説明

ディーゼルエンジン油組成物

【課題】 優れた燃費低減効果を有するディーゼルエンジン油組成物を提供する。
【解決手段】
(A)温度150℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度が1.6mPa・s以下、(B)温度100℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度が3.3mPa・s以下、(C)100℃での動粘度が2〜10mm/s、(D)粘度指数が120以上である基油を基油全量に対し50〜100容量%含有することを特徴とするディーゼルエンジン油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた燃費低減効果を有するディーゼルエンジン油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの環境問題への対応として、エンジン油に対しても燃費低減効果が求められてきている。この課題を解決する技術として、有機モリブテン化合物を配合し、境界潤滑領域における摩擦係数を低減させた低粘度油(例えば、特許文献1参照)や、有機モリブデンに加え、特定のエステル系潤滑油基油を配合することにより流体潤滑領域においても省燃費効果を発現する低粘度油が見出されている(特許文献2参照)。また、特定の酸化防止剤を組み合わせることで、有機モリブテン化合物を配合せずに省燃費効果に優れる低粘度油が見出されている(特許文献3参照)。そして、すでにガソリンエンジン油では、粘度グレードSAE J300が5W−20や0W−20といった低粘度油や、さらに有機モリブデン化合物を配合した低粘度油が省燃費油として市販されている。
【0003】
しかしながら、ディーゼルエンジンにおいては、上記のような流体潤滑領域での摩擦低減を狙ったオイルの低粘度化や境界潤滑領域における摩擦係数低減を狙った有機モリブテン化合物配合では、十分な省燃費効果が得られない傾向にある。ガソリンエンジンと比較して高負荷、高トルクであるディーゼルエンジンでは、単にオイルを低粘度化しただけでは、油膜強度不足によりオイルの耐摩耗性低下を招く恐れがあり、エンジン耐久性への影響や境界潤滑領域での摩擦増加が懸念され、これが省燃費効果へ影響するためである。また、ディーゼルエンジンにおいては燃焼生成物である煤がガソリンエンジンよりも多く発生するため、有機モリブデン化合物が十分にその効果を発揮しづらいためである。
【0004】
ところで、エンジンの更なる省燃費性能を向上させるためには、境界潤滑領域と流体潤滑領域の摩擦をより低減することが重要である。特に、エンジン内ではあらゆるせん断速度が生じているにも関わらず、これまでのエンジン油は150℃で、せん断速度が1×10sec−1における粘度のみに注目したものであった。
【0005】
そこで、本出願人はせん断速度に着目して検討し、150℃でせん断速度が1×10sec−1と近傍におけるせん断粘度と150℃でせん断速度が7×10sec−1〜1×10sec−1におけるせん断粘度を特定範囲内とすることで、省燃費性に優れる0W−30や5W−30のディーゼルエンジン油が得られることとを見出した(特許文献4参照。)。
【0006】
しかしながら、最近では、エンジンがより小型化、高出力化する傾向にあり、そのせん断領域も変化していることも考えられる。そのため、小型化、高出力化したエンジンの省燃費に優れたディーゼルエンジン油の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−302378号公報
【特許文献2】特開2005−41998号公報
【特許文献3】特開2005−42070号公報
【特許文献4】特開2007−99814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた燃費低減効果を有するディーゼルエンジン油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定のせん断速度におけるせん断粘度が特定範囲内である基油を基油全量に対して特定量含有する基油を用いて、優れた省燃費効果を発現できることを見出した。
すなわち、本発明は、(A)温度150℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度が1.6mPa・s以下、(B)温度100℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度が3.3mPa・s以下、(C)100℃での動粘度が2〜10mm/s、(D)粘度指数が120以上である基油を基油全量に対し50〜100容量%含有することを特徴とするディーゼルエンジン油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記ディーゼルエンジン油組成物において、重量平均分子量が100,000〜500,000のポリメタクリレート系粘度指数向上剤を含有するディーゼルエンジン油組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のディーゼルエンジン油組成物は、優れた燃費低減効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)基油
