説明

ディチューナの追加による回転体ねじりモードの振動数の調整

【課題】非減衰ねじり振動吸収装置として機能するディチューナを追加することによって、回転体の問題となるねじりモード(例えば、発電機ロータのねじりモード等)の振動数を調整する解決策が提供される。
【解決手段】ディチューナ106は、回転体100から延びる突出軸105に連結することができる。ディチューナ106はモジュール組み立て式であるため、突出軸105の剛性及び/又は慣性を調整するために、ディチューナ106の重量を容易に加算又は削減することができる。この剛性及び/又は慣性の変更により、回転体100の問題となるねじりモードの固有振動数と実質的に同一である、突出軸105の振動のねじり振動数が得られ、その結果、回転体100の問題のねじりモードの振動数が、そのねじり固有振動数より高く、又は低くなるように仕向ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して回転体技術に関する。より詳細には、本発明は、非減衰ねじり振動吸収装置として機能するディチューナを追加することによって、回転体ねじりモードの振動数を調整する解決策に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータ等の回転体は、発電機、モータ、及び他の同様の装置等、多数の異なるタイプの機械部品及び電気部品に使用されている。これらの回転体は、複数のモードのねじり固有振動数を有するものであり、この振動数のモードは、応力、疲労、性能等を含む様々な理由により、特定の範囲内に維持されることが望ましい。例えば、発電機等の回転体を含む他の機械部品は、通常、ライン振動数の2倍に近い、少なくとも1つのねじり固有振動数のモードを有する。この振動数のモードが、ライン振動数の2倍に近付き過ぎて励振されると、連結されたタービンの終段動翼等、連結体の部品を故障させることになり得る。
【0003】
現在、回転体ねじりモードの振動数は、回転体の対象とするモードの振動数に直接影響を与える慣性又はねじり剛性のいずれかを変化させる、すなわち、大きな焼き嵌めリングを追加又は除去することによって変えることができる。従って、ねじり固有振動数において、又はその近くで動作している回転体ねじりモードの振動数を調整する現在の方法は、最低でも、ロータを原動機から外して、カップリングに対するエンクロージャリングの取り付け/取り外しを行えるようにロータを露出させる必要がある。このエンクロージャリングは、大型で高強度、且つ高価なリングである。この方法が、ねじり固有振動数のモードに十分な変化をもたらさない場合は、そのときの状態に応じて、回転体又はカップリング内の構成要素を機械加工して、剛性又は慣性を低減する必要がある。機械加工は、通常、作業現場に旋盤を必要とするか、又は、発電機を作業場から完全に取り外して、機械加工のサービス工場に送ることを必要とするため、前述のような修正がうまく作用しない場合も、一般に、機械加工を簡単に元に戻すことはできない。これらの各工程は、解決策に多大な費用を付加すると共に、広範囲の作業を必要とする場合には、機械の停止期間を長引かせることにもなり得る。
【0004】
ロータのねじりモードの振動数を調整する現在の方法は、ロータのねじり振動数、又は振動のモードのみを対象としたものではないため、一層望ましくないものになっている。むしろ、前述のように、質量すなわちリングを追加する現在の方法は、回転体に連結された他の要素の振動数に影響を与える可能性があり、許容できない応力レベルや、望ましくない横振動数の変化が生じ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、非減衰ねじり振動吸収装置として機能するディチューナを追加することにより、回転体のねじりモードの振動数を調整する解決策を提供する。
【0006】
本発明の第1の実施形態では、回転体のねじりモードの振動数を調整する方法が提供され、該方法は、回転体から延びる突出軸を配設するステップと、突出軸にディチューナを連結するステップと、突出軸のねじりモード振動数が、回転体のねじりモードの固有振動数と実質的に同一になるように、ディチューナの物理的特性を調整するステップとを含む。
【0007】
本発明の第2の実施形態では、回転体のねじりモードの振動数を調整するシステムが提供され、該システムは、自身から延びる突出軸を含む回転体と、突出軸に連結されたディチューナと、突出軸のねじりモードの振動数が、回転体のねじりモードの固有振動数と実質的に同一になるように、ディチューナの物理的特性を調整する手段とを含む。
【0008】
本発明の第3の実施形態では、発電機ロータのねじりモードの振動数を調整するシステムが提供され、該システムは、自身から延びる突出軸を含む発電機ロータと、突出軸に連結されたディチューナと、突出軸のねじりモードの振動数が、発電機ロータのねじりモードの固有振動数と実質的に同一になるように、ディチューナの物理的特性を調整する手段とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に従って回転体に連結されたディチューナの実施形態を示す模式的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の図面は、原寸に比例した尺度ではないことに留意されたい。図面は、本発明の代表的な実施形態のみを示すためのものであり、本発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0011】
図面を参照しながら説明する。図1は、突出軸105を介して機械装置102に接続された回転体100を示す模式的ブロック図である。回転体100は、本明細書では発電機ロータであると解釈されて良いが、本発明の実施形態に組み合わせて、回転体を含むあらゆる機械部品を利用できることは理解されよう。機械装置102は、蒸気タービン、ガスタービン、ガス・蒸気複合タービン等、回転体100に連結される任意の装置であって良い。図1に示すように、回転体100は、ベアリング104を含む任意の既知の手段で支持することができる。
