説明

デキストランスクラーゼを発現し改変されたデンプンを合成する、トランスフォーメーションされた植物

本発明は、遺伝学的に改変された植物細胞および植物に関するものであり、遺伝学的改変は、このような植物細胞および植物の色素体におけるデキストランスクラーゼの活性を有する酵素の発現に至る。さらに、本発明は、このような植物細胞および植物の産生のための手段および方法に関するものである。このタイプの植物細胞および植物は、改変されたデンプンを合成する。本発明はそれゆえ、本発明に記載の植物細胞および植物によって合成されるデンプン、ならびにデンプンの製造のための方法およびこの改変されたデンプンのデンプン誘導体の製造にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝学的に改変された植物細胞及び植物に関するものであり、遺伝学的改変は、このような植物細胞および植物の色素体におけるデキストランスクラーゼの活性を有する酵素の発現に至る。更に、本発明は、このような植物細胞および植物の産生のための手段および方法に関するものである。このタイプの植物細胞および植物は、改変されたデンプンを合成する。それゆえ、本発明は、本発明に記載の植物細胞および植物によって合成されるデンプン、ならびにデンプンの製造のための方法およびこの改変されたデンプンのデンプン誘導体の製造にも関するものである。
【0002】
原材料の再生源として最近、植物性物質に帰するとされた有意性の増大に関して、バイオテクノロジー研究の目的のうちのひとつは、植物性原材料を加工産業の需要に適応させようとすることである。できるだけ多くの領域において再生原材料の使用を可能にするため、多種類の物質を得ることが更に重要である。油、脂肪、およびタンパク質は別として、多糖類は、植物に由来する必須の再生原材料を構成する。セルロースは別として、デンプンは、多糖類の中で重要な位置を維持し、より高次の植物における最も有意な貯蔵物質のうちのひとつである。
【0003】
デンプンは、緑色葉の葉緑体中の顆粒(一過性デンプン)ならびに塊茎、根、および種子のアミロプラスト中の顆粒(貯蔵性デンプン)として沈着する(Kosmann and Lloyd 2000)。
【0004】
多糖類デンプンは、化学的に均質な基本構成要素、すなわちグルコース分子でできたポリマーである。しかしながら、多糖類デンプンは、それらの重合度およびグルコース鎖の分岐の程度において互いに異なるさまざまなタイプの分子から高度複合混合物を構成する。それゆえ、デンプンは、均質な原材料ではない。あるものは、アミロースデンプン、アルファ−1,4−グリコシド分岐したグルコース分子でできた基本的に分岐していないポリマー、および順にさまざまな分岐したグルコース鎖の複合体混合物であるアミロペクチンデンプン間で特に分化する。分岐は、更なるアルファ−1,6−グリコシド相互結合から生じる。
【0005】
植物貯蔵器官において、デンプンの生合成はアミロプラスト内で生じ、合成(グルコシル残基の重合化)、再編成、および分解などの異なる反応の結果であり、それらの反応において、さまざまなデンプン合成酵素(E.C.2.4.1.21)、トランスフェラーゼ(分岐酵素(E.C.2.4.1.18)および不均一化酵素(E.C.3.2.1.41))、および加水分解酵素(脱分岐酵素(E.C.3.2.1.41))がそれぞれ重要な役割を担う。
【0006】
できるだけ幅広いデンプンの使用を可能にするため、さまざまな使用に特に適した改変されたデンプンを合成できる植物が提供されることは望ましいように見える。育種方法は別として、このような植物を提供するひとつの可能性は、リコンビナントDNA技術によるデンプン産生植物のデンプン代謝の特定の遺伝学的改変である。
【0007】
何年にもわたって、いくつもの研究が、アミロプラストをより多用途の多糖類ファクトリーにする目的で実施されてきた。この目的のため、いくつもの細菌酵素が色素体のターゲティング移行を備えられ、デンプン構造および機能性に及ぼすそれらの影響が研究されてきた。
【0008】
特定の細菌は、一連の酵素、いわゆるグルカンスクラーゼを有しており、グルカンスクラーゼは、マルトデキストリンに(連続した)1,6−架橋されたまたは1,3−架橋されたグルコシル残基を結合できる。数個の例外とともに、グルカンスクラーゼは細胞外酵素であり、Leuconostoc mesenteroides系、口内Streptococci、および数種のLactobacillusおよびLactococcusなどの乳酸細菌によって産生される(Robyt 1995; van Geel-Schutten et al. 1999)。更に、それらは、数種のNeisseria系などの他の細菌によって産生される(Hehre et al. 1949)。これらの系は本来、異なる工程に包含される。系のいくつかは、ヒトおよび動物の口腔にコロニー形成し、齲歯の形成を誘導し得る。共生のNeisseria種などの他の系は、咽喉を侵襲し得る。数種のLactobacillusは、発酵乳の粘性を増大させる(de Vuyst and Degeest 1999)。
【0009】
グルカンスクラーゼは、ショ糖からのグルコース残基の重合化を触媒し、異なる大きさおよび構造を有する多様なα−グルカンの産生をもらたす。
【0010】
グルカンスクラーゼは、形成されるグルカンの構造、および特に、合成されるグルコシド結合の性質および頻度に従って分類できる。
【0011】
デキストランスクラーゼ(DSR)(E.C.2.4.1.5)は、デキストランと呼ばれる、主要直鎖におけるα−(1→6)グルコシル残基から主として構成され、α−(1→2)、α−(1→3)、またはα−(1→4)結合の変動し得る比によって分岐されるグルカンを合成する(Jeanes et al., 1954; Sidebotham, 1975; Robyt, 1995)。
【0012】
デキストランの生合成は、ショ糖の存在下でLactobacillus、Leuconostoc、およびStreptococcus細菌によって仲介される。
【0013】
デキストランスクラーゼをコード化する核酸配列は、当技術分野において周知であり、多くの異なる配列が多くの異なるデキストランスクラーゼについて同定されてきた(GenBankデータベース)。
【0014】
Leuconostoc mesenteroides NRRL B-512Fによって産生されるデキストランは水溶性であり、主鎖における95%α−(1→6)結合および5%α−(1→3)側鎖からなる(van Cleve et al., 1956)。その生合成は、1,527アミノ酸グルコシルトランスフェラーゼであるデキストランスクラーゼDSR−S(EC2.4.1.5)によって仲介される(Wilke-Douglas et al., 1989; Monchois et al., 1997)。その触媒特性は、次のとおり要約され得る。すなわち、ショ糖の開裂後、ショ糖残基は成長しているデキストラン鎖へ、いわゆる二部位挿入機構によって転移され得るか、またはアクセプター分子へ転移され得る(Robyt, 1995; Monchois et al., 1999)。
【0015】
L.mesenteroides NRRL B-512F由来のDsr−S遺伝子の配列が、国際公開公報第89/12386号においておよびQuirasco et al (1999)、GenBank(アクセッションAJ271107)によって報告されてきた。
【0016】
ほとんどのグルカンスクラーゼは、4つの異なる領域、すなわちシグナルペプチド、可変領域、触媒ドメイン、およびグルカン結合ドメイン(GBD)から構成される共通の構造を共有する(Monchois et al., 1999, FEMS Microbiology Letters 177, 243-248; Monchois et al., 1999, FEMS Microbiology Reviews 23, 131-151)。
【0017】
シグナルペプチドは、35〜38個のアミノ酸からなり、それらの天然細菌ホストによって発現される場合、スクラーゼの分泌の原因である。シグナルペプチドの後には140〜261個のアミノ酸の可変領域がある。Janecek et al. (2000)は、保存された長い反復要素(A様反復)が、Leuconostoc mesenteroides NRRL B-512F(DSR−S)のデキストランスクラーゼのこの領域の下流部分、NRRL B-1299 (DSR-B)に存在することを示した。これらの反復がグルカン結合にある役割を担い得ることは仮説として提唱されてきた。それにもかかわらず、この領域は酵素活性に不可欠であるようには見えず、その理由は、Leuconostoc mesenteroides NRRL B-1299によって産生され、α−(1→6)の分岐した結合に加え、α−(1→2)の分岐した結合の27〜35%を含有するポリマーの形成を触媒するDSR−Aが、この領域を有さず、なおも活性があるからである。
【0018】
触媒ドメインは、約900個のアミノ酸から構成され、Leuconostoc種およびStreptococcus種内で高度に保存される(MacGregor et al. 1996)。触媒ドメインは、ショ糖結合ドメインとも呼ばれ、その理由は、触媒ドメインがショ糖分子の結合および開裂に重要な役割を担うアスパラギン酸残基およびグルタミン酸残基の触媒三つ組を含有するからである。
【0019】
グルカン結合ドメインは、約500個のアミノ酸をカバーしており、共通配列によって定義されるA、B、C、Dと名づけられた反復から構成される(Monchois et al 1998,1999)。それにもかかわらず、これらの反復の数および組織化は、グルカンスクラーゼ内で変動し得、グルカン結合特性を確実にするのに必要なこれらの反復した単位の最小数が酵素に従って異なり、特に、不溶性のグルカンを産生する酵素とは可溶性のグルカンを産生する酵素は異なることが示されてきた(Monchois et al., 1999)。
【0020】
グルカンスクラーゼによるグルカン鎖の伸長は、デンプン合成によるものと比較してかなり異なる。第一に、好ましい基質は、ADP−グルコースの代わりにショ糖である。第二に、グルコース残基は、いわゆる二部位挿入機構によって成長しているグルカン鎖の還元端へ付加される(Robyt 1995)。
【0021】
更に、グルカンの分岐は、デンプンの生合成によるなどの分岐酵素によっては生じないが、グルカンスクラーゼ自体によって触媒されるいわゆるアクセプター反応によって生じる(Robyt, 1995)。グルカンスクラーゼは、新生グルカン鎖またはマルトデキストリンなどのアクセプター分子を結合できるアクセプター結合部位を含有すると考えられる(Su and Robyt, 1994)。
【0022】
それにもかかわらず、特にデンプンポリマーまたはマルトデキストリンによるアクセプター反応を触媒する効率は予測可能ではなく、その理由は、アクセプター反応の根底にある構造−機能関係が理解されておらず、ほとんど記述されていないからである。それにもかかわらず、相対的なアクセプター効率はアクセプター分子の大きさに依存するように見え(Fu et al. 1990)、アミロペクチンおよびアミロースがグルカンスクラーゼのためのアクセプター分子であり得ることは不確かである。