本発明のディーゼルエンジン油組成物には、基油が含有されているが、下記(A)、(B)、(C)及び(D)の性状を満たす基油を基油全量に対し50〜100容量%含有する。
(A)温度150℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度が1.6mPa・s以下である。
(B)温度100℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度が3.3mPa・s以下である。
(C)100℃での動粘度が2〜10mm/sである。
(D)粘度指数が120以上である。
【0012】
上記(A)及び(B)のせん断粘度は、それぞれ温度150℃と100℃での、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度であり、これは、例えばPCS Instruments社製USV(The Ultra Shear Viscometer)を利用して測定することができる。なお、せん断速度1×10sec−1近傍とは8×10sec−1から2×10sec−1の範囲でのことであり、その全ての領域で上記記載のせん断粘度である必要はなく、上記範囲のせん断速度のいずれかの点で上記せん断粘度を示せばよい。上記範囲を外れると、エンジン内での流体潤滑領域や境界流体領域での優れた省燃費効果が発現できなくなる。
【0013】
上記(C)の100℃における動粘度(JIS−K−2283(ASTM D445))は、2〜10mm/sであり、好ましくは2〜7mm/s、より好ましくは2〜6mm/sである。100℃での動粘度が2mm/s未満では耐摩耗性や蒸発性に懸念があり、10mm/sを超えると燃費効果が期待できない。
上記(D)の粘度指数は120以上であり、好ましくは125以上、より好ましくは130以上である。120未満では十分な燃費効果が期待できない。一方、粘度指数の上限値に制限はないが、実質的に入手可能なものは140以下である。
【0014】
40℃での動粘度については、耐摩耗性・蒸発性・燃費効果の観点からは5〜100mm/sであることが好ましく、8〜80mm/sであることがより好ましく、10〜50mm/sであることがさらに好ましい。
Noack蒸発量については、蒸発性を考慮し、JASO等の規格への適合性の観点からは15%以下であることが好ましい。
【0015】
上記の性状を満たす基油としては、鉱油であっても合成油であってもよく、API基油分類のグループIII基油(硫黄分0.03質量%以下、飽和分90質量%以上、粘度指数120以上で、主として水素化分解基油等)、グループIV(ポリαオレフィン基油)、グループV(API基油分類のグループI、II、III、IV以外の基油、エステル基油等)、天然ガスなどからフィッシャー・トロプシュ合成で得られたワックスを原料に水素化分解処理して得られるGTL基油などのうち、上記性状を満たす基油が挙げられる。
【0016】
グループIIIの基油は鉱油系基油であり、例えば以下の方法で製造された水素化分解基油が挙げられる。まず、原油の常圧蒸留で得られたボトム油を減圧蒸留装置で処理する。そこで得られた減圧軽油を水素化処理および水素化分解を行い、その後、軽質分、燃料分を減圧ストリッパーで除去した残渣物を得る。この残渣物を減圧蒸留し、得られた潤滑油留分を水素化脱ロウ処理、安定化処理を行い、水素化分解基油を得る。
【0017】
グループIVの基油はポリαオレフィンであり、例えば、エチレンの低重合またはワックスの熱分解によって炭素数6〜18のα−オレフィンを合成し、このα−オレフィンを重合し、水添反応を行うことによって合成されるものが挙げられる。
グループVの基油はAPI基油のグループI、II、III、IV以外の基油、エステル基油等である。
また、上記性状を満たす基油の内、特にパラフィン分がより多いものが好ましく、ASTM D3238環分析方法における%CPが82%以上であるものがより好ましい。基油中の%CPのより好ましい範囲は84%以上であり、更に好ましい範囲は86%以上である。
【0018】
本発明のディーゼルエンジン油組成物に用いられる基油は、上記(A)、(B)、(C)及び(D)の性状を満たす基油を基油全量に対し50〜100容量%含有する基油である。すなわち、上記(A)、(B)、(C)及び(D)の性状を満たす基油を基油全量に対し100容量%で用いる場合は、上記(A)、(B)、(C)及び(D)の性状を満たす基油を単独で用いることになり、上記(A)、(B)、(C)及び(D)の性状を満たす基油を基油全量に対し100容量%未満で用いる場合は、他の基油が含有されることになる。ただし、この「他の基油」の混合が50容量%以上になると、本発明の効果である省燃費効果を十分に得ることができない。上記(A)、(B)、(C)及び(D)の性状を満たす基油の基油全量に対する含有割合は、60容量%以上が好ましく、70容量%以上がより好ましく、80容量%以上がさらに好ましい。
【0019】
