説明

デジタルサイネージシステム

【課題】様々な視聴状況においても、多くの視聴者に利便性をもたらすデジタルサイネージシステムを提供する。
【解決手段】モニタ101〜106は映像コンテンツを表示する機能を備えたモニタである。モニタ107〜109は、映像コンテンツを表示する機能と視聴者が触ったことを検知するタッチパネルとを備えたモニタである。モニタ101〜109はマルチディスプレイ装置を構成する。視聴者が触っているタッチパネルを備えたモニタに、視聴者の操作に応じた情報や映像を表示するインタラクティブコンテンツを表示させ、かつ、マルチディスプレイ装置を構成する他のモニタには、人感センサ210で検知可能な近距離視聴者に見易い画面サイズの近距離視聴者用映像コンテンツと、人感センサ210で検知できない遠距離視聴者に見易い画面サイズの遠距離視聴者用映像コンテンツとを同時表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルサイネージシステムに係り、特に公共のスペースにおいて大型ディスプレイに広告映像や広告情報を表示するデジタルサイネージシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型ディスプレイを公共スペースや店舗などに設置し、不特定多数の人に広告映像や文字情報を表示するデジタルサイネージシステムが普及してきている。このデジタルサイネージシステムは、様々な形態が存在し、例えば、大型ディスプレイを縦や横あるいはマトリクス状に配置し、それぞれが1つの映像の分割した部分を表示するマルチディスプレイを用いて大画面で多人数の視聴者に情報を表示するタイプや、あるいは、1つのディスプレイにタッチパネルを装着し、視聴者の操作によって表示する情報を次々と変更するタイプがある。それぞれのタイプの特徴は、前者は多人数向けであり、後者は、個人向けであるため、2つのタイプを同一のディスプレイシステムで構築すると、個人が大画面を占有するなど、問題が出てくる。また、それぞれのシステムを別に設置するには、設置スペースもそれぞれに必要であり、また、両方のシステムの購入が必要となりコスト的にも課題である。
【0003】
このような課題を解決するデジタルサイネージシステムが特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載のデジタルサイネージシステムは、マルチディスプレイの一番下の列、すなわち、視聴者の手の届く範囲のディスプレイにタッチパネルを装着し、視聴者がそのディスプレイに触れている時は、触れているディスプレイには、マルチディスプレイ全体に表示していた映像を縮小して表示するなどの処理を行う。これにより、不特定多数の視聴者や個人の視聴者両方に利便性が良いデジタルサイネージシステムが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-295016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタルサイネージにおいては、視聴者の視聴位置によって効果的な映像サイズが違うことや視聴者が詳細な情報を求める内容が違う等、様々な視聴状況が想定され、幅広い視聴者に利便性をもたらす必要がある。
【0006】
従来のデジタルサイネージシステムでは、1つのシステムでこの様々な視聴状況の不特定多数や個人の視聴者に利便性をもたらすことは難しい。特許文献1に記載の従来のデジタルサイネージシステムは、その解決のひとつのアプローチであるが、デジタルサイネージにおいては、さらに様々な視聴状況が想定され、幅広い視聴者に利便性をもたらすには不十分である。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、様々な視聴状況においても、多くの視聴者に利便性をもたらすデジタルサイネージシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のデジタルサイネージシステムは、映像コンテンツを表示する機能を備えた複数台の第1のモニタと、映像コンテンツを表示する機能と視聴者が触ったことを検知するタッチパネルとを備えた1台以上の第2のモニタとにより構成される1つのマルチディスプレイ装置と、マルチディスプレイ装置の近傍位置に視聴者が存在することを検知する人感センサと、タッチパネルに視聴者が触ったことを示す検知情報が入力されたときは、その検知情報を出力しているタッチパネルを備えた第2のモニタに、視聴者の操作に応じた情報や映像を表示するインタラクティブコンテンツを表示させ、かつ、マルチディスプレイ装