【0023】
デンプンポリマー改変は、Escherichia coliグリコーゲン合成酵素(GLGA)およびグリコーゲン分岐酵素(GLGB)をジャガイモアミロプラストへとターゲティングすることによって達成されてきた(Shewmaker et al. 1994; Kortstee et al. 1996)。両者の場合、鎖の伸長および分岐の自然の平衡が阻害され、結果として、物理的な特性の変化し、より高度に分岐したポリマーを有するデンプン顆粒を生じた。
【0024】
新規のグリコシル残基のデンプンポリマーへの結合も目的であった。この目的のため、Bacillus subtilisレバンスクラーゼ(E.C:2.4.1.10)をジャガイモ塊茎アミロプラストへ導入した(Gerrits et al. 2001)。レバンスクラーゼは、ドナー基質のショ糖のフルクトース部分を高分子量フルクタンへと重合できる。それにもかかわらず、デンプンの収量は重度に損なわれ、デンプンの形態は劇的に変化した。
【0025】
植物体中のデンプンを、環状オリゴ糖の無極性空洞中に疎水性物質を収容でき、さまざまな食品および薬学的適用に使用できる高価値の環状オリゴ糖へと変換する試みもなされてきた。シクロデキストリン産生のために、Klebsiella pneumoniae由来のシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ(CGTase、E.C.2.4.1.19)を、ジャガイモアミロプラストへ導入した(Oakes et al. 1991)。内因性デンプンの0.01%のみが望ましい生成物へと変換され、この生成物は植物材料からの回収が困難であった。
【0026】
これらの例は、細菌酵素がデンプン改変のための潜在的に有力なツールであり得るが、植物中でのそれらの性能があらかじめ予測できないことを示す(Kok-Jacob A. et al, 2003)。
【0027】
本発明の目的はそれゆえ、改変されたデンプン、このような改変されたデンプンを合成する新たな植物細胞および/または植物、ならびに上記植物を産生するための方法を提供することに基づいている。
【0028】
それゆえ本発明は、色素体におけるデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質の酵素活性を示し、遺伝学的に改変された植物細胞または遺伝学的に改変された植物が、対応する非遺伝的に改変された野生型植物細胞または野生型植物によってそれぞれ合成されるデンプンと比較して、改変されたデンプンを合成することを特徴とする、遺伝学的に改変された植物細胞または遺伝学的に改変された植物に関するものである。
【0029】
「遺伝学的に改変された」または「トランスフォーメーションされた」という語は、植物細胞または植物のゲノムにおいて少なくともひとつの導入遺伝子を安定して統合した植物細胞または植物を指す。好ましくは、導入遺伝子は、トランスフォーメーションされた植物細胞またはトランスフォーメーションされた植物(非同一性導入遺伝子)以外の他の生物体から派生する少なくともひとつの要素を含むキメラ核酸配列を含む。特に、導入遺伝子は、少なくともひとつのプロモーター、コード化配列、および場合により終結シグナルを含むリコンビナント導入遺伝子である。より好ましくは、リコンビナント導入遺伝子のコード化配列は、デキストランスクラーゼタンパク質を、最も好ましくはデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する。
【0030】
本発明に関連して、「野生型植物細胞」または「野生型植物」という語は、関連する植物細胞または植物が本発明に記載の植物細胞の産生のための出発材料として使用されたことを意味し、すなわち、それらの遺伝情報は、導入された遺伝学的改変は別として、本発明に記載の植物細胞の遺伝情報に対応する。
【0031】
本発明に関連して、「対応する」という語は、いくつもの目的の比較の上で、互いに比較される関連する目的が同一条件のもとで維持されてきたことを意味し、「野生型植物細胞」または「野生型植物」に関連した「対応する」という語は、互いに比較される植物細胞または植物が同一培養条件の下で生じ、それらが同一培養齢を有することを意味する。
【0032】
ここで、本発明の枠組み内で、「活性」という語は、導入遺伝子コード化配列の発現、および/または導入遺伝子コード化配列によってコード化されるタンパク質の存在、および/または遺伝学的に改変された植物細胞または遺伝学的に改変された植物においてそれぞれ、導入遺伝子によってコード化されるタンパク質によって産生される産物の存在を意味する。
【0033】
導入遺伝子のコード化配列の発現は、例えば、ノーザンブロット分析またはRT−PCRを使用して、例えば導入遺伝子の転写産物の量を測定することによって決定され得る。
【0034】
関連する遺伝学的に改変された植物細胞または遺伝学的に改変された植物における個々のタンパク質の活性を結果として生じる、導入遺伝子によってコード化されるタンパク質の存在は、例えば、ウェスタンブロット分析、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、またはRIA(ラジオイミュンアッセイ)などの免疫学的方法によって決定され得る。導入遺伝子がデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する場合、遺伝学的に改変された植物細胞または遺伝学的に改変された植物におけるDSR−Sタンパク質の存在は、例えば未変性アクリルアミドゲル電気泳動の助けにより示され得る。そのように実施するうえで、タンパク質を含有する植物細胞または植物の抽出物はまず電気泳動上分離され、ショ糖を含有する個々の緩衝液中でアクリルアミドゲルをインキュベーションした後、アクリルアミドゲルは、過ヨウ素酸−シフ(periodic acid-Shiff)染色で染色されるであろう(Miller and Robyt, 1986, Analytical Biochemistry 156, 357-363、国際公開公報第00/47727号)。
【0035】
デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸配列でトランスフォーメーションされた本発明に記載の植物細胞または本発明に記載の植物において産生される産物デキストランの存在は、例えば、本明細書の実施例3に記載の方法に従った免疫学的分析によって示され得る。
【0036】
本発明に関連して、用語「デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質」は、スクロースからのデキストランの合成を触媒する酵素として理解される。合成されたデキストランは、主鎖中のアルファ−1,6−結合グルコース単位からなり、アルファ1,3−結合側鎖を示す。好ましくは、本発明のデキストランスクラーゼタンパク質は5%前後のアルファー1,3−結合を有するデキストランを合成する。
【0037】
用語「デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質」は、さらに、配列番号2又は配列番号4で特定されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、よりさらに好ましくは少なくとも95%の同一性を有し、L. mesenteroidesに由来するDsr−S遺伝子(アクセッション番号AJ271107)によってコードされる酵素と比べて同様の触媒特性を有する酵素として定義される。
【0038】
本発明に関連して、「導入遺伝子」という語は、対応する非遺伝的に改変された野生型植物細胞においても非遺伝的に改変された野生型植物においても自然に生じない分子、または非遺伝的に改変された野生型植物細胞または非遺伝的に改変された野生型植物において現実の空間配置の中で自然に生じない分子、または自然に生じない非遺伝的に改変された野生型植物細胞または非遺伝的に改変された野生型植物のゲノムのある箇所に局在する分子を意味すると理解される。
【0039】
本発明に関連して、「リコンビナント」という語は、異なる要素からなる核酸分子を意味し、その要素の組み合わせまたは特異的な空間的配置は、植物細胞または植物において自然に生じない。
【0040】
DNAの植物ホスト細胞への導入のために、数多くの技術が利用可能である。これらの技術には、トランスフォーメーション媒体としてAgrobacterium tumefaciensまたはAgrobacterium rhizogenesを使用するT−DNAによる植物細胞のトランスフォーメーション、プロトプラストの融合、注入、DNAの電気穿孔法、微粒子銃アプローチによるDNAの導入、ならびに他の可能性が含まれる。
【0041】
植物細胞のアグロバクテリアにより仲介される植物細胞のトランスフォーメーションの使用は、徹底的に研究されてきており、欧州特許第120516号、The Binary Plant Vector System Offsetdrukkerij Kanters B.V., Alblasserdam (1985), Chapter VのなかのHoekema、Fraley et al., Crit. Rev. Plant Sci. 4, 1-46、およびAn et al. EMBO J. 4, (1985), 277-287によって適切に記載されている。ジャガイモのトランスフォーメーションについては、例えばRocha-Sosa et al., EMBO J. 8, (1989), 29-33を参照してほしい。
【0042】
アグロバクテリウムのトランスフォーメーションに基づいたベクターによる単子葉植物のトランスフォーメーションも記載されている(Chan et al., Plant MoI. Biol. 22, (1993), 491-506、Hiei et al., Plant J. 6, (1994) 271- 282、Deng et al, Science in China 33, (1990), 28-34、Wilmink et al., Plant Cell Reports 11 , (1992), 76-80、May et al., Bio/Technology 13, (1995), 486-492、Conner and Domisse, Int. J. Plant Sci. 153 (1992), 550-555、Ritchie et al, Transgenic Res. 2, (1993), 252-265)。単子葉植物のトランスフォーメーションに対する代替的なシステムは、微粒子銃アプローチによるトランスフォーメーション(Wan and Lemaux, Plant Physiol. 104, (1994), 37-48、Vasil et al., Bio/Technology 11 (1993), 1553-1558、Ritala et al., Plant MoI. Biol. 24, (1994), 317-325、Spencer et al., Theor. Appl. Genet. 79, (1990), 625-631)、プロトプラストトランスフォーメーション、部分的に透過性になった細胞の電気穿孔法、およびガラスファイバーによるDNAの導入である。特に、トウモロコシのトランスフォーメーションは、文献に多くの回数で記載されてきた(例、国際公開公報第95/06128号、欧州特許第0513849号、欧州特許第0465875号、欧州特許第0292435号、Fromm et al., Biotechnology 8, (1990), 833-844、Gordon-Kamm et al., Plant Cell 2, (1990), 603-618、Koziel et al., Biotechnology 11 (1993), 194-200、Moroc et al., Theor. Appl. Genet. 80, (1990), 721-726参照)。
