説明

デジタルカメラ

【課題】屈曲光学式のデジタルカメラでパン・チルト撮影を実現する。
【解決手段】入射光を撮像素子方向に屈曲させるミラー210は、X回動軸まわり、および、Z回動軸まわりに回動可能に保持されている。ユーザによるパン操作に応じて第2のアクチュエータ321が駆動し、ミラー210がZ回動軸まわりに回動する。また、ユーザによるチルト操作に応じて第1のアクチュエータ311が駆動し、ミラー210がX回動軸まわりに回動する。これにより、ユーザ操作に応じたミラー210の回動によって、動画撮影時のパン・チルトが実現される。すなわち、カメラ本体を静止させた状態で、パン・チルト撮影をおこなうことができるので、カメラ本体を動かすことによる手ブレや像ブレを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラに関し、特に、屈曲光学式デジタルカメラにおけるブレ補正に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入射光を屈曲させて撮像素子に結像させるデジタルカメラが知られている(例えば、特許文献1)。このような、屈曲光学式のデジタルカメラでは、本体内にレンズユニットなどを構成することができるので、例えば、沈胴式レンズを有するデジタルカメラなどと異なり、デジタルカメラの本体外部にレンズを突出させることなく、ズーム機能やオートフォーカス機能を実現することができるので、外面がフラットでコンパクトなデジタルカメラを実現することができる。
【0003】
このようなデジタルカメラでは、静止画撮影(スチル撮影)が基本機能となるが、付加機能として動画撮影(ビデオ撮影)機能を有しているものも多い。動画撮影の場合、スチル撮影とは異なり、カメラ本体を動かすことによる撮影技法もあり、例えば、カメラを横方向に移動もしくは回動させるパン撮影や、カメラを縦方向に回動させるチルト撮影などが知られている。
【特許文献1】特開2004−219516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した屈曲光学式のデジタルカメラは、小型・軽量であるため手ブレなどが発生しやすい。このため、屈曲光学式のデジタルカメラで動画撮影をおこなった場合、カメラ本体を動かしてパンやチルト撮影をおこなうと、手ブレなどが極めて発生しやすいことになる。
【0005】
一方で、デジタルカメラの多くには手ブレ補正機能を有しているものもあるが、これらの多くは、レンズや撮像素子をシフトさせるものであり、コンパクトな屈曲光学式のデジタルカメラでは、そのような機構を実装させることが困難である。
【0006】
本発明は上記実状に鑑みてなされたもので、屈曲光学式のデジタルカメラでブレのない画像撮像を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るデジタルカメラは、
動画撮像機能を有し、反射体によって入射光を屈曲して撮像素子に被写体像を結像させるデジタルカメラにおいて、
前記反射体を回動駆動させる駆動手段と、
ユーザにより操作され、操作に応じた入力信号を生成するユーザ操作手段と、
前記駆動手段を制御し、前記ユーザ操作手段からの入力信号に基づいて前記反射体を回動させ、撮像画像のチルト及び/又はパンをおこなうアングル制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記デジタルカメラにおいて、
前記駆動手段は、
前記反射体の中心軸であって、前記デジタルカメラの水平方向に平行し、かつ、前記反射体への入射光軸に直交する第1の軸まわりに前記反射体を回動駆動する第1の駆動手段と、
前記反射体を前記デジタルカメラの垂直方向に平行する第2の軸まわりに回動駆動させる第2の駆動手段と、をさらに備えていることが望ましく、この場合、
前記アングル制御手段は、前記ユーザ操作手段からの入力信号に基づき、チルト動作が指示された場合は前記第1の駆動手段を制御し、パン動作が指示された場合は前記第2の駆動手段を制御することが望ましい。
【0009】
このような構成によれば、屈曲光学式のデジタルカメラに用いられている反射体(ミラー)をユーザ操作によって2軸方向に回動させることができるので、カメラ本体を動かすことなくパンやチルト動作をおこなって撮像画像のアングルを変化させることができる。カメラ本体を動かす必要がないため、動画像撮影時の手ブレの発生を防止するとともに、パンやチルトなどの撮影技法を用いることができる。
【0010】
上記デジタルカメラは、
前記デジタルカメラにおける、前記第1の軸まわりの動きおよび前記第2の軸まわりの動きを検出する動き検出手段と、
前記駆動手段を制御し、前記動き検出手段による検出に基づいて前記反射体を回動させ、撮像画像におけるブレを補正するブレ補正手段と、をさらに備えていることが望ましく、この場合、
前記ブレ補正手段は、前記アングル制御手段がチルト動作をおこなっている間は前記第2の軸まわりの動きにかかるブレ補正のみをおこない、前記アングル制御手段がパン動作をおこなっている間は前記第1の軸まわりの動きにかかるブレ補正のみをおこなうことが望ましい。
【0011】
このような構成によれば、反射体(ミラー)の回動動作によってブレ補正をおこなうことができる。この場合、ユーザ操作によってチルト動作がおこなわれている場合は横方向のブレ補正のみをおこない、パン動作がおこなわれている場合は縦方向のブレ補正のみをおこなうので、パン・チルト動作とブレ補正動作を同時におこなった場合に起こりうる揺れ戻しなどの像揺れを軽減することができる。
【0012】
上記デジタルカメラにおいて、
前記アングル制御手段は、前記反射体が等速で回動するよう前記駆動手段を制御することが望ましい。
【0013】
このような構成によれば、例えば、ブレ補正時において、反射体(ミラー)がどの位置にあってもブレ補正のための回動速度が等速となるよう制御することで、ブレ補正に伴う撮像画像上の画像移動がスムースになり、像揺れのない撮像画像を得ることができる。
【0014】
上記デジタルカメラにおいて、
前記アングル制御手段は、前記ユーザ操作手段からの入力信号に基づく操作量に応じて、前記反射体の回動速度が変化するよう前記駆動手段を制御することが望ましい。
【0015】
このような構成によれば、例えば、ユーザ操作によるパン・チルト動作をおこなっている場合に、その操作量に応じて反射体(ミラー)の回動速度を変化させ、撮像画像上では等速に移動しているように制御することができる。これにより、パン・チルトに伴う撮像画像上の画像移動がスムースになり、像揺れのない撮像画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、屈曲光学式のデジタルカメラに用いられている反射体を、ユーザ操作に応じて回動させるので、カメラ本体を動かすことなくパン・チルト撮影をおこなうことができ、ブレや像揺れなどのない動画像撮像を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明にかかる実施形態を、図面を参照して以下説明する。本実施形態では、動画像撮影機能を有するデジタルカメラに本発明を適用した場合を以下説明する。すなわち、本実施形態にかかるデジタルカメラは、基本機能としてスチル画像の撮像機能を有しているデジタルカメラに動画像撮像機能が付加機能として備えられているものである。
