、速い緩和要因の数が増加されているガラス、すなわち、それぞれ、0.25モル%および1.0モル%のLi2Oを含む、ガラス62および63のみが、式(4)を満たす。
【0044】
図11は、本開示の速い緩和要因の制御技術を使用して達成できる利点を示すグラフである。この図は、速い緩和の制御を行わないガラス(曲線112)および速い緩和の制御を行うガラス(曲線111)に関する、ディスプレイ製造プロセスの代表的な重大なサイクル中の計算された寸法変化を示している。図に示すように、速い緩和要因の相対的分布を比較的少量だけ増加させることによって、例えば、5〜10ppm程度の全体の寸法変化を容易に改善することができる。そのような圧密の減少は、ディスプレイ製造の点で重大な改善を表し、ここに開示された技術により提供される重要な利点を構成する。
【0045】
要約すると、先の記載が示すように、ガラス基板の速い緩和種のレベルを制御することによって、その膨張が、ディスプレイ製造プロセスの重大な熱サイクル中の遅い緩和種の圧密の影響を弱めることができる。このようにして、基板の全体の寸法変化を減少させることができる、すなわち、圧密を最小にすることができる。そのような減少した圧密はそれ自体望ましい。さらに、例えば、そうでなければ要求されるであろうアニール点よりも低いアニール点を有するガラス組成物を使用することが可能になる。このことにより、転じて、他の望ましい特徴、例えば、良好な溶融/清澄特徴を有する組成物の使用が可能になり、これは、この技術の別の重要な利点を表す。
【0046】
本発明の範囲および精神から逸脱しない様々な改変が、先の開示から当業者にとって明白であろう。以下の特許請求の範囲は、ここに述べられた特定の実施の形態並びにそれら実施の形態の改変、変種および同等物を包含することが意図されている。
【表1】
【表2】
【表3】
【0047】
それゆえ、本発明の非限定的態様および/または実施の形態は以下を含む。
【0048】
C1. ディスプレイ製造サイクルにおけるガラス板の寸法変化を減少させる方法であって、前記サイクル中に前記ガラス板のガラスのピーク膨張を増加させるように該ガラスの組成を設計する工程を有してなる方法。
【0049】
C2. 状態調節段階および測定段階を含む試験手順を使用して試験したときに、前記ガラス板のガラスが、前記測定段階において、EXPPより大きいppmで表された線形膨張ピークを示し、ここで、
【0050】
Tannが℃で表された前記ガラスのアニール点であり、
前記状態調節段階が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは8時間に亘り675℃に保持され;
(iii) 段階3において、前記ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される;
前記測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され;
(iii) 各繰返しの段階3において、前記ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され;
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定されることを特徴とするC1記載の方法。
【0051】
C3. 前記ガラスが700℃より高いアニール点を有することを特徴とするC2記載の方法。
【0052】
C4. 前記組成を設計する工程が、前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度を始めのガラス組成物に対して増加させる工程を含むことを特徴とするC1からC3いずれか1つに記載の方法。
【0053】
C5. 前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が、始めのガラス組成物に対して少なくとも0.25モル%増加していることを特徴とするC4記載の方法。
【0054】
C6. 前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が、始めのガラス組成物に対して少なくとも1.0モル%増加していることを特徴とするC4記載の方法。
【0055】
C7. 前記組成を設計する工程が、前記ガラスの水濃度を始めのガラス組成物に対して増加させる工程を含むことを特徴とするC1からC6いずれか1つに記載の方法。
【0056】
C8. 前記ガラスが700℃より高いアニール点を有することを特徴とするC1からC7いずれか1つに記載の方法。
【0057】
C9. ディスプレイ装置を製造する製造プロセスにおいて基板として使用するためのガラス板であって、前記製造プロセスでは、前記ガラス板が少なくとも第1と第2の加熱段階に施され、該第1の加熱段階が最高温度T1および段階後冷却速度r1により特徴付けられ、該第2の加熱段階が最高温度T2および段階後冷却速度r2により特徴付けられ、ここで、
(1) T1<T2およびr1=r2、または
(2) T1=T2およびr1<r2、または
(3) T1<T2およびr1<r2、
前記ガラス板は、毎時少なくとも500ポンド(約227kg)のガラスを製造するプロセスにより製造され、SiO2、Al2O3、CaO、SrO、およびMgOを含み、
状態調節段階および測定段階を含む試験手順を使用して試験した場合、前記ガラス板のガラスが、前記測定段階において、EXPPより大きいppmで表された膨張ピークを示し、ここで、
【0058】
Tannは、℃で表されたガラスのアニール点であり、
前記状態調節段階が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは8時間に亘り675℃に保持され;
(iii) 段階3において、前記ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される;
前記測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され;
(iii) 各繰返しの段階3において、前記ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され;
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定されることを特徴とするガラス板。
【0059】
C10. 前記ガラスが700℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9記載のガラス板。
【0060】
C11. 前記ガラスが720℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9またはC10記載のガラス板。
【0061】
C12. 前記ガラスが740℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9からC11いずれか1つに記載のガラス板。
