説明

ディーゼルエンジンシステム

【課題】沈着物を形成しないか、又は従来よりも沈着物の形成を減少させるディーゼルエンジンシステムを提供すること。
【解決手段】クランクケース潤滑油を含有するクランクケース、空気取入口、空気圧縮器、流出液タービン、アフタークーラー、及びブローバイガスを空気取入口に再循環する手段を有するブローバイガス再循環システムを備えたディーゼルエンジンを有するディーゼルエンジンシステムであって、該クランクケース潤滑油は、飽和物含有量が99重量%を超え、かつ粘度指数が120を超えるイソパラフィン系基油と、性能添加剤包装システムと、粘度調整添加剤とを含有する該ディーゼルエンジンシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクケース潤滑油を含有するクランクケース、空気取入口、空気圧縮器、流出液タービン、及びアフタークーラーを備えたディーゼルエンジンを有するディーゼルエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
クランクケース、クランクケース潤滑油、空気取入口、空気圧縮器、流出液タービン、及びアフタークーラーを備えたディーゼルエンジンは、US−A−6102013に記載されている。クランクケース潤滑油による問題は、いわゆるブローバイガスにより潤滑油がクランクケースから逃げ易いことである。ブローバイガスは、大気に排出するよりもむしろこのようなガス/潤滑油混合物は、エンジンに再循環する方が好ましい。幾つかのエンジンではこのような再循環は、潤滑油がピストン室内で燃焼するように、ブローバイガスをエンジンの空気取入システムに注入して行なわれる。ブローバイガスの再循環は放出物の問題を解決するが、それ自身の問題を持っている。空気取入システムに沈着物が生成するかも知れない。例えば空気圧縮器に沈着物が生成すれば、このような圧縮器は、うまく作用せず、更には損傷を受け易い。また例えば圧縮器とシリンダーブロック−クランクケース間に空気冷却器が存在すれば、空気冷却器の汚染も起こる可能性がある。
【特許文献1】EP−A−1029029
【特許文献2】US−A−2004/0043910
【特許文献3】US−A−2004/0067856
【特許文献4】US−A−2004/0077505
【特許文献5】WO−A−02064710
【特許文献6】WO−A−02070631
【特許文献7】WO−A−2005/000999
【非特許文献1】Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technologie、第3版、1981年、第14巻、477〜526頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、沈着物の形成を防止するか、或いは従来のディーゼルエンジンシステムに比べて、少なくとも更に減少させるディーゼルエンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、以下のディーゼルエンジンシステムにより達成される。クランクケース潤滑油を含有するクランクケース、空気取入口、空気圧縮器、流出液タービン、アフタークーラー、及びブローバイガスを空気取入口に再循環する手段を有するブローバイガス再循環システムを備えたディーゼルエンジンを有するディーゼルエンジンシステムであって、該クランクケース潤滑油は、飽和物含有量が99重量%を超え、かつ粘度指数が120を超えるイソパラフィン系基油と、性能添加剤包装システムと、粘度調整添加剤とを含有する該ディーゼルエンジンシステム。
【0005】
出願人は、本発明に従ってクランクケース潤滑油を使用すると、いわゆるMTU沈着物テストで低い値を示すことを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
クランクケース潤滑油の100℃での動粘度は、好ましくは9.3〜16.3である。クランクケース潤滑油は、2種のイソパラフィン系基油を含有し、各基油は、飽和物含有量が99重量%を超え、粘度指数が120を超え、好ましくは120〜150である。第一基油の100℃での動粘度は、好ましくは3〜6cStである。第二のイソパラフィン系基油の飽和物含有量は、99重量%を超え、粘度指数は135を超え、また100℃での動粘度は7cStを超える。
【0007】
更に好ましくは第一のイソパラフィン系基油は、パラフィン化合物と、一般式:
アルキル−〔C−又はC−環〕
のナフテン系化合物15重量%未満とを含有する。ここで前記イソパラフィンの分岐及び前記ナフテン系化合物のアルキル基中の炭素の%割合は、該化合物の全炭素数に対して計算し、かつNMRで測定して12〜18%である。
【0008】
更に好ましくは記第二のイソパラフィン系基油は、パラフィン化合物と、一般式:
アルキル−〔C−又はC−環〕
のナフテン系化合物を15重量%未満とを含有する。ここで前記イソパラフィンの分岐及び前記ナフテン系化合物のアルキル基中の炭素の%割合は、該化合物の全炭素数に対して計算し、かつNMRで測定して12〜20%である。
【0009】
第一基油と第二基油との重量比は、目標とする潤滑油グレード及び出発基油の粘度特性に依存する。一般にこの油配合物の大部分、好適には50重量%を超える量が第二基油を構成する。
【0010】
前記イソパラフィン系基油は、例えばEP−A−1029029、US−A−2004/0043910、US−A−2004/0067856、US−A−2004/0077505、WO−A−02064710及びWO−A−02070631に記載されている。出願人は、前述のクランクケース油配合物中で非常に良く機能する基油は、フィッシャー・トロプシュ法で得られる供給原料に対し水素化異性化工程及び接触脱蝋工程を含む方法、又は前記工程の組合わせを含む方法で得られることを見出した。好適な方法の具体例は、前記特許文献に例示されている。
