説明

デオドラント剤

【課題】優れた消臭・防臭効果とその持続性を有すると共に、べたつかず使用感がよいデオドラント剤を提供する。
【解決手段】液状油の抗酸化剤を含むリポソームとトレハロースとを含むデオドラント剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の消臭・防臭に好適なデオドラント組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のエチケット志向の高まりを受け、体臭に対するデオドラントニーズは高まっている。体臭発生の原因として代謝物の酸化作用があり、抗酸化剤を含むデオドラント剤が提案されている。しかしながら、ビタミンE等の抗酸化剤を含む化粧料を皮膚表面に塗布した場合、代謝物由来の過酸化脂質の生成を抑制してデオドラント効果を発揮するが、その効果は不十分であり、不安定な物質である為にデオドラント効果の持続性も不十分であった。更に、抗酸化剤に起因してべたつき感が生ずるなどの不具合があった。また、体臭の発生源となる代謝物は、皮膚表面のみではなく、角質層内に存在する。しかしながら、抗酸化剤は皮膚表面では作用するが、そのままの形態では皮膚への浸透力が弱く、角質層内部への作用が弱いためにデオドラント効果とその持続性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−63192号公報
【特許文献2】特開平11−286423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、優れた消臭・防臭効果とその持続性を有すると共に、べたつかず使用感がよいデオドラント剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、数ある化合物の中から、液状油である抗酸化剤を含むリポソームとトレハロースとを併用することにより、顕著な消臭・防臭効果とその持続性を発揮し、かつべたつかず使用感がよいことを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記デオドラント剤を提供する。
[1].液状油の抗酸化剤を含むリポソームとトレハロースとを含むデオドラント剤。
[2].リポソームの平均粒径が20〜40nmであり、単一層膜で構成されていることを特徴とする請求項1記載のデオドラント組成物。
[3].抗酸化剤が、ビタミンE及び又はその誘導体であることを特徴とする[1]又は[2]記載のデオドラント組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた消臭・防臭効果とその持続性を有すると共に、べたつかず使用感がよいデオドラント剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のデオドラント剤は、液状油である抗酸化剤を含むリポソームとトレハロースとを含むものである。
【0009】
本発明に用いるリポソームは、液状油である抗酸化剤がリン脂質などの両親媒性物質等でできたラメラ状すなわち薄膜状の液晶の被膜で被覆されたものをいう。液状油の抗酸化剤としては、ビタミンE及び又はその誘導体であるD−α−トコフェロール、DL−α−トコフェロール、D−α−トコフェロール酢酸エステル、DL−α−トコフェロール酢酸エステル、ビタミンA及び又はその誘導体であるレチノール、レチノールエステル、レチナール、レチノイン酸はパルミチン酸アスコルビル、β−カロチン等が挙げられる。なかでも、D−α−トコフェロール酢酸エステルの抗酸化能が高くより好ましい。ここでいう液状油とは、常温(15〜25℃)で液状の油をいう。
【0010】
抗酸化剤の配合量は、デオドラント剤に対して、0.001〜1質量%が好ましく、0.04〜0.1質量%がより好ましい。配合量が、0.001質量%未満であると、臭気を抑制する効果が充分に得られないおそれがあり、1質量%を超えると、べたついて使用感触が悪くなるおそれがある。
【0011】
リポソームの大きさは特に限定されないが、平均粒径150〜250nmが好ましく、20〜40nmがより好ましい。ヒトの角質細胞の間隔は約50nmであり、リポソームの経皮吸収性を向上させ、抗酸化作用による防臭効果を向上させる為には、50nmより小さいリポソームが好ましい。ここでいう平均粒径とは、個数基準の累積分布図で50%の高さを与える直径を意味し、粒数メディアン直径をいう。平均粒径は、下記の測定法で得ることができる。
粒径の測定方法:数平均粒径測定方法
装置:光散乱光度計(大塚電子株式会社製、ELS-8000)
測定方法:動的光散乱法(DLS)
測定条件:25℃にて測定
【0012】
リポソームの構成成分は特に限定されないが、内包される液状油の抗酸化剤、非イオン界面活性剤、リン脂質、有機酸塩、水からなる。また、リポソームは市販品を用いることができ、市販品としては、リポソーム:チバ・スペシャリティ・ケミカルズのTinoderm E等が挙げられる。Tinoderm Eは、液状油の抗酸化剤としてDL−α−トコフェロール酢酸エステル、その他の成分としてカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、水、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、大豆リン脂質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、エデト酸二ナトリウムからなる。TinodermEは、D−α−トコフェロール酢酸エステル2%を含む。
【0013】
本発明に用いるトレハロースは、2分子のグルコースが1,1結合した非還元性の二糖である。α,α型構造のトレハロース(α−D−グルコピラノシルα−D−グルコピラノシド)、α,β型(ネオトレハロース)、β,β型(イソトレハロース)の2種の異性体が存在している。本発明においてはいずれの型を用いてもよく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、特にα,α型が好ましい。また、トレハロースは市販品を用いることができ、市販品としては、トレハロース(化粧品用)((株)林原生物化学研究所社製)等が挙げられる。
