説明

ディーゼルエンジンの排気処理装置

【課題】吸気温度が低い場合でも、再生に必要な排気温度が得られるディーゼルエンジンの排気処理装置を提供する。
【解決手段】吸気通路6に吸気温度センサ3とエンジンで駆動するエアコンプレッサ7とを配置し、吸気温度センサ3は制御手段11を介してエアコンプレッサ7に連携させ、DPF再生処理に当たり、吸気温度が所定温度よりも低い吸気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを吸気温度センサ3で検出したことに基づいて、制御手段11がエアコンプレッサ7を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ7で加圧昇温させた吸気12を燃焼室14に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気処理装置に関し、詳しくは、吸気温度が低い場合でも、再生に必要な排気温度が得られるディーゼルエンジンの排気処理装置に関する。この明細書と特許請求の範囲の用語中、DPFはディーゼル・パティキュレート・フィルタ、DOCはディーゼル酸化触媒、PMは排気中の粒子状物質の略称である。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排気処理装置として、排気通路にDPFを配置し、DPFで排気中のPMを捕捉し、DPFに堆積したPMのPM堆積推定値が所定のPM再生要求値に至った場合には、制御手段がDPF再生手段にDPF再生処理を開始させることにより、DPF上流の排気を昇温させ、この排気の熱でDPFに堆積したPMを燃焼除去できるようにしたものがある(特許文献1の図1参照)。
【0003】
この種のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、排気の熱によりDPFの再生を図ることができる利点がある。
しかし、この従来技術は、吸気温度を昇温させる手段を備えていないため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−137968号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《問題》 吸気温度が低い場合には、再生に必要な排気温度が得られない場合がある。
吸気温度を昇温させる手段を備えていないため、吸気温度が低い場合には、再生に必要な排気温度が得られない場合がある。
【0006】
本発明の課題は、吸気温度が低い場合でも、再生に必要な排気温度が得られるディーゼルエンジンの排気処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1、図2に例示するように、排気通路(1)にDPF(27)を配置し、DPF(27)で排気(2)中のPMを捕捉し、DPF(27)に堆積したPMのPM堆積推定値が所定のDPF再生要求値に至った場合には、制御手段(11)がDPF再生手段(8)にDPF再生処理を開始させることにより、DPF(27)上流の排気(2)を昇温させ、この排気(2)の熱でDPF(27)に堆積したPMを燃焼除去できるようにした、ディーゼルエンジンの排気処理装置において、
吸気通路(6)に吸気温度センサ(3)とエンジンで駆動するエアコンプレッサ(7)とを配置し、吸気温度センサ(3)は制御手段(11)を介してエアコンプレッサ(7)に連携させ、
DPF再生処理に当たり、
吸気温度が所定温度よりも低い吸気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを吸気温度センサ(3)で検出したことに基づいて、制御手段(11)がエアコンプレッサ(7)を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ(7)で加圧昇温させた吸気(12)を燃焼室(14)に供給するようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジンの排気処理装置。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図3、図4に例示するように、排気通路(1)にDPF(27)を配置し、DPF(27)で排気(2)中のPMを捕捉し、DPF(27)に堆積したPMのPM堆積推定値が所定のDPF再生要求値に至った場合には、制御手段(11)がDPF再生手段(8)にDPF再生処理を開始させることにより、DPF(27)上流の排気(2)を昇温させ、この排気(2)の熱でDPF(27)に堆積したPMを燃焼除去できるようにした、ディーゼルエンジンの排気処理装置において、
DPF(27)の上流で排気通路(1)に排気温度センサ(28)を配置し、
DPF再生処理に当たり、