【0062】
C13. 前記ガラスが760℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9からC12いずれか1つに記載のガラス板。
【0063】
C14. 前記ガラスが780℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9からC13いずれか1つに記載のガラス板。
【0064】
C15. 前記ガラスが800℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9からC14いずれか1つに記載のガラス板。
【0065】
C16. ガラスにおいて速い緩和要因と遅い緩和要因の影響を区別する方法であって、(i)前記ガラスが、予め設定された高温に加熱され、当該温度に保持され、次いで、冷却される状態調節段階、および(ii)前記ガラスが、同じ前記予め設定された高温に加熱され、当該温度に保持され、次いで、冷却される測定段階を含み、前記高温での保持は、前記測定段階よりも前記状態調節段階のほうが長く、前記状態調節段階の冷却は、前記測定段階の冷却よりも遅いことを特徴とする方法。
【0066】
C17. 前記測定段階の加熱、保持、および冷却が複数回繰り返されることを特徴とするC16記載の方法。
【0067】
C18. 前記状態調節段階中の前記高温が、200℃と前記ガラスのアニール点より10℃低い温度との間にあることを特徴とするC16またはC17記載の方法。
【0068】
C19. 前記状態調節段階中の前記高温が、100℃と前記ガラスのアニール点より20℃低い温度との間にあることを特徴とするC16からC18いずれか1つに記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディスプレイ、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)の製造に使用されるガラス基板に関し、特に、そのような基板がディスプレイ製造プロセス中に示す寸法変化に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの製造プロセスは、高温で行われる加工工程を含むことがよく知られている。使用される特定の温度は、製造されるディスプレイのタイプによる。例えば、ポリシリコン(p−Si)技術を利用するディスプレイでは、アモルファスシリコンに基づくディスプレイ(a−Siディスプレイ)よりも高い加工温度が使用される。
【0003】
ディスプレイ製造プロセスにおける基板として、大型のガラス板が使用され、それゆえ、それらのプロセスで使用される高温に曝露されることもよく知られている。このような高温のために、基板が寸法変化、すなわち、圧密を示すことがある。現代のディスプレイのピクセルサイズは小さいので、たとえ数ppmほど小さい寸法変化でも、完成したディスプレイの品質が損なわれ得る。
【0004】
この寸法変化の問題に対処するために、数多くの手法が使用されてきた。例えば、基板は、ディスプレイ製造プロセスに使用される前に、ある期間に亘り高温に保持されることによって、予備圧密されてきた。そのような熱処理により、ガラスの仮想温度が低下し、それゆえ、高温に上昇せしめられたときにガラスが示す寸法変化が減少する(以下の式(1)参照)。他の手法として、高い歪み点および/または高いアニール点を有し、それゆえ、高温曝露に対してより耐性のあるガラス組成物が開発されてきた。
【0005】
ディスプレイ製造プロセスの全ての工程が、寸法変化の問題の影響を等しく受けやすいわけではないことが重要である。むしろ、そのようなプロセスには通常、ガラス基板の寸法変化(例えば、基板の圧密)が最終的なディスプレイへの最も有害な影響を与える重大なサイクルがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、そのような重大なサイクルにおいて生じる寸法変化を減少させることに向けられている。それゆえ、ここに開示された技法は、上述したものなどの寸法変化を減少させるための他の技法への追加、または代替として使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、ディスプレイ製造サイクルにおけるガラス板の寸法変化を減少させる方法であって、そのサイクル中のガラスのピーク膨張を増加させるようにガラスの組成を変更する工程を含む方法が開示されている。ある実施の形態において、この組成は、アルカリをその組成に添加することによって変更されるのに対し、他の実施の形態において、ガラスの含水量が増加させられる。
【0008】
第2の態様によれば、ディスプレイ装置を製造する製造プロセスにおいて基板として使用するためのガラス板が開示されており、その製造プロセスでは、ガラス板が少なくとも第1と第2の加熱段階に施され、第1の加熱段階が最高温度T1および段階後冷却速度r1により特徴付けられ、第2の加熱段階が最高温度T2および段階後冷却速度r2により特徴付けられ、ここで、
(1) T1<T2およびr1=r2、または
(2) T1=T2およびr1<r2、または
(3) T1<T2およびr1<r2、
前記ガラス板は、毎時少なくとも500ポンド(約227kg)のガラスを製造するプロセス(例えば、フロート法またはフュージョン法)により製造され、SiO2、Al2O3、CaO、SrO、およびMgOを含み、
状態調節段階(図3における31,32,33;図4における43)および測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)を含む試験手順を使用して試験した場合、ガラス板のガラスが、測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)において、EXPPより大きいppmで表された膨張ピークを示し、ここで、
Tannは、℃で表されたガラスのアニール点であり、
状態調節段階(図3における31,32,33;図4における43)が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され(図3の31参照);
(ii) 段階2において、ガラスは8時間に亘り675℃に保持され(図3の32参照);
(iii) 段階3において、ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される(図3の33参照);
測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され(最初の繰返しを表す図3の34参照);
(ii) 段階2において、ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され(6回の繰返し後には累積120分間)(最初の繰返しを表す図3の35参照);