【0011】
粘度調整添加剤は、オレフィン共重合体、水素化イソプレン又は水素化イソプレン共重合体のような標準タイプのものでよい。具体例は、英国ミルトンヒルのInfineum Additivesから得られるInfineum SV−151(水素化イソプレン−スチレン共重合体)である。粘度調整添加剤は、油配合物中に好ましくは6〜16重量%、更に好ましくは6〜10重量%の含有量で存在する。出願人は、前述の基油を使用すると、得られる油配合物の同じ粘度特性に到達するには、従来の鉱物誘導グループIII基油の状態で使用した場合よりも、粘度調整添加剤が少なくて済むことを見出した。
【0012】
クランクケース潤滑油に存在する性能添加剤包装システムは、分散剤、洗浄剤、極圧/耐摩耗添加剤、酸化防止剤、流動点降下剤、解乳化剤、腐食防止剤、錆防止剤、汚染防止添加剤、摩擦調整剤を含有する。これら添加剤の特定例は、例えばKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technologie、第3版、1981年、第14巻、477〜526頁に記載されている。
【0013】
耐摩耗添加剤は、好適にはジアルキルジチオ燐酸亜鉛である。分散剤は、好適には無灰分分散剤、例えばポリブチレンスクシンイミドポリアミン又はマンニッヒ塩基型分散剤である。洗浄剤は、好適には過剰塩基化金属洗浄剤、例えば前記一般教本に記載されるようなホスフェート、スルホネート、フェノレート又はサリチレート型である。酸化防止剤は、好適にはヒンダードフェノール系又はアミン系の化合物、例えばアルキル化又はスチレン化ジフェニルアミン又はイオノール誘導ヒンダードフェノールである。好適な消泡剤の例は、ポリジメチルシロキサン、及びポリエチレングリコールエーテル及び同エステルである。
【0014】
クランクケース潤滑油中の性能添加剤包装の含有量は、好適には4〜20重量%、更に好ましくは10〜16重量%である。性能添加剤包装は、多くの販売者から市販され、通常、洗浄添加剤40〜70重量%、過剰塩基化又は非過剰塩基化洗浄添加剤15〜50重量%、希釈剤油30〜50重量%、耐摩耗添加剤3〜8重量%の組成を有する。
【0015】
クランクケース潤滑油の−25℃での動力学粘度は、好ましくは6500乃至<7000cPであり、小型回転粘度計テスト値は、−30℃で6000cP未満である。本発明では、以下のテスト方法が適用される。100℃での動粘度は、ASTM D445で測定;40℃での動粘度は、ASTM D445で測定;粘度指数はASTM D2270で測定;VDCCS @−25℃は、−25℃での動力学粘度を表し、ASTM D5293に従って測定;MRV(cP @−40℃)は、小型回転粘度計テストを表し、ASTM D4684に従って測定;流動点はASTM D97に従って測定;Noack揮発減量は、ASTM D5800で測定。
【0016】
本発明は更に、飽和物含有量が99重量%を超え、かつ粘度指数が120を超えるイソパラフィン系基油と、性能添加剤包装システムと、粘度調整添加剤とを含有する前述のような潤滑油を、クランクケース潤滑油を含有するクランクケース、空気取入口、空気圧縮器、流出液タービン、アフタークーラー、及びブローバイガスを空気取入口に再循環する手段を有するブローバイガス再循環システムを備えたディーゼルエンジンを有するディーゼルエンジンシステム中の沈着物を減少させるために使用する方法に関する。
【0017】
本発明は更に、クランクケース潤滑油を含有するクランクケース、空気取入口、空気圧縮器、流出液タービン、アフタークーラー、及びブローバイガスを空気取入口に再循環する手段を有するブローバイガス再循環システムを備えたディーゼルエンジンを有するディーゼルエンジンシステムを操作する方法において、該クランクケース潤滑油は飽和物含有量が99重量%を超え、かつ粘度指数が120を超えるイソパラフィン系基油と、性能添加剤包装システムと、粘度調整添加剤とを含有することを特徴とするディーゼルエンジンシステムの操作方法に関する。
【0018】
図1は、本発明の好ましいディーゼルエンジンシステムを示す。図1のシステムは、空気取入口(1)、空気取入口フイルター(2)、空気圧縮器(3)、圧縮空気用導管(4)、アフタークーラー(5)、入口マニホールド(7)、クランクケース(8)を有し、クランクケース(8)内にはシリンダー(9)を備え、クランクケース油(19)が存在する。導管手段(11)は、シリンダー(9)と流出液タービン(14)とを流通可能に連結する。導管(11)内を排気ガスが流れる。流出液タービン(14)は、図示のように空気圧縮器(3)と一列に並んで運転する。排気ガスは、排気口16と流通可能に連結した排気消音器15を通過する。
【0019】
ディーゼルエンジンシステムは、排気ガスの一部をシリンダーに再循環する手段(12)を備える。このようなシステムには、排気流制御バルブ(13)及び排気ガス再循環冷却器(17)が存在する。更にブローバイガスを、空気圧縮器(3)の直ぐ上流の空気流に向けるため、輸送手段(18)が存在する。
本発明を以下の非限定的実施例により説明する。
【実施例】
【0020】
実施例1:基油の製造及び特徴化
水素化異性化したフィッシャー・トロプシュ蝋から、表1に示す特性を有する蒸留フラクションを単離した。蝋含有量は、脱蝋温度−20℃での溶剤脱蝋で測定して20重量%未満であった。
【0021】
【表1】