【0043】
穀類の他のタイプの成功したトランスフォーメーションも、例えばオオムギ(Wan and Lemaux前述参照、Ritala et al.前述参照、Krens et al., Nature 296, (1982), 72-74)について、およびコムギ(Nehra et al., Plant J. 5, (1994), 285-297)についてすでに記載されている。上述の方法はすべて、本発明の枠組み内に適している。
【0044】
本発明に関連して、導入された核酸は、植物細胞の核ゲノムまたはプラスチドゲノムへと組込まれ得る。
【0045】
色素体をトランスフェクションする古典的な方法は、DNA分子を運搬する微粒子銃で葉を照射することを包含する(Svab et al., 1993)。今日、安定した色素体のトランスフェクションは、タバコ種N.tabaccumにおいてルーチンに実施される(Svab and Maliga, 1990、Svab et al., 1993)。コメ(Khan and Maliga, 1999)、Arabidopsis thaliana(Sikdar et al., 1998)、ジャガイモ(Sidorov et al, 1999)、ナタネ(国際公開公報第00/39313号)、トマト(Ruf et al., 2001)、およびダイズ(国際公開公報第04/053133号)において最新の進行があった。トランスプラストミック(transplastomic)植物を得るための方法の例は、特許出願国際公開公報第04/055191号に記載されている。
【0046】
特に、本発明に記載の植物細胞および本発明に記載の植物は、ゲノム内に安定して組込まれる外来核酸分子の少なくとも1コピーを含有する点で、野生型植物細胞および野生型植物からそれぞれ分化され得、外来核酸分子はデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する。
【0047】
更に、本発明に記載の植物細胞および本発明に記載の植物は、次の特徴によって野生型植物細胞または野生型植物からそれぞれ好ましく区別され得る。すなわち、本発明に記載の植物細胞または本発明に記載の植物は、導入された核酸分子の転写産物を有する。これらは、例えばノーザンブロット分析またはRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ鎖反応)によって認証され得る。好ましくは、本発明に記載の植物細胞および本発明に記載の植物は、導入された核酸分子によってコード化されるタンパク質を含有する。このことは、免疫学的方法、例えば特にウェスタンブロット分析によって示され得る。
【0048】
更に、本発明に記載の植物細胞および本発明に記載の植物は、デキストランを合成する特徴によって、より好ましくは野生型植物細胞または野生型植物から区別し得る。好ましくは、本発明の植物細胞または本発明の植物はそれらの色素体中にデキストランを産生する。
【0049】
「野生型植物細胞によって合成されるデンプンと比較して改変されたデンプン」または「改変されたデンプン」という語は、野生型植物において合成されるデンプンと比較される場合、例えばその物理化学特性、パスティフィケーション(pastification)挙動、デンプン顆粒の大きさおよび/または形状において異なる。
【0050】
野生型デンプンと比較して、このようなデンプンは、その粘性、および/またはこのデンプンの糊のゲル形成特性、および/またはその消化される能力に特に関して改変され得る。
【0051】
粘性に関する改変は、いくつもの手段によって、特に製造者の取り扱い説明書に従ったThermo Haakeレオスコープ(rheoscope)(Thermo Electron Cooperation)によって、または例えばRapid Visco Analyser Super3(Newport Scientific Pty Ltd, Investmet Support Group, Warriewod NSW 2102,Australia)のような急速粘性分析装置(RVA)によって測定され得る。粘性値は、製造者の操作マニュアルに従ってセンチポアズ(cP)で示され、そのことは、参照により本明細書による記載へ組み入れられる。
【0052】
急速粘性分析装置(RVA)によって粘性特徴を決定するための好ましい方法、および異なる試料の比較のために使用される因子は、本発明の一般的な方法(方法1)に記載される。
【0053】
熱性Haakeレオスコープによって粘性特性を決定するための他の好ましい方法は、本発明の一般的な方法(方法2)に記載される。
【0054】
デンプンの糊のゲル形成特性(またはゲル強度)の決定は、例えば製造者の操作マニュアルに従ったTexture Analyser TA-XT2(Stable Micro Systems - Surrey, UK)などの質感分析装置によって決定され得、そのことは参照により本明細書による記載へ組み入れられる。Texture Analyser TA-XT2によるデンプンの糊のゲル形成特性を決定する好ましい方法は、本発明の一般的な方法(方法3)に記載される。
【0055】
消化される能力は、例えば熱処理および/または酵素処理によって得られた後、逆行される、消化できない逆行性デンプンである抵抗性デンプンRSIII型の決定に基づいて、参照により本明細書による記載へ組み入れられるEnglyst H.N. et al., European Journal of Clinical Nutrition 4, Suppl.2, S33-S50の方法論を使用する、消化されるデンプンの百分率の決定によって決定され得る。
【0056】
Englystの方法は、参照により本明細書による記載へ組み入れられる国際公開公報第00/02926号におけるRS含有量の決定に関する情報と関係して改変され得る。結果としての方法は、本発明の一般的な方法(方法4)に記載される。
【0057】
更に、本発明は、前記植物細胞または前記植物がそれぞれ、野生型植物細胞によって合成されるデンプンと比較して、最終粘性が低くおよび/または消化性の増大した改変されたデンプンを合成することを特徴とする、本発明の遺伝学的に改変された植物細胞または遺伝学的に改変された植物に関するものである。
【0058】
本発明に関連して、最終粘性は、レオスコープ、特に熱性Haakeレオスコープまたは急速粘性分析装置によって測定され得る。最終粘性の決定のための好ましい方法は、本発明の一般的な方法(方法1および2)に記載される。
【0059】
好ましくは、レオスコープ、特に熱性Haakeレオスコープによって測定される最終粘性の低下は、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%である。
【0060】
本発明に関連して、消化性は、Englystの方法に従って、または国際公開公報第00/02926号に記載の改変されたEnglystの方法によって測定され得る。消化性の決定のための好ましい方法は、本発明の一般的な方法(方法4)に記載される。
【0061】
好ましくは、Englystの方法または国際公開公報第00/02926号におけるRS含有量の決定に関する情報と関係して改変されるEnglystの方法に従って測定される消化性の増大は、少なくとも12%、好ましくは少なくとも13%、より好ましくは少なくとも14%、最も好ましくは少なくとも15%である。
【0062】
更に本発明は、転写の方向で機能的様式において互いに連結される次のものを含む導入遺伝子をゲノムへと組込まれた本発明に記載の遺伝学的に改変された植物細胞または本発明に記載の遺伝学的に改変された植物に関するものである。すなわち、
植物細胞において転写を開始するプロモーター配列、
デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する非同一性接合性核酸配列、および
場合により、植物細胞において活発な終止配列である。
【0063】
本発明に関連して、「ゲノム」という語は、植物細胞に存在する遺伝材料の全体を意味するよう理解されるべきである。細胞核と同様、他の区画(例、色素体、ミトコンドリア)も遺伝材料を含有することは、当業者に公知である。
好ましい態様において、核酸コンストラクトは植物細胞の核ゲノムへと組込まれる。デキストランスクラーゼタンパク質の、色素体などの特定の細胞内区画への輸送はそれゆえ、関心対象の細胞内区画へターゲティングするための移行ペプチドの使用によって達成され得る。移行ペプチドをコード化する核酸配列は、コード化配列の前に挿入される。移行ペプチドをコード化する配列は、細胞質中に発現し、関心対象の細胞内区画へ転移する植物タンパク質をコード化するいずれかの核酸配列から派生され得る。移行ペプチドは、特定のポリペプチドをコード化するメッセンジャーRNAを成体タンパク質のアミノ酸配列と比較することによって同定され得る。成体タンパク質から欠失し、開始コドン、通常メチオニンで始まる対応するメッセンジャーRNAによってコード化されるアミノ酸は、通常移行ペプチドであるか、または移行ペプチドを含有するであろう。当業者は、例えばChloro1.1サーバーなどの移行ペプチドの予測のためのプログラムを使用して、威光ペプチドをコード化する配列を決定することができるであろう(Emanuelsson O. et al, 1999, Protein Science:8:978-984)。
【0064】
移行ペプチドは、移行ペプチドへ結合したタンパク質を関心対象の細胞内区画へ向かわせることのできるアミノ酸配列であり、全体の自然発生する(野生型)移行ペプチド、その機能的断片、その機能的突然変異体、またはキメラ移行ペプチドであり得、少なくとも2つの移行ペプチドは互いに関連するか、または機能的な様式で互いに関連した異なる移行ペプチドの一部である。このようなキメラ移行ペプチドは、欧州特許第050890号および欧州特許第0924299号における最適化された移行ペプチドとして報告される。
【0065】
移行ペプチドをコード化する核酸は、それに融合される酵素をコード化する核酸配列に関して非相同的であり得、そのことは、移行ペプチドをコード化する核酸配列および色素体へ向かうべき酵素をコード化する核酸配列が、異なる種から再度派生し得る異なる遺伝子から派生することを意味する。
【0066】
翻訳上移行ペプチドへ接合する酵素を葉緑体またはアミロプラストなどの色素体へターゲティングするための専用の移行ペプチドは、色素体移行ペプチドと呼ばれる。