(iii) 各繰返しの段階3において、ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され(最初の繰返しを表す図3の36参照);
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定される。
【0009】
第3の態様によれば、ガラスにおいて速い緩和要因(relaxer)と遅い緩和要因の影響を区別する方法であって、(i)ガラスが、予め設定された高温に加熱され(31)、その温度に保持され(32)、次いで、冷却される(33)状態調節段階(図3における31,32,33;図4における43)、および(ii)ガラスが、同じ予め設定された高温に加熱され(34)、その温度に保持され(35)、次いで、冷却される(36)測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)を含み、高温での保持(32,35)は、測定段階よりも状態調節段階のほうが長く、状態調節段階の冷却(33)は、測定段階の冷却(36)よりも遅い方法が開示されている。ある実施の形態において、測定段階の加熱(34)、保持(35)、および冷却(36)は複数回繰り返される。
【0010】
開示された様々な態様の上記の要約に使用した参照番号は、読者の便宜のためだけであり、本発明の範囲を制限するものと解釈されることを意図しておらず、そうすべきではない。より一般には、先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示であり、本発明の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することが意図されていることが理解されよう。
【0011】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、またはここの記載により例証された本発明を実施することによって認識される。添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。本明細書および図面に開示された本発明の様々な特徴は、任意の組合せと全ての組合せで使用できることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】450℃に保持された代表的なディスプレイ用ガラス(コーニング社(Corning Incorporated)のJADE(登録商標)ガラス)に関するppmで表された寸法変化(縦軸)対分で表された時間(横軸)のグラフ。
【図2】生産量で製造され、4分、8分および12分の期間の温度の段階的変化に曝露された4種類のガラスに関するppmで表された寸法変化(縦軸)対分で表された時間(横軸)のグラフ。30秒のデータ点は、4分、8分および12分での値に指数近似(exponential fit)に基づく。
【図3】ディスプレイ用ガラスにおける速い緩和を観察するために使用できる試験手順のための温度(縦軸)対時間(横軸)のグラフ。この図に示された時間、温度および勾配は、一定の縮尺で描かれていない。この試験手順は状態調節段階31,32,33および測定段階34,35,36を含む。
【図4】図3の試験手順の実施の形態を示す説明図。縦軸は、加熱期間43,44,45,46については温度であり、曲線41と42については仮想温度である。横軸は時間である。この図は一定の縮尺で描かれていない。
【図5】図4の試験手順の測定段階の結果としての寸法変化を示す説明図。縦軸は、例えば、百万分の一(ppm)で表された寸法変化であり、横軸は時間である。この図は一定の縮尺で描かれていない。
【図6】速い緩和へのバッチ配合したLi2Oの影響を示すグラフ。縦の目盛りはppmで表された寸法変化であり、横の目盛りは分で表された時間である。
【図7】速い緩和への含水量の影響を示すグラフ。縦の目盛りはppmで表された寸法変化であり、横の目盛りは分で表された時間である。
【図8】ディスプレイ製造プロセスの重大な熱サイクル中の最終的な寸法変化への最大膨張の影響を示す説明図。この図の上部は重大な熱サイクルを示し、下部はガラス基板の寸法変化を示す。横軸は、図の上部と下部の両方について時間であり、縦軸は、上部については温度であり、下部については寸法変化である。
【図9】図4に示された手順にしたがって試験した6種類の生産ガラスと3種類の開発ガラスに関するppmで表された寸法変化(縦軸)対分で表された時間(横軸)のグラフ。
【図10】図9の9種類のガラスに関するピーク膨張対アニール点のグラフ。
【図11】ディスプレイ製造プロセスの重大な熱サイクルにおいて異なるレベルの速い緩和を示す2種類のガラスに関する計算された寸法変化を示すグラフ。横軸は分で表された時間であり、縦軸はppmで表された寸法変化である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ガラス溶融物を高温から急激に冷却した場合、冷却されている液体内の原子の動きは、温度の減少と共に遅くなり、やがて、振動状態(vibrational state)の通常の熱分布(thermal population)のために固定位置の周りでの振動(oscillation)へと減退する。これらの位置は、一般に、ガラスが長期間に亘り(数秒から数日に及ぶ)中間温度(例えば、ガラス転移温度もしくは歪み点またはアニール点)に保持されたときに取られたであろう位置ではない。ゆえに、急冷されたガラスが中間温度に再加熱されたときに、熱分布の振動状態により、原子が個々と集合的の結合要件をよりうまく満たす位置に緩和できる。このことには、一般に、ガラスの塊状片の物理的寸法の減少が伴うので、再加熱の際の熱緩和は、ガラスの圧密を生じると言われる。
【0014】
再加熱の際にガラスの任意の特定のサンプルが示す圧密の量は、再加熱の開始時のガラスの仮想温度、すわち、Tf(t0)、および再加熱の過程に及ぶ仮想温度の変化、すなわち、Tf(t)に依存する。温度Tまでの再加熱により生じる時間による仮想温度の変化は、以下の式:
【数1】
【0015】
により記載することができ、ここで、bは「伸張定数(stretching constant)」であり、τ(T)は熱処理温度でのガラスの緩和時間である。
【0016】
所定の温度Tでのガラスの緩和時間は、式:
【数2】
【0017】
により近似することができ、ここで、η(T)は所定の温度でのガラスの剪断粘度であり、Gは、粘度を時間空間(time space)に計り分ける、一次近似では温度に関係ないガラスの剪断弾性係数である。
【0018】
式(1)および(2)から分かるように、例えば、η(T)を増加させることによって、緩和時間が増加するにつれて、所定の時間でのガラスの仮想温度の変化は著しく減少し、それによって、所定の熱サイクルにおいて測定される圧密が減少する。
【0019】
