説明

デジタルカメラおよび画像処理プログラム

【課題】 本発明は、近距離撮影などにおいて、撮影画像に対する不要な影の影響を良好に軽減することの可能なデジタルカメラおよび画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のデジタルカメラ(11〜25)は、検出手段(19)と、撮影手段(19)を備える。検出手段は、被写界に生じた不要な影の領域の有無を被写界のモニタ画像を基に検出する。そして、撮影手段は、検出手段が不要な影を検出したときには撮影時にストロボ光を強制的に発光させる。あるいは、本発明のデジタルカメラ(11〜25)は、検出手段(19)と、調整手段(19)を備える。検出手段は、撮影画像に写り込んだ不要な影の領域である影領域を検出する。そして、調整手段は、検出手段が影領域を検出したときには影領域の輝度を非影領域の輝度に近づける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラおよび画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マクロ撮影などの近距離撮影では、被写体とカメラの距離が近くなるために光源からの光束の一部が撮影者やカメラによって遮られやすく、その結果、撮影画像には撮影者やカメラなどの影(以下、単に、「不要な影」という。)が写り込みやすい。このような影は、撮影者の意図しない不要なものである。この不要な影を除去するための従来技術として、例えば、特許文献1には、VTR一体型カメラにおいて、マクロ撮影モードで撮影するときに、レンズの周辺あるいは近傍に設けた小型の接写用ライトを点灯させる技術が開示されている。また、特許文献2には、被写体全体が著しく暗い場合などに、適正な明るさとなるように被写体全体の階調を補正する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−98218号公報
【特許文献2】特開2005−209012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、マクロ撮影モードで撮影するときには、常に接写用ライトを点灯させるため、バッテリーの消耗が早くカメラの実用性が低下していた。また、特許文献2の技術では、不要な影が重なっているのが被写体の一部のみである場合には、それを除去することができなかった。
【0004】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためのものである。本発明の目的は、近距離撮影などにおいて、撮影画像に対する不要な影の影響を良好に軽減することの可能なデジタルカメラおよび画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明のデジタルカメラは、検出手段と、撮影手段を備える。検出手段は、被写界に生じた不要な影の領域の有無を被写界のモニタ画像を基に検出する。そして、撮影手段は、検出手段が不要な影を検出したときには撮影時にストロボ光を強制的に発光させる。
【0006】
第2の発明のデジタルカメラは、検出手段と、調整手段を備える。検出手段は、撮影画像に写り込んだ不要な影の領域である影領域を検出する。そして、調整手段は、検出手段が影領域を検出したときには影領域の輝度を非影領域の輝度に近づける。
【0007】
第3の発明は、第1または第2の発明において、検出手段が、モニタ画像または撮影画像上の空間的な輝度変化の傾きに基づき不要な影の領域を検出する。
【0008】
第4の発明の画像処理プログラムは、撮影画像に写り込んだ不要な影の領域である影領域を検出する検出手順と、検出手順により影領域が検出されたときには影領域の輝度を非影領域の輝度に近づける調整手順とをコンピュータに実行させる。
【0009】
第5の発明は、第4の発明において、検出手順では、モニタ画像または撮影画像上の空間的な輝度変化の傾きに基づき不要な影の領域を検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、被写界のモニタ画像を基に被写界に生じた不要な影を検出した場合に、強制的にストロボ光を発光させて撮影を行う。あるいは、本発明では、撮影画像に写り込んだ不要な影を検出した場合に、その影を輝度調整により軽減する。
【0011】
したがって、本発明を利用すれば、近距離撮影などにおいて、撮影画像に対する不要な影の影響を良好に軽減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態のデジタルカメラについて説明する。
【0013】
図1は、本発明の撮像装置を適用したデジタルカメラのブロック図である。
【0014】
