説明

デジタル伝送システムおよび伝送状態表示方法

【課題】
デジタルFPUの受信基地等の多段中継システムにおいてTMCC情報等の受信補助情報を後段に伝送する場合、受信装置とその後に続く送信装置間の接続には画像および音声圧縮符号用のTS伝送路とは別の伝送路で受信補助情報を伝送する必要であり、使い勝手が悪い。
【解決手段】
デジタル伝送システムは、少なくとも映像信号を含む伝送信号を受信する受信高周波部と、上記受信高周波部からの上記伝送信号を少なくとも復調し、誤り訂正する受信制御部と、上記受信高周波部および上記受信制御部から上記伝送信号の受信状態に関する情報を印加され、受信補助情報を生成する受信補助情報生成部と、上記受信制御部からの上記伝送信号に上記受信補助情報生成部から出力される受信補助情報とを多重化するデータ多重部とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル伝送システムおよび伝送状態表示方法に関し、特に、画像伝送装置の受信補助情報を伝送するデジタル伝送システムおよび伝送状態表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビジョン放送番組素材の伝送用としてマイクロ波帯無線伝送機器としてFPU(Field Pick-up Unit)と称される無線画像伝送装置(以下、FPU装置と称する。)がある。このFPU装置は、アナログ伝送方式からデジタル伝送方式ヘと移行しつつある。デジタル伝送方式では、アナログ伝送方式とは異なり、映像信号や音声信号を符号化したり、これを更に圧縮する等で、本来のデータ量を圧縮し、より低い伝送レートで情報伝送することが可能となっている。映像信号や音声信号の符号化には、一般にMPEG2(Moving Pictures Experts Group 2)やMPEG4のような方式が用いられている。そして、テレビカメラ等で撮像された映像信号や音声信号等のデータをFPU装置を介して放送局等に送信する信号形態としては、これらを多重化したTS(Transport Stream)信号という固定長のパケット形式のフレームフォーマット(これについては後述する。)が用いられている。また、変調方式としては、シングルキャリアQAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式やマルチキャリアを用いたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を用い、デジタル直交変調方式、誤り訂正符号技術を用いることにより、従来のアナログ方式では不可能であった長距離伝送や移動中継などが可能となり、また、反射波によるマルチパス(Multi-path)を伴うような場所でも安定した中継が可能となってきている。
【0003】
しかしながら上述のデジタル伝送方式にも受信能力には限界がある。即ち、従来のアナログ方式では、映像信号の受信レベルの変化により徐々に映像信号にノイズ(雑音)が混入してきたことが分かるが、デジタル伝送方式では、ある種の状態、例えば、あるスレッショルド値を超えると、突然、映像信号の受信不可能となる。例えばマラソン競技のテレビジョン中継を行う場合には、複数の移動中継車および受信基地を設けており、移動しながらカメラの映像を受信基地に送信するため伝送回線状況の把握が非常に困難となる。従って、このような移動中継では、上述のFPU装置に回線状況を把握するための受信補助情報を参照する手段が必須となっている。ここで、受信補助情報とは、映像信号や音声信号等の変調方式や伝送ビットレート等の伝送パラメータを含んだTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)情報、受信電界情報、デジタル直交変調されたI、Q信号を表すコンスタレーション情報、ビットエラーレート(Bit Error Rate)、OFDM伝送方式におけるガードインターバル以上の遅延を有する遅延波の遅延プロファイル情報等である。
【0004】
而して、FPU装置で映像信号や音声信号等のデータを受信する基地局では、一旦、受信基地にある受信装置でデータを受信してTS信号に復号した後、更に、その後に続くTSL(Transmitter to Studio Link)回線等の送信装置で放送局まで映像信号や音声信号等のデータを送信する多段中継システムを構成することが度々行われる。このような場合、多段中継システムにおいても、上述の受信補助情報をその後の中継伝送にて画像および音声圧縮データのTS信号と一緒に伝送することで、放送局では、操作者が遠く離れた受信基地に設置したFPU装置の受信状況の把握をすることが可能となっている。しかしながら上記のような多段中継伝送システムにおいて、FPU装置とその後に続く送信装置間の接続においては、上記受信補助情報は、映像信号や音声信号等のデータであるTS信号とは別々の伝送路で伝送されており、1つの伝送路で伝送されるようなデジタル伝送システムの実現が望まれている。また、1つの伝送路で伝送される上記受信補助情報を、例えば、放送局の操作者が簡単にモニタに表示することで回線の伝送状態が把握できるような伝送情報表示方法が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−339743号公報