【0018】
本実施形態にかかるデジタルカメラ100の外観構成を、図1を参照して説明する。図1は本実施形態にかかるデジタルカメラ100の外観例を示す図(図1(a)は正面図、図1(b)は背面図)である。
【0019】
図1(a)に示すように、デジタルカメラ100の正面には、入射窓10、測距・測光部120、などが構成されている。また、図1(b)に示すように、デジタルカメラ100の背面には、操作部130として、例えば、ズームボタン132、モード切替スイッチ133、十字キー134、ボタン群135、などが構成される他、デジタルカメラ100の上面部には、シャッタボタン131が構成される。また、デジタルカメラ100の背面には、表示部140が構成されている。
【0020】
入射窓10は、デジタルカメラ100による撮像時に、撮像対象(被写体)を示す光をデジタルカメラ100内部に入射させるために設けられた開口部と、当該開口部を覆う透明部材などから構成されている。
【0021】
測距・測光部120は、オートフォーカス(AF:Auto Focus)機能や自動露出(AE:Auto Exposure)機能を有する通常のカメラなどに一般的に用いられている測距・測光装置から構成され、AF動作時に必要となる被写体までの距離の測定や、AE動作時に必要となる外部光量や被写体光量などの検出をおこなう。
【0022】
シャッタボタン131は、デジタルカメラ100の撮像動作に関する操作をおこなうためのボタンである。シャッタボタン131は、スチル画像撮像時は通常のシャッタボタンとして機能し、動画像撮像時は、撮像動作の開始を指示するためのスタートボタン、および、撮像動作の終了を指示するためのストップボタンとして機能する。
【0023】
ズームボタン132は、デジタルカメラ100のズーム機能を動作させるためのボタンである。
【0024】
モード切替スイッチ133は、例えば、スライド式のスイッチにより構成され、デジタルカメラ100が有する複数の動作モードの切替などに用いられる。本実施形態では、スチル撮影モードと動画撮影モードの切替に用いられるものとする。
【0025】
十字キー134は、ユーザによる種々の入力操作をおこなうためのキーであり、左方向キー、右方向キー、上方向キー、下方向キーの4方向キーから構成されている。本実施形態では、動画撮影時のパン・チルト操作(詳細後述)をおこなうために用いられるものとする。この場合、左方向キーを操作すると左方向へパンし、右方向キーを操作すると右方向へパンし、上方向キーを操作すると上方向にチルトし、下方向キーを操作すると下方向にチルトする。
【0026】
ボタン群135は、デジタルカメラ100の有する種々の機能を操作するためのボタンであり、例えば、表示部140にメニュー画面を表示させるためのメニューボタンや、表示部140の表示・非表示を選択するためのディスプレイボタン、などとして用いられる。
【0027】
表示部140は、例えば、液晶表示装置から構成され、撮影時の被写体画像や撮像画像などを表示する。また、デジタルカメラ100の各種機能の実行時に用いられる種々の画面を表示する。
【0028】
本実施形態にかかるデジタルカメラ100は、入射光を屈曲させて撮像素子に結像させる、いわゆる屈曲光学式のデジタルカメラであるものとする。このような、屈曲光学式を実現するための光学ユニット200が、図2(a)の破線で示す位置に構成されている。すなわち、デジタルカメラ100の正面部に構成されている入射窓10に対応する位置に構成されている。
【0029】
光学ユニット200の構成を図2(b)を参照して説明する。図2(b)は、図2(a)に示すデジタルカメラ100の側面図(デジタルカメラ100の背面側から向かって左側側面を示す)であり、デジタルカメラ100の内部に構成されている光学ユニット200の構成を模式的に示している。図示するように、光学ユニット200は、主に、ミラー210、レンズユニット220、撮像素子230、などから構成されている。
【0030】
ミラー210は、入射窓10から入った入射光を屈曲させるためのミラー(反射体)であり、図2(b)に示すように、入射窓10に対応する位置に傾斜して配置されている。これにより、入射窓10に入った入射光が、デジタルカメラ100の下部方向に屈曲される。
【0031】
レンズユニット220は、複数のレンズ群から構成され、ミラー210によって屈曲された被写体光がレンズユニット220を透過する。
【0032】
撮像素子230は、例えば、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)などの光電変換素子などから構成され、ミラー210により屈曲され、レンズユニット220を透過した被写体光を受光し、受光量に応じた電気信号を生成することで、撮像画像データを生成する。なお、撮像素子230は、所定のADC(Analog-Digital Converter:アナログ−デジタル変換器)を備えているものとし、生成された電気信号をデジタル変換することで、撮像画像のデジタルデータが生成される。
【0033】
図2(b)に示すように、本実施形態では、デジタルカメラ100の底面付近において、受光面がデジタルカメラ100の上部方向を向き、かつ、底面と平行するような位置に撮像素子230が配置される。この場合において、ミラー210は、屈曲させた入射光が撮像素子230に垂直に入射する角度で傾斜される。本実施形態では、デジタルカメラ100の鉛直方向に入射光を屈曲させるので、デジタルカメラ100の正面に垂直に向かう被写体光の光軸と、ミラー210の反射面とのなす狭角が45°もしくは略45°となる傾斜でミラー210が配置される。この角度を以下「基準角度」という。
【0034】
光学ユニット200の詳細な構成を、図3を参照して説明する。図3は、光学ユニット200の構成例を示す斜視図である。図示するように、光学ユニット200は、台座201上に、ミラー210、レンズユニット220、撮像素子230が設置されている。
【0035】
本実施形態にかかるミラー210は、回動可能に構成されており、ミラー210を回動させるためのミラーユニット300内に収納された状態で台座201に設置される。ミラーユニット300の構成については後述する。
【0036】
レンズユニット220は、フォーカス用レンズ220a、ズーム用レンズ220b、光学動作部221、レンズ支持体222、レンズ駆動部223、などから構成されている。
【0037】