【0067】
本発明は更に、転写の方向で機能的な様式で互いに結合する次のものを含む核酸コンストラクトをゲノムへ統合した本発明の遺伝学的に改変された植物細胞または本発明の遺伝学的に改変された植物に関するものである。すなわち、
植物細胞において転写を開始するプロモーター配列、
翻訳上融合される色素体移行ペプチドをコード化する非同一性核酸配列、
デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する非同一性核酸配列、および
場合により、植物細胞において活発な終止配列である。
【0068】
「機能的様式において互いに結合する」という語は、核酸コンストラクトの要素が、コード化領域の発現を可能にするような方法で互いに結合することを意味する。
【0069】
本発明に関連して、「翻訳的に融合した」という語は、転写の際、翻訳されるときに単一であるタンパク質をコード化する単一のメッセンジャーRNAの産生に至る単一の翻訳領域を核酸配列が表すような方法における核酸配列の融合を意味すべきである。
【0070】
色素体移行ペプチドは、蝋様のタンパク質(waxy protein)をコード化する遺伝子の移行ペプチド(Klosgen et al, MoI Gen Genet. 217 (1989), 155-161)、リブロース二リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット(Wolter et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988), 846-850、Nawrath et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 10 USA 91 (1994), 12760-12764)、NADP−リンゴ酸脱水素酵素(Gallardo et al., Planta 197 (1995), 324- 332)、グルタチオン還元酵素(Creissen et al., Plant J. 8 (1995), 167-175)、EPSPS(米国特許第5,188,642号)、および欧州特許第0508909号および欧州特許第0924299号に記載される最適化された移行ペプチドを含む群より選択され得る。これらの例は制限を加えるものではない。
【0071】
好ましい態様において、フェレドキシン還元酵素遺伝子の色素体移行ペプチドをコード化する核酸は、デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸配列と翻訳上融合する(Smeekens et al, 1985、Pilon et al, 1995)。
【0072】
更に好ましい態様において、フェレドキシン還元酵素遺伝子の色素体移行配列はホウレンソウから派生する。
【0073】
他の好ましい態様において、欧州特許第0508909号および欧州特許第0924299号に記載される最適化した色素体移行ペプチドをコード化する核酸配列は、デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸配列と翻訳上融合する。
【0074】
本発明の核酸コンストラクトの構築に使用される技術は、当業者に周知である。制限しない例として、Sambrook et al.(1989, Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Nolan C. ed., New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の技術を挙げることが可能である。
【0075】
更に、本発明に記載の植物細胞を含有する植物および/またはその子孫も、本発明の対象体である。このタイプの植物は、例えば「plant Cell Culture Protocols」 1999, R.D. Hall編, Humana Press, ISBN 0-89603-549-2に記載の方法など、当業者に公知の方法を使用して、再生によって本発明に記載の植物細胞から作出され得る。
【0076】
原則として、本発明に記載の植物は、いずれかの植物種の植物、すなわち単子葉植物および双子葉植物の両者であり得る。好ましくは、それらは有用な植物、すなわち食物の目的のため、または技術目的、特に産業目的のために人々によって栽培される植物である。
【0077】
更に好ましい態様において、本発明に記載の植物は、デンプン貯蔵植物である。「デンプン貯蔵植物」という語には、例えばトウモロコシ、コメ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オオムギ、キャッサバ、ジャガイモ、サゴ、リョクトウ、エンドウマメ、またはモロコシなどのデンプン貯蔵植物部分を有するすべての植物が含まれる。好ましいデンプン貯蔵植物部分は、例えば塊茎、貯蔵根、胚乳を含有する子実であり、塊茎は特に好ましく、ジャガイモ植物の塊茎は特に好ましい。
【0078】
更なる好ましい態様において、本発明は、ジャガイモ植物である、本発明に記載のデンプン貯蔵植物に関するものである。
【0079】
本発明に関連して、「ジャガイモ植物」または「ジャガイモ」という語は、Solanum属、特にSolanum属の植物種および特にSolanum tuberosumの塊茎産生種を意味する。
【0080】
本発明は、本発明に記載の植物細胞を含有する、本発明に記載の植物の繁殖材料にも関するものである。
【0081】
ここで、「繁殖材料」という語には、植物性または性的手段によって子孫を産生するのに適した植物の構成体が含まれる。例えば、切断、カルス培養、根茎、または塊茎は、植物性繁殖に適している。他の繁殖材料には、例えば果実、種子、実生、プロトプラスト、細胞培養等が含まれる。好ましくは、繁殖材料は種子であり、特に好ましくは塊茎である。
【0082】
更なる態様において、本発明は、果実、貯蔵根、花、芽、苗条または茎、好ましくは種子または塊茎などの、本発明に記載の植物の収穫可能な植物部分に関するものであり、これらの収穫可能な部分は、本発明に記載の植物細胞を含有する。
【0083】
本発明は、
a)植物細胞が、デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子を含む核酸分子でトランスフォーメーションされ、
b)植物が、工程a)において得られる植物細胞から再生し、および
c)必要な場合、更なる植物が、工程b)において得られた植物から作出される、
本発明に記載の遺伝学的に改変された植物の作出のための方法にも関する。
【0084】
工程a)で得られた植物細胞は、例えばR.D. Hall編「plant Cell Culture Protocols」1999, Humana Press, ISBN 0-89603-549-2に記載の方法を使用するなど、当業者に公知の方法に従って完全な植物へ再生され得る。
【0085】
本発明の遺伝学的に改変された植物の作出のための好ましい方法において、工程a)においてデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子は、色素体シグナル配列をコード化する核酸分子と翻訳上融合される。
本発明に記載の方法の工程(c)に従った更なる植物の作出は、例えば、(例えば切断、塊茎を使用するか、またはカルス培養および完全な植物の再生による)植物性繁殖、または性的繁殖によって実施され得る。ここで、性的繁殖は、好ましくは調節された条件下で起こり、すなわち特定の特徴で選択された植物が互いに交雑され繁殖する。
【0086】
本発明は、前述に開示の方法に従った遺伝学的に改変される植物の作出のための方法にも関し、デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子は、植物の色素体ゲノムへと組込まれる。
【0087】
デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子は、いずれかの望ましい起源由来であり得、好ましくは、デキストランスクラーゼをコード化する核酸分子は、このようなタンパク質を発現する細菌に由来する。
【0088】
より好ましくは、本発明において使用される核酸分子は、Leuconostoc、Lactobacillus、およびStreptococcus細菌からなる群より選択される細菌由来のデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化し得る。
【0089】
最も好ましくは、本発明において使用される核酸分子は、Leuconostoc mesenteroides由来、特に好ましくはLeuconostoc mesenteroides系NRRL B512F由来のデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化し得る。
【0090】
本発明において使用されるデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子は、例えばいずれかの起源から、好ましくは細菌から産生されるゲノムDNAまたはDNAライブラリから単離され得る。または、上記核酸分子は、リコンビナントDNA技術(例、PCR)によって、または化学的合成によって産生され得てしまっている。このような核酸分子の同定および単離は、本発明に記載の分子またはこれらの分子の一部を使用して、または場合により、例えば標準的な方法に従ったハイブリダイゼーションによって生じ得る(例、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.参照。)。
【0091】
ハイブリダイゼーションのためのプローブとして、例えば配列番号1またはその一部のもとで示されるヌクレオチド配列を実際にまたは基本的に含有する核酸分子が使用され得る。ハイブリダイゼーションプローブとして使用される断片は、従来合成方法によって作製される合成断片でもあり得、その配列は、本発明に記載の核酸分子の配列と基本的に同一である。
【0092】
本発明において使用される核酸分子とハイブリダイゼーションする分子は、デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する前述の核酸分子の断片、誘導体、およびアレル変異体も含む。この脈絡において、断片は、タンパク質をコード化するために十分長い核酸分子の一部として定義される。この脈絡において、誘導体という語は、これらの分子の配列が1つ以上の位置で上述の核酸分子の配列とは異なり、およびこれらの分子の配列が上述の核酸分子の配列と高い程度の同一性を示すことを意味する。同一性は、少なくとも70%の配列同一性を、なおもより好ましくは90%を超える配列同一性を意味し、もとも好ましくは95%を超える配列同一性を意味する。上述の核酸分子と比較するときに生じる偏差は、欠失、置換、挿入、または組換えによって生じ得た。
【0093】