【非特許文献1】標準規格、ARIB STD−B11 2.0版(テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形マイクロ波帯デジタル無線伝送システム)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような多段中継伝送システムにおいて、FPU装置とその後に続く送信装置間の接続において上記受信補助情報は、映像信号や音声信号等のデータであるTS信号とは別々の伝送路で伝送されており、1つの伝送路で伝送されるようなデジタル伝送システムの実現が望まれている。また、1つの伝送路で伝送される上記受信補助情報を、例えば、放送局の操作者が簡単にモニタに表示することで回線の伝送状態が把握できるような伝送情報表示方法が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、映像信号や音声信号等のデータと受信補助情報とを同じ伝送路で伝送できるデジタル伝送システムを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、操作者が容易にFPU装置の動作状態を把握できる伝送状態表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のデジタル伝送システムは、少なくとも映像信号を含む伝送信号を受信する受信高周波部と、上記受信高周波部からの上記伝送信号を少なくとも復調し、誤り訂正する受信制御部と、上記受信高周波部および上記受信制御部から上記伝送信号の受信状態に関する情報を印加され、受信補助情報を生成する受信補助情報生成部と、上記受信制御部からの上記伝送信号に上記受信補助情報生成部から出力される受信補助情報とを多重化するデータ多重部とから構成される。
【0010】
また、本発明のデジタル伝送システムにおいて、上記受信高周波部は、上記伝送信号の受信電界強度情報を上記受信補助情報生成部に出力し、上記受信制御部は、少なくとも上記伝送信号のビットエラー情報を受信補助情報生成部に出力し、上記受信補助情報生成部は、上記受信電界強度情報および上記ビットエラー情報に基づいて上記受信補助情報を生成するように構成される。
【0011】
また、本発明のデジタル伝送システムにおいて、上記映像信号を含む伝送信号は、ヘッダー情報領域と、ペイロード領域およびダミー情報領域からなるTS(Transport Stream)パケット信号であり、上記データ多重部は、上記受信補助情報を上記ダミー情報領域に多重化するように構成される。
【0012】
また、本発明のデジタル伝送システムにおいて、上記映像信号を含む伝送信号は、少なくともヘッダー情報領域とNull情報領域を有するTSパケット信号とからなり、上記データ多重部は、上記受信補助情報を上記Null情報領域に多重化するように構成される。
【0013】
更に、本発明の伝送状態表示方法は、伝送路を伝送する映像信号と上記映像信号の伝送状態に関係する受信補助情報とを含むTS信号を伝送するデジタル伝送システムにおいて、上記受信補助情報の上記TS信号上の位置情報に基づいて上記TS信号から上記受信補助情報を分離し、分離された上記受信補助情報を所定の映像形態に変換し、表示部に表示するように構成される。
【0014】
また、本発明の伝送状態表示方法において、上記受信補助情報は、少なくとも上記伝送路からの受信電界強度情報および上記伝送路を伝送される映像信号のビットエラー情報であり、上記表示部に上記受信電界強度情報および上記ビットエラー情報に基づいて受信電界強度およびビットエラーを表示するように構成される。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように本発明は、多段中継伝送システムにおいて、FPU装置とその後に続く送信装置間の接続において映像信号や音声信号等のデータであるTS信号と受信補助情報を1つの伝送路で伝送することが可能となり、従来のように別々の伝送路を設ける必要がなく、また、伝送される受信補助情報を放送局の操作者が簡単にモニタに表示することで回線の伝送状態を容易に把握できるというデジタル伝送システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施例の概略構成を示すブロック図である。図1において、101は、送信側処理部、102は、受信側処理部を示す。なお、受信側処理部102は、本発明のFPU装置の受信側処理部を示している。送信側処理部101は、DVB(Digital Video Broadcast)符号化処理部103、直交変調部104、送信高周波部105およびクロック発生器106から構成されている。外部の符号化器、例えば、MPEG(Moving Picture Experts Group)2の符号化処理部(図示せず。)でテレビカメラ等で撮像された画像信号がTS(Transport Stream)形式のデジタル信号Dに変換され、入力信号端子DinからDVB符号化処理部103に供給される。