フォーカス用レンズ220aおよびズーム用レンズ220bは、レンズ支持体222によって保持された可動レンズであり、それぞれが図中の両矢印に示す方向に移動する。ここで、レンズ支持体222は、フォーカス用レンズ220aの一端を指示する支持体222aと、ズーム用レンズ220bの一端を指示する支持体222b、および、フォーカス用レンズ220aとズーム用レンズ220bのそれぞれの他端を指示する222cから構成されている。支持体222aと支持体222bは、例えば、ラックアンドピニオン機構を備えている。このような支持体222aと支持体222bは、例えば、モータやギアなどから構成されているレンズ駆動部223によってそれぞれが回転駆動される。この動作により、フォーカス用レンズ220aおよびズーム用レンズ220bが移動する。
【0038】
ここで、フォーカス用レンズ220aは、測距・測光部120の動作に基づくAF機能により動作する。また、ズーム用レンズ220bは、ズームボタン132の操作により動作する。
【0039】
光学動作部221は、例えば、固定レンズや絞り羽、シャッタ機構、などから構成され、フォーカス用レンズ220aおよびズーム用レンズ220bを透過した被写体光を撮像素子230に結像させるとともに、設定された露出に応じた絞りによるシャッタ動作をおこなう。
【0040】
次に、図3に示すミラーユニット300の構成を、図4を参照して説明する。図4(a)は、ミラーユニット300を入射窓10側から見た平面図であり、図4(b)は、図4(a)に対応した側面図である。すなわち、図4(a)は、デジタルカメラ100の正面から見たミラーユニット300を示し、図4(b)は、デジタルカメラ100の背面側から向かって左側側面から見たミラーユニット300を示している。
【0041】
図示するように、ミラーユニット300は、台座301、第1の保持体310、第1のアクチュエータ311、固定支持体312、可動支持体313、第2の保持体320、第2のアクチュエータ321、などから構成される。
【0042】
第1の保持体310は、ミラー210の裏面(反射面の裏側)を覆うとともに、ミラー210の反射面が露出するようミラー210を保持する。このようにミラー210を保持した第1の保持体310は、第2の保持体320によって保持される。
【0043】
この場合において、第1の保持体310は、図4(a)に示すX−X’軸を中心に回動可能となるよう第2の保持体320に保持された、いわゆるジンバルである。すなわち、第1の保持体310によって保持されたミラー210が、X−X’軸を中心に回動可能に保持されることになる。ここで、X−X’軸(以下、「X回動軸」とする)は、ミラー210の長手方向に平行なミラー210の中心軸である。より詳細には、図5に示すように、シャッタボタン131が上面となるようデジタルカメラ100を水平設置した場合において、デジタルカメラ100の正面に垂直に入射する入射光の光軸と直交するデジタルカメラ100の水平軸である。
【0044】
第2の保持体320は、図4(b)に示すように、上部が入射窓10側に突出した形状を有している。このような形状の第2の保持体320に保持されることで、第1の保持体310は、ミラー210が基準角度となるようミラー210を保持することになる。
【0045】
第1のアクチュエータ311および第2のアクチュエータ321は、第1の保持体310および第2の保持体320によって保持されているミラー210を回動させるためのアクチュエータであり、例えば、直線運動を発生するボイスコイルモータによって構成される。図4(a)に示すように、第1のアクチュエータ311は、図中のZ−Z’軸に平行する方向に直線運動が発生するよう台座301に固定され、第2のアクチュエータ321は、図中のX回動軸に平行する方向に直線運動が発生するよう台座301に固定される。
【0046】
この場合、第1のアクチュエータ311は、両矢印ZA−ZA’が示すように、X回動軸を基準に両方向に直線運動を発生する。また、第2のアクチュエータ321は、両矢印XA−XA’が示すように、Z−Z’軸を基準に両方向に直線運動を発生する。ここで、Z−Z’軸は、図5に示すように、シャッタボタン131が上面となるようデジタルカメラ100を水平設置した場合におけるデジタルカメラ100の垂直軸に平行する軸である。
【0047】
そして、第2の保持体320は、図4(b)に示すように、Z−Z’軸(以下、「Z回動軸」とする)を中心に回動可能となるよう台座301に保持された、いわゆるジンバルである。より詳細には、台座301から入射窓10方向に垂直に突出している上部ステー301aと下部ステー301bによって、第2の保持体320が回動可能に挟持されている。
【0048】
そして、第1のアクチュエータ311が発生した直線運動は、固定支持体312と可動支持体313を介して第1の保持体310に作用する。ここで、固定支持体312は、図4(a)に示すように、例えば、略角柱形状の支持体であり、一端が第1のアクチュエータ311の可動部に固定され、第1のアクチュエータ311からミラー210の背面に突出している。この場合、固定支持体312の長手方向の中心線がX−X’軸と一致する位置が第1のアクチュエータ311の基準位置となる。そして、第1のアクチュエータ311の駆動とともに固定支持体312も上下方向(図4(a)に示す両矢印ZA−ZA’方向)に移動する。
【0049】
また、可動支持体313は、図4(b)に示すように、略棒状の形状であり、一端が第1の保持体310に固定され、他端が固定支持体312と回動可能に接続されている。この可動支持体313は、第1のアクチュエータ311が基準位置にあるときは、その長手方向の中心線が、X−X’軸と直交するデジタルカメラ100の水平軸と平行する。ここで、可動支持体313との接続部分における固定支持体312の断面は、図4(b)に示すように、ミラー210側が開口した略コの字形状となっている。このようなコの字形の開口部に、図4(b)に示すような略球形の形状となっている可動支持体313の端部が接続される。つまり、このような略球形の端部が固定支持体312の開口部で係合することで回動可能に接続されている。この場合において、第1のアクチュエータ311が基準位置にあるとき、側面から見た可動支持体313と固定支持体312との角度は、図4(b)に示すように略直角となる。このように固定支持体312と可動支持体313とが接続されているので、第1のアクチュエータ311による固定支持体312の上下移動に応じて、側面から見た可動支持体313と固定支持体312との角度が変化することになる。
【0050】
このような可動支持体313のもう一方の端部は、ミラー210の中心位置に対応する位置で第1の保持体310と固定されている。上述したように、第1の保持体310はX−X’軸まわりに回動可能に第2の保持体320に保持されているので、固定支持体312の上下移動に応じて固定支持体312の角度が変化すると、第1の保持体310が、図4(b)の両矢印a−a’方向に回動することになる。すなわち、第1の保持体310に保持されているミラー210が、第1のアクチュエータ311の動作によってX−X’軸まわりに回動することになる。