更に、同一性は、個々の核酸分子またはそれらがコード化するタンパク質間に機能的および/または構造的等価が存在することを意味する。上述の分子と相同であり、これらの分子の誘導体を表す核酸分子は、同一の生物学的機能を発揮する改変を構成するこれらの分子の一般的に変異である。すなわち、これらの変異は自然発生する変異、例えば他の細菌由来の配列、または突然変異であり得、それによりこれらの突然変異は、自然に発生し得たかまたは特定の変異原性によって誘導され得た。更に、変異は合成的に作製される配列であり得る。アレル変異体は、自然に発生すると同様に合成で作製される変異体またはリコンビナントDNA技術によって作製される変異体であり得る。
【0094】
本発明の好ましい態様において、デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子は、次からなる群より選択される。すなわち、
a)配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列でタンパク質をコード化する核酸分子、
b)アミノ酸配列が、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する、核酸分子、
c)配列番号3のもとで示されるヌクレオチド配列またはその相補的な配列を含む、核酸分子、
d)核酸配列がa)またはc)のもとで記載される核酸配列と少なくとも70%の同一性を有する核酸分子、
e)ヌクレオチド配列が遺伝暗号の変性によりa)、b)、c)、またはd)のもとで同定される核酸分子の配列から逸脱する核酸分子、および
f)a)、b)、c)、d)、またはe)のもとで同定される核酸分子の断片、アレル変異体、および/または誘導体を表す核酸分子
である。
【0095】
本発明の更に好ましい態様において、デキストランスクラーゼタンパク質DSR−Sをコード化する核酸分子は、アミノ酸配列が配列番号2または配列番号4の配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%の同一性を有するタンパク質をコード化する。
【0096】
他の更に好ましい態様において、デキストランスクラーゼタンパク質DSR−Sをコード化する核酸分子は、配列番号1または配列番号3の配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0097】
本発明に関連して、「同一性」という語は、百分率として表される他のタンパク質/核酸のアミノ酸/ヌクレオチドと対応するアミノ酸/ヌクレオチドの数を意味すると理解されるべきである。同一性は、コンピュータプログラムの補助により、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4を他のタンパク質/核酸と比較することによって好ましく決定される。互いに比較される配列が異なる長さを有する場合、同一性は、より長い配列と同じようなより短い配列を有するアミノ酸の数が、同一性の百分率商を決定するような方法で決定されるべきである。好ましくは、同一性は、周知であり市販のコンピュータプログラムClustaIWによって決定される(Thompson et al., Nucleic Acids Research 22 (1994), 4673-4680)。ClustaIWは、Julie Thompson(Thompson@EMBL-Heidelberg.DE)およびToby Gibson(Gibson@EMBL-Heidelberg.DE), European Molecular Biology Laboratory, Meyerhofstrasse 1 , D 69117 Heidelberg, Germanyによって市販されている。ClustaIWは、IGBMC(Institut de Genetique et de Biologie Moleculaire et Cellulaire, B.P.163, 67404 lllkirch Cedex, France; ftp://ftp-igbmc.u-strasbg.fr/pub/)およびEBI(ftp://ftp.ebi.ac.uk/pub/software/)を含む異なるインターネットサイト、ならびにEBI(European Bioinformatics Institute, Wellcome Trust Genome Campus, Hinxton, Cambridge CB10 1SD, UK)のすべての「ミラーインターネットサイトからもダウンロードできる。
【0098】
好ましくは、ClustaIWコンピュータプログラムのバージョン1.8は、本発明に記載のタンパク質と他のタンパク質との間の同一性を決定するのに使用される。そのようにする上で、次のパラメーターが設定されなければならない。すなわち、KTUPLE=I、TOPDIAG=5、WIND0W=5、PAIRGAP=3、GAPOPEN=IO、GAPEXTEND=0.05、GAPDIST=8、MAXDIV=40、MATRIX=GONNET、ENDGAPS(OFF)、NOPGAP、NOHGAPである。
【0099】
好ましくは、ClustaIWコンピュータプログラムのバージョン1.8は、例えば本発明に記載の核酸分子のヌクレオチド配列と、他の核酸分子のヌクレオチドの配列との間の同一性を決定するのに使用される。そのようにする上で、次の因子が設定されなければならない。すなわち、KTUPLE=2、TOPDIAGS=4、PAIRGAP=5、DNAMATRIX:IUB、GAPOPEN=IO、GAPEXT=5、MAXDIV=40、TRANSITIONSは重視されない(unweighted)。
【0100】
更に、同一性は、関連する核酸分子またはそれらによってコード化されるタンパク質間に機能的および/または構造的等価が存在することを意味する。上述の分子およびこれらの分子の構成的変異体と相同的な核酸分子は一般に、改変を構成し、同一の生物学的機能を発揮するこれらの分子の変異である。同時に、変異は自然に発生し得、例えば変異は他の細菌種由来の配列であり得るか、またはそれらは突然変異であり得、これらの突然変異は、自然な様式で生じ得るか、または目的の変異原性によって導入され得る。変異は、合成的に作製される配列でもあり得る。アレル変異体は、自然発生する変異体および、また合成的に作製される変異体またはリコンビナントDNA技術によって作製される変異体の両者であり得る。遺伝暗号の変性による本発明に記載の核酸分子から逸脱する核酸分子は、誘導体の特殊な形態を構成する。
【0101】
デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化し、その配列が遺伝暗号の縮重による前述の分子のヌクレオチド配列とは異なる核酸分子の使用も、本発明の対象事項である。
【0102】
本発明は、前述の配列のうちのひとつの全体または一部と相補的な配列を示す核酸分子の使用にも関するものである。
【0103】
上述の核酸分子を発現させるために、これらは、植物細胞における転写の開始を保証する調節DNA配列と好ましく連結される。特に、これらにはプロモーターが含まれる。一般に、植物細胞において活発ないずれかのプロモーターは、発現のために適格である。
【0104】
同時に、プロモーターは、または発現が特定の組織において、植物の発達の特定の工程で、または外部影響によって決定される時間において、構成的にまたは単独で生じるよう選択され得る。プロモーターは、植物に関しておよび核酸分子に関しての両者で同種または異種であり得る。
【0105】
適切なプロモーターは、例えば構成的発現についてはカリフラワーモザイクウィルスの35S RNAのプロモーターおよびトウモロコシ由来のユビキチンプロモーター、ジャガイモにおける塊茎特異的発現についてはパタチンプロモーターB33(Rocha-Sosa et al., EMBO J. 8 (1989), 23-29)または光合成で活発な組織における発現のみを確実にするプロモーター、例えばST−LS1プロモーター(Stockhaus et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 (1987), 7943-7947; Stockhaus et al., EMBO J. 8 (1989), 2445- 2451)または、コムギ由来のHMGプロモーターの胚乳特異的発現についてはUSPプロモーター、ファゼオリンプロモーター、トウモロコシ由来のゼインのプロモーター(Pedersen et al., Cell 29 (1982), 1015-1026; Quatroccio et al., Plant MoI. Biol. 15 (1990), 81-93)、グルテリンプロモーター(Leisy et al., Plant MoI. Biol. 14 (1990), 41-50; Zheng et al., Plant J. 4 (1993), 357-366; Yoshihara et al., FEBS Lett. 383 (1996), 213-218)、またはシュランケン−1(shrunken-1)プロモーター(Werr et al., EMBO J. 4 (1985), 1373-1380)である。しかしながら、外部の影響によって決定される時間でのみ活性化されるプロモーターも使用され得る(例、国際公開公報第9307279号参照)。単純な誘導を可能にする熱ショックタンパク質のプロモーターは、本明細書で特に関心対象であり得る。さらに、Vicia faba由来のUSPプロモーターなど、Vicia fabaおよび他の植物における種子特異的な発現を保証する種子特異的プロモーターが使用され得る(Fiedler et al., Plant MoI. Biol. 22 (1993), 669- 679; Baumlein et al., MoI. Gen. Genet. 225 (1991), 459-467)。
【0106】
本発明の核酸コンストラクトが植物細胞の色素体において組込まれる場合、植物細胞の色素体において活発なプロモーターが使用され得る。植物細胞の色素体において活発なプロモーターのうち、例証として、PSIIのD1ポリペプチドをコード化するpsbA遺伝子(Staub et al. 1993 EMBO Journal 12(2):601-606)、およびリボソームRNAオペロンをレギュレーションする構成的なPrrnプロモーター(Staub et al. 1992 Plant Cell 4:39-45)に関して特殊な記述がなされ得る。
【0107】
更に、ポリAテールを転写産物へ付加するために使用される終止配列(ポリアデニル化シグナル)が存在し得る。転写産物の安定化における機能は、ポリAテールが原因である。このタイプの要素は文献に記載され(Gielen et al., EMBO J. 8 (1989), 23-29参照)、随意に交換され得る。
【0108】
本発明に記載の植物の作出のための本発明の方法によって得られ得る植物は、本発明の更なる態様である。
【0109】