【0017】
而して、TS形式のデジタル信号Dは、標準規格、ARIB STD−B11(非特許文献1参照、以下、ARIB STDと略称する。)で定められており、そのブロック構成を図2に示す。図2は、1フレームのブロック構成を示す図であって、TS形式のデジタル信号Dは、この1フレームの繰返しで構成されている。1フレームは、図2(A)で示されるように19200シンボル(symbols)からなり、波形等化用基準信号(256シンボル)、データ(TS+RS)およびスタッフィング領域から構成されている。また、波形等化用基準信号は、図2(B)に示すように参照信号(239シンボル)、TMCC信号(16シンボル)およびQ(Quadrature)パルスで構成されている。
【0018】
DVB符号化処理部103の構成は、図3で示される。図3において、TS形式のデジタル信号Dが端子301を介してエネルギー拡散部302に印加され、エネルギー拡散部302において例えば擬似ランダム系列加算でエネルギー拡散を行い、RS(Reed-Solomon)符号化部303においてRS符号化を行い、インターリーブ部304においてインターリーブを行う。RS符号化部303では、1TS(204byte)単位で誤り訂正を行う。そして、DVB符号化処理された信号は、出力端子305から出力され、直交変調部104に供給される。
【0019】
直交変調部104では、直交変調が行われる。例えば64QAM、32QAM、16QAMやQPSKなどのマッピングが行われる。例えば、64QAMの場合、同相成分の信号Iと直交成分の信号Qで表されるI−Q座標軸上に64ポイントのマッピングを行い、D/A変換部(図示せず。)、IF変換部(図示せず。)で、例えば20.45MHzのアナログIF信号に変換する。この信号は、送信高周波部105に供給され、アナログIF信号をマイクロ波帯(130MHz)に周波数変換し、電力増幅した後、アンテナ107から伝送路108を介して受信側処理部102に送信される。なお、DVB符号化処理部103および直交変調部104は、クロック発生器106が発生するクロックに同期して駆動される。
【0020】
上記実施例では、QAM変調方式について説明したが、OFDM方式の場合は、TS形式のデジタル信号Dが直交変調部105でOFDM変調され、受信側処理部102に送信される。また、OFDM方式で、ガードインターバルを持つOFDM信号は、ガードインターバル付加部(図示せず。)でガードインターバルが付加されたOFDM信号となる。なお、OFDM信号の生成は、従来から周知であり、例えば、特許文献1にも詳細に説明されているので、ここでの説明は省略する。
【0021】
次に、受信側処理部102について説明する。この受信側処理部102は、FPU装置の受信側に相当する装置である。受信側処理部102は、受信高周波部110、受信制御部111、データ多重部112、受信補助情報生成部113およびクロック発生部114から構成されている。この受信側処理部102の詳細について図4を用いて詳しく説明する。なお、図1と同じものには同じ符号が付されている。受信高周波部110は、RFアンプ401、ダウンコンバータ402およびIFアンプ403で構成されている。送信高周波部105から送られたTS形式のマイクロ波信号(例えば、130MHz)は、アンテナ109で受信され、RF(Radio Frequency)アンプ401で増幅され、ダウンコンバータ402でRF帯域の信号からIF帯域の信号、例えば、20.45MHzのアナログIF信号に変換され、IF(中間周波数)アンプ403で増幅され、受信制御部111に供給される。
【0022】
受信制御部111は、A/Dコンバータ404、直交復調部405、波形等化部406およびDVB復号化処理部407で構成されている。A/Dコンバータ404は、アナログIF信号をデジタル信号に変換し、直交復調部405に入力する。直交復調部405は、送信側処理部101の直交変調部104で直交変調された信号を同相成分のI信号と直交成分のQ信号に復調する。波形等化部406は、QAM変調方式などの振幅変調を含む方式の場合、伝送路108の特性や減衰のため、伝送される信号の波形が歪むので、この歪を除去するための波形等化を行うものである。この波形等化器406は、一般にデジタル・フィルタで構成される。
【0023】
DVB復号化処理部407は、図5に示すようにデインターリーブ部502、RS復号化部503およびエネルギー逆拡散部504から構成されている。DVB復号化処理部407は、図3で示すDVB符号化処理部とは逆の処理が行われる。即ち、波形等化部406で波形等化された信号は、端子501を介してデインターリーブ部502に印加される。デインターリーブ部502では、インターリーブ部304でインターリーブされた信号が元の信号配列に戻され、RS復号化部503においてRS復号化を行い、エネルギー逆拡散部504においてエネルギー逆拡散が行われ、元のTS形式のデジタル信号Dに戻され、出力端子506からデータ多重部112に供給される。