仮想温度は、一般に、所定の急冷速度に対する単一温度と称されるが、これは単に、ディスプレイ用基板として使用されるタイプのガラスにおける緩和時間の分布の存在が実験の証拠により明らかに示されたので、言葉の便宜上である。図1において、寸法変化のデータ(圧密データ)は、単純指数(single exponential)(曲線12)および引き延ばされた指数(stretched exponential)(曲線11)の両方に合っている。データが単純指数にうまく合うことができれば、それは単純な緩和時間を表すであろう。引き延ばされた指数が必要とされる事実は、多数の緩和時間が実施されるという明らかな証拠である。
【0020】
本開示によれば、ディスプレイの製造に使用されるタイプの熱サイクルが施されたときのガラスの寸法挙動が、そのガラスが緩和種の2つの分布、すなわち、「速い緩和」と「遅い緩和」からなるものと考えることによって、合理的に近似し、制御できることが分かった。特に、寸法変化の制御への速い緩和/遅い緩和の手法は、ガラス板が少なくとも第1と第2の加熱段階に施される熱サイクルに適用でき、この第1の加熱段階は最高温度T1および段階後冷却速度r1により特徴付けられ、第2の加熱段階は最高温度T2および段階後冷却速度r2により特徴付けられ、ここで、
(1) T1<T2およびr1=r2、または
(2) T1=T2およびr1<r2、または
(3) T1<T2およびr1<r2。
【0021】
ディスプレイ製造プロセスにおける重大な熱サイクルは、通常、そのような二段階加熱プロセスの第2の加熱段階であり、それゆえ、板を構成するガラスにおける速い緩和要因と遅い緩和要因の相対量の調節によってそのような第2の加熱段階注のガラス板の寸法変化を制御する能力は、ディスプレイ製造プロセスに重大に寄与する。
【0022】
一般に、遅い緩和要因は、ガラスの粘度対温度挙動、例えば、ガラスのアニール温度(すなわち、ガラスが1013.18ポアズの粘度を有する温度)により記載される寸法変化に含まれる。特に、ここに用いたように、遅い緩和要因は、その挙動が最初の近似で式(2)により記載できる緩和要因であるのに対し、速い緩和要因は、式(2)により予測されるものよりも速い緩和時間を有するものである。
【0023】
実際に、遅い緩和要因と速い緩和時間の存在により、ガラスが、二相の温度工程に施されたときに寸法変化を示し得る。詳しくは、ガラスは、膨張とその後の圧密を経験し得る。このことは、速い緩和要因が、従来の圧密の代わりに短時間で膨張させることによってガラスの正味の寸法変化に重大な役割を果たすことのできる、ディスプレイの製造に一般に使用される重大な「急速熱アニール」または「RTA」などの短い熱サイクルにおいて特にそうである。
【0024】
図2は、生産量で製造される4種類のガラスに関するこの影響を示している。この図において、ガラスは、4分、8分および12分の期間に亘り高温に曝された。ガラスを室温まで冷却した後に、その結果生じた寸法変化を測定し、指数関数を、測定データに近似させ、30秒での寸法変化を予測するのに使用した。図2に示されるように、最終的な寸法変化は、ガラス間で幅広く異なり、ピーク膨張とそのピーク膨張後の曲線の勾配の両方に依存する。特に、曲線21は、試験期間に亘り膨張のみを示すガラスを表し、曲線24は、大きいピーク膨張とそれに続く強烈な圧密を示すガラスを表し、曲線22と23は、幅広く離れたゼロ交差点を有する中間の挙動を表している。
【0025】
本開示によれば、図2に示された全体の挙動は、ガラスにおける速い緩和要因の量を選択/調節することによって制御できる。しかしながら、そのようにするには、速い緩和要因の影響を、遅い緩和要因の影響から区別する能力が必要である。図3は、遅い緩和要因と速い緩和要因の影響の間のそのような分離を得るための試験手順を示している。
【0026】
この図から分かるように、その試験手順は、状態調節段階(図3における31,32,33;図4における43)および測定段階(図3における34,35,36;図4における44,45,46)を含む。この状態調節段階は、以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され(図3の31参照);
(ii) 段階2において、ガラスは8時間に亘り675℃に保持され(図3の32参照);
(iii) 段階3において、ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される(図3の33参照);
ある実施の形態において、測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され(最初の繰返しを表す図3の34参照);
(ii) 段階2において、ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され(6回の繰返し後には累積120分間)(最初の繰返しを表す図3の35参照);
(iii) 各繰返しの段階3において、ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され(最初の繰返しを表す図3の36参照);
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定される。測定変化は、市販のまたはカスタマイズされた設備を使用して、様々な様式で決定することができる。例えば、寸法変化は、サンプルの縁の周りに基準線を刻み、次いで、例えば、ミツトヨApex Vision Systemを使用して、周囲の変化を測定することによって決定しても差し支えない。
【0027】
試験手順に、所定の高温での長い保持および遅い急冷速度を有する状態調節段階と、その後の同じ選択された高温および速い急冷速度を使用する測定段階とを使用するという条件で、他の時間、温度、および測定段階の繰返し数を利用した試験手順を使用して、速い緩和要因の影響を遅い緩和要因の影響から区別しても差し支えないことが、本開示から当業者には認識されるであろう。
【0028】
一般論として、この試験手順の状態調節段階は、遅い緩和種の、測定段階において測定される寸法変化への寄与を劇的に減少させるように働く。一般に、ガラスサンプルは、状態調節段階中に約3300〜1500ppmの寸法変化(圧密)を示す。遅い緩和要因を停止することに加え、状態調節段階は、測定段階において膨張するように低い仮想温度状態で速い緩和要因を設定する。次いで、測定段階において観察された膨張の相対量が、関心のあるガラスに存在する速い緩和要因の尺度として働く。
【0029】
遅い緩和要因と速い緩和要因の挙動を区別する図3の手順の能力は、図4および5を参照することにより理解することができる。図4の曲線41と42は、それぞれ、試験手順中の時間の関数としての遅い緩和要因と速い緩和要因の仮想温度をプロットしている。この図に示されるように、試験手順の第1の部分(状態調節段階)は遅い緩和要因を停止する、すなわち、図4の曲線41は、状態調節段階43の終わりまでに実質的に平らになり、測定段階中、すなわち、図4の加熱/高速急冷段階44,45,および46中に実質的に平らなままである。