更に、本発明は、デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する前述の核酸分子を含有する、ベクター、特にプラスミド、コスミド、ウィルス、バクテリオファージ、および遺伝子工学において共通の他のベクターに関するものである。このようなベクターは好ましくは、植物細胞のトランスフォーメーションのための使用され得るベクターである。より好ましくは、隣接するレギュレーション領域との組み合わせにおいて必要な場合、このようなベクターは、本発明の核酸分子を植物細胞の核ゲノムまたは色素体ゲノムへと統合できる。例は、例えばpBIN20二進法ベクター(Hennegan and Danna, 1998)などの、アグロバクテリウムにより仲介される遺伝子導入において使用され得る二進法ベクターである。直接的な色素体トランスフォーメーションのために使用され得るベクターの例は、国際公開公報第04/055191号に付与される。
【0110】
植物へ導入されるべき非同一性核酸を含むプラスミドは一般に、トランスフォーメーションされた細胞の同定および選択を容易にするために、選択可能なマーカーまたはリポーター遺伝子のいずれかまたはその両者を含有するであろう。または、選択可能なマーカーは、個別のベクター上で運搬され得、共トランスフォーメーション手法において使用され得る。選択可能なマーカーおよびリポーター遺伝子の両者は、植物における発現を可能にするために、適切なレギュレーション配列と隣接され得る。有用な選択可能なマーカーおよびリポーター遺伝子は当技術分野において周知であり、それには例えば抗菌性および除草剤耐性遺伝子、ベータ−グルクロニダーゼ酵素をコード化する遺伝子(Staub et al, 1993)または緑色蛍光タンパク質(Sidorov et al, 1999)が含まれる。
【0111】
このような遺伝子の特殊例は、Weising et al, 1988, Svab et al, 1993, White et al., Nucleic Acid Res. 18(4) :1062に開示される。
【0112】
デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子を使用することによって、今までは不可能な方法で植物細胞または植物のデンプン代謝に干渉することがリコンビナントDNA技術によっていまや可能である。それにより、デンプン代謝は、例えば対応する非遺伝的に改変された野生型植物細胞または非遺伝的に改変された野生型植物においてそれぞれ合成されるデンプンと比較して、その物理化学特性、パスティフィケーション挙動、デンプン顆粒の大きさおよび/または形状において改変された、改変されたデンプンが合成されるような方法で改変され得る。野生型デンプンと比較して、このようなデンプンは、特にその粘性および/またはこのデンプンの糊のゲル形成特性および/または消化されるその能力に関して改変され得る。
【0113】
本発明はそれゆえ、本発明に記載の植物細胞または本発明に記載の植物から、本発明に記載の繁殖材料からまたは本発明に記載の収穫可能な植物部分から得られることのできる改変されたデンプンにも関するものである。
【0114】
特に好ましい態様において、本発明は、改変されたジャガイモデンプンに関するものである。
【0115】
本発明は更に、本発明に記載の植物細胞から、本発明に記載の植物から、本発明に記載の植物の収穫可能な部分から、または本発明に記載の植物の作出のための本発明の方法によって得られることの出きる植物から改変されたデンプンを抽出する工程を含む、改変されたデンプンの製造のための方法にも関するものである。
【0116】
好ましくは、このような方法は、デンプンを抽出する前に、栽培された植物および/またはこのような植物のデンプン貯蔵部分を収穫する工程も含む。最も好ましくは、このような方法は更に、収穫前に本発明の植物を栽培する工程を含む。植物または植物のデンプン貯蔵部分からデンプンを抽出するための方法は、当業者に公知である。トウモロコシ種子からデンプンを抽出するための方法は、例えばEckhoff et al.(Cereal Chem. 73 (1996) 54-57)に記載されている。産業レベルのデンプンの抽出は、いわゆる湿式製粉技術によって通常達成される。更に、さまざまな他のデンプン貯蔵植物からデンプンを抽出するための方法は、例えばStarch: Chemistry and Technology (Editor: Whistler, BeMiller and Paschall (1994), 2.sup.nd edition, Academic Press Inc. London Ltd; ISBN 0-12-746270-8; see e.g. chapter XII, page 412-468に記載されており、トウモロコシおよびモロコシのデンプンについてはproduction; Watson著chapter XIII, page 469-479、タピオカ、クズウコン、およびサゴのデンプンについてはproduction; Corbishley and Miller著chapter XIV, page 479-490、ジャガイモデンプンについてはproduction and use; Mitch著chapter XV, page 491-506、コムギデンプンについてはproduction, modification and use; Knight and Oson著chapter XVI, page 507 to 528、コメデンプンについてはproduction and use; Rohmer and Klem著に記載される。植物材料からデンプンを抽出するのに一般に使用される電気機器は、分離装置、デカンター、ハイドロサイクロン(hydrocycone)、スプレー乾燥機、およびサイクロン(cyclon)乾燥機である。
【0117】
デキストランスクラーゼタンパク質をコード化する核酸分子の発現により、本発明に記載される遺伝子導入植物細胞および植物は、対応する非遺伝的に改変された野生型植物細胞または非遺伝的に改変された野生型植物においてそれぞれ合成されるデンプンと比較して、例えばその物理化学特性、パスティフィケーション挙動、デンプン顆粒の大きさおよび/または形状において改変されるデンプンを合成する。野生型デンプンと比較して、このようなデンプンは、その粘性および/またはこのデンプンの糊のゲル形成特性および/または消化されるその能力に特に関して改変され得る。
【0118】
したがって、本発明に記載の方法から得られることのできる改変されたデンプンも、本発明の対象事項である。
【0119】
本発明の好ましい態様において、本発明のデンプンはネイティブなデンプンである。
【0120】
本発明に関連して、「ネイティブなデンプン」という語は、デンプンが本発明に記載の植物、本発明に記載の収穫可能な植物部分、または本発明に記載の植物の繁殖材料から当業者に公知の方法によって単離されることを意味する。
【0121】
当業者は、デンプンの特性が例えば温度的、化学的、酵素的、または機械的逸脱によって変化し得ることを知っている。逸脱したデンプンは、食糧および/または非食糧セクタにおける異なる適用に特に適している。本発明に記載のデンプンは、従来のデンプンよりも逸脱したデンプンの製造のための出発物質としてよりよく適している。
【0122】
本発明はそれゆえ、逸脱したデンプンの製造のための方法にも関するものであり、本発明に記載の改変されたデンプンまたは本発明に記載の方法によって得られることのできる改変されたデンプンは、遡及的に派生する。
【0123】
本発明に関連して、「派生したデンプン」という語は、本発明に記載の改変されたデンプンを意味するよう理解されるべきであり、その特徴は、化学的、酵素的、温度的、または機械的方法の助けで植物性細胞から単離された後に変化している。
【0124】
本発明の好ましい態様において、本発明に記載の派生したデンプンは、熱処理されるかおよび/または酸処理されたデンプンである。
【0125】
更に好ましい態様において、派生したデンプンはデンプンエーテルであり、特にデンプンアルキルエーテル、O−アリルエーテル、ヒドロキシルアルキルエーテル、O−カルボキシルメチルエーテル、窒素含有デンプンエーテル、リン酸塩含有デンプンエーテル、または硫黄含有デンプンエーテルである。
【0126】
更に好ましい態様において、派生したデンプンは、架橋されたデンプンである。
更に好ましい態様において、派生したデンプンは、デンプングラフトポリマーである。
【0127】
更に好ましい態様において、派生したデンプンは、酸化したデンプンである。
【0128】
更に好ましい態様において、派生したデンプンはデンプンエステル、特に有機酸を使用してデンプンへと導入されたデンプンエステルである。特に好ましくは、これらはリン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、キサントゲン酸塩、酢酸塩、またはクエン酸塩のデンプンである。
【0129】
本発明に記載の派生したデンプンを製造するための方法は、当業者に公知であり、一般的な文献において適切に記載される。派生したデンプンの製造に関する概説は、例えばOrthoefer(in Corn, Chemistry and Technology, 1987, Watson und Ramstad編, Chapter 16, 479-499)において見出され得る。
【0130】
派生したデンプンを製造するための本発明に起債の方法によって得られることのできる派生したデンプンも、本発明の対象事項である。
【0131】
本発明の更なる態様は、派生したデンプンの製造のための本発明に記載の改変されたデンプンの使用である。
【0132】
本発明は、改変されたデンプンを製造するための、本発明に記載の植物細胞、本発明に記載の植物、本発明に記載の植物の収穫可能な部分、または本発明の方法によって得られることのできる植物の使用にも関するものである。
【0133】
本発明は、本発明に記載の遺伝学的に改変された植物細胞の製造のためのデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子、本発明に記載の遺伝学的に改変された植物、本発明に記載の繁殖材料、または本発明に記載の植物の収穫可能な部分の使用にも関するものである。
【0134】
本発明に記載の改変されたデンプンの製造のためのデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸配列の使用は、本発明の態様である。
【0135】
一般的な方法
方法1:急速粘性分析装置(RVA)による粘性特徴の決定
試料(例、小麦粉)3gをHO(VE型水、少なくとも15MΩの伝導率)25mlに採取し、急速粘性分析装置スーパー3(Newport Scientific Pty Ltd., Investmet Support Group, Warriewod NSW 2102, Australia)において分析のために使用する。装置を製造者の取扱説明書に従って作動させる。粘性値は、製造者の操作マニュアルに従ってセンチポアズ(cP)で示され、そのマニュアルは参照により本明細書による記載に組み入れられる。水性デンプン溶液の粘性を決定するため、デンプン懸濁液をまず960rpmで10秒間攪拌した後、50℃で160rpmの攪拌速度でまず1分間加熱する(工程1)。次に、1分間当たり12℃の加熱速度で温度を50℃から95℃まで上昇させる(工程2)。温度を95℃で2.5分間保持した後(工程3)、1分間当たり12℃で、95℃から50℃まで冷却させる(工程4)。最後の工程(工程5)において、50℃の温度を2分間保持する。粘性を全時間の間決定する。プログラムが終了した後、撹拌機を取り外し、ビーカーを回収する。ゼラチン化したデンプンは、室温で24時間のインキュベーションの後の質感分析のために利用可能である。