【0024】
データ多重部112では、DVB復号化処理部407からのTS信号と後述する受信補助情報生成部113からの信号が多重され、出力端子Doutから次段の装置に出力される。この次段の装置は、例えば、その後に続くTSL(Transmitter to Studio Link)回線等の送信装置で放送局まで映像信号や音声信号等のデータを送信する多段中継システムを構成することができ、これについては周知の技術であるので、詳細な説明は省略する。なお、A/Dコンバータ404、直交復調部405、波形等化部406、DVB復号化処理部407および受信補助情報生成部113は、クロック発生器114のクロック信号に同期して駆動される。
【0025】
次に、データ多重部112と受信補助情報生成部113について説明する。背景技術でも説明したが、デジタル伝送方式では、ある種の状態、例えば、あるスレッショルド値を超えると、突然、映像信号の受信不可能な状態となる。このような状態が発生することは、映像の配信をする事業者としては、致命的である。従って、上述のFPU装置では、常に回線状況を把握することが必須となっている。この目的のために映像信号や音声信号等の変調方式や伝送ビットレート等の伝送パラメータを含んだTMCC情報、受信電界情報、デジタル直交変調されたI、Q信号を表すコンスタレーション情報、ビットエラーレート、OFDM伝送方式におけるガードインターバル以上の遅延を有する遅延波の遅延プロファイル情報等(以下、受信補助情報と言う。)を放送局側で把握できる構成が必要である。
【0026】
図4において、受信補助情報生成部113には、RFアンプ401から受信電界強度情報a、直交復調部405からはTMCC情報b、波形等化部406からは波形等化情報c、DVB符号化処理部407からはビットエラー情報d等の各受信補助情報が供給されるように構成されている。
【0027】
まず、RFアンプ401について図6(A)を用いて説明する。図6(A)は、RFアンプ401の概略構成を示すブロック図である。アンテナ109で受信された信号は、入力端子601を介して増幅部602に供給され、その出力は、出力端子603からダウンコンバータ402に供給される。レベル制御部604は、増幅部602の出力レベルを監視し、出力レベルが適性レベルとなるように増幅部602をAGC(Automatic Gain Control)制御するものである。レベル制御部604の制御信号aは、受信アンテナで受信される電界強度の変化に基づいて変化する情報であるので、この電界強度情報aが出力端子605から受信補助情報生成部113に供給される。
【0028】
直交復調部405からTMCC情報bを得る回路の一例を図6(B)に示す。直交復調部405は、先に説明したように直交変調された信号を同相成分のI信号と直交成分のQ信号に復調する。そのためには、受信されたTSデジタル信号の変調方式等を検出する必要がある。例えば、QAM方式のTMCC情報は、ARIB STDでは、変調方式、誤り訂正、ビットレート等の情報が図2に示すように所定の情報ビット(16ビット)のTMCC信号としてTS信号に含めて送信される。従って、A/Dコンバータ404からのTSデジタル信号が入力端子608を介して直交復調部405に供給されると、TMCC識別部609は、TS信号からTMCC情報を識別し、この情報に従ってTS信号から直交変調された信号を同相成分のI信号と直交成分のQ信号に復調する。従って、このTMCC識別部609で識別されたTMCC情報は、TMCC情報bとして端子610から取出され、受信補助情報生成部113に供給される。
【0029】
また、波形等化部406は、一般にデジタルフイルタで構成されているので、波形等化の際のフィルタ係数や、波形等化残値、波形等化後の同相成分Iと直交成分Qを含んだコンスタレーション情報などの情報cが出力される。なお、ガードインターバルを具えたOFDM変調方式等では、ガードインターバルの幅を超える遅延波(一般には、マルチパスによる反射波と呼ばれる。)の有無の情報も含めることができ、これは主波と反射波を示すゴースト状態表示情報となる。
【0030】
図6(C)は、ビットエラーレート(BER)を検出する回路の一例を示している。波形等化部406で波形等化された信号は、端子611からDVB符号化処理部407に供給され、その出力は、出力端子613からデータ多重部112に供給される。RS復号化部503は、従来から知られているように符号誤りを訂正し、元のデータに復元するものである。従って、RS訂正前エラーカウンタ612で符号誤りをカウントすることによってBERを算出できる。このBER情報dが出力端子614から取出され、受信補助情報生成部113に供給される。
【0031】
受信補助情報生成部113では、上述した電界強度情報a、TMCC情報b、コンスタレーション情報などの情報cおよびBER情報d等の各種の情報から受信補助情報eを生成し、データ多重部112に供給する。
【0032】