置を構成する他のモニタには、人感センサで検知可能な近距離視聴者に見易い画面サイズの近距離視聴者用映像コンテンツと、人感センサで検知できない遠距離視聴者に見易い画面サイズの遠距離視聴者用映像コンテンツとを同時表示させる第1の映像処理手段と、タッチパネルから検知情報が入力されないときは、人感センサからの人感検出情報に応じてマルチディスプレイ装置により近距離視聴者用映像コンテンツ及び遠距離視聴者用映像コンテンツの同時表示、又は遠距離視聴者用映像コンテンツのみの表示を行わせる第2の映像処理手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、近距離、遠距離の視聴者のいずれにも最適なサイズの画面で映像コンテンツを提供できると共に、より詳細な情報が欲しい視聴者に対してインタラクティブコンテンツを提供することができ、また、これらのことから、設置スペースやシステムコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のデジタルサイネージシステムのマルチディスプレイ装置の表示例(遠距離視聴者用映像のみ)である。
【図2】本発明のデジタルサイネージシステムのマルチディスプレイ装置の別の表示例(遠距離視聴者用映像+近距離視聴者用映像)である。
【図3】本発明のデジタルサイネージシステムのマルチディスプレイ装置の更に別の表示例(遠距離視聴者用映像+近距離視聴者用映像+インタラクティブコンテンツ)である。
【図4】本発明のデジタルサイネージシステムの一実施の形態のブロック図である。
【図5】本発明のデジタルサイネージシステムの動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明のデジタルサイネージシステムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明のデジタルサイネージシステムのマルチディスプレイ装置の表示の一例(遠距離視聴者用映像のみ)を示す。同図において、モニタ101〜106は映像コンテンツを表示する機能を備えたモニタである。また、モニタ107〜109は、映像コンテンツを表示する機能と視聴者が触ったことを検知するタッチパネルとを備えたモニタである。これら9台のモニタ101〜109により1つのマルチディスプレイ装置が構成されている。
【0013】
この図1に示す表示例は、1つの映像コンテンツの映像を9分割し、それぞれの分割映像を9台のモニタ101〜109にそれぞれ表示することにより、9台のモニタ101〜109からなる一つの大画面にて視聴者に1つの映像コンテンツの映像を提供する表示例である。このような表示方法は、9台のモニタ101〜109からなるマルチディスプレイ装置から離れている遠距離視聴者に広告の効果がある。しかし、この表示方法はマルチディスプレイ装置に近い近距離視聴者の視界には部分的な映像しか入らないという課題がある。
【0014】
図2は、デジタルサイネージシステムのマルチディスプレイ装置の別の表示例(遠距離視聴者用映像+近距離視聴者用映像)を示す。このデジタルサイネージシステムは、視聴者が9台のモニタ101〜109からなるマルチディスプレイ装置の近傍位置にいるか否かを検知するための人感センサ210を設置している。
【0015】
この人感センサ210にて、視聴者211がマルチディスプレイ装置の近くにいることを検知した場合は、その距離でも映像が見易いように、下に配置された3台のモニタ107〜109には、モニタ1画面サイズの近距離視聴者用映像を表示する。他の6台のモニタ101〜106は、1つの遠距離視聴者用映像を6分割して各分割映像を表示し、6台のモニタ101〜106全体の大画面にて表示する。
【0016】
このように映像を表示制御することにより、マルチディスプレイ装置の近距離にいる視聴者211には、近距離視聴者用の映像、遠距離にいる視聴者には遠距離視聴者用の映像を同時に表示することができ、1つのマルチディスプレイ装置で多くの視聴者に映像を提供することができる。
【0017】
なお、遠距離視聴者用映像と近距離視聴者用映像は、内容は同じものでサイズだけが違うという形態を取ってもよい。また、それぞれに適した違う映像でもよい。
【0018】
