説明

デジタル放送受信装置

【課題】不特定多数のユーザが利用する、多数のデジタル放送受信装置が設置される施設内で、各装置に装着されているB−CASカードのカードIDを容易且つ確実に管理する。
【解決手段】不特定多数のユーザに使用される施設構内に設置され、その媒体固有の識別情報を固定記憶し、且つ視聴制限をかけられた放送の解除情報を記憶可能なカード状媒体を装着し、デジタル放送の受信により得られる上記解除情報を上記カード状媒体に記憶させる複数のデジタル放送受信装置8,8,…と、複数のデジタル放送受信装置8,8,…各々が装着しているカード状媒体の識別情報を予め記憶し、該デジタル放送受信装置8,8,…からその時点でそれぞれが装着しているカード状媒体の識別情報を取得し、取得した識別情報を記憶していた識別情報と対応付けて表示するフロントコンピュータ4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホテルや旅館等の宿泊施設、あるいは病院施設等で、不特定多数の利用者が視聴制限のかけられたデジタル放送を視聴するデジタル放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
BSデジタル放送、110°CSデジタル放送及び地上波デジタル放送を受信する衛星デジタル放送対応のテレビ受像機やチューナ装置では、CAS(Conditional Access System)と呼称される、視聴制御システムの機能が予め内蔵されており、所定の業者((株)ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ)との契約を行なうことで、当該業者が発行及び管理する専用のICカード(以下「B−CASカード」と称する)を装置の所定のカードスロットに挿入すると、無料放送やデータ放送による双方向サービスを始めとする番組の視聴、利用、コピー制御を可能としている。
【0003】
さらに、別途放送事業者との契約を行なうことで、契約情報をB−CASカードに記憶させると、ペイ・パー・ビューを含む有料放送等も視聴可能となる。
【0004】
上記B−CASカードに係るユーザ登録は、テレビ受像機やチューナ装置などの製品購入時に装置に該B−CASカードと共に添付されている登録用のはがきを上記所定の業者に送付するか、上記所定の業者がインターネット上に開設するウェブサイトでB−CASカードの裏面に記載された20桁からなるID番号(以下「カードID」と称する)等の所定事項を記入することで登録が実行される。
【0005】
有料番組の視聴に対しては、製品購入時に装置に添付されている各放送事業者の加入申込書、電話、または各放送事業者がインターネット上に開設するウェブサイトで、上記カードID等の所定事項を記入あるいは通知して契約を行なうことで、視聴が可能となる。
【0006】
この点をより詳細に説明すると、当該放送事業者が契約を受付けた後、ユーザが上記テレビ受像機またはチューナ装置で契約した放送事業者の番組に合わせて待機すると、早ければ数十分の内に当該事業者から送信されるトランスポートストリーム(TS)を受信し、受信したトランスポートストリームに対してデマルチプレクサでその中に多重化されている映像等の情報と個別情報のEMM(Entitlement Management Message)情報と番組情報、制御情報のECM(Entitlement Control Message)情報に分離する。
【0007】
上記分離したEMM情報をデコードした上で契約情報を上記B−CASカードに記憶させ、またスクランブルされたECM情報をデコードし、映像等の情報のデスクランブル処理を実行することで、契約した有料番組を視聴することが可能となる。
【0008】
このB−CASカードに関する技術が、以下の特許文献に詳述されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平04−138735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般家庭などでユーザが所持する上記B−CASカードは、上記ユーザの自己管理に委ねられており、万一紛失した場合には、上記所定の業者に届け出て旧カードを無効にした後に新しいカードが再発行される。この場合、旧カードを永久に無効とするために、新しいカードはカードIDが更新されるようになっている。
【0010】
BSデジタル放送や110°CSデジタル放送及び地上波デジタル放送を受信する各装置で、上記B−CASカードを装着している状態ではカードIDなどの情報を装置側のメモリに読み込んでおり、装置付属のリモコンパッドでのキー操作等により読み込んでいるカードIDなどの情報を表示させて確認することができる。