ここで、受信制御部111から出力されるTS信号について、図7(A)を用いて説明する。図7(A)は、64QAM変調方式(最大79.056Mbit/s)において用いられる1TS信号(以下、1TSパケットと称する。)の内容を示すもので、701は、ヘッダ情報領域(4byte)、702は、ペイロード(Payload)情報領域、即ち、データ伝送領域(184byte)、703は、ダミー情報領域(16byte)を示す。従って、1TSパケットは、204byteで構成されている。また、79.056Mbit/sのデータレートの64QAM変調方式では、図2に示すスタフィング領域は、0シンボルと定められているので、1フレームのデータ(TS+RS)領域には、下記(1)式に示すように約70個のTSパケットのデジタルデータがデータ多重部112に供給される。
【0033】
d=(a×b)/c=(18944×6)/1632≒70(個/フレーム)・・(1)
ここで、d:1フレーム中のTSパケットの数、a:1フレームのデータのシンボル数(19200−256=18944symbols/フレーム)、b:1シンボルのビット数(6bits/symbols)、c:1TSパケットのデータの情報量(204byte/TS)=1632(bits/TS)を表す。
【0034】
なお、ダミー情報領域703は、本来、誤り訂正のためのパリテイビット等が挿入されている領域であるが、既に、DVB符号化処理部407で誤り訂正がなされているので、この領域は不要である。従って、この領域をダミー情報領域703と称する。本発明は、このダミー情報領域703を利用して前述した受信補助情報eを伝送する。
【0035】
受信補助情報生成部113には、先に説明したように電界強度情報a、TMCC情報b、コンスタレーション情報などの情報cおよびBER情報dの各種の情報が入力される。従って、受信補助情報生成部113では、これらの情報を適宜処理し、図7(B)に示す受信補助情報eを生成する。例えば、TMCC情報bは、16ビット(bit)で表現し、第1番目と第2番目の2バイト(byte)に割付ける。ここで、1バイト(byte)は、8ビット(bit)で構成されている。電界強度情報aは、8ビット(bit)で表現し、第3番目の1バイト(byte)に割付ける。コンスタレーション情報や波形等化用のフィルタ係数などの情報cは、同相成分I:8ビット(bit)、直交成分Q:8ビット(bit)の16ビット(bit)、波形等化用フィルタ係数として同相成分I:8ビット(bit)、直交成分Q:8ビット(bit)の16ビット(bit)、合計32ビット(bit)で表現し、第4番目〜第7番目の4バイト(byte)に割付ける。また、BER情報dは、16ビット(bit)で表現し、第8番目と第9番目の2バイト(byte)に割付ける。このように後段に伝送すべき情報を図7(B)に示すようにダミー情報領域703と同じ16バイト(byte)で適宜構成し、受信補助情報eを生成する。なお、16バイトに満たない場合、余りの領域には、例えば、“111・・・”のようにダミー情報が付加される。この受信補助情報eは、データ多重部112に供給され、クロック発生器114に同期して図7(A)に示される1TSパケットのダミー情報領域703の内容をこの受信補助情報eで書き換える。この書き換えられたTSパッケトを図7(C)に示す。即ち、ダミー情報領域703は、受信補助情報eで書き換えられ、受信補助情報領域704となる。このように1TSパケットのダミー情報領域703が受信補助情報eで書き換えられた信号は、端子Doutから後段の所定の装置、例えば、TSL(Transmitter to Studio Link)回線等の送信装置で放送局まで伝送される。その結果、TSパケットでは、映像・音声の情報に多重された受信補助情報eが伝送できるので、従来のように受信補助情報eをTSパケットとは別の伝送路で伝送する必要がなく、極めて簡単な構成のデジタル伝送システムが実現できる。なお、1フレーム中には、約70個のTSパケットのデジタルデータが存在するので、それぞれのTSパケットに受信補助情報領域704が挿入され伝送される。
【0036】
なお、以上の説明では、TSパケットのダミー情報領域703に受信補助情報eを重畳して伝送する場合について説明したが、他の領域に受信補助情報eを挿入して伝送することもできる。これについて図8を用いて説明する。周知のように放送用のTS信号は、32.5Mbpsの伝送速度(デジタル放送伝送システムの標準規格)で送信されるようになっている。一方、上述したFPU装置では、例えば、64QAM変調方式では、最大79.056Mbpsの伝送速度(実用されているFPU装置では、60Mbps)が用いられるため、図2で示した1フレーム(約70TSパケット)では、1/2程度のTSパケットには、映像信号や音声信号がないTSパケットが存在する。従って、図8に示すように、例えば、最初のTSパケットのペイロード領域702には、映像信号、音声信号の情報が伝送されるが、次のTSパケットでは、Null 情報、即ち、ダミー情報、例えば、“1111・・・”のビット列が伝送される。以下、これをNullパッケットと称する。
【0037】