デジタルカメラは、撮像レンズ11およびレンズ駆動部12と、撮像素子13と、アナログ信号処理部14と、タイミングジェネレータ(TG)15と、バッファメモリ16と、画像処理部17と、圧縮/復号部18と、制御部19と、モニタ20と、ROM21と、記録媒体22と、発光部23と、操作部24と、バス25とを有している。ここで、バッファメモリ16、画像処理部17、圧縮/復号部18、制御部19、モニタ20、ROM21、記録媒体22は、バス25を介して接続されている。また、レンズ駆動部12、アナログ信号処理部14、TG15、発光部23、操作部24は、それぞれ制御部19に接続されている。
【0015】
撮像レンズ11は、フォーカスレンズやズームレンズを含む複数のレンズ群で構成されている。なお、簡単のため、図1では撮像レンズ11を1枚のレンズとして図示している。
【0016】
レンズ駆動部12は、制御部19の指示に応じてレンズ駆動信号を発生し、撮像レンズ11を光軸方向に移動させてフォーカス調整やズーム調整を行うと共に、撮像レンズ11を通過した光束による被写体像を撮像素子13の受光面に形成する。
【0017】
撮像素子13は、CCD型やCMOS型のエリアイメージセンサであり、撮像レンズ11の像空間側に配置されている。撮像素子13は、受光面に形成された被写体像を光電変換してアナログ画像信号を生成する。この撮像素子13の出力はアナログ信号処理部14に接続されている。
【0018】
アナログ信号処理部14は、制御部19の指示に応じて、撮像素子13から出力されたアナログ画像信号に対し、CDS(相関二重サンプリング)、ゲイン調整、A/D変換などのアナログ信号処理を施すと共に、処理後の画像信号を出力する。また、アナログ信号処理部14は、制御部19の指示に基づいてゲイン調整の調整量を設定し、それによってISO感度に相当する撮影感度の調整を行う。なお、アナログ信号処理部14の出力はバッファメモリ16に接続されている。
【0019】
TG15は、制御部19の指示に基づき撮像素子13およびアナログ信号処理部14に対してタイミングパルスを供給する。撮像素子13およびアナログ信号処理部14の駆動タイミングはそのタイミングパルスによって制御される。
【0020】
バッファメモリ16は、アナログ信号処理部14から出力される画像信号を画像データとして一時的に記憶する。また、バッファメモリ16は、制御部19による処理の過程で作成された画像データを一時的に記憶する。
【0021】
画像処理部17は、制御部19の指示に応じて、バッファメモリ16の画像データに対し、ホワイトバランス調整、色分離(補間)、輪郭強調、ガンマ補正などの画像処理を施す。なお、画像処理部17は、ASICなどとして構成される。
【0022】
圧縮/復号部18は、制御部19の指示に応じて、画像データに圧縮処理を施す。なお、圧縮処理は、JPEG(Joint Photographic Experts Group)形式などによって行われる。
【0023】
モニタ20は、デジタルカメラ筐体の背面などに設けられたLCDモニタや、接眼部を備えた電子ファインダなどである。モニタ20は、制御部19の指示に応じて、撮影画像やGUI画面などを表示する。
【0024】
ROM21は、制御部19が実行するデジタルカメラの各種プログラム、又それらのプログラムの実行に必要な各種データなどを記憶する。
【0025】
記録媒体22には、制御部19によって、圧縮処理後の画像データが記録される。なお、記録媒体22は、半導体メモリを内蔵したメモリカードや、小型のハードディスクなどである。
【0026】
発光部23は、制御部19の指示に基づき、デジタルカメラ筐体に設けられたエレクトロニックフラッシュ等を駆動して、被写体を照明するためのストロボ光を被写界に向けて発光する。
【0027】
操作部24は、レリーズ釦、モード設定釦などの操作部材を含み、撮影者等による部材操作の内容に応じた操作信号を制御部19に送る。
【0028】
制御部19は、操作部24から送られた操作信号に応じてデジタルカメラの各部を統括制御する。例えば、デジタルカメラが撮影モードに設定されると、制御部19は、レンズ駆動部12およびTG15を駆動させてスルー画像の撮影(スルー画撮影)を開始する。このとき、撮像素子13はドラフトモードで駆動され、スルー画像の画像データがアナログ信号処理部14を介してバッファメモリ16へ順次記録される。制御部19は、そのスルー画像の画像データを基に、撮像レンズ11の焦点調節制御(AF)、またアナログ信号処理部14のゲイン調整等の露出制御などを行う。また、制御部19は、モニタ20を駆動させ、バッファメモリ16に記録されたスルー画像を順次LCDモニタ等に表示させる(ライブビュー表示)。なお、スルー画像とは、撮像素子(第1実施形態のデジタルカメラにおいては撮像素子13)の特定の使い方によって得られる画像である。スルー画像は、QVGA(320×240ピクセル)〜VGA(640×480ピクセル)サイズであり撮影時に取得される画像に比べて解像度が低いが、撮像素子からの読み出しが15〜30フレーム/秒(fps)程度と短時間で行えるので、撮影画面の情報を略リアルタイムに取得するのに適している。