DPF(27)の上流の排気温度が所定温度よりも低い排気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを排気温度センサ(28)で検出したことに基づいて、制御手段(11)がエアコンプレッサ(7)を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ(7)で加圧昇温させた吸気(12)を燃焼室(14)に供給するようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジンの排気処理装置。
【発明の効果】
【0009】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 吸気温度が低い場合でも、再生に必要な排気温度が得られる。
図1、図2に例示するように、DPF再生処理に当たり、吸気温度が所定温度よりも低い吸気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを吸気温度センサ(3)で検出したことに基づいて、制御手段(11)がエアコンプレッサ(7)を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ(7)で加圧昇温させた吸気(12)を燃焼室(14)に供給するようにしたので、エンジンの負荷の増加によって燃料噴射量が増加されて排気(2)が昇温されると同時に、吸気(12)が加圧昇温され、吸気温度が低い場合でも、再生に必要な排気温度が得られる。
【0010】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 吸気温度が低い場合でも、再生に必要な排気温度が得られる。
図2に例示するように、DPF再生処理に当たり、DPF(27)の上流の排気温度が所定温度よりも低い排気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを排気温度センサ(28)で検出したことに基づいて、制御手段(11)がエアコンプレッサ(7)を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ(7)で加圧昇温させた吸気(12)を燃焼室(14)に供給するようにしたので、エンジンの負荷の増加によって燃料噴射量が増加されて排気(2)が昇温されると同時に、吸気(12)が加圧昇温され、吸気温度が低い場合でも、再生に必要な排気温度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気処理装置を備えたディーゼルエンジンの機能ブロック図である。
【図2】図1のエンジンの制御手段によるDPF再生処理のフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る排気処理装置を備えたディーゼルエンジンの機能ブロック図である。
【図4】図3のエンジンの制御手段によるDPF再生処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、図2は本発明の第1実施形態に係る排気処理装置を備えたディーゼルエンジンを説明する図であり、この実施形態では、コモンレール式ディーゼルエンジンについて説明する。
【0013】
図1に示すように、このエンジンは、燃焼室(14)に燃料インジェクタ(20)が取り付けられ、この燃料インジェクタ(20)にコモンレール(21)が接続され、コモンレール(21)に燃料サプライポンプ(22)が接続され、燃料タンク(23)の燃料が燃料サプライポンプ(22)でコモンレール(21)に圧送され、コモンレール(21)で蓄圧された燃料が燃料インジェクタ(20)から燃焼室(14)に噴射されるようになっている。
【0014】
エンジンの目標回転数設定手段(24)と実回転数検出手段(25)とは、制御手段(11)を介して燃料インジェクタ(20)の電磁バルブに連携させている。制御手段(11)は、エンジンECUである。エンジンECUとは、エンジン電子制御ユニットの略称である。
エンジンの目標回転数と実回転数とに基づいて、制御手段(11)は、燃料インジェクタ(20)の電磁バルブの開弁時期と開弁期間とを制御し、所定のタイミングと量で燃料インジェクタ(20)から燃料噴射を行わせる。
【0015】
燃焼室(14)から導出される排気通路(1)に、上流から順に、過給機(4)の排気タービン(19)、DOC(26)、DPF(27)を配置している。排気タービン(19)にはウェイストゲートバルブ(19a)が設けられている。
【0016】