【0030】
図5は、測定段階中に生じる寸法変化を示している。特に、曲線51は、速い緩和要因に帰因する寸法変化を示しており、曲線52は、測定データ点54,55および56を生じる組み合わさった寸法変化、例えば、以下に示される実験結果において、ガラスの膨張ピークの尺度を提供するために平均される5分、10分および15分での寸法変化を示している。これらの曲線が示すように、遅い緩和要因は、状態調節段階によって実質的に停止されてきたので、速い緩和要因は、測定段階中に実質的に観察可能な膨張挙動を生じることができる。
【0031】
図3〜5の試験手順を使用して、組成変化の速い緩和要因への影響を決定することができる。速い緩和要因の影響を高める組成変化の手法は、現在公知のまたは後に開発される様々なディスプレイ用ガラスにも適用できる。当該技術分野に知られているように、一般論で、ディスプレイ用ガラスは、ガラス形成材としてSiO2とAl2O3を含み、ガラスの性質、例えば、ガラスのCTE、歪み点、アニール点、融点、粘度などを変更するための成分としてCaO,SrOおよびMgOを含む。これらの成分に加え、それらのガラスは、様々な他の成分、例えば、B2O3、BaO、清澄剤などを含み得る。本開示を適用できるガラスのタイプの例としては、コーニングのフュージョン形成された1737、EAGLE XG(登録商標)、およびJADE(登録商標)ガラス、NEGのOA10とOA10G、並びに旭硝子のフロート形成されたAN−100ガラスが挙げられる。図3〜5の手順を使用して試験したときの、これらの市販のガラスの寸法挙動が、後に表1〜3に示されており、ここで、91はOA10を表し、92がOA10Gを表し、93が、予め圧密を施したコーニングの1737ガラスを表し、94が旭硝子のAN−100ガラスを表し、595がコーニングの「EAGLE XG」を表し、696がコーニングの「JADE」ガラスを表す。
【0032】
熱サイクル中のガラスの全体的な寸法変化への速い緩和要因の寄与を操作するために、様々な組成変化を使用して差し支えない。典型的に場合において、組成変化は、基本的なガラス形成材および改質剤とは異なり、ガラスの微量成分に基づく。実際に、組成変化は、通常、所望の膨張/圧密特性を与えるために、基礎ガラスの「ドーピング」の形態として特徴付けられるレベルである。
【0033】
図6および7は、基礎ガラスの寸法挙動を変更するために少量の添加剤の使用の特定の非限定的例を示している。特に、図6はアルカリ添加の影響を示しており、図7は含水量の影響を示している。これらの図の曲線は、上述した試験手順を使用して得られた、寸法変化対時間のプロファイルである。基礎ガラスの寸法挙動は、図6においては曲線61により、図7において曲線72により示されている。水の影響をなくすために、基礎ガラスを製造するために使用したバッチ材料は、225℃で一晩か焼した。図6の曲線62と63は、それぞれ、基礎ガラスへの0.25モル%および1.0モル%のLi2Oの添加の影響を示すのに対し、図7の曲線71は、より湿ったバッチ材料、すなわち、溶融前に225℃で一晩の追加のか焼工程を経験していない材料を使用する影響を示している。図6にプロットされた測定値が表1に示されている。
【0034】
寸法測定に関する誤差は±3ppm程度であり、それゆえ、図7のデータをさらに分析した。特に、曲線71と72に多項式フィット法を行い、多項式曲線からの各パラメータの値を比較した。乾燥サンプル(曲線72)の各パラメータは全て、湿ったサンプル(曲線71)のそれぞれのパラメータに関する95%信頼限界から外れており、これらの曲線は互いに統計的に異なり、この差はより長い時間で明らかに分離したという結論に至った。
【0035】
図6および7において、アルカリを増加させることにより(曲線62および63)、また含水量を増加させることにより(曲線71)、膨張が大きくなり、少なくともある程度はプロファイルの勾配が急になる。アルカリの曲線は、アルカリ含有量の増加により膨張が増加する(したがって、速い緩和)という直接的な相関性を断定的に示した、すなわち、3種類のガラスは、ゼロ、0.25モル%、および1.0モル%のLi2Oの添加により、約10ppm、約18ppm、および約26ppm膨張したので、特に重要である。さらに、Li2Oをたった0.25モル%添加しただけで、120分後の圧密は、−4ppmから−1ppmに減少した。このことはそれ自体で重要な結果であるが、アニール点を考慮すると、すなわち、Li2O含有ガラスが、Li2Oを含まないガラスよりも11℃低いアニール点を有したことを考慮すると、より一層重要であり、これは、アニール点がより低いガラスは、アニール点がより高いガラスよりも圧密が少ないことを意味し、これは予期されていなかった。
【0036】
上述したように、本開示によれば、寸法変化制御は、ディスプレイ製造プロセスの重大な熱サイクルに向けられる。図8はその計画を示している。この図において、81は重大な熱サイクルであり、84は、サイクル中に基板により示された寸法変化対時間であり、83と86は、それぞれ、基板のピーク寸法変化と最終寸法変化である。この図から分かるように、重大なサイクルの終わりに特定の値の寸法変化を達成することには、膨張ピークのとその後の収縮の傾斜の両方の制御が含まれる。図6および7に示されるように、膨張ピークの変化は、寸法変化対時間の曲線の収縮相の勾配における変化に関連付けられる。
【0037】
図9はさらに、大量に、例えば、毎時500ポンド(約267kg)より多い量で製造される様々なガラスにとってのこの影響を示す。ガラスは大量に製造されるので、使用されるバッチ材料は工業生産量で入手できるものであり、それゆえ、ガラスは、そのようなバッチ材料に関連する従来の含水量およびアルカリレベルを有する。ディスプレイ用ガラスにより示される非常に様々なピーク膨張値および勾配が、この図から明らかである。プロットされた特定の値が表1に示されている。ピークと「ピーク後勾配」の値(すなわち、ピーク後勾配=60分−120分の値)が表2に示されている。
【0038】
一般論で、膨張ピーク後の寸法変化対時間の曲線の勾配(以後、「ピーク後勾配」)は、ガラスのアニール点の関数である。特に、アニール点が上昇すると、ピーク後勾配は減少する。したがって、膨張ピークを上昇させる際に、アニール点が低下した場合、全体の寸法安定性への正味の影響は、増加したピークが、増加したピーク後勾配により相殺されるので、小さいであろう。評価の基準として、基板として使用するのに好ましいガラスのアニール点は、700℃より高い、より好ましくは720℃より高い、より好ましくは740℃より高い、より好ましくは760℃より高い、より好ましくは780℃より高い、より好ましくは800℃より高い。
【0039】
本開示によれば、速い緩和と遅い緩和の相対的な寄与の制御を行わない場合、ディスプレイ用ガラスは、以下の式:
【数3】
【0040】