【0029】
撮影モードで動作中にレリーズ釦が全押しされると、制御部19は、測光等により決定した撮影条件の下でレンズ駆動部12およびTG15(撮影条件によっては更に発光部23も)を駆動させて撮影を行う。このとき、撮像素子13はフレームモードで駆動され、撮影された本撮影画像の画像データがアナログ信号処理部14を介してバッファメモリ16へ記録される。制御部19は、画像処理部17および圧縮/復号部18を駆動させて、バッファメモリ16に記録された本撮影画像の画像データに対し画像処理および圧縮処理を施すと共に、それら処理後の画像データを記録媒体22へ記録する。
【0030】
以下、第1実施形態のデジタルカメラが撮影画像に不要な影が写り込むのを防止する動作を、図2の流れ図を参照して説明する。図2は、デジタルカメラが撮影モードで動作中に、撮影者等がマクロ撮影などの近距離撮影をするに当たり「影防止機能」を有効にした場合に実行されるフローである。
【0031】
ステップ101:制御部19は、バッファメモリ16に記録されたスルー画像を基に、撮影画面に写り込んだ不要な影を検出する処理を行う。
【0032】
ここで、画像から不要な影の領域を検出する手法の一例を以下に説明する。
【0033】
図3は、室内において、電灯の下、机上に置いた美術館のイベント入場券をその上方からマクロ撮影した場合に撮影される画像のイメージである。画像の右側部分には、不要な影(撮影者本人の影)が入場券の一部に重なるように写り込んでいる。
【0034】
不要な影が写り込んだ図3のような画像は、不要な影の存在する領域(影領域)とそれ以外の領域(非影領域)とで輝度に変化が生じる。この輝度の変化の一例を示したのが図4のグラフである。このグラフは、画像の横方向の或るライン(例えば、図3の画像上に示したラインh)の位置に存在する各画素の輝度値を並び順に示している。グラフを見ると、横軸の1400pixel付近から1600pixel付近にかけての画素は、輝度値が一定の傾きをもって段々と低下している。このような輝度値が一定の傾きをもって変化する画素列は、影領域の縁となる部分に存在する。例えば、図3のラインhの位置では、撮影者の影が、丁度、入場券に重なりはじめた部分に存在する。この影領域の縁となる部分は、影領域を非影領域と区別するための境界を示す部分である。つまり、画像の横方向に連なる画素を1ライン毎に調べて、各ラインに存在する画素のうち、所定の画素数以上連続し、かつ所定範囲内の傾きをもって輝度値が変化する部分を検出すれば、影領域と非影領域との縦方向の境界を検出することができる。また、同様に、画像の縦方向に連なる画素についても調べるようにすれば、それらの領域の横方向の境界を検出することができるので、結果として、撮影画面に写り込んだ影領域を検出することができる。但し、輝度変化の傾きを調べる際には、隣接する画素間に生じたノイズによる輝度値のばらつきを無視することが望ましい。よって、その傾きを調べる前に、ローパス効果のある空間フィルタ処理を画像に施すことが望ましい。
【0035】
制御部19は、上述の手法に基づきバッファメモリ16のスルー画像から影領域を検出して、その検出結果を内部メモリ(不図示)等に記録する。ここで、記録される情報は、例えば、影領域の範囲を示す座標情報である。但し、本実施形態では、影領域の検出の有無を示す情報のみであってもかまわない。
【0036】
ステップ102:制御部19は、撮影者等によりレリーズ釦が全押しされたか否かを判定する。レリーズ釦が全押しされた場合には、制御部19はステップ103へ移行する。一方、全押しされていない場合には、制御部19はステップ107へ移行する。
【0037】
ステップ103:制御部19は、内部メモリ(不図示)等に記録された検出結果を参照して影領域が検出されたか否かを判定する。検出された場合には、制御部19はステップ104へ移行する。一方、検出されなかった場合には、制御部19はステップ105へ移行する。
【0038】
ステップ104:制御部19は、撮影画面への不要な影の写り込みを防ぐために発光部22を駆動させ、強制的にストロボ光を発光させて本撮影を実施する。本撮影が終わると、制御部19はステップ106へ移行する。
【0039】
ステップ105:制御部19は、撮影画面には不要な影が写り込んでいないので、自動露出などにより決定した撮影条件の下で通常どおり本撮影を実施する。
【0040】
ステップ106:制御部19は、上記の本撮影により撮影された本撮影画像を記録媒体22へ記録する。
【0041】
ステップ107:制御部19は、撮影者等により「影防止機能」が無効にされたか否かを判定する。無効にされた場合には、制御部19は本フローの処理を終了する。一方、無効にされていない(「影防止機能」が有効である)場合には、制御部19は本フローの処理を繰り返すためにステップ101へ移行する。
【0042】
(第1実施形態の作用効果)