【0051】
一方、第2のアクチュエータ321が発生した直線運動は、第2の保持体320に作用する。この場合、第2の保持体320は、Z回動軸を中心に回動可能に保持されているため、第2のアクチュエータ321がX回動軸方向に発生させた直線運動を第2の保持体320に作用させることによって、第2の保持体320はZ回動軸を中心に回動する。この場合、第2の保持体320に保持されている第1の保持体310は、Z回動軸まわりに回動することになる。ミラー210は第1の保持体310によって保持されているので、第2のアクチュエータ321の動作により、ミラー210がZ回動軸まわりに回動することになる。
【0052】
本実施形態では、このようにミラー210を回動させるミラーユニット300の動作により、デジタルカメラ100の動画撮影機能で動画像を撮像する際に、ビデオ撮影技法の一種である「パン」や「チルト」をおこなう。通常のビデオ撮影技法におけるパンとは、カメラ本体を横方向に回動もしくは移動させることで、画面を横方向に移動させる技法である。また、チルトは、カメラ本体を縦方向に回動させることで、画面を縦方向に移動させる技法である。
【0053】
上述したように、本実施形態にかかるデジタルカメラ100は、屈曲光学方式を採用した、軽量・小型なデジタルカメラである。このように、本体が小型で軽量な場合、撮影者の手の動きなどの影響を受けやすい。よって、このようなカメラに動画撮影機能が備えられている場合、本体を動かすパンやチルトをおこなうことは、像ブレ発生の要因となる。
【0054】
本実施形態にかかるデジタルカメラ100は、X回動軸まわりとZ回動軸まわりの2軸方向にミラー210を回動することができる。X回動軸まわりにミラー210を回動させれば、撮像画像の縦方向に入射光が変化する。すなわち、カメラ本体を縦方向に回動させるチルト撮影と同じ効果が得られる。同様に、ミラー210をZ回動軸まわりに回動させれば、撮像画像の横方向に入射光が変化する。よって、カメラ本体を横方向に回動させるパン撮影と同じ効果が得られることになる。本実施形態では、以下、X回動軸まわりのミラー210の回動を「チルト回動」とし、Z回動軸まわりのミラー210の回動を「パン回動」とする(図4参照)。
【0055】
また、本実施形態にかかるデジタルカメラ100は、ブレ補正機能を有しているものとする。この場合、X回動軸に平行する方向の水平軸、および、Z回動軸に平行する方向の垂直軸まわりの回転がデジタルカメラ100に発生した場合に起こる像ブレを補正するものとする。ここでは、図5に示すように、X回動軸に平行な水平軸まわりの動きを「ピッチ」とし、Z回動軸に平行な垂直軸まわりの動きを「ヨー」とする。
【0056】
本実施形態のデジタルカメラ100は、図5に示すように、デジタルカメラ100に発生するピッチを検出するためのピッチ検出部400aと、ヨーを検出するためのヨー検出部400bを備える。ピッチ検出部400aおよびヨー検出部400bは、例えば、振動ジャイロや音片ジャイロなどを利用した角速度センサによって構成される。すなわち、ピッチ検出部400aは、X回動軸に平行する水平軸まわりの動きの角速度を検出することでピッチを検出する。同様に、ヨー検出部400bは、Z回動軸に平行する垂直軸まわりの動きの角速度を検出することでヨーを検出する。
【0057】
ブレ補正においては、発生したピッチ及び/又はヨーと反対方向に入射光を変化させるようミラー210を回動制御する。本実施形態では、以下、ブレ補正機能によるミラー210のX回動軸まわりの回動を「ピッチ補正回動」とし、Z回動軸まわりのミラー210の回動を「ヨー補正回動」とする(図4参照)。
【0058】
次に、デジタルカメラ100の内部構成を、図6を参照して説明する。図6は、デジタルカメラ100の内部構成を示すブロック図である。図示するように、本実施形態にかかるデジタルカメラ100は、上述した測距・測光部120、操作部130、表示部140、光学ユニット200、撮像素子230、ミラーユニット300、ピッチ検出部400a、ヨー検出部400bを制御する制御部110と、記憶部150を備えている。
【0059】
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)やワークエリアとなるメモリ(レジスタやRAM(Random Access Memory)など)から構成され、デジタルカメラ100の各部を制御する。また、所定の動作プログラムを実行することで、後述する各処理を実現する。
【0060】
記憶部150は、例えば、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどの記憶装置から構成され、デジタルカメラ100の動作を実行するために必要な各種データを記憶する。本実施形態では、図6に示すように、撮像画像格納領域151、プログラム格納領域152、などの記憶領域が記憶部150に作成され、各記憶領域に所定の情報が格納される。
【0061】
撮像画像格納領域151は、デジタルカメラ100が撮像した画像を示す画像データを格納する。なお、撮像画像格納領域151については、デジタルカメラ100に着脱可能なリムーバブル式の記憶装置(メモリカードなど)に構成されていてもよい。
【0062】
プログラム格納領域152は、制御部110が実行する動作プログラムを格納する。プログラム格納領域152に格納されている動作プログラムを制御部110が実行することで、制御部110は、図7の機能ブロック図に示すような機能を実現する。すなわち、制御部110は、プログラムの実行によって、撮像処理部111、ブレ補正処理部112、アングル制御処理部113、画像処理部114、などとして機能する。
【0063】
撮像処理部111は、光学ユニット200および撮像素子230を駆動制御することで、撮像動作を実行する。
【0064】
ブレ補正処理部112は、ピッチ検出部400aおよびヨー検出部400bによる検出値に基づいてミラーユニット300を制御し、ミラー210を回動させることで撮影時のブレ補正動作を実行する。
【0065】
アングル制御処理部113は、動画像の撮像動作中における操作部130(十字キー134)の操作に応じてミラーユニット300を制御し、ミラー210を2軸方向に回動させるパン・チルト動作によって撮像画像のアングルを変化させる。本実施形態では、このアングル変化によってフレーミングをおこなう(詳細後述)。
【0066】
画像処理部114は、撮像処理部111の制御により撮像素子230によって生成された撮像画像データに所定の画像処理(例えば、データ圧縮処理など)をおこなうとともに、処理した画像データを撮像画像格納領域151に格納する。
【0067】
本実施形態では、制御部110がプログラムを実行することにより、上記機能構成が論理的に実現されるが、これらの機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)などのハードウェアによって構成されてもよい。