図3は、本発明のデジタルサイネージシステムのマルチディスプレイ装置の更に別の表示例(遠距離視聴者用映像+近距離視聴者用映像+インタラクティブコンテンツ)を示す。この表示例においては、マルチディスプレイ装置を構成する9台のモニタ101〜109のうち、下の3台のモニタ107〜109にタッチパネルを装着し、視聴者がモニタ107〜109のタッチパネルのいずれかに触れると、インタラクティブなコンテンツに切り替わる。インタラクティブなコンテンツとは、視聴者がタッチパネルにて操作することにより、その操作に応じた情報や映像を表示するコンテンツである。視聴者が自ら操作することにより、視聴者は自分の欲しい詳細な情報を得ることができる。図3は視聴者がモニタ109のタッチパネルにてインタラクティブなコンテンツを操作している状態を示す。
【0019】
図4は、図1〜図3で示したマルチディスプレイ装置の表示例を実現する本発明になるデジタルサイネージシステムの一実施の形態のブロック図を示す。同図中、図1〜図3と同一構成部分には同一符号を付してある。
【0020】
図4において、デジタルサイネージシステム400は、映像再生装置401と、それにつながっている9台のモニタ101〜109と、人感センサ210とから構成される。なお、下の3台のモニタ107〜109にはタッチパネルが装着されている。映像再生装置401は、HDD(ハードディスクドライブ)403に蓄積されている映像データを復号する映像再生処理部402と、映像再生処理部402で復号された映像の拡大縮小切り抜きを行い、モニタ101〜109に出力する映像分割処理部407と、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)406と、CPU406の動作用プログラムなどを記憶しているROM(Read Only Memory)405と、CPU406の演算などのために各種データが書き込まれ、また読み出されるRAM(Random Access Memory)404と、タッチパネルI/F(インタフェース)408と、人感センサ210に接続された人感センサI/F409とからなり、これらがバスを介して接続されている。
【0021】
CPU406は、人感センサ210から人感センサI/F409を介して供給される情報や、モニタ107〜109に装着されたタッチパネルからタッチパネルI/F408を介して供給される情報に基づいて視聴者の位置などを判断し、その判断結果に応じて適切な映像を適切なモニタに表示するように映像再生処理部402と映像分割処理部407を制御する。
【0022】
次に、本実施の形態のデジタルサイネージシステム400の動作について、図5のフローチャートを併せ参照して説明する。
【0023】
まず、CPU406はモニタ107〜109のいずれかのタッチパネルに視聴者が触れているか否かを判定する(ステップS501)。CPU406はタッチパネルに触れられていると判定したときは、その触れられているタッチパネルを有するモニタにインタラクティブコンテンツを表示する(ステップS502)。続いて、CPU406はモニタ107〜109のうち、タッチパネルに触れられていないモニタには、近距離視聴者用映像コンテンツを表示するように映像再生処理部402と映像分割処理部407に指示を出す(ステップS503)。残りのモニタ、すなわちモニタ101〜106には、CPU406は遠距離視聴者用映像コンテンツを表示するように映像再生処理部402と映像分割処理部407に指示を出す(ステップS504)。従って、この場合はデジタルサイネージシステム400は、マルチディスプレイ装置により図3に示したような表示を行う。
【0024】
なお、インタラクティブコンテンツ表示は、視聴者が明示的に表示終了を操作するか、一定時間視聴者がタッチパネルに触れていないことを検知した場合に終了となる。
【0025】
一方、CPU406はステップS501でモニタ107〜109のタッチパネルのいずれにも視聴者が触れていないと判定したときは、視聴者がマルチディスプレイ装置の近くにいるか否かを、人感センサ210から人感センサI/F409を介して供給される人感検出情報に基づいて判定する(ステップS505)。なお、視聴者が近くにいると判断する距離は、1つのモニタを見るのに最適な距離である、およそ1メートルから2メートルを想定しているが、それに限定しなくてもよい。
【0026】
CPU406はステップS505で視聴者がマルチディスプレイ装置の近くにいると判定した場合、モニタ107〜109のそれぞれに近距離視聴者用映像コンテンツを表示するように、映像再生処理部402と映像分割処理部407に指示を出す(ステップS506)。そして、残りのモニタ、すなわちモニタ101〜106には、遠距離視聴者用映像コンテンツを表示するように映像再生処理部402と映像分割処理部407に指示を出す(ステップS504)。従って、この場合は、デジタルサイネージシステム400は、マルチディスプレイ装置により図2に示したような表示を行う。
【0027】