にしたがってアニール点により変動する膨張ピークを示し、ここで、Tannはガラスのアニール点(℃で表される)であり、675はこのサイクルで使用した熱処理温度(℃で表される)であり、1.87はフィッティング・パラメータである。図10は、図9のガラスのこの関係を示している。この図の曲線101は、プロットされたデータ点に合わせてフィッティングさせたものである、すなわち、曲線101はこの式を満たす。このフィッティングに関するR2値は0.93であった。プロットされた値が表2に示されている。
【0041】
このグラフから分かるように、ピークが上昇すると、アニール温度が低下する。したがって、上述したように、寸法変化対時間の曲線のピーク後勾配は増加する。すなわち、図9の従来のガラスについて、ピーク膨張の増加は、全体の寸法変化を減少させるのには効果的ではない。何故ならば、そのような増加は、寸法変化対時間の曲線のピーク後勾配の増加に関連し、これは、ピーク増加の影響を相殺してしまうからである。実際に、むしろ典型的なRTAサイクルに近いより短いサイクルにおいて、従来の組成方法によるガラスアニール点の低下は、全体の寸法変化を支配し、速い緩和がわずかに増加しているにもかかわらず、元のガラスに対して全体の寸法変化が悪化する。しかしながら、速い緩和要因の相対量を不釣り合いに増加させるように組成が制御されるここに開示されたガラスについて、ピークは、アニール温度が低下するより速く増加するようにできる、すなわち、ピークは、ピーク後勾配が増加するより速く増加させることができる。表3は、この影響を示しており、ここで、ピーク値とピーク後勾配との間の関連が壊されている(図10の曲線102)ガラスのカットオフが式:
【数4】
【0042】
により与えられており、ここで、
【数5】
【0043】
表3に示されるように、速い緩和要因の数が増加されているガラス、すなわち、それぞれ、0.25モル%および1.0モル%のLi2Oを含む、ガラス62および63のみが、式(4)を満たす。
【0044】
図11は、本開示の速い緩和要因の制御技術を使用して達成できる利点を示すグラフである。この図は、速い緩和の制御を行わないガラス(曲線112)および速い緩和の制御を行うガラス(曲線111)に関する、ディスプレイ製造プロセスの代表的な重大なサイクル中の計算された寸法変化を示している。図に示すように、速い緩和要因の相対的分布を比較的少量だけ増加させることによって、例えば、5〜10ppm程度の全体の寸法変化を容易に改善することができる。そのような圧密の減少は、ディスプレイ製造の点で重大な改善を表し、ここに開示された技術により提供される重要な利点を構成する。
【0045】
要約すると、先の記載が示すように、ガラス基板の速い緩和種のレベルを制御することによって、その膨張が、ディスプレイ製造プロセスの重大な熱サイクル中の遅い緩和種の圧密の影響を弱めることができる。このようにして、基板の全体の寸法変化を減少させることができる、すなわち、圧密を最小にすることができる。そのような減少した圧密はそれ自体望ましい。さらに、例えば、そうでなければ要求されるであろうアニール点よりも低いアニール点を有するガラス組成物を使用することが可能になる。このことにより、転じて、他の望ましい特徴、例えば、良好な溶融/清澄特徴を有する組成物の使用が可能になり、これは、この技術の別の重要な利点を表す。
【0046】
本発明の範囲および精神から逸脱しない様々な改変が、先の開示から当業者にとって明白であろう。以下の特許請求の範囲は、ここに述べられた特定の実施の形態並びにそれら実施の形態の改変、変種および同等物を包含することが意図されている。
【表1】
【表2】
【表3】
【0047】
それゆえ、本発明の非限定的態様および/または実施の形態は以下を含む。
【0048】
C1. ディスプレイ製造サイクルにおけるガラス板の寸法変化を減少させる方法であって、前記サイクル中に前記ガラス板のガラスのピーク膨張を増加させるように該ガラスの組成を設計する工程を有してなる方法。
【0049】
C2. 状態調節段階および測定段階を含む試験手順を使用して試験したときに、前記ガラス板のガラスが、前記測定段階において、EXPPより大きいppmで表された線形膨張ピークを示し、ここで、
【0050】
Tannが℃で表された前記ガラスのアニール点であり、
前記状態調節段階が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは8時間に亘り675℃に保持され;
(iii) 段階3において、前記ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される;
前記測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され;
(iii) 各繰返しの段階3において、前記ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され;
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定されることを特徴とするC1記載の方法。
【0051】
C3. 前記ガラスが700℃より高いアニール点を有することを特徴とするC2記載の方法。
【0052】
C4. 前記組成を設計する工程が、前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度を始めのガラス組成物に対して増加させる工程を含むことを特徴とするC1からC3いずれか1つに記載の方法。
【0053】
C5. 前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が、始めのガラス組成物に対して少なくとも0.25モル%増加していることを特徴とするC4記載の方法。
【0054】
C6. 前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が、始めのガラス組成物に対して少なくとも1.0モル%増加していることを特徴とするC4記載の方法。
【0055】
C7. 前記組成を設計する工程が、前記ガラスの水濃度を始めのガラス組成物に対して増加させる工程を含むことを特徴とするC1からC6いずれか1つに記載の方法。
【0056】
C8. 前記ガラスが700℃より高いアニール点を有することを特徴とするC1からC7いずれか1つに記載の方法。
【0057】
C9. ディスプレイ装置を製造する製造プロセスにおいて基板として使用するためのガラス板であって、前記製造プロセスでは、前記ガラス板が少なくとも第1と第2の加熱段階に施され、該第1の加熱段階が最高温度T1および段階後冷却速度r1により特徴付けられ、該第2の加熱段階が最高温度T2および段階後冷却速度r2により特徴付けられ、ここで、
(1) T1<T2およびr1=r2、または
(2) T1=T2およびr1<r2、または
(3) T1<T2およびr1<r2、