【0012】
本発明の実施形態は、発電機ロータ100に接続された突出軸105の剛性及び/又は慣性を変化させる、追加/削除する構成要素、又は機械加工プロセスを含む。この剛性及び/又は慣性を変化させることによって、回転体100において問題となっているモードのねじり固有振動数と実質的に同一である、突出軸105の振動のねじり固有振動数が得られる。ディチューナ106(例えば、ボルト締めホイールを備える、又は備えない連結シャフト)を用いて、突出軸105の端部に若干量の慣性を加えることによって、突出軸105の全慣性を効果的に利用し、回転体100の問題のモードのねじり固有振動数を変化させる。
【0013】
従って、回転体100の特定のモードのねじり固有振動数を調整する従来の手段(すなわち、回転体100にリングを追加して、回転体100自体の剛性又は慣性を変化させること)を利用する代わりに、本発明の実施形態は、ディチューナ106を利用して、突出軸105のねじり振動数に影響を与え、その結果、回転体100の対象とするモードのねじり固有振動数を、現在のねじり固有振動数より高くするか、又は低くする。例えば、図1に示すように、ディチューナ106は、回転体100の開放端において突出軸105に連結されて、非減衰ねじり振動吸収装置として機能する。ディチューナ106は、図1に連結軸として記載されているが、他の形状又は構造も利用することができる。任意構成として、ディチューナ106は、必要に応じて、ベアリング104等の支持部で支持することができる。
【0014】
回転体100の問題となっているモードのねじり固有振動数を算出した後、ディチューナ106を調整して、突出軸105のねじり振動数が、回転体100の問題のモードのねじり固有振動数と実質的に同一になるようにする。連結された2つの物体は、同一の振動数では動作できないため、この2つの物体のうちの一方の振動数が上昇し、もう一方が減少することになる。従って、突出軸105のねじり振動数が、回転体100の問題のモードと実質的に同じねじり振動数であれば、回転体100の問題となっているねじりモードの振動数は、現行のねじり固有振動数より高く、又は低くなるように仕向けられる。
【0015】
ディチューナ106を調整する手段は、ディチューナ106の重量、サイズ、剛性及び/又は慣性を調整する、現在知られている調整手段、又は今後開発される調整手段を含む。一実施形態において、ディチューナ106はモジュール組み立て式、すなわち、重量を簡単に追加又は削減できる構造であるため、容易にディチューナ106を調整することができる。図1に示す実施形態には、ディチューナ106に重量を追加すること含む調整手段、例えば、追加の質量108(例えば、ボルト締めホイールという形式の質量)がディチューナ106に追加されている。また、図1に示すように、追加の着脱可能な質量108a(例えば、サイズ及び形状が異なる追加ホイールという形式の質量)を、ディチューナ106に取り付けたり、又は取り外したりすることで、所望のねじり振動数を実現することができる。ディチューナ106を調整する他の手段としては、ディチューナ106自身のサイズ及び形状を修正又は機械加工して、ディチューナ106の慣性や剛性を調整することを含み、例えば、ディチューナ106は、より大きい又は小さい連結軸であっても良い。
【0016】
このようなディチューナ106の重量、剛性及び/又は慣性の変化は、突出軸105の振動のねじり振動数に影響を与えるため、作業者は、突出軸105のねじり振動数が、問題となっている回転体のねじりモードの固有振動数とほぼ等しくなるように、ディチューナ106を調整することができる。従って、突出軸105の各区画の固有振動数が分断されて、このポイントから離れることになる。この分断の程度は、区画間の質量比によって異なる。目標は、電力網の電気周波数の第一高調波及び第二高調波から共振点をずらすことによって、回転体100のねじり共振反応を回避することである。これは、鍵となるねじり励振事象は、電力網と直列に存在する回転体100によって引き起こされるためである。ライン周波数の1倍及び2倍周辺の排斥区域は、電力網の振動の周波数及び計算許容誤差の和に基づいて定義される。
【0017】
一般に、ディチューナ106は、回転体100よりもサイズがかなり小さい。例えば、ディチューナ106と回転体100の寸法比は、約1対1000であっても良い。ディチューナ106は、突出軸105又は回転体100に連結できる任意の既知の材料で形成することができる。ディチューナ106は、特定の材料、形状及び/又は密度を有する必要はない。どのようなサイズ又は形状のディチューナ106であっても、そのサイズ又は形状に応じて所望のねじり振動数を達成するように、ディチューナ106を調整することができる。例えば、突出軸105のねじり振動数が回転体100よりも高い場合は、ディチューナ106に質量を追加して、突出軸105のねじり振動数を下げることができる。
【0018】
当業者であれば理解されるように、追加の回転体や追加のエンジン等の他の機械部品も、ライン内で回転体100及び機械構成部品102と共に連結することができる。機械部品の構造に関わらず、ディチューナ106は、そのラインの開放端に接続することができる。例えば、図1に示すように、ディチューナ106は、突出軸105を介して回転体100の開放端に接続される。
【0019】
従来の方法とは異なり、突出軸105にディチューナ106を追加することによる所望の動吸振以外の影響は、主回転体100及びそのシステムの残りの部分にとって無視できるものである。このことは、システムの剛性又は慣性の大幅な変更が、許容できない応力レベルや望ましくない横振動数の変化等、他の設計上の問題を生じることを考えると、有益である。
【0020】
また、突出軸105の剛性及び/又は慣性を変更することは、影響の少ない変更であり、装置が完全に組み立てられた状態のまま作業を行うことができるため、結果が許容できるものであるかどうかを確認し、必要に応じて追加の調整を行う機会が与えられる。トルクリング(図示せず)を用いるねじり試験も、ロータ振動数の問題の特定と、ディチューナ106の効果の検証の両方を行う手段として利用することができる。