視聴者がモニタ107〜109のタッチパネルのいずれにも触れておらず、かつ、人感センサ210からの人感検出情報も近くに視聴者がいることを示していない場合は、CPU406はすべての9台のモニタ101〜109を使い、遠距離視聴者用映像コンテンツを表示するように映像再生処理部402と映像分割処理部407に指示を出す(ステップS507)。従って、この場合は、デジタルサイネージシステム400は、マルチディスプレイ装置により図1に示したような大画面での映像コンテンツの表示を行う。
【0028】
このように、本実施の形態のデジタルサイネージシステム400は、視聴者が9台のモニタ101〜109からなるマルチディスプレイ装置の遠くにいるときは、マルチディスプレイ装置全体で1つの遠距離視聴者用映像コンテンツを表示することで遠くの視聴者に見易い状態にし、視聴者がマルチディスプレイ装置の近くにいるときは、マルチディスプレイ装置の一部のモニタ107〜109により、近くにいる視聴者に見易いサイズの近距離視聴者用映像コンテンツを表示するとともに、それ以外のモニタ101〜106には、遠くの視聴者に見易いサイズの遠距離視聴者用映像コンテンツを表示する。また、本実施の形態のデジタルサイネージシステム400は、タッチパネルを操作している視聴者には、インタラクティブなコンテンツを提供する。
【0029】
従って、本実施の形態のデジタルサイネージシステム400によれば、1つのマルチディスプレイ装置で、近距離、遠距離の視聴者に対して最適なサイズの画面で最適に映像コンテンツの提供ができ、また、より詳細な情報が欲しい視聴者に対しては、同時にインタラクティブコンテンツを提供することができ、これらのことから設置スペースやシステムコストを低減できる。よって、本実施の形態のデジタルサイネージシステム400は、コンテンツ(広告)を提供する側、受ける側、双方にとって、利便性の高いデジタルサイネージシステムを提供できる。
【0030】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、例えば図5のフローチャートにより示される処理をCPU406に実行させるコンピュータプログラムも包含するものである。このコンピュータプログラムは、記録媒体から取り込んでもよいし、ネットワークから配信したものをダウンロードしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
101〜106 モニタ
107〜109 タッチパネルを装着したモニタ
210 人感センサ
211 視聴者
400 デジタルサイネージシステム
401 映像再生装置
402 映像再生処理部
406 中央処理装置(CPU)
407 映像分割処理部
408 タッチパネルI/F(インタフェース)
409 人感センサI/F(インタフェース)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像コンテンツを表示する機能を備えた複数台の第1のモニタと、映像コンテンツを表示する機能と視聴者が触ったことを検知するタッチパネルとを備えた1台以上の第2のモニタとにより構成される1つのマルチディスプレイ装置と、
前記マルチディスプレイ装置の近傍位置に視聴者が存在することを検知する人感センサと、
前記タッチパネルに前記視聴者が触ったことを示す検知情報が入力されたときは、その検知情報を出力している前記タッチパネルを備えた前記第2のモニタに、前記視聴者の操作に応じた情報や映像を表示するインタラクティブコンテンツを表示させ、かつ、前記マルチディスプレイ装置を構成する他のモニタには、前記人感センサで検知可能な近距離視聴者に見易い画面サイズの近距離視聴者用映像コンテンツと、前記人感センサで検知できない遠距離視聴者に見易い画面サイズの遠距離視聴者用映像コンテンツとを同時表示させる第1の映像処理手段と、
前記タッチパネルから前記検知情報が入力されないときは、前記人感センサからの人感検出情報に応じて、前記マルチディスプレイ装置により前記近距離視聴者用映像コンテンツ及び前記遠距離視聴者用映像コンテンツの同時表示、又は前記遠距離視聴者用映像コンテンツのみの表示を行わせる第2の映像処理手段と
を有することを特徴とするデジタルサイネージシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79194(P2012−79194A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225509(P2010−225509)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】