【0136】
RVA分析の特性は、異なる測定結果および物質の比較のために示される因子を含有する。本発明の脈絡において、次の語が次のとおり理解されるべきである。すなわち、
1.最大粘性(RVA Max)
最大粘性は、温度特性の工程2または3において得られるcPにおいて測定される最高粘性値を意味するものとして理解される。
2.最小粘性(RVA Min)
最小粘性は、最大粘性後の温度特性において観察されるcPにおいて測定される最低粘性値を意味するものとして理解される。
3.最終粘性(RVA Fin)
最終粘性(または終了粘性)は、測定の終了時に観察されるcPにおいて測定される粘性値を意味するものとして理解される。
4.セットバック(RVA Set)
「セットバック」として公知のものは、曲線における最大粘性後に生じる最小の値から最終粘性の値を差し引くことによって算出される。
5.ゼラチン化温度(RVA PT)
ゼラチン化温度は、初めて粘性が短時間に劇的に増大する温度特性の時点を意味するものとして理解される。
【0137】
方法2:Thermo Haakeレオスコープによる粘性測定(viscometric)特性の決定
2%デンプン懸濁液からの粘性測定特性を、Thermo Haakeレオスコープを使用して1Hzの周波数で小さな発振せん断変形を適用することによって決定した。レオメーターは平行プレート幾何学的構造(C70/1Ti型)を備えており、間隙の大きさは0.1mmであった。2%デンプン−水(w/v)懸濁液のペースト化特性を、2℃/分の速度で40℃から90℃まで懸濁液を加熱することによって得、そこでそれを15分間保持した後、2℃/分の速度で20℃へ冷却し、20℃15分間再度保持した。Tg(ゼラチン化開始温度)、Tp(ピーク温度)、および粘性を測定した。その後、後退した(retrogradated)試料から振幅スイープを10Paで60秒以内で1,000Paまで増大させながら実行し、ストレスと緊張の振幅が互いに比例する直線的な領域で測定が実施されることをチェックした。
【0138】
方法3:質感分析装置TA−XT2によるデンプンの糊のゲル形成特性の決定
試料をRVA装置において水性懸濁液中で、急速粘性分析装置(RVA)によってゼラチン化した後、密閉された容器の中で室温で24時間保存した。試料をStable Micro Systems(Surrey, UK)社製の質感分析装置TA−XT2のプローブ(平らな表面を有する丸いピストン)のもとに固定し、次の因子を使用してゲル強度を決定した。すなわち、
検査速度 0.5mm/秒
貫通の深さ 7mm
接触表面 113mm2
圧力 2g
であった。
【0139】
方法4:抵抗性デンプンRSIII型の決定に基づいたデンプンの消化性の決定
抵抗性デンプンRSは、次のタイプへ分割され得る。
RS1型 消化へ物理的にアクセスできないデンプン、例えば(例、ムースリにおいて)部分的に製粉された植物細胞
RS2型 例えば生のジャガイモ、青バナナ等由来の難消化性顆粒状デンプン(デンプン粒子)
RS3型 例えば熱処理および/または酵素処理によって得られた後に逆行される難消化性逆行性デンプン
RS4型 例えば交差結合またはエステル化(アセチル化等)によって形成される難消化性の化学的に改変されたデンプン
【0140】
抵抗性デンプンRSIII型の決定を、次の工程を使用して得た。すなわち
a)パンクレアチン/アミログルコシダーゼ(AGS)処理
使用されるパンクレアチン/アミログルコシダーゼ消化緩衝液:
0.1M酢酸Na pH5.2
4mM CaCl
【0141】
酵素溶液の調製:
パンクレアチン(Merck、製品番号1.07130.1000)12gを鉱質除去水(伝導率約18MΩ)80mL中で37℃で10分間撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離した。
【0142】
遠心分離後に得られた上清54mLを鉱質除去水9.86mLおよびアミログルコシダーゼ0.14mL(6000u/mL、Sigma、製品番号A-3042)で処理した。
【0143】
パンクレアチン/アミログルコシダーゼ(AGS)消化手法
パンクレアチン/アミログルコシダーゼ(AGS)消化の5回のアッセイを測定される各バッチデンプンについて各回に調製する。これらの5回のアッセイの各々のうちの2へは酵素溶液は後で添加されない。酵素溶液が添加されないアッセイは基準物質として明示され、回復速度の決定に使用される。残りの3アッセイ試料として明示され、後で酵素溶液で処理され、RS含有量の決定に使用される。
【0144】
デンプンを含有しない多くの反応容器を並行に処理した(ブランク試料)。デンプンを含有しないこれらのブランク試料を使用して、共沈殿した材料(タンパク質、塩)の量を決定する。
【0145】
50mL反応容器(ファルコンチューブ)の風袋重量を決定した後、各場合においてデンプン約200mgをその中で秤量する。
【0146】
酢酸Na緩衝液15mLを直線的な水不溶性ポリ−アルファ−1,4−D−グルカン試料およびブランク試料の各々へ添加し、酢酸Na緩衝液20mLを基準物質(前述)の各々へ添加した。これらの試料を37℃へあらかじめ加温した。
【0147】
酵素溶液5mLを試料およびブランク試料の個々の反応容器の各々へ添加した後、37℃(200rpm)で2時間振とうすることによって、反応を開始した。
【0148】
(pH3.0へ平衡化した)氷酢酸5mLおよび技術用エタノール80mLを、試料、ブランク試料、および基準物質へ添加することによって、反応を停止した。
【0149】
急冷した反応アッセイを室温で1時間インキュベーションすることによって、反応混合物からのデンプンの沈殿を達成させた。
【0150】
沈降(2500×gで10分間遠心分離)後、得られた個々のアッセイの沈降物を80%エタノールで2回洗浄し、短鎖グルカンを除去した後、−70℃へ冷却した後に凍結乾燥した。試料を再度秤量し、重量差を「重量分析」RS含有量の算出に使用した。
【0151】
b)RS含有量の決定
水不溶性デンプンの個々のバッチのRS含有量の決定のために、次の手法を使用した。すなわち、
a)デンプンの個々の試料バッチの水分含有量の決定(wt.H2O)
b)個々の試料(wt.RGP)、基準物質(wt.RGR)、およびブランク試料(wt.RGB)についての個々の反応容器の風袋重量の決定
c)試料(wt.P)および基準物質(wt.R)についての個々の反応容器への水不溶性デンプン約200mgを秤量すること
d)試料(wt.Ptr=wt.P−wt.H2O)および基準物質(wt Rtr=wt.P−wt.H2O)についての重量の乾燥画分の算出。
e)個々の試料およびブランク試料の酵素消化。基準物質は同一方法で処理されるが、酵素溶液の添加はない。
f)e)に記載される処理の後、試料、基準物質、およびブランク試料の反応容器に残存する物質の沈殿、沈降、洗浄、および凍結乾燥
g)f)に記載される処理の後の反応容器を含む、試料(wt.PRG)、基準物質(wt.RRG)、およびブランク試料(wt.BRG)の反応容器に残存する物質の秤量
h)f)のもとに記載される処理の後の試料(wt.Pnv=wt.PRG−wt.RGP)、基準物質(wt.Rnv=wt.RRG−wt.RGR)、およびブランク試料(wt.Bnv=wt.BRG−wt.RGB)の反応容器に残存する物質の重量の算出
i)f)のもとに記載される処理後の試料(wt.H2OPnv)、基準物質(wt.H2ORnv)、およびブランク試料(wt.H2OBnv)の反応容器に残存する物質の水分含有量の決定
j)f)のもとに記載される処理の後の試料(wt.Pnvtr=wt.Pnv−wt.H2OPnv)、基準物質(wt.Rnvtr=wt.Rnv−wt.H2ORnv)、およびブランク試料(wt.Bnvtr=wt.Bnv−H2OBnv)の反応容器に残存する物質の乾燥画分の算出
k)試料(wt.Pnvkorr=wt.Pnvtr−wt.Bnvtr)および基準物質(wt.Rnvkorr=wt.Rnvtr−wt.Bnvtr)についての補正された重量の決定
l)試料(RSaP=wt.Pnvkorr/wt.Ptr×100)の出発量の乾燥重量に相対的な、酵素消化後に残存する水不溶性デンプンの補正された重量の百分率画分の算出、および基準物質(RSaR=wt.Rnvkorr/wt.Rtr×100)の出発量の乾燥重量に相対的な、基準物質の残存する水不溶性デンプンの補正された重量の百分率画分の算出
m)試料(RSaPMW=n×RSaP/n)の酵素消化後に残存する水不溶性デンプンの百分率画分の平均値の決定、および基準物質の残存する水不溶性デンプンの百分率画分の平均値の決定(回収率;RSaRMW=n×RSaR/n)
式中nは、水不溶性デンプンの個々のバッチについて実施される試料アッセイおよび基準物質アッセイの数である。
n)酵素消化後に残存する水不溶性デンプンの百分率画分の平均値の回収率による補正による水不溶性デンプンの個々のバッチの百分率RS含有量の決定(RS=RSaPMW/RSaRMW×100)
【0152】
本発明は、いずれの方法においても制限していない次の実施例によって特に説明される。
【0153】
実施例1:L. mesenteroides由来のデキストランスクラーゼをコード化する成体遺伝子のクローニング
パタチンプロモーターを含有する発現カセット(Wenzler et al., 1989)である、NOSターミネーターへ融合されたSilene pratensis由来のクロロプラストフェレドキシン移行ペプチド(FD)(Smeekens et al., 1985、Pilon et al., 1995)を、pBluescript SK(pBS SK)へクローニングし、pPFを生じた。
【0154】
デキストランスクラーゼをコード化する核酸分子を単離するため、成体DsrS遺伝子をL. mesenteroides NRRL B-512 F(国際公開公報第89/12386号)由来のゲノムDNAから、Smal制限部位を含有するフォワードプライマー
【0155】
【表1】

【0156】
およびNrul制限部位を含有するリバースプライマー
【0157】
【表2】

【0158】
により、PfuターボDNAポリメラーゼ(2.5単位/μL、Stratagene, UK)のプルーフリーディングを使用してPCRにより増幅し、FDおよびNOSターミネーターの間でpPFのSmal/EcoRV制限部位へとクローニングし、pPFDsrSを生じた。pPFDsrSをSacIおよびKpnIで消化し、pBIN20二進法ベクター(Hennegan and Danna, 1998)へと連結し、pBinDsrSを生じた。pBinDsrSを図1に示す。
【0159】
実施例2:ジャガイモ植物のトランスフォーメーション
