デキストランまたはそれに類する可溶性炭水化物ポリマーを用いて調整した金属または金属酸化物多孔質材料
本発明は新規な金属または金属酸化物多孔質材料とその調整方法を提供するものであり、より詳しくは、新規なスポンジ状の貴金属、特に銀多孔質材料に関するものであって、該材料はエポキシ化反応や部分酸化反応等の有機合成反応に用いる触媒や、電子装置、熱放散およびバクテリアろ過等の機能材料として有用であり、またかかる新規な銀触媒とともに、その調整方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本願発明は金属または金属酸化物多孔質材料とその調整方法に関するものである。より詳しくは、エポキシ化反応および部分酸化反応等の有機合成反応に用いる触媒や、電子部品、熱放散およびバクテリアろ過に用いる機能材料として有用なスポンジ状の銀多孔質材料とその調整方法、および、かかる新規な銀触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銀は、例えばエタンやペンタン等のエポキシ化反応や、メタンからホルムアルデヒドへの部分酸化反応のための触媒として利用されてきた。
【0003】
かかる銀材料の1つの形態として、スポンジ状の金属とした銀が周知である。従来、このスポンジ状金属銀は、以下のような方法で調整されてきた:
すなわち、英国特許第1,074,017号は、金属化合物を不溶性の一時的担体に塗布し、酸素が存在する状態でこれを燃焼させることによってこの担体を消失させる方法によって多孔質の酸化触媒を得る方法を開示している。また、英国特許第1,074,018号は、熱分解によって実質的に変化しない耐熱性材料を利用する方法によって形成された、酸化触媒に適した多孔質金属体を開示している。
【0004】
また、米国特許第4,007,135号は、多孔質の耐熱性担体を用いた酸化触媒を開示している。ここでは、アルミナおよび軽石凝灰岩等の多孔質材料を銀化合物の溶液中に浸漬し、しかる後に焼成する。
【0005】
しかし、かかる従来の方法によって調整したスポンジ状の銀は、その構造特性に関して以下に述べる限界と問題点を有することが判明している:
すなわち、英国特許第1,074,017号に開示された従来方法は、酸素が存在する状態で燃焼させることによって消失する一時的担体を必要とし、また英国特許第1,074,018号と米国特許第4,007,135号に開示された従来方法は耐熱性の材料を使用するので、残留材料が完全には分解されず、従って触媒としての活性を低減してしまう。
【0006】
また、従来の担持されていない銀触媒の表面積は0.2m2/g程度であり、また上述した方法で調整した銀スポンジ材料では1m2/gのオーダーであるから、担体材料を必要としない従来材料でも従来の担持された触媒と同等であった。
【0007】
従って、上述した従来の問題点を解決するために本願発明の目的とするところは、構造と形状を容易に選択および制御することができ、大気中加熱によって容易に調整および成形することができ、促進剤として他の金属または金属酸化物粒子を容易に結合させることができ、しかも触媒等として優れた特性を有する新規の銀多孔質材料と、その調整方法と、かかる材料を利用した新規の銀触媒を提供することである。
【0008】
さらに加えて、本願の目的とするところは、その構造と形状を容易に制御でき、かつ調整が容易であるとともに大気中加熱によって成形することができ、しかも機能的な活性を高めるために他の金属または金属酸化物粒子を容易に付加することができるものであり、上記の銀多孔質材料に類する新規の多孔質材料とその調整方法を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の目的を達成するために、本願発明は棒状の結晶体を有する金属または金属酸化物多孔質材料を提供する。そして第2の態様において、本発明は上記棒状結晶体の寸法、気孔の寸法および機械的強度を加熱温度によって選択することができるスポンジ状材料を提供する。さらに第3の態様において、本発明は連通孔を有する金属または金属酸化物多孔質材料を提供し、第4の態様において、本発明は棒状結晶体の長手方向に対して直交する方向における断面の最大外形寸法が、調整条件によって1μm(マイクロメートル)乃至50μmの間にある、銀多孔質材料を提供する。
【0010】
上述に係わる本願発明は、貴金属多孔質材料、特に銀または金多孔質材料を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、表面に別の種類の金属元素または金属酸化物から選択した金属または金属酸化物の粒子が付着している金属または金属酸化物多孔質材料を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、金属塩材料、デキストランまたはそれに類する水溶性の高い炭水化物多糖類ポリマーの水性粘性溶液を利用し、それを自己凝固させ、しかる後にそれを焼成する、金属多孔質材料の調整方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、金属酸化物粒子とデキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーの水性粘性コロイド状溶液を自己凝固させ、しかる後に焼成するステップを有する、金属酸化物多孔質材料の調整方法を提供する。
【0014】
さらに、本願発明は焼成工程が500℃以上で実施される上述した多孔質材料の調整方法を提供する。また、他の態様において、本発明は、上記水性粘性溶液中のデキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーの濃度が重量比で10乃至90%の範囲にあり、かつ金属塩材料あるいは金属または金属酸化物のコロイド状粒子の濃度が重量比で10乃至90%の範囲にある銀多孔質材料の調整方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記水性粘性溶液中のデキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーの分子量が10,000乃至500,000の範囲にある、多孔質材料の調整方法を提供する。
【0016】
さらに、本願発明は、、金属または金属酸化物触媒、特に、上述の銀多孔質材料として存在し、有効な活性成分の1つとして主要な例をなす銀触媒を提供する。なお、本発明は銀からなるスポンジ状材料の調整に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本願発明は上述の特長を有するものであり、以下に本発明の実施形態について説明する。
【0018】
詳しくは、本願発明は金属または金属酸化物の多孔質材料、特に多孔質材料であり、かつ棒状の結晶体を有する銀多孔質材料の提供を可能にするものである。
【0019】
本発明が提供する、かかる多孔質材料は金属または金属酸化物からなるものであって、スポンジ状の材料であり、しかも連通孔を有する材料である。
【0020】