【0014】
トレハロースの配合量は、デオドラント剤全量に対して0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。配合量が0.1質量%未満であると、臭気を抑制する効果が充分に得られないおそれがあり、10質量%を超えると、ベタついて使用感触が悪くなるおそれがある。
【0015】
デオドラント剤には、汗や皮脂の分泌を抑制することでより効果的に皮膚から発生する臭気を抑制する点から、クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛等の制汗成分を配合するとよい。制汗成分の配合量は、デオドラント剤全量に対して、0.1〜30質量%が好ましく、0.3〜25質量%がより好ましい。この範囲で、汗や皮脂の分泌を抑える効果をより得ることができ、30質量%を超えると、噴霧時に目詰まりを起こしたり、他の配合成分の配合量が制限されるおそれがある。
【0016】
また、皮膚常在菌の働きを弱めることでより効果的に皮膚から発生する臭気を抑制する点から、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム液等の殺菌成分を配合するとよい。殺菌成分の配合量は、デオドラント剤全量に対して、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましい。この範囲で、殺菌効果をより得ることができる。
【0017】
本発明のデオドラント剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。任意成分としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、シリコーン油やエステル油等の油分、無機粉体、有機粉体、高分子化合物、保湿剤、包接化合物、ビタミン類、紫外線吸収剤、アミノ酸類、抗炎症剤、冷感付与剤、酸化防止剤、着色剤、香料、防腐剤、溶剤(エタノール等)、脂肪酸、水等が挙げられる。なお、配合量は適宜選定される。
【0018】
本発明のデオドラント剤は、固形状、半固形状、ジェル状、液状等の剤型にすることができ、具体的には、パウダースプレー、ミスト、シート、スティック、ロールオン等のタイプ等にすることが好ましい。この中でも、パウダースプレーにする場合は、デオドラント剤(原液)に、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル等の噴射剤を配合し、エアゾール缶に充填することにより得ることができる。デオドラント剤(原液)と噴射剤との質量比は、デオドラント剤(原液)/噴射剤=1/99〜20/80の範囲が好ましい。なお、パウダースプレーにする場合は、噴射剤は上記リポソーム及びトレハロースの配合量においてはデオドラント剤全量に含まないものとする。シートにする場合は、適当な大きさのスパンレース不織布、スパンボンド不織布等の担体に体幹用デオドラント剤を、含浸させることにより得ることができる。体幹用デオドラント剤の含浸量は、担体量の2〜4倍(質量)が好ましい。
【0019】
使用方法としては特に限定されないが、体幹部にデオドラント剤を適用させることにより、体幹部から発生するアブラ臭さを消臭・防臭することができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示し、表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0021】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
表1記載のミストタイプデオドラント剤を、常法に基づいて調製し、下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0022】
[体幹部デオドラント効果]
男性被験者20名(平均年齢31歳)の方に、入浴後、体幹部に試料を10回程度噴霧(製剤1g相当)してもらい、その後予め洗浄しておいた試験用Tシャツを着用してもらった。Tシャツを着用したまま就寝してもらい、翌日、Tシャツを回収し、Tシャツの体幹部に付着した臭気について、専門パネル5名にて、下記評価基準に基づき官能評価を行い、各Tシャツの臭気の平均点を求めた。着用Tシャツ20枚の臭気評価の平均点を求めた。結果を、下記デオドラント効果基準に基づき示す。なお、被験者は試験3日前から他の制汗デオドラント剤の使用を禁止し、入浴時には無香料のボティソープを使用してもらった。
<評価基準>
5点:Tシャツへ付着した臭気が強烈な臭い
4点:Tシャツへ付着した臭気が強い臭い
3点:Tシャツへ付着した臭気がらくに感知できる臭い
2点:Tシャツへ付着した臭気がわかる弱い臭い
1点:Tシャツへ付着した臭気がやっと認知できるごく弱い臭い
0点:Tシャツへ付着した臭気がほとんど感じられない
<体幹部デオドラント効果基準>
◎:臭気評価の平均点が0点以上1点未満
○:臭気評価の平均点が1点以上2点未満
△:臭気評価の平均点が2点以上3.5点未満
×:臭気評価の平均点が3.5点以上5点以下
【0023】
[使用感触(ベタツキのなさ)]
方法(使用感触:ベタツキのなさ)
男性被験者20名(平均年齢31歳)の方に、入浴後、体幹部に試料を10回程度噴霧(製剤1g相当)してもらい、肌についた感触について、下記評価基準に基づき官能評価を行った。結果を、被験者20名の官能評価平均値から、下記使用感触効果基準に基づき示す。
<評価基準>
5点:非常にベタつく
4点:べたつく
3点:少しベタつく
2点:ほとんどベタつかない
1点:全くベタつかない
<使用感触効果基準>
◎:被験者20名の平均点が1点以上2点未満
○:被験者20名の平均点が2点以上3点未満
△:被験者20名の平均点が3点以上4点未満
×:被験者20名の平均点が4点以上5点以下
【0024】
【表1】