【0022】
蝋状ラフィネートとも言われる前記蒸留物を白金0.7重量%、ZSM−12 を25重量%、及びシリカバインダーよりなる脱蝋触媒と接触させた。脱蝋条件は、水素圧40バール、反応器温度312℃、WHSV=1kg/l.h及び水素ガス速度500Nl/kg原料である。流出液を蒸留し、表2に示す第一基油の特性を有する沸点390℃を超えるフラクションが得られた。この第一基油の一部を更に蒸留し、沸点460℃(カットオフ温度)を超えるフラクションを単離して、表2に示す第二のイソパラフィン系基油を得た。沸点460℃未満の残りの油は、100℃での動粘度が4cStであった。
【0023】
【表2】

【0024】
ナフテン系化合物wt%の測定:
ナフテン系化合物の含有量は、WO−A−2005/000999の27〜28頁に更に詳細に記載されるFIMS法を用いて行なった。
【0025】
分岐中の炭素%の測定:
この特性はC13−NMRを用いて測定される。“Qantitative estimation of CH group abundance in fossil fuel materials using 13C−NMR methods(13C−NMR法を用いた地下燃料材料中のCH基豊富性の定量的推定)”(D.J.Cookson及びB.E.Smith,Fuel(1983),第62巻、986頁)、また“Improved methods for assignment of multiplicities in 13−C NMR spectroscopy with applications to the analysis of mixtures(混合物の分析に利用した13C−NMR分光分析における多重度の帰属改良法)” (D.J.Cookson及びB.E.Smith,Organic Magnetic Resonance,第16巻,<2>,1981年,111頁)に記載されるように、周知のGASPEパルス序列(sequence)を用いて得られるCHサブ(sub)スペlクトルから生のデータが得られる。この目的は、分岐中の炭素の合計数が定量できるように、サンプル中のC(メチル)、C(エチル)及びC3+(3個以上の炭素)分岐の割合を定量することである。
【0026】
出発点はGASPE CHサブスペクトルである。このサブスペクトルは、1/J GASPE(ゲートでコントロールした獲得スピンエコー)(gated acquisition spin echo)にCSEスペクトル(基準スピンエコー)を付加して得られる。これはCH及びCHのピークだけを含むスペクトルを与える。次に、CH信号を25ppm化学シフトの低周波への信号(TMSに対して参照する)と定義する。次にこのサブスペクトルを統合して、各種の異なるCH信号について定量値を与える。
【0027】
CH信号の多くは、明確に同定できるが、幾つかの場合には、帰属が余りはっきりせず、以下に概説するように、特定の帰属をしなければならない。
メチル分岐含有量の計算、多数の信号はメチル分岐に帰属できる。
【0028】
19〜21ppmには多数の明確で強い信号があり、これらの信号は下記一般的種類
【化1】