しかし該多孔質材料の気孔の寸法だけでなく、連通孔の寸法も特に限定されるものではない。また、上記棒状の結晶体の長手方向に直交する断面の最大外形寸法に関しては、本願発明の提供するところのものは直径が約1μm乃至50μm、特に4μm乃至50μmであって、これは調整条件によって変化するものである。かかる最大外形寸法のもとで、気孔の寸法、連通孔の寸法とその長さ等の因子は、金属または金属酸化物多孔質材料の用途と特性に応じて決定されるものである。また、このスポンジ状材料は十分な機械的強さを有しているので、必要に応じて切断や成形加工を行うことが可能である。
【0021】
上述した本発明に係わる多孔質材料は、新規な工法としての特長を有する調整方法によって実現されるものである。本発明に係わる方法が特徴とするところは、硝酸銀(AgNO3)等を適切な例とする金属塩材料と、デキストランまたはそれに類する可溶性炭水化物または多糖類からなる水性粘性溶液を凝固させ、しかる後に加熱と焼成を行うことである。かかる水性粘性溶液は凝固に先立って、鋳型内に射出成形してもよい。好適な実施例として、硝酸銀とデキストランを用いて銀多孔質材料を調整する場合には、凝固工程は25℃の室温で行い、それに続く加熱と焼成工程は500℃以上の温度で実施する。
【0022】
上記の加熱工程において、温度が約200℃に到達すると以下の式で示される反応が起こる:
〔式1〕
【0023】
2AgNO3 → 2AgNO2 + O2
〔式2〕
【0024】
3AgNO2 → 3Ag + 2NO + NO2 + O2
〔式3〕
【0025】
C + O2 → CO2
加熱を行うと、硝酸銀はまず最初に亜硝酸銀に変換される〔式1〕。さらに、亜硝酸銀は還元されて銀となる〔式2〕。この際、デキストランは、硝酸銀が分解して生成した酸素によって燃焼することによって二酸化炭素に変換される〔式3〕。
【0026】
熱重量分析データ(図4)によれば、式1から式3の一連の反応は連続して、または同時に急速に起こる。そして、引き続いて500℃以上の温度に加熱することによって、微量の不純物が除去される。
【0027】
上記の反応によって銀多孔質材料を調整する際に、上記水性粘性溶液は、好ましくはデキストランの濃度を重量比で10乃至80%の範囲内に、より好ましくは重量比で20乃至60%の範囲内に設定し、硝酸銀の濃度を重量比で15乃至50%の範囲内に、より好ましくは重量比で35乃至45%の範囲内に設定する。さらに、同時に、デキストランの分子量を好ましくは、約20,000乃至120,000の範囲内に、より好ましくは60,000乃至80,000の範囲内に設定する。
【0028】
上記の2つの条件によって、本願発明は硝酸銀とデキストランから銀多孔質材料を著しく容易に調整することを可能にするのである。
【0029】
かくして、本願発明によって調整した銀多孔質材料は、銀触媒に含有される有効活性成分として利用することができるのである。該触媒は、例えばエポキシ化反応に効果的に使用することができ、またメタノールとホルムアルデヒドの酸化反応における部分酸化反応触媒としても使用することができる。
【0030】
上記に説明した純粋な銀スポンジ材料の調整方法に加えて、上述の硝酸銀/デキストランの反応混合物に金属塩または他の粒子を添加することによって、金属酸化物または金属の粒子のような添加物を含有する同様のスポンジ状形態の銀複合材料を形成することができる。
【0031】
さらに、硝酸銀の代わりに例えば硝酸銅や硝酸ニッケル等の他の可溶性金属塩を使用して、デキストランとともに粘性溶液を構成し、該溶液を加熱および焼成することによって金属酸化物または金属からなる網目状の骨格構造を形成することができる。
【0032】
また、例えば金、チタニアまたはマグネタイトのコロイドからなる予成形したナノ粒子またはマイクロ粒子を粘性を有するデキストラン溶液に添加し、該溶液を大気中乾燥後、加熱および焼成することによってデキストランを除去し、熱溶融した粒子からなる網目状の骨格構造を形成することができる。
【0033】
次に、本発明について実施例を用いて以下にさらに説明する。
【0034】
なお、本発明は、当然のことながら、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
実施例 1
重量比で20%の蒸留水に、重量比で38%のデキストラン(平均分子量:70,000)と重量比で42%の硝酸銀を混合して水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型内に注入し、25℃の室温で20分以内で凝固させた。次に、得られた固形物体を加熱し、500℃以上で焼成した。
【0036】
その結果を以下のSEM写真に示す:図1および2に示すように、連通孔を有するスポンジ状の銀多孔質材料が得られた。該材料は棒状の結晶体を有し、その長手方向に直交する断面における最大外形寸法は4μmであった。
【0037】
図3は515℃に加熱した銀多孔質材料のX線回折を示す。図4は上述の熱重量分析データを示す。
【0038】
上記の工程を、焼成温度600、700、800および900℃にして繰り返すと、図5a〜5dに示すように、スポンジ状材料の棒状結晶の直径および機械的強さが増加し、連通孔の寸法が減少するとの結果を得た。
実施例 2
重量比で20%の蒸留水に、重量比で38%のデキストラン(平均分子量:70,000)と重量比で38%の硝酸銀と重量比で4%の硝酸銅を混合して水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型に注入し、25℃の室温で1時間以内で凝固させた。次に、得られた固形物体を加熱し、900℃以上の温度で焼成した。
【0039】
その結果を以下のSEM写真に示す:図6および7に示すように、連通孔を有するスポンジ状の灰色の銀多孔質材料が得られた。該材料は棒状の結晶体を有し、その長手方向に直交する断面における最大外形寸法は50μmであった。さらに加えて図7〜10に示すように、直径が4μm以下の略球形の酸化銅粒子が、該材料の表面全般にわたって均一に分散している。図8は、900℃に加熱して形成した銀と酸化銅からなるスポンジのX線元素分析を示す。
【0040】
図9は銅のX線元素マッピングを示す図であって、表面の粒子が銅で構成されていることを示している。
【0041】
図10(a) は、900℃に加熱して得た銀と酸化銅からなるスポンジ状材料のX線回折を示す。
【0042】
図10(b) は酸化銅のピークを拡大して示す図である。
実施例3
重量比で20%の蒸留水に、重量比で40%のデキストラン(平均分子量:70.000)、重量比で39.855%の硝酸銀および重量比で0.145%のチタチア粒子(平均粒径100nm(ナノメートル)のコロイド状のアナタース形二酸化チタン)を混合して水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型内に注入し、25℃の室温で1時間以内で凝固させた。次に、得られた固形物体を加熱し、600℃以上の温度で焼成した。
【0043】
かくして、連通孔を有するスポンジ状の灰色の銀多孔質材料を得た。図11(a) は、600℃で焼成した銀とチタニアからなるスポンジ状材料のSEM写真を示す。図11(b) は高倍率での写真である。該材料は棒状の結晶体を有し、その長手方向に直交する断面内での最大外形寸法は4μmであったが、より一般的には1〜2μmであった。図12は、600℃に加熱して形成した銀とチタニアからなるスポンジのX線元素分析を示す。図13は、600℃で加熱したスポンジ状の銀とチタニアからなる多孔質材料のX線回折分析を示す。
実施例 4