【0011】
その反面、上記B−CASカードを装置から取り外すと、装置側のメモリに読み込まれていた情報は一括して消去されるため、カードID等を確認することはできなくなる。
【0012】
しかるに、ホテルや旅館などの宿泊施設、あるいは病院施設等の不特定多数のユーザが見込まれる施設内では、上述したようなデジタル放送の受信装置を導入するに際して、客室や病床毎に設置する個々の受信装置毎に、B−CASカードを装置外面からは容易に取り外すことができないようにカードスロット等を外部に露出させず、装置内部に装着するものとし、併せて装置のシリアル番号と共に装着したB−CASカードのカードIDを装置底面等のラベルに記入しておくことで管理されているのが実状である。
【0013】
しかしながら、不測の盗難などで装置から上記B−CASカードが抜き取られ、あるいはB−CASカードを装着したデジタル放送受信装置自体が紛失してしまった場合、装着されていたB−CASカードのカードIDの内容も失われてしまうものとなり、施設管理者にとってはそれらを容易且つ確実に把握可能とすることが責務となっている。
【0014】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、不特定多数のユーザが利用する、多数のデジタル放送受信装置が設置される施設内で、各装置に装着されているB−CASカードのカードIDなどを確実に管理し、カード自体が失われてしまった場合でもそのカードIDを容易に把握することが可能なデジタル放送受信システム及びデジタル放送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1記載の発明は、不特定多数のユーザに使用される施設構内に設置されたデジタル放送受信装置であって、上記装置に装着され、その媒体固有の識別情報を固定記憶し、且つ視聴制限をかけられた放送の解除情報を記憶可能なカード状媒体と、このカード状媒体の記憶している識別情報を装置の電源投入状態によらず記憶する記憶手段と、この記憶手段が記憶する識別情報を所定操作により出力する操作手段とを具備したことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記記憶手段は、上記カード状媒体の識別情報の他に管理用識別情報を記憶し、上記操作手段は、管理用識別情報を入力することにより上記記憶手段が記憶するカード状媒体の識別情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、カード状媒体が失われた場合で確実にその識別情報を出力させることができるため、不特定多数のユーザが利用する、多数のデジタル放送受信装置が設置される施設内で、各装置に装着されているカード状媒体の識別情報などを確実に管理し、カード状媒体自体が失われてしまった場合でもその識別情報を容易に把握することが可能となる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、ある程度の秘匿性を保ちながら、管理者側がより容易にカード状媒体の識別情報を出力させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下本発明を例えばホテル施設館内に設置したデジタル放送受信装置を含むデジタル放送受信システムに適用した場合の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、ホテル館内の該デジタル放送受信システム全体の構成を示すものである。同図で、BS・CS放送アンテナ1で受信し、図示しないコンバータで周波数変換した中間周波信号と、地上波デジタル放送アンテナ2で受信した信号とが混合器3で同一周波数軸上に配列されて混合された後に、混合器6に送られる。
【0021】
この混合器6にはまた、フロントコンピュータ4からの双方向通信データ回線5が接続されている。
【0022】
しかるに、混合器6での混合信号がこのシステムの配信網を構成する同軸伝送ライン7を通じて、ホテル館内の各客室GR内に配置されたデジタル放送受信装置8まで伝送される。
【0023】
デジタル放送受信装置8は、リモコンパッド10でのキー操作に対応した選局動作を実行し、モニタ装置9で画像及び音声を再生出力させる。
【0024】
次いで図2によりフロントコンピュータ4の構成を説明する。同図において、フロントコンピュータ4は、双方向通信データ回線5に接続されたコンピュータ本体11を中心とし、例えばスピーカを組込んだ液晶ディスプレイでなるモニタ12、キーボード13、ポインティングデバイスとしてのマウス14、プリンタ15等の一般的なハードウェア構成をとる。
【0025】
