説明

ディスプレイ用光学フィルタ及びこれを備えたディスプレイ

【課題】防眩層の防眩斑及び面ギラを防止したディスプレイ用光学フィルタを提供すること。
【解決手段】透明基材11の一方の表面にメッシュ状の導電層13と、当該導電層13上に樹脂組成物のハードコート12層を備えた構造を含むディスプレイ用光学フィルタであって、
前記ハードコート層12は、相分離する少なくとも2種の成分を含むハードコート層形成用硬化性樹脂組成物を硬化させることにより形成された微細な凹凸表面を有することを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ等のディスプレイの画像表示部に用いられ、電磁波シールド性を有するディスプレイ用光学フィルタ及びディスプレイ用光学フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のディスプレイから発生する不要な電磁波の輻射を遮蔽するディスプレイ用フィルタとして、フィルタ内にメッシュ状の導電層を設けた電磁波シールド性および光透過性を有するディスプレイ用光学フィルタが用いられている。
【0003】
近年、ディスプレイは大画面表示が主流となり、次世代の大画面表示デバイスとしてPDPが一般的になってきている。しかしながら、このPDPでは画像表示のため発光部に高周波パルス放電を行っているため、不要な電磁波の輻射や赤外線リモコン等の誤動作の原因ともなる赤外線の輻射のおそれがあり、このため、PDPに対しては、導電性を有するPDP用反射防止フィルム(電磁波シールド性光透過窓材)が種々提案されている。この電磁波シールド性光透過窓材の導電層としては、例えば、(1)金属銀を含む透明導電薄膜が設けられた透明フィルム、(2)金属線又は導電性繊維を網状にした導電メッシュを設けた透明フィルム、(3)透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、(4)透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等が知られている。
【0004】
また、ディスプレイ表面に傷が付くとディスプレイに表示された画像の視認性が低下するため、ハードコート層を有するディスプレイ用フィルタなども知られている。さらに、従来のPDPを初めとする大型ディスプレイにおいては、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射により表示された画像が見え難いという問題があった。そこで、反射防止層を有するディスプレイ用フィルタ等も広く用いられている。
【0005】
更に、光学フィルタの防眩性を付与するために、図3に示すように、透明基材51上に導電層53が設けられ、更にこの導電層53上に、架橋アクリル樹脂微粒子等の微粒子57を含む防眩層52が形成されたディスプレイ用光学フィルタも知られている(特許文献1)。このディスプレイ用光学フィルタでは、防眩層52から突出した微粒子57が光の散乱を生じさせることにより防眩性が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−216666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記防眩性を有する光学フィルタは、メッシュ状導電層の高さにバラツキが生じた場合に微粒子57の突出量が不均一となったり(図4)、微粒子57がメッシュ状導電層53間に落下することにより(図5)、防眩性を示す領域と示さない領域が混在することとなり、防眩性を示す領域が斑(以下、「防眩斑」と称する。)となる場合があった。
【0008】
一方で、微粒子の突出量のバラツキを抑えるために、微粒子の粒径を大きくした場合には、パネルからの光が微粒子で集光してぎらついて見える現象(以下、「面ギラ」とも称する。)が生じる場合がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、メッシュ状の導電層と、導電層上に防眩性を有するハードコート層を備えた構造を含むディスプレイ用光学フィルタであって、導電層の高さのバラツキに影響を受けず、防眩斑及び面ギラが生じない光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、透明基材の一方の表面にメッシュ状の導電層と、当該導電層上に樹脂組成物のハードコート層を備えた構造を含むディスプレイ用光学フィルタであって、
前記ハードコート層は、相分離する少なくとも2種の成分を含むハードコート層形成用硬化性樹脂組成物を硬化させることにより形成された微細な凹凸表面を有することを特徴とするディスプレイ用光学フィルタにより達成することができる。
【0011】
本発明によれば、微粒子を用いずにハードコート層の表面に凹凸形状を形成することができるため、上記のような微粒子の突出具合の差異や微粒子のメッシュ間への落下による防眩斑や、大きめの微粒子を用いることにより生じる面ギラを防止しつつ、防眩性を付与することができる。
【0012】
本発明に係るディスプレイ用光学フィルタの好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記少なくとも2種の成分の一方が、不飽和二重結合を有するポリマーであり、他方が不飽和二重結合を有するモノマーである。
(2)前記不飽和二重結合を有するポリマーが、不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体である。
(3)前記ハードコート層の表面の表面粗さ(Ra)が0.1〜0.2μmである。
(4)前記透明基材の導電層が設けられていない側の表面に、近赤外線吸収層、ネオンカット層及び粘着剤層から選択される少なくとも1種が設けられている。
(5)プラズマディスプレイ用フィルタである。
【0013】
また、本発明の目的は、上記特徴を有するディスプレイ用光学フィルタを備えたことを特徴とするディスプレイによっても達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、防眩斑や面ギラの発生を防止することができる防眩性の高いディスプレイ用光学フィルタを提供することができる。したがって、本ディスプレイ用光学フィルタを備えるディスプレイの視認性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のディスプレイ用光学フィルタの代表的な一例を示す部分概略断面図である。