重量比で37%の蒸留水に、重量比で58.5%のデキストラン(平均分子量:70,000)と重量比で4.5%の塩化金を混合して、水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型内に注入し、室温で大気中乾燥した。次に、得られた固形物体を加熱し、800℃以上の温度で焼成した。
【0044】
図14および15は、金金属の網目状骨格構造のSEM写真を示す。図16は該材料のX線元素分析データを、図17は該材料のX線回折分析データを示す。
実施例 5
重量比で36%の蒸留水に、重量比で56%のデキストラン(平均分子量:70,000)と、重量比で8%のマグネタイト(Fe3O4粒子の直径は2〜20μm)を混合して水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型内に注入し、室温で大気中乾燥した。
【0045】
次に、得られた固形物体を加熱し、600℃の温度で焼成した。
【0046】
図18はマグヘマイト形酸化鉄の網目状骨格構造のSEM写真を示す。図19は該材料のX線分析データを示す。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上記に説明したように、本発明は新規な金属または金属酸化物多孔質材料とその調整方法を提供するものである。より詳しくは、本発明は新規なスポンジ状の銀多孔質材料に関するものであって、該材料はエポキシ化反応や部分酸化反応等の有機合成反応の触媒や、電子装置、熱放散およびバクテリアろ過のための機能材料として有用なものであり、さらにかかる新規な銀触媒と同様にその調整方法も提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】連通孔を有するスポンジ状銀多孔質材料のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図2】連通孔を有するスポンジ状銀多孔質材料のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図3】520℃に加熱して得たスポンジ状銀多孔質材料のX線回折分析を示す。
【図4】スポンジ状銀多孔質材料の熱重量分析結果を示す。
【図5】(a)600℃、(b)700℃、(c)800℃、(d)900℃で焼成して得た、スポンジ状銀多孔質材料のSEM写真である。
【図6】連通孔を有するとともに、表面に酸化銅粒子が付着したスポンジ状銀多孔質材料のSEM写真である。
【図7】連通孔を有するとともに、表面に酸化銅粒子が付着したスポンジ状銀多孔質材料のSEM写真である。
【図8】銀と酸化銅からなるスポンジのX線元素分析を示す。
【図9】銀と酸化銅からなるスポンジの表面粒子であって、銅(酸化物)からなる粒子のX線元素分析のマッピングを示す。
【図10】(a、b)は銀と酸化銅からなるスポンジのX線回折分析を示す。
【図11】銀とチタニアからなるスポンジのSEM写真を示す。
【図12】銀チタニアからなるスポンジのX線元素分析を示す。
【図13】銀とチタニアからなるスポンジのX線回折分析を示す。
【図14】多孔質金金属の網目状骨格構造のSEM写真である。
【図15】多孔質金金属の網目状骨格構造のSEM写真である。
【図16】多孔質金の骨格のX線元素分析を示す。
【図17】多孔質金の骨格のX線回折分析を示す。
【図18】マグヘマイト型酸化鉄の網目状骨格構造のSEM写真を示す。
【図19】マグヘマイトの骨格のX線回折分析を示す。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本願発明は金属または金属酸化物多孔質材料とその調整方法に関するものである。より詳しくは、エポキシ化反応および部分酸化反応等の有機合成反応に用いる触媒や、電子部品、熱放散およびバクテリアろ過に用いる機能材料として有用なスポンジ状の銀多孔質材料とその調整方法、および、かかる新規な銀触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銀は、例えばエタンやペンタン等のエポキシ化反応や、メタンからホルムアルデヒドへの部分酸化反応のための触媒として利用されてきた。
【0003】
かかる銀材料の1つの形態として、スポンジ状の金属とした銀が周知である。従来、このスポンジ状金属銀は、以下のような方法で調整されてきた:
すなわち、英国特許第1,074,017号は、金属化合物を不溶性の一時的担体に塗布し、酸素が存在する状態でこれを燃焼させることによってこの担体を消失させる方法によって多孔質の酸化触媒を得る方法を開示している。また、英国特許第1,074,018号は、熱分解によって実質的に変化しない耐熱性材料を利用する方法によって形成された、酸化触媒に適した多孔質金属体を開示している。
【0004】
また、米国特許第4,007,135号は、多孔質の耐熱性担体を用いた酸化触媒を開示している。ここでは、アルミナおよび軽石凝灰岩等の多孔質材料を銀化合物の溶液中に浸漬し、しかる後に焼成する。
【0005】
しかし、かかる従来の方法によって調整したスポンジ状の銀は、その構造特性に関して以下に述べる限界と問題点を有することが判明している:
すなわち、英国特許第1,074,017号に開示された従来方法は、酸素が存在する状態で燃焼させることによって消失する一時的担体を必要とし、また英国特許第1,074,018号と米国特許第4,007,135号に開示された従来方法は耐熱性の材料を使用するので、残留材料が完全には分解されず、従って触媒としての活性を低減してしまう。
【0006】
また、従来の担持されていない銀触媒の表面積は0.2m2/g程度であり、また上述した方法で調整した銀スポンジ材料では1m2/gのオーダーであるから、担体材料を必要としない従来材料でも従来の担持された触媒と同等であった。
【0007】
従って、上述した従来の問題点を解決するために本願発明の目的とするところは、構造と形状を容易に選択および制御することができ、大気中加熱によって容易に調整および成形することができ、促進剤として他の金属または金属酸化物粒子を容易に結合させることができ、しかも触媒等として優れた特性を有する新規の銀多孔質材料と、その調整方法と、かかる材料を利用した新規の銀触媒を提供することである。
【0008】
さらに加えて、本願の目的とするところは、その構造と形状を容易に制御でき、かつ調整が容易であるとともに大気中加熱によって成形することができ、しかも機能的な活性を高めるために他の金属または金属酸化物粒子を容易に付加することができるものであり、上記の銀多孔質材料に類する新規の多孔質材料とその調整方法を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の目的を達成するために、本願発明は棒状の結晶体を有する金属または金属酸化物多孔質材料を提供する。そして第2の態様において、本発明は上記棒状結晶体の寸法、気孔の寸法および機械的強度を加熱温度によって選択することができるスポンジ状材料を提供する。さらに第3の態様において、本発明は連通孔を有する金属または金属酸化物多孔質材料を提供し、第4の態様において、本発明は棒状結晶体の長手方向に対して直交する方向における断面の最大外形寸法が、調整条件によって1μm(マイクロメートル)乃至50μmの間にある、銀多孔質材料を提供する。
【0010】