上記コンピュータ本体11内には、図示しないフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを封入したメモリカードを挿入するメモリカードスロットを備え、後述するポーリング処理時にこのメモリカードに記憶される、全デジタル放送受信装置8,8,‥‥に装着されたB−CASカードのカードIDを用いる。
【0026】
続いて図3により上記客室GR内のデジタル放送受信装置8の詳細な回路構成について説明する。図中、同軸伝送ライン7から送られてきた信号は分波器21でBS・110°CS放送の中間周波信号と、地上波デジタル放送の受信信号とに分波され、デジタル放送受信部22内の図示しないBS・110°CSデジタルチューナ及び地上波デジタルチューナに送られる。
【0027】
デジタル放送受信部22では、後述する制御部27からの信号に基づいて、上記リモコンパッド10での選局操作に対応したチャンネルを上記BS・110°CSデジタルチューナまたは地上波デジタルチューナで選局し、該当するチャンネルのトランスポートストリーム(TS)を復調して出力する。
【0028】
しかるにこのデジタル放送受信部22内では、復調したトランスポートストリームに対し、デマルチプレクサで多重化されている映像等の情報と、個別情報のEMM情報と番組情報、制御情報のECM情報に分離する。
【0029】
上記分離したEMM情報をデコードして契約情報を取得し、その取得した契約情報をCASカードスロット25に挿入される図示しないB−CASカードに記憶させ、またスクランブルがかけられているECM情報をデコードすることで、映像等の情報のデスクランブル制御を行ない、デジタル放送受信部22内で時間的に連続した映像データとステレオ音声データとを生成し、生成した映像データを映像出力端子23より、音声データを音声出力端子24よりそれぞれ出力する。
【0030】
これら映像出力端子23及び音声出力端子24は、このデジタル放送受信装置8と共に客室内に設置された、上記モニタ装置9のビデオ入力端子、音声入力端子に接続され、このモニタ装置9で映像と音声が再生出力されることで、客室GRのユーザ(宿泊客等)がデジタル放送を視聴可能となる。
【0031】
このデジタル放送受信装置8は、上述した如くCASカードスロット25を備え、B−CASカードを挿入することでホテル管理側が設定したデジタル放送の番組、チャンネルを視聴可能となるものであるが、該ユーザがB−CASカードを容易に抜き出すことができないように、CASカードスロット25はデジタル放送受信装置8の外面には一切露出せず、内蔵するものとしている。
【0032】
なお、このB−CASカードには固有の上記カードIDが予め記憶されており、ユーザの識別が可能となっている。
【0033】
さらにデジタル放送受信装置8には電話回線接続端子26が接続される。この電話回線接続端子26は、デジタル放送受信部22内の図示しないモデムと接続されるもので、デジタル放送受信部22内の制御に基づいて、データ放送の双方向サービスを行なう場合などにリクエスト情報等を図示しない電話回線を介して発信することも可能となっている。
【0034】
制御部27は、CPUとこのCPUの動作プログラム等を不揮発的に記憶したフラッシュメモリ、及びワークメモリ等から構成され、上記デジタル放送受信部22と高周波モデム28、及びリモコン受光部29と接続されて、このデジタル放送受信装置8全体の制御動作を実行する。
【0035】
この制御部27の上記フラッシュメモリ内には、このデジタル放送受信装置8の固有のアドレス番号が記憶されており、このアドレス番号によりフロントコンピュータ4が他の客室GRのデジタル放送受信装置8と識別することが可能となっている。
【0036】
高周波モデム28は、上記同軸伝送ライン7、双方向通信データ回線5を介して接続されるフロントコンピュータ4と、高周波FSK変調で上り/下りの両データ通信による双方向通信機能を実現するもので、フロントコンピュータ4からの下りデータ通信で当該デジタル放送受信装置8に対する視聴制限等の制御情報、各種設定情報を受信し、フロントコンピュータ4への上りデータ通信で有料番組を視聴した課金情報や応答情報等を送信する。
【0037】
リモコン受光部29は、上記リモコンパッド10でのキー操作に対応した赤外線変調信号を受信、復調してその操作内容を上記制御部27へ送出する。
【0038】
次に上記実施の形態の動作について説明する。
尚、上述した如く上記複数のデジタル放送受信装置8,8,‥‥が、いずれもその客室GRの番号に対応したアドレス番号を制御部27内のフラッシュメモリに記憶している一方で、フロントコンピュータ4も全室の上記客室番号に対応したアドレス番号をテーブルとしてメモリカードに記憶しており、通常はポーリング処理により各デジタル放送受信装置8と個別に通信する。