【0021】
本明細書において、「第1」、「第2」等の用語は、順序や数量、重要度を意味するものではなく、ある要素を別の要素と区別するために用いられるものである。また、本明細書における「1つの」という表現は、数量を限定することを意味するのではなく、言及された項目が少なくとも1つは存在することを意味するものである。数量に関して用いられる「約」という修飾語は、指定された値を包含すると共に、文脈の求めるとおりの意味を有する(例えば、特定の数量の測定に関わる誤差をある程度を含む)。
【0022】
本明細書において様々な実施形態を説明してきたが、当業者によって要素の組み合わせ、変更、又は改良が本発明の範囲内で行えることは、本明細書から理解されよう。また、多数の変更を行うことができ、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況又は事物を適合させることができる。従って、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるのではなく、付随する特許請求の範囲内の全ての実施形態を含むことが意図されるものである。
【符号の説明】
【0023】
100 回転体、発電機ロータ
102 機械装置、機械構成部品
104 ベアリング
105 突出軸
106 ディチューナ
108 質量
108a 着脱可能な質量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記回転体(100)から延びる突出軸(105)を配設するステップと、
前記突出軸(105)にディチューナ(106)を連結するステップと、
前記突出軸(105)のねじりモードの振動数が、前記回転体(100)のねじりモードの固有振動数と実質的に同一になるように、前記ディチューナ(106)の物理的特性を調整するステップとを含む、回転体(100)のねじりモードの振動数を調整する方法。
【請求項2】
前記物理的特性は、重量、サイズ、剛性又は慣性のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ディチューナ(106)の重量を調整するステップは、前記ディチューナ(106)の重量を追加又は削減するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記調整するステップの後の前記回転体(100)のねじりモードの振動数は、前記回転体(100)の前記固有振動数より高い又は低い、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記回転体(100)は、ガスタービン、蒸気タービン、及びガス・蒸気複合タービンのうちの1つに連結される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ディチューナ(106)と前記回転体(100)の寸法比は、約1対1000である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記連結するステップは、前記回転体(100)の開放端において、前記突出軸(105)に前記ディチューナ(106)を連結するステップを更に含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
自身から延びる突出軸(105)を含む回転体(100)と、
前記突出軸(105)に連結されるディチューナ(106)と、
前記突出軸(105)のねじりモードの振動数が、前記回転体(100)のねじりモードの固有振動数と実質的に同一になるように、前記ディチューナ(106)の物理的特性を調整する手段とを含む、回転体(100)のねじりモードの振動数を調整するシステム。
【請求項9】
前記物理的特性は、重量、サイズ、剛性又は慣性のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ディチューナ(106)の重量を調整する手段は、前記ディチューナ(106)の重量を追加又は削減することを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記回転体(100)のねじりモードの振動数は、前記回転体(100)のねじりモードの固有振動数より高い又は低い、請求項8乃至10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記回転体(100)は、ガスタービン、蒸気タービン、及びガス・蒸気複合タービンのうちの1つに連結される、請求項8乃至11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記ディチューナ(106)と前記回転体(100)の寸法比は、約1対1000である、請求項8乃至12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ディチューナ(106)は、前記回転体(100)の開放端において前記突出軸(105)に連結される、請求項8乃至13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
自身から延びる突出軸(105)を含む発電機ロータ(100)と、
前記突出軸(105)に連結されるディチューナ(106)と、
前記突出軸(105)のねじりモードの振動数が、前記発電機ロータ(100)のねじりモードの固有振動数と実質的に同一になるように、前記ディチューナ(106)の物理的特性を調整する手段とを含む、発電機ロータ(100)のねじりモードの振動数を調整するシステム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−230166(P2010−230166A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63515(P2010−63515)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】