電気穿孔法を使用して、pBinDsrSをAgrobacterium tumefaciens系LBA4404へとトランスフォーメーションした。2つの四倍体栽培品種(すなわち、Kardal(KD)およびアミロースを含まない(amf)突然変異体)を、アグロバクテリウムにより仲介されるトランスフォーメーションに使用した。カナマイシン(100mg/mL)を含有するMS30培地(Murashige and Skoog, 1962)入りのプレート上でトランスフォーマントを選択した。30個の遺伝子導入の根形成苗条を繁殖し、塊茎の発達のために温室へ移動した。成体塊茎を18週間後に収穫した。
【0160】
実施例3:塊茎ジュースおよびゼラチン化デンプンにおけるデンプン単離およびデキストランの免疫学的検出
ジャガイモ塊茎の皮をむき、Sanamatローター(Spangenberg, The Netherlands)中で均質化した。結果として生じるホモジネートを4℃で一晩据え置き、可溶性デキストランポリマーの特徴づけのために、ジャガイモジュースを別の容器に移し、−20℃で保存した。デンプンペレットを水で3回洗浄し、最終的に室温で少なくとも3日間空気乾燥した。乾燥したデンプンを粉末にし、室温で保存した。
【0161】
モノクローナルα−(1,6)デキストラン抗体(4.3F1(溝型)および16.4.12E(空洞型))を使用することによって、Matsuda and Kabat(1989)によって記載されるような酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によってデキストランの存在を研究した(Wang et al., 2002)。
【0162】
ELISA分析は、Kardal系またはアミロースを含まない突然変異体から得られる両者の遺伝子導入ジャガイモ系においてデキストランポリマーを検出した後、野生型Kardal系においてもアミロースを含まない非遺伝子導入型の突然変異体においてもデキストランを検出しなかったをことを示す。
【0163】
実施例4:デンプン顆粒形態、植物形態、塊茎数および収量に及ぼすデキストラン発現の影響
デンプン顆粒形態の分析を、Sonyカラービデオカメラ(CCD-Iris/RGB)および走査電子顕微鏡(SEM、JEOL 6300F, Japan)を装備した光学顕微鏡(LM)(Axiophot, Germany)により実施した。LMについて、可視化前に、顆粒を2×の希釈したLugol溶液で染色した。
【0164】
野生型からのデンプン顆粒単離物と比較して三重で選択されたトランスフォーマントあたりの100個のデンプン顆粒の集団を分析することによって、デキストラン発現の影響を評価した。
【0165】
両技術は、デキストランを発現する遺伝子導入系から単離されたデンプンについての改変されたデンプン顆粒形態を示す。これらのトランスフォーマントの顆粒は、不規則な表面、および野生型の系から単離されたデンプン顆粒と比較して、丸まった突起のある構造を呈した。
【0166】
図2は、野生型Kardal植物のデンプン(Kardal)と比較して、選択されたトランスフォーマントのデンプン(dsrS30)に関して実施される走査電子顕微鏡分析によって観察される改変されたデンプン顆粒形態を示す。
【0167】
もう一方で、デキストランを発現する植物の形態は、KD野生型植物と比較して表現型の変化を示さなかった。さらに、デキストランポリマーの発現と塊茎数および収量の変化との間に相関はなかった。
【0168】
実施例5:デンプンの消化性に及ぼすデキストラン発現の影響
一般的な方法に詳述される方法(方法4)を使用して、デンプンの消化性を決定した。決定は、国際公開公報第00 02926号におけるRS含有量の決定に関する情報と対応して改変される抵抗性デンプンIII型の決定についてのEnglystの方法(European Journal of Clinical Nutrition (1992) 46 (suppl.2), p.33-50)に基づいた。
【0169】
次の表は、野生型Kardal植物のデンプン(Kardal)と比較して、選択されたトランスフォーマントから抽出される試料についての消化したデンプン(DsrS30)の百分率における有意な増大を示す。
【0170】
【表3】

【0171】
実施例6:デンプンの粘性に及ぼすデキストラン発現の影響
トランスフォーマント(DsrS30)および野生型Kardal植物(Kardal)から得られたデンプン懸濁液からの粘性測定特性を、Thermo Haakeレオスコープによって、一般的な方法に記載される方法(方法2)を使用して選択した。
【0172】
次の表は、野生型Kardal植物のデンプン(Kardal)と比較して、選択されたトランスフォーマントから抽出される試料(DsrS30)についての最終的な粘性における有意な低下を示す。
【0173】
【表4】

【0174】
【表5】











【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】プラスミドpBinDsrSのマップ。
【図2】野生型Kardal植物(Kardal)のデンプンと比較して、選択されたトランスフォーマント(DsrS30)のデンプンに関して実施した走査電子顕微鏡分析によって観察される、改変されたデンプン顆粒の形態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝学的に改変された植物細胞のプラスチドにおいてデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質の酵素活性を有することを特徴とし、上記遺伝学的に改変された植物細胞が、対応する非遺伝的に改変された野生型植物細胞によって合成されるデンプンと比較して改変されたデンプンを合成する、前記遺伝学的に改変された植物細胞。
【請求項2】
前記遺伝学的に改変された植物細胞が、対応する非遺伝的に改変された野生型植物細胞によって合成されるデンプンと比較して、低下した最終粘性及び/又は増大した消化性を有する改変されたデンプンを合成する、請求項1に記載の遺伝学的に改変された植物細胞。
【請求項3】
請求項1または2のうちのいずれか一項に記載の遺伝学的に改変された植物細胞を含む、植物および/またはその子孫。
【請求項4】
デンプン保存植物である、請求項3に記載の植物および/またはその子孫。
【請求項5】
ジャガイモ植物である、請求項4に記載の植物および/またはその子孫。
【請求項6】
請求項1または2のうちのいずれか一項に記載の植物細胞を含む、請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の植物の繁殖材料。
【請求項7】
請求項1または2のうちのいずれか一項に記載の植物細胞を含む、請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の植物の収穫可能な部分。
【請求項8】
a)植物細胞が、デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子を含む核酸分子でトランスフォーメーションされ、b)植物が、工程a)において得られた植物細胞から再生され、およびc)必要な場合、更なる植物が、工程b)において得られる植物から産生される、請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の遺伝学的に改変された植物の製造のための方法。
【請求項9】
工程a)における前記デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸が、色素体シグナル配列をコード化する核酸分子と翻訳的に融合される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子が、前記植物のプラスチドゲノム内に組込まれた、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
デキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子が、
a)配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコード化する核酸分子、
b)タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する、前記タンパク質をコード化する核酸分子、
c)配列番号3のもとで示されるヌクレオチド配列またはその相補的な配列を含む核酸分子、
d)核酸分子の核酸配列が、a)またはc)のもので記載される核酸配列と少なくとも70%の同一性を有する、核酸分子、
e)核酸分子のヌクレオチド配列が、遺伝子コードの縮退により、a)、b)、c)、またはd)のもとで同定される核酸分子の配列から逸脱する、核酸分子、および
f)a)、b)、c)、d)、またはe)のもとで同定される核酸分子の断片、アレル変異体、および/または誘導体を表す核酸分子からなる群から選択される、請求項8〜10のうちのいずれか一項に記載の方法、または請求項1または2のうちのいずれかに記載の植物細胞、または請求項3〜5のうちのいずれかに記載の植物。
【請求項12】
請求項1〜2のうちのいずれか一項に記載の植物細胞から、請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の植物から、請求項7に記載の植物の収穫可能な部分から、または請求項8〜11のうちのいずれか一項の方法によって得られ得る植物から、デンプンを抽出する工程を含む、改変されたデンプンの製造のための方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって得られ得る改変されたデンプン。
【請求項14】
請求項13に記載の改変されたデンプンが派生する、派生したデンプンの製造のための方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法によって得られ得る、派生したデンプン。
【請求項16】
改変されたデンプンの製造のための、請求項1または2のうちのいずれか一項に記載の植物細胞の使用、請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の植物、請求項7に記載の植物の収穫可能な部分、または請求項8〜11のうちのいずれか一項の方法によって得られ得る植物。
【請求項17】
請求項1または2のうちのいずれか一項に記載の遺伝学的に改変された植物細胞、請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の遺伝学的に改変された植物、請求項6に記載の繁殖材料、または請求項7に記載の植物の収穫可能な部分の製造のためのデキストランスクラーゼDSR−Sタンパク質をコード化する核酸分子の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−523790(P2008−523790A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545986(P2007−545986)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013954
【国際公開番号】WO2006/063862
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】