【図2】本発明のディスプレイ用光学フィルタの好適態様の一例を示す部分概略断面図である。
【図3】従来の防眩性を有するハードコート層(防眩層)を備える光学フィルタの概略断面図である。
【図4】導電性メッシュの高さのバラツキにより生じる微粒子の突出量の不均一性を示す説明図である。
【図5】微粒子がメッシュ間に落下した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の光学フィルタについて図を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の光学フィルタの概略断面図(中央部分図)である。本発明の光学フィルタは、透明基板11、透明基板11上に形成されたメッシュ状の金属導電層(電磁波シールド層)13、さらに金属導電層13上に設けられたハードコート層12から構成されている。ハードコート層12は、金属導電層13のメッシュ間の間隙を埋め、金属導電層13を覆うように形成されている。上記透明基板11は一般にプラスチックフィルムである。なお、本発明において、ハードコート層とは、JIS K5600(1999)で規定される鉛筆硬度試験でH以上の硬度を有するものをいう。
【0018】
ハードコート層12の表面は図示のように微細な凹凸形状が形成されている。この凹凸形状は、後述するように、少なくとも2種の互いに異なる成分(成分1、成分2)と溶媒を主として含むハードコート層形成用硬化性樹脂組成物を、透明基材11上に形成された導電層13上に塗工した後、熱乾燥により溶媒を蒸発させて、成分1及び成分2を相分離させることにより形成される。この凹凸形状によりハードコート層12に入射する光が乱反射し、ハードコート層12に防眩性を付与することができる。そして、この凹凸形状によれば、導電性メッシュの高さのバラツキに影響を受けず、また、従来から防眩性を付与するために用いられてきた微粒子を含まないので、防眩斑や面ギラが生じることを防止することができる。
【0019】
成分1と成分2の組み合わせとしては、例えば、多官能性モノマーなどのモノマー、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリシラン樹脂、ポリイミド樹脂またはフッ素樹脂を骨格構造に含む樹脂から選択される組み合わせが挙げられる。これらの樹脂は、低分子量であるいわゆるオリゴマーであってもよい。これら樹脂およびオリゴマーとして、上記樹脂の骨格構造の2種以上から構成される共重合体であってもよく、この骨格構造とそれ以外のモノマーとからなる共重合体であってもよい。
【0020】
本発明における成分1および成分2は、同種の骨格構造を含むオリゴマーまたは樹脂を用いてもよく、また互いに異なる骨格構造を含むオリゴマーまたは樹脂を用いてもよい。また、成分1および成分2のうち何れか一方がモノマーであって、他の一方がオリゴマーまたは樹脂であってもよい。
【0021】
また本発明における成分1および成分2はそれぞれ、互いに反応する官能基を有しているのが好ましい。このような官能基を互いに反応させることによって、ハードコート形成用硬化性組成物によって得られるハードコート層の耐擦傷性を高めることができる。
【0022】
このような官能基の組合せとして、例えば、活性水素を有する官能基(水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基など)とエポキシ基、活性水素を有する官能基とイソシアネート基、エチレン性不飽和基とエチレン性不飽和基(エチレン性不飽和基の重合が生じる)、シラノール基とシラノール基(シラノール基の縮重合が生じる)、シラノール基とエポキシ基、活性水素を有する官能基と活性水素を有する官能基、活性メチレンとアクリロイル基、オキサゾリン基とカルボキシル基などが挙げられる。また、ここにいう「互いに反応する官能基」とは、成分1および成分2のみを混合しただけでは反応は進行しないが、触媒または硬化剤を併せて混合することにより互いに反応するものも含まれる。ここで使用できる触媒として、例えば光開始剤、ラジカル開始剤、酸・塩基触媒、金属触媒などが挙げられる。使用できる硬化剤として、例えば、メラミン硬化剤、(ブロック)イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤などが挙げられる。成分1および成分2それぞれが、互いに反応する官能基を有する場合は、成分1と成分2との混合物は熱や光による硬化性を有することとなる。
【0023】
また、成分1および成分2の分子量は、分子量(樹脂である場合は重量平均分子量)で100〜130000であることが好ましい。
【0024】
相分離可能な成分1と成分2の組み合わせとして、例えば、成分1が不飽和二重結合を有するポリマー、好ましくは不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体であり、成分2が不飽和二重結合を有するモノマーである組み合わせが挙げられる。
【0025】
不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸などの酸基を有する重合性不飽和モノマーを重合または共重合した樹脂又はこの酸基を有する重合性不飽和モノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂に、エチレン性不飽和二重結合とエポキシ基を有するモノマーを反応させた共重合体、あるいはヒドロキシル基を有する重合性不飽和モノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとの共重合体に、エチレン性不飽和二重結合とイソシアネート基を有するモノマーを反応させた共重合体などが挙げられる。
【0026】