(R=アルキル基)
のメチル分岐として同定できる。
【0029】
22〜24ppmの領域にも明確で強い信号があり、これらの信号は下記一般構造
【化2】

のイソプロピル末端基として明確に同定できる。
【0030】
この例では、CH信号の1つを主鎖の末端とし、その他を分岐として分類できる。したがって、メチル分岐含有量を計算する際、これら信号の強度を等分しなければならない。
15〜19ppmの領域には数個の弱い信号もある。この領域は、3−位:
【化3】

に別の分岐と共に、イソプロピル基に属する信号を有することは充分可能である。
【0031】
この例では、これら信号についての積分値もメチル分岐含有量を計算する際、等分しなければならない。しかし、これらの構造についてその他の証拠は殆どなく、しかも、この領域は他の分岐、即ち:
【化4】


及び


に隣接するメチル分岐を含む構造も有する。
【0032】
このように曖昧なため、これら信号の大部分は、他の分岐に隣接するメチル分岐であると推定し、分割しない積分値を用いることに決定した。実際に3−位に別の分岐と共に、相当量のイソプロピル基があれば、我々の計算は、メチル分岐含有量を過大に見積ることを意味する。しかし、この領域の信号は、他のCH信号と比べて弱く、したがって、メチル分岐含有量の相違は少ないことに注目することが重要である。
【0033】
8〜8.5ppmの領域には、スペクトル中に幾つかの微弱な信号も観察される。これら信号の唯一の可能な帰属は、3,3−ジメチル置換構造:
【化5】

への帰属である。
【0034】
この場合、観察された信号は、末端CHへの帰属であるが、対応するメチル分岐は2つある。したがって、これら信号の積分値は、2倍にする必要がある(2つのメチル分岐に対する信号は、独立して数えない)。
全体として我々のメチル分岐含有量の見積りは、以下の計算(但し、Intはインテグラルを意味する)に基づく。
Int19〜20ppm+(Int22〜25ppm)/2+Int15〜19ppm+(Int7.0〜9ppm)*2
【0035】
エチル分岐含有量の計算:
この計算は、メチル分岐含有量の計算よりも若干簡単である。
2つの異なる比較的強い信号が観察できる。11.5ppmでの信号は3−メチル置換構造として帰属できる。
【化6】

【0036】
この例ではCH信号は、主鎖の末端として分類でき、またエチル分岐含有量の一部として割引できる。(メチル分岐に対応する信号は19.3ppmで観察され、したがって、メチル分岐含有量に既に含まれている。)
【0037】
10.9ppmでの信号は、一般的種類:
【化7】

のペンダントメチルとして帰属でき、したがって、その積分解(integral)はエチル分岐含有量の計算に直接使用できる。
【0038】
ここで唯一の僅かな問題は、イソプロピル末端基:
【化8】