前記ガラス板は、毎時少なくとも500ポンド(約227kg)のガラスを製造するプロセスにより製造され、SiO2、Al2O3、CaO、SrO、およびMgOを含み、
状態調節段階および測定段階を含む試験手順を使用して試験した場合、前記ガラス板のガラスが、前記測定段階において、EXPPより大きいppmで表された膨張ピークを示し、ここで、
【0058】
Tannは、℃で表されたガラスのアニール点であり、
前記状態調節段階が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは8時間に亘り675℃に保持され;
(iii) 段階3において、前記ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される;
前記測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され;
(iii) 各繰返しの段階3において、前記ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され;
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定されることを特徴とするガラス板。
【0059】
C10. 前記ガラスが700℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9記載のガラス板。
【0060】
C11. 前記ガラスが720℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9またはC10記載のガラス板。
【0061】
C12. 前記ガラスが740℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9からC11いずれか1つに記載のガラス板。
【0062】
C13. 前記ガラスが760℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9からC12いずれか1つに記載のガラス板。
【0063】
C14. 前記ガラスが780℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9からC13いずれか1つに記載のガラス板。
【0064】
C15. 前記ガラスが800℃より高いアニール点を有することを特徴とするC9からC14いずれか1つに記載のガラス板。
【0065】
C16. ガラスにおいて速い緩和要因と遅い緩和要因の影響を区別する方法であって、(i)前記ガラスが、予め設定された高温に加熱され、当該温度に保持され、次いで、冷却される状態調節段階、および(ii)前記ガラスが、同じ前記予め設定された高温に加熱され、当該温度に保持され、次いで、冷却される測定段階を含み、前記高温での保持は、前記測定段階よりも前記状態調節段階のほうが長く、前記状態調節段階の冷却は、前記測定段階の冷却よりも遅いことを特徴とする方法。
【0066】
C17. 前記測定段階の加熱、保持、および冷却が複数回繰り返されることを特徴とするC16記載の方法。
【0067】
C18. 前記状態調節段階中の前記高温が、200℃と前記ガラスのアニール点より10℃低い温度との間にあることを特徴とするC16またはC17記載の方法。
【0068】
C19. 前記状態調節段階中の前記高温が、100℃と前記ガラスのアニール点より20℃低い温度との間にあることを特徴とするC16からC18いずれか1つに記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ製造サイクルにおけるガラス板の寸法変化を減少させる方法であって、前記サイクル中に前記ガラス板のガラスのピーク膨張を増加させるように該ガラスの組成を変更する工程を有してなる方法。
【請求項2】
前記変更工程が、前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度を増加させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が少なくとも0.25モル%だけ増加されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が少なくとも1.0モル%だけ増加されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記変更工程が、前記ガラスの水濃度を増加させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
状態調節段階および測定段階を含む試験手順を使用して試験したときに、前記ガラス板のガラスが、前記測定段階において、194−0.23×Tannより大きいppmで表された線形膨張ピークを示し、ここで、Tannが℃で表された前記ガラスのアニール点であり、
前記状態調節段階が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは8時間に亘り675℃に保持され;
(iii) 段階3において、前記ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される;
前記測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され;
(iii) 各繰返しの段階3において、前記ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され;
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
ディスプレイ装置を製造する製造プロセスにおいて基板として使用するためのガラス板であって、前記製造プロセスでは、前記ガラス板が少なくとも第1と第2の加熱段階に施され、該第1の加熱段階が最高温度T1および段階後冷却速度r1により特徴付けられ、該第2の加熱段階が最高温度T2および段階後冷却速度r2により特徴付けられ、ここで、
(1) T1<T2およびr1=r2、または
(2) T1=T2およびr1<r2、または
(3) T1<T2およびr1<r2、
前記ガラス板は、毎時少なくとも500ポンド(約227kg)のガラスを製造するプロセスにより製造され、SiO2、Al2O3、CaO、SrO、およびMgOを含み、
状態調節段階および測定段階を含む試験手順を使用して試験した場合、前記ガラス板のガラスが、前記測定段階において、194−0.23×Tannより大きいppmで表された膨張ピークを示し、ここで、Tannは、℃で表されたガラスのアニール点であり、
前記状態調節段階が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは8時間に亘り675℃に保持され;
(iii) 段階3において、前記ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される;