DOC(26)の上流にDOC入口排気温度センサ(28)を設け、DOC(26)とDPF(27)との間にDPF入口排気温度センサ(29)を設け、DPF(27)の入口と出口の差圧を検出する差圧センサ(30)を設け、これら各センサ(28)(29)(30)は制御手段(11)に連携させている。燃焼室(14)から導出される吸気通路(6)には吸気絞り弁(31)を設けている。吸気絞り弁(31)は制御手段(11)に連携させている。
【0017】
DPF(27)で排気(2)中のPMを捕捉し、差圧センサ(30)で検出したDPF(27)の入口と出口の差圧等に基づいて、制御手段(11)はDPF(27)に堆積したPMのPM堆積推定値を推定する。PM堆積推定値が所定のDPF再生要求値に至った場合には、制御手段がDPF再生手段(8)にDPF(27)の再生処理を開始させることにより、DPF(27)上流の排気(2)を昇温させることにより、この排気(2)の熱でDPF(27)に堆積したPMを燃焼除去する。DPF再生手段(8)は、吸気絞り弁(31)と吸気経路切替え弁(16)とエアコンプレッサ(7)とコモンレールシステム(13)とDOC(26)との組み合わせから構成されている。
【0018】
吸気通路(6)に吸気温度センサ(3)とエンジンで駆動するエアコンプレッサ(7)とを配置し、吸気温度センサ(3)は制御手段(11)を介してエアコンプレッサ(7)に連携させ、DPF再生処理に当たり、吸気温度が所定温度よりも低い吸気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを吸気温度センサ(3)で検出したことに基づいて、制御手段(11)が、吸気絞り弁(31)の開度を小さくし、エアコンプレッサ(7)を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ(7)で加圧昇温させた吸気(12)を燃焼室(14)に供給する。制御手段(11)は、必要に応じ、燃料インジェクタ(20)からメイン噴射後のアフター噴射を行わせて、排気(2)を昇温させる。
そして、DOC入口側排気温度がDOC活性化温度に達すると、これをDOC入口排気温度センサ(28)で検出したことに基づいて、制御手段(11)が燃料インジェクタ(20)からメイン噴射後のボスト噴射を行わせ、排気(2)中に未燃燃料を混入させ、この未燃燃料をDOC(26)で触媒燃焼させ、排気(2)を昇温させ、DPF(27)に堆積したPMを焼却除去する。DPF入口排気温度センサで検出したDPF入口排気温度に基づいて、制御手段(11)はポスト噴射量を調節する。
吸気昇温要求温度領域は、DOC入口側排気温度がDOC活性化温度に達しない程度の低温領域に設定されている。
【0019】
エアクリーナ(37)の下流で、吸気通路(6)に主通路(6a)とバイパス通路(6b)とを設け、主通路(6a)とバイパス通路(6b)の分岐箇所に吸気経路切替え弁(16)を配置し、吸気経路切替え弁(16)で吸気通路(6)を主通路(6a)経由とバイパス通路(6b)経由とに切り替えられるようにし、バイパス通路(6b)にエアコンプレッサ(7)を設けている。吸気温度センサ(3)は制御手段(11)を介して吸気経路切替え弁(16)とエアコンプレッサ(7)に連携させ、DPF再生処理に当たり、吸気温度が所定温度よりも低い吸気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを吸気温度センサ(3)で検出したことに基づいて、制御手段(11)が吸気経路切替え弁(16)をコンプレッサ連通側であるバイパス通路(6b)連通側に切り替え、吸気通路(6)をバイパス通路(6b)経由とし、エアコンプレッサ(7)を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ(7)で加圧昇温させた吸気(12)を燃焼室(14)に供給する。
【0020】
制御手段によるDPF再生のフローチャートは次の通りである。
図2に示すように、ステップ(S1)では、PM堆積推定値がDPF再生要求値に至ったか否かが判定され、判定が否定の場合には、ステップ(S1)の判定が繰り返され、判定が肯定の場合には、ステップ(S2)に進む。
ステップ(S2)では、吸気温度が吸気昇温要求温度領域に入っているか否かが判定され、判定が肯定の場合には、ステップ(S3)に進む。ステップ(S2)での判定が否定の場合には、ステップ(S7)に進み、ステップ(S7)では、燃料インジェクタ(20)からメイン噴射後のボスト噴射を開始する。
ステップ(S3)では、吸気絞り弁(31)の開度を小さくし、ステップ(S4)に進み、ステップ(S4)では、吸気経路切替弁(16)をエアコンプレッサ連通側であるバイパス通路(6b)連通側に切り替え、吸気通路(6)をバイパス通路(6b)経由とし、ステップ(S5)に進み、ステップ(S5)では、エアコンプレッサ(7)を駆動し、ステップ(S6)に進む。
【0021】
ステップ(S6)では、吸気温度が吸気昇温要求温度領域を出たか否かが判定され、判定が否定の場合には、ステップ(S6)の判定が繰り返され、判定が肯定の場合には、ステップ(S7)に進む。