が同じ領域で1つの信号を与え、CH信号の1つは主鎖の末端として分類する必要があるので、積分値を等分しなければならないことである。しかし、前記構造への他のピークの帰属による証拠は、イソプロピル含有量が非常に少ないことを示唆している。したがって、このイソプロピル含有量は無視できると推定し、したがって、この信号に対する積分値は再分割することなく、直接、使用する。実際にかなりのイソペンチル含有量があれば、エチル分岐含有量を過大に見積りできることは可能である。
全体として我々のエチル分岐含有量の計算は、単にInt10〜11.2ppmに基づく。
【0039】
3+分岐含有量の計算:
この含有量は、単にNMRデータから計算して得られるものではないので、最も難しい。この問題は、このような長い分岐に対するCH信号と、主鎖の末端に対するCH信号とを区別するのが困難なことである。我々が観察するこれらの炭素に対する信号は、14〜15ppmの領域にある。
【0040】
14.7ppmでの小さい信号は、C分岐による可能性がある。
【化9】

しかし、我々はこれを確信する信頼すべきデータを持っていない。
【0041】
14.5ppmでの第二の小さい信号は、4−メチル構造、即ち、
【化10】

に帰属でき、したがって、主鎖末端のCHである。
【0042】
この領域での主な信号は、14.1ppmにあるもので、本スペクトルの最も強い信号の1つになり易い。この信号は、4つの炭素内の分岐のないいずれのCHにも帰属できる。即ち、
【化11】


又は


から判るように、この信号内の主鎖末端と、長い分岐とを区別することは不可能である。
【0043】
この困難性のため、主鎖末端のCHについての理論含有量を計算しなければならない。この計算は、前記FIMSデータについて行なわれる。例えばFIMSは、これら構造の平均炭素数と共に、Z2分子の割合を与える。Z2分子は、線状又は分岐の炭化水素として定義でき、いずれの場合も、定義により2個の末端CHを有する。この“Z”含有量及び平均炭素数は知っているので、“Z2”構造により主鎖末端の理論CH含有量を計算できる。同様に、我々はZ0又はそれ以下(即ち、Z0、Z−2、Z−4等)の構造について、その割合及び平均炭素数を有する。イソパラフィン系基油では、芳香族及びオレフィンの含有量は非常に少ないので、Z0又はそれ以下の構造は環式、例えば以下の種類
【化12】