(注)Tinoderm Eを使用。Tinoderm Eは、DL−α−トコフェロール酢酸エステルを2%含む。
【0025】
[実施例6]
ミストタイプデオドラント剤
下記組成のミストタイプデオドラント剤を常法に基づいて調製した。
組成 %
トレハロース 2.0
(商品名:トレハロース(化粧品用)、株式会社林原生物化学研究所)
DL−α−トコフェロール酢酸エステル 0.04

(商品名:Tinoderm E、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)塩化ベンザルコニウム 0.5
(純分)
(商品名:トリゾン液、山田製薬株式会社)
パラフェノールスルホン酸亜鉛 2.5
エタノール 30.0
精製水 残部
合計 100.0
【0026】
[実施例7]
パウダースプレータイプデオドラント剤
下記組成のパウダースプレータイプデオドラント剤を常法に基づいて調製した。
組成 %
<原液>
トレハロース 3.0
(商品名:トレハロース(化粧品用)、株式会社林原生物化学研究所)
DL−α−トコフェロール酢酸エステル 0.05

(商品名:Tinoderm E、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)イソプロピルメチルフェノール 0.1
(商品名:イソプロピルメチルフェノール、大阪化成株式会社)
クロルヒドロキシアルミニウム 23.0
無水ケイ酸 5.0
ミリスチン酸イソプロピル 53.9
POE(20)トリイソステアリン酸グリセリル 15.0
合計 100.0
<噴射剤>
液化石油ガス(0.15MPa・20℃) 100.0
<原液/噴射剤比=10/90>


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状油の抗酸化剤を含むリポソームとトレハロースとを含むデオドラント剤。
【請求項2】
リポソームの平均粒径が20〜40nmであり、単一層膜で構成されていることを特徴とする請求項1記載のデオドラント組成物。
【請求項3】
抗酸化剤が、ビタミンE及び又はその誘導体であることを特徴とする請求項1又は2記載のデオドラント組成物。

【公開番号】特開2010−180190(P2010−180190A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27412(P2009−27412)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】