上述に係わる本願発明は、貴金属多孔質材料、特に銀または金多孔質材料を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、表面に別の種類の金属元素または金属酸化物から選択した金属または金属酸化物の粒子が付着している金属または金属酸化物多孔質材料を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、金属塩材料、デキストランまたはそれに類する水溶性の高い炭水化物多糖類ポリマーの水性粘性溶液を利用し、それを自己凝固させ、しかる後にそれを焼成する、金属多孔質材料の調整方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、金属酸化物粒子とデキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーの水性粘性コロイド状溶液を自己凝固させ、しかる後に焼成するステップを有する、金属酸化物多孔質材料の調整方法を提供する。
【0014】
さらに、本願発明は焼成工程が500℃以上で実施される上述した多孔質材料の調整方法を提供する。また、他の態様において、本発明は、上記水性粘性溶液中のデキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーの濃度が重量比で10乃至90%の範囲にあり、かつ金属塩材料あるいは金属または金属酸化物のコロイド状粒子の濃度が重量比で10乃至90%の範囲にある銀多孔質材料の調整方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記水性粘性溶液中のデキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーの分子量が10,000乃至500,000の範囲にある、多孔質材料の調整方法を提供する。
【0016】
さらに、本願発明は、、金属または金属酸化物触媒、特に、上述の銀多孔質材料として存在し、有効な活性成分の1つとして主要な例をなす銀触媒を提供する。なお、本発明は銀からなるスポンジ状材料の調整に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本願発明は上述の特長を有するものであり、以下に本発明の実施形態について説明する。
【0018】
詳しくは、本願発明は金属または金属酸化物の多孔質材料、特に多孔質材料であり、かつ棒状の結晶体を有する銀多孔質材料の提供を可能にするものである。
【0019】
本発明が提供する、かかる多孔質材料は金属または金属酸化物からなるものであって、スポンジ状の材料であり、しかも連通孔を有する材料である。
【0020】
しかし該多孔質材料の気孔の寸法だけでなく、連通孔の寸法も特に限定されるものではない。また、上記棒状の結晶体の長手方向に直交する断面の最大外形寸法に関しては、本願発明の提供するところのものは直径が約1μm乃至50μm、特に4μm乃至50μmであって、これは調整条件によって変化するものである。かかる最大外形寸法のもとで、気孔の寸法、連通孔の寸法とその長さ等の因子は、金属または金属酸化物多孔質材料の用途と特性に応じて決定されるものである。また、このスポンジ状材料は十分な機械的強さを有しているので、必要に応じて切断や成形加工を行うことが可能である。
【0021】
上述した本発明に係わる多孔質材料は、新規な工法としての特長を有する調整方法によって実現されるものである。本発明に係わる方法が特徴とするところは、硝酸銀(AgNO3)等を適切な例とする金属塩材料と、デキストランまたはそれに類する可溶性炭水化物または多糖類からなる水性粘性溶液を凝固させ、しかる後に加熱と焼成を行うことである。かかる水性粘性溶液は凝固に先立って、鋳型内に射出成形してもよい。好適な実施例として、硝酸銀とデキストランを用いて銀多孔質材料を調整する場合には、凝固工程は25℃の室温で行い、それに続く加熱と焼成工程は500℃以上の温度で実施する。
【0022】
上記の加熱工程において、温度が約200℃に到達すると以下の式で示される反応が起こる:
〔式1〕
【0023】
2AgNO3 → 2AgNO2 + O2
〔式2〕
【0024】
3AgNO2 → 3Ag + 2NO + NO2 + O2
〔式3〕
【0025】
C + O2 → CO2
加熱を行うと、硝酸銀はまず最初に亜硝酸銀に変換される〔式1〕。さらに、亜硝酸銀は還元されて銀となる〔式2〕。この際、デキストランは、硝酸銀が分解して生成した酸素によって燃焼することによって二酸化炭素に変換される〔式3〕。
【0026】
熱重量分析データ(図4)によれば、式1から式3の一連の反応は連続して、または同時に急速に起こる。そして、引き続いて500℃以上の温度に加熱することによって、微量の不純物が除去される。
【0027】
上記の反応によって銀多孔質材料を調整する際に、上記水性粘性溶液は、好ましくはデキストランの濃度を重量比で10乃至80%の範囲内に、より好ましくは重量比で20乃至60%の範囲内に設定し、硝酸銀の濃度を重量比で15乃至50%の範囲内に、より好ましくは重量比で35乃至45%の範囲内に設定する。さらに、同時に、デキストランの分子量を好ましくは、約20,000乃至120,000の範囲内に、より好ましくは60,000乃至80,000の範囲内に設定する。
【0028】
上記の2つの条件によって、本願発明は硝酸銀とデキストランから銀多孔質材料を著しく容易に調整することを可能にするのである。
【0029】
かくして、本願発明によって調整した銀多孔質材料は、銀触媒に含有される有効活性成分として利用することができるのである。該触媒は、例えばエポキシ化反応に効果的に使用することができ、またメタノールとホルムアルデヒドの酸化反応における部分酸化反応触媒としても使用することができる。
【0030】
上記に説明した純粋な銀スポンジ材料の調整方法に加えて、上述の硝酸銀/デキストランの反応混合物に金属塩または他の粒子を添加することによって、金属酸化物または金属の粒子のような添加物を含有する同様のスポンジ状形態の銀複合材料を形成することができる。
【0031】
さらに、硝酸銀の代わりに例えば硝酸銅や硝酸ニッケル等の他の可溶性金属塩を使用して、デキストランとともに粘性溶液を構成し、該溶液を加熱および焼成することによって金属酸化物または金属からなる網目状の骨格構造を形成することができる。
【0032】
また、例えば金、チタニアまたはマグネタイトのコロイドからなる予成形したナノ粒子またはマイクロ粒子を粘性を有するデキストラン溶液に添加し、該溶液を大気中乾燥後、加熱および焼成することによってデキストランを除去し、熱溶融した粒子からなる網目状の骨格構造を形成することができる。
【0033】
次に、本発明について実施例を用いて以下にさらに説明する。
【0034】
なお、本発明は、当然のことながら、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
実施例 1
重量比で20%の蒸留水に、重量比で38%のデキストラン(平均分子量:70,000)と重量比で42%の硝酸銀を混合して水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型内に注入し、25℃の室温で20分以内で凝固させた。次に、得られた固形物体を加熱し、500℃以上で焼成した。
【0036】