等であると推定できる。
【0044】
そこで、これらの構造は、主鎖末端に1個のメチル基を有すると推定できる。勿論、前記構造とは異なるZ0又はそれ以下の構造を持つことも可能である。例えば鎖のどちらかの末端に環を、或いは鎖の中間に環を持つ。しかし、これらの構造を区別する手段を持っていないので、前述の場合よりも起こりにくく、1分子当たり末端CH基1個という推定は、我々のなし得る最善のことである。
【0045】
この情報に従って、サンプルについて全体の理論的末端CH含有量を計算する。この値から既知の末端CH含有量、即ち、イソプロピル値、3−メチル置換値及び3,3−ジメチル置換構造についての値の半分を差し引くと、14ppm領域における鎖末端のCHに属する信号についての値が得られる。その差は、C3+分岐についての値である。
【0046】
3+分岐についての我々の計算は次の通りである。
Int14−15ppm−((理論末端CH)−(Int11.2〜11.8)−(Int22〜25ppm)2−Int7〜9ppm))
以上から判るように、分岐種類の割合を計算する過程では多くの推定をしなければならない。出願人は、現在、以上の方法が考案できた最善の方法であると考える。
【0047】
実施例2
表2の基油を用いて10W40クランクケースエンジン油を配合した。最終配合物は、第一基油3重量%、第二基油67.9重量%、市販の粘度調整添加剤8.9重量%、及び粘度調整剤を含まない標準添加剤包装20.2重量%で構成した。
このクランクケース油配合物について、ディーゼルエンジン規格MTL 5044(2004年1月)用MTUエンジン油の一部を説明する標準テスト法(DIN 51535)であるMTU沈着物テストを行なった。MTU賃着物テスト値は沈着物105mgである。
【0048】
比較実験
表3に示す特性を有する2種の鉱物誘導基油を用いて、実施例1と同じ100℃での動粘度を有する10W40クランクケースエンジン油を配合した。最終配合物は、XHVI−5 24.5重量%及びXHVI−8 43.9重量%で構成した。この油配合物は、更に前記粘度調整添加剤11.4重量%、及び粘度調整剤を含まない標準添加剤包装20.2重量%を含有する。
【0049】
このクランクケース油配合物について、実施例1のMTU沈着物テストを行なった。その結果、MTU賃着物テスト値は沈着物141mgである。
この比較実験に比べて実施例1の低いMTUテスト値は、空気取入口及び任意に空気冷却器において沈着物の形成が少ないと言う重要な指標である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の好ましいディーゼルエンジンシステムを示す。
【符号の説明】
【0051】
1 空気取入口
2 空気取入口フイルター
3 空気圧縮器
4 圧縮空気用導管
5 アフタークーラー
7 入口マニホールド
8 クランクケース
9 シリンダー
11 導管手段
12 排気ガスの一部をシリンダーに再循環する手段
13 排気流制御バルブ
14 流出液タービン
15 排気消音器
16 排気口
17 排気ガス再循環冷却器
18 輸送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケース潤滑油を含有するクランクケース、空気取入口、空気圧縮器、流出液タービン、アフタークーラー、及びブローバイガスを空気取入口に再循環する手段を有するブローバイガス再循環システムを備えたディーゼルエンジンを有するディーゼルエンジンシステムであって、該クランクケース潤滑油は、飽和物含有量が99重量%を超え、かつ粘度指数が120を超えるイソパラフィン系基油と、性能添加剤包装システムと、粘度調整添加剤とを含有する該ディーゼルエンジンシステム。
【請求項2】
前記クランクケース潤滑油の100℃での動粘度が9.3〜16.3cStである請求項1に記載のディーゼルエンジンシステム。
【請求項3】
クランクケース潤滑油は、飽和物含有量が99重量%を超え、粘度指数が120〜150であり、かつ100℃での動粘度が3〜6cStである第一のイソパラフィン系基油と、飽和物含有量が99重量%を超え、粘度指数が135を超え、かつ100℃での動粘度が7cStを超える第二のイソパラフィン系基油とを含有する請求項1又は2に記載のディーゼルエンジンシステム。
【請求項4】
前記第二のイソパラフィン系基油が、パラフィン化合物と、一般式:
アルキル−〔C−又はC−環〕
のナフテン系化合物15重量%未満とを含有し、ここで前記イソパラフィンの分岐及び前記ナフテン系化合物のアルキル基中の炭素の%割合が該化合物の全炭素数に対して計算して12〜20%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンシステム。
【請求項5】
前記クランクケース潤滑油もパラフィン化合物と、一般式:
アルキル−〔C−又はC−環〕
のナフテン系化合物15重量%未満とを含む第一のイソパラフィン基油を含有し、ここで前記イソパラフィンの分岐及び前記ナフテン系化合物のアルキル基中の炭素の%割合が該化合物の全炭素数に対して計算して12〜18%である請求項4に記載のディーゼルエンジンシステム。
【請求項6】
前記イソパラフィン基油が、パラフィン系供給原料を原料とする水素化異性化法の反応生成物である請求項1〜5のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンシステム。
【請求項7】
前記パラフィン供給原料がフィッシャー・トロプシュ蝋である請求項6に記載のディーゼルエンジンシステム。
【請求項8】
飽和物含有量が99重量%を超え、かつ粘度指数が120を超えるイソパラフィン系基油と、性能添加剤包装システムと、粘度調整添加剤とを含有する潤滑油を、クランクケース潤滑油を含有するクランクケース、空気取入口、空気圧縮器、流出液タービン、アフタークーラー、及びブローバイガスを空気取入口に再循環する手段を有するブローバイガス再循環システムを備えたディーゼルエンジンを有するディーゼルエンジンシステム中の沈着物を減少させるために使用する方法。
【請求項9】
クランクケース潤滑油を含有するクランクケース、空気取入口、空気圧縮器、流出液タービン、アフタークーラー、及びブローバイガスを空気取入口に再循環する手段を有するブローバイガス再循環システムを備えたディーゼルエンジンを有するディーゼルエンジンシステムを操作する方法において、該クランクケース潤滑油は飽和物含有量が99重量%を超え、かつ粘度指数が120を超えるイソパラフィン系基油と、性能添加剤包装システムと、粘度調整添加剤とを含有することを特徴とするディーゼルエンジンシステムの操作方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−517593(P2009−517593A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542775(P2008−542775)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069185
【国際公開番号】WO2007/063125
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】