酸基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸および2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸のようなモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸およびイタコン酸のようなジカルボン酸、無水マレイン酸および無水イタコン酸のような酸無水物;およびマレイン酸モノエチル、フマル酸モノエチルおよびイタコン酸モノエチルのようなジカルボン酸のモノエステル、またはこれらのα−位のハロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロもしくはシアノにより置換された置換誘導体、o−、m−、p−ビニル安息香酸またはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミドもしくはエステルにより置換された置換誘導体などが挙げられる。
【0027】
また、ヒドロキシル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとして、スチレンまたはスチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステルにより置換された置換誘導体;ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等のオレフィン類;o−、m−、p−ヒドロキシスチレンまたはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステルもしくはカルボキシにより置換された置換誘導体;ビニルヒドロキノン、5−ビニルピロガロール、6−ビニルピロガロール、1−ビニルフロログリシノール等のポリヒドロキシビニルフェノール類;メタクリル酸またはアクリル酸のメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソアミルヘキシル、シクロヘキシル、アダマンチル、アリル、プロパギル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、アントラキノニル、ピペロニル、サリチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネシル、クレシル、グリシジル、イソボロニル、トリフェニルメチル、ジシクロペンタニル、クミル、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、フリルもしくはフルフリルエステル;メタクリル酸またはアクリル酸のアニリドもしくはアミド、またはN,N−ジメチル、N,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N,N−ジイソプロピルもしくはアントラニルアミド;アクリロニトリル、アクロレイン、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、N−フェニルマレインイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレインイミド、N−メタクリロイルフタルイミド、N−アクリロイルフタルイミド等を用いることができる。
【0029】
エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートおよび3,4−エポキシシクロヘキサニル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。硬化性に優れる点でグリシジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0030】
不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体は、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーを用いて生成する場合には、酸基を有する重合性不飽和モノマーおよび他の重合性不飽和モノマーを溶媒に溶解して必要に応じて加熱し、重合開始剤を加えて共重合させ、次いで得られた共重合の酸基とエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーのエポキシ基とを反応させる方法によって得ることができる。
【0031】
本発明において成分1として使用される、不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体の重量平均分子量は、500〜100000であるのが好ましく、1000〜50000であるのがより好ましい。また、不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
成分2の不飽和二重結合を有するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリ(2−ヒドロキシエトキシメチル)プロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。
【0033】
この中でも、2個以上の不飽和二重結合を有するモノマーが好ましく、特に、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いることが特に好ましい。これらの不飽和二重結合を有するモノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
また、相分離可能な成分1と成分2の他の好ましい組み合わせとして、成分1が(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体であり、成分2がシリコーン−アクリルブロック共重合体である組み合わせが挙げられる。
【0035】