この混合できる「他の基油」としては上記で例示したグループIII、グループIV、グループV、GTL基油、及びグループI(硫黄分0.03質量%以上、飽和分90質量%以下、粘度指数80〜120の性状を有する基油で、主として溶剤精製基油等)、グループII(硫黄分0.03質量%以下、飽和分90質量%以上、粘度指数80〜120の性状を有する基油で、主として高度水素化精製基油等)等が挙げられる。
【0020】
(2)粘度指数向上剤
本発明のディーゼルエンジン油組成物は、粘度指数向上剤を含有させることが好ましい。
粘度指数向上剤は、特に限定されず、ポリメタクリレート類、ポリアクリレート類、オレフィンコポリマー類、ポリイソブチレン類、ポリアルキルスチレン類、スチレン−ブタジエン水素化共重合体類、スチレン−イソプレン水素化共重合体類、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体類、及びそれらに分散基を含有するもの等の公知の各種粘度指数向上剤を1種単独又は2種又は3種以上を組み合わせて用いればよい。なお、スチレン−ブタジエン水素化共重合体類は、スチレン−ブタジエン共重合体類を水素化して、残存している二重結合を飽和結合に変えたものを云い、スチレン−イソプレン水素化共重合体類は、スチレン−イソプレン共重合体類を水素化して、残存している二重結合を飽和結合に変えたものを云う。
【0021】
このうち、より良好な省燃費性のためには、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が100,000〜500,000であるポリメタクリレート系粘度指数向上剤を含有させることが好ましい。その際、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤に上記で上げたような他の粘度指数向上剤を併用してもよいが、さらに良好な省燃費効果を得るためにはポリメタクリレート系粘度指数向上剤以外の粘度指数向上剤は用いないことが好ましい。なお、重量平均分子量は、装置:TOSOH HLC−8020、カラム:TSKgel GMHHR−Mを3本、検出器:示唆屈折検出器、移動相:THF、流量:1ml/min、試料濃度:約1.0mass%/Vol%
THF、注入量:50μlによって測定されたポリスチレン換算値である。ポリメタクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量は、200,000〜450,000がより好ましく、300,000〜450,000がさらに好ましい。
【0022】
ポリメタクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量が下限値より小さいと十分な粘度指数向上効果が得られず、重量平均分子量が上限値を超えると十分なせん断安定性が得られず長期にわたりせん断を受けて低粘度化することで、耐摩耗・耐焼付き性が低下する。
ポリメタクリレート系粘度指数向上剤の配合量は、好ましくは0.5質量%以上で20質量以下、より好ましくは2.0質量%以上で10質量%以下である。下限値未満では十分な粘度指数向上効果を得ることができず、上限値を超えると長期にわたりせん断を受けて低粘度化することで、耐摩耗・耐焼付き性が低下する。
【0023】
ポリメタクリレート系粘度指数向上剤は、式(1)に例として示されるメタクリル酸エステルの重合体の構造を有し、メタクリル酸エステルのみをモノマーとする重合体であっても、メタクリル酸エステルとそれ以外のモノマーとの共重合体であっても、構造の一部にポリメタクリレート以外の高分子化合物を含有するものであってもよい。また、該ポリメタクリレート系粘度指数向上剤は分子構造中にアミノ基やスルホン酸基等の極性基を有する分散型であっても、これを有する非分散型であってもよい。
これらの粘度指数向上剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
【化1】

(Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、kは1以上の整数である。)
【0025】
(3)組成物の性状
本発明のディーゼルエンジン油組成物は、上記の基油を配合し、好ましくは上記のポリメタクリレート系粘度指数向上剤を配合するものであるが、良好な省燃費効果を得るためには以下のような性状であることが好ましい。
本発明のディーゼルエンジン油組成物は、粘度グレードSAE J300が0W−30、5W−30、10W30、0W−20、5W−20、0W−10及び5W−10の低粘度エンジン油に適している。なお、粘度グレードSAE J300は表1に示す。SAE J300粘度グレードとは、SAE J300に規定される分類であり、0W−30、5W−30、又は10W−30は、油温が低い状態においても優れた省燃費効果を発揮するマルチグレード油としての0W−30、5W−30又は10W−30である。
【0026】
