説明

デジタルカメラおよび画像取扱システム

【課題】 画像ファイルのそれぞれに対して改竄の可否を指定することなく不所望な改竄を防止できるようにする。
【解決手段】 画像真正性検証機能(改竄禁止モード)のON・OFFを予め設定しておくと、カメラは撮影時にその機能のON・OFFを判定し、ONであれば、画像ファイルを構成する付加情報の「画像真正性検証」の項目をONとすることで、改竄禁止の旨の情報を埋め込む。これにより、後に画像ファイルをコンピュータに取り込んだ際、不所望な改竄が行われることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の改竄を禁止することが可能なデジタルカメラおよび画像取扱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オリジナルの原稿画像が勝手に改竄されないようにするシステムが記載されている。これは、原稿画像を記録媒体に記録する際に、個々の画像に対してキーボード等を使って改竄の可否を指定し、換算禁止の指定がなされた画像に対して換算禁止フラグを設定するものである。
【0003】
【特許文献1】特開平8−87587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、個々の画像に対して改竄の適否をいちいち指定する方法は面倒である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被写体を撮像する撮像手段と、該撮像手段の出力に基づいて画像ファイルを作成するファイル作成手段とを有するデジタルカメラに適用され、画像改竄禁止モードを設定/解除するモード設定手段を備え、画像改竄禁止モードが設定されているときに撮像を行うと、撮像によって作成された画像ファイルに改竄を禁止する旨の情報を埋め込むことを特徴とする。
画像ファイルのオリジナル性を証明するための情報を生成して画像ファイルに埋め込むようにしてもよい。
また本発明に係る画像取扱システムは、上述したデジタルカメラと、デジタルカメラにて作成された画像ファイルを入力し、入力した画像ファイルに改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれている場合は、画像ファイルに改竄を施すことなく保存し、改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれていない場合には、条件に応じて画像ファイルに改竄を施してから保存するコンピュータとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像改竄禁止モードを予め設定/解除しておくことで、生成された画像ファイルのそれぞれに対して改竄禁止の有無を入力する手間が省ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図6により本発明の一実施の形態を説明する。
図1は本実施形態における画像取扱システムの構成図である。コンピュータ100は、CPU11、RAM12、ディスクインターフェース13、ディスプレイコントローラ14、CPUバス15、シリアルバス16、シリアルバスコントローラ17などを有する本体部と、シリアルバス16を介して接続されるキーボード21やマウス22等の入力装置と、ディスクインターフェース13を介して接続されるディスク記憶装置(例えば、ハードディスク)31と、表示装置としてのディスプレイ32とから構成される。
【0008】
デジタルカメラ(以下、カメラ)200は、シリアルバス16を介してコンピュータ100に接続される。コンピュータ100のCPU11は、ディスク記憶装置31に保存されているカメラ制御用ソフトウェアに従い、カメラ200を制御する。具体的には、ユーザがキーボード21やマウス22で入力した指示に基づき、カメラ200に撮影指示を送信したり、カメラ200から送られてくる画像ファイルに必要に応じて処理を施し、記憶装置31に記憶したりする。
【0009】
図2はカメラ200の制御系を示すブロック図である。カメラCPU51には、撮像部52、画像記録部53、表示部54、操作部55、姿勢センサ56などが接続される。撮像部52は、撮影レンズ(不図示)の透過光束を受光して光電変換する撮像素子や、撮像素子の光電変換出力に種々の処理を施して画像データを生成する画像処理回路などを含む。生成された画像データは、コンピュータ100で扱うことが可能な画像ファイルとして、画像記録部53を介して記録媒体57に記録される。
【0010】
表示部54は、画像やメニュー画面等が表示可能な液晶モニタ等の表示装置と、その駆動回路から構成される。操作部55は、レリーズボタンを始めとする種々の操作部材およびそれらの操作に連動するスイッチ類を含む。姿勢センサ56は、カメラ200の姿勢を検出するもので、少なくともカメラ200が横姿勢か、右上の縦姿勢か、左上の縦姿勢かの3姿勢を検出できるものとする。
【0011】
図3はカメラ200にて生成される画像ファイルの構造を示している。画像ファイルは、画像データと改竄検出用データとから構成され、画像データは、画像そのものを構成する画像本体データと、画像に対する付加情報(ヘッダー部)とから成る。付加情報としてよく知られているExif情報は、当該画像の撮影日時、撮影場所、撮影条件、その他の種々の情報を含み、これは標準規格であるExif規格に則った画像ファイルには必ず付加される。