【0039】
図4は、フロントコンピュータ4が各客室GR,GR,‥‥毎に設置されているデジタル放送受信装置8,8,‥‥に対して実施するポーリング処理の内容を示すものである。
【0040】
図5は、この一連のポーリング処理を実行する前にフロントコンピュータ4のメモリカードに記憶されている、各デジタル放送受信装置8に装着されたB−CASカードに関する初期のテーブルを示すもので、「客室番号」「受信装置アドレス番号」「登録カードID」及び「取得カードID」の4つの項目を全客室分だけ記憶している。これらの項目のうち、「取得カードID」に関してはポーリング処理前であるので図示する如くいずれも空欄となっている。
【0041】
しかして、ポーリング処理の当初には、まずデジタル放送受信装置8を指定するアドレスnに初期値「0101」を挿入する(ステップA01)。
その後、アドレスnに従ったデジタル放送受信装置8に対して、所定のフォーマットのポーリング送信により、その時点で装着しているB−CASカードのカードIDを返信する要求信号を送信し、その要求に対する応答としてカードIDを返信してくるとそれを取得して上記テーブルの「取得カードID」の項目に記憶させる(ステップA02)。
【0042】
その後、その時点でのアドレスnの値が最終値「N」となっているか否かによりすべてのデジタル放送受信装置8からのB−CASカードのカードIDの取得が終了したか否かを判断する(ステップA03)。
【0043】
アドレスnの値が最終値「N」となっておらず、すべてのカードIDの取得がまだ終了していないと判断すると、アドレスnの値を「+1」更新設定した上で(ステップA04)、再び上記ステップA02からの処理に戻る。
【0044】
こうしてステップA02〜A04の処理を繰返し実行することにより、すべての客室GR,GR,‥‥に設置されているデジタル放送受信装置8,8,‥‥からそれぞれその時点で装着しているB−CASカードのカードIDを取得してメモリカードのテーブルに記憶する。
【0045】
そして、アドレスnの値が「N」であり、カードIDの取得が終了するとステップA03でこれを判断し、テーブル中の各デジタル放送受信装置8毎に「登録カードID」と「取得カードID」の内容を照合し(ステップA05)、その結果、それらすべてが一致したか否かを判断する(ステップA06)。
【0046】
ここで、すべての客室GR,GR,‥‥に設置されているデジタル放送受信装置8,8,‥‥から取得した、その時点で装着しているB−CASカードのカードIDが対応する登録カードIDと一致したと判断した場合には、なんら異常は発生していないものとしてモニタ12で異常なしのメッセージ表示を行ない(ステップA07)、以上で一連の図4の処理を終了して、上記ステップA01に戻り、同様に次のポーリング処理を実行する。
【0047】
図6は、取得したカードIDが登録カードIDとすべて一致した場合にフロントコンピュータ4のコンピュータ本体11に装着されているメモリカードに記憶されるテーブルの内容を例示するものである。
【0048】
この場合、フロントコンピュータ4のモニタ12では、例えば「カードID異常なし」のような文字メッセージがその判断した時点での時刻データと共に表示されることとなる。
【0049】
また、上記ステップA06ですべての客室GR,GR,‥‥に設置されているデジタル放送受信装置8,8,‥‥から取得した、その時点で装着しているB−CASカードのカードIDと対応する登録カードIDとの少なくとも1つが一致しないと判断した場合には、なんらかの異常が発生したものとして、モニタ12でその異常が発生した客室GRを報知するような異常ありのメッセージ表示を行なうと共に、プリンタ15でもその内容をプリントアウトする(ステップA08)。
【0050】
図7は、取得したカードIDと登録カードIDの一部が一致していない場合にフロントコンピュータ4のコンピュータ本体11に装着されているメモリカードに記憶されるテーブルの内容を例示するものである。
【0051】
この場合、客室番号「202」、アドレス番号「0202」の取得カードIDが、図中にハッチングで示すように予め記憶されていた登録カードIDと一致していないことがわかる。
【0052】
因みに、この場合の取得カードIDの内容「0000 0000 ‥‥0000」は、正確には当該デジタル放送受信装置8のCASカードスロット25にB−CASカードが装着されておらず、カードIDを読出すことができなかったことを例示している。
【0053】
また、デジタル放送受信装置8のCASカードスロット25にB−CASカードが装着されていないのではなく、デジタル放送受信装置8自体がなんらかの理由で客室GRから消失してしまった場合には、フロントコンピュータ4からのポーリング処理に応答することができないので、フロントコンピュータ4ではこれを判断してその旨を示す別の取得カードIDとしてテーブルに記憶させる。