従って、本実施例では、このNullパッケットのNull情報領域801に上述の受信補助情報eを挿入する。挿入する方法は、上述した場合と同様に図4で示されるデータ多重部112で挿入される。即ち、受信制御部111から図8に示すフレーム構成のTS信号がデータ多重部112に供給される。データ多重部112では、受信補助情報生成部113から送られてくる受信補助情報eをクロック発生器114からのクロックに同期してNullパケットのNull情報領域801の、例えば、“1111・・・”の内容を受信補助情報eで書き換える。このようにして書き換えられたフレーム構成のTS信号は、Doutから後段の装置に伝送される。
【0038】
次に、本発明の他の一実施例を図9を用いて説明する。図9は、上述のようにして送られてきた受信補助情報eを再生する場合の概略構成を示すブロック図である。図9において、901は、入力端子、902は、TS信号復号化処理部、903は、映像・音声信号処理部、904は、出力端子、905は、受信補助情報e分離処理部、906は、補助情報再生部、907は、制御部および908は、表示部である。以下、動作について説明する。入力端子901には、本発明のFPU装置102の出力端子Doutから伝送されるTS信号が供給される。なお、出力端子Doutから前述したようにTSL(Transmitter to Studio Link)回線等の送信装置で放送局まで映像信号や音声信号等のデータを送信する多段中継システムの場合には、出力端子Doutから出力されるTS信号は、再度、送信側処理部101で説明したような処理を行い、マイクロ波回線で放送局等に送られる。放送局では、マイクロ波で送られたTS信号を元のTS信号に変換し、入力端子901に供給される。これらの信号処理については、従来の装置と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
而して、入力端子901に供給された図2に示されるTS信号は、TS信号復号化処理部902でTS信号を元の映像信号、音声信号に復号し、映像・音声処理部903に供給する。映像・音声処理部903は、例えば、放送局設備であって、各家庭のTV受像機に電波を送信するための処理がなされ、出力端子904からアンテナに映像・音声信号が供給される。
【0040】
一方、入力端子901に供給された図7(C)に示されるTS信号は、受信補助情報e分離処理部905および制御部907に供給される。制御部907は、図7(C)に示されるTS信号から各TSパケットのヘッダー情報701に基づき図7(C)に示す受信補助情報領域704の位置情報(バイト位置情報)および図7(B)に示す各情報a、b、c、d等の位置情報(バイト位置情報)を検出する。受信補助情報e分離処理部905では、制御部907からの受信補助情報領域704の位置情報に基づきTSパケットから受信補助情報領域704を分離する。受信補助情報e分離処理部905で分離された受信補助情報領域704(16バイト)は、補助情報再生部906に供給される。補助情報再生部906では、制御部907からの各情報a、b、c、d等の位置情報から電界強度情報a、TMCC情報b、コンスタレーション情報などの情報cおよびBER情報dの各情報を再生し、且つ、必要な表示形式に変換して表示部908に表示する。
【0041】
表示部908に表示された受信補助情報の一例を図10に示す。図10において、電界強度情報aは、表示画面1001上の右下に小ドットを積み重ねたブロックを数列配置したものとして表示される。そして電界強度が強くなると実線の小ドットの数が増えるので、その数によりUPF装置102の受信電波の電界強度が分かる。BER情報dの映像は、表示画面1001上の右上に中程度のサイズのドットブロックとして表示され、BERが大きくなると実線のブロックの数が増加することで、ビットエラーレートが大きいことが分かる。また、上記説明では省略したが、例えば、OFDM方式で、ガードインターバルを付加されたOFDM信号の場合、図6(B)で示す直交復調部で同相成分Iと直交成分Qが分離されるが、このI−Q信号から伝送信号の相関出力を収集し、これを受信補助情報eとして伝送し、上述と同様に表示部908に表示すると、ゴースト状態表示映像として折線グラフのように主波と反射波を表示し、時間目盛とガード期間とを対応付けて表示することもできる。更に、TMCC情報bやコンスタレーション情報などの情報c等も必要に応じて表示することができる。なお、補助情報再生部906で補助情報を再生し、表示部908の表示画面1001に映像表示できるように変換することについては、例えば、同じ出願人が既に出願している特開2001−339743号(出願日:平成12年8月28日)(特許文献1参照)に詳細に説明されているので、ここでは説明を省略する。
【0042】
このように遠方に離れているFPU装置102の電波の受信状況を表示部908に表示することにより放送局にいる操作者は、容易にFPU装置102の電波の受信状況を把握できるので、FPU装置102の受信状態が悪くなり始めると、放送局にいる操作者は、他のFPU装置からの映像信号を受信するように切替えることが可能となる。従って、デジタル伝送方式では、突然、映像信号の受信不可能となる等の放送トラブルを事前に察知し、放送が中断する等のトラブルを大幅に改善することができる。