その結果を以下のSEM写真に示す:図1および2に示すように、連通孔を有するスポンジ状の銀多孔質材料が得られた。該材料は棒状の結晶体を有し、その長手方向に直交する断面における最大外形寸法は4μmであった。
【0037】
図3は515℃に加熱した銀多孔質材料のX線回折を示す。図4は上述の熱重量分析データを示す。
【0038】
上記の工程を、焼成温度600、700、800および900℃にして繰り返すと、図5a〜5dに示すように、スポンジ状材料の棒状結晶の直径および機械的強さが増加し、連通孔の寸法が減少するとの結果を得た。
実施例 2
重量比で20%の蒸留水に、重量比で38%のデキストラン(平均分子量:70,000)と重量比で38%の硝酸銀と重量比で4%の硝酸銅を混合して水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型に注入し、25℃の室温で1時間以内で凝固させた。次に、得られた固形物体を加熱し、900℃以上の温度で焼成した。
【0039】
その結果を以下のSEM写真に示す:図6および7に示すように、連通孔を有するスポンジ状の灰色の銀多孔質材料が得られた。該材料は棒状の結晶体を有し、その長手方向に直交する断面における最大外形寸法は50μmであった。さらに加えて図7〜10に示すように、直径が4μm以下の略球形の酸化銅粒子が、該材料の表面全般にわたって均一に分散している。図8は、900℃に加熱して形成した銀と酸化銅からなるスポンジのX線元素分析を示す。
【0040】
図9は銅のX線元素マッピングを示す図であって、表面の粒子が銅で構成されていることを示している。
【0041】
図10(a) は、900℃に加熱して得た銀と酸化銅からなるスポンジ状材料のX線回折を示す。
【0042】
図10(b) は酸化銅のピークを拡大して示す図である。
実施例3
重量比で20%の蒸留水に、重量比で40%のデキストラン(平均分子量:70.000)、重量比で39.855%の硝酸銀および重量比で0.145%のチタチア粒子(平均粒径100nm(ナノメートル)のコロイド状のアナタース形二酸化チタン)を混合して水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型内に注入し、25℃の室温で1時間以内で凝固させた。次に、得られた固形物体を加熱し、600℃以上の温度で焼成した。
【0043】
かくして、連通孔を有するスポンジ状の灰色の銀多孔質材料を得た。図11(a) は、600℃で焼成した銀とチタニアからなるスポンジ状材料のSEM写真を示す。図11(b) は高倍率での写真である。該材料は棒状の結晶体を有し、その長手方向に直交する断面内での最大外形寸法は4μmであったが、より一般的には1〜2μmであった。図12は、600℃に加熱して形成した銀とチタニアからなるスポンジのX線元素分析を示す。図13は、600℃で加熱したスポンジ状の銀とチタニアからなる多孔質材料のX線回折分析を示す。
実施例 4
重量比で37%の蒸留水に、重量比で58.5%のデキストラン(平均分子量:70,000)と重量比で4.5%の塩化金を混合して、水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型内に注入し、室温で大気中乾燥した。次に、得られた固形物体を加熱し、800℃以上の温度で焼成した。
【0044】
図14および15は、金金属の網目状骨格構造のSEM写真を示す。図16は該材料のX線元素分析データを、図17は該材料のX線回折分析データを示す。
実施例 5
重量比で36%の蒸留水に、重量比で56%のデキストラン(平均分子量:70,000)と、重量比で8%のマグネタイト(Fe3O4粒子の直径は2〜20μm)を混合して水性粘性溶液を調整した。該溶液を鋳型内に注入し、室温で大気中乾燥した。
【0045】
次に、得られた固形物体を加熱し、600℃の温度で焼成した。
【0046】
図18はマグヘマイト形酸化鉄の網目状骨格構造のSEM写真を示す。図19は該材料のX線分析データを示す。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上記に説明したように、本発明は新規な金属または金属酸化物多孔質材料とその調整方法を提供するものである。より詳しくは、本発明は新規なスポンジ状の銀多孔質材料に関するものであって、該材料はエポキシ化反応や部分酸化反応等の有機合成反応の触媒や、電子装置、熱放散およびバクテリアろ過のための機能材料として有用なものであり、さらにかかる新規な銀触媒と同様にその調整方法も提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】連通孔を有するスポンジ状銀多孔質材料のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図2】連通孔を有するスポンジ状銀多孔質材料のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図3】520℃に加熱して得たスポンジ状銀多孔質材料のX線回折分析を示す。
【図4】スポンジ状銀多孔質材料の熱重量分析結果を示す。
【図5】(a)600℃、(b)700℃、(c)800℃、(d)900℃で焼成して得た、スポンジ状銀多孔質材料のSEM写真である。
【図6】連通孔を有するとともに、表面に酸化銅粒子が付着したスポンジ状銀多孔質材料のSEM写真である。
【図7】連通孔を有するとともに、表面に酸化銅粒子が付着したスポンジ状銀多孔質材料のSEM写真である。
【図8】銀と酸化銅からなるスポンジのX線元素分析を示す。
【図9】銀と酸化銅からなるスポンジの表面粒子であって、銅(酸化物)からなる粒子のX線元素分析のマッピングを示す。
【図10】(a、b)は銀と酸化銅からなるスポンジのX線回折分析を示す。
【図11】銀とチタニアからなるスポンジのSEM写真を示す。
【図12】銀チタニアからなるスポンジのX線元素分析を示す。
【図13】銀とチタニアからなるスポンジのX線回折分析を示す。
【図14】多孔質金金属の網目状骨格構造のSEM写真である。
【図15】多孔質金金属の網目状骨格構造のSEM写真である。
【図16】多孔質金の骨格のX線元素分析を示す。
【図17】多孔質金の骨格のX線回折分析を示す。
【図18】マグヘマイト型酸化鉄の網目状骨格構造のSEM写真を示す。
【図19】マグヘマイトの骨格のX線回折分析を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の結晶体を有する金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項2】
調整する条件によって軟質または硬質のスポンジ材料である、金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項3】
連通孔を有する、請求項1または2に記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項4】
上記棒状結晶体において、長さ方向に対して直交方向の断面の最大外形寸法が、調整条件によって1マイクロメートル(μm)乃至50マイクロメートル(μm)の間にある、請求項1乃至3の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項5】
上記金属は、貴金属または遷移金属からなる群から選択される、請求項1乃至4の何れかに記載の金属多孔質材料。