【0054】
このような異常の発生を検出した場合にフロントコンピュータ4のコンピュータ本体11では、上記テーブル中の「客室番号」「登録カードID」「取得カードID」の各情報と異常検出した日時のデータとを一組のデータとして作成し、これにしたがって異常が発生した客室GRを特定するようなメッセージとデータとを図8に示すようにモニタ12に表示させる。
【0055】
併せてコンピュータ本体11は、図9に示すようにプリンタ15でも異常を検出したIDカードに関するデータをプリントアウトするもので、カードIDに異常が発生したこととその検出日時、客室番号と登録カードID、及び取得カードIDを印字している。
【0056】
したがって、フロントコンピュータ4を扱うホテル側の管理業務者は、表示及びプリントアウトされた内容から、客室「202」に設置されたデジタル放送受信装置8のB−CASカードがCASカードスロット25から抜き取られていることを把握できる。
【0057】
このように、このホテルのフロントコンピュータ4で、各客室GR,GR,‥‥に設置されているデジタル放送受信装置8,8,‥‥それぞれが装着しているB−CASカードのカードIDを予め記憶しておき、ポーリング処理等によりその時点でそれぞれが装着しているB−CASカードのカードIDを取得してそれらを対応付けて照合し、合致しないものを異常が発生したものとして検出して報知するようにした。
【0058】
したがって、予め記憶しておいた登録カードIDと合致しないカードIDとなる端末側の装置をモニタ12の画面上でより容易に認識することができ、B−CASカード自体が失われてしまった場合でもそのカードIDを容易に把握し得る。
【0059】
また、上記実施の形態では、異常を検出した場合のみ上記図8及び図9に示した如くその登録カードIDと取得カードIDとをモニタ12に表示させ、プリンタ15でプリントアウトするものとして説明したが、異常の検出の有無によらず、上記図6または図7でテーブルの内容を示した如く全客室GR,GR,‥‥のデジタル放送受信装置8,8,‥‥毎に登録カードIDと取得カードIDとを対応付けて表示させるものとしてもよい。
【0060】
なお、上記実施の形態では、フロントコンピュータ4のコンピュータ本体11に装着されたメモリカードに、予めすべての客室GR,GR,‥‥に設置されているデジタル放送受信装置8,8,‥‥それぞれが装着しているB−CASカードのカードIDを予め記憶しておくものとして説明したが、その記憶作業としては、フロントコンピュータの管理業務者がキーボード13でスーパーバイザモードで個々にカードIDをキー入力するものとしてもよいし、または各デジタル放送受信装置8,8,‥‥を客室GR,GR,‥‥に設置して電源を投入した際、あるいは新たなB−CASカードを装着した際などにフロントコンピュータ4のポーリング処理により自動的にB−CASカードのカードIDをアップロードして記憶させるようにしてもよい。
【0061】
(第2の実施の形態)
以下本発明を例えばホテル施設館内に設置したデジタル放送受信装置に適用した場合の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0062】
図10は、ホテル館内のデジタルテレビ放送システムを経由して放送信号を受け取るデジタル放送受信装置の構成を示すものである。同図で、BS・CS放送アンテナ31で受信し、図示しないコンバータで周波数変換した中間周波信号と、地上波デジタル放送アンテナ32で受信した信号とが混合器33で同一周波数軸上に配列されて混合された後に、このシステムの配信網を構成する同軸伝送ライン34を通じて、ホテル館内の各客室内に配置されたデジタル放送受信装置35まで伝送される。
【0063】
デジタル放送受信装置35は、リモコンパッド36での操作に対応した選局動作を実行するもので、同軸伝送ライン34から送られてきた信号は分波器41でBS・CS放送の中間周波信号と、地上波デジタル放送の受信信号とに分波され、デジタル放送受信部42の図示しないBS・CSデジタルチューナ及び地上波デジタルチューナに送られる。
【0064】
デジタル放送受信部42では、後述する制御部47からの信号に基づいて、上記リモコンパッド36での選局操作に対応したチャンネルを上記BS・CSデジタルチューナまたは地上波デジタルチューナで選局し、該当するチャンネルのトランスポートストリーム(TS)を復調して出力する。
【0065】
しかるにこのデジタル放送受信部42内では、復調したトランスポートストリームに対し、デマルチプレクサで多重化されている映像等の情報と、個別情報のEMM情報と番組情報、制御情報のECM情報に分離する。