【0043】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載されたデジタル伝送システムおよび伝送状態表示方法の実施例に限定されるものではなく、上記以外のデジタル伝送システムおよび伝送状態表示方法に広く適応することが出来ることは、言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明で使用される伝送信号のフレーム構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施例で使用されるDVB符号化処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明で使用されるデジタルFPU装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施例で使用されるDVB復号化処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施例で使用されるRFアンプ、直交復調部、DVB復号化処理部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明で使用される1TSパッケットの構成を説明するための図である。
【図8】本発明で使用される伝送信号の他のフレーム構成を示す図である。
【図9】本発明の他の一実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図10】図9で示す実施例の表示部に表示される画面の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
101:送信側処理部、102:受信側処理部、103:DVB符号化処理部、104:直交変調部、105:送信高周波部、106、114:クロック発生器、107:送信アンテナ、108:伝送路、109:受信アンテナ、110:受信高周波部、111:受信制御部、112:データ多重部、113:受信補助情報生成部、301、501、601、608、611、901:入力端子、302:エネルギー拡散部、303:RS符号化部、304:インターリーブ部、305、505、603、613、904:出力端子、401:RFアンプ、402:ダウンコンバータ、403:IFアンプ、404:A/Dコンバータ、405:直交復調部、406:波形等化部、407:DVB復号化処理部、502:デインターリーブ部、503:RS復調部、504:エネルギー逆拡散部、602:増幅器、604:レベル制御器、607、610、614:情報出力端子、609:TMCC識別部、612:RS訂正前エラーカウンタ、701:ヘッダー情報、702:ペイロード情報、703:ダミー情報、704:受信補助情報、801:Null情報、902:TS信号復号化処理部、903:映像・音声処理部、905:情報分離処理部、906:補助情報再生部、907:制御部、908:表示部、1001:表示画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも映像信号を含む伝送信号を受信する受信高周波部と、上記受信高周波部からの上記伝送信号を少なくとも復調し、誤り訂正する受信制御部と、上記受信高周波部および上記受信制御部から上記伝送信号の受信状態に関する情報を印加され、受信補助情報を生成する受信補助情報生成部と、上記受信制御部からの上記伝送信号に上記受信補助情報生成部から出力される受信補助情報とを多重化するデータ多重部とを具えたことを特徴とするデジタル伝送システム。
【請求項2】
請求項1記載のデジタル伝送システムにおいて、上記受信高周波部は、上記伝送信号の受信電界強度情報を上記受信補助情報生成部に出力し、上記受信制御部は、少なくとも上記伝送信号のビットエラー情報を受信補助情報生成部に出力し、上記受信補助情報生成部は、上記受信電界強度情報および上記ビットエラー情報に基づいて上記受信補助情報を生成することを特徴とするデジタル伝送システム。
【請求項3】
伝送路を伝送する映像信号と上記映像信号の伝送状態に関係する受信補助情報とを含むTS信号を伝送するデジタル伝送システムにおいて、上記受信補助情報の上記TS信号上の位置情報に基づいて上記TS信号から上記受信補助情報を分離し、分離された上記受信補助情報を所定の映像形態に変換し、表示部に表示することを特徴とする伝送状態表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−157337(P2006−157337A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343434(P2004−343434)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】