【0068】
以上のような構成のデジタルカメラ100による動作を以下説明する。まず、デジタルカメラ100を用いて動画像を撮影する際にデジタルカメラ100が実行する動画撮像処理を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態では、ブレ補正モードが有効となっている場合の撮像処理を説明する。この動画撮像処理は、デジタルカメラ100が動画撮影モードで起動されたことを契機に開始される。
【0069】
処理が開始されてから、シャッタボタン131が操作されると、シャッタボタン131は、動画撮影のスタートキーとして機能する。この場合、シャッタボタン131の操作による入力信号が制御部110に入力されると、撮像処理部111は撮影開始が指示されたものと判別し(ステップS101:Yes)、撮像動作を開始する(ステップS102)。
【0070】
ここでは、例えば、測距・測光部120の検出などに応じてフォーカス用レンズ220aやレンズユニット220cを駆動してAF動作をおこなう他、ズームボタン132の操作に応じてズーム用レンズ220bを駆動してズーム動作などをおこなう。また、レンズユニット220cや撮像素子230を制御することで入射光を画像データに変換して動画像データを順次生成する。
【0071】
このような撮像動作と並行して、ブレ補正処理部112によるブレ補正量算出処理が実行される(ステップS200)。このブレ補正量算出処理を、図9に示すフローチャートを参照して説明する。
【0072】
処理が開始されると、ブレ補正処理部112はまず、ピッチ検出部400aおよびヨー検出部400bを制御してそれぞれの検出動作を開始させ、ピッチ検出部400aからピッチの角速度検出値を取得するとともに、ヨー検出部400bからヨーの角速度検出値を取得する(ステップS201)。ここでは、理解を容易にするため、ピッチの角速度検出値とヨーの角速度検出値を合わせてωiと表記する。
【0073】
次に、ブレ補正処理部112は、ステップS201で取得した角速度検出値ωiを用いて、角度変位θiを算出する(ステップS202)。この角度変位θiは、例えば、角速度検出値ωiを積分することによって算出する。算出された角度変位θiは、その時点におけるピッチ及び/又はヨーによるデジタルカメラ100の動きの角度を示す。
【0074】
ブレ補正処理部112は、このように取得および算出した角速度検出値ωiと角度変位θiをワークエリア(メモリ)に順次記録する(ステップS203)。このような、ブレに関する検出値や算出値の記録を、以下「ブレ検出履歴」とする。
【0075】
次に、ブレ補正処理部112は、算出した角度変位θiに基づいて、補正角θ'iを算出する(ステップS204)。この補正角θ'iは、ブレ量であるθiにより発生する撮像画像のブレを補正するためにミラー210を回動する際の動作角度である。ここでは、例えば、発生したブレ角の反対方向にθ分回動させることでブレを補正することとする。すなわち、補正角θ'iは、「θ'i=−θi」を演算することで算出することができる。
【0076】
ここで、ブレ補正処理部112は、前回のブレ検出履歴がワークエリアに記録されているか否かを判別する(ステップS205)。ここでは、ステップS203の記録が初回であるため、前回の検出履歴はない(ステップS205:No)。この場合、ブレ補正処理部112は、ブレ補正のためにミラー210を回動させる際の回動速度である駆動角速度Vを設定する。ここでは、駆動角速度Vとして、ステップS201で取得した、ピッチ及び/又はヨーの角速度ωiを設定する(ステップS206)。
【0077】
駆動角速度Vを設定し、補正動作の実行間隔として予め設定されているサンプリング時間Tsが経過すると(ステップS210:Yes)、図8に示す動画撮像処理のフローに戻る。
【0078】
動画撮像処理においては、ステップS102で開始された撮像動作によって撮像された動画像の動画像データが、画像処理部114によって処理され、表示部140に表示されるとともに、画像データ順次撮像画像格納領域151に記録される(ステップS103)。
【0079】
このような撮像動作中に、ユーザが十字キー134を操作することによるパン・チルト操作がされなければ(ステップS104:No)、ブレ補正処理部112は、ステップS200のブレ補正量算出処理(図9)で求めたブレ補正量に応じたブレ補正をおこなうためのブレ補正処理を実行する(ステップS300)。このブレ補正処理を、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
【0080】
処理が開始されると、ブレ補正処理部112はまず、このブレ補正処理における初回のブレ補正動作であるか否かを判別する(ステップS301)。ここでは、ブレ検出履歴の有無に基づいて、初回であるか否かを判別する。すなわち、上述したブレ補正量算出処理(図9)のステップS205で「前回検出履歴なし」と判別された場合(ステップS205:No)の処理であれば、初回動作であると判別する(ステップS301:Yes)。
【0081】
この場合、ブレ補正処理部112は、ミラーユニット300を制御し、ミラー210の角度が、ブレ補正量算出処理(図9)のステップS204で算出した補正角θ'iとなるまで、駆動角速度Vでミラー210を回動させる(ステップS302、ステップS303:No)。ここでは、第1のアクチュエータ311および第2のアクチュエータ321の動作量とミラー210の回動角との対応関係が予め規定されているものとし、ブレ補正処理部112は、この対応関係に基づいて第1のアクチュエータ311と第2のアクチュエータ321を制御することで、ミラー210を駆動角速度Vで補正角θ'iとなるまで回動させる。
【0082】
このような動作により、動画撮影中に発生したピッチ及び/又はヨーに応じて、その角速度と等速でミラー210が逆方向に回動し、ピッチ及び/又はヨーによって生じる像ブレが補正される。
【0083】
ミラー210が補正角θ'iまで回動し、検出されたピッチ及び/又はヨーに応じた補正動作がされると(ステップS303:Yes)、図8に示す動画撮像処理のフローに戻る。動画撮像処理においては、撮影終了操作がおこなわれるまで(ステップS105:No)、ブレ補正量算出処理(ステップS200)とブレ補正処理(ステップS300)が繰り返し実行される。このように複数回実行されるブレ補正量算出処理の2回目以降の動作を、図9を参照して説明する。
【0084】
2回目以降の場合、すでにブレ検出値がワークエリアに記録されているので、ブレ補正処理部112は、ステップS205で「ブレ検出履歴あり」と判別する(ステップS205:Yes)。この場合、ブレ補正処理部112は、ブレ検出履歴に基づいてブレ量の予測をおこなう。ここでは、ブレ補正処理部112が、予測角速度ωΡiと予測角度変位θΡi+1を算出する(ステップS207)。この場合、例えば、今回の角速度検出値ωiと、前回の角速度検出値ωi-1とを比較して角加速度aiを求める。そして、このような角加速度aiを用いて数1を演算することで、予測角速度ωΡiを求める。