シリコーン−アクリルブロック共重合体は、ポリシロキサン化合物に、例えばメチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の(メタ)アクリルモノマーを共重合させて得られる共重合体であり、本発明においては重量平均分子量が100000〜140000であることが好ましい。また、(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体は、上述したような2種以上の(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを共重合させて得られる共重合体であり、本発明においては、重量平均分子量が1000〜50000であることが好ましい。
【0036】
ここで、ハードコート層形成用硬化性樹脂組成物中に含まれる成分1及び成分2は、具体的には、成分1のSP値(SP)と成分2のSP値(SP)の差が0.5以上、好ましくは0.8〜3.6であることが好ましい。SP値とは、樹脂の極性を表すパラメーターであり、SP値が高い程樹脂の極性が高いことを表わしており、成分1と成分2がこの関係にあれば、互いの相溶性が低く、防眩性を付与するのに好適な相分離を生じさせることができる。更に、成分1のSP値(SP)、成分2のSP値(SP)および後述する溶媒(SPsol)の関係が、SP<SPであり、SPとSPsolとの差が2以下、好ましくは1.7以下である条件を満たすものが好ましい。なお、SPとSPsolは、SP<SPsolであってもよく、SP>SPsolであってもよい。
【0037】
上述したSP値は次のようにして求められる(Suh,Clarke〔J.P.S.A−1,5,1671−1681(1967)〕参照)。樹脂0.5gを100mlのビーカーに秤取し良溶媒(ジオキサンおよび/またはアセトン)10mlを加えて溶解することにより得た溶液を試料として、ビュレットを用い、貧溶媒(n−ヘキサンおよび/またはイオン交換水)を液温20℃の上記溶液に滴下し、溶液に濁りが生じたときの滴下量を小数点以下1桁の数値で表したものである。
【0038】
SP値δは次の式により求められる。
【0039】
δ=(Vml1/2δml+Vmh1/2δmh)/(Vml1/2+Vmh1/2)
Vm=V/(φ+φ
δm=φδ+φδ
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0040】
本発明の成分1及び成分2の少なくとも2種類の樹脂成分が含まれるハードコート形成層用硬化性樹脂組成物中には、溶媒が含有される。溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。
【0041】
ハードコート形成層用硬化性樹脂組成物中における成分1と成分2の比率は1:99〜99:1が好ましく、1:99〜50:50がより好ましい。
【0042】
上述した成分1と成分2を含む樹脂組成物は、例えば、日本ペイント(株)社から商品名:ルシフラールNAGとして入手することができる。
【0043】
上記成分1と成分2を含むハードコート層形成用硬化性樹脂組成物を紫外線硬化させる場合に含まれる光重合開始剤としては、使用する樹脂成分の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0044】
これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0045】
上記ハードコート層を形成するには、例えば、上述した樹脂成分、光重合開始剤、添加剤などを含むハードコート層形成用組成物を上述した溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングし、その後、30〜200℃、好ましくは40〜150℃において0.1〜60分間、より好ましくは1〜30分間乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。これにより、成分1と成分2が相分離し、所望の大きさの凹凸形状を形成することができる。
【0046】
紫外線硬化させる際の光源としては紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。
【0047】
上記成分1と成分2を含むハードコート層形成用硬化性樹脂組成物が熱硬化性の場合には、過酸化物及び、適宜メラミン硬化剤やイソシアネート硬化剤を添加した塗工液を塗布した後、40〜280℃、好ましくは80〜250℃で、0.1〜180分間、好ましくは1〜60分間加熱することにより硬化させる。この加熱により各成分を相分離させることができる。
【0048】
なお、ハードコート層は、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいても良い。特に、紫外線吸収剤(例、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はベンゾフェノン系紫外線吸収剤)を含むことが好ましく、これによりフィルタの黄変等の防止が効率的に行うことができる。その量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0049】
本発明において、ハードコート層の相分離後の凹凸形状の表面粗さ(Ra)は0.1〜0.2μmであることが好ましい。これにより、防眩性を保持しつつ面ギラの発生を確実に防止することができる。なお、本発明において表面粗さ(Ra)は、表面粗さ計サーフコム480A(東京精密社製)を用いてJIS B0601(2001)に準拠した方法で、算術平均粗さ(Ra)を測定したものである。
【0050】
ハードコート層の層厚は、通常、透明基材表面から1〜50μm、好ましくは5〜20μmである。
【0051】
なお、本発明において樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法を用いてポリスチレン換算で測定した値をいう。
【0052】
図2は、本発明の光学フィルタの好ましい態様の1例の概略断面図である。
【0053】
図2において、透明基板21の一方の表面に、メッシュ状の金属導電層23、上述のハードコート層22及び低屈折率層24がこの順で設けられ、他方の表面には近赤外線吸収層25及びその上に粘着剤層26が設けられている。
【0054】
防眩性を有するハードコート層22は光を散乱させることで反射防止効果を有し、他に反射防止層を設けなくて良い場合が多い。これにより、他の層の屈折率の自由度が向上し、層の材料の選択肢が広がるため、コスト低減効果もある。図示のように防眩性を有するハードコート層22と低屈折率層24とからなる場合は、ハードコート層のみよりさらに優れた反射防止効果が得られる。