SAE J300粘度グレード0W−30は、粘度グレード0Wの粘度の条件と粘度グレード30の粘度の条件の両方の条件を満たすものをいう。同様に、SAE J300粘度グレード5W−30は、粘度グレード5Wの粘度の条件と粘度グレード30の粘度の条件の両方の条件を満たすものをいう。また、SAE J300粘度グレード10W−30は、粘度グレード10Wの粘度の条件と粘度グレード30の粘度の条件の両方の条件を満たすものをいう。
SAE J300粘度グレード0W−20、5W−20、0W−10及び5W−10についても、同様である。
【0027】
本発明のディーゼルエンジン油組成物は、150℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度と、150℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度が粘度グレードによって表2に示す範囲内とすることで従来のエンジン油とよりも良好な省燃費効果を得ることができる。
なお、せん断速度1×10sec−1近傍のせん断粘度は、例えばPCS Instruments社製USV(The Ultra Shear Viscometer)を利用して測定することができる。また、せん断速度1×10sec−1近傍とは8×10sec−1から2×10sec−1の範囲のことで、その全ての領域で上記記載のせん断粘度である必要はなく、上記範囲のせん断速度のいずれかの点で上記せん断粘度を示せばよい。
【0028】
一方、せん断速度1×10sec−1近傍のせん断粘度は、ASTM D4683又はASTM D5481によって得られるせん断速度1×10sec−1近傍でのせん断粘度である。この場合の近傍とは、ASTM D4683の場合は、好ましくは±3%以内であり、より好ましくは±2.5%以内であることを意味し、ASTM D5481の場合は、好ましくは1.35×10〜1.45×10sec−1であり、より好ましくは1.38×10〜1.42×10sec−1であることを意味するものとする。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
本発明のディーゼルエンジン油組成物の40℃での動粘度(JIS−K−2283(ASTM D445))は、通常は10〜70mm/sであればよく、好ましくは20〜60mm/sであり、より好ましくは30〜55mm/sである。また、100℃での動粘度(JIS−K−2283(ASTM D445))は、通常は4〜12.4mm/sであればよく、好ましくは5.6〜12mm/sであり、より好ましくは6.5〜11mm/sである。
また、好ましい粘度指数は150〜300であり、より好ましくは160〜280であり、特に好ましくは180〜250である。
【0032】
本発明のディーゼルエンジン油組成物中の硫酸灰分量は特に限定はないが、硫酸灰分量が多すぎると、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積物が生成し、ディーゼルパティキュレートフィルタの寿命が短くなる場合がある。このような観点から、本発明のディーゼルエンジン油組成物中の硫酸灰分量は1.1質量%以下とすることが好ましい。
【0033】
(4)その他の添加剤
本発明のディーゼルエンジン油組成物は、境界潤滑域の摩擦低減効果のためにモリブデン化合物を含有させてもよい。モリブデン化合物としては、例えば、モリブテンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメート、モリブテン酸アミン化合物、モリブデン長鎖脂肪族アミンなどがある。エンジン油中のモリブデン濃度は100質量ppm以上、1200質量ppm以下になるように使用することが好ましい。
また、本発明のディーゼルエンジン油組成物は、摩擦を低減させるために、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪族アミン、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪族アルコール、及び脂肪族ポリグリセリルエーテル類などの金属を含まない摩擦調整剤を含有させることもできる。摩擦調整剤の好ましい含有量は、エンジン油の全量に対して500質量ppm〜5質量%である。
【0034】
さらに、本発明のディーゼルエンジン油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種公知の添加剤、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属ホスホネートなどの金属系清浄剤;アルケニルこはく酸イミド、ベンジルアミン、アルキルポリアミン、エステル化合物、極性基を持つ粘度指数向上剤など他の無灰型分散剤;リン系、硫黄系、アミン系、エステル系などの各種摩耗防止剤;2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネートなどのフェノール系化合物、ナフチルアミン類やジアルキルジフェニルアミン類などの芳香族アミン化合物、モリブデン酸アミンなど有機モリブデン化合物などの各種酸化防止剤;硫化オレフィン、硫化油脂、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ素化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛などの極圧剤;ステアリン酸を始めとするカルボン酸、ジカルボン酸、金属石鹸、カルボン酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールのカルボン酸部分エステル、リン酸エステルなどの各種錆止め剤;ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、チアジアゾールポリスルフィドなどの各種腐食防止剤;シリコーン油などの各種消泡剤などを1種単独で、又は2種以上組み合わせて適宜配合することができる。