【0085】
(数1)
ωPi=ωi+ai・Ts
【0086】
また、ブレ補正処理部112は、このようにして求めた予測角速度ωΡiと現在の角度変位θiとを用いて数2を演算することで、次回検出時の予測角度変位θΡi+1を求める。
【0087】
(数2)
θΡi+1=θi+ωΡi・Ts
【0088】
このようにして、予測角速度ωΡiと予測角度変位θΡi+1とを求めると、ブレ補正処理部112は、予測角度変位θΡi+1に基づいて、次回検出時の補正角を予測する。ここでは、今回の補正角θ'iからの増分である予測補正角増分Δθ'i+1を求める(ステップS210)。
【0089】
すなわち、1回目のブレ補正処理実行時には、ブレ補正処理(図10)のステップS302でθ'iまでミラーを回動させているので、そのときの角度変位からの予測増分だけミラーを回動させれば、予測角度変位θΡi+1に対応した補正をおこなうことができる。よって、ここでは、数3を演算することで、予測補正角増分Δθ'i+1を求める。
【0090】
(数3)
Δθ'i+1=θΡi+1−θ'i
【0091】
ここで、動画撮像中にスムースなブレ補正をおこなうためには、ミラー210を等速で回動させることが望ましい。この場合において、ミラー210の回動角速度を所定の値に固定して動作させても、画像サイズやズームによる画角変化の影響などにより、ミラー210の位置によっては画像上での移動速度が異なってしまい、不自然な画像となってしまう。このような不都合を防止するため、ブレ補正処理部112は、そのときのミラー210の角度に応じて駆動角速度を算出する。ここでは、基準位置からミラー210を回動させた際の駆動角速度Vと等速となる可変駆動角速度V’を算出する(ステップS209)、ミラー210がどの角度位置にあっても、回動速度を等速とすることができる。
【0092】
ここでは、例えば、ミラー210の回動時間をt、回転半径をrとおき、数4に示すような正弦関数を演算することで、駆動角速度V(=角速度ωi)と等速となる可変駆動角速度V’を求めることができる。
【0093】
(数4)
V'=r・sin(ωi・t)/t
【0094】
このようにして、2回目以降のブレ補正動作におけるミラー210の駆動角速度を求め、サンプリング時間Tsが経過すると(ステップS210:Yes)、図8に示す動画像撮像処理のフローに戻る。この場合に実行されるブレ補正処理を、図10を参照して説明する。すなわち、ブレ補正動作が2回目以降となるブレ補正処理の動作である。
【0095】
2回目以降の場合(ステップS301:No)、ブレ補正処理部112は、ミラーユニット300を制御し、ブレ補正量算出処理(図9)のステップS209で算出した可変駆動角速度V’でミラー210を回動させる(ステップS304)。ここでは、ステップS208で算出した予測補正角増分Δθ'i+1の位置となるまで、ミラー210を回動させる(ステップS305:No)。
【0096】
そして、予測補正角増分Δθ'i+1の位置までミラー210が回動すると(ステップS305:Yes)、図8に示す動画像撮像処理のフローに戻る。動画像撮像処理においては、所定の終了指示があるまで(ステップS105:No)、ブレ補正量算出処理(ステップS200)とブレ補正処理(ステップS300)が繰り返し実行される。そして、ブレ補正処理によってブレ補正がされながら撮像された動画像の動画像データは、画像処理部114によって処理され(ステップS103)、表示部140に表示されるとともに、画像データ順次撮像画像格納領域151に記録される。
【0097】
このようなブレ補正では、2回目以降の補正動作において、ミラー210の回動速度を可変駆動角速度V’とすることで、ブレ補正処理部112は、ミラー210が基準位置から離れるにつれ、第1のアクチュエータ311及び/又は第2のアクチュエータ321の駆動速度が徐々に遅くなるよう制御する。これにより、ミラー210の回動による画像の移動は、ミラー210がどの位置にあっても等速となる。
【0098】
このようにして、ブレ補正を実行しながら動画撮像をおこなっている際に、十字キー134が操作されると(ステップS104:Yes)、アングル制御処理部113によりパン・チルト処理が実行される(ステップS400)。このパン・チルト処理を、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
【0099】
処理が開始されると、アングル制御処理部113は、十字キー134(操作部130)からの入力信号に基づき、チルト操作であるかパン操作であるかを判別する。すなわち、チルトをおこなう場合は上下キーが操作され、パンをおこなう場合は左右キーが操作されるので、十字キー134の上下キーが操作されたか否かにより、チルト操作であるかパン操作であるかを判別する(ステップS401)。
【0100】
チルト操作である場合(ステップS401:Yes)、アングル制御処理部113は、撮像処理部111および画像処理部114との協働により、撮像画像の縦方向画角θvyを算出する(ステップS402)。ここでは、そのときのレンズ焦点距離fを撮像処理部111から取得し、撮像画像の縦方向のサイズY’を画像処理部114から取得し、以下の数5を演算することで画角θvyを算出する。
【0101】
(数5)
θvy=2・tan-1(Y'/2f)
【0102】
なお、画像処理によって画像を拡大するいわゆるデジタルズーム機能が用いられている場合は、デジタルズームの倍率Mを画像処理部114から取得し、数5で得られる結果をMで除することで画角θvyを求めることができる。
【0103】
次に、アングル制御処理部113は、算出した縦方向の画角θvyに応じた所定の係数Ayを算出する(ステップS403)。この係数Ayは、画角が小さくなるほど小さくなる係数であり、現在の画角θvyと、所定の焦点距離f0のときの画角θvy0との比、つまり、「θvy/θvy0」を演算することで求められる。焦点距離f0は、例えば、レンズユニット220のズーム性能における最小焦点距離である。そのときの縦方向の画角であるθvy0は、上記数5におけるfに代えてf0を代入することで求められる。
【0104】
次にアングル制御処理部113は、十字キー134(操作部130)の上下方向キーの操作時間に基づいて、チルト操作量Byを取得する(ステップS404)。すなわち、十字キー134を操作することによるチルト動作は、十字キー134の上下方向キーのいずれかを押下している間おこなうので、該当するキーの押下時間に基づいたチルト操作量Byが取得される。
【0105】
次にアングル制御処理部113は、実際のチルト動作量を示すB'yを算出する(ステップS405)。このチルト動作量B'yは、係数Ayとチルト操作量Byとを乗じることで算出する。