【0055】
図2では、近赤外線吸収層及び粘着剤層の例を示したが、近赤外線吸収層、ネオンカット層又は粘着剤層、或いはこれらの層の2層以上の組合せでも良い。あるいは、近赤外線吸収機能及びネオンカット機能を有する粘着剤層からなるか、或いはネオンカット機能を有する近赤外線吸収層、及び粘着剤層(この順で透明フィルム上に設けられている)からなるか、或いは近赤外線吸収層、ネオンカット層及び粘着剤層(この順で透明フィルム上に設けられている)からなることも好ましい。
【0056】
上記金属導電層13、23は、メッシュ状の金属層又は金属含有層である。メッシュ状の金属層又は金属含有層は、一般に、エッチングにより、又は印刷法により形成されているか、金属繊維層である。これにより低抵抗を得られやすい。一般に、メッシュ状の金属層又は金属含有層のメッシュの空隙は、前記のように、防眩性を有するハードコート層で埋められている。これにより透明性、防眩性が向上する。
【0057】
上記低屈折率層24は、反射防止層を構成している。即ち、防眩層とその上に設けられた低屈折率層との複合膜により反射防止効果を効率良くに示す。この低屈折率層と防眩層との間に高屈折率層を設けても良い。これにより反射防止機能は向上する。
【0058】
また低屈折率層24等は設けなくても良く、透明フィルムと、ハードコート層のみであっても良い。ハードコート層、反射防止層等は、一般に塗布により形成される。生産性、経済性の観点から好ましい。
【0059】
上記近赤外線吸収層25は、PDPのネオン発光等の不要な光を遮断する機能を有する。一般に800〜1200nmに吸収極大を有する色素を含む層である。透明粘着層26は一般にディスプレイへ容易に装着するために設けられている。粘着剤層26の上に剥離シートを設けても良い。
【0060】
本発明のディスプレイ用光学フィルタは、本発明の目的を達成することができれば、どのような材料や工程を用いても良い。以下に好ましい態様を説明する。
【0061】
[透明基材]
透明基材は、一般に、透明なプラスチックフィルムである。その材料としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)であれば特に制限はない。プラスチックフィルムの例としては、ポリエステル[例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート]、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが、加工性に優れているので好ましい。また、近赤外吸収層等に含まれる有機色素類は紫外線を受けて耐久性が低下しやすいが、PET等のポリエステルはこのような紫外線を吸収する傾向があり好ましい。透明基材の表面には各機能層の密着性を良くするための易接着層を設けても良い。易接着層は、例えば、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂のみ、又はそれらの樹脂に、SiO、ZrO、TiO、Al等の金属酸化微粒子、好ましくは平均粒径1〜100nmの金属酸化微粒子を配合して、屈折率を調整したものが用いられる。
【0062】
透明基材の厚さとしては、光学フィルタの用途等によっても異なるが、一般に1μm〜10mm、1μm〜5mm、特に25〜250μmが好ましい。
【0063】
[導電層]
メッシュ状の導電層は、一般に10Ω/□以下、好ましくは0.001〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□のとなるように設定される。メッシュ状の導電層としては金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属を網状にしたもの、透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等を挙げることができる。
【0064】
メッシュ状の導電層の場合、メッシュとしては、金属繊維及び/又は金属被覆有機繊維よりなる線径1μm〜1mm、開口率40〜95%のものが好ましい。より好ましい線径は10〜500μm、開口率は50〜95%である。メッシュ状の導電層において、線径が1mmを超えると電磁波シールド性が向上するが、開口率が低下し両立させることができない。1μm未満では、メッシュとしての強度が下がり取扱いが困難となる。また開口率が95%を超えるとメッシュとしての形状を維持することが困難であり、40%未満では光透過性が低下し、ディスプレイからの光量も低下する。
【0065】
なお、メッシュの開口率とは、当該メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0066】
導電層のメッシュの透明基材表面からの高さは1〜15μmが好ましく、更に3〜10μmが好ましい。
【0067】
メッシュ状の導電層を構成する金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、炭素又はこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、ニッケルが用いられる。
【0068】
金属被覆有機繊維の有機材料としては、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニリデン、アラミド、ビニロン、セルロース等が用いられる。
【0069】
金属箔等の導電性の箔をパターンエッチングしたもの場合、金属箔の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0070】
金属箔の厚さは、薄過ぎると取扱い性やパターンエッチングの作業性等の面で好ましくなく、厚過ぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼし、エッチング工程の所要時間が長くなることから、1〜200μm程度とするのが好ましい。
【0071】
エッチングパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の孔が形成された格子状の金属箔や、円形、六角形、三角形又は楕円形の孔が形成されたパンチングメタル状の金属箔等が挙げられる。また、孔は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この金属箔の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%が好ましく、更に好ましくは40〜95%、特に60〜95%が好ましい。
【0072】
上記の他に、メッシュ状の導電層として、フィルム面に、溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成し、フィルム面に溶剤に対して不溶な導電材料からなる導電材料層を形成し、フィルム面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去することによって得られるメッシュ状の導電層を用いても良い。
【0073】
導電層の上層に、さらに金属めっき層を、導電性を向上させるために設けても良い。金属めっき層は、公知の電解めっき法、無電解めっき法により形成することができる。めっきに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、好ましくは銅、銅合金、銀、又はニッケルであり、特に経済性、導電性の点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0074】
また、防眩性能を付与させても良い。この防眩化処理を行う場合、(メッシュ)導電層の表面に黒化処理を行っても良い。例えば、金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキ、黒又は暗色系のインクの塗布等を行うことができる。
【0075】
上述の通り、本発明においては、導電層上に微小な凸部を有する場合に有効である。特に、導電層が、金属めっき層を有する場合に、金属めっき層を形成するめっき工程において、めっきムラ等により、このような微小な凸部が生じる場合があるので、有効である。
【0076】
[反射防止層]
反射防止層の内、低屈折率層は、シリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカを10〜40重量%(好ましくは10〜30質量%)が樹脂成分(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0077】
反射防止層の内、高屈折率層を設ける場合は、樹脂成分(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO,ATO,Sb,SbO,In,SnO,ZnO、AlをドープしたZnO、TiO等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層(硬化層)とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0078】
これらの反射防止層に使用する樹脂成分としては、通常のハードコート層と同様なものが使用できる。一般にフェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂、又は紫外線硬化性樹脂であり、上述の通り、短時間で硬化させることができ、生産性に優れる点から紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂を用いる場合は、紫外線硬化性樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤等からなる)として使用する。紫外線硬化性樹脂としては、上述のポリマー、モノマー等を使用できる。
【0079】
上述のハードコート層と合わせて全体として可視光線透過率が85%以上であることが好ましい。高屈折率層及び低屈折率層の可視光線透過率も、いずれも85%以上であることが好ましい。
【0080】
ハードコート層と上記2層より構成される場合、例えば、ハードコート層の厚さは全体で5〜20μm、高屈折率層の厚さは50〜150nm、低屈折率層の厚さは50〜150nmであることが好ましい。
【0081】
反射防止層を形成するには、上述のハードコート層の場合と同様に形成することができる。この場合、ハードコート層、反射防止層の各層を1層ずつ塗工し硬化させてもよく、全層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。連続加工の場合、各層の塗工後に硬化をしないと、塗工面に傷が付く場合があるので、各層を1層ずつ塗工し硬化するのが好ましい。
【0082】
[近赤外線吸収層]
透明基材の導電層が形成された面の他面上に形成される近赤外線吸収層は、一般に、基板フィルムの表面に色素等を含む層が形成されることにより得られる。近赤外線吸収層は、例えば上記色素及びバインダ樹脂等を含む塗工液を塗工、必要により乾燥、そして硬化させることにより得られる。或いは上記色素及びバインダ樹脂等を含む塗工液を塗工、そして単に乾燥させることによっても得られる。フィルムとして使用する場合は、一般に近赤外線カットフィルムであり、例えば色素等を含有するフィルムである。色素としては、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有するもので、例としては、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素、を挙げることができ、特にシアニン系色素又、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独又は組み合わせて使用することができる。バインダ樹脂の例としては、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0083】
近赤外線吸収層に、ネオン発光の吸収機能(ネオンカット機能)を付与することにより色調の調節機能を持たせても良い。このために、ネオン発光の吸収層(ネオンカット層)を設けても良いが、近赤外線吸収層にネオン発光の選択吸収色素を含有させても良い。