【0066】
上記分離したEMM情報をデコードして契約情報を取得し、その取得した契約情報をCASカードスロット45に挿入される図示しないB−CASカードに記憶させ、またスクランブルがかけられているECM情報をデコードすることで、映像等の情報のデスクランブル制御を行ない、デジタル放送受信部42内で時間的に連続した映像データとステレオ音声データとを生成し、生成した映像データを映像出力端子43より、音声データを音声出力端子44よりそれぞれ出力する。
【0067】
これら映像出力端子43及び音声出力端子44は、このデジタル放送受信装置35と共に客室内に設置された、図示しないモニタテレビまたはテレビ受像機(以下「モニタ装置」と称する)のビデオ入力端子、音声入力端子に接続され、このモニタ装置で映像と音声が再生出力されることで、客室のユーザ(宿泊客等)がデジタル放送を視聴可能となる。
【0068】
このデジタル放送受信装置35は、上述した如くCASカードスロット45を備え、B−CASカードを挿入することでホテル管理側が設定したデジタル放送の番組、チャンネルを視聴可能となるものであるが、該ユーザがB−CASカードを容易に抜き出すことができないように、CASカードスロット45はデジタル放送受信装置35の外面には一切露出せず、内蔵するものとしている。
【0069】
なお、このB−CASカードには固有のカードIDが予め記憶されており、ユーザの判別が可能となっていると共に、そのカードIDは読出されて後述する制御部47内のフラッシュメモリに記憶されるものとする。
【0070】
さらにデジタル放送受信装置35には電話回線接続端子46が接続される。この電話回線接続端子46は、デジタル放送受信部42内の図示しないモデムと接続されるもので、デジタル放送受信部42内の制御に基づいて、データ放送の双方向サービスを行なう場合などにリクエスト情報等を図示しない電話回線を介して発信することも可能となっている。
【0071】
制御部47は、CPUとこのCPUの動作プログラム等を不揮発的に記憶したフラッシュメモリ、及びワークメモリ等から構成され、上記デジタル放送受信部42と磁気カードリーダ・ライタ48、及びリモコン受光部49と接続されて、このデジタル放送受信装置35全体の制御動作を実行する。
【0072】
磁気カードリーダ・ライタ48は、常時においてはこのホテルの客室を使用するユーザ(宿泊客等)が有料番組を視聴するためにプリペイド式の磁気カードを挿入するものであって、磁気カードが挿入されると制御部47は、そのカードに磁気的に記録されているシステムコードからプリペイドカードであることを認識した後に、記憶されている度数データを読出して内部のワークメモリに記憶し、有料放送の視聴が行なわれる毎にその料金に応じた度数を減算していく。
【0073】
しかるに制御部47は、この磁気カードリーダ・ライタ48に配設されるカードの排出ボタン等が操作されて磁気カードを排出するに際して、磁気カードに最終的な度数データを書込んで度数データを更新設定した上で該磁気カードを排出させる。
【0074】
なお、この磁気カードリーダ・ライタ48では、ユーザが使用するプリペイド式の磁気カードの他に、ホテルの管理業務者がデジタル放送受信装置35の導入時や動作変更、記憶データの確認時等に、各種の確認項目データを記録した確認カードを挿入することができるものとし、そのシステムコードが上記制御部47内のフラッシュメモリに予め登録されているものとする。
【0075】
リモコン受光部49は、上記リモコンパッド36でのキー操作に対応した赤外線変調信号を受信、復調してその操作内容を上記制制御部47へ送出する。
【0076】
次に上記実施の形態の動作について説明する。
【0077】
図11(A)は、ホテルの各客室に設置されたデジタル放送受信装置35の制御部47が実行する、CASカードの装着状態に対応した処理内容である。
【0078】
その処理当初には、デジタル放送受信装置35のAC電源が投入されるとこれを認識した上で(ステップB01)、CASカードスロット45にB−CASカードが装着されているか否かを判断する(ステップB02)。
【0079】
ここで、B−CASカードが装着されていないと判断した場合には、なんらかの理由によりB−CASカードが抜き出されたものとして、制御部47がB−CASカードが装着されていない旨を例えば図示しないモニタ装置の表示画面上にて文字メッセージとして表示させた上で(ステップB04)、上記ステップB02からの処理に戻り、そのメッセージにしたがって実際にB−CASカードが装着されるのを待機する。
【0080】