【0106】
このようにしてチルト動作量B'yを求めると、アングル制御処理部113は、ミラーユニット300を制御し、ミラー210をチルト動作量B'y分チルト回動させる。すなわち、第1のアクチュエータ311を制御することで、X回動軸まわりにB'y分ミラー210を回動させる(ステップS406)。
【0107】
このときアングル制御処理部113は、画像処理部114との協働により、チルト動作量を示すチルトインジケータTIを表示部140に表示する(ステップS407)。すなわち、図12(a)〜図12(c)に示すように、十字キー134の上下方向キーの操作に応じて、表示部140に表示される画像のアングルが上下方向に変化する(チルト)とともに、その変化量を示すチルトインジケータTIが表示される。
【0108】
このようにして、チルト動作をしている間、ブレ補正処理部112は、ヨーのブレ補正動作を実行する(ステップS408)。ここでは、ステップS200のブレ補正量算出処理で算出したブレ補正量に基づいて、ステップS300のブレ補正処理を実行するが、チルト動作をしている間は、ヨーのブレについてのみブレ補正をおこなう。
【0109】
このような動作が、十字キー134の上下方向キーが操作されている間繰り返し実行されることで(ステップS409:No)、ユーザによる操作量に対応したチルト撮影が実現される。この場合において、デジタルカメラ100の本体は静止させている。つまり、本体を上下方向に回動させずにチルト撮影が実現される。この場合において、ヨーについてのブレ補正はおこなわれているので、チルト動作をおこないながら、ヨーのブレは補正されるので、手ブレのない動画像を得ることができる。そして、十字キー134の操作が終了するとともに(ステップS409:Yes)、図8に示す動画撮像処理のフローに戻る。
【0110】
一方、十字キー134の左右方向キーが操作されパンが指示された場合(ステップS401:No)も、上記チルト動作と同様の処理をおこなうことで、パン動作が実行されることになる。この場合、アングル制御処理部113は、ブレ補正処理部112との協働により、撮像画像の横方向画角θvxを算出する(ステップS410)。ここでは、撮像画像の横方向サイズX’を画像処理部114から取得し、上記数5のY’に代えてX’を代入して演算することで、θvxが算出される。
【0111】
また、アングル制御処理部113は、チルト動作時に算出した係数Ayと同様の方法によって、横方向の画角に応じて変化する係数Axを算出する(ステップS411)。そして、十字キー134の左右方向キーの操作時間に基づくパン操作量Bxを取得し(ステップS412)、算出した係数Axを乗じることで、パン動作量B'xを算出すると(ステップS413)、ミラーユニット300を制御することで、ミラー210をZ回動軸まわりにB'x分回動させてパン動作をおこなうとともに、パン動作量を示すパンインジケータPIを表示部140に表示する(ステップS414、ステップS415)。このようなパン動作の間、ブレ補正処理部112は、ピッチ方向のブレ補正動作を実行する(ステップS416)。そして、このような動作を、十字キー134の左右方向キーが操作されている間繰り返し実行する(ステップS417:No)。
【0112】
このような動作により、図12(d)〜図12(f)に示すように、十字キー134の左右方向キーの操作に応じて、表示部140に表示される画像のアングルが左右方向に変化する(パン)とともに、その変化量を示すパンインジケータPIが表示される。この場合において、デジタルカメラ100の本体は静止している。つまり、本体を左右方向に回動させずにパン撮影が実現される。この場合において、ピッチについてのブレ補正はおこなわれているので、パン動作をおこないながら、ピッチのブレは補正されるので、手ブレのない動画像を得ることができる。
【0113】
そして、十字キー134の操作が終了するとともに(ステップS417:Yes)、図8に示す動画撮像処理のフローに戻る。
【0114】
動画撮像処理のフローでは、動画撮影のストップボタンとして機能するシャッタボタン131の操作があるまで、上述した、撮像動作、ブレ補正量算出動作、ブレ補正動作、および、パン・チルト動作が実行され、動画像の撮像がおこなわれる(ステップS105:No)。そして、シャッタボタン131が操作されることで、動画像の撮像停止が指示されると(ステップS105:Yes)、撮像処理部111は、撮像動作を停止させる。この場合、アングル制御処理部113は、ミラーユニット300を制御し、ミラー210を基準位置に復帰させる(ステップS106)。また、ブレ補正処理部112が、今回の動画撮像処理におけるブレ補正処理で記録したブレ検出処理をクリアして(ステップS107)、すべての処理が終了する。
【0115】
以上説明したように、本発明を上記実施形態の如く適用することで、屈曲光学式のデジタルカメラに用いられている屈曲用ミラー(反射体)を、ユーザ操作に応じて2軸方向に回動させることができるので、カメラ本体の回動や移動を伴わずに、チルト撮影やパン撮影をおこなうことができる。すなわち、カメラ本体を静止させた状態でチルトやパンをおこなって、撮像画像のアングルを変化させることができるので、軽量・小型な屈曲光学式のデジタルカメラでの動画撮影時などにおける手ブレや像ブレの発生を防止することができる。
【0116】
また、チルト動作がおこなわれている間はピッチに対するブレ補正動作を停止し、パン動作がおこなわれている間はヨーに対するブレ補正動作を停止しているので、カメラを向けている方向と実際に撮像される被写体とのズレが生じることを回避できるとともに、パン・チルト動作とブレ補正を同時におこなった場合に起こりうる、いわゆる揺れ戻しの発生を軽減することができる。この場合、ユーザのスイッチ操作によって、チルト動作もしくはパン動作が実行されていることを確実に判別することができるので、揺れ戻しを軽減させるための特別な構成を必要としない。よって、簡易な構成でブレ補正制御を実現させることができる。
【0117】
また、入射光を適切に撮像素子230に屈曲させる角度を維持した状態で、ミラー210をZ回動軸まわりに回動させるので、パン回動範囲のどの位置にパンさせた場合でも、撮像画像の横方向に歪みや傾きが発生しない。
【0118】
さらに、パン・チルト動作時には、パン・チルトの操作量とその時の画角に基づいて、ミラー210の回動速度を変化させることで、撮像画像上での移動速度が等速となるように制御しているので、動画撮影時の画像変化がスムースであり、結果として像揺れなどのない見やすい動画像を得ることができる。同様に、ブレ補正動作時においても、ミラー210の位置に応じて回動速度(駆動角速度)が等速となるよう制御しているので、ブレ補正による像揺れも軽減することができる。
【0119】
上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0120】