【0084】
ネオン発光の選択吸収色素としては、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素、アズレニウム系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素を挙げることができる。このような選択吸収色素は、585nm付近のネオン発光の選択吸収性とそれ以外の可視光波長において吸収が小さいことが必要であるため、吸収極大波長が575〜595nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好ましい。
【0085】
また、近赤外線やネオン発光の吸収色素を複数種組み合わせる場合、色素の溶解性に問題がある場合、混合による色素間の反応ある場合、耐熱性、耐湿性等の低下が認められる場合には、すべての近赤外線吸収色素を同一の層に含有させる必要はなく、別の層に含有させても良い。
【0086】
また、光学特性に大きな影響を与えない限り、さらに着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えても良い。
【0087】
近赤外線吸収特性としては、850〜1000nmの透過率を、20%以下、さらに15%するのが好ましい。また選択吸収性としては、585nmの透過率が50%以下であることが好ましい。特に前者の場合には、周辺機器のリモコン等の誤作動が指摘されている波長領域の透過度を減少させる効果があり、後者の場合は、575〜595nmにピークを持つオレンジ色が色再現性を悪化させる原因であることから、このオレンジ色の波長を吸収させる効果があり、これにより真赤性を高めて色の再現性を向上させたものである。近赤外線吸収層の層厚は、0.5〜50μmが一般的である。
【0088】
[粘着剤層]
粘着剤層は、ガラス基板に接着する接着機能を有するものであればどのような樹脂でも使用することができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、ブチルアクリレート等から形成されたアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン)及びSBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)等の熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とするTPE系粘着剤及び接着剤等も用いることができる。
【0089】
その層厚は、一般に5〜500μm、特に10〜100μmの範囲が好ましい。光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に圧着することにより装備することができる。
【0090】
前記粘着剤層の材料として、EVAを使用する場合、EVAとしては酢酸ビニル含有量が5〜50重量%、好ましくは15〜40重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有量が5重量%より少ないと透明性に問題があり、また40重量%を超すと機械的性質が著しく低下する上に、成膜が困難となり、フィルム相互のブロッキングが生じ易い。
【0091】
架橋剤としては加熱架橋する場合は、有機過酸化物が適当であり、シート加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選ばれる。使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3等を挙げることができる。これらの過酸化物は1種を単独で又は2種以上を混合して、通常EVA100質量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.5〜5.0質量部の割合で使用される。
【0092】
有機過酸化物は通常EVAに対し押出機、ロールミル等で混練されるが、有機溶媒、可塑剤、ビニルモノマー等に溶解し、EVAのフィルムに含浸法により添加しても良い。
【0093】
EVAを光により架橋する場合、上記過酸化物の代りに光増感剤が通常EVA100質量部に対して5質量部以下、好ましくは0.1〜3.0質量部使用される。
【0094】
この場合、使用可能な光増感剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾフェノン等挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0095】
上記粘着剤層は、例えばEVAと上述の添加剤とを混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形することにより製造される。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0097】
(実施例1)
(1)ハードコート層形成組成物(塗工液)の調製
樹脂成分(ルシフラールNAG−1000(日本ペイント製))固形分30質量%(溶剤(メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン)にて調整)、及び光重合開始剤(イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))固形分対比2.0質量%を攪拌混合し、塗工液を調製した。
【0098】
(2)光学フィルタの形成
(i)メッシュ状導電層の形成
表面に易接着層(ポリエステルポリウレタン;厚さ20nm)を有する厚さ100μmの長尺状ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(幅:600mm、長さ100m)の易接着層上に、ポリビニルアルコールの20%水溶液をドット状に印刷した。ドット1個の大きさは1辺が234μmの正方形状であり、ドット同士間の間隔は20μmであり、ドット配列は正方格子状である。印刷厚さは、乾燥後で約5μmである。
【0099】