一方、上記ステップB02でB−CASカードがCASカードスロット45に装着されていると判断した場合には、次いでデジタル放送受信部42内のメモリに当該B−CASカードのカードIDを取得して記憶済みであるか否か判断し(ステップB03)、取得済みであると判断した場合には再び上記ステップB02からの処理に戻って、以後上記ステップB02,B03の処理を繰返し実行する。
【0081】
また、上記ステップB03でまだデジタル放送受信部42内のメモリにB−CASカードのカードIDを記憶していないと判断した場合には、あらためてCASカードスロット45に装着されているB−CASカードのカードIDを読出して取得する(ステップB05)。
【0082】
そして、装着されているB−CASカードのカードIDを取得することができたか否かを判断し(ステップB06)、できなかった場合にはB−CASカードのカードIDを取得できなかった旨を例えば図示しないモニタ装置の表示画面上にて文字メッセージとしてエラー表示し(ステップB08)、以上でこの図11(A)の処理を終了する。
【0083】
また、上記ステップB06で装着されているB−CASカードのカードIDを取得することができたと判断した場合には、その取得したカードIDを制御部47内のフラッシュメモリに記憶させ(ステップB07)、以上でこの図11(A)の処理を終了する。
【0084】
このように、CASカードスロット45に正しいB−CASカードが装着されていれば、自動的にそのカードIDが制御部47内のフラッシュメモリに記憶されることとなる。
【0085】
図11(B)は、デジタル放送受信装置35の上記磁気カードリーダ・ライタ48になんらかの磁気カードが挿入された場合の処理内容を示すものであり、その当初には、挿入された磁気カードからシステムコード及びユーザIDコードを読出して(ステップB11)、そのシステムコードが制御部47内のフラッシュメモリに予め記憶しておいた確認カードのシステムコードと一致するか否かを判断する(ステップB12)。
【0086】
ここで、取得した磁気カードのシステムコードが、記憶していた確認カードのシステムコードと一致しなかった場合は、磁気カードリーダ・ライタ48に挿入されたのが確認カードではなく通常のプリペイドカードであり、そのプリペイドカードを挿入したのが客室のユーザ(宿泊客等)であるものとして、そのまま通常の有料番組の視聴等の他の動作(ステップB14)に移行するものであるが、ここではその詳細な動作については記述を省略する。
【0087】
一方、上記ステップB12で挿入された磁気カードのシステムコードが確認カードの同コードと一致したと判断した場合には、磁気カードリーダ・ライタ48に磁気カードを挿入したのがこのホテルのデジタル放送受信装置35等の管理業務を行なう者であり、一般のユーザではないものとして、制御部47のフラッシュメモリに記憶していたB−CASカードのカードIDを読出して図示しないモニタ装置の画面等で表示させ(ステップB13)、以上でこの処理を終了する。
【0088】
このように、CASカードスロット45に装着されていたB−CASカードが失われてしまった場合でも、制御部47の内部のフラッシュメモリに記憶しておいたそのカードIDを読出して把握することができるため、不特定多数のユーザが利用する、多数のデジタル放送受信装置が設置されるホテルのような施設内でも、各デジタル放送受信装置35に装着されているB−CASカードのカードIDを確実に管理することが可能となる。
【0089】
加えて、B−CASカードが失われたと判断した時点では単にB−CASが装着されていないことを報知するに止め、磁気カードリーダ・ライタ48に管理業務を行なう者しか所持し得ない確認カードを挿入した時点で、失われたB−CASカードのカードIDをあらためて表示するものとしたため、ある程度の秘匿性を保ちながら、管理者側がより容易にB−CASカードのカードIDを把握することができる。
【0090】
なお、上記実施の形態では、磁気カードリーダ・ライタ48に確認カードが挿入された場合にのみ、CASカードスロット45から失われたB−CASカードのカードIDを出力させるものとして説明したが、管理業務を行なう者を識別するための手段はこれに限らず、例えば客室のユーザが使用する上記リモコンパッド36とは発信するIDコードが異なる、図示しないメンテナンス用のリモコンパッドで、失われたB−CASカードのカードIDを出力させるようにしてもよいし、磁気カードリーダ・ライタ48と確認カード、及びユーザも使用するリモコンパッド36を組み合わせて操作するものとしてもよい。
【0091】
このようにすることで、盗難などの不測の事態により、CASカードスロット45に装着していたB−CASカードを紛失した場合でも、デジタル放送受信装置35の制御部47内のフラッシュメモリに記憶しておいた上記B−CASカードのカードIDを上記確認カードやメンテナンス用のリモコンパッド等を用いて、容易に把握することが可能となる。