以上、第1実施形態のデジタルカメラでは、マクロ撮影などの近距離撮影において、被写界のモニタ画像であるスルー画像に写り込んだ不要な影の検出が行われる。そして、不要な影が検出された場合には強制的にストロボ光を発光させて本撮影が行われる。この場合、本撮影画像に不要な影が発生するのを防ぐことができる。また、ストロボ光は、不要な影が検出され、かつ本撮影が実施されるときにのみ発光されるのでバッテリーの消耗が抑えられる。
【0043】
したがって、近距離撮影において、撮影画面に不要な影が写り込むのを効率的に防止することが可能となる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のデジタルカメラについて説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と共通するデジタルカメラの構成要素については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0045】
第1実施形態のデジタルカメラでは、ストロボ光を強制的に発光させてることで本撮影画像に不要な影が写り込むことを防止したが、第2実施形態のデジタルカメラでは、本撮影画像に不要な影が写り込むことを防止するかわりに、本撮影画像に写り込んだ不要な影を撮影後に除去する。この不要な影を除去する動作を、図5の流れ図を参照して説明する。なお、図5のフローは、撮影者等がマクロ撮影などの近距離撮影をするに当たりデジタルカメラの「影除去機能」を有効にした場合に実行される。
【0046】
ステップ201:制御部19は、撮影者等によりレリーズ釦が全押しされたか否かを判定する。レリーズ釦が全押しされた場合には、制御部19はステップ202へ移行する。一方、全押しされていない場合には、制御部19はステップ213へ移行する。
【0047】
ステップ202:制御部19は、自動露出などにより決定した撮影条件の下で本撮影を実施する。
【0048】
ステップ203:制御部19は、バッファメモリ16に記録された本撮影画像から影領域を検出して、その検出結果を内部メモリ(不図示)等に記録する。ここでは、影領域の範囲を示す座標情報が記録されるものとする。なお、影領域の検出は、第1実施形態で説明した検出手法などにより行うことができる。
【0049】
ステップ204:制御部19は、内部メモリ(不図示)等に記録された検出結果を参照して影領域が検出されたか否かを判定する。検出された場合には、制御部19はステップ205へ移行する。一方、検出されなかった場合には、制御部19はステップ210へ移行する。
【0050】
ステップ205:制御部19は、バッファメモリ16の本撮影画像から被写体の領域(被写体領域)を検出する。なお、被写体領域の検出は、例えば、特開2006−155096号公報で開示されている「データベースに格納された被写体の特徴を示す情報に基づき画像から被写体領域を検出する」などの従来技術を用いて行うことができる。
【0051】
ステップ206:制御部19は、検出した被写体領域と影領域との座標位置等を比較することなどにより、それらの領域間に重なりが有るか否かを判定する。領域間に一部でも重なりが有る場合(図6(1),(2),(3))には、制御部19はステップ207へ移行する。一方、重なりが無い場合(図6(4))には、制御部19はステップ208へ移行する。
【0052】
ステップ207:制御部19は、被写体領域に重なった不要な影を除去するため以下の処理を行う。制御部19は、被写体領域と影領域との重複領域について、そこに含まれる画素の輝度レベルを1画素毎に増幅する。具体的には、バッファメモリ16の本撮影画像の被写体領域と非影領域との重複領域に含まれる画素の中から補正対象の画素と最も色相が相似した画素(補正基準画素)を選択し、その補正基準画素と輝度レベルが同程度となるように補正対象画素の輝度レベルを増幅する。このようにして、画像中の被写体領域に重なった不要な影(図6の(a)部分)は除去される。ちなみに、被写体領域の全体に不要な影が重なっている場合(図6(3))には、非被写体領域と非影領域との重複領域に含まれる画素の中から補正対象の画素と最も色相が相似した画素を選択するとよい。なお、このステップ207の処理によると、影領域に含まれる画素のうち非影領域との境界付近に存在する画素については、画素の位置が非影領域との境界から遠ざかるごとに輝度レベルの増幅率が段々と大きくなる。
【0053】
ステップ208:制御部19は、非被写体領域と影領域との座標位置等を比較することなどにより、それらの領域間に重なりが有るか否かを判定する。重なりが有る場合(図6(2),(3),(4))には、制御部19はステップ209へ移行する。一方、重なりが無い場合(図6(1))には、制御部19はステップ210へ移行する。
【0054】