【請求項6】
上記貴金属は銀または金である、請求項5に記載の金属多孔質材料。
【請求項7】
上記金属は複数の種類の金属元素からなる、請求項1乃至4の何れかに記載の金属多孔質材料。
【請求項8】
上記金属酸化物は遷移金属酸化物からなる群から選択される、請求項1乃至4の何れかに記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項9】
上記遷移金属酸化物は鉄酸化物である、請求項8に記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項10】
上記金属酸化物は複数の種類の金属酸化物からなる、請求項1乃至4の何れかに記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項11】
他の種類の金属元素または金属酸化物から選択した金属または金属酸化物の粒子を表面に付着させた、請求項1乃至10の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項12】
金属または金属酸化物の塩材料と、デキストランまたは高い水溶性を有する炭水化物ポリマーとからなる水性粘性溶液を自己凝固させ、しかる後に焼成する、請求項1乃至7の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項13】
他の種類の金属塩材料と、該金属塩材料に金属または金属酸化物コロイド状粒子を添加したものもしくは金属酸化物コロイド状粒子と、デキストランまたは高い水溶性を有する炭水化物ポリマーと、からなる水性粘性溶液を自己凝固させ、しかる後に焼成する、請求項11に記載の金属多孔質材料の調整方法。
【請求項14】
金属酸化物粒子と、デキストランまたはグルコースからなる高い水溶性を有する炭水化物ポリマーと、からなる水性粘性溶液を自己凝固させ、しかる後に焼成する、請求項1乃至4および8乃至10に記載の金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項15】
上記焼成工程を500℃以上の温度で実施する、請求項12乃至14の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項16】
上記焼成工程を500℃以上、900℃未満の温度範囲内で実施する、請求項15に記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項17】
上記炭水化物ポリマーは多糖類である、請求項1乃至16に記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項18】
上記水性粘性溶液中のデキストランまたは炭水化物ポリマーの濃度は質量比で10乃至10%の範囲にあり、金属塩材料または金属酸化物のコロイド状粒子の濃度は質量比で10乃至90%の範囲にある、請求項12乃至17の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項19】
上記金属塩材料の濃度は質量比で15乃至60%の範囲内にある、請求項18に記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項20】
上記水性粘性溶液中のデキストランまたは炭水化物ポリマーの分子量が、10,000乃至500,000の範囲内にある、請求項12乃至19の何れかに記載の多孔質材料の調整方法。
【請求項21】
請求項1乃至11の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料を、少なくとも一種類の有効な活性成分として含有する、金属または金属酸化物触媒。
【請求項22】
請求項21に記載の銀触媒。
【請求項23】
予成形したナノ粒子またはマイクロ粒子を、金属塩材料または金属酸化物のコロイド状粒子に添加するか、もしくは代替として使用することによって、金属または金属酸化物スポンジもしくは金属または金属酸化物の開放骨格構造を調整するのに適用することが可能な、請求項12乃至20の何れかに記載の調整方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または金属酸化物の棒状の結晶体からなり、該結晶体が空隙を有する骨格構造を構成し、以ってスポンジ状材料を形成する、金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項2】
調整する条件によって、軟質または硬質のスポンジ状材料である、請求項1に記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項3】
上記棒状結晶体の横断面寸法が、長手方向に対して直交する方向において、調整条件によって1マイクロメートル(μm)乃至50マイクロメートル(μm)の間にある、請求項1または2に記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項4】
上記金属が貴金属または遷移金属からなる群から選択される、請求項1、2および3のいずれかに記載の金属多孔質材料。
【請求項5】
上記貴金属が銀または金である、請求項4に記載の金属多孔質材料。
【請求項6】
上記金属が一種類以上の金属元素からなる、請求項1、2および3のいずれかに記載の金属多孔質材料。
【請求項7】
上記金属酸化物が遷移金属酸化物から選択される、請求項1、2および3のいずれかに記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項8】
上記遷移金属酸化物が鉄酸化物である、請求項7に記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項9】
上記金属酸化物が一種類以上の金属酸化物からなる、請求項1、2および3の何れかに記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項10】
さらに、異なる種類の金属元素または金属酸化物からなる粒子を表面に含んでなる、請求項1から9のいずれかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項11】
金属または金属酸化物の塩材料と、デキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーと、からなる水性粘性溶液を調整するステップと;
上記水性粘性溶液を自己凝固させて固形の物体を形成するステップと;
上記固形物体を焼成するステップと、からなる請求項1から9のいずれかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項12】
金属または金属酸化物の塩材料と、デキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーと、別の種類の金属または金属酸化物の塩材料と、からなる水性粘性溶液を調整するステップと;
上記水性粘性溶液を自己凝固させて固形の物体を形成するステップと;
上記固形物体を焼成ステップと、からなる請求項10に記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項13】