前記測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され;
(iii) 各繰返しの段階3において、前記ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され;
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定されることを特徴とするガラス板。
【請求項8】
前記ガラスが700℃より高いアニール点を有することを特徴とする請求項7記載のガラス板。
【請求項9】
ガラスにおいて速い緩和要因と遅い緩和要因の影響を区別する方法であって、(i)前記ガラスが、予め設定された高温に加熱され、当該温度に保持され、次いで、冷却される状態調節段階、および(ii)前記ガラスが、同じ前記予め設定された高温に加熱され、当該温度に保持され、次いで、冷却される測定段階を含み、前記高温での保持は、前記測定段階よりも前記状態調節段階のほうが長く、前記状態調節段階の冷却は、前記測定段階の冷却よりも遅いことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記測定段階の加熱、保持、および冷却が複数回繰り返されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項1】
ディスプレイ製造サイクルにおけるガラス板の寸法変化を減少させる方法であって、前記サイクル中に前記ガラス板のガラスのピーク膨張を増加させるように該ガラスの組成を変更する工程を有してなる方法。
【請求項2】
前記変更工程が、前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度を増加させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が少なくとも0.25モル%だけ増加されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ガラスのアルカリ金属酸化物の濃度が少なくとも1.0モル%だけ増加されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記変更工程が、前記ガラスの水濃度を増加させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
状態調節段階および測定段階を含む試験手順を使用して試験したときに、前記ガラス板のガラスが、前記測定段階において、194−0.23×Tannより大きいppmで表された線形膨張ピークを示し、ここで、Tannが℃で表された前記ガラスのアニール点であり、
前記状態調節段階が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは8時間に亘り675℃に保持され;
(iii) 段階3において、前記ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される;
前記測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され;
(iii) 各繰返しの段階3において、前記ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され;
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
ディスプレイ装置を製造する製造プロセスにおいて基板として使用するためのガラス板であって、前記製造プロセスでは、前記ガラス板が少なくとも第1と第2の加熱段階に施され、該第1の加熱段階が最高温度T1および段階後冷却速度r1により特徴付けられ、該第2の加熱段階が最高温度T2および段階後冷却速度r2により特徴付けられ、ここで、
(1) T1<T2およびr1=r2、または
(2) T1=T2およびr1<r2、または
(3) T1<T2およびr1<r2、
前記ガラス板は、毎時少なくとも500ポンド(約227kg)のガラスを製造するプロセスにより製造され、SiO2、Al2O3、CaO、SrO、およびMgOを含み、
状態調節段階および測定段階を含む試験手順を使用して試験した場合、前記ガラス板のガラスが、前記測定段階において、194−0.23×Tannより大きいppmで表された膨張ピークを示し、ここで、Tannは、℃で表されたガラスのアニール点であり、
前記状態調節段階が以下の3段階を含み:
(i) 段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは8時間に亘り675℃に保持され;
(iii) 段階3において、前記ガラスは8時間で675℃から室温まで冷却される;
前記測定段階は、以下の3段階の6回の連続した繰返しを含み:
(i) 各繰返しの段階1において、前記ガラスは2分間で20℃から675℃に加熱され;
(ii) 段階2において、前記ガラスは、最初の3回の繰返しについては5分間に亘り、4回目の繰返しについては15分間に亘り、5回目の繰返しについては30分間に亘り、6回目の繰返しについては60分間に亘り、675℃の温度に曝され;
(iii) 各繰返しの段階3において、前記ガラスは2分間で675℃から100℃まで冷却され;
寸法変化が各測定段階の繰返しの段階3後に測定されることを特徴とするガラス板。
【請求項8】
前記ガラスが700℃より高いアニール点を有することを特徴とする請求項7記載のガラス板。
【請求項9】
ガラスにおいて速い緩和要因と遅い緩和要因の影響を区別する方法であって、(i)前記ガラスが、予め設定された高温に加熱され、当該温度に保持され、次いで、冷却される状態調節段階、および(ii)前記ガラスが、同じ前記予め設定された高温に加熱され、当該温度に保持され、次いで、冷却される測定段階を含み、前記高温での保持は、前記測定段階よりも前記状態調節段階のほうが長く、前記状態調節段階の冷却は、前記測定段階の冷却よりも遅いことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記測定段階の加熱、保持、および冷却が複数回繰り返されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−231004(P2011−231004A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−100744(P2011−100744)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100744(P2011−100744)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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