ステップ209:制御部19は、非被写体領域に重なった不要な影を除去するため以下の処理を行う。制御部19は、非被写体領域と影領域との重複領域について、そこに含まれる画素の輝度レベルを1画素毎に増幅する。具体的には、バッファメモリ16の本撮影画像の非被写体領域と非影領域との重複領域に含まれる画素の中から補正対象の画素と最も色相が相似した画素(補正基準画素)を選択し、その補正基準画素と輝度レベルが同程度となるように補正対象画素の輝度レベルを増幅する。このようにして、画像中の非被写体領域に重なった不要な影(図6の(b)部分)は除去される。なお、このステップ209の処理によると、影領域に含まれる画素のうち非影領域との境界付近に存在する画素については、画素の位置が非影領域との境界から遠ざかるごとに輝度レベルの増幅率が段々と大きくなる。
【0055】
ステップ210:制御部19は、モニタ20を駆動させて、バッファメモリ16の本撮影画像をLCDモニタ等に表示させる。なお、上記ステップ204で影領域が検出された場合、ここでは不要な影が除去された画像がLCDモニタ等に表示されるので、撮影者等はその表示により影除去後の画像の出来映えを確認することができる。
【0056】
ステップ211:制御部19は、本撮影画像を記録媒体22へ記録するか否かを撮影者等に指示させるためのGUI画面を、モニタ20を駆動させてLCDモニタ等に表示させる。このとき、GUI画面は、上記ステップ210で表示された画像上に重畳表示される。そして、撮影者等の指示を操作部24からの操作信号として受けると、制御部19は、その指示に応じて処理を分岐する。指示が「記録する」であった場合には、制御部19はステップ212へ移行する。一方、「記録しない」であった場合には、制御部19はステップ213へ移行する。
【0057】
ステップ212:制御部19は、本撮影画像を記録媒体22へ記録する。
【0058】
ステップ213:制御部19は、撮影者等により「影除去機能」が無効にされたか否かを判定する。無効にされた場合には、制御部19は本フローの処理を終了する。一方、無効にされていない(「影除去機能」が有効である)場合には、制御部19は本フローの処理を繰り返すためにステップ201へ移行する。
【0059】
(第2実施形態の作用効果)
以上、第2実施形態のデジタルカメラでは、マクロ撮影などの近距離撮影により撮影された本撮影画像を基に画像に写り込んだ不要な影の検出が行われる。そして、不要な影が検出された場合には、本撮影画像から抽出された被写体領域の一部にでも不要な影が重なっているようであれば、その被写体領域の影が除去される。また、非被写体領域に影が重なっている場合には、その非被写体領域の影が除去される。この場合、不要な影は、被写体および非被写体にどのような形で重なっていても、本撮影画像から確実に除去される。
【0060】
したがって、近距離撮影などにおいて、撮影画像に写り込んだ不要な影を確実に除去することが可能となる。
【0061】
(その他)
なお、第1実施形態では、ステップ101でスルー画像から不要な影を検出する処理を行った後に、影の検出状態をLCDモニタ等に表示するようにしてもよい(不要な影が検出された場合の表示の例を図7に示す)。
【0062】
また、第1実施形態では、ステップ106で本撮影画像の記録を行う前に、第2実施形態のステップ210およびステップ211の処理と同様に、撮影された本撮影画像をLCDモニタ等に表示して撮影者等に画像の出来映えを確認させると共に、本撮影画像の記録を行うか否かを撮影者等に指示させるようにしてもよい。
【0063】
また、第2実施形態では、ステップ204で不要な影が検出された場合に、影の検出状態をLCDモニタ等に表示するようにしてもよい。そして、さらに、その検出状態の表示と併せて不要な影を除去するか否かを撮影者等に指示させるようにしてもよい。なお、そうした場合には、指示用のGUI画面をLCDモニタに表示するなどして撮影者等に指示をさせ、撮影者等が影を除去するように指示した場合はステップ205以降の処理を行い、一方、影を除去しないように指示した場合はステップ210以降またはステップ211以降の処理を行うようにするとよい。
【0064】
また、第2実施形態では、ステップ207の処理後、またはステップ207およびステップ209の処理後の本撮影画像に対して、その影領域に含まれる画素の色や色調を補正するカラー補正処理を施すようにしてもよい。
【0065】
また、第2実施形態では、ステップ211で本撮影画像の記録を行うか否かを撮影者等に指示させるようにしたが、ステップ211の処理自体をスキップして撮影者等の指示によらず自動的に本撮影画像を記録してしまってもかまわない。そうした場合は、本撮影画像を表示させるステップ210の処理もスキップしてかまわない。
【0066】
また、連続して取得される各スルー画像に対して、第2実施形態でのステップ203の影領域検出処理およびステップ204〜ステップ209の影除去処理を実行し、影が検出された場合に影除去後の画像と影除去前のスルー画像とを一緒に並べてLCDモニタ等に表示するようにしてもよい。そうした場合、撮影者等は、そのLCDモニタ等の表示により不要な影の除去具合を略リアルタイムに確認することができる。