コロイド状の金属酸化物粒子と、デキストランまたはグルコースからなる高い水溶性を有する炭水化物と、からなる水性粘性溶液を調整するステップと;
上記水性粘性溶液を自己凝固させて固形の物体を形成するステップと;
上記固形物体を焼成するステップと、からなる請求項1、2、3および7から9のいずれかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項14】
上記焼成工程を500℃以上の温度で実施する、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
上記焼成工程を500℃以上900℃未満の温度範囲内で実施する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記炭水化物ポリマーは多糖類である、請求項11から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
上記水性粘性溶液中のデキストランまたは炭水化物ポリマーの濃度が質量比で10乃至80%の範囲にあり、金属、金属酸化物塩材料、またはコロイド状金属酸化物の濃度が質量比で10乃至90%の範囲内にある、請求項11から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
上記金属、金属酸化物塩材料、またはコロイド状金属酸化物の濃度が質量比で15乃至60%の範囲内にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記水性粘性溶液中のデキストランまたは炭水化物ポリマーの分子量が10,000乃至500,000の範囲内にある、請求項13から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項1から10のいずれかに記載の金属酸化物多孔質材料を、少なくとも一種類の有効な活性成分として含有する、金属または金属酸化物触媒。
【請求項21】
上記金属が銀である、請求項20に記載の金属または金属酸化物触媒。
【請求項22】
上記金属、金属酸化物塩材料、またはコロイド状金属酸化物をナノ粒子またはマイクロ粒子の形で上記水性粘性溶液に添加する、請求項11から19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
上記水性溶液が、さらに、金属、金属酸化物塩材料、またはコロイド状金属酸化物のナノ粒子またはマイクロ粒子を含有する、請求項11から19のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
棒状の結晶体を有する金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項2】
調整する条件によって軟質または硬質のスポンジ材料である、金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項3】
連通孔を有する、請求項1または2に記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項4】
上記棒状結晶体において、長さ方向に対して直交方向の断面の最大外形寸法が、調整条件によって1マイクロメートル(μm)乃至50マイクロメートル(μm)の間にある、請求項1乃至3の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項5】
上記金属は、貴金属または遷移金属からなる群から選択される、請求項1乃至4の何れかに記載の金属多孔質材料。
【請求項6】
上記貴金属は銀または金である、請求項5に記載の金属多孔質材料。
【請求項7】
上記金属は複数の種類の金属元素からなる、請求項1乃至4の何れかに記載の金属多孔質材料。
【請求項8】
上記金属酸化物は遷移金属酸化物からなる群から選択される、請求項1乃至4の何れかに記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項9】
上記遷移金属酸化物は鉄酸化物である、請求項8に記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項10】
上記金属酸化物は複数の種類の金属酸化物からなる、請求項1乃至4の何れかに記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項11】
他の種類の金属元素または金属酸化物から選択した金属または金属酸化物の粒子を表面に付着させた、請求項1乃至10の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項12】
金属または金属酸化物の塩材料と、デキストランまたは高い水溶性を有する炭水化物ポリマーとからなる水性粘性溶液を自己凝固させ、しかる後に焼成する、請求項1乃至7の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項13】
他の種類の金属塩材料と、該金属塩材料に金属または金属酸化物コロイド状粒子を添加したものもしくは金属酸化物コロイド状粒子と、デキストランまたは高い水溶性を有する炭水化物ポリマーと、からなる水性粘性溶液を自己凝固させ、しかる後に焼成する、請求項11に記載の金属多孔質材料の調整方法。
【請求項14】
金属酸化物粒子と、デキストランまたはグルコースからなる高い水溶性を有する炭水化物ポリマーと、からなる水性粘性溶液を自己凝固させ、しかる後に焼成する、請求項1乃至4および8乃至10に記載の金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項15】
上記焼成工程を500℃以上の温度で実施する、請求項12乃至14の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項16】
上記焼成工程を500℃以上、900℃未満の温度範囲内で実施する、請求項15に記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項17】
上記炭水化物ポリマーは多糖類である、請求項1乃至16に記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項18】
上記水性粘性溶液中のデキストランまたは炭水化物ポリマーの濃度は質量比で10乃至10%の範囲にあり、金属塩材料または金属酸化物のコロイド状粒子の濃度は質量比で10乃至90%の範囲にある、請求項12乃至17の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項19】
上記金属塩材料の濃度は質量比で15乃至60%の範囲内にある、請求項18に記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項20】
上記水性粘性溶液中のデキストランまたは炭水化物ポリマーの分子量が、10,000乃至500,000の範囲内にある、請求項12乃至19の何れかに記載の多孔質材料の調整方法。
【請求項21】
請求項1乃至11の何れかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料を、少なくとも一種類の有効な活性成分として含有する、金属または金属酸化物触媒。
【請求項22】
請求項21に記載の銀触媒。
【請求項23】