ステップ(S7)では、燃料インジェクタ(20)からメイン噴射後のボスト噴射を行い、ステップ(S8)に進む。
ステップ(S8)では、PM堆積推定値がDPF再生終了値に至ったか否かが判定され、判定が否定の場合には、ステップ(S8)の判定が繰り返され、判定が肯定の場合には、ステップ(S9)でボスト噴射を終了する。
【0022】
図3、図4に示す第2実施形態は、第1実施形態と次の点が相違する。
この第2実施形態には、吸気温度センサ(3)がなく、DPF再生処理に当たり、DPF(27)の上流の排気温度が所定温度よりも低い排気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを排気温度センサ(28)で検出したことに基づいて、制御手段(11)が吸気経路切替え弁(16)をコンプレッサ連通側であるバイパス通路(6b)連通側に切り替え、吸気通路(6)をバイパス通路(6b)経由とし、エアコンプレッサ(7)を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ(7)で加圧昇温させた吸気(12)を燃焼室(14)に供給するようにしている。
この第2実施形態の制御手段によるDPF再生処理では、ステップ(S2)ではDOCの上流排気温度が排気昇温要求温度領域に入っているか否かが判定され、ステップ(S6)ではDOCの上流排気温度が排気昇温要求温度領域から出たか否かが判定される。
他の構成やフローチャートの他のステップは、第1実施形態と同じであり、図3、図4中、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0023】
(1) 排気通路
(2) 排気
(3) 吸気温度センサ
(6) 吸気通路
(7) エアコンプレッサ
(8) DPF再生手段
(11) 制御手段
(12) 吸気
(14) 燃焼室
(27) DPF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路(1)にDPF(27)を配置し、DPF(27)で排気(2)中のPMを捕捉し、DPF(27)に堆積したPMのPM堆積推定値が所定のDPF再生要求値に至った場合には、制御手段(11)がDPF再生手段(8)にDPF再生処理を開始させることにより、DPF(27)上流の排気(2)を昇温させ、この排気(2)の熱でDPF(27)に堆積したPMを燃焼除去できるようにした、ディーゼルエンジンの排気処理装置において、
吸気通路(6)に吸気温度センサ(3)とエンジンで駆動するエアコンプレッサ(7)とを配置し、吸気温度センサ(3)は制御手段(11)を介してエアコンプレッサ(7)に連携させ、
DPF再生処理に当たり、
吸気温度が所定温度よりも低い吸気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを吸気温度センサ(3)で検出したことに基づいて、制御手段(11)がエアコンプレッサ(7)を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ(7)で加圧昇温させた吸気(12)を燃焼室(14)に供給するようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項2】
排気通路(1)にDPF(27)を配置し、DPF(27)で排気(2)中のPMを捕捉し、DPF(27)に堆積したPMのPM堆積推定値が所定のDPF再生要求値に至った場合には、制御手段(11)がDPF再生手段(8)にDPF再生処理を開始させることにより、DPF(27)上流の排気(2)を昇温させ、この排気(2)の熱でDPF(27)に堆積したPMを燃焼除去できるようにした、ディーゼルエンジンの排気処理装置において、
DPF(27)の上流で排気通路(1)に排気温度センサ(28)を配置し、
DPF再生処理に当たり、
DPF(27)の上流の排気温度が所定温度よりも低い排気昇温要求温度領域に入っている場合には、これを排気温度センサ(28)で検出したことに基づいて、制御手段(11)がエアコンプレッサ(7)を駆動させ、エンジンの負荷を増加させるとともに、エアコンプレッサ(7)で加圧昇温させた吸気(12)を燃焼室(14)に供給するようにした、ことを特徴とするディーゼルエンジンの排気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−69278(P2011−69278A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220398(P2009−220398)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】