【0092】
なお、上記第1及び第2の実施の形態は、いずれも宿泊施設であるホテルの施設館内に設置したデジタル放送受信システムあるいは個々の客室に設置したデジタル放送受信装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、病院等の入院施設の病床毎に設置されるシステムまたは装置として適用することも同様に可能である。
【0093】
その他、本発明は上記実施の形態に限らず、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能であるものとする。
【0094】
さらに、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るデジタル放送受信システム全体の構成を示す図。
【図2】同実施の形態に係るフロントコンピュータの回路構成を示すブロック図。
【図3】同実施の形態に係るデジタル放送受信装置の回路構成を示すブロック図。
【図4】同実施の形態に係るB−CASカードのカードIDに関するポーリング処理の内容を示すフローチャート。
【図5】同実施の形態に係るフロントコンピュータ側で管理される各カードIDの内容を例示する図。
【図6】同実施の形態に係るフロントコンピュータ側で管理される各カードIDの内容を例示する図。
【図7】同実施の形態に係るフロントコンピュータ側で管理される各カードIDの内容を例示する図。
【図8】同実施の形態に係るフロントコンピュータ側で管理される異常検出の内容を例示する図。
【図9】同実施の形態に係る異常検出の表示画面を例示する図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る主としてデジタル放送受信装置の回路構成を示すブロック図。
【図11】同実施の形態に係るB−CASカードのカードIDに関する取扱いの処理内容を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0096】
1…BS・CS放送アンテナ、2…地上波デジタル放送アンテナ、3…混合器、4…フロントコンピュータ、5…双方向通信データ回線、6…混合器、7…同軸伝送ライン、8…デジタル放送受信装置、9…モニタ装置、10…リモコンパッド、11…コンピュータ本体、12…モニタ、13…キーボード、14…マウス、15…プリンタ、21…分波器、22…デジタル放送受信部、23…映像出力端子、24…音声出力端子、25…CASカードスロット、26…電話回線接続端子、27…制御部、28…高周波モデム、29…リモコン受光部、31…BS・CS放送アンテナ、32…地上波デジタル放送アンテナ、33…混合器、34…同軸伝送ライン、35…デジタル放送受信装置、36…リモコンパッド、41…分波器、42…デジタル放送受信部、43…映像出力端子、44…音声出力端子、45…CASカードスロット、46…電話回線接続端子、47…制御部、48…磁気カードリーダ・ライタ、49…リモコン受光部、GR…客室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不特定多数のユーザに使用される施設構内に設置されたデジタル放送受信装置であって、
上記装置に装着され、その媒体固有の識別情報を固定記憶し、且つ視聴制限をかけられた放送の解除情報を記憶可能なカード状媒体と、
このカード状媒体の記憶している識別情報を装置の電源投入状態によらず記憶する記憶手段と、
この記憶手段が記憶する識別情報を所定操作により出力する操作手段と
を具備したことを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項2】
上記記憶手段は、上記カード状媒体の識別情報の他に管理用識別情報を記憶し、
上記操作手段は、管理用識別情報を入力することにより上記記憶手段が記憶するカード状媒体の識別情報を出力する
ことを特徴とする請求項1記載のデジタル放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−33776(P2009−33776A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291872(P2008−291872)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【分割の表示】特願2004−41249(P2004−41249)の分割
【原出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【出願人】(592205735)株式会社ケイティーエス (16)
【Fターム(参考)】