例えば、上記実施形態では、ミラー210を回動させるアクチュエータをボイスコイルモータによって構成したが、これに限られず、例えば、圧電アクチュエータやバイモルフ型ピエゾ・アクチュエータなどから構成してもよい。また、上記実施形態で示したミラー210を保持する構成は一例であり、ミラー210をチルト回動(ピッチ補正回動)、及び/又は、パン回動(ヨー補正回動)させるよう保持できるのであれば、ミラー210を保持する構成は上記実施形態に示したものに限られず、任意のものを採用してもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、角度変位(ブレ量)と同量の回動量でミラー210を回動させてブレを補正したが、回動量はこれに限られず、例えば、ブレ量の1/2の回動量で逆方向に回動させることで補正してもよい。その他、上記実施形態で示した、ミラー210の回動量や駆動角速度などを求める方法は一例であり、任意の方法でこれらを算出して回動させてもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、検出した角速度に基づいて、角度変位(ブレ量)を随時予測しながらブレ補正をおこなったが、予測動作をおこなわずに、ピッチ検出部400aおよびヨー検出部400bの検出値に基づいて随時補正動作をおこなうようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施形態にかかるデジタルカメラの外観構成を示す図であり、(a)はデジタルカメラの正面を示し、(b)はデジタルカメラの背面を示す。
【図2】図1に示すデジタルカメラの光学ユニットを説明するための図であり、(a)は光学ユニットの位置を説明するための図であり、(b)は光学ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図3】図2に示す光学ユニットの詳細な構成例を示す図である。
【図4】図3に示すミラーユニット構成を示す図であり、(a)はデジタルカメラの正面方向から見たミラーユニットの構成を示し、(b)はデジタルカメラの側面方向から見たミラーユニットの構成を示す。
【図5】本発明の実施形態にかかるデジタルカメラにおけるX回動軸およびZ回動軸、ピッチおよびヨー、などを説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態にかかるデジタルカメラの内部構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す制御部によって実現される機能構成を示す機能ブロック図である。
【図8】本発明の実施形態において実行される動画撮像処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8に示す動画撮像処理において実行されるブレ補正量算出処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図8に示す動画撮像処理において実行されるブレ補正処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】図8に示す動画撮像処理において実行されるパン・チルト処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態にかかるパン・チルト動作を説明するための図であり、(a)〜(c)はチルト動作時の画面表示例などを示し、(d)〜(f)はパン動作時の画面表示例などを示す。
【符号の説明】
【0124】
100…デジタルカメラ、110…制御部、111…撮像処理部、112…ブレ補正処理部、113…アングル制御処理部、114…画像処理部、120…測距・測光部、131…シャッタボタン、140…表示部、150…記憶部、151…撮像画像格納領域、152…プログラム格納領域、200…光学ユニット、210…ミラー、220…レンズユニット、230…撮像素子、300…ミラーユニット、310…第1の保持体、311…第1のアクチュエータ、320…第2の保持体、321…第2のアクチュエータ、400a…ピッチ検出部、400b…ヨー検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画撮像機能を有し、反射体によって入射光を屈曲して撮像素子に被写体像を結像させるデジタルカメラにおいて、
前記反射体を回動駆動させる駆動手段と、
ユーザにより操作され、操作に応じた入力信号を生成するユーザ操作手段と、
前記駆動手段を制御し、前記ユーザ操作手段からの入力信号に基づいて前記反射体を回動させ、撮像画像のチルト及び/又はパンをおこなうアングル制御手段と、
を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
前記駆動手段は、
前記反射体の中心軸であって、前記デジタルカメラの水平方向に平行し、かつ、前記反射体への入射光軸に直交する第1の軸まわりに前記反射体を回動駆動する第1の駆動手段と、
前記反射体を前記デジタルカメラの垂直方向に平行する第2の軸まわりに回動駆動させる第2の駆動手段と、をさらに備え、
前記アングル制御手段は、前記ユーザ操作手段からの入力信号に基づき、チルト動作が指示された場合は前記第1の駆動手段を制御し、パン動作が指示された場合は前記第2の駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ。
【請求項3】
前記デジタルカメラにおける、前記第1の軸まわりの動きおよび前記第2の軸まわりの動きを検出する動き検出手段と、
前記駆動手段を制御し、前記動き検出手段による検出に基づいて前記反射体を回動させ、撮像画像におけるブレを補正するブレ補正手段と、をさらに備え、
前記ブレ補正手段は、前記アングル制御手段がチルト動作をおこなっている間は前記第2の軸まわりの動きにかかるブレ補正のみをおこない、前記アングル制御手段がパン動作をおこなっている間は前記第1の軸まわりの動きにかかるブレ補正のみをおこなう、
ことを特徴とする請求項2に記載のデジタルカメラ。
【請求項4】
前記アングル制御手段は、前記反射体が等速で回動するよう前記駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデジタルカメラ
【請求項5】
前記アングル制御手段は、前記ユーザ操作手段からの入力信号に基づく操作量に応じて、前記反射体の回動速度が変化するよう前記駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−228006(P2007−228006A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43435(P2006−43435)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】