【0067】
また、第2実施形態では、影領域に含まれる画素毎にその輝度レベルを増幅して本撮影画像から影を除去したが、影領域の各画素の輝度レベルを一律に増幅するようにしてもよい。そうした場合、ステップ207では、被写体領域に重なった不要な影を除去するため、被写体領域と影領域との重複領域の平均輝度Aと、被写体領域と非影領域との重複領域の平均輝度Bとの比(B/A)を算出し、その比(B/A)の値を増幅率として被写体領域と影領域との重複領域に含まれる各画素の輝度レベルを一律に増幅するとよい。そして、ステップ209では、非被写体領域に重なった不要な影を除去するため、非被写体領域と影領域との重複領域の平均輝度aと、非被写体領域と非影領域との重複領域の平均輝度bとの比(b/a)を算出し、その比(b/a)の値を増幅率として非被写体領域と影領域との重複領域に含まれる各画素の輝度レベルを一律に増幅するとよい。但し、影領域の縁となる部分の画素列については、その輝度値の傾きと大小関係が反対の傾きとなるように増幅率を画素毎に変化させながら各画素の輝度レベルを増幅する必要がある。
【0068】
また、第2実施形態のステップ203〜ステップ212の処理プログラムは、その一部または全部をコンピュータなどの外部処理装置に実行させてもよい。その場合、必要なプログラムがCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体やインターネット等の通信網などを介して外部処理装置へインストールされる。
【0069】
また、第2実施形態では、影除去の機能を撮影モードにおいて発現させたが、画像再生モードにおいて発現させてもよい。なお、画像再生モードにおいて発現させる場合には、影検出および影除去等の処理を再生画像に対して実行する。
【0070】
また、デジタルカメラがマクロ撮影モードに設定されたときに、または撮影距離と連動して、第1実施形態の影防止機能または第2実施形態の影除去機能を自動的に実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明のデジタルカメラのブロック図である。
【図2】第1実施形態のデジタルカメラの動作を示す流れ図である。
【図3】影が写り込んだ画像のイメージ図である。
【図4】影領域と非影領域との輝度変化を示すグラフである。
【図5】第2実施形態のデジタルカメラの動作を示す流れ図である。
【図6】影の重なりかたのパターンを示す図である。
【図7】影の検出状態(不要な影が検出された場合)の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
11…撮像レンズ,12…レンズ駆動部,13…撮像素子,14…アナログ信号処理部,15…タイミングジェネレータ(TG),16…バッファメモリ,17…画像処理部,18…圧縮/復号部,19…制御部,20…モニタ,21…ROM,22…記録媒体,23…発光部,24…操作部,25…バス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写界に生じた不要な影の領域の有無を前記被写界のモニタ画像を基に検出する検出手段と、
前記検出手段が前記影を検出したときには撮影時にストロボ光を強制的に発光させる撮影手段と
を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
前記撮影画像に写り込んだ不要な影の領域である影領域を検出する検出手段と、
前記検出手段が前記影領域を検出したときには前記影領域の輝度を非影領域の輝度に近づける調整手段と
を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のデジタルカメラにおいて、
前記検出手段は、前記モニタ画像または前記撮影画像上の空間的な輝度変化の傾きに基づき前記影の領域を検出する
ことを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項4】
前記撮影画像に写り込んだ不要な影の領域である影領域を検出する検出手順と、
前記検出手段が前記影領域を検出したときには前記影領域の輝度を非影領域の輝度に近づける調整手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理プログラムにおいて、
前記検出手順では、前記モニタ画像または前記撮影画像上の空間的な輝度変化の傾きに基づき前記影の領域を検出する
ことを特徴とする画像処理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−71674(P2009−71674A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239205(P2007−239205)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】