【0035】
粘度指数向上剤以外のその他の添加剤の配合量は、できるだけ少なくすることが好ましく、組成物の全量に対して、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
本発明のエンジン油は、ディーゼルエンジン機関用に適するが、種々のエンジン機関にも適用でき、ガソリンエンジン機関用、ガスエンジン機関用に適用することもできる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
(測定方法)
(1)温度150℃、せん断速度1×10sec−1におけるせん断粘度
ASTM D4683によってせん断粘度を測定した。
(2)温度150℃、せん断速度1×10sec−1におけるせん断粘度及び
温度100℃、せん断速度1×10sec−1におけるせん断粘度
PCS Instruments社製USV(The Ultra Shear Viscometer)を利用して測定した。
【0037】
(3)動粘度
JIS K 2283(ASTM D445)により、測定した。
(4)粘度指数
JIS K 2283(ASTM D2270)により、算出した。
(5)NOACK蒸発量
ASTM D 5800により、測定した。
(6)%CP
ASTM D3238環分析
(7)SAE粘度グレード
SAE J300に規定される分類により判定した。
【0038】
(8)燃費試験
試験条件1は日本国内にある4600ccのディーゼルエンジンを用いた。試験条件1は国土交通省10・15モードを参考にした。試験条件1において基準油の燃料消費率と比較して燃費向上率(%)を求めた。
試験条件2は日本国内にある5200ccのディーゼルエンジンを用いた。試験条件2は国土交通省のシミュレーション法を参考にして、都市内走行モード(JE05モード)と都市間走行モードの2種のモードを用いた。試験条件1において基準油の燃料消費率と比較して燃費向上率(%)を求めた。
【0039】
(実施例1〜3及び比較例1〜4)
基油として表3に示す性状を有する基油を用い、その基油に粘度指数向上剤を表4、表5に示した量にて配合し、さらに、その他の添加剤(Ca系清浄剤、アルケニルこはく酸イミド系分散剤、耐摩耗性向上剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛、および酸化防止剤など)を表4及び表5に示した量にて配合して、エンジン油を製造した。
粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(PMA)、エチレンプロピレン共重合体(OCP)、及びポリメタクリレート及びエチレンプロピレン共重合体の混合タイプ(PMA/OCP)の分散・非分散型を配合した。なお、表中のMwは重量平均分子量を示す。
実施例1〜3及び比較例1〜4のエンジン油の組成、性状および試験結果を表4及び表5に示す。燃費向上率については、表4の実施例1・2及び比較例1は比較例2を基準油として試験条件1によって、また、表5の実施例3及び比較例3については比較例4を基準油として試験条件2によってそれぞれ求めた。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)温度150℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度が1.6mPa・s以下、
(B)温度100℃、せん断速度1×10sec−1近傍におけるせん断粘度が3.3mPa・s以下、
(C)100℃での動粘度が2〜10mm/s、
(D)粘度指数が120以上
である基油を基油全量に対し50〜100容量%含有することを特徴とするディーゼルエンジン油組成物。
【請求項2】
重量平均分子量が100,000〜500,000のポリメタクリレート系粘度指数向上剤を含有する請求項1のディーゼルエンジン油組成物。



【公開番号】特開2011−219632(P2011−219632A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90556(P2010−90556)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(398053147)コスモ石油ルブリカンツ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】