予成形したナノ粒子またはマイクロ粒子を、金属塩材料または金属酸化物のコロイド状粒子に添加するか、もしくは代替として使用することによって、金属または金属酸化物スポンジもしくは金属または金属酸化物の開放骨格構造を調整するのに適用することが可能な、請求項12乃至20の何れかに記載の調整方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または金属酸化物の棒状の結晶体からなり、該結晶体が空隙を有する骨格構造を構成し、以ってスポンジ状材料を形成する、金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項2】
調整する条件によって、軟質または硬質のスポンジ状材料である、請求項1に記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項3】
上記棒状結晶体の横断面寸法が、長手方向に対して直交する方向において、調整条件によって1マイクロメートル(μm)乃至50マイクロメートル(μm)の間にある、請求項1または2に記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項4】
上記金属が貴金属または遷移金属からなる群から選択される、請求項1、2および3のいずれかに記載の金属多孔質材料。
【請求項5】
上記貴金属が銀または金である、請求項4に記載の金属多孔質材料。
【請求項6】
上記金属が一種類以上の金属元素からなる、請求項1、2および3のいずれかに記載の金属多孔質材料。
【請求項7】
上記金属酸化物が遷移金属酸化物から選択される、請求項1、2および3のいずれかに記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項8】
上記遷移金属酸化物が鉄酸化物である、請求項7に記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項9】
上記金属酸化物が一種類以上の金属酸化物からなる、請求項1、2および3の何れかに記載の金属酸化物多孔質材料。
【請求項10】
さらに、異なる種類の金属元素または金属酸化物からなる粒子を表面に含んでなる、請求項1から9のいずれかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料。
【請求項11】
金属または金属酸化物の塩材料と、デキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーと、からなる水性粘性溶液を調整するステップと;
上記水性粘性溶液を自己凝固させて固形の物体を形成するステップと;
上記固形物体を焼成するステップと、からなる請求項1から9のいずれかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項12】
金属または金属酸化物の塩材料と、デキストランまたは水溶性の高い炭水化物ポリマーと、別の種類の金属または金属酸化物の塩材料と、からなる水性粘性溶液を調整するステップと;
上記水性粘性溶液を自己凝固させて固形の物体を形成するステップと;
上記固形物体を焼成ステップと、からなる請求項10に記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項13】
コロイド状の金属酸化物粒子と、デキストランまたはグルコースからなる高い水溶性を有する炭水化物と、からなる水性粘性溶液を調整するステップと;
上記水性粘性溶液を自己凝固させて固形の物体を形成するステップと;
上記固形物体を焼成するステップと、からなる請求項1、2、3および7から9のいずれかに記載の金属または金属酸化物多孔質材料の調整方法。
【請求項14】
上記焼成工程を500℃以上の温度で実施する、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
上記焼成工程を500℃以上900℃未満の温度範囲内で実施する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記炭水化物ポリマーは多糖類である、請求項11から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
上記水性粘性溶液中のデキストランまたは炭水化物ポリマーの濃度が質量比で10乃至80%の範囲にあり、金属、金属酸化物塩材料、またはコロイド状金属酸化物の濃度が質量比で10乃至90%の範囲内にある、請求項11から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
上記金属、金属酸化物塩材料、またはコロイド状金属酸化物の濃度が質量比で15乃至60%の範囲内にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記水性粘性溶液中のデキストランまたは炭水化物ポリマーの分子量が10,000乃至500,000の範囲内にある、請求項13から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項1から10のいずれかに記載の金属酸化物多孔質材料を、少なくとも一種類の有効な活性成分として含有する、金属または金属酸化物触媒。
【請求項21】
上記金属が銀である、請求項20に記載の金属または金属酸化物触媒。
【請求項22】
上記金属、金属酸化物塩材料、またはコロイド状金属酸化物をナノ粒子またはマイクロ粒子の形で上記水性粘性溶液に添加する、請求項11から19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
上記水性溶液が、さらに、金属、金属酸化物塩材料、またはコロイド状金属酸化物のナノ粒子またはマイクロ粒子を含有する、請求項11から19のいずれかに記載の方法。
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図19】
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図14】
【図15】
【図18】
【図4】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図19】
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図14】
【図15】
【図18】
【公表番号】特表2006−509915(P2006−509915A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560575(P2004−560575)
【出願日】平成14年12月17日(2002.12.17)
【国際出願番号】PCT/JP2002/013183
【国際公開番号】WO2004/054710
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年12月17日(2002.12.17)
【国際出願番号】PCT/JP2002/013183
【国際公開番号】WO2004/054710
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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