その上に、銅を平均膜厚4μmとなるように真空蒸着した。次いで、常温の水に浸漬し、スポンジで擦ることによりドット部分を溶解除去し、次いで水でリンスした後、乾燥し、さらに、酸化処理による黒化処理を行い、PETフィルムの全面にメッシュ状導電層を形成した。
【0100】
このフィルム表面の導電層は、正確にドットのネガパターンに対応した正方格子状のものであり、線幅は20μm、開口率は77%であった。また、導電層(銅層)の平均厚さは4μmであった。
【0101】
(ii)ハードコート層の形成
(1)で調製した塗工液に分散させ、(i)で形成した導電層上に、最終的に8μmのハードコート層を形成するように塗工した。これを70℃、30秒乾燥後、高圧水銀ランプにて、UV照射量300mJ/cmで硬化し、ハードコート層を形成した。
【0102】
(実施例2)
樹脂成分をルシフラールNAG−2000(日本ペイント製)とした以外は実施例1と同様にしてハードコート層を形成した。
【0103】
(比較例1)
(1)ハードコート層形成用紫外線硬化性樹脂組成物(塗工液)の調製
樹脂成分(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(A−DPH、新中村化学社製))固形分30質量%(溶剤(メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン)にて調整)、及び光重合開始剤(イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製))固形分対比2.0質量%、樹脂微粒子(SSX−104、積水化成品工業(株)社製、平均粒径:4μm)固形分対比1.50質量%を攪拌混合し、塗工液を調製した。
(2)光学フィルタの形成
実施例1と同様にして、導電層上に上記樹脂微粒子を含むハードコート層(高さ8μm)を形成した。
【0104】
(比較例2)
樹脂微粒子(SSX−105、積水化成品工業(株)社製、平均粒径:5μm)とした以外は比較例1と同様にしてハードコート層を形成した。
【0105】
(比較例3)
樹脂粒子(SSX−108、積水化成品工業(株)社製、平均粒径:8μm)とした以外は比較例1と同様にしてハードコート層を形成した。
【0106】
(比較例4)
樹脂微粒子(SSX−110、積水化成品工業(株)社製、平均粒径:10μm)とした以外は比較例1と同様にしてハードコート層を形成した。
【0107】
(評価方法)
上記で作製したそれぞれの光学フィルタについて、防眩斑と面ギラをそれぞれ目視により確認した。防眩斑の評価において○は防眩斑が認められなかったものであり、×は防眩斑が認められたものを意味する。また、面ギラの評価において、○は面ギラが認められなかったものであり、△は面ギラがわずかに確認されたものであり、×は面ギラがはっきりと確認されたものを示している。
【0108】
また、実施例1及び2で形成されたハードコート層の凹凸表面の表面粗さ(Ra)を測定した。表面粗さ(Ra)は、表面粗さ計サーフコム480A(東京精密社製)を用いてJIS B0601(2001)に準拠した方法で、算術平均粗さ(Ra)を測定した。
【0109】
【表1】

【0110】
(評価結果)
表1に示すように、実施例1では防眩斑及び面ギラは認められなかった。実施例2では防眩斑は認められず、面ギラは認められてもわずかであった。比較例3及び4では防眩斑が認められた。比較例5及び6において、微粒子の平均粒径を大きくした場合には、防眩斑については解消されるものの、面ギラが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によれば、より視認性の高いディスプレイ用光学フィルタを提供することができる。
【符号の説明】
【0112】
10、20 光学フィルタ
11、21 透明基材
12、22 ハードコート層
13、23 導電層
24 低屈折率層
25 近赤外線吸収層
26 粘着剤層
51 透明基材
52 防眩層
53 導電層
57 微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の表面にメッシュ状の導電層と、当該導電層上に樹脂組成物のハードコート層を備えた構造を含むディスプレイ用光学フィルタであって、
前記ハードコート層は、相分離する少なくとも2種の成分を含むハードコート層形成用硬化性樹脂組成物を硬化させることにより形成された微細な凹凸表面を有することを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項2】
前記少なくとも2種の成分の一方が、不飽和二重結合を有するポリマーであり、他方が不飽和二重結合を有するモノマーであることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項3】
前記不飽和二重結合を有するポリマーが、不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体である請求項2に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項4】
前記ハードコート層の表面の表面粗さ(Ra)が0.1〜0.2μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項5】
前記透明基材の導電層が設けられていない側の表面に、近赤外線吸収層、ネオンカット層及び粘着剤層から選択される少なくとも1種が設けられている請求項1〜4の何れか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項6】
プラズマディスプレイ用フィルタである請求項1〜5の何れか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタを備えたことを特徴とするディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−123284(P2012−123284A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275321(P2010−275321)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】