【0012】
改竄検出用データは、画像のオリジナル性を証明するためのデータであり、これは画像データのハッシュ値にデジタル署名を付加したデータとされる。ハッシュ値は、公知のように入力データからハッシュ関数による処理を施して得られる要約値である。ハッシュ関数のアルゴリズムは複数知られているが、カメラ200はそのいずれかを有し、上記画像データを入力データとしてハッシュ値を生成することができる。
【0013】
同一のハッシュ値を持つ2つの異なる入力データを作成することは計算量的に困難であるため、実用上はハッシュ値が同一であれば入力データも同一と考えてよい。一方、入力データの一部でも変更されるとハッシュ値は異なる値となるので、ハッシュ値の比較によって画像データ改竄の有無を検知できる。すなわち、検証したい画像ファイルから得たハッシュ値と、上記付加されたデジタル署名付きのハッシュ値とを比較し、両者が一致すれば改竄なし(オリジナル性あり)、一致しなければ、画像本体データおよび付加情報のいずれか、または双方が改竄されたと判断できる。
【0014】
画像データの改竄の例を説明する。上述したようにカメラ200は姿勢センサ56を有し、撮影時に検出された姿勢情報は、画像ファイル毎に付加情報の一部として記録される。画像をカメラ200からコンピュータ100に転送する際、上記カメラ制御用ソフトウェアは、付加情報中の姿勢情報を読み取ってそれに応じた回転処理を画像データに施す。これによれば、ユーザが意識しなくても常に画像が適正な回転角(撮影時と天地方向が一致する状態)で画像を表示することができ、便利である。しかしながら、画像データに回転処理を施すことは画像データ、正確には画像本体データの改竄に当たり、回転処理後に保存した画像ファイルはもはやオリジナルの画像ファイルとは言えない。
【0015】
また、カメラ制御用ソフトウェアには、付加情報を編集(テキストデータの追加、書き換え、削除)する機能を持つものがある。この付加情報の編集も改竄にあたり、編集後に保存した画像ファイルはオリジナルの画像ファイルとは言えない。そして、オリジナル性を証明できない画像ファイルは、例えば証拠写真のようなオリジナル性が要求される用途で用いることはできない。
【0016】
このように、カメラ制御用ソフトウェアで画像ファイルを取り込む際、そのソフトウェアの設定状況によっては、ユーザの意図しない所で不所望に画像ファイルの改竄がなされてしまうことがあり得る。
【0017】
かかる不都合を防止するため、本実施形態では、カメラ200に画像ファイルの改竄禁止モードを持たせた。このモードは、「画像真正性検証機能」として提供され、ユーザはカメラ200のメニュー設定においてこの機能を設定/解除できる。図4はその機能設定画面の一例を示し、この機能を有効にするには「画像真正性検証機能」の項目をONとし、無効にするにはOFFとする。この設定は、ユーザが変更しない限りカメラの電源をオフしても保持される。あるいは、カメラの電源ONのたびにONかOFFのいずれかにリセットされるようにしてもよい。
【0018】
なお、図4における「縦横位置情報の記録」は、上述したカメラの姿勢情報を付加情報として記録するか否かを設定するもので、ONで「記録」、OFFで「記録なし」となる。
【0019】
図5はカメラ200の撮影時の動作手順を示すフローチャートである。
操作部55を構成するレリーズボタンが操作されると、カメラCPU51によってこのプログラムが起動され、まずステップS1で撮像を行い、画像本体データを得る。ステップS2では、「縦横位置情報の記録」のON・OFFを判定し、OFFであればステップS4に進み、ONであればステップS3で姿勢センサ56から姿勢情報を取得し、ステップS4に進む。
【0020】
ステップS4では、「画像真正性検証機能」のON・OFFを判定し、ONであれば、ステップS5で画像データを作成する。画像データは、図3で説明したように画像本体データと付加情報とを組み合わせたもので、ここでは画像データの改竄を禁止すべく、付加情報に含まれる「画像真正性検証」の項目をONとする。一方、ステップS4で画像真正性検証機能がOFFと判定された場合は、ステップS6で画像データを作成するが、ここでは画像データの改竄を許可すべく「画像真正性検証」の項目をOFFとする。なお、いずれのケースでも、「縦横位置情報の記録」がONであれば付加情報に姿勢情報を記録し、OFFであれば姿勢情報は記録しない。
【0021】
ステップS7では、ハッシュ関数のアルゴリズムを用い、ステップS5またはS6で作成した画像データのハッシュ値を生成する。ステップS8では、生成したハッシュ値にデジタル署名を付加し、そのデジタル署名付きハッシュ値(上記改竄検出用データに相当)を先の画像データと組み合わせて画像ファイルを作成する。なお、デジタル署名は、ユーザが予め入力した署名情報に基づいて自動的に付加されるようになっている。ステップS9では、作成した画像ファイルを記録媒体57に記録し、処理を終了する。
【0022】
以上のように、「画像真正性検証機能」の設定をONにしておけば、撮影に伴って自動的に改竄禁止を示す情報が画像ファイルに埋め込まれるので、撮影した個々の画像データに対して改竄の可否を指定する必要はない。
【0023】
カメラ200で生成・記録された画像ファイルをコンピュータ100に転送するには、コンピュータ100に組み込まれたカメラ制御用ソフトウェアを用いる。図6にその制御手順を示す。
【0024】
図6において、まずステップS51でカメラ200から画像ファイルを読み込み、ステップS52で付加情報を解析する。ステップS53では、付加情報の「画像真正性検証機能」の項目がONか否かを判定し、ONであれば、ステップS60に飛んで当該画像ファイルをそのまま記憶装置31に保存する。すなわち、画像ファイルに改竄禁止を示す情報が埋め込まれている場合は、カメラ姿勢情報の有無に拘わらず以下に示す画像回転処理や付加情報の編集を禁止し、画像ファイルをオリジナルのまま保存する。図7はこのケースの一例を示している。
【0025】
一方、「画像真正性検証機能」の項目がOFFであれば、ステップS54で画像回転処理を施すか否かを判定する。付加情報にカメラの姿勢情報が記録されていない場合、あるいは「横姿勢」の情報が記録されている場合は、ステップS54が否定され、ステップS58に進む。付加情報に「縦姿勢」が記録されていた場合は、ステップS54が肯定され、ステップS55でいずれの方向に回転させるかを判定する。上述したように縦姿勢は2種類あり、それに応じて回転方向が決まる。時計回りと判定された場合は、ステップS56で画像本体データに90度時計回りの回転処理を施し、反時計回りと判定された場合は、ステップS57で画像本体データに90度反時計回りの回転処理を施す。
【0026】
ステップS58では、付加情報を編集するか否かを判定する。ユーザがキーボード21等で付加情報(テキストデータ)の入力や削除を行うと、その編集内容がステップS59で付加情報に反映される。その後、ステップS60で画像ファイルを記憶装置31に保存する。図8は画像本体データの回転と付加情報の編集(コメントの入力)を行ってから画像ファイルを保存する例を示している。
【0027】
ステップS61では、転送すべき画像ファイルがまだあるか否かを判定し、あればステップS51に戻り、なければ処理を終了させる。
【0028】
なお、カメラ制御用ソフトウェアには、ユーザの指示に従って画像ファイルにカラープロファイルを埋め込み可能なものがある。このカラープロファイルの埋め込みも画像ファイルの改竄に相当するので、画像ファイルに改竄禁止を示す情報が埋め込まれている場合は禁止する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施形態における画像取扱システムの構成図。
【図2】デジタルカメラの制御ブロック図。
【図3】画像ファイルの構造を示す図。
【図4】画像真正性検証機能の設定画面の一例を示す図。
【図5】デジタルカメラにて実行される撮影時の制御手順を示すフローチャート。
【図6】コンピュータにて実行される画像入力時の制御手順を示すフローチャート。
【図7】画像ファイルをオリジナルのままコンピュータに保存する例を示す図。
【図8】画像ファイルを改竄してコンピュータに保存する例を示す図。
【符号の説明】
【0030】
11 CPU
31 ディスク記憶装置
32 ディスプレイ
51 カメラCPU
52 撮像部
53 画像記録部
57 画像記録媒体
100 コンピュータ
200 デジタルカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像手段と、該撮像手段の出力に基づいて画像ファイルを作成するファイル作成手段とを有するデジタルカメラにおいて、
画像改竄禁止モードを設定/解除するモード設定手段を備え、前記画像改竄禁止モードが設定されているときに撮像を行うと、該撮像によって作成された画像ファイルに改竄を禁止する旨の情報を埋め込むことを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
前記画像ファイルのオリジナル性を証明するための情報を生成して前記画像ファイルに埋め込むことを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のデジタルカメラと、
該デジタルカメラにて作成された画像ファイルを入力し、入力した画像ファイルに前記改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれている場合は、該画像ファイルに改竄を施すことなく該画像ファイルを保存し、前記改竄を禁止する旨の情報が埋め込まれていない場合には、条件に応じて前記画像ファイルに改竄を施してから保存するコンピュータと、を具備することを特徴とする画像取扱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−5421(P2008−5